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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】排気ユニット
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/08 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
F01N1/08 K
F01N1/08 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021014518
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117812
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田原 大地
(72)【発明者】
【氏名】近藤 琢也
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-141733(JP,A)
【文献】特開2019-127926(JP,A)
【文献】特開平8-42336(JP,A)
【文献】特開昭57-86516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排気ガスを通過させる排気ユニットであって、
導入口から排気ガスが導入され、排出口から前記排気ガスが排出される筐体と、
前記筐体を構成する第1壁部と第2壁部との間に挟まれ、第1端部が前記第1壁部側に位置し、第2端部が前記第2壁部側に位置するように配置される板状の壁部材であって、前記導入口から導入された排気ガスが流れる排気流路を形成する壁部材と、
前記排気流路内に配置される触媒と、
を備え、
前記壁部材は、前記第1端部に設けられる弾性部、及び、前記第2端部に設けられる弾性部、のうちの少なくとも1つの弾性部を有し、
前記少なくとも1つの弾性部は、弾性変形することにより、前記第1壁部及び前記第2壁部の少なくとも一方を前記筐体の内側から外側に向かって押す方向の反力を有する状態で前記第1壁部及び前記第2壁部の少なくとも一方と当接し、
前記少なくとも1つの弾性部は、前記排気流路における前記触媒が配置されない領域に対応する位置に設けられ、
前記少なくとも1つの弾性部は、前記排気流路を流れる排気ガスの流れ方向に沿って、互いに間隔を開けて設けられる複数の弾性部であり、
前記複数の弾性部は、前記排気流路において前記触媒が配置される位置の上流側及び下流側に位置する、排気ユニット。
【請求項2】
内燃機関からの排気ガスを通過させる排気ユニットであって、
導入口から排気ガスが導入され、排出口から前記排気ガスが排出される筐体と、
前記筐体を構成する第1壁部と第2壁部との間に挟まれ、第1端部が前記第1壁部側に位置し、第2端部が前記第2壁部側に位置するように配置される板状の壁部材であって、前記導入口から導入された排気ガスが流れる排気流路を形成する壁部材と、
を備え、
前記壁部材は、前記第1端部に設けられる弾性部、及び、前記第2端部に設けられる弾性部、のうちの少なくとも1つの弾性部と、略円弧状に湾曲した部分を有する本体部と、を有し、
前記少なくとも1つの弾性部は、弾性変形することにより、前記第1壁部及び前記第2壁部の少なくとも一方を前記筐体の内側から外側に向かって押す方向の反力を有する状態で前記第1壁部及び前記第2壁部の少なくとも一方と当接し、
前記少なくとも1つの弾性部は、前記本体部から屈曲して延び出し、少なくとも一部が前記壁部材の少なくとも一部と近接するように折り返される、排気ユニット。
【請求項3】
請求項に記載の排気ユニットであって、
前記少なくとも1つの弾性部は、前記本体部から屈曲して延び出す第1屈曲部と、前記第1屈曲部から屈曲して延び出す第2屈曲部と、を有し、
前記少なくとも1つの弾性部は、前記第2屈曲部が前記壁部材の少なくとも一部と近接するように折り返される、排気ユニット。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の排気ユニットであって、
前記排気流路内に配置される触媒を更に備え、
前記少なくとも1つの弾性部は、前記排気流路における前記触媒が配置されない領域に対応する位置に設けられる、排気ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筐体内に略円弧状の壁部材が当該筐体と当接するように配置され、排気ガスが通過する筒状の排気流路が形成される排気ユニットが開示されている。この排気ユニットでは、壁部材及び筐体によって保持される触媒が排気流路に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-127926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した排気ユニットでは、筐体と当接して壁部材が筐体内に固定されているが、排気流路内を排気ガスが流れることによって排気流路内の圧力が高まる場合、排気流路内を流れる排気ガスが壁部材と筐体との隙間から筐体内の排気流路外へ漏れ出しやすいという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、筐体及び筐体内に配置される壁部材により形成される排気流路内を流れる排気ガスが筐体と壁部材との間から筐体内の排気流路外へ漏れ出しにくくすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、内燃機関からの排気ガスを通過させる排気ユニットであって、筐体と、壁部材と、を備える。筐体は、導入口から排気ガスが導入され、排出口から排気ガスが排出される。壁部材は、筐体を構成する第1壁部と第2壁部との間に挟まれ、第1端部が第1壁部側に位置し、第2端部が第2壁部側に位置するように配置される板状の壁部材であって、導入口から導入された排気ガスが流れる排気流路を形成する。また、壁部材は、第1端部に設けられる弾性部、及び、第2端部に設けられる弾性部、のうちの少なくとも1つの弾性部を有する。少なくとも1つの弾性部は、弾性変形することにより、第1壁部及び第2壁部の少なくとも一方を筐体の内側から外側に向かって押す方向の反力を有する状態で第1壁部及び第2壁部の少なくとも一方と当接する。
【0007】
このような構成では、弾性部の弾性変形により生じる第1壁部及び第2壁部の少なくとも一方を筐体の内側から外側に向かって押す方向の反力によって、第1壁部及び第2壁部と壁部材との密着性が高まり、第1壁部及び第2壁部と壁部材との間の気密性が向上する。したがって、筐体及び筐体内に配置される壁部材により形成される排気流路において、例えば排気流路内を排気ガスが流れることによって排気流路内の圧力が高まる場合でも、排気流路内を流れる排気ガスが第1壁部及び第2壁部と壁部材との間から筐体内の排気流路外へ漏れ出しにくくすることができる。
【0008】
本開示の一態様は、排気流路内に配置される触媒を更に備えてもよい。少なくとも1つの弾性部は、排気流路における触媒が配置されない領域に対応する位置に設けられてもよい。このような構成では、排気流路における触媒が配置される領域では、触媒による反力が生じ、排気流路における触媒が配置されない領域では、弾性部による反力が生じる。これにより、排気流路における触媒が配置されない領域及び触媒が配置される領域の両方の領域において、第1壁部及び第2壁部と壁部材との密着性を高めることができる。そして、弾性部は、壁部材において、排気流路における触媒が配置されない領域に対応する位置に設けられるため、触媒が配置される領域にも弾性部が設けられる構成と比較して、触媒に圧力が掛かりすぎることを抑制することができる。したがって、排気流路内を流れる排気ガスの第1壁部及び第2壁部と壁部材との間からの筐体内の排気流路外への漏れを抑制しつつ、触媒の破損を抑制することができる。
【0009】
本開示の一態様では、壁部材は、略円弧状に湾曲した部分を有する本体部を有してもよい。少なくとも1つの弾性部は、本体部から屈曲して延び出し、少なくとも一部が壁部材の少なくとも一部と近接するように折り返されてもよい。このような構成では、弾性部の少なくとも一部は、本体部から折れ曲がった状態となる。これにより、弾性部による筐体を内側から外側に向かって押す方向の反力を生じやすくすることができる。
【0010】
本開示の一態様では、少なくとも1つの弾性部は、第1屈曲部と、第2屈曲部と、を有してもよい。第1屈曲部は、本体部から屈曲して延び出す。第2屈曲部は、第1屈曲部から屈曲して延び出す。少なくとも1つの弾性部は、第2屈曲部が壁部材の少なくとも一部と近接するように折り返されてもよい。このような構成によれば、第1屈曲部及び第2屈曲部によって、弾性部において屈曲する点が少ない構成と比較して、より強い反力を生じさせることができるため、第1壁部及び第2壁部と壁部材との密着性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】排気ユニットの構成を示す斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4図1のIV-IV断面図である。
図5】排気流路において触媒が配置される領域周辺における壁部材の一部を示す斜視図である。
図6】壁部材が筐体により固定される状態を模式的に示す断面図である。
図7】異なる形状の弾性部を有する壁部材が筐体により固定される状態を模式的に示す断面図である。
図8】異なる形状の弾性部を有する壁部材が筐体により固定される状態を模式的に示す断面図である。
図9】異なる形状の弾性部を有する壁部材が筐体により固定される状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.全体構成]
図1に示す排気ユニット1は、例えば、REEV(航続距離延長型電気自動車:Range Extender Electric Vehicle)等の車両に搭載され、排気ガスを通過させつつ浄化及び消音を行う機能を有するユニットである。
【0013】
図1に示すように、排気ユニット1は、筐体10を備える。筐体10は、導入口11から内燃機関100の排気ガスが導入され、排出口12から排気ガスが排出されるように構成される。また、排気ユニット1は、第1フランジ部11Jと、排気接続部12Jと、冷却導入部23INと、冷却排出部23OUTと、排気取出部25Jと、を備えてもよい。筐体10は、複数のセンサ取付部10B,10C,10Dと、第2フランジ部10Jと、を備えてもよい。
【0014】
図2に示すように、複数のセンサ取付部10B,10C,10Dは、後述する排気流路16において触媒21,22の上流側及び下流側のそれぞれにおいて筐体10の内外を連通するように設けられる。なお、上流側、下流側とは、排気ガスの流れ方向に対する上流側、下流側を示す。複数のセンサ取付部10B,10C,10Dは、複数のセンサ26,27,28がそれぞれ筐体10に取り付けられる部位である。筐体10に複数のセンサ26,27,28が配置されると複数のセンサ取付部10B,10C,10Dは密閉される。複数のセンサ26,27,28としては、例えば、酸素センサ、NOxセンサ、温度センサ等の任意のセンサが配置される。
【0015】
図1に示す第2フランジ部10Jは、筐体10を固定するための部位である。第2フランジ部10Jは、筐体10の周囲に複数設けられる。本実施形態では、一例として、第2フランジ部10Jは4個設けられている。第2フランジ部10Jは、例えば、筐体10内において排気ガスが旋回する面と平行な面上に配置されてもよい。第2フランジ部10Jは、それぞれ、ボルト等の固定部材を挿通するための挿通孔10Hを備える。排気ユニット1は、REEVの発電機として機能する内燃機関100、或いは、内燃機関100が設置される台座部に設けられた雌ネジ部等の被固定部に、挿通孔10Hに挿通された固定部材を取り付けることによって内燃機関100或いは台座部に取り付けられる。
【0016】
第1フランジ部11Jは、導入口11と他の部材とを連結するための部位である。第1フランジ部11Jは、排気ガスを導入するための導入口11が形成されており、内燃機関100の排気管と接続される部位である。第1フランジ部11Jが排気管と接続されると、導入口11が排気管と連通し、排気管から導入口11に排気ガスを導入可能となる。
【0017】
排気接続部12Jは、筐体10の内部を通過した排気ガスが排出される排出口12が形成され、大気と連通する排気管が接続される部位である。なお、排出口12は、他の何らかの装置を介して大気と連通してもよい。排出口12は、排気流路16に対して、交差する方向に向けられる。すなわち、排出口12は、排気流路16での排気ガスが旋回する面に対して、交差する方向に向けられる。本実施形態では、排出口12は、排気流路16と直交する方向に向けられる。
【0018】
冷却導入部23INは、冷却水等の熱交換媒体を導通する管が接続され、この管を介して熱交換媒体が導入される部位である。冷却排出部23OUTは、熱交換媒体を導通する管が接続され、この管を介して熱交換媒体が排出される部位である。
【0019】
排気取出部25Jは、排気取出口25が形成されるとともに、排気を導通する管が接続され、この管を介して排気の一部が排出される部位である。排気取出口25は、排気ガスの大部分が排出される排出口12とは異なる排気ガスの出口であり、排気取出口25から排出される排気ガスは、例えば、EGR(Exhaust Gas Recirculation)に利用される。
【0020】
次に、筐体10の内部構造について図2を用いて説明する。
図2に示すように、排気ユニット1は、筐体10の内部に、壁部材17と、複数の触媒21,22と、複数の触媒マット61,62と、を備える。排気ユニット1は、筐体10の内部に、熱交換器23と、インレットパイプ24と、複数の板部材31,32と、バルブ33と、を備えてもよい。なお、図2では、排気流路16において複数の触媒21,22が配置される領域周辺における壁部材17の一部は、説明の便宜上、上面視の状態で図示する。
【0021】
壁部材17は、筐体10内に配置され、導入口11から導入された排気を筐体10内の外周に沿って進路を湾曲させつつ流通させるため筒状の排気流路16の一部を形成するように構成される。なお、壁部材17の詳細な構成の説明は、後述する。
【0022】
また筐体10の内部には、排気流路16の下流側に複数の消音室18A,18B,18Cが配置される。複数の消音室18A,18B,18Cは、筐体10の内部が壁部材17にて仕切られることで、筐体10の内面と、インレットパイプ24と、壁部材17と、囲まれた空間である。複数の消音室18A,18B,18Cは、複数の板部材31,32にて仕切られることで複数の部屋に分割される。
【0023】
すなわち、壁部材17は、筐体10の外壁部10Aと共に排気流路16の一部を形成する。また、壁部材17は、複数の消音室18A,18B,18Cの一部も構成し、導入口11からの導入直後の排気ガスが通過する領域と、複数の消音室18A,18B,18Cと、を仕切る壁面の一部として機能する。また、筐体10の外壁部10Aが排気流路16の一部を形成し、複数のセンサ取付部10B,10C,10Dが外壁部10Aに配置されるので、筐体10の外壁部10Aの内側に更なるパイプを有する構成と比較して、簡素な構成でセンサを配置することができる。
【0024】
また、筐体10の外壁部10Aの内側にパイプを有する構成では、筐体10とパイプとの熱応力差によって複数のセンサ取付部10B,10C,10Dの位置ずれが生じる虞があるが、本構成では筐体10の外壁部10Aを排気流路16の一部とするため、このような位置ずれが起こりにくい。
【0025】
複数の触媒21,22は、排気流路16内に配置され、周知の触媒としての機能を有する。すなわち、複数の触媒21,22は、所定の作動温度範囲内で、排気ガスを浄化する作用を促進する機能を有する。複数の触媒21,22は、壁部材17を介して複数の消音室18A,18B,18Cに隣接して配置されるので、複数の消音室18A,18B,18C内の排気ガスの余熱を用いて触媒が作動温度を維持できるように保温することができる。本実施形態では、触媒21はその周囲が触媒マット61によって覆われ、触媒22はその周囲が触媒マット62によって覆われる。
【0026】
熱交換器23は、排気流路16の触媒21,22よりも下流側であって、当該筐体10内の外周のうちの、排気ユニット1を使用する際に鉛直方向下側となる部位に配置され、周知の熱交換器として機能する。すなわち、熱交換器23は、排気流路16を流通する排気ガスと、冷却導入部23INから導入され、冷却排出部23OUTから排出される熱交換媒体との熱交換を行う。熱交換器23は、排気温度を下げることで排気ガスの体積を減じ、排気ガスの圧力を低下させるため、排気ガスが触媒21,22を通過することを促進する。よって、排気ユニット1は、筐体10内に熱交換器23を備えない構成よりも触媒21,22付近にて排気ガスが筐体10の外部に漏れることを抑制できる。
【0027】
インレットパイプ24は、インレットパイプ24の内外を連通するための複数の孔部24Hを備え、複数の孔部24Hを介して、インレットパイプ24内を流れる排気ガスを何れかの消音室18A,18B,18Cに供給する。インレットパイプ24は、筐体10の外壁部10Aと共に、排気流路16の一部である管状の排気流路16aを形成する。
【0028】
複数の板部材31,32は、消音室18A,18B,18Cを複数の部屋に仕切る仕切板として機能する。また、複数の板部材31,32のうちの熱交換器23から近い位置に配置された板部材32は、消音室18Aと消音室18Bとを連通するか否かを切り替え可能なバルブ33を備える。
【0029】
消音室18Aは、排気ガスを拡張させる拡張室として機能する。また、消音室18Cは、排気ガスを共鳴させる共鳴室として機能する。消音室18Bは、バルブ33の開閉に応じて、拡張室又は共鳴室として機能する。
【0030】
バルブ33は、開閉部33Aを備える。開閉部33Aは、例えば、排気ガスの圧力が高まると開き、排気ガスの圧力が低くなると閉じるように構成される。開閉部33Aは、この構成によって排気ガスを複数の消音室18A,18B,18Cのうちの消音室18Aのみを通過させる構成と、複数の消音室18A,18B,18Cのうちの消音室18A及び消音室18Bを通過させる構成と、を切り替えられるようにする。つまり、排気ユニット1は、拡張室及び共鳴室のサイズをバルブ33によって変更できるので、消音しようとする排気音の周波数を変更することができる。
【0031】
ここで、筐体10は、図3に示すように、第1部材40と、第2部材50と、を互いに組み付けて構成される。第1部材40及び第2部材50の少なくとも一方は、触媒21,22に近づくにつれて第1部材40及び第2部材50の間隔が広くなるように構成された傾斜部50Aを備える。また、図1に示すように、筐体10の第2部材50には、内部が溝状に拡張されて構成される溝部10Mが形成されている。
【0032】
熱交換器23から遠い位置に配置された板部材31は、第1部材40、第2部材50、インレットパイプ24、及び壁部材17にて、概ね隙間なく周囲を囲われており、特に傾斜部50Aと壁部材17と当接する。また、板部材31は、端部が溝部10Mに係合されることで、図1での鉛直方向への移動が制限される。
【0033】
板部材31は、第1部材40及び第2部材50を組み付ける際に、第1部材40及び第2部材50に挟まれることで、傾斜部50Aから受ける押圧力を壁部材17に伝えるように構成される。より詳細には、第1部材40及び第2部材50を組み付ける際に必要となる鉛直方向の力は、図3のハッチング入りの矢印にて示す斜め方向の押圧力に変換される。そして、板部材31は、斜め方向の押圧力を傾斜部50Aから受け、第2部材50に沿って、壁部材17に対する水平方向の力を生じさせる。なお、鉛直方向は、図3における上下方向であり、水平方向は、図3における左右方向である。
【0034】
壁部材17は、板部材31から水平方向の力を受けて、触媒21を押圧する。なお、第1部材40及び第2部材50は、それぞれ、壁部材17の上下の端部が当接する部位付近に段差部40B,50Bを備える。段差部40B,50Bは、筐体10の内部が壁部材17側で壁部材17の厚み程度だけ拡大するように構成された部位である。
【0035】
第1部材40及び第2部材50の組み付け時においては、壁部材17と段差部40B,50Bとの間に隙間が設けられており、壁部材17が板部材31から水平方向の力を受けたときに、壁部材17と段差部40B,50Bとが当接するように設定される。この構成では、第1部材40及び第2部材50の組み付け時に、触媒21,22は、第1部材40及び第2部材50に挟まれることで、鉛直方向の力を受けて保持され、かつ、壁部材17と外壁部10Aとに挟まれることで、水平方向の力を受けて保持される。
【0036】
[2.壁部材の構成]
次に、排気流路16において複数の触媒21,22が配置される領域周辺における壁部材17の一部の詳細な構成を図2図4図6を用いて説明する。なお、当該壁部材17の一部において形成される排気流路16の一部を排気流路16bとする。
【0037】
壁部材17は、金属製の板状部材である。図5に示すように、壁部材17は、当該板状部材が中央部分において略円弧状に湾曲し、当該湾曲に沿った湾曲方向の両側端部の一部が、当該円弧の延長線上の仮想線よりも外側に向かって折り曲がるような形状を有する。本実施形態では、壁部材17は、1部品によって上述した形状を有するように、板状部材をプレス加工等することによって形成される。
【0038】
壁部材17は、弾性部170と、本体部171と、を備える。
本体部171は、略円弧状に湾曲する部分である。本実施形態では、本体部171は、当該湾曲における凸となる方向へ所定の位置において拡径する形状を有する。換言すると、本体部171は、後述する弾性部170が設けられる端部に沿っては拡径しない形状である。
【0039】
弾性部170は、本体部171の湾曲方向の両側端部に設けられる。なお、当該両側端部は、図4における第1部材40側及び第2部材50側に位置する端部であり、図5における壁部材17の中心軸方向と平行な端部である。
【0040】
図4から図6に示すように、本体部171の第1部材40側に位置する端部に設けられる弾性部170は、第1部材40に向かって延びる。また、本体部171の第2部材50側に位置する端部に設けられる弾性部170は、第2部材50に向かって延びる。本実施形態では、弾性部170は、本体部171の湾曲方向の両側端部から屈曲して延び出し、少なくとも一部が壁部材17の少なくとも一部と近接するように折り返される。
【0041】
図5及び図6に示すように、弾性部170は、本体部171から延びた先において、少なくとも1つの位置で屈曲する。本実施形態では、弾性部170は、第1屈曲部172と、第2屈曲部173と、を備える。
第1屈曲部172は、本体部171から屈曲して延び出す部分である。具体的には、第1屈曲部172は、本体部171の湾曲方向の端部から、本体部171の円弧の延長線上の仮想線よりも外側に所定の角度を有して広がるように延びる。
【0042】
第2屈曲部173は、第1屈曲部172から屈曲して延び出す部分である。具体的には、第2屈曲部173は、第1屈曲部172の本体部171と接続する側とは反対側の端部から、第1屈曲部172が延びる方向と反対側に折り返すようにして延びる。
【0043】
図2及び図5に示すように、本実施形態では、弾性部170は、本体部171の中心軸方向に沿って、互いに間隔を開けて複数設けられる。弾性部170は、排気流路16bにおける触媒21及び触媒22が配置されない領域に対応する位置に設けられる。換言すると、排気流路16bにおいて触媒21及び触媒22がそれぞれ配置される位置の上流側及び下流側に、複数の弾性部170が位置する。
【0044】
図6に示すように、第1部材40及び第2部材50が組み付けられる際に、弾性部170が弾性変形して、壁部材17が筐体10内に固定される。具体的には、第1屈曲部172が屈曲する方向とは反対側に押され、第2屈曲部173が第1屈曲部172に押し当てられるように、弾性部170が折り曲げて重ねられ、第1部材40及び第2部材50に当接する折り返し構造が形成される。これにより、弾性部170において、第1部材40及び第2部材50を筐体10の内側から外側に向かって押す方向の反力Fが生じる。このため、弾性部170は、反力Fを有する状態で、第1部材40及び第2部材50と当接する。
【0045】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)本実施形態では、弾性部170の弾性変形により生じる反力Fによって、第1部材40及び第2部材50と壁部材17との密着性が高まり、第1部材40及び第2部材50と壁部材17との間の気密性が向上する。したがって、筐体10及び筐体10内に配置される壁部材17により形成される排気流路16の一部において、例えば排気流路16b内を排気ガスが流れることによって排気流路16b内の圧力が高まる場合でも、排気流路16b内を流れる排気ガスが第1部材40及び第2部材50と壁部材17との間から筐体10内の排気流路16b外に漏れ出しにくくすることができる。
【0046】
すなわち、例えば、弾性部170を有しない壁部材の構成では、排気流路16bの複数の触媒21,22が配置される領域において、複数の触媒21,22及び複数の触媒マット61,62等により壁部材を筐体10の内側から外側に向かって押す方向の反力が生じる。一方、弾性部170を有しない壁部材の構成では、排気流路16bの複数の触媒21,22が配置されていない領域において、当該反力は生じ得ない。このため、排気流路16bの複数の触媒21,22が配置される領域、及び、排気流路16bの複数の触媒21,22が配置されていない領域における壁部材と筐体10とが接触する部分の圧力に差が生じる。排気流路16bの複数の触媒21,22が配置されていない領域は、当該圧力が低く、排気ガスの圧損が高くなりやすい複数の触媒21,22の上流に位置しているため、排気流路16b内を流れる未浄化の排気ガスが壁部材と筐体10との間から筐体10内の排気流路16b外に漏れ出す可能性が高い。
【0047】
一方、本実施形態のように弾性部170を有する壁部材17の構成では、弾性部170の弾性変形による反力Fが生じ得る。このため、排気流路16bの複数の触媒21,22が配置される領域、及び、排気流路16bの複数の触媒21,22が配置されていない領域における壁部材17と筐体10とが接触する部分の圧力に差が生じにくい。したがって、筐体10及び筐体10内に配置される壁部材17により形成される排気流路16b内を流れる排気ガスが第1部材40及び第2部材50と壁部材17との間から筐体10内の排気流路16b外へ漏れ出しにくくすることができる。
【0048】
(3b)本実施形態では、排気流路16bにおける複数の触媒21,22が配置されない領域に対応する位置に弾性部170が設けられる。これにより、排気流路16bにおける複数の触媒21,22が配置される領域では、複数の触媒21,22による反力が生じ、排気流路16bにおける複数の触媒21,22が配置されない領域では、弾性部170による反力Fが生じる。したがって、排気流路16bにおける複数の触媒21,22が配置されない領域、及び、複数の触媒21,22が配置される領域の両方の領域において、第1部材40及び第2部材50と壁部材17との密着性を高めることができる。また、複数の触媒21,22が配置される領域にも弾性部170が設けられる構成と比較して、複数の触媒21,22に圧力が掛かりすぎることを抑制することができる。したがって、排気流路16b内を流れる排気ガスの第1部材40及び第2部材50と壁部材17との間からの筐体10内の排気流路16b外への漏れを抑制しつつ、複数の触媒21,22の破損を抑制することができる。
【0049】
(3c)本実施形態では、第2屈曲部173が第1屈曲部172に押し当てられるように、弾性部170が折り曲げて重ねられ、第1部材40及び第2部材50に当接する折り返し構造が形成される。例えば、第1屈曲部172しか有しないような、弾性部170が折り返し構造を有しない構成と比較して、弾性部170による筐体10を内側から外側に向かって押す方向の反力Fを生じやすくすることができる。このため、第1部材40及び第2部材50と壁部材17との密着性をより高めることができる。
【0050】
なお、実施形態では、第1部材40が第1壁部に相当し、第2部材50が第2壁部に相当し、壁部材17の第1部材40側及び第2部材50側に位置する端部が第1端部及び第2端部に相当する。
【0051】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0052】
(4a)上記実施形態では、壁部材17の湾曲方向の両側端部に、第1屈曲部172及び第2屈曲部173を有する同様の形状の弾性部170がそれぞれ設けられる構成を例示した。しかしながら、弾性部の形状は、これに限定されるものではなく、弾性変形可能な様々な形状を有してもよい。例えば、弾性部は、本体部171から延びた先において、屈曲する位置を有しなくてもよい。また、例えば、弾性部は、本体部171から延びた先において、2つ以上の位置で屈曲してもよい。また、異なる形状の弾性部が壁部材の湾曲方向の両側端部に設けられる構成であってもよい。
【0053】
例えば、図7に示す壁部材17aのように、異なる形状の弾性部170及び弾性部170aを有してもよい。図7に示す例では、壁部材17aの湾曲方向の第1部材40側の端部に弾性部170が設けられ、壁部材17aの湾曲方向の第2部材50側の端部に弾性部170aが設けられる。弾性部170aは、第1屈曲部172と、第2屈曲部173と、第3屈曲部174と、を有する。第3屈曲部174は、第2屈曲部173から屈曲して延び出す部分である。具体的には、第3屈曲部174は、第2屈曲部173の第1屈曲部172と接続する側とは反対側の端部から、本体部171側に向かって延びる。第1部材40及び第2部材50が組み付けられる際に、第3屈曲部174が本体部171に押し当てられ、第2屈曲部173が第1屈曲部172に押し当てられ、第1屈曲部172が屈曲する方向とは反対側に押されるように、弾性部170aが折り曲げられて重ねられ、第2部材50に当接する折り返し構造が形成される。これにより、弾性部170aにおいて、第2部材50を筐体10の内側から外側に向かって押す方向の反力Faが生じる。
【0054】
また、例えば、図8に示す壁部材17bのように、異なる形状の弾性部170及び弾性部170bを有してもよい。図8に示す例では、壁部材17bの湾曲方向の第1部材40側の端部に弾性部170が設けられ、壁部材17bの湾曲方向の第2部材50側の端部に弾性部170bが設けられる。弾性部170bは、第1屈曲部172と、第2屈曲部173と、第3屈曲部175と、を有する。第3屈曲部175は、第2屈曲部173の第1屈曲部172と接続する側とは反対側の端部から、第2屈曲部173が延びる方向とは反対側に折り返すように延びる。第1部材40及び第2部材50が組み付けられる際に、第3屈曲部175が第2屈曲部173に押し当てられ、第2屈曲部173が第1屈曲部172に押し当てられ、第1屈曲部172が屈曲する方向とは反対側に押されるように、弾性部170bが折り曲げられて重ねられ、第2部材50に当接する折り返し構造が形成される。これにより、弾性部170bにおいて、第2部材50を筐体10の内側から外側に向かって押す方向の反力Fbが生じる。
【0055】
なお、反力Fa及び反力Fbは、弾性部170によって生じる反力Fよりも大きな力が得られやすい。このように、弾性部において屈曲する位置が多いほど、より強い反力を生じさせやすく、第1部材40及び第2部材50と壁部材17a,17bとの密着性をより高めることができる。
【0056】
(4b)上記実施形態では、壁部材17の湾曲方向の両側端部に弾性部170がそれぞれ設けられる構成を例示したが、弾性部は壁部材の湾曲方向の一方の端部に設けられる構成であってもよい。
【0057】
(4c)壁部材は、複数の部品から構成されていてもよい。例えば、弾性部は、本体部とは異なる別部品であってもよい。具体的には、図9に示す壁部材17cのように、本体部171cに弾性部170cが溶接等によって固定されていてもよい。弾性部170cは、本体部171cの湾曲方向の端部から本体部171cの延びる方向と反対側に折り返すように本体部171に固定される。弾性部170cは、第1屈曲部172cと、第2屈曲部173cと、第3屈曲部174cと、を有するように、複数の位置で屈曲する。なお、第1屈曲部172c、第2屈曲部173c及び第3屈曲部174cは、それぞれ別部品であって、溶接等でそれぞれ接続されていてもよい。第1部材40及び第2部材50が組み付けられる際に、第1屈曲部172c、第2屈曲部173c及び第3屈曲部174cが本体部171cに押し当てられるように、弾性部170cが折り曲げられて重ねられ、第2部材50に当接する折り返し構造が形成される。これにより、弾性部170cにおいて、第2部材50を筐体10の内側から外側に向かって押す方向の反力Fcが生じる。
【0058】
(4d)弾性部170,170a~170cは、本体部171から角を有しないように屈曲してもよい。弾性部170,170a~170cが少なくとも1つの位置で屈曲する際にも、角を有しないように屈曲してもよい。
【0059】
(4e)排気流路16bに配置される触媒の排気ガスが流れる方向に垂直な断面形状は真円に限定されるものだはなく、例えば楕円形状であってもよい。このような楕円形状の触媒が排気流路16b内に配置される場合にも、上記実施形態の弾性部170,170a~170cを有する壁部材17,17a~17cを用いて、第1部材40及び第2部材50と壁部材17,17a~17cとの密着性を高めることができる。
【0060】
(4f)弾性部は、排気流路16bにおける複数の触媒21,22が配置される領域に対応する位置に設けられていてもよい。
(4g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0061】
1…排気ユニット、10…筐体、10A…外壁部、10B~10D…センサ取付部、10H…挿通孔、10J…第2フランジ部、10M…溝部、11…導入口、11J…第1フランジ部、12…排出口、12J…排気接続部、16,16a,16b…排気流路、17,17a~17c…壁部材、18A~18C…消音室、21,22…触媒、23…熱交換器、23IN…冷却導入部、23OUT…冷却排出部、24…インレットパイプ、24H…孔部、25…排気取出口、25J…排気取出部、26~28…センサ、31,32…板部材、33…バルブ、33A…開閉部、40…第1部材、40B,50B…段差部、50…第2部材、50A…傾斜部、61,62…触媒マット、100…内燃機関、170,170a~170c…弾性部、171,171c…本体部、172,172c…第1屈曲部、173,173c…第2屈曲部、174,174c,175…第3屈曲部、F,Fa,Fb,Fc…反力。
図1
図2
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図9