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特許7513538光走査装置および当該光走査装置を備える画像形成装置ならびに光走査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】光走査装置および当該光走査装置を備える画像形成装置ならびに光走査方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/47 20060101AFI20240702BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240702BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B41J2/47 101M
G02B26/10 B
G02B26/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021013073
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116743
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】山本 弥史
(72)【発明者】
【氏名】元山 貴晴
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-297016(JP,A)
【文献】特開2002-023087(JP,A)
【文献】特開平10-253905(JP,A)
【文献】特開2003-202511(JP,A)
【文献】特開平09-236763(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0063021(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0055880(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/47
G02B 26/10
G02B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ビームを発する第1発光素子、第2光ビームを発する第2発光素子、および、第3光ビームを発する第3発光素子を備え、さらに、
前記第1光ビームと前記第2光ビームと前記第3光ビームとのそれぞれが潜像担持体の被走査面を主走査方向へ走査するように、当該第1光ビームと当該第2光ビームと当該第3光ビームとのそれぞれを偏向する偏向手段、および、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのそれぞれの動作を個別に有効化しまたは無効化する発光制御手段を備え、
前記被走査面の副走査方向への移動速度は、第1速度と、当該第1速度よりも低速である第2速度と、のいずれかに選択的に制御され、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第2光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第1速度に応じた第1距離となるように配され、
前記第3発光素子は、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第3光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第2速度に応じた第2距離となるように配され、
前記発光制御手段は、前記被走査面の前記副走査方向への移動速度が前記第1速度であるときに、前記第1発光素子と前記第2発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、前記第3発光素子の動作を無効化し、当該被走査面の当該副走査方向への移動速度が前記第2速度であるときに、当該第1発光素子と当該第3発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、当該第2発光素子の動作を無効化し、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのうちの2つは、1つの第1光源に設けられ、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのうちの残りの1つは、前記第1光源とは別の第2光源に設けられる、光走査装置。
【請求項2】
前記第1光源と前記第2光源との一方は、P波光源であり、
前記第1光源と前記第2光源との他方は、S波光源である、請求項に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記第1光源と前記第2光源とは、前記主走査方向に沿う仮想平面において隣接して設けられる、請求項に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1光ビームと前記第2光ビームと前記第3光ビームとのうちの前記第1光源から発せられる第1光源ビームと、当該第1光ビームと当該第2光ビームと当該第3光ビームとのうちの前記第2光源から発せられる第2光源ビームと、を前記偏向手段へ導く光学系手段をさらに備え、
前記光学系手段は、
前記第1光源ビームと前記第2光源ビームとの一方を透過し、当該第1光源ビームと当該第2光源ビームとの他方を反射する、特性を持つ特性平面を有する特性平面手段、および、
前記第1光源ビームと前記第2光源ビームとが、前記特性平面に対して互いに反対側から入射されるとともに、当該特性平面から互いに同じ方向へ出射されるように、当該第1光源ビームと当該第2光源ビームとの少なくとも一方を当該特性平面へ案内する案内手段を含み、
前記特性平面から出射された前記第1光源ビームと前記第2光源ビームとが前記偏向手段へ導かれる、請求項またはに記載の光走査装置。
【請求項5】
第1光ビームを発する第1発光素子、第2光ビームを発する第2発光素子、および、第3光ビームを発する第3発光素子を備え、さらに、
前記第1光ビームと前記第2光ビームと前記第3光ビームとのそれぞれが潜像担持体の被走査面を主走査方向へ走査するように、当該第1光ビームと当該第2光ビームと当該第3光ビームとのそれぞれを偏向する偏向手段、および、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのそれぞれの動作を個別に有効化しまたは無効化する発光制御手段を備え、
前記被走査面の副走査方向への移動速度は、第1速度と、当該第1速度よりも低速である第2速度と、のいずれかに選択的に制御され、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とは、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第2光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第1速度に応じた第1距離となるように配され、
前記第3発光素子は、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第3光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第2速度に応じた第2距離となるように配され、
前記発光制御手段は、前記被走査面の前記副走査方向への移動速度が前記第1速度であるときに、前記第1発光素子と前記第2発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、前記第3発光素子の動作を無効化し、当該被走査面の当該副走査方向への移動速度が前記第2速度であるときに、当該第1発光素子と当該第3発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、当該第2発光素子の動作を無効化し、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子は、それぞれ別個の光源に設けられる、光走査装置。
【請求項6】
前記第2速度は、前記第1速度の1/2であり、
前記第2距離は、前記第1距離の1/2である、請求項1からまでのいずれかに記載の光走査装置。
【請求項7】
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とは、前記副走査方向における前記被走査面上の前記第3光ビームの走査位置が前記第1光ビームの走査位置と前記第2光ビームの走査位置との中間位置となるように配される、請求項に記載の光走査装置。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれかに記載の光走査装置を備える、画像形成装置。
【請求項9】
第1発光素子から発せられる第1光ビームと第2発光素子から発せられる第2光ビームと第3発光素子から発せられる第3光ビームとのそれぞれが潜像担持体の被走査面を主走査方向へ走査するように、当該第1光ビームと当該第2光ビームと当該第3光ビームとのそれぞれを偏向する偏向ステップ、および
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのそれぞれの動作を個別に有効化しまたは無効化する発光制御ステップを含み、
前記被走査面の副走査方向への移動速度は、第1速度と、当該第1速度よりも低速である第2速度と、のいずれかに選択的に制御され、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とについて、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第2光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第1速度に応じた第1距離となるように配し、
前記第3発光素子について、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第3光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第2速度に応じた第2距離となるように配し、
前記発光制御ステップにおいて、前記被走査面の前記副走査方向への移動速度が前記第1速度であるときに、前記第1発光素子と前記第2発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、前記第3発光素子の動作を無効化し、当該被走査面の当該副走査方向への移動速度が前記第2速度であるときに、当該第1発光素子と当該第3発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、当該第2発光素子の動作を無効化し、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのうちの2つについては、1つの第1光源に設け、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのうちの残りの1つについては、前記第1光源とは別の第2光源に設ける、光走査方法。
【請求項10】
第1発光素子から発せられる第1光ビームと第2発光素子から発せられる第2光ビームと第3発光素子から発せられる第3光ビームとのそれぞれが潜像担持体の被走査面を主走査方向へ走査するように、当該第1光ビームと当該第2光ビームと当該第3光ビームとのそれぞれを偏向する偏向ステップ、および
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とのそれぞれの動作を個別に有効化しまたは無効化する発光制御ステップを含み、
前記被走査面の副走査方向への移動速度は、第1速度と、当該第1速度よりも低速である第2速度と、のいずれかに選択的に制御され、
前記第1発光素子と前記第2発光素子とについて、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第2光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第1速度に応じた第1距離となるように配し、
前記第3発光素子について、前記被走査面上の前記第1光ビームの走査位置と前記第3光ビームの走査位置との前記副走査方向における相互間距離が前記第2速度に応じた第2距離となるように配し、
前記発光制御ステップにおいて、前記被走査面の前記副走査方向への移動速度が前記第1速度であるときに、前記第1発光素子と前記第2発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、前記第3発光素子の動作を無効化し、当該被走査面の当該副走査方向への移動速度が前記第2速度であるときに、当該第1発光素子と当該第3発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、当該第2発光素子の動作を無効化し、
前記第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とについて、それぞれ別個の光源に設ける、光走査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に適用される、光走査装置および当該光走査装置を備える画像形成装置ならびに光走査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、画像信号に基づく画像を用紙などの画像記録媒体に形成するための画像形成処理が行われるが、その一過程として、潜像担持体の表面に当該画像信号に基づく潜像を形成するための露光処理が行われる。具体的には、光ビームを発する発光素子、たとえば当該光ビームとしてレーザ光を発するレーザダイオード、を有する光源が、画像信号に基づいて駆動される。この光源から発せられるレーザ光は、適宜の光学系要素を介して、潜像担持体の表面、たとえば概略円筒状の感光体ドラムの表面である感光面に、照射される。ここで、感光体ドラムは、その中心を軸(回転軸)として回転する。これにより、感光体ドラムの回転方向において、当該感光体ドラムの感光面に対するレーザ光の照射位置が移動され、言わば走査される。併せて、光学系要素の1つである偏向手段によって、たとえばポリゴンミラーによって、感光体ドラムの回転軸に沿う方向においても、当該感光体ドラムの感光面に対するレーザ光の照射位置が移動され、つまり走査される。また、感光体ドラムの感光面には、予め、詳しくは露光処理の前の過程として行われる帯電処理によって、静電気が付与される。この結果、感光体ドラムの感光面に画像信号に基づく2次元の静電気像である潜像が形成される。なお、感光体ドラムの回転軸に沿う方向は、主走査方向と呼ばれる。そして、感光体ドラムの回転方向は、副走査方向と呼ばれる。
【0003】
このような画像形成装置において、とりわけ露光処理を担う露光装置において、詳しくは光ビームを主走査方向および副走査方向のそれぞれに走査させる光走査装置において、当該露光処理により形成される潜像の解像度を切り替えることのできる技術が、いくつか提案されている。たとえば、特許文献1には、光源と偏向手段との間の光路に解像度切替用の光学素子が出し入れされることによって、第一の解像度と第二の解像度との切替が行われる技術が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-18078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、前述の解像度切替用の光学素子や、光源と偏向手段との間の光路に当該光学素子を出し入れするための駆動装置などが必要であり、その分、光走査装置の構成が複雑かつ高価になる。また、特許文献1には明記されていないが、副走査方向における解像度を上げるには、当該副走査方向における走査速度を低減する必要がある。このように副走査方向における走査速度が低減されると、露光処理の速度が低下し、ひいては当該露光処理を含む画像形成処理の速度、いわゆるプロセス速度が、低下する。
【0006】
そこで、本発明は、副走査方向における解像度を切り替えることが可能であるとともに、当該解像度を上げることによる露光処理速度の低下の度合を抑制することができ、しかも、これを比較的に簡素かつ廉価な構成で実現することができる、新規な光走査装置および当該光走査装置を備える画像形成装置ならびに光走査方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、光走査装置に係る第1の発明と、当該光走査装置を備える画像形成装置に係る第2の発明と、光走査方法に係る第3の発明とを含む。
【0008】
このうちの光走査装置に係る第1の発明は、第1発光素子、第2発光素子および3発光素子を備える。さらに、第1の発明は、偏向手段および発光制御手段を備える。第1発光素子は、第1光ビームを発する。第2発光素子は、第2光ビームを発する。第3発光素子は、第3光ビームを発する。そして、偏向手段は、第1光ビームと第2光ビームと第3光ビームとのそれぞれが潜像担持体の被走査面を主走査方向へ走査するように、当該第1光ビームと第2光ビームと第3光ビームとのそれぞれを偏向する。さらに、発光制御手段は、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とのそれぞれの動作を個別に有効化しまたは無効化する。ここで、潜像担持体の被走査面の副走査方向への移動速度は、第1速度と、当該第1速度よりも低速である第2速度と、のいずれかに選択的に制御される。そして、第1発光素子と第2発光素子とは、潜像担持体の被走査面上の第1光ビームの走査位置と第2光ビームの走査位置との副走査方向における相互間距離が、第1速度に応じた第1距離となるように、配される。併せて、第3発光素子は、潜像担持体の被走査面上の第1光ビームの走査位置と第3光ビームの走査位置との副走査方向における相互間距離が、第2速度に応じた第2距離となるように、配される。加えて、発光制御手段は、潜像担持体の被走査面の副走査方向への移動速度が第1速度であるときに、第1発光素子と第2発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、第3発光素子の動作を無効化する。これに対して、潜像担持体の被走査面の副走査方向への移動速度が第2速度であるときには、発光制御手段は、第1発光素子と第3発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、第2発光素子の動作を無効化する。
【0009】
その上で、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とのうちの2つは、1つの第1光源に設けられ。そして、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とのうちの残りの1つは、第1光源とは別の第2光源に設けられ
【0010】
なお、第1光源と第2光源との一方は、P波光源であってもよい。そして、第1光源と第2光源との他方は、S波光源であってもよい。
【0011】
併せて、第1光源と第2光源とは、主走査方向に沿う仮想平面において、隣接して設けられてもよい。
【0012】
さらに、光学系手段が、備えられてもよい。この光学系手段は、第1光ビームと第2光ビームと第3光ビームとのうちの第1光源から発せられる第1光源ビームと、当該第1光ビームと第2光ビームと第3光ビームとのうちの第2光源から発せられる第2光源ビームとを、偏向手段へ導く。このような光学系手段は、特性平面手段および案内手段を含む。特性平面手段は、特性平面を有する。この特性平面は、第1光源ビームと第2光源ビームとの一方を透過し、当該第1光源ビームと第2光源ビームとの他方を反射する、という光学的特性を持つ。そして、案内手段は、第1光源ビームと第2光源ビームとが、特性平面手段の特性平面に対して互いに反対側から入射されるとともに、当該特性平面から互いに同じ方向へ出射されるように、第1光源ビームと第2光源ビームとの少なくとも一方を特性平面へ案内する。その上で、特性平面手段の特性平面から出射された第1光源ビームと第2光源ビームとが、偏向手段へ導かれる。
【0013】
第1の発明の別の構成は、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とが、それぞれ別個の光源に設けられるものである
【0014】
述の第2速度は、第1速度の1/2であってもよい。この場合、第2距離は、第1距離の1/2とされる。
【0015】
またこのように、第2速度が第1速度の1/2とされるとともに、第2距離が第1距離の1/2とされる場合には、第1発光素子と前記第2発光素子と前記第3発光素子とは、次のように配されてもよい。すなわち、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とは、副走査方向における潜像担持体の被走査面上の第3光ビームの走査位置が、当該被走査面上の第1光ビームの走査位置と第2光ビームの走査位置との中間位置となるように、配されてもよい。
【0016】
本発明のうちの第2の発明に係る画像形成装置は、第1の発明に係る光走査装置を備える。このような画像形成装置としては、コピー機やプリンタ、複合機(MFP)などがある。
【0017】
本発明のうちの第3の発明に係る光走査方法は、偏向ステップおよび発光制御ステップを含む。偏向ステップでは、第1発光素子から発せられる第1光ビームと、第2発光素子から発せられる第2光ビームと、第3発光素子から発せられる第3光ビームと、のそれぞれが潜像担持体の被走査面を主走査方向へ走査するように、当該第1光ビームと第2光ビームと第3光ビームとのそれぞれを偏向する。そして、発光制御ステップでは、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とのそれぞれの動作を個別に有効化しまたは無効化する。ここで、潜像担持体の被走査面の副走査方向への移動速度は、第1速度と、当該第1速度よりも低速である第2速度と、のいずれかに選択的に制御される。そして、第1発光素子と第2発光素子とは、潜像担持体の被走査面上の第1光ビームの走査位置と第2光ビームの走査位置との副走査方向における相互間距離が、第1速度に応じた第1距離となるように、配される。併せて、第3発光素子は、潜像担持体の被走査面上の第1光ビームの走査位置と第3光ビームの走査位置との副走査方向における相互間距離が、第2速度に応じた第2距離となるように、配される。さらに、発光制御ステップにおいては、潜像担持体の被走査面の副走査方向への移動速度が第1速度であるときに、第1発光素子と第2発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、第3発光素子の動作を無効化する。これに対して、潜像担持体の被走査面の副走査方向への移動速度が第2速度であるときには、発光制御ステップにおいて、第1発光素子と第3発光素子とのそれぞれの動作を有効化するとともに、第2発光素子の動作を無効化する。その上で、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とのうちの2つについては、1つの第1光源に設ける。そして、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とのうちの残りの1つについては、第1光源とは別の第2光源に設ける。
また、第3の発明の別の構成は、第1発光素子と第2発光素子と第3発光素子とについて、それぞれ別個の光源に設けるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、副走査方向における解像度を切り替えることが可能であるとともに、当該解像度を上げることによる露光処理速度の低下度合を抑制することができ、しかも、これを比較的に簡素かつ廉価な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施例に係る複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施例における感光体ドラムを概略的に示す図である。
図3図3は、第1実施例における光走査装置の一部分の構成を上方から見た図である。
図4図4は、第1実施例における光走査装置の一部分の構成を斜め上方から見た図である。
図5図5は、第1実施例における光走査装置の一部分の構成および感光体ドラムの感光面に対する各レーザ光の照射状態を模式的に示す図である。
図6図6は、第1実施例における副走査方向の解像度が通常解像度である場合の光走査要領を説明するための図である。
図7図7は、第1実施例における副走査方向の解像度が高解像度である場合の光走査要領を説明するための図である。
図8図8は、第1実施例の比較対象である第1比較例における副走査方向の解像度が通常解像度である場合の光走査要領を説明するための図である。
図9図9は、第1比較例における副走査方向の解像度が高解像度である場合の光走査要領を説明するための図である。
図10図10は、第1実施例の別の比較対象である第2比較例における副走査方向の解像度が通常解像度である場合の光走査要領を説明するための図である。
図11図11は、第2比較例における副走査方向への走査速度を当該副走査方向の解像度が通常解像度であるときの1/2に低減した場合の光走査要領を説明するための図である。
図12図12は、第2比較例における副走査方向の解像度が高解像度である場合の光走査要領を説明するための図である。
図13図13は、本発明の第2実施例における光走査装置の一部分の構成および感光体ドラムの感光面に対する各レーザ光の照射状態を模式的に示す図である。
図14図14は、本発明の第3実施例における光走査装置の一部分の構成および感光体ドラムの感光面に対する各レーザ光の照射状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施例]
本発明の第1実施例について、図1に示される複合機10を例に挙げて説明する。
【0021】
本第1実施例に係る複合機10は、コピー機能、プリンタ機能、イメージスキャナ機能、ファクス機能などの複数の機能を有する。このため、複合機10は、画像読取部12、画像形成部14、制御部16、補助記憶部18、通信部20および操作表示部22を備える。これらは、互いに共通のバス30を介して接続される。
【0022】
画像読取部12は、画像読取手段の一例である。すなわち、画像読取部12は、不図示の原稿の画像を読み取って、当該原稿の画像に応じた2次元の読取画像データを出力する、画像読取処理を担う。このような画像読取部12は、不図示の原稿が載置される不図示の原稿台を備える。原稿台は、矩形平板状のガラスなどの透明硬質部材により形成される。この原稿台の下方に、不図示の光源、ミラー、レンズ、ラインセンサなどを含む画像読取ユニットと、当該画像読取ユニットによる画像読取位置を移動させるための不図示の駆動機構と、が設けられる。そして、原稿台の上方には、当該原稿台に載置された原稿を押さえるための不図示の原稿押さえカバーが設けられる。なお、原稿押さえカバーには、オプション装置である不図示の自動原稿送り装置(ADF)が設けられる場合がある。
【0023】
画像形成部14は、画像形成手段の一例である。すなわち、画像形成部14は、画像読取部12から出力される読取画像データなどの適宜の画像データに基づく画像を不図示の用紙などのシート状の画像記録媒体に形成する、画像形成処理を担う。この画像形成処理は、公知の電子写真方式により行われる。このため、画像形成部14は、潜像担持体の一例としての概略円筒状の感光体ドラム14aを備える。併せて、画像形成部14は、露光手段としての露光装置を備え、詳しくは光走査装置14bを含む露光装置を備える。さらに、画像形成部14は、不図示の帯電手段としての帯電装置、現像手段としての現像装置、転写手段としての転写装置、定着手段としての定着装置、クリーニング手段としてのクリーニング装置、除電手段としての除電装置などを備える。この画像形成部14による画像形成処理により画像が形成された後の画像記録媒体、言わば印刷物は、不図示の排紙トレイに排出される。なお、図1においては、図示を含む説明の便宜上、感光体ドラム14aおよび光走査装置14bが1つずつ記載されているが、これらは(光走査装置14bについては、当該光走査装置14bを含む露光装置は)実際には、カラーの画像形成処理の実現のために、たとえばCMYKカラーモデルの4色成分に対応して、4つずつ設けられる。また、帯電装置、現像装置、転写装置、定着装置、クリーニング装置、除電装置なども、それぞれ4つずつ設けられる。
【0024】
制御部16は、複合機10の全体的な制御を司る、制御手段の一例である。このため、制御部16は、制御実行手段としてのコンピュータ、たとえばCPU16a、を有する。併せて、制御部16は、CPU16aが直接的にアクセス可能な主記憶手段としての主記憶部16bを有する。主記憶部16bは、たとえば不図示のROMおよびRAMを含む。このうちのROMには、CPU16aの動作を制御するための制御プログラム、いわゆるファームウェアが、記憶される。そして、RAMは、CPU16aが制御プログラムに基づく処理を実行する際の作業領域やバッファ領域などを構成する。
【0025】
補助記憶部18は、補助記憶手段の一例である。この補助記憶部18には、前述の読取画像データなどの種々の画像データを含む種々のデータが適宜に記憶される。このような補助記憶部18は、たとえば不図示のハードディスクドライブを含む。また、補助記憶部18は、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性の半導体メモリを含む場合がある。
【0026】
通信部20は、通信手段の一例である。この通信部20は、不図示の通信網と接続されることで、当該通信網を介しての双方向通信を担う。ここで言う通信網としては、LANやインターネット、公衆交換電話網などがある。また、LANには、無線LAN、とりわけWi-Fi(登録商標)が、含まれる。
【0027】
操作表示部22は、いわゆる操作パネルであり、操作受付手段の一例としてのタッチパネル22aと、表示手段の一例としてのディスプレイ22bと、を有し、つまりタッチパネル22a付きのディスプレイ22bを有する。すなわち、タッチパネル22aは、ほぼ透明な矩形シート状部材であり、ディスプレイ22bは、概略矩形状の表示面を有する。そして、タッチパネル22aがディスプレイ22bの表示面に重なるように設けられることで、タッチパネル22a付きのディスプレイ22bが構成される。なお、タッチパネル22aは、たとえば静電容量方式のパネルであるが、これに限らず、電磁誘導方式、抵抗膜方式、赤外線方式などの他方式のパネルであってもよい。そして、ディスプレイ22bは、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)であるが、これに限らず、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの他方式のディスプレイであってもよい。また、操作表示部22は、タッチパネル22a以外に、不図示の押しボタンスイッチなどの適宜のハードウェアスイッチ手段を有する。併せて、操作表示部22は、ディスプレイ22b以外に、不図示の発光ダイオード(LED)などの適宜の発光手段を有する。
【0028】
さて、本第1実施例に係る複合機10によれば、とりわけ画像形成部14によれば、前述の如く電子写真方式による画像形成処理が行われる。すなわち、帯電装置による帯電処理が行われることで、感光体ドラム14aの表面である感光面に静電気が付与される。そして、光走査装置14bを含む露光装置による露光処理が行われることで、感光体ドラム14aの感光面に画像形成処理に供される画像データに基づく2次元の静電気像である潜像が形成される。さらに、現像装置による現像処理が行われることで、感光体ドラム14aの感光面の潜像にトナーが付着して、トナー像が形成される。そして、転写装置による転写処理が行われることで、感光体ドラム14aの感光面のトナー像が画像記録媒体に転写される。このトナー像が転写された画像記録媒体に対して、さらに定着装置による定着処理が施されることで、当該トナー像が画像記録媒体に定着される。これにより、画像記録媒体に画像が形成される。その後、クリーニング装置によるクリーニング処理が行われることで、感光体ドラム14aの感光面に残留しているトナーが取り除かれる。そして、除電装置による除電処理が行われることで、感光体ドラム14aの感光面に残留している静電気が除去される。
【0029】
ここで、感光体ドラム14aは、図2に示されるように、その中心を通る直線100を軸として回転し、たとえば矢印110で示される方向へ回転する。そして、光走査装置14bを含む露光装置による露光処理においては、後述する如く感光体ドラム14aの露光面に3つのレーザ光B1,B2およびCBが照射され、厳密には当該3つのレーザ光B1,B2およびCBのうちの2つが選択的に照射される。併せて、感光体ドラム14aの露光面に対する各レーザ光B1,B2およびCBの照射位置(レーザスポット)が、感光体ドラム14aの回転軸100に沿う方向へ、たとえば矢印120で示される方向へ、一定の速度で移動され、つまり走査される。なお、感光体ドラム14aが回転することにより、感光体ドラム14aの回転方向110においても、感光体ドラム14aの露光面に対する各レーザ光B1,B2およびCBの照射位置が移動され、つまり走査される。この感光体ドラム14aの回転軸100に沿う方向120は、主走査方向と定義される。そして、感光体ドラム14aの回転方向110は、副走査方向と定義される。また、本第1実施例においては、感光体ドラム14aの回転軸100は、たとえば水平方向に沿って延伸しており、つまりはそうなるように感光体ドラム14aが設けられる。
【0030】
光走査装置14bは、副走査方向における潜像の解像度を切り替えることが可能であり、たとえば当該解像度を600dpiという通常解像度と、1200dpiという高解像度との、2つの解像度に切り替えることが可能である。そして特に、副走査方向における解像度が1200dpiであるときの露光処理速度の低下度合を抑制するために、光走査装置14bは、図3および図4に示されるように、2つの光源としての2つのレーザダイオード202および204を有する。
【0031】
一方のレーザダイオード、言わば第1レーザダイオード202は、後述する如く(図5参照)第1発光素子および第2発光素子という2つの発光素子(発振素子)を有する、2ビーム型のレーザダイオードである。すなわち、第1レーザダイオード202は、第1発光素子202aから第1レーザ光B1を発するとともに、第2発光素子202bから第2レーザ光B2を発することが可能であり、つまり2つのレーザ光B1およびB2を発することが可能である。なお、第1レーザダイオード202は、たとえばP波光源である。ゆえに、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2は、いずれもP波(偏光)のレーザ光である。
【0032】
これに対して、他方のレーザダイオードである言わば第2レーザダイオード204は、後述する如く(図5参照)発光素子204aを1つのみ有する、1ビーム型のレーザダイオードである。この第2レーザダイオード204は、たとえばS波光源である。すなわち、第2レーザダイオード204が有する言わば第3発光素子204aから発せられる第3レーザ光CBは、S波(偏光)のレーザ光である。
【0033】
これらの第1レーザダイオード202および第2レーザダイオード204は、つまり第1発光素子202a、第2発光素子202bおよび第3発光素子204aは、不図示のレーザ駆動回路により駆動される。レーザ駆動回路は、画像形成処理に供される画像データに基づいて、第1発光素子202a、第2発光素子202bおよび第3発光素子204aを個別に駆動する。
【0034】
具体的には、たとえば副走査方向における解像度が600dpiのときには、つまりはそのように設定されているときには、レーザ駆動回路は、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bのみを駆動対象とし、言わば当該第1発光素子202aおよび第2発光素子202bそれぞれの動作を有効化する。そして、レーザ駆動回路は、第3発光素子204aを駆動対象とせず、つまり当該第3発光素子204aの動作を無効化する。その上で、レーザ駆動回路は、画像データに含まれるたとえば奇数ライン(行)のデータに基づいて、第1発光素子202aを駆動するとともに、当該画像データに含まれる偶数ラインのデータに基づいて、第2発光素子202bを駆動する。これにより、第1発光素子202aから画像データの奇数ラインのデータに基づく態様で第1レーザ光B1が発せられるとともに、第2発光素子202bから当該画像データの偶数ラインのデータに基づく態様で第2レーザ光B2が発せられる。これらの第1レーザ光B1および第2レーザ光B2は、水平方向に向けて発せられ、つまりはそうなるように第1レーザダイオード202が設けられる。なお、第3発光素子204aからは、第3レーザ光CBは発せられない。
【0035】
これに対して、副走査方向における解像度が1200dpiのときには、レーザ駆動回路は、第1発光素子202aおよび第3発光素子204aのみを駆動対象とし、つまり当該第1発光素子202aおよび第3発光素子204aそれぞれの動作を有効化する。そして、レーザ駆動回路は、第2発光素子202bを駆動対象とせず、つまり当該第2発光素子202bの動作を無効化する。その上で、レーザ駆動回路は、画像データに含まれるたとえば奇数ラインのデータに基づいて、第1発光素子202aを駆動するとともに、当該画像データに含まれる偶数ラインのデータに基づいて、第3発光素子204aを駆動する。これにより、第1発光素子202aから画像データの奇数ラインのデータに基づく態様で第1レーザ光B1が発せられるとともに、第3発光素子204aから当該画像データの偶数ラインのデータに基づく態様で第3レーザ光CBが発せられる。なお、第3レーザ光CBもまた、水平方向に向けて発せられ、つまりはそうなるように第2レーザダイオード204が設けられる。そして、第2発光素子202bからは、第2レーザ光B2は発せられない。
【0036】
第1レーザダイオード202(第1発光素子202aおよび第2発光素子202b)から発せられた第1レーザ光B1および第2レーザ光B2は、コリメートレンズ212により平行光(コリメート光)に補正された後、アパーチャ222を介して、キューブ型の偏光ビームスプリッタ(偏光プリズム)230に入射され、詳しくは当該偏光ビームスプリッタ230内の境界面(分離面)230aに入射される。より詳しくは、境界面230aは、水平方向に対して直角を成しており、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2は、当該境界面230aに対して45度の角度で入射され、つまりはそうなるように偏光ビームスプリッタ230が設けられる。
【0037】
一方、第2レーザダイオード204(第3発光素子204a)から発せられた第3レーザ光CBは、前述とは別のコリメートレンズ214により平行光に補正された後、前述とは別のアパーチャ224を介して、平面ミラー240に入射される。そして、平面ミラー240に入射された第3レーザ光CBは、当該平面ミラー240により反射された後、偏光ビームスプリッタ230の境界面230aに入射される。より詳しくは、平面ミラー240により反射された第3レーザ光CBは、水平方向に沿って進行し、つまりはそうなるように平面ミラー240が設けられる。そして、平面ミラー240により反射された第3レーザ光CBは、偏光ビームスプリッタ230の境界面230aに対して、第1レーザ光B1(および第2レーザ光B2)が入射される側とは反対側から、かつ、第1レーザ光B1の入射方向と直角を成すように、つまり第1レーザ光B1の入射角度と共役な角度で、入射される。
【0038】
偏光ビームスプリッタ230の境界面230aは、P波の第1レーザ光B1および第2レーザ光B2については、これを透過させる一方、S波の第3レーザ光CBについては、これを反射させる、光学的特性を有する。したがって、境界面230aに入射された第1レーザ光B1および第2レーザ光B2は、当該境界面230aを透過する。これに対して、境界面230aに入射された第3レーザ光CBは、当該境界面230aにより反射された後、第1レーザ光B1(および第2レーザ光B2)と同じ方向に向かって出射され、進行する。すなわち、偏光ビームスプリッタ230は、副走査方向における解像度が1200dpiであるときに、第1レーザ光B1と第3レーザ光CBとを合成する合成手段として機能する。
【0039】
偏光ビームスプリッタ230の境界面230aを透過した第1レーザ光B1および第2レーザ光B2、ならびに、当該境界面230aにより反射された第3レーザ光CBは、シリンドリカルレンズ245を介して、前述とは別の平面ミラー250に入射される。この平面ミラー250に入射された第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBは、当該平面ミラー250により反射された後、偏向手段の一例としてのポリゴンミラー260に入射され、厳密にはポリゴンミラー260の反射面260aに入射される。なお、平面ミラー250により反射された第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBもまた、水平方向に沿って進行し、つまりはそうなるように平面ミラー250が設けられる。
【0040】
ポリゴンミラー260は、たとえば6つの反射面260a,260a,…を有する6面体ミラーであり、その中心Oを通る不図示の直線を軸として回転し、たとえば矢印262で示される方向へ回転する。このポリゴンミラー260の回転軸は、垂直方向に沿って延伸しており、つまりはそうなるようにポリゴンミラー260が設けられる。したがって、前述の平面ミラー250により反射された第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBは、ポリゴンミラー260の各反射面260a,260a,…に順次入射されて、当該各反射面260a,260a,…により順次反射される。そして、それぞれの反射面260aによる第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBの反射方向が、水平方向に沿って連続的に変化され、言わば偏向される。
【0041】
ポリゴンミラー260のそれぞれの反射面260aにより反射された第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBは、fθレンズ270を介して、感光体ドラム14aの露光面に照射される。そして、感光体ドラム14aの露光面に照射された第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBが前述の如く偏向されることにより、当該感光体ドラム14aの露光面に対する第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBそれぞれの照射位置が感光体ドラム14aの回転軸100に沿う方向120へ移動し、つまり主走査方向へ走査される。併せて、感光体ドラム14aが前述の如く回転することにより、感光体ドラム14aの回転方向110においても、つまり副走査方向においても、感光体ドラム14aの露光面に対する第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBそれぞれの照射位置が移動され、つまり走査される。
【0042】
図5は、とりわけ図5における中央の図は、図3における一部分の構成を模式的に示す図である。そして、図5における左下の2点鎖線の矩形枠αで囲まれた図は、第1レーザダイオード202の第1発光素子202aおよび第2発光素子202bを、厳密には第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの各発光点を、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2が発せられる方向とは逆の方向(図5の中央の図における下方側)から見た図である。
【0043】
この矩形枠αで囲まれた図から分かるように、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bは、たとえば副走査方向に対応する垂直方向に並ぶのではなく、斜め方向に並ぶように配され、つまりはそうなるように第1レーザダイオード202が設けられる。これは、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの相互間距離(互いの中心間の最短距離)が第1レーザダイオード202として採用される部品の仕様により決まっている一方、後述する如く感光体ドラム14aの感光面に対する第1レーザ光B1の照射位置(走査位置)と当該感光面に対する第2レーザ光B2の照射位置との副走査方向における相互間距離Daを所定の距離とする必要があるためである。なお、第1レーザダイオード202は、概略円筒形の筐体を有する、いわゆるCANパッケージ型のものであり、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bは、当該筐体の中心に関して対称的に配される。
【0044】
また、図5における右下の2点鎖線の矩形枠βで囲まれた図は、第2レーザダイオード204の第3発光素子204aを、厳密には第3発光素子204aの発光点を、第3レーザ光CBが発せられる方向とは逆の方向(図5の中央の図における下方側)から見た図である。なお、第2レーザダイオード204もまた、CANパッケージ型のものであり、第3発光素子204aは、当該第2レーザダイオード204の筐体の中心に配される。
【0045】
さらに、図5における上部の2点鎖線の矩形枠γで囲まれた図は、感光体ドラム14aの感光面(被走査面)に対する第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBそれぞれの照射状態を模式的に示す図である。この矩形枠γで囲まれた図における左右方向は、主走査方向に対応し、当該矩形枠γで囲まれた図における上下方向は、副走査方向に対応する。
【0046】
この矩形枠γで囲まれた図において、たとえば副走査方向における解像度が600dpiのときの露光処理に供される第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置に注目すると、当該各照射位置は、それぞれの出射源である第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの配置と同様、斜め方向に並んだ状態となる。そして、副走査方向において、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置は、Daという距離を置く。この距離Daは、600dpiという副走査方向における解像度に応じた値であり、つまり約42.3μm(=25.4mm/600)である。この副走査方向における第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置の相互間距離Daを約42.3μmという所定の距離とするために、前述の如く第1発光素子202aおよび第2発光素子202bが斜め方向に並ぶように配される。
【0047】
なお、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置の相互の関係は、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの配置の関係と逆になる。すなわち、矩形枠αで囲まれた図においては、第1発光素子202aが第2発光素子202bの左下方に配されているのに対して、矩形枠γで囲まれた図においては、第1レーザ光B1の照射位置が第2レーザ光B2の照射位置の右上方に存在する。これは、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の光路に介在するコリメートレンズ212の入射側と出射側とで、当該第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の光路が入れ替わるからである。
【0048】
これに対して、副走査方向における解像度が1200dpiのときの露光処理に供される第1レーザ光B1および第3レーザ光CBの各照射位置、とりわけ第3レーザ光CBの照射位置、に注目すると、当該第3レーザ光CBの照射位置は、第1レーザ光B1の照射位置と第2レーザ光B2の照射位置との並びの中間位置にある。すなわち、第3レーザ光CBの照射位置は、主走査方向および副走査方向のいずれにおいても、第1レーザ光B1の照射位置と第2レーザ光B2の照射位置と中間位置にある。
言い換えれば、そうなるように第3レーザ光CBの出射源である第3発光素子204aを有する第2レーザダイオード204が設けられる。
したがって、第1レーザ光B1および第3レーザ光CBの各照射位置の副走査方向における相互間距離Dbは、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置の副走査方向における相互間距離Daの1/2となり、つまり約21.2μm(=Da/2)となる。この約21.2μmという相互間距離Dbは、1200dpiという副走査方向における解像度に応じた値(=25.4mm/1200)である。
【0049】
このような構成の光走査装置14bによれば、たとえば副走査方向における解像度が600dpiのときには、前述の如く第1レーザ光B1および第2レーザ光B2が露光処理に供される。そして、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aにより第1レーザ光B1および第2レーザ光B2が主走査方向へ1回走査されることで、2ライン分の潜像が形成される。併せて、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2が主走査方向へ1回走査されるたびに、感光体ドラム14aの感光面が副走査方向へ2ライン分、つまり約84.7μm(=約42.3μm×2)、移動する。言い換えれば、そのような速度で感光体ドラム14aが回転する。これが繰り返されることにより、副走査方向における解像度が600dpiの潜像が形成される。なお、前述の如く第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置が斜め方向に並んだ状態にあることから、主走査方向において、当該第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置にズレが生ずる。このズレによる影響は、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bそれぞれの駆動タイミングにより補正される。
【0050】
一方、副走査方向における解像度が1200dpiのときには、第1レーザ光B1および第3レーザ光CBが露光処理に供される。そして、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aにより第1レーザ光B1および第3レーザ光CBが主走査方向へ1回走査されることで、2ライン分の潜像が形成される。併せて、第1レーザ光B1および第3レーザ光CBが主走査方向へ1回走査されるたびに、感光体ドラム14aの感光面が副走査方向へ2ライン分、つまり約42.3μm(=約21.2μm×2)、移動する。言い換えれば、そのような速度で感光体ドラム14aが回転する。これが繰り返されることにより、副走査方向における解像度が1200dpiの潜像が形成される。すなわち、副走査方向における解像度が1200dpiのときは、副走査方向における解像度が600dpiのときと比べて、副走査方向への走査速度が1/2に低減される。言い換えれば、副走査方向における解像度が1200dpiのときの感光体ドラム14aの回転速度は、副走査方向における解像度が600dpiのときの感光体ドラム14aの回転速度の1/2である。
なお、第1レーザ光B1および第3レーザ光CBの各照射位置もまた、斜め方向に並んだ状態にあり、つまり主走査方向において、当該第1レーザ光B1および第3レーザ光CBの各照射位置にズレが生ずる。このズレによる影響は、第1発光素子202aおよび第3発光素子204aそれぞれの駆動タイミングにより補正される。
【0051】
なお、主走査方向における解像度については、副走査方向における解像度に拘らず一定であり、たとえば600dpである。言い換えれば、ポリゴンミラー260の回転速度は、つまり主走査方向への走査速度は、副走査方向における解像度に拘らず一定である。
【0052】
このような光走査装置14bを含む露光装置による露光処理の要領を図で表現すると、とりわけ副走査方向における解像度が600dpiという通常解像度であるときの露光要領を図で表現すると、たとえば図6のようになる。この図6は、ポリゴンミラー260の各反射面260a,260a,…と、それぞれの反射面260aにより反射された第1レーザ光B1および第2レーザ光B2とが、露出処理にどのように関係するのかを、主走査方向および副走査方向を絡めて概念的に示す。なお、図6におけるポリゴンミラー260の各反射面260a,260a,…に付されている「1」~「6」の数値は、当該各反射面260a,260a,…の番号を表す。
【0053】
この図6に示されるように、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aにより反射された第1レーザ光B1および第2レーザ光B2が主走査方向へ1回走査されることで、2ライン分の主走査ライン300および400が形成され、つまり2ライン分の潜像が形成される。そして、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2が主走査方向へ1回走査されるたびに、つまり第1レーザ光B1および第2レーザ光B2を反射させる反射面260aが切り替わるたびに、主走査ライン300および400の位置が副走査方向へ2ライン分、詳しくは約84.7μm(=2・Da)というピッチで、移動する。これが繰り返されることにより、副走査方向における解像度が600dpiの潜像が形成される。
【0054】
なお、ポリゴンミラー260のそれぞれの反射面260aの副走査方向における寸法Dcは、主走査方向への走査の繰り返し周期に対応し、つまりポリゴンミラー260が60度(=360度/6)回転するのに要する時間に対応する。前述したように、ポリゴンミラー260の回転速度は一定であることから、主走査方向への走査の繰り返し周期(Dc)もまた一定である。
【0055】
そして、図6における第1レーザ光B1による主走査ライン300を構成する複数の矩形状の要素302,302,…のそれぞれは、1画素分の潜像を表し、厳密には当該1画素分の潜像を形成するための第1レーザ光B1の照射位置を表す。このことは、第2レーザ光B2による主走査ライン400を構成する複数の矩形状要素402,402,…についても、同様である。また、これらの矩形状要素302,302,…(あるいは402,402,…)の主走査方向における間隔Deは、600dpiという主走査方向における解像度に応じた値であり、つまり約42.3μmである。
【0056】
さらに、図6において、500という符号が付された破線は、第3発光素子204aの動作が有効化されていると仮定した場合の第3レーザ光CBの主走査ラインを表す。加えて、図6においては、各反射面260a,260a,…間で、主走査方向における主走査ライン300および400の位置がずれているが、これは、当該図6の見易さを考慮しての意図的な措置である。
【0057】
これに対して、副走査方向における解像度が1200dpiという高解像度であるときの露光要領を図で表現すると、たとえば図7のようになる。前述したように、副走査方向における解像度が1200dpiであるときには、第1レーザ光B1および第3レーザ光CBが露光処理に供される。そして、第2レーザ光B2の出射源である第2発光素子202bの動作は、無効化される。なお、図7においては、第2発光素子202bの動作が有効化されていると仮定した場合の第2レーザ光B2の主走査ライン400を破線で示す。
【0058】
この図7に示されるように、副走査方向における解像度が1200dpiであるときには、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aにより反射された第1レーザ光B1および第3レーザ光CBが主走査方向へ1回走査されることで、2ライン分の主走査ライン300および500が形成され、つまり2ライン分の潜像が形成される。そして、第1レーザ光B1および第3レーザ光CBが主走査方向へ1回走査されるたびに、つまり第1レーザ光B1および第3レーザ光CBを反射させる反射面260aが切り替わるたびに、主走査ライン300および500の位置が副走査方向へ2ライン分、詳しくは約42.3μm(=2・Db)というピッチで、移動する。これが繰り返されることにより、副走査方向における解像度が1200dpiの潜像が形成される。
【0059】
なお、図7における第3レーザ光CBによる主走査ライン500を構成する複数の矩形状要素502,502,…のそれぞれもまた、1画素分の潜像を表し、厳密には当該1画素分の潜像を形成するための第3レーザ光CBの照射位置を表す。そして、図7においても、その見易さを考慮して、各反射面260a,260a,…間で、主走査方向における主走査ライン300および500の位置を意図的にずらしている。
【0060】
本第1実施例における光走査装置14bの優越性を説明するために、たとえば次のような第1比較例を仮想する。
【0061】
すなわち、光源として1ビーム型のレーザダイオードを1つのみ設け、副走査方向における解像度を600dpiと1200dpiとの2つの解像度に切り替える構成を、仮想する。これ以外は、とりわけポリゴンミラー260については、本第1実施例におけるのと同様のものを採用するものとする。
【0062】
このような第1比較例において、たとえば副走査方向における解像度が600dpiであるときの露光要領を図で表現すると、図8のようになる。この図8に示されるように、光源として1ビーム型のレーザダイオードが1つのみ設けられる構成においては、つまり当該レーザダイオードから1つのレーザ光LBのみが発せられる構成においては、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、主走査ライン600が1ライン分のみ形成される。そして、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、つまりレーザ光LBを反射させる反射面260aが切り替わるたびに、主走査ライン600の位置が副走査方向へ1ライン分、詳しくは約42.3μmというピッチDf(=Da)で、移動する。なお、図8における主走査ライン600を構成する複数の矩形状要素602,602,…のそれぞれは、1画素分の潜像を形成するためのレーザ光LBの照射位置を表す。
【0063】
これに対して、本第1実施例によれば、前述の如く副走査方向における解像度が600dpiであるときには(図6参照)、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、2ライン分の主走査ライン300および400が形成される。そして、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、主走査ライン300および400の位置が副走査方向へ2ライン分、詳しくは約84.7μmというピッチ(2・Da)で、移動する。
【0064】
要するに、本第1実施例によれば、第1比較例と比べて、副走査方向における解像度が600dpiであるときの当該副走査方向への走査速度が2倍となる。ゆえに、本第1実施例によれば、第1比較例と比べて、副走査方向における解像度が600dpiであるときの露光処理の速度を2倍に上げることができ、ひいては当該露光処理を含む画像形成処理の速度、いわゆるプロセス速度を、2倍に上げることができる。
【0065】
また、第1比較例において、副走査方向における解像度が1200dpiであるときの露光要領を図で表現すると、図9のようになる。この図9に示されるように、副走査方向における解像度が1200dpiであるときも、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、主走査ライン600が1ライン分のみ形成される。そして、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、主走査ライン600の位置が副走査方向へ1ライン分、詳しくは約21.2μmというピッチDg(=Db)で、移動する。
【0066】
これに対して、本第1実施例によれば、前述の如く副走査方向における解像度が1200dpiであるときには(図7参照)、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、2ライン分の主走査ライン300および500が形成される。そして、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、主走査ライン300および500の位置が副走査方向へ2ライン分、詳しくは約42.3μmというピッチ(2・Db)で、移動する。
【0067】
要するに、副走査方向における解像度が1200dpiであるときにも、本第1実施例によれば、第1比較例と比べて、当該副走査方向への走査速度が2倍となる。ゆえに、本第1実施例によれば、第1比較例と比べて、副走査方向における解像度が1200dpiであるときの露光処理速度を2倍に上げることができ、ひいてはプロセス速度を2倍に上げることができる。
【0068】
さらに、本第1実施例の別の比較対象として、たとえば次のような第2比較例を仮想する。
【0069】
すなわち、光源として2ビーム型のレーザダイオードを1つのみ設け、副走査方向における解像度を600dpiと1200dpiとの2つの解像度に切り替える構成を、仮想する。これ以外は、とりわけポリゴンミラー260については、本第1実施例におけるのと同様のものを採用するものとする。
【0070】
この第2比較例において、たとえば副走査方向における解像度が600dpiであるときの露光要領を図で表現すると、図10のようになる。この図10に示されるように、光源として2ビーム型のレーザダイオードが1つのみ設けられる構成においては、つまり当該レーザダイオードから2つのレーザ光B1’およびB2’が発せられる構成においては、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、2ライン分の主走査ライン700および800が形成される。そして、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、つまり2つのレーザ光B1’およびB2’を反射させる反射面260aが切り替わるたびに、主走査ライン700および800の位置が副走査方向へ2ライン分、詳しくは約84.7μmというピッチDh(=2.Da)で、移動する。なお、図10における一方のレーザ光B1’による主走査ライン700を構成する複数の矩形状要素702,702,…のそれぞれは、1画素分の潜像を形成するための当該レーザ光B2’の照射位置を表す。このことは、他方のレーザ光B1’による主走査ライン800を構成する複数の矩形状要素802,802,…についても、同様である。
【0071】
要するに、副走査方向における解像度が600dpiであるときには、第2比較例によっても、本第1実施例と同等の露光処理速度が得られ、ひいては本第1実施例と同等のプロセス速度が得られる。
【0072】
ただし、第2比較例において、副走査方向における解像度を1200dpiにするには、当該副走査方向における解像度が600dpiのときと比べて、副走査方向への走査速度を1/4にまで低減する必要がある。これに対して、本第1実施例によれば、前述の如く副走査方向における解像度が1200dpiであるときの当該副走査方向への走査速度は、副走査方向における解像度が600dpiであるときの1/2である。
【0073】
たとえば、第2比較例において、単に副走査方向への走査速度を当該副走査方向における解像度が600dpiであるときの1/2に低減する、とする。このときの露光要領を図で表現すると、図11のようになる。この図11に示されるように、単に副走査方向への走査速度を当該副走査方向における解像度が600dpiであるときの1/2に低減した場合は、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、2ライン分の主走査ライン700および800が形成される。その一方で、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、主走査ライン700および800の位置は、副走査方向へ1ライン分のみ、つまり約42.3μmというピッチDi(=Da)で、移動する。この結果、2つのレーザ光B1’およびB2’の各照射位置が互いに重複することになる。ゆえに、2つのレーザ光B1’およびB2’のいずれかの出射源の動作を無効化する必要がある。なお、図11は、レーザ光B2’の出射源の動作が無効化された状態、つまり当該レーザ光B2’が発せられない状態を、示す。そうすると、図11に示される露光要領では、副走査方向における解像度が600dpiとなるだけであり、つまりは図8に示される露光要領を呈する第1比較例と何ら変わらない。これでは、光源として2ビーム型のレーザダイオードを採用することが、全く無意味となる。
【0074】
したがって、第2比較例において、副走査方向における解像度を1200dpiにするには、前述の如く副走査方向への走査速度を当該副走査方向における解像度が600dpiのときの1/4にまで低減する必要がある。このときの露光要領を図で表現すると、図12のようになる。この図12に示されるように、副走査方向への走査速度を当該副走査方向における解像度が600dpiであるときの1/4に低減した場合もまた、ポリゴンミラー260の或る1つの反射面260aによる主走査方向への1回の走査によって、2ライン分の主走査ライン700および800が形成される。そして、主走査方向への1回の走査が行われるたびに、主走査ライン700および800の位置が副走査方向へ1ライン分、つまり約21.2μmというピッチDj(=Db)で、移動する。併せて、2つのレーザ光B1’およびB2’の各照射位置が互いに重複するため、これら2つのレーザ光B1’およびB2’のいずれかの出射源の動作を無効化し、たとえばレーザ光B2’の出射源の動作を無効化する。これにより、副走査方向における解像度が1200dpiという高解像度での露光処理が実現される。
【0075】
このように第2比較例において、副走査方向における解像度を1200dpiにするには、当該副走査方向における解像度が600dpiのときと比べて、副走査方向への走査速度を1/4にまで低減する必要がある。これに対して、本第1実施例によれば、前述の如く副走査方向における解像度が1200dpiであるときの当該副走査方向への走査速度は、副走査方向における解像度が600dpiであるときの1/2である。要するに、本第1実施例によれば、副走査方向における解像度が1200dpiという高解像度であるときに、第2比較例と比べて、副走査方向への走査速度の低減度合を抑制することができ、換言すれば露光処理速度の低下度合を抑制することができ、ひいてはプロセス速度の低下度合を抑制することができる。
【0076】
以上の説明から分かるように、本第1実施例によれば、副走査方向における解像度を、600dpiという通常解像度と、1200dpiという高解像度との、2つの解像度に切り替えることが可能であるとともに、当該解像度が1200dpiであるときの露光処理速度の低下度合を抑制することができる。しかも、本第1実施例によれば、前述の特許文献1に開示された技術のような解像度切替用の光学素子や当該光学素子を出し入れするための駆動装置などが不要であり、また、2ビーム型のレーザダイオードよりも多数の発光素子を有する光源を採用する必要もない。すなわち、本第1実施例によれは、副走査方向における解像度を上げることによる露光処理速度の低下度合を抑制することができるとともに、これを比較的に簡素かつ廉価な構成で実現することができる。
【0077】
なお、本第1実施例においては、第1発光素子202a、第2発光素子202bおよび第3発光素子204aそれぞれの動作が、不図示のレーザ駆動回路により個別に有効化または無効化されるが、当該レーザ駆動回路は、CPU16aにより制御される。このようなレーザ駆動回路の制御を担うCPU16aは、厳密には当該レーザ駆動回路とCPU16aとの組合せの構成は、本発明に係る発光制御手段の一例である。併せて、感光体ドラム14aの回転速度についても、CPU16aがその制御を担うが、このような感光体ドラム14aの回転速度の制御を担うCPU16aは、言わば速度制御手段としても機能する。
【0078】
また、本第1実施例において、副走査方向における解像度が600dpiのときの当該副走査方向への感光体ドラム14aの感光面の移動速度は、本発明に係る第1速度の一例である。そして、副走査方向における解像度が1200dpiのときの当該副走査方向への感光体ドラム14aの感光面の移動速度は、本発明に係る第2速度の一例である。
【0079】
さらに、感光体ドラム14aの感光面に対する第1レーザ光B1および第2レーザ光B2の各照射位置の副走査方向における相互間距離Daは、つまり約42.3μmという値は、本発明に係る第1距離の一例である。そして、感光体ドラム14aの感光面に対する第1レーザ光B1および第3レーザ光CBの各照射位置の副走査方向における相互間距離Dbは、つまり約21.2μmという値は、本発明に係る第2距離の一例である。
【0080】
加えて、第1レーザダイオード202は、本発明に係る第1光源の一例である。そして、第1レーザダイオード202(第1発光素子202aおよび第2発光素子202b)から発せられる第1レーザ光B1および第2レーザ光B2は、本発明に係る第1光源ビームの一例である。併せて、第2レーザダイオード204は、本発明に係る第2光源の一例である。そして、第2レーザダイオード204(第3発光素子204a)から発せられる第3レーザ光CBは、本発明に係る第2光源ビームの一例である。
【0081】
さらに、偏向ビームスプリッタ230は、本発明に係る特性平面手段の一例である。そして、偏向ビームスプリッタ230の境界面230aは、本発明に係る特性平面の一例である。加えて、平面ミラー240は、本発明に係る案内手段の一例である。すなわち、偏向ビームスプリッタ230および平面ミラー240は、本発明に係る光学系手段の一例を構成する。別の平面ミラー250もまた、本発明に係る光学系手段の一例を構成する。
【0082】
本第1実施例においては、第1レーザダイオード202がP波光源とされ、第2レーザダイオード204がS波光源とされたが、これらは互いに逆であってもよい。すなわち、第1レーザダイオード202がS波光源とされ、第2レーザダイオード204がP波光源とされてもよい。この場合は、偏光ビームスプリッタ230として、本第1実施例におけるのとは逆の光学的特性を有するものが採用される。すなわち、偏光ビームスプリッタ230として、S波を透過させ、P波を反射させる、という光学的特性を有するものが採用される。
【0083】
また、第1レーザダイオード202に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの一方と、第3発光素子204aと、が設けられてもよい。そして、第2レーザダイオード204に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの他方が設けられてもよい。これとは逆に、第2レーザダイオード204に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの一方と、第3発光素子204aと、が設けられてもよい。そして、第1レーザダイオード202に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの他方が設けられてもよい。いずれの場合も、偏光ビームスプリッタ230として、適宜の光学的特性を有するものが採用される。
【0084】
さらに、本第1実施例においては、第1レーザダイオード202および第2レーザダイオード204が、水平方向に沿う同一平面上に隣接して配され、換言すれば主走査方向に沿う仮想的な平面上に隣接して配される。このことは、第1レーザダイオード202および第2レーザダイオード204の取り付けにおいて、とりわけ両者の取り付け位置や向きの調整において、極めて有益である。
【0085】
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例について、説明する。
【0086】
本第2実施例においては、第1実施例と比較して、図13に示されるように、第1レーザダイオード202および第2レーザダイオード204の位置が入れ替えられる。併せて、偏光ビームスプリッタ230として、第1実施例におけるのとは逆の光学的特性を有するものが、つまりS波を透過させ、P波を反射させる、という光学的特性を有するものが、採用される。なお、図13においては、第1レーザダイオード202側のコリメートレンズ212およびアパーチャ222と、第2レーザダイオード204側のコリメートレンズ214およびアパーチャ224と、についても、入れ替えられているが、これらが同じ仕様のものである場合には、入れ替えられなくてもよい。本第2実施例におけるこれ以外の構成は、第1実施例と同様である。
【0087】
このような本第2実施例によっても、第1実施例と同様の作用および効果を奏する。すなわち、本第2実施例によっても、副走査方向における解像度を上げることによる露光処理速度の低下度合を抑制することができるとともに、これを比較的に簡素かつ廉価な構成で実現することができる。
【0088】
なお、本第2実施例においても、第1レーザダイオード202がS波光源とされ、第2レーザダイオード204がP波光源とされてもよい。この場合は、偏光ビームスプリッタ230として、P波を透過させ、S波を反射させる、という光学的特性を有するものが採用される。
【0089】
また、第1レーザダイオード202に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの一方と、第3発光素子204aと、が設けられてもよい。そして、第2レーザダイオード204に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの他方が設けられてもよい。これとは逆に、第2レーザダイオード204に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの一方と、第3発光素子204aと、が設けられてもよい。そして、第1レーザダイオード202に、第1発光素子202aおよび第2発光素子202bの他方が設けられてもよい。いずれの場合も、偏光ビームスプリッタ230として、適宜の光学的特性を有するものが採用される。
【0090】
[第3実施例]
次に、本発明の第3実施例について、説明する。
【0091】
本第3実施例においては、図14に示されるように、たとえば第2実施例における第1レーザダイオード202に代えて、1ビーム型の2つのレーザダイオード、言わば第3レーザダイオード206および第4レーザダイオード208が、設けられる。第3レーザダイオード206は、1ビーム型のP波光源であり、つまりP波のレーザ光を発する発光素子206aを有する。第4レーザダイオード208もまた、1ビーム型のP波光源であり、つまりP波のレーザ光を発する発光素子208aを有する。そして、第3レーザダイオード206が有する発光素子206aから発せられるレーザ光が、第1レーザ光B1として取り扱われるとともに、第4レーザダイオード208が有する発光素子208aから発せられるレーザ光が、第2レーザ光B2として取り扱われる。併せて、第3レーザダイオード206に対応して、コリメートレンズ216およびアパーチャ226が設けられるとともに、第4レーザダイオード208に対応して、コリメートレンズ216およびアパーチャ226が設けられる。
【0092】
加えて、第2レーザ光B2については、ハーフミラー280により反射された後、偏光ビームスプリッタ230の境界面230aに入射され、つまりはそうなるようにハーフミラー280が設けられる。そして、第1レーザ光B1については、平面ミラー(全反射ミラー)290により反射された後、ハーフミラー280を介して、偏光ビームスプリッタ230の境界面230aに入射され、つまりはそうなるように平面ミラー290が設けられる。また、ハーフミラー280が介在することに伴い、第1レーザ光B1の出射源である第3レーザダイオード206(発光素子206a)および第2レーザ光B2の出射源である第4レーザダイオード208(発光素子208a)それぞれの出力が適宜に増大される。
【0093】
なお、二点鎖線の矩形枠δで囲まれた図は、第3レーザダイオード206の発光素子206aを、厳密には当該発光素子206aの発光点を、第1レーザ光B1が発せられる方向とは逆の方向(図14の中央の図における下方側)から見た図である。そして、別の二点鎖線の矩形枠εで囲まれた図は、第4レーザダイオード208の発光素子208aを、厳密には当該発光素子208aの発光点を、第2レーザ光B2が発せられる方向とは逆の方向(図14の中央の図における下方側)から見た図である。本第3実施例におけるこれ以外の構成は、第2実施例と同様であり、つまり第1実施例と同様である。
【0094】
このような本第3実施例によっても、つまり第1レーザ光B1、第2レーザ光B2および第3レーザ光CBが、第3レーザダイオード206、第4レーザダイオード208および第2レーザダイオード204というそれぞれ別個の光源から発せられる構成の、本第3実施例によっても、第1実施例と同様の作用および効果を奏する。すなわち、本第3実施例によっても、副走査方向における解像度を上げることによる露光処理速度の低下度合を抑制することができるとともに、これを比較的に簡素かつ廉価な構成で実現することができる。
【0095】
なお、本第3実施例においても、P波とS波との関係が逆であってもよい。すなわち、第1レーザ光B1および第2レーザ光B2がS波とされ、第3レーザ光CBがP波とされてもよい。この場合は、偏光ビームスプリッタ230として、P波を透過させ、S波を反射させる、という光学的特性を有するものが採用される。
【0096】
また、第2レーザダイオード204、第3レーザダイオード206および第4レーザダイオード208の位置が適宜に入れ替えられてもよい。この場合も、偏光ビームスプリッタ230として、適宜の光学的特性を有するものが採用される。
【0097】
[その他の適用例]
以上の各実施例は、本発明の具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。これら各実施例以外の局面にも、本発明を適用することができる。
【0098】
たとえば、偏光ビームスプリッタ230については、キューブ型のものに限らず、平面型などの他の形状のものであってもよい。そして、ポリゴンミラー260については、6面体ミラーに限らず、6面以外の面数の多面体ミラーが採用されてもよい。また、ポリゴンミラー260に代えて、ガルバノスキャナなどの他方式の偏向手段が採用されてもよい。加えて、ポリゴンミラー260を含む光学系200の構成は、本第1実施例で説明した構成に限らない。
【0099】
さらに、副走査方向における解像度については、600dpiという通常解像度と、1200dpiという高解像度と、を例示したが、これらの解像度に限らない。極端には、2つの解像度の比率について、600dpiおよび1200dpiというような1対2の関係ではなく、それ以外の関係であってもよい。
【0100】
加えて、潜像担持体として、円筒状の感光体ドラム14aではなく、感光体ベルトなどの平面状(無端帯状)のものが採用される構成にも、本発明を適用することができる。
【0101】
そして、本発明は、複合機10に限らず、コピー機やプリンタなどの当該複合機10以外の画像形成装置にも、適用することができる。
【0102】
また、本発明は、光走査装置として提供することもできるし、光走査方法として提供することもできる。
【符号の説明】
【0103】
10 … 複合機
14 … 画像形成部
14a … 感光体ドラム
14b … 光走査装置
16 … 制御部
16a … CPU
200 … 光学系
202 … 第1レーザダイオード
202a … 第1発光素子
202b … 第2発光素子
204 … 第2レーザダイオード
204a … 第3発光素子
206 … 第3レーザダイオード
206a … 発光素子
208 … 第4レーザダイオード
208a … 発光素子
B1 … 第1レーザ光
B2 … 第2レーザ光
CB … 第3レーザ光
Da,Db … 相互間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14