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特許7513547半導体製造装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体製造装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240702BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
H01L21/316 A
H01L21/31 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021029111
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022130124
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幹
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】相宗 史記
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-226346(JP,A)
【文献】特開2004-172623(JP,A)
【文献】特開2008-205246(JP,A)
【文献】特開2004-311631(JP,A)
【文献】特開2020-120042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035600(US,A1)
【文献】特開2018-157035(JP,A)
【文献】特開2004-214305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物質のガスと第2物質のガスとを用いて基板を処理し、前記第1および第2物質の少なくともいずれかを含む第1ガスを排出する基板処理部と、
前記基板処理部から排出された前記第1ガスを廃棄する廃棄部と、
前記基板処理部から排出された前記第1ガス内の前記第1物質を用いて、前記第2物質を含む第2ガスを生成し、前記第2ガスを前記基板処理部に供給する回収部と、
を備える半導体製造装置。
【請求項2】
前記第1物質は、DまたはHであり(Hは水素、Dは重水素を表す)、前記第2物質は、DOまたはHOである(Oは酸素を表す)、請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記回収部は、前記第1物質であるDまたはHとOとを反応させて、前記第2物質であるDOまたはHOを生成する、請求項2に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記回収部は、前記第1ガス内の前記第1物質を用いて前記第2物質を生成する生成器と、前記生成器により生成された前記第2物質を含む液体を収容する収容部とを備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記回収部は、前記生成器により生成された前記第2物質を気体から液体に変化させる凝縮器をさらに備え、前記凝縮器から排出された前記液体を前記収容部内に収容する、請求項4に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
前記回収部は、前記収容部から排出された前記液体を前記第2ガスに変化させる気化器をさらに備え、前記気化器から排出された前記第2ガスを前記基板処理部に供給する、請求項4または5に記載の半導体製造装置。
【請求項7】
前記収容部内の液体の液位を計測する計測部と、
前記基板処理部から排出された前記第1ガスの排出先を、前記廃棄部と前記回収部との間で切り替える切替部と、
前記計測部により計測された前記液位に基づいて、前記切替部を制御する制御部と、
をさらに備える、請求項4から6のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記回収部は、前記第1ガスを収容する収容部を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記回収部は、前記収容部から排出された前記第1ガス内の前記第1物質を用いて前記第2物質を生成する生成器をさらに備え、前記生成器により生成された前記第2物質を含む前記第2ガスを前記基板処理部に供給する、請求項8に記載の半導体製造装置。
【請求項10】
前記収容部内のガスの圧力を計測する計測部と、
前記基板処理部から排出された前記第1ガスの排出先を、前記廃棄部と前記回収部との間で切り替える切替部と、
前記計測部により計測された前記圧力に基づいて、前記切替部を制御する制御部と、
をさらに備える、請求項8または9に記載の半導体製造装置。
【請求項11】
前記廃棄部は、前記基板処理部から排出された前記第1ガスを浄化する浄化器を備え、前記浄化器により浄化された前記第1ガスを廃棄する、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項12】
前記浄化器は、前記第1ガス内の前記第1物質を前記第2物質に変化させることで、前記第1ガスを浄化する、請求項11に記載の半導体製造装置。
【請求項13】
前記基板処理部は、前記第1物質のガスと前記第2物質のガスとを用いて、前記基板をアニールする、請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体製造装置。
【請求項14】
第1物質のガスと第2物質のガスとを用いて基板を処理し、前記第1および第2物質の少なくともいずれかを含む第1ガスを排出する基板処理部と、
前記基板処理部から排出された前記第1ガスを廃棄する廃棄部と、
前記基板処理部から排出された前記第1ガスをリサイクル用に回収する回収部と、
を備え
前記回収部は、前記第1ガス内の前記第1物質を用いて前記第2物質を生成し、生成された前記第2物質を含む第2ガスを前記基板処理部に供給する、半導体製造装置。
【請求項15】
前記回収部は、前記第1ガス、または前記第1ガスから生成された液体を、収容部内に収容する、請求項14に記載の半導体製造装置。
【請求項16】
前記基板処理部は、前記第1物質のガスと前記第2物質のガスとを用いて、前記基板をアニールする、請求項14または15に記載の半導体製造装置。
【請求項17】
第1物質のガスと第2物質のガスとを用いて基板処理部内で基板を処理し、前記第1および第2物質の少なくともいずれかを含む第1ガスを前記基板処理部から排出し、
前記基板処理部から排出された前記第1ガスを廃棄部により廃棄し、
前記基板処理部から排出された前記第1ガス内の前記第1物質を用いて、前記第2物質を含む第2ガスを回収部により生成し、前記第2ガスを前記基板処理部に供給する、
ことを含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反応器(リアクタ)内でガスを用いて基板を処理する場合、反応器で消費されていないガスを含む排出ガスが反応器から排出される場合がある。このような排出ガスを廃棄すると、反応器で消費されていないガスが無駄に廃棄されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020-505218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
反応器などの基板処理部の排出ガスを無駄に廃棄することを抑制可能な半導体製造装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、半導体製造装置は、第1物質のガスと第2物質のガスとを用いて基板を処理し、前記第1および第2物質の少なくともいずれかを含む第1ガスを排出する基板処理部を備える。前記装置はさらに、前記基板処理部から排出された前記第1ガスを廃棄する廃棄部を備える。前記装置はさらに、前記基板処理部から排出された前記第1ガス内の前記第1物質を用いて、前記第2物質を含む第2ガスを生成し、前記第2ガスを前記基板処理部に供給する回収部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体製造装置の構成を模式的に示す斜視図である。
図2】第1実施形態のDO生成器の構成例を模式的に示す断面図である。
図3】第1実施形態の反応器の動作例を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の基板の例を示す断面図(1/2)である。
図5】第1実施形態の基板の例を示す断面図(2/2)である。
図6】第2実施形態の半導体製造装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1から図6において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の半導体製造装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【0009】
図1の半導体製造装置は、反応器11と、ポンプ12と、浄化器(スクラバ)13と、DO生成器14と、DO凝縮器15と、DOタンク16と、DO気化器17と、液位計21と、バルブ22と、制御部23とを備えている(Dは重水素を表し、Oは酸素を表す)。反応器11は基板処理部の例であり、DOタンク16は収容部の例である。さらに、液位計21は計測部の例であり、バルブ22は切替部の例である。図1の半導体製造装置はさらに、D供給部1と、DO供給部2と、O供給部3と、D供給部4とを備えている。
【0010】
図1の半導体製造装置はさらに、廃棄系の流路P1と、回収系の流路P2とを備えている。浄化器13は、流路P1上に設けられており、本実施形態の半導体製造装置の廃棄系を構成している。DO生成器14、DO凝縮器15、DOタンク16、およびDO気化器17は、流路P2上に設けられており、本実施形態の半導体製造装置の回収系を構成している。流路P1および浄化器13は、廃棄部の例である。一方、流路P2、DO生成器14、DO凝縮器15、DOタンク16、およびDO気化器17は、回収部の例である。流路P1は、バルブ22から延びている。流路P2は、バルブ22から反応器11へと延びている。
【0011】
反応器11は、処理対象の基板(ウェハ)Wを収容し、収容した基板Wをガスを用いて処理する。本実施形態の反応器11は、Dガス(重水素ガス)とDOガス(重水ガス)とを用いて基板Wを処理する。その結果、基板W内の物質が、DガスおよびDOガスと化学反応を起こす。この化学反応により生じたガスや、基板W内の物質と化学反応を起こさなかったDガスおよびDOガスは、反応器11から排出ガスとして排出される。図1は、この排出ガスを「ガスG1」として示している。本実施形態の反応器11は、DガスとDOガスとを用いて基板Wをアニールするアニール炉である。Dは第1物質の例であり、DOは第2物質の例である。また、ガスG1は第1ガスの例である。
【0012】
反応器11は例えば、D供給部1からDガスを導入し、DO供給部2からDOガスを導入し、これらのDガスおよびDOガスを用いて基板Wを処理する。なお、D供給部1以外から導入されるDガスや、DO供給部2以外から導入されるDOガスについては、後述する。
【0013】
ポンプ12は、反応器11から排出されたガスG1を、バルブ22を介して、流路P1または流路P2に送気する。バルブ22は例えば三方弁であり、バルブ22と流路P1、P2のいずれかとを連通させることができる。よって、バルブ22は、ガスG1の排出先を、流路P1と流路P2との間で切り替えることができる。
【0014】
浄化器13は、バルブ22から流入したガスG1を浄化する。本実施形態の浄化器13は、ガスG1を他のガスにより希釈した後、ガスG1内のDガスを燃焼によりDOガスに変化させることで、ガスG1を浄化する。これにより、廃棄後のガスG1が燃焼することを防ぐことが可能となる。希釈用のガスは、例えばNガス(窒素ガス)またはHOガス(水ガス(水蒸気))である。浄化器13により浄化されたガスG1は、浄化器13からドレンとして排出される。このようにして、ガスG1が廃棄される。
【0015】
O生成器14は、バルブ22から流入したガスG1内のDガスを、O供給部3から導入されたOガス(酸素ガス)と反応させる。その結果、DガスおよびOガスからDOガスが生成される。DO生成器14は、DガスをOガスにより燃焼させてDOガスを生成してもよいし、DガスとOガスとの触媒反応によりDOガスを生成してもよい。
【0016】
O凝縮器15は、DO生成器14から排出されたDOガスを凝縮させる、すなわち、DOを気体(ガス)から液体に変化させる。これにより、純度の高いDO液体を生成することが可能となる。
【0017】
Oタンク16は、DO凝縮器15から排出されたDO液体を収容する。このようにして、ガスG1がDO液体の形でDOタンク16内にリサイクル用に回収される。後述するように、DOタンク16内のDO液体は、反応器11内でDOガスとして再利用される。なお、DOタンク16内のDO液体は、このような形でリサイクルされる代わりに、Dガスを生成するための原材料として使用されることでリサイクルされてもよい。本実施形態のDOタンク16は、DOタンク16内のDO液体の液位を計測する液位計21を備えている。これにより、DOタンク16内のDO液体の量を、液位を通じて計測することができる。
【0018】
なお、DOタンク16は、DO凝縮器15から排出されたDO液体を収容することでDOを回収する代わりに、DO生成器14から排出されたDOガスを、DOタンク16内のDO液体内に混入させることで、DOを回収してもよい。
【0019】
O気化器17は、DOタンク16から排出されたDO液体を気化させる、すなわち、DOを液体から気体に変化させる。これにより、純度の高いDOガスを生成することが可能となる。DO気化器17にはさらに、D供給部4からDOタンク16に導入されたDガスも流入する。本実施形態のDO気化器17は、これらのDOガスおよびDガスを含む「ガスG2」を排出する。Dガスは、DOガスを送気するキャリアとして使用される。ガスG2は、流路P2を介して反応器11へと供給され、反応器11内でDOガスおよびDガスとして用いられる。ガスG2は第2ガスの例である。
【0020】
制御部23は、図1の半導体製造装置の種々の動作を制御する。本実施形態の制御部23は、DOタンク16内の液位の計測データを液位計21から受信し、受信した計測データに基づいてバルブ22を制御する。例えば、DOタンク16内の液位が閾値よりも高い場合には、DOタンク16内に十分な量のDO液体が収容されているため、バルブ22を流路P1と連通させて、ガスG1を廃棄してもよい。一方、DOタンク16内の液位が閾値よりも低い場合には、DOタンク16内のDO液体が不足しているため、バルブ22を流路P2と連通させて、ガスG1を回収してもよい。制御部23のさらなる詳細については、後述する。
【0021】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置は、反応器11から排出されたガスG1をリサイクル用に回収することができる。よって、本実施形態によれば、ガスG1内のDガスが無駄に廃棄されることを抑制することが可能となる。これにより、Dガスの使用量を低減することが可能となり、半導体製造装置のランニングコストを低減することが可能となる。一般にDガスは高価であるため、本実施形態によれば半導体製造装置のランニングコストを大幅に低減することが可能となる。
【0022】
また、本実施形態の半導体製造装置は、DOタンク16の後段にDO気化器17を備えており、DOタンク16内に溜まったDO液体をDO気化器17を介して反応器11に自動的に供給している。仮にDOタンク16の後段にDO気化器17が存在しないと、DOタンク16内のDO液体が頻繁に満杯になり、その度ごとにDOタンク16を交換する必要が生じる。本実施形態によれば、DOタンク16内に溜まったDO液体をDO気化器17が使用することで、DOタンク16内のDO液体が満杯になりにくくなり、DOタンク16の交換頻度を低減することが可能となる。
【0023】
本実施形態の反応器11は、DガスとDOガスとを用いて基板Wをアニールするアニール炉である。基板Wをアニールする際には、これらのガスがほとんど消費されないことが多く、その場合には、これらのガスが大量に無駄になるおそれがある。さらには、基板Wのアニールは長時間にわたって行われることが多いため、このことも、これらのガスの使用量を増大させる。本実施形態によれば、このようなアニール炉のランニングコストを大幅に低減することが可能となる。アニール炉が排出ガスを排出する機構は、一般に単純であることが多いため、反応器11がアニール炉の場合には、反応器11の後段に回収系を設置しやすい場合が多い。なお、本実施形態の回収系は、アニール炉以外の反応器11に適用してもよいし、基板Wを処理するための反応器11以外の機器に適用してもよい。
【0024】
本実施形態の反応器11は、DガスおよびDOガス以外のガスを用いて基板Wを処理してもよい。例えば、本実施形態の反応器11は、Hガス(水素ガス)とHOガスとを用いて基板Wを処理してもよい。この場合、浄化器13は、Hを燃焼させ、DO生成器14、DO凝縮器15、DOタンク16、およびDO気化器17は、HおよびHOを処理することとなる。
【0025】
本実施形態の半導体製造装置は、D供給部1、4の両方を備える代わりに、D供給部1、4の一方のみを備えていてもよい。例えば、反応器11が使用するDガスを、D供給部4のみで十分に供給できる場合には、D供給部1は設けなくてもよい。また、反応器11が使用するDOガスを、DOタンク16のみで十分に供給できる場合には、DO供給部2は設けなくてもよい。
【0026】
また、本実施形態の半導体製造装置は、DO生成器14、DO凝縮器15、DOタンク16、およびDO気化器17をすべて備える形で製造者から購入者に販売されてもよいし、DO生成器14、DO凝縮器15、DOタンク16、およびDO気化器17の少なくともいずれかを備えない形で製造者から購入者に販売されてもよい。例えば、DOタンク16は、半導体製造装置のオプション品として製造者から購入者に販売されてもよいし、購入者が自分で用意してもよい。これは、DO生成器14、DO凝縮器15、およびDO気化器17についても同様である。
【0027】
図2は、第1実施形態のDO生成器14の構成例を模式的に示す断面図である。
【0028】
図2に示すDO生成器14は、反応炉14aと、反応炉14a内のPt(白金)触媒14bとを備えている。反応炉14a内では、バルブ22から流入したガスG1内のDガスと、O供給部3から導入されたOガスが、矢印A1、A2、A3で示す態様で反応する。矢印A1~A3は、Pt触媒14bによるDガスとOガスとの触媒反応の流れを示している。反応炉14aは、この触媒反応により生成されたDOガスを、DO凝縮器15に排出する。
【0029】
図3は、第1実施形態の反応器11の動作例を示すフローチャートである。
【0030】
まず、反応器11内に基板Wを搬入した後、反応器11内のHパージを行う(ステップS1)。次に、反応器11内に供給するガスを、HガスからDガスに切り替える(ステップS2)。次に、反応器11内を昇温し(ステップS3)、反応器11内にOガスおよびDOガスを供給する(ステップS4)。その結果、基板Wがアニールされ、基板W内の物質がDガスおよびDOガスにより酸化される(ステップS5)。次に、反応器11内へのOガスおよびDOガスの供給を停止し(ステップS6)、反応器11内を降温する(ステップS7)。次に、反応器11内に供給するガスを、DガスからHガスに切り替える(ステップS8)。次に、反応器11内のHパージを行った後、反応器11から基板Wを搬出する(ステップS9)。
【0031】
図3では、ステップS1、S2、S8、S9にて反応器11から排出されたガスG1が廃棄され、ステップS3~S7にて反応器11から排出されたガスG1が回収される。具体的には、ステップS1、S2、S8、S9が行われる際にはバルブ22が流路P1と連通され、ステップS3~S7が行われる際にはバルブ22が流路P2と連通される。この際、バルブ22の開閉は制御部23により制御される。
【0032】
ステップS3~S7において、ガスG1は、Dガスを含むがDOガスを含まない場合と、DガスおよびDOガスを含む場合がある。後者の場合、ガスG1内のDガスは、DO生成器14内でDOガスに変化し、ガスG1内のDOガスは、DO生成器14を通過する。これらのDOガスは、共にDO凝縮器15内に凝縮される。
【0033】
ステップS3~S7において、制御部23は、バルブ22を流路P2と連通させ続けてもよいし、バルブ22の連通先を流路P1、P2の間で切り替えてもよい。例えば、DOタンク16内の液位が閾値よりも高い場合には、DOタンク16内に十分な量のDO液体が収容されているため、バルブ22を流路P1と連通させて、ガスG1を廃棄してもよい。一方、DOタンク16内の液位が閾値よりも低い場合には、DOタンク16内のDO液体が不足しているため、バルブ22を流路P2と連通させて、ガスG1を回収してもよい。
【0034】
図4および図5は、第1実施形態の基板Wの例を示す断面図である。
【0035】
図4は、反応器11内の基板WがDガスとDOガスとを用いて処理されている様子を示している。図4に示す基板Wは例えば、半導体装置として3次元メモリを製造するために使用される。図4は、互いに垂直なX方向、Y方向、およびZ方向を示している。この明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。
【0036】
図4に示す基板Wは、半導体基板31と、絶縁膜32と、ソース層33と、絶縁膜34と、ゲート層35と、絶縁膜36と、積層膜37と、柱状部38とを備えている。半導体基板31は、例えばSi(シリコン)基板である。絶縁膜32、ソース層33、絶縁膜34、ゲート層35、絶縁膜36、および積層膜37は、半導体基板31上に順に設けられている。柱状部38は、ソース層33、絶縁膜34、ゲート層35、絶縁膜36、および積層膜37内に設けられている。
【0037】
ソース層33は、絶縁膜32上に順に設けられた金属層41、下部半導体層42、中間半導体層43、および上部半導体層44を含んでいる。積層膜37は、絶縁膜36上に交互に設けられた複数の犠牲層45および複数の絶縁層46を含んでいる。柱状部38は、ソース層33、絶縁膜34、ゲート層35、絶縁膜36、および積層膜37内に順に設けられたブロック絶縁膜51、電荷蓄積層52、トンネル絶縁膜53、チャネル半導体層54、およびコア絶縁膜55を含んでいる。チャネル半導体層54は、図4に示すように中間半導体層43に接している。
【0038】
図4に示す基板Wはさらに、ソース層33、絶縁膜34、ゲート層35、絶縁膜36、および積層膜37内にスリットSTを備えている。Dガスは、スリットSTや積層膜37を介して柱状部38内に入り込む。その結果、柱状部38内にD原子が導入される。一方、DOガスは、中間半導体層43、上部半導体層44、ゲート層35などの表面を酸化する。その結果、これらの表面に酸化膜が形成される。なお、DOガスは、これらの表面を酸化すると共に、またはこれらの表面を酸化する代わりに、Dガスと同様に柱状部38内に入り込んでもよい。
【0039】
図5は、DガスとDOガスとを用いて処理された後の基板Wを示している。図5は、中間半導体層43、上部半導体層44、ゲート層35内に酸化により形成された酸化膜43a、44a、35aを示している。本実施形態では、その後に基板Wが反応器11から搬出され、犠牲層45がブロック絶縁膜47および電極層48にリプレイスされ、スリットSTが絶縁膜39で埋め込まれる(図5)。このようにして、基板Wから半導体装置が製造される。
【0040】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置は、反応器11から排出されたガスG1をリサイクル用に回収する回収系を備えている。よって、本実施形態によれば、反応器11から排出されたガスG1が無駄に廃棄されることを抑制することが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の半導体製造装置の構成を模式的に示す斜視図である。
【0042】
図6の半導体製造装置は、図1の半導体製造装置のDO凝縮器15、DOタンク16、DO気化器17、液位計21、およびD供給部4を、ガスボンベ18、圧力計24、およびD供給部5に置き換えた構成を有している。ガスボンベ18は収容部の例であり、圧力計24は計測部の例である。また、流路P2、ガスボンベ18、およびDO生成器14は、回収部の例である。
【0043】
ガスボンベ18は、バルブ22から流入したガスG1を収容する。このようにして、ガスG1がガスボンベ18内にリサイクル用に回収される。後述するように、ガスボンベ18内のガスG1は、反応器11内でDOガスとして再利用される。なお、ガスボンベ18内のガスG1は、このような形でリサイクルされる代わりに、Dガスを生成するための原材料として使用されることでリサイクルされてもよい。ガスボンベ18はさらに、ガスボンベ18内のガスが不足している場合などに、D供給部5からDガスを導入することができる。本実施形態のガスボンベ18は、ガスボンベ18内のガスの圧力を計測する圧力計24を備えている。これにより、ガスボンベ18内のガスの量を、圧力を通じて計測することができる。
【0044】
本実施形態のDO生成器14は、ガスボンベ18から排出されたガス内のDガスを、O供給部3から導入されたOガスと反応させる。その結果、DガスおよびOガスからDOガスが生成される。本実施形態のDO生成器14は、DガスをOガスにより燃焼させてDOガスを生成してもよいし、図2に示すようにDガスとOガスとの触媒反応によりDOガスを生成してもよい。
【0045】
ガスボンベ18から排出されたガスは、ガスG1に由来するDガスを含んでいてもよいし、D供給部4に由来するDガスを含んでいてもよい。これらのDガスは、DO生成器14内でDOガスに変化する。また、ガスボンベ18から排出されたガスは、ガスG1に由来するDOガスを含んでいてもよい。本実施形態のDO生成器14は、これらのDOガスを含む「ガスG2」を排出する。このガスG2は、流路P2を介して反応器11へと供給され、反応器11内でDOガスとして用いられる。
【0046】
制御部23は、図6の半導体製造装置の種々の動作を制御する。本実施形態の制御部23は、ガスボンベ18内の圧力の計測データを圧力計24から受信し、受信した計測データに基づいてバルブ22を制御する。例えば、ガスボンベ18内の圧力が閾値よりも高い場合には、ガスボンベ18内に十分な量のガスが収容されているため、バルブ22を流路P1と連通させて、ガスG1を廃棄してもよい。一方、ガスボンベ18内の圧力が閾値よりも低い場合には、ガスボンベ18内のガスが不足しているため、バルブ22を流路P2と連通させて、ガスG1を回収してもよい。
【0047】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置は、反応器11から排出されたガスG1をリサイクル用に回収することができる。よって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、ガスG1内のDガスが無駄に廃棄されることを抑制することが可能となる。
また、本実施形態の半導体製造装置は、ガスボンベ18の後段にDO生成器14を備えており、ガスボンベ18内に溜まったガスをDO生成器14を介して反応器11に自動的に供給している。仮にガスボンベ18の後段にDO生成器14が存在しないと、ガスボンベ18内のガスが頻繁に高圧になり、その度ごとにガスボンベ18を交換する必要が生じる。本実施形態によれば、ガスボンベ18内に溜まったガスをDO生成器14が使用することで、ガスボンベ18内のガスが高圧になりにくくなり、ガスボンベ18の交換頻度を低減することが可能となる。
【0048】
本実施形態の反応器11は、DガスおよびDOガス以外のガスを用いて基板Wを処理してもよい。例えば、本実施形態の反応器11は、HガスとHOガスとを用いて基板Wを処理してもよい。この場合、浄化器13は、Hを燃焼させ、ガスボンベ18およびDO生成器14は、HおよびHOを処理することとなる。
【0049】
本実施形態の半導体製造装置は、D供給部1、5の両方を備える代わりに、D供給部1、5の一方のみを備えていてもよい。例えば、反応器11が使用するDガスを、D供給部5のみで十分に供給できる場合には、D供給部1は設けなくてもよい。また、反応器11が使用するDOガスを、ガスボンベ18およびDO生成器14のみで十分に供給できる場合には、DO供給部2は設けなくてもよい。
【0050】
また、本実施形態の半導体製造装置は、ガスボンベ18およびDO生成器14の両方を備える形で製造者から購入者に販売されてもよいし、ガスボンベ18およびDO生成器14の少なくとも一方を備えない形で製造者から購入者に販売されてもよい。例えば、ガスボンベ18は、半導体製造装置のオプション品として製造者から購入者に販売されてもよいし、購入者が自分で用意してもよい。これは、DO生成器14についても同様である。
【0051】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置は、反応器11から排出されたガスG1をリサイクル用に回収する回収系を備えている。よって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、反応器11から排出されたガスG1が無駄に廃棄されることを抑制することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態の回収系には例えば、第1実施形態の回収系に比べて、構成がシンプルであるという利点がある。一方、第1実施形態の回収系には例えば、本実施形態の回収系に比べて、純度の高いDOガスを生成できるという利点がある。なお、第1実施形態で説明した図3図4、および図5の内容は、本実施形態にも適用可能である。
【0053】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0054】
1:D供給部、2:DO供給部、3:O供給部、
4:D供給部、5:D供給部、
11:反応器、12:ポンプ、13:浄化器、14:DO生成器、
14a:反応炉、14b:Pt触媒、15:DO凝縮器、
16:DOタンク、17:DO気化器、18:ガスボンベ、
21:液位計、22:バルブ、23:制御部、24:圧力計、
31:半導体基板、32:絶縁膜、33:ソース層、
34:絶縁膜、35:ゲート層、35a:酸化膜、
36:絶縁膜、37:積層膜、38:柱状部、39:絶縁膜、
41:金属層、42:下部半導体層、43:中間半導体層、43a:酸化膜、
44:上部半導体層、44a:酸化膜、45:犠牲層、
46:絶縁層、47:ブロック絶縁膜、48:電極層、
51:ブロック絶縁膜、52:電荷蓄積層、53:トンネル絶縁膜、
54:チャネル半導体層、55:コア絶縁膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6