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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】シート包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/08 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B65D83/08 B
B65D83/08 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021010797
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114517
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】惟村 晴美
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-138749(JP,A)
【文献】特開2018-027787(JP,A)
【文献】特開2008-007922(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145124(JP,U)
【文献】特開2020-138787(JP,A)
【文献】特開2019-059523(JP,A)
【文献】国際公開第2019/069963(WO,A1)
【文献】特開2018-090320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
B65D 67/00-79/02
B65D 30/00-33/38
B65D 65/00-65/46
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面と、長手方向に対向する一対の側面とを備え、積層された複数枚のシートを収容する包装袋と、
前記天面に形成され、前記シートが取り出される取出口と、
前記各側面の高さ方向の中央部に形成され、幅方向に延びるシール部と、を有するシート包装体であって、
前記包装袋は、
紙成分を含む紙層と、
前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、
前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であり、
前記取出口は、
前記天面の前記長手方向の一対の端縁の間に形成された第1開裂用切目線と、
前記第1開裂用切目線と連続して、前記端縁と前記シール部との間に形成された第2開裂用切目線と、を有し、
前記第2開裂用切目線が曲折し、
前記第2開裂用切目線の前記第1開裂用切目線側の一部が、前記高さ方向に沿って延びる、
シート包装体。
【請求項2】
前記第2開裂用切目線が、前記シール部から離間されている、
請求項1に記載のシート包装体。
【請求項3】
前記第2開裂用切目線が、前記第1開裂用切目線側に折り返されている、
請求項1または2に記載のシート包装体。
【請求項4】
前記紙層の坪量が10g/m以上40g/m以下である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のシート包装体。
【請求項5】
前記紙層がクラフト紙またはレーヨン紙で形成されている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のシート包装体。
【請求項6】
前記樹脂層の厚みが5μm以上40μm以下である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のシート包装体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレンである、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のシート包装体。
【請求項8】
前記包装袋がピロー包装袋である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のシート包装体。
【請求項9】
前記樹脂層が前記包装袋の内側に配置された状態で、前記シール部が熱溶着されている、
請求項に記載のシート包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペーパータオルやティシューペーパー等のシートが収容されたシート包装体は、樹脂フィルム製の包装袋に複数枚のシートが収容された状態で流通され、使用される。シート包装体の包装袋にはミシン目が形成されており、このミシン目を開裂させることで、包装体が開封される。また、包装袋が開封された部分は、シートの取出口を構成する(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
近年、CO排出に伴う地球温暖化やマイクロプラスチック等の海洋汚染等の環境負荷を抑制する観点から、シート包装体における包装袋の材質を樹脂製から紙製にシフトする動きがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-183034号公報
【文献】特開2018-177364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紙製の包装袋は樹脂製の包装袋に比べて柔軟性がないことから、シート包装体の包装袋を紙製にすると、シートを取り出す際に、取出口が破れたり、シートが包装袋内に落ち込むことがある。
【0006】
本発明の課題は、包装袋が紙製の場合でも、シートの取り出しに優れるシート包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の態様は、天面と、長手方向に対向する一対の側面とを備え、積層された複数枚のシートを収容する包装袋と、前記天面に形成され、前記シートが取り出される取出口と、前記各側面の高さ方向の中央部に形成され、幅方向に延びるシール部と、を有するシート包装体であって、前記包装袋は、紙成分を含む紙層と、前記紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記包装袋における前記紙成分の比率が50%以上であり、前記取出口は、前記天面の前記長手方向の一対の端縁の間に形成された第1開裂用切目線と、前記第1開裂用切目線と連続して、前記端縁と前記シール部との間に形成された第2開裂用切目線と、を有し、前記第2開裂用切目線が前記幅方向に曲折する、シート包装体である。
【0008】
本明細書において、紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層は、紙層の片面に樹脂層が設けられた構造(2層構造)または紙層の両面に樹脂層が積層された構造(3層構造)のいずれかを示す。
【0009】
また、開裂用切目線は、カットとタイ(2つのカット間のカットされていない部分)が交互に配置され、タイが破断すると両隣のカットが連続したカットになる切目線を示す。曲折とは、所定の角度で直線状に屈曲することに限定されず、曲線状に曲がる場合も含まれる。なお、曲折する部分は、第2開裂用切目線の全部または一部でもよい。
【0010】
第1の態様では、紙成分を含む紙層と、該紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層を有し、包装袋における紙成分の比率が50%以上である包装袋を用いることで、シートが収容される包装袋に柔軟性が付与されたシート包装体を提供することができる。また、第1の態様では、包装袋における紙成分の比率が50%以上であるため、環境負荷が抑制されたシート包装体を提供することができる。
【0011】
また、このような包装袋の天面に形成された取出口が、天面に形成された第1開裂用切目線と、天面の端縁とシール部との間に形成されて幅方向に曲折する第2開裂用切目線とを有することで、取出口からシートが取り出しやすくなる。そのため、第1の態様では、シートが取出口に詰まりにくくなり、また取出口が破れることを抑制することができる。
【0012】
第1の態様では、取出口が、天面に形成された第1開裂用切目線と、天面の端縁とシール部との間に形成されて幅方向に曲折する第2開裂用切目線とを有することで、シートが取出口に保持されやすくなる。そのため、第1の態様では、包装袋内へのシートの落ち込みが抑制され、また取出口でシートが起立しやすくなる。
【0013】
また、第1の態様では、包装袋が紙成分を含む紙層と該紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層を有することで、包装袋を柔らかくすることができる。これにより、シート包装体における包装袋のごわごわ感を抑制し、包装袋に追従性を付与することができる。そのため、包装袋の材質を樹脂製から紙製にシフトした場合でも、製造時や輸送時に包装袋が破れにくいシート包装体を提供することができる。
【0014】
また、第1の態様では、紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層が熱可塑性樹脂を含むことから、包装袋をシール(または封止)する際に包装袋の一部を加熱することで、溶けた樹脂層が接着剤として機能し得る(接着機能を有する)。そのため、第1の態様では、包装袋のシールが容易なシート包装体を提供することができる。
【0015】
本発明に係る第2の態様は、前記第2開裂用切目線が、前記シール部から離間されている、シート包装体である。ここで離間されているとは、第2開裂用切目線がシール部に接続されない位置に配置されていることを示す。
【0016】
第2の態様では、第2開裂用切目線がシール部から離間されていることで、開封された取出口の両端がシール部に接続されない位置に配置される。これにより、取出口が拡がりすぎないため、取出口からシートを引き出しやすくしながら、取出口にシートが保持されやすくなる。
【0017】
本発明に係る第3の態様は、前記第2開裂用切目線の前記第1開裂用切目線側の一部が、前記高さ方向に沿って延びる、シート包装体である。本明細書において、高さ方向に沿って延びるとは、第2開裂用切目線の第1開裂用切目線側の一部が、高さ方向における妻面に沿う方向に延びることを示す。
【0018】
第3の態様では、第2開裂用切目線の第1開裂用切目線側の一部が、高さ方向に沿って延びることで、取出口を拡げながら、取出口の両端側が撓みやすくなる。これにより、取出口からシートをさらに引き出しやすくしながら、取出口にシートがさらに保持されやすくなる。
【0019】
本発明に係る第4の態様は、前記第2開裂用切目線が、前記第1開裂用切目線側に折り返されている、シート包装体である。本明細書において、折り返されているとは、第2開裂用切目線の第1開裂用切目線側から遠い側の端部が第1開裂用切目線側に向かって延びることを示す。第4の態様では、第2開裂用切目線が第1開裂用切目線側に折り返されていることで、取出口の両端が破れにくくなる。
【0020】
本発明に係る第5の態様は、前記紙層の坪量が10g/m以上40g/m以下である、シート包装体である。第5の態様では、紙層の坪量を10g/m以上40g/m以下にすることで、包装袋の強度を維持することができる。そのため、第5の態様によれば、包装袋が破れにくいシート包装体を提供することができる。
【0021】
本発明に係る第6の態様は、前記紙層がクラフト紙またはレーヨン紙で形成されている、シート包装体である。本明細書において、クラフト紙は、クラフトパルプを原料とする紙を示す。また、レーヨン紙は、木材パルプなどから化学合成して作られたレーヨン繊維をクラフトパルプに配合させたものを示す。なお、レーヨン紙は、包装袋の柔らかさと強度を両立させる観点から、レーヨン繊維の配合率が質量比で20%以下のものが好ましい。
【0022】
第6の態様では、包装袋の紙層をクラフト紙またはレーヨン紙で形成することで、包装袋の強度が維持されたシート包装体を提供することができる。
【0023】
本発明に係る第7の態様は、前記樹脂層の厚みが5μm以上40μm以下である、シート包装体である。第7の態様では、包装袋の樹脂層の厚みを5μm以上40μm以下にすることで、包装袋における紙成分の比率を50%以上に維持しやすくなる。また、包装袋のごわごわ感を抑制しながら、包装袋のシール時における樹脂層の接着機能が維持されたシート包装体を提供することができる。
【0024】
本発明に係る第8の態様は、前記熱可塑性樹脂が低密度ポリエチレンである、シート包装体である。第8の態様では、樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを用いることにより、包装袋のごわごわ感をさらに抑制しながら、包装袋のシール時における樹脂層の接着機能を向上させたシート包装体を提供することができる。
【0025】
本発明に係る第9の態様は、前記包装袋が、ピロー包装袋である、シート包装体である。本明細書において、ピロー包装袋とは、筒状の包装袋用シートの開口端部がシール(封止)された包装袋を示す。第9の態様では、包装袋をピロー包装袋で構成することで、幅方向に延びるシール部の形成が容易であり、幅方向に曲折する第2開裂用切目線の形成が容易である。
【0026】
本発明に係る第10の態様は、前記樹脂層が前記包装袋の内側に配置された状態で、前記シール部が熱溶着されている、シート包装体である。本明細書において、熱溶着は、包装袋用シートの一部を加熱して包装袋用シートの一部同士を溶着することを示す。
【0027】
第10の態様では、包装袋がピロー包装袋であり、樹脂層が包装袋の内側に配置された状態でシール部が熱溶着されることで、樹脂層同士を接着することができる。これにより、樹脂層の接着機能を有効に利用することができるので、接着剤を用いずに包装袋をシールすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、包装袋が紙製の場合でも、シートの取り出しに優れるシート包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態のシート包装体を示す図である。
図2】包装袋に収容されるシートを示す図である。
図3図1のシート包装体を天面側から見た図である。
図4図1のシート包装体を底面側から見た図である。
図5図1のシート包装体を正面側から見た図である。
図6図1のシート包装体を背面側から見た図である。
図7図1のシート包装体を左側面側から見た図である。
図8図1のシート包装体を右側面側から見た図である。
図9図3の領域R1における天面(2層構造)の部分断面図である。
図10図3の領域R1における天面(3層構造)の部分断面図である。
図11図3の領域R2の部分拡大図である。
図12図11の開裂用切目線に沿うシート(2層構造)の断面図である。
図13図11の開裂用切目線に沿うシート(3層構造)の断面図である。
図14】包装袋に開裂用切目線を形成する器具の一例を示す図である。
図15図3のシート包装体の開裂用切目線が開裂した状態を示す図である。
図16図1のシート包装体の使用時の状態を示す図である。
図17】第2実施形態のシート包装体を左側面側から見た図である。
図18】第2実施形態のシート包装体を右側面側から見た図である。
図19】第3実施形態のシート包装体を左側面側から見た図である。
図20】第3実施形態のシート包装体を右側面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、共通する部分は、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。また、各図において、各部材の縮尺は実際とは異なる場合がある。なお、各図では、3軸方向(X方向、Y方向、Z方向)の3次元直交座標系を用い、包装袋の長手方向をX方向とし、幅方向をY方向とし、高さ方向(上下方向または厚み方向)をZ方向とする。
【0031】
図1は、第1実施形態のシート包装体を示す図である。図2は、包装袋に収容されるシートを示す図である。図3図4図5図6図7図8は、図1のシート包装体を天面側、底面側、正面側、背面側、左側面側、右側面側からそれぞれ見た図である。
【0032】
シート包装体100は、図1に示すように、包装袋10、シート積層体20(複数枚のシートS)を有する。シート包装体100は、本実施形態に係るシート包装体の一例である。また、包装袋10は、本実施形態のシート包装体における包装袋の一例である。シート積層体20は、本実施形態のシート包装体において積層された複数枚のシートの一例である。
【0033】
包装袋10には、図2に示すように、積層された複数枚(または複数組)のシートS(シート積層体20)が収容される。シート積層体20は、シートSの積層方向(SD方向)が高さ方向(Z方向)となるように包装袋10に収容されている。シート積層体20は、包装袋10に形成された後述の取出口30(開口OP)を通してシートSが1枚(1組)ずつ引き出せるようになっている(図16参照)。
【0034】
シートSの積層体SL(シート積層体20)の形態は、特に限定されず、例えば、シートSが折りたたまれた状態で積層されたもの、各シートSが折り込まれた状態で互い違いに積層されたもの(いわゆるポップアップ式のシート積層体)、複数枚のシートSが単に積層されたもの等を採用することができる。
【0035】
また、シートS(シート積層体20)の寸法は、包装袋10の長手方向(X方向)の長さL2を150~260mm程度、包装袋10の長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の幅W2を70~150mm程度、高さ方向(Z方向)の高さH2を20~100mm程度とすることができる。このような薄葉紙の積層体は、例えば、ロータリー式又はマルチスタンド式インタフォルダによって製造することができる。
【0036】
シートSの態様は、特に限定されず、例えば、ペーパータオル、キッチンペーパー、ティシューペーパー、トイレットペーパー等の衛生薄葉紙に適用可能である。これらの衛生薄葉紙には、保湿成分を含んだ衛生薄葉紙(例えば、ローションティシュー等)も含まれる。
【0037】
また、シートSの用途は、特に限定されず、産業用、家庭用、携帯用のいずれも適用できる。なお、本実施形態におけるシートとしては、これらの中でも、産業用・家庭用のペーパータオルが好適に用いられる。
【0038】
シートSのプライ数は、特に限定されないが、1プライ以上にすることができ、好ましくは1プライまたは2プライ(2枚重ね)である。また、シートSの形状は、特に限定されないが、例えば、シートが折りたたまれた状態で輪郭形状が四角形(長方形、正方形等)のものであることが好ましい。
【0039】
シートSの材質は、特に限定されないが、例えば、紙、不織布または布等のシートを用いることができ、好ましくは紙(紙シート)である。なお、シートSが紙シートの場合、パルプを主原料とする原紙が用いられる。パルプ組成は、紙シートにおける公知の組成を用いることができる。例えば、パルプの配合割合を、50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%とすることができる。
【0040】
また、シートS(紙シート)におけるパルプ組成は、特に限定されない。例えば、NBKP(針葉樹クラフトパルプ)やNUKP(針葉樹未晒しパルプ)などの針葉樹パルプと、LBKP(広葉樹クラフトパルプ)やLUKP(広葉樹未晒しパルプ)などの広葉樹パルプとを、任意の比率で使用することができる。なお、広葉樹パルプと針葉樹パルプの比は、限定されないが、好ましくは10:90~80:20であり、より好ましくは広葉樹パルプに対して針葉樹パルプの比率がより多いパルプ組成である。また、シートS(紙シート)に含まれるパルプには、古紙パルプを用いても良い。
【0041】
シートSの坪量は、特に限定されないが、プライ数に応じて、紙の場合は5g/m以上80g/m以下であり、好ましくは10g/m以上60g/m以下、より好ましくは10g/m以上45g/m以下である。また、不織布の場合は20g/m以上100g/m以下のものが望ましい。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0042】
また、シートS(紙シート)の厚み(紙厚)は、特に限定されず、JIS P 8111(1998)の環境下で測定された紙厚を採用することができる。例えば、シートSが紙の場合、紙厚は、1プライあたり、50μm以上600μm以下であり、好ましくは60μm以上550μm以下、より好ましくは100μm以上400μm以下である。
【0043】
また、シートS(紙シート)には、エンボス加工が施されていてもよい。このようなエンボス加工は、公知のエンボス付与方法により実施することができる。
【0044】
図9は、図3の領域R1における天面の部分断面図である。包装袋10は、紙成分を含む紙層10Aと、紙層10Aの少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)とを有する(図9図10)。そして、包装袋10における紙成分の比率が50%以上となっている。
【0045】
ここで、紙成分は、例えば、植物繊維を膠着させたもの(パルプ)である。紙成分におけるパルプ組成は、限定されないが、好ましくは広葉樹パルプに対して針葉樹パルプの比率がより多いパルプ組成である。また、パルプには、古紙パルプを用いても良い。
【0046】
本実施形態では、紙層10Aの少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層は、例えば、紙層10Aの片面に樹脂層10Bが設けられた構造(2層構造)を有し(図9)、または紙層10Aの両面に樹脂層10B、10Cが積層された構造(3層構造)を有する(図10)。
【0047】
包装袋10を構成する紙層10Aの材質は、特に限定されないが、例えば、クラフト紙またはレーヨン紙で形成することができる。ここで、クラフト紙は、クラフトパルプを原料とする紙である。また、レーヨン紙は、木材パルプなどから化学合成して作られたレーヨン繊維をクラフトパルプに配合させたものである。なお、レーヨン紙は、包装袋10の柔らかさと強度を両立させる観点から、レーヨン繊維の配合率が質量比で20%以下のものが好ましい。
【0048】
包装袋10を構成する紙層10Aの坪量は、限定されないが、好ましくは10g/m以上40g/m以下であり、より好ましくは15g/m以上35g/m以下、さらに好ましくは20g/m以上30g/m以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0049】
包装袋10(紙層10A)の厚みは、限定されないが、例えば、好ましくは20μm以上100μm以下であり、より好ましくは25μm以上90μm以下、さらに好ましくは40μm以上75μm以下である。なお、厚みは、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0050】
包装袋10を構成する樹脂層10B、10Cに含まれる熱可塑性樹脂の材質は、特に限定されないが、好ましくは低密度ポリエチレンである。なお、低密度ポリエチレンとしては高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)のいずれでもよい。
【0051】
包装袋10を構成する樹脂層10B、10Cの厚みは、限定されないが、好ましくは5μm以上40μm以下であり、より好ましくは7μm以上35μm以下であり、さらに好ましくは9μm以上30μm以下である。なお、厚みは、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0052】
包装袋10の坪量は、限定されないが、好ましくは20g/m以上70g/m以下であり、より好ましくは25g/m以上65g/m以下、さらに好ましくは30g/m以上60g/m以下である。なお、坪量は、JIS P 8124(2011)の規定に準拠して測定される。
【0053】
包装袋10の厚みは、限定されないが、例えば、25μm以上105μm以下であり、好ましくは30μm以上95μm以下、より好ましくは45μm以上80μm以下である。なお、厚みは、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0054】
包装袋10の密度は、限定されないが、例えば、0.1g/m以上1.5g/m以下0.3g/m以上1.2g/m以下、より好ましくは0.5g/m以上0.9g/m以下である。なお、密度は、JIS P 8118(2014)の規定に準拠して測定される。
【0055】
包装袋10の引張強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(流れ方向)に1kN/m以上6kN/m以下、好ましくは1.3kN/m以上5.5kN/m以下より好ましくは1.5kN/m以上5kN/m以下であり、横方向(流れ方向と直交する方向)に0.1kN/m以上2.5kN/m以下、好ましくは0.2kN/m以上2.4kN/m以下より好ましくは0.3kN/m以上2.3kN/m以下である。なお、引張強度は、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。
【0056】
なお、引張強度は、JIS P 8113(2006)の規定に準拠して測定される。また、包装袋の縦方向は、包装袋を構成する繊維の流れ方向に対応し、包装袋の横方向は、包装袋を構成する繊維の流れ方向と直交する方向に対応する。
【0057】
包装袋10の引裂強度は、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(流れ方向)に70mN以上350mN以下、好ましくは80mN以上340mN以下より好ましくは90mN以上330mN以下であり、横方向(流れ方向と直交する方向)に250mN以上950mN以下、好ましくは280mN以上930mN以下より好ましくは300mN以上920mN以下である。なお、引裂強度は、JIS P 8116(2000)の規定に準拠して測定される。
【0058】
包装袋10のソフトネスは、限定されないが、例えば、繊維の縦方向(流れ方向)に90mN/100mm以上800mN/100mm以下、好ましくは110mN/100mm以上750mN/100mm以下、より好ましくは130mN/100mm以上730mN/100mm以下であり、横方向(流れ方向と直交する方向)に40mN/100mm以上330mN/100mm以下、好ましくは、50mN/100mm以上310mN/100mm以下、より好ましくは60mN/100mm以上310mN/100mm以下である。
【0059】
ここで、ソフトネスは、JIS L 1096 E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定したものである。但し、試験片は100mm×100mmの大きさとし、クリアランスは5mmで実施した。ソフトネスの測定は、1プライで縦方向、横方向の各々5回測定し、その5回の平均値を小数点1桁とし、mNを単位として表した。
【0060】
包装袋10のクラーク剛度は、特に限定されないが、縦方向のクラーク剛度が好ましくは3cm/100以上20cm/100以下であり、より好ましくは4cm/100以上18cm/100以下、さらに好ましくは5cm/100以上16cm/100以下である。なお、クラーク剛度は、JIS P 8143の規定に準拠して測定される。
【0061】
包装袋10は、天面11、底面12、側面13、側面14、妻面15、妻面16を有する。包装袋10では、天面11と底面12が上下方向(Z方向)に対向し、側面13と側面14が幅方向(Y方向)に対向し、妻面15と妻面16が長手方向(X方向)に対向する。なお、天面は、本実施形態のシート包装体における天面の一例である。妻面15、16は、本実施形態のシート包装体における長手方向に対向する一対の側面の一例である。
【0062】
なお、天面11と底面12は、妻面15側でシール部40を介して接続され、妻面16側でシール部50を介して接続されている。シール部40は、各妻面15の高さ方向(Z方向)の中央部15Aに形成され、幅方向(Y方向)に延びる(図5図7)。また、シール部50は、各妻面16の高さ方向(Z方向)の中央部16Aに形成され、幅方向(Y方向)に延びる(図5図6図8)。
【0063】
また、包装袋10の寸法は、任意であり、例えば、包装袋10の長手方向(X方向)の長さL1を150~260mm程度、包装袋10の長手方向(X方向)に直交する幅方向(Y方向)の幅W1を70~150mm程度、高さ方向(Z方向)の高さH1を20~100mm程度とすることができる。なお、この包装袋10の寸法は、包装袋10にシート積層体20が収容された状態での寸法を示す。
【0064】
本実施形態のシート包装体100では、包装袋10が長手方向(X方向)の両端に一対のシール部40、50を有するピロー包装袋で構成されている。具体的には、包装袋10の妻面15、16にシール部(エンドシール)40、50が形成され、包装袋10の底面12にシール部(ボトムシール)60が形成されて、シートS(シート積層体20)がピロー包装されている。
【0065】
ここで、ピロー包装袋は、包装袋用シート(図示せず)が筒状に加工され、該筒状の包装袋用シートの開口端部がシール(封止)されたものである。なお、本実施形態において、包装袋10を構成する筒状の包装袋用シートは、ガセット状に折り込まれていてもよい。
【0066】
シール部40、50、60の態様は、特に限定されない。例えば、包装袋10が紙層10Aのみで構成されている場合は、シール部40、50、60を接着剤(図示せず)で接着することができる(図9)。
【0067】
なお、包装袋10は、シール部40、50、60が熱溶着されている。ここで、熱溶着は、包装袋用シートの一部を加熱して包装袋用シートの一部同士を溶着することを示す。
【0068】
具体的には、図9に示す2層構造の包装袋(ピロー包装袋)10では、例えば、樹脂層10Bが包装袋10の内側又は外側に配置された状態で、シール部40、50、60が熱溶着されている。また、図10に示す3層構造の包装袋(ピロー包装袋)10では、樹脂層10Bまたは樹脂層10Cのいずれかが包装袋10の内側に配置された状態で、シール部40、50、60が熱溶着されている。
【0069】
熱溶着における加熱温度は、任意である。例えば、図9に示す2層構造で樹脂層10Bが包装袋10の外側に配置されている場合は、シール部40、50を接着剤でシールし、接着剤が溶着する温度に調整すればよい。
【0070】
また、図9に示す2層構造で樹脂層10Bが包装袋10の内側に配置されている場合、および図10に示す3層構造で樹脂層10B、10Cのいずれかが包装袋10の内側に配置されている場合は、好ましくは140℃以上180℃以下、より好ましくは140℃以上170℃以下、さらに好ましくは140℃以上160℃以下に調整する。
【0071】
包装袋10の天面11には、シートSが取り出される取出口30が形成されている。取出口30は、第1開裂用切目線31と第2開裂用切目線32、33とを有する。ここで、開裂用切目線は、カットCとタイT(2つのカットC、C間のカットされていない部分)が交互に配置され、タイTが破断すると両隣のカットCが連続したカットになる切目線を示す(図1図3図7図8図11)。
【0072】
図11は、図3の領域R2の部分拡大図である。開裂用切目線31~33は、カットCとタイTが交互に配置された直線状のミシン目Mで構成されている(図1図3図7図8図11)。包装袋10では、このミシン目Mを開裂することで包装袋10の天面11及び妻面15、16の各一部に、シートSが引き出される開口OPとして形成される(図3図7図8図15)。
【0073】
開裂用切目線31~33の形態は、特に限定されないが、紙層10Aの片面に樹脂層10Bが設けられた構成(2層構造)の場合、開裂用切目線31~33のカットCが紙層10Aと樹脂層10Bを貫通していることが好ましくは(図9図12)。ここで、紙層10Aと樹脂層10Bを貫通するとは、開裂用切目線31~33のカットCが、積層された紙層10Aと樹脂層10Bを厚み方向に突き抜けることを示す(図12)。
【0074】
また、紙層10Aの両面に樹脂層10B、10Cが積層された構造(3層構造)の場合、好ましくは開裂用切目線31~33のカットCが紙層10Aと樹脂層10B、10Cを貫通していることが好ましい(図10図13)。ここで、紙層10Aと樹脂層10B、10Cを貫通するとは、開裂用切目線31~33のカットCが、積層された紙層10Aと樹脂層10B、10Cを厚み方向に突き抜けることを示す(図13)。
【0075】
開裂用切目線31~33におけるカットCの長さD1は、特に限定されないが、好ましくは3mm以上8mm以下であり、より好ましくは2mm以上7.5mm以下であり、さらに好ましくは2.5mm以上7mm以下である。ここで、カットの長さは、開裂用切目線31~33の各カットCの長さを示す。
【0076】
また、開裂用切目線31~33におけるタイTの長さは、特に限定されないが、好ましくは0.3mm以上2.5mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下であり、さらに好ましくは0.8mm以上1.2mm以下である。ここで、タイの長さは、開裂用切目線の各タイTの長さを示す。
【0077】
本実施形態では、開裂用切目線31~33におけるカットCの比率は、特に限定されないが、好ましくは60%以上95%以下、より好ましくは65%以上90%以下、より好ましくは70%以上85%以下である。カットの比率は、開裂用切目線31~33中の隣り合うカットCとタイTの各長さD1、D2の合計に対するカットCの長さD1の割合を示す。
【0078】
開裂用切目線31~33の作製方法は、任意であり、例えば、図14に示す器具90を用いて作製することができる。具体的には、器具90の針部91と台部92の間に包装袋10(包装袋用シート)を配置し、針部91の先端91Aを台部92の受溝92Aに向けて刺すことで、開裂用切目線31~33を形成することができる。
【0079】
なお、シート包装体100では、包装袋10に通気孔(図示せず)を形成してもよい。通気孔は、包装袋10の空気穴として機能することができる。通気孔の作製方法は、任意であり、例えば、上述の開裂用切目線31~33の作製方法と同様の方法を用いることができる。
【0080】
通気孔の位置は、限定されず、例えば、包装袋10の側面13、14に通気孔を設けることができる。通気孔の数は、限定されず、複数の通気孔を設けることができる。通気孔の形状は、限定されず、例えば、平面視で円形にし得る。通気孔の寸法は、限定されず、例えば、約2mmの径寸法にし得る。
【0081】
本実施形態のシート包装体100において、開裂用切目線31は、天面11の長手方向(X方向)の一対の端縁11A、11Bの間に形成されている。本実施形態では、開裂用切目線31の長さL3は、包装袋10の天面11の一対の端縁11A、11B間の距離L1に対応する(図3)。なお、開裂用切目線31は、本実施形態のシート包装体における第1開裂用切目線の一例である。
【0082】
また、開裂用切目線32は、開裂用切目線31と妻面15側で連続して、天面11の端縁11Aとシール部40との間に形成されている。また、開裂用切目線33は、開裂用切目線31と妻面16側で連続して、天面11の端縁11Bとシール部50との間に形成されている。なお、開裂用切目線32、33は、本実施形態のシート包装体における第2開裂用切目線の一例である。
【0083】
本実施形態では、開裂用切目線32は、妻面15側で幅方向(Y方向)に曲折する。また、開裂用切目線33は、妻面16側で幅方向(Y方向)に曲折する。具体的には、例えば、開裂用切目線32、33が所定の角度で直線状に屈曲する場合、開裂用切目線32、33が曲線状に曲がる場合等が挙げられる。
【0084】
また、曲折する開裂用切目線32、33は、開裂用切目線32、33の全部が曲折してもよいし、開裂用切目線32、33の一部が曲折してもよい。本実施形態では、開裂用切目線32、33において、開裂用切目線31側の直線状の一部32A、33Aに対して、シール部40、50側の直線状の一部32B、33Bが所定の角度で傾斜している(図7図8)。
【0085】
本実施形態のシート包装体100では、開裂用切目線32はシール部40から離間されている。また、開裂用切目線33はシール部50から離間されている。具体的には、開裂用切目線32は、妻面15のシール部40に接続されない位置に配置されている。また開裂用切目線33は、妻面16のシール部50に接続されない位置に配置されている(図1図7図8)。
【0086】
シート包装体100では、妻面15の高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1に見たとき、天面11の端縁11Aとシール部40との間隔E1に対して、開裂用切目線32の間隔E2が短くなっている(図5図7)。また、妻面16の高さ方向(Z方向)に沿う方向AD2に見たとき、天面11の端縁11Bとシール部50との間隔E3に対して、開裂用切目線33の間隔E4が短くなっている(図5図6図8)。
【0087】
開裂用切目線32の間隔E2の比率は、特に限定されないが、天面11の端縁11Aとシール部40との間隔E1に対して、好ましくは20~95%、より好ましくは25~93%、さらに好ましくは30~90%である。開裂用切目線33の間隔E4の比率は、特に限定されないが、天面11の端縁11Bとシール部50との間隔E1に対して、好ましくは20~95%、より好ましくは25~93%、さらに好ましくは30~90%である。
【0088】
また、本実施形態のシート包装体100において、開裂用切目線32の開裂用切目線31側の一部32Aが、高さ方向(Z方向)に沿って延びる。また、開裂用切目線33の開裂用切目線31側の一部33Aが、高さ方向(Z方向)に沿って延びる。
【0089】
本実施形態では、開裂用切目線32の一部32Aは、高さ方向(Z方向)における妻面15に沿う方向AD1に延びる。また、開裂用切目線32の一部33Aは、高さ方向(Z方向)における妻面16に沿う方向AD2に延びる(図5図8)。
【0090】
本実施形態では、上述のように、紙成分を含む紙層10Aと、該紙層10Aの少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)を有し、紙成分の比率が50%以上である包装袋10を用いることで、シートSが収容される包装袋10に柔軟性が付与されたシート包装体100を提供することができる(図9図10)。また、本実施形態では、包装袋10における紙成分の比率が50%以上であるため、環境負荷が抑制されたシート包装体100を提供することができる。
【0091】
また、このような包装袋10の天面11に形成された取出口30が、天面11に形成された第1開裂用切目線(開裂用切目線31)と、天面11の端縁11A、11Bとシール部40、50との間に幅方向(Y方向)に曲折する第2開裂用切目線(開裂用切目線32、33)とを有することで、取出口30からシートSが取り出しやすくなる。そのため、本実施形態では、シートSが取出口30に詰まりにくくなり、また取出口30が破れることを抑制することができる(図1図7図8図15図16)。
【0092】
本実施形態では、取出口30が、天面11に形成された開裂用切目線31と、天面11の端縁11A、11Bとシール部40、50との間に形成されて幅方向(Y方向)に曲折する開裂用切目線32、33とを有することで、シートSが取出口30に保持されやすくなる。そのため、本実施形態では、包装袋10内へのシートSの落ち込みが抑制され、また取出口30でシートSが起立しやすくなる(図1図7図8図15図16)。
【0093】
また、本実施形態では、包装袋10が紙成分を含む紙層10Aと該紙層10Aの少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)を有することで、包装袋10を柔らかくすることができる。これにより、シート包装体100における包装袋10のごわごわ感を抑制し、包装袋10に追従性を付与することができる。そのため、包装袋10の材質を樹脂製から紙製にシフトした場合でも、製造時や輸送時に包装袋10が破れにくいシート包装体100を提供することができる(図1図3図9図10図15図16)。
【0094】
また、本実施形態では、紙層10Aの少なくともいずれか一方の面に設けられた樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)が熱可塑性樹脂を含むことから、包装袋10をシール(または封止)する際に包装袋10の一部を加熱することで、溶けた樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)が接着剤として機能し得る(接着機能を有する)。そのため、本実施形態では、包装袋10のシールが容易なシート包装体100を提供することができる(図1図3図10)。
【0095】
本実施形態では、上述のように、第2開裂用切目線(開裂用切目線32、33)がシール部40、50から離間されていることで、開封された取出口30の両端部(端部30A、30B)がシール部40、50に接続されない位置に配置される。これにより、取出口30が拡がりすぎないため、取出口30からシートSを引き出しやすくしながら、取出口30にシートSが保持されやすくなる(図1図7図8図15図16)。
【0096】
本実施形態では、第2開裂用切目線(開裂用切目線32、33)の第1開裂用切目線(開裂用切目線31)側の一部32A、33Aが、高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に延びることで、取出口30を拡げながら、取出口30の両端部(端部30A、30B)側が撓みやすくなる。これにより、取出口30からシートSをさらに引き出しやすくしながら、取出口30にシートSがさらに保持されやすくなる(図15図16)。
【0097】
本実施形態では、上述のように、紙層10Aの坪量を10g/m以上40g/m以下にすることで、包装袋10の強度を維持することができる。そのため、本実施形態によれば、包装袋10が破れにくいシート包装体100を提供することができる。
【0098】
本実施形態では、上述のように、包装袋10の紙層10Aをクラフト紙またはレーヨン紙で形成することで、包装袋10の強度が維持されたシート包装体100を提供することができる。
【0099】
本実施形態では、包装袋10の樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)の厚みを5μm以上40μm以下にすることで、包装袋10における紙成分の比率を50%以上に維持しやすくなる。また、包装袋10のごわごわ感を抑制しながら、包装袋10のシール時における樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)の接着機能が維持されたシート包装体100を提供することができる。
【0100】
本実施形態では、上述のように、樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)に含まれる熱可塑性樹脂として低密度ポリエチレンを用いることにより、包装袋10のごわごわ感をさらに抑制しながら、包装袋10のシール時における樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)の接着機能を向上させたシート包装体100を提供することができる。
【0101】
本実施形態では、上述のように、包装袋10をピロー包装袋で構成することで、幅方向(Y方向)に延びるシール部40、50の形成が容易であり、幅方向(Y方向)に曲折する第2開裂用切目線(開裂用切目線32、33)の形成が容易である(図1図3図8)。
【0102】
本実施形態では、上述のように、包装袋10がピロー包装袋であり、樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)が包装袋10の内側に配置された状態でシール部40、50が熱溶着されることで、樹脂層同士を接着することができる。これにより、樹脂層(樹脂層10B、または樹脂層10B、10C)の接着機能を有効に利用することができるので、接着剤を用いずに包装袋10をシールすることができる(図1図3図8)。
【0103】
図17は、第2実施形態のシート包装体を左側面側から見た図であり、図18は、第2実施形態のシート包装体を右側面側から見た図である。なお、図17図18において、第1実施形態と共通する部分は、図7図8に付した符号を付して説明を省略する。
【0104】
第2実施形態のシート包装体100では、高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に延びる直線状の一部32Aが存在しない。具体的には、開裂用切目線32が、傾斜する直線状の一部32B、33Bで構成されている(図7図8)。
【0105】
第2実施形態では、開裂用切目線32に高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に延びる直線状の一部32Aが存在せず、傾斜する直線状の一部32B、33Bのみ存在するため、取出口30が拡がりすぎずない(図17図18)。そのため、取出口30からシートSを引き出しやすくしながら、取出口30にシートSが保持されやすくなる。
【0106】
図19は、第3実施形態のシート包装体を左側面側から見た図であり、図20は、第3実施形態のシート包装体を右側面側から見た図である。なお、図19図20において、第1実施形態と共通する部分は、図7図8に付した符号を付して説明を省略する。
【0107】
第3実施形態のシート包装体100において、第2開裂用切目線(開裂用切目線32、33)が、第1開裂用切目線(開裂用切目線31)側に折り返されている。具体的には、開裂用切目線32の開裂用切目線31側から遠い側の端部32Cが開裂用切目線31側に向かって延びる(図19)。また、開裂用切目線33の開裂用切目線31側から遠い側の端部33Cが開裂用切目線31側に向かって延びる(図20)。
【0108】
本実施形態では、第2開裂用切目線(開裂用切目線32、33)が第1開裂用切目線(開裂用切目線31)側に折り返されていることで、取出口30の両端部(端部30A、30B)が破れにくくなる(図15図16)。
【実施例
【0109】
以下、本発明について、さらに実施例を用いて具体的に説明する。実施例、比較例の評価は、以下の試験により行った。
【0110】
[試験体]
試験体として、複数枚のシートS(シート積層体20)が包装袋10にピロー包装されたシート包装体100を用意した(図1図8)。シート積層体20は、シートSが折りたたまれた状態で積層されたペーパータオル(商品名「エルヴェールペーパータオル エコドライ(中判)」、大王製紙株式会社製、シングルタイプ(1プライ)、200枚、高さH1:67mm、長さL1:210mm、幅(奥行)W1:115mm、坪量:30g/m、ソフトネス縦206mN/100mm、ソフトネス横177mN/100mm)。包装袋10に取出口30(ミシン目M)を形成した。
【0111】
[初期取出性]
シート包装体100の包装袋10に収容されたシート積層体20から、包装袋10の開封された取出口30(開口OP)を通じてシート積層体20の最初の1枚(1組)のシートSを取り出すときの取出しやすさ(初期取出性)を確認した。評価は、シートSが取り出しやすい場合は〇(良好)、シートSが取り出せるが取り出しにくい、または取り出せない場合は×(不良)とした。
【0112】
[取出口端部の破れ]
シート包装体100の包装袋10に収容されたシート積層体20から、包装袋10の開封された取出口30(開口OP)を通じてシート積層体20の最初の1枚(1組)から最後の1枚(1組)までのシートSを引き出したときの取出口30の端部30A、30Bの破れを確認した。評価は、取出口30の端部30Aまたは端部30Bが破れなかった場合は〇(良好)、破れた場合は×(不良)とした。
【0113】
[起立性]
シート包装体100の包装袋10に収容されたシート積層体20から、包装袋10の開封された取出口30(開口OP)を通じてシート積層体20の最初の1枚(1組)から最後の1枚(1組)まで引き出したときに、シートSが取出口30に保持されずシートが倒れた回数を測定した。評価は、シートが倒れた回数は10枚(組)未満の場合は○(良好)、10枚(組)以上の場合は×(不良)とした。
【0114】
[非落込性]
シート包装体100の包装袋10に収容されたシート積層体20から、包装袋10の開封された取出口30(開口OP)を通じてシート積層体20の最初の1枚(1組)から最後の1枚(1組)まで取り出したときに、シートSが取出口30に保持されず包装袋10の中に落ち込んだ回数を測定した。評価は、落ち込んだ回数が3回以下の場合は〇(良好)、4回から9回の場合△(やや不良)、10回以上の場合は×(不良)とした。
【0115】
以下、実施例及び比較例に用いる素材について、説明する。
【0116】
[素材1]
紙層10Aに坪量30g/mのレーヨン紙を用い、樹脂層10Bに厚み11μmの低密度ポリエチレンを用いた素材1を構成した。素材1の性状は、坪量41.6g/m、厚み67μm、密度0.62g/cm、引張強度縦2.75kN/m、引張強度横0.61kN/m、引裂強度縦310mN、引裂強度横3.1mN、ソフトネス表縦329mN/100mm、ソフトネス表横139mN/100mm、クラーク剛度縦15.4cm/100、クラーク剛度横4.53cm/100であった。
【0117】
[素材2]
紙層10Aに坪量30g/mのクラフト紙を用いた以外は、素材1と同様に素材2を構成した。素材2の性状は、坪量41.7g/m、厚み56μm、密度0.74g/cm、引張強度縦4.84kN/m、引張強度横1.07kN/m、引裂強度縦164mN、引裂強度横306mN、ソフトネス表縦333mN/100mm、ソフトネス表横154mN/100mm、クラーク剛度縦14.3cm/100、クラーク剛度横5.17cm/100であった。
【0118】
以下、実施例及び比較例について、説明する。
【0119】
[実施例1]
包装袋10に素材1を用い、樹脂層10Bを包装袋10の内側に配置し、取出口30を天面11に形成された第1開裂用切目線(ミシン目31)と妻面15、16に形成された第2開裂用切目線(ミシン目32、33)で構成した。天面11のミシン目31は、長手方向(X方向)に沿う直線で、天面11の端縁11A、11B間の距離L1に対応する長さL3とした。妻面15、16のミシン目32、33は、高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に延びる開裂用切目線31側の直線状の一部(直線)32A、33Aと、該直線32A、33Aに連続し、天面11の端縁11A、11Bに対して所定の角度(約30°~60°)で傾斜し、シール部40、50に接続せずシール部40、50側に延びる直線状の一部(斜め直線)32B、33Bで構成した。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例2]
妻面15、16のミシン目32、33を、高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に延びる直線32A、33Aは形成せず、天面11の端縁11A、11Bから15mmの範囲に形成され、端縁11A、11Bに対して所定の角度(約30°~60°)で傾斜し、シール部40、50に接続せずシール部40、50側に延びる直線状の一部(斜め直線)32B、33Bで構成した以外は、実施例1と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0121】
[実施例3]
妻面15、16のミシン目32、33を、斜め直線32B、33Bの代わりに、第1開裂用切目線(ミシン目31)側に折り返されて開裂用切目線32、33の開裂用切目線31側から遠い側の端部32C、33Cが開裂用切目線31側に向かって延びる折線状の一部(斜め折り返し)32B、33Bで構成した以外は、実施例1と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0122】
[比較例1]
妻面15、16のミシン目32、33を、斜め直線32B、33Bの代わりに高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に天面11の端縁11A、11Bからシール部40、50まで延びる直線32A、33Aで構成した以外は、実施例2と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0123】
[比較例2]
直線32A、33Aの長さを天面11の端縁11A、11Bから開裂用切目線31と高さ方向(Z方向)に沿う方向AD1、AD2に15mmの長さにした以外は、比較例1と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0124】
[比較例3]
妻面15、16のミシン目32、33を形成しなかった以外は、実施例1と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0125】
[比較例4]
天面11のミシン目31の長さL3を天面11の長さL1よりも短くした(天面11のミシン目31を天面11の端縁11A、11B間の内側に形成した)以外は、比較例5と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0126】
[比較例5]
長さL3を天面11の長さL1よりも30mm短くした天面11のミシン目31と、天面11上でミシン目31の端部から端縁11A、11B側に向かって所定の角度(約30°~60°)で傾斜し且つ端縁11A、11Bから天面11上の内側に15mmの位置まで延びるミシン目(斜め直線)とを構成した以外は、比較例4と同様に作製、評価した。結果を表1に示す。
【0127】
[実施例4]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、実施例1と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0128】
[実施例5]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、実施例2と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0129】
[実施例6]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、実施例3と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0130】
[比較例6]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、比較例1と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0131】
[比較例7]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、比較例2と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0132】
[比較例8]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、比較例3と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0133】
[比較例9]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、比較例4と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0134】
[比較例10]
素材1の代わりに素材2を用いた以外は、比較例5と同様に作製、評価した。結果を表2に示す。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
表1、表2より、素材1、2を用いたピロー包装袋に複数枚のシート(シート積層体)を収容し、包装袋10の天面11に形成された取出口30が、天面11の端縁11A、11B間の距離L1に対応する長さL3を有する長手方向(X方向)に沿う直線で天面11に形成された第1開裂用切目線(ミシン目31)と、天面11の端縁11A、11Bからシール部40、50側に延びる斜め直線32B、33Bで妻面15、16に形成された第2開裂用切目線(ミシン目32、33)とを有する試験体(シート包装体)は、初期取出性、取出口端部の破れ、起立性、非落込性のいずれも良好であった(実施例1~6)。
【0138】
これに対して、妻面15、16に形成された第2開裂用切目線(ミシン目32、33)が端縁11A、11Bに対して所定の角度(約30°~60°)で傾斜する斜め直線32B、33Bを有さないシート包装体(比較例1、2、6、7)、妻面15、16に第2開裂用切目線(ミシン目32、33)がないシート包装体(比較例3~5、8~10)は、初期取出性、取出口端部の破れ、起立性、非落込性の少なくともいずれかが不良であった。
【0139】
これらの結果から、包装袋が、紙成分を含む紙層と、紙層の少なくともいずれか一方の面に設けられた熱可塑性樹脂を含む樹脂層とを有し、包装袋における紙成分の比率が50%以上であり、包装袋の天面に形成された取出口が、天面の長手方向の一対の端縁の間に形成された第1開裂用切目線と、第1開裂用切目線と連続して天面の端縁と側面の高さ方向の中央部に形成されたシール部との間に形成された第2開裂用切目線とを有し、第2開裂用切目線が幅方向に曲折するシート包装体は、包装袋が紙製の場合でも、シートの取り出しに優れることが判った。
【0140】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0141】
100 シート包装体
10 包装袋
10A 紙層
10B、10C 樹脂層
11 天面
11A、11B 端縁
12 底面
13、14 側面
15、16 妻面(一対の側面)
15A、16A 中央部
20、SL シート積層体
S シート
30 取出口
30A、30B 端部
31 開裂用切目線(第1開裂用切目線)
32、33 開裂用切目線(第2開裂用切目線)
32A、33A 一部
32B、33B 一部
32C、33C 端部
M ミシン目
C カット
T タイ
D1、D2 長さ
E1、E2、E3、E4 間隔
OP 開口(取出口)
40、50 シール部(エンドシール)
60 シール部(ボトムシール)
90 器具
91 針部
91A 先端
92 台部
92A 受溝
L1、L2、L3 長さ
W1、W2 幅
H1、H2 高さ
R1、R2 領域
AD1、AD2 妻面の高さ方向に沿う方向
図1
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