(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】車両、及び、熱交換プレート
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20240702BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240702BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240702BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240702BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240702BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240702BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240702BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20240702BHJP
【FI】
B60K11/02
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M50/20
(21)【出願番号】P 2021038370
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】牧田 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】野田 圭俊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 勝志
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/139022(WO,A1)
【文献】特開2020-100389(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033412(WO,A1)
【文献】特開2020-9694(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3723188(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0355948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/02
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/617
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6568
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に結合された第1車輪及び第2車輪と、
前記車体において、所定の面に沿って配置され、複数の電池セルを有する電池セル群と、
前記車体において、前記所定の面に沿って配置された熱交換プレートと、
前記電池セル群から供給される電力を用いて、少なくとも前記第1車輪を駆動する電動機と、
少なくともコンプレッサとコンデンサを有する冷媒回路と、を備える車両であって、
前記熱交換プレートは、
前記所定の面に沿って配置された第1面と、
前記第1面と反対の第2面と、
前記第1面と前記第2面との間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面との間において冷媒を循環させる冷媒層と、を有し、
前記冷媒層は、前記冷媒回路から前記冷媒が前記冷媒層に入る冷媒入力部と、前記冷媒層から前記冷媒が前記冷媒回路へ出る冷媒出力部とを有し、
前記第1面は、前記電池セル群が配置される領域である第1領域と、前記電池セル群が配置されない領域である第2領域とを有し、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第1領域及び前記第2領域に渡って構成され、
前記冷媒出力部は、前記第2領域に配置された、
車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記冷媒入力部は、前記第2領域において、前記冷媒出力部よりも前記第1領域に近い位置に配置された、
車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記車両は、少なくともポンプを有する冷却液回路を有し、
前記冷却液層は、前記冷却液回路から前記冷却液層に入る冷却液入力部と、前記冷却液層から前記冷却液回路へ出る冷却液出力部と、を有し、
前記冷却液入力部、及び、前記冷却液出力部の少なくとも一方は、前記第2領域に配置された、
車両。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両であって、
前記熱交換プレートの前記第1領域の少なくとも一部において、前記電池セル群と前記熱交換プレートの間に配置され、第1の熱伝導率を有する熱伝導部材を有し、
前記熱交換プレートの前記第2領域の少なくとも一部において、第2の熱伝導率を有する断熱部材を有し、
前記第1の熱伝導率は、前記第2の熱伝導率より大きい、
車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両であって、
前記熱交換プレートの前記第2領域に、前記熱交換プレートの前記第2領域を含む部分に生じた凝縮水を回収する凝縮水回収部をさらに備えた、
車両。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両であって、
前記第1面は、前記第1領域を挟んだ前記第2領域とは反対側に、前記電池セル群が配置されない領域である第3領域をさらに有し、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域に渡って構成された、
車両。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の車両であって、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、
前記冷媒入力部に繋がる第1冷媒流路と、
前記第1冷媒流路から分岐する複数の分岐冷媒流路と、
前記複数の分岐冷媒流路が合流する第2冷媒流路と、
前記第2冷媒流路から前記冷媒出力部に繋がる第3冷媒流路と、を含み、
前記第3冷媒流路の少なくとも一部は、前記第2領域に含まれる、
車両。
【請求項8】
請求項7に記載の車両であって、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第2冷媒流路と前記第3冷媒流路との間に、前記冷媒の流量を絞る絞り部をさらに備えた、
車両。
【請求項9】
請求項8に記載の車両であって、
前記第3冷媒流路の前記冷媒の圧力は、前記第2冷媒流路の前記冷媒の圧力より低い、
車両。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の車両であって、
前記冷却液層における前記冷却液の流路は、
冷却液入力部に接続され、所定の方向に沿って配置され第1冷却液流路と、
前記第1冷却液流路に接続され、前記所定の方向に沿って配置され、冷却液出力部に接続された第2冷却液流路と、有し、
前記第1冷却液流路の少なくとも一部は、前記第2領域において、前記所定の面の法線方向から見て、前記分岐冷媒流路の少なくとも一部と交差し、
前記第2冷却液流路の少なくとも一部は、前記第2領域において、前記所定の面の法線方向から見て、前記分岐冷媒流路の少なくとも一部と交差する、
車両。
【請求項11】
車体と、
前記車体に結合された第1車輪及び第2車輪と、
前記車体において、所定の面に沿って配置され、複数の電池セルを有する電池セル群と、
前記電池セル群から供給される電力を用いて、少なくとも前記第1車輪を駆動する電動機と、
少なくともコンプレッサとコンデンサを有する冷媒回路と、を備える車両に設置可能な熱交換プレートであって、
前記所定の面に沿って配置された第1面と、
前記第1面と反対の第2面と、
前記第1面と前記第2面との間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面との間において冷媒を循環させる冷媒層と、を有し、
前記冷媒層は、前記冷媒回路から前記冷媒が前記冷媒層に入る冷媒入力部と、前記冷媒層から前記冷媒が前記冷媒回路へ出る冷媒出力部とを有し、
前記第1面は、前記電池セル群が配置される領域である第1領域と、前記電池セル群が配置されない領域である第2領域とを有し、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第1領域及び前記第2領域に渡って構成され、
前記冷媒出力部は、前記第2領域に配置された、
熱交換プレート。
【請求項12】
請求項11に記載の熱交換プレートであって、
前記冷媒入力部は、前記第2領域において、前記冷媒出力部よりも前記第1領域に近い位置に配置された、
熱交換プレート。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の熱交換プレートであって、
前記車両は、少なくともポンプを有する冷却液回路を有し、
前記冷却液層は、前記冷却液回路から前記冷却液層に入る冷却液入力部と、前記冷却液層から前記冷却液回路へ出る冷却液出力部と、を有し、
前記冷却液入力部、及び、前記冷却液出力部の少なくとも一方は、前記第2領域に配置された、
熱交換プレート。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記第1領域の少なくとも一部において、前記電池セル群と前記熱交換プレートの間に配置され、第1の熱伝導率を有する熱伝導部材を有し、
前記第2領域の少なくとも一部において、第2の熱伝導率を有する断熱部材を有し、
前記第1の熱伝導率は、前記第2の熱伝導率より大きい、
熱交換プレート。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記第2領域に、前記熱交換プレートの前記第2領域を含む部分に生じた凝縮水を回収する凝縮水回収部をさらに備えた、
熱交換プレート。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記第1面は、前記第1領域を挟んだ前記第2領域とは反対側に、前記電池セル群が配置されない領域である第3領域をさらに有し、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第1領域、前記第2領域、及び前記第3領域に渡って構成された、
熱交換プレート。
【請求項17】
請求項13から16のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、
前記冷媒入力部に繋がる第1冷媒流路と、
前記第1冷媒流路から分岐する複数の分岐冷媒流路と、
前記複数の分岐冷媒流路が合流する第2冷媒流路と、
前記第2冷媒流路から前記冷媒出力部に繋がる第3冷媒流路と、を含み、
前記第3冷媒流路の少なくとも一部は、前記第2領域に含まれる、
熱交換プレート。
【請求項18】
請求項17に記載の熱交換プレートであって、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第2冷媒流路と前記第3冷媒流路との間に、前記冷媒の流量を絞る絞り部をさらに備えた、
熱交換プレート。
【請求項19】
請求項18に記載の熱交換プレートであって、
前記第3冷媒流路の前記冷媒の圧力は、前記第2冷媒流路の前記冷媒の圧力より低い、
熱交換プレート。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか1項に記載の熱交換プレートであって、
前記冷却液層における前記冷却液の流路は、
冷却液入力部に接続され、所定の方向に沿って配置され第1冷却液流路と、
前記第1冷却液流路に接続され、前記所定の方向に沿って配置され、冷却液出力部に接続された第2冷却液流路と、有し、
前記第1冷却液流路の少なくとも一部は、前記第2領域において、前記所定の面の法線方向から見て、前記分岐冷媒流路の少なくとも一部と交差し、
前記第2冷却液流路の少なくとも一部は、前記第2領域において、前記所定の面の法線方向から見て、前記分岐冷媒流路の少なくとも一部と交差する、
熱交換プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両、及び、熱交換プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車及び電気自動車には、駆動源であるモータに電力を供給する車載電池が搭載されている。車両には、車載電池の温度上昇を抑制するための熱交換プレートが設けられる。
【0003】
車載電池の温度上昇を抑制するための方法として、カーエアコンの冷媒により直接車載電池を冷却する方法、及び、車載電池を冷媒で直接冷却する方法が知られている(特許文献1,2)。また、カーエアコンの冷媒と共に冷却水を熱交換プレート内に循環させる方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-44476号公報
【文献】特許第6098121号公報
【文献】特開2010-50000号公報
【文献】中国特許出願公開第107112612号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載電池の温度上昇は抑制される必要があるが、車載電池には適正な温度があり、上述した特許文献が開示する方法は、車載電池を冷却し過ぎる可能性がある。
【0006】
本開示の目的は、車載電池をより適正な温度とする車両及び熱交換プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車両は、
車体と、
前記車体に結合された第1車輪及び第2車輪と、
前記車体において、所定の面に沿って配置され、複数の電池セルを有する電池セル群と、
前記車体において、前記所定の面に沿って配置された熱交換プレートと、
前記電池セル群から供給される電力を用いて、少なくとも前記第1車輪を駆動する電動機と、
少なくともコンプレッサとコンデンサを有する冷媒回路と、を備える車両であって、
前記熱交換プレートは、
前記所定の面に沿って配置された第1面と、
前記第1面と反対の第2面と、
前記第1面と前記第2面との間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面との間において冷媒を循環させる冷媒層と、を有し、
前記冷媒層は、前記冷媒回路から前記冷媒が前記冷媒層に入る冷媒入力部と、前記冷媒層から前記冷媒が前記冷媒回路へ出る冷媒出力部とを有し、
前記第1面は、前記電池セル群が配置される領域である第1領域と、前記電池セル群が配置されない領域である第2領域とを有し、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第1領域及び前記第2領域に渡って構成され、
前記冷媒出力部は、前記第2領域に配置される。
【0008】
本開示の熱交換プレートは、
車体と、
前記車体に結合された第1車輪及び第2車輪と、
前記車体において、所定の面に沿って配置され、複数の電池セルを有する電池セル群と、
前記電池セル群から供給される電力を用いて、少なくとも前記第1車輪を駆動する電動機と、
少なくともコンプレッサとコンデンサを有する冷媒回路と、を備える車両に設置可能な熱交換プレートであって、
前記所定の面に沿って配置された第1面と、
前記第1面と反対の第2面と、
前記第1面と前記第2面との間において冷却液を循環させる冷却液層と、
前記第1面と前記第2面との間において冷媒を循環させる冷媒層と、を有し、
前記冷媒層は、前記冷媒回路から前記冷媒が前記冷媒層に入る冷媒入力部と、前記冷媒層から前記冷媒が前記冷媒回路へ出る冷媒出力部とを有し、
前記第1面は、前記電池セル群が配置される領域である第1領域と、前記電池セル群が配置されない領域である第2領域とを有し、
前記冷媒層における前記冷媒の流路は、前記第1領域及び前記第2領域に渡って構成され、
前記冷媒出力部は、前記第2領域に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車載電池をより適正な温度とする車両及び熱交換プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】実施の形態1に係る車両の構成例を示す平面図
【
図1B】実施の形態1に係る車両の構成例を示す左側面図
【
図2】実施の形態1に係る車両が備える電気回路の一例を説明するための図
【
図3A】実施の形態1に係る電池パックの構成例を示す斜視図
【
図4】実施の形態1に係る熱交換プレートの構成例を示す平面図
【
図5A】実施の形態1に係る熱交換プレートの第1の構成例を示す斜視図
【
図6A】実施の形態1に係る熱交換プレートの第2の構成例を示す斜視図
【
図7】比較用の熱交換プレートの構成を示す断面斜視図
【
図8】実施の形態1に係る熱交換プレートの変形例を示す模式図
【
図9】実施の形態2における熱交換プレートと当該熱交換プレートに繋がる冷媒回路及び冷却液回路とを含む電池冷却システムの構成例を示す模式図
【
図10】実施の形態2における熱交換プレートの構成例を示す平面図
【
図11】実施の形態2における熱交換プレートに含まれる冷却液流路の構成例を示す平面図
【
図12】実施の形態2における熱交換プレートに含まれる冷媒流路の構成例を示す平面図
【
図13】実施の形態2における冷媒流路における冷媒入力部及び冷媒出力部の付近の構成例を示す平面図
【
図14】実施の形態2における
図13のB-B断面の第1例を示す断面図
【
図15】実施の形態2における
図13のB-B断面の第2例を示す断面図
【
図16】実施の形態2における
図9及び
図10に示す冷媒回路及び冷媒流路を流れる冷媒に関するp-h線図の一例
【
図17】実施の形態2における熱交換プレートの構成の第1の変形例を示す平面図
【
図18】実施の形態2における熱交換プレートの構成の第2の変形例を示す平面図
【
図19】実施の形態2における熱交換プレートの構成の第3の変形例を示す平面図
【
図20】実施の形態2における熱交換プレートの構成の第4の変形例を示す平面図
【
図21】実施の形態2における熱交換プレートの構成の第5の変形例を示す平面図
【
図22】実施の形態2における冷媒回路及び
図21に示す冷媒流路を流れる冷媒に関するp-h線図の一例
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(実施の形態1)
<車両の構成>
図1Aは、実施の形態1に係る車両1の構成例を示す平面図である。
図1Bは、実施の形態1に係る車両1の構成例を示す左側面図である。
【0013】
なお、説明の便宜上、
図1に示すように、車両1の高さ方向に延びる軸をZ軸とする。Z軸に対して垂直(つまり地面に平行)かつ車両1の進行方向に延びる軸をY軸とする。Y軸及びZ軸に対して垂直な軸(つまり車両1の幅方向の軸)をX軸とする。また、説明の便宜上、Z軸の正方向を「上」、Z軸の負方向を「下」、Y軸の正方向を「前」、Y軸の負方向を「後」、X軸の正方向を「右」、X軸の負方向を「左」と称する場合がある。これらの表現は、XYZ軸を記載した他の図面についても同様である。なお、これらの方向に係る表現は、説明の便宜上用いられるものであって、当該構造の実使用時における姿勢を限定する意図ではない。
【0014】
車両1は、車体2、車輪3、電動機4、及び、電池パック10を備える。
【0015】
電池パック10は、車体2に収容される。電池パック10は、充放電可能な複数の電池モジュール30(
図3A参照)を有する。以下、電池パック10が有する複数の電池モジュール30を、電池モジュール群31と称する。電池モジュール30の例として、リチウムイオン電池が挙げられる。電池モジュール群31は、蓄積した電力を電動機4等に供給(放電)する。電池モジュール群31は、回生エネルギーによって電動機4が発した電力を蓄積(充電)してもよい。電池パック10は、
図1に示すように、車体2の中央の床下に収容されてよい。なお、電池パック10の詳細については後述する。
【0016】
車輪3は、車体2に結合される。なお、
図1A及び
図1Bには、車両1が4つの車輪3を備える自動車を示しているが、車両1は少なくとも1つの車輪3を備えればよい。例えば、車両1は2つの車輪3を備えるバイクであってもよいし、3つ又は5つ以上の車輪3を備える車両であってもよい。また、車両1が備える複数の車輪3のうちの1つを第1車輪3a、複数の車輪3のうちの第1車輪3aとは異なる1つを第2車輪3bと称してもよい。第1車輪3aは車両1の前輪、第2車輪3bは車両1の後輪であってよい。車両1は、第1車輪3a及び第2車輪3bによって所定の方向(例えば前後方向)に移動可能である。
【0017】
電動機4は、電池モジュール群31から供給される電力を用いて、少なくとも1つの車輪3(例えば第1車輪3a)を駆動する。車両1は、少なくとも1つの電動機4を備える。車両1は、電動機4が前輪を駆動する(つまり前輪駆動の)構成であってよい。あるいは、車両1は、電動機4が後輪を駆動する(つまり後輪駆動の)構成、又は、電動機4が前輪及び後輪の両方を駆動する(つまり四輪駆動の)構成であってよい。あるいは、車両1は、複数の電動機4を備え、複数の電動機4のそれぞれが個別に車輪3を駆動する構成であってもよい。電動機4は、車両1の前方に位置するモータールーム(エンジンルーム)に設置されてよい。
【0018】
<電気回路の構成>
図2は、実施の形態1に係る車両1が備える電気回路の一例を説明するための図である。
【0019】
電池モジュール群31を含む電池パック10は、高電圧コネクタ、及び、低電圧コネクタを有する。本開示では、高電圧コネクタ、及び、低電圧コネクタを区別せずに、電気コネクタと称する。
【0020】
高電圧コネクタには、高電圧分配器が接続されてよい。高電圧分配器には、駆動用インバータ、コンプレッサ、HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)、車載充電器、及び、急速充電ポートが接続されてよい。低電圧コネクタには、CAN(Controller Area Network)、及び、12V電源系が接続されてよい。
【0021】
駆動用インバータには、電動機4が接続されてよい。すなわち、電池モジュール群31から出力される電力は、高電圧コネクタ、高電圧分配器、及び、駆動用インバータを通じて、電動機4に供給されてよい。
【0022】
<電池パックの構成>
図3Aは、実施の形態1に係る電池パック10の構成例を示す斜視図である。
図3Bは、
図3Aに示す電池パック10のA-A断面図である。
図3Cは、
図3Aに示す電池パックのB-B断面図である。
【0023】
電池パック10は、筐体20、電池モジュール群31、及び、熱交換プレート100を含む。筐体20は、電池モジュール群31及び熱交換プレート100を収容する。
【0024】
熱交換プレート100は、例えば偏平な略直方体の形状を呈する。熱交換プレート100は、熱交換器と読み替えられてよい。
図3B、
図3Cに示すように、熱交換プレート100は、所定の面に沿って配置された第1面状部材101と、所定の面に沿って配置された第2面状部材102と、所定の面に沿って配置された第3面状部材103と、を備える。当該所定の面は、車体2の床面であってよい。第1面状部材101、第2面状部材102、及び、第3面状部材103は、金属製であってよく、例えばアルミニウムであってよい。ただし、第1面状部材101、第2面状部材102、及び、第3面状部材103は、金属製に限られず、他の材料であってよい。
【0025】
第2面状部材102の少なくとも一部は、第1面状部材101と第3面状部材103の間に配置される。電池モジュール群31は、第1面状部材101を基準に、第2面状部材102とは反対の位置に配置される。すなわち、車体2の床面から近い順に、第3面状部材103、第2面状部材102、及び、第1面状部材101が配置される。
【0026】
熱交換プレート100は、第1面状部材101と第2面状部材102の間において冷却液を循環させる冷却液層200と、第2面状部材102と第3面状部材103の間において冷媒を循環させる冷媒層300と、を有する。熱交換プレート100は、第1面状部材101を介して、少なくとも電池モジュール群31と冷却液との間で熱交換を行う。また、熱交換プレート100は、第2面状部材102を介して、少なくとも冷却液層200の冷却液と冷媒層300の冷媒との間で熱交換を行う。冷却液の例として、エチレングリコールを含む不凍液が挙げられる。冷媒の例として、HFC(Hydrofluorocarbon)が挙げられる。
【0027】
本実施の形態では、熱交換プレート100は、冷媒層300の上に冷却液層200が配置される構成である。しかし、熱交換プレート100は、冷却液層200の上に冷媒層300が配置される構成であってもよい。冷却液層200は、冷却液プレートと読み替えられてよい。冷媒層300は、冷媒プレートと読み替えられてよい。なお、熱交換プレート100の構成の詳細、並びに、冷却液層200及び冷媒層300の構成の詳細については後述する。
【0028】
熱交換プレート100は、車両1の進行方向側の面である前面110Fに、冷却液入力部121、冷却液出力部122、冷媒入力部131、冷媒出力部132を有する。
【0029】
冷却液入力部121は、熱交換プレート100の外部から冷却液層200へ冷却液を入力するための入口である。冷却液出力部122は、冷却液層200から熱交換プレート100の外部へ冷却液を出力するための出口である。
【0030】
冷媒入力部131は、熱交換プレート100の外部から冷媒層300へ冷媒を入力するための入口である。冷媒出力部132は、冷媒層300から熱交換プレート100の外部へ冷媒を出力するための出口である。
【0031】
<熱交換プレートの構成の詳細>
図4は、実施の形態1に係る熱交換プレート100の構成例を示す平面図である。
図5Aは、実施の形態1に係る熱交換プレート100の第1の構成例を示す斜視図である。
図5Bは、
図5Aに示す熱交換プレート100のA-A断面の斜視図である。
図6Aは、実施の形態1に係る熱交換プレート100の第2の構成例を示す斜視図である。
図6Bは、
図6Aに示す熱交換プレート100のA-A断面の斜視図である。
図7は、比較用の熱交換プレートの構成を示す断面斜視図である。
【0032】
図4に示すように、熱交換プレート100は、冷却液層200において、冷却液の流路の少なくとも一部を構成する壁部150を有する。
【0033】
冷却液層200の壁部150の少なくとも一部は、冷却液層200において所定の面に沿う所定の方向に沿って配置されてよい。所定の面は、車体2の床面であってよい。壁部150の所定の方向は、車体が第1車輪3a及び第2車輪3bによって進行可能な進行方向に対応する方向(例えばY軸方向)であってよい。ただし、壁部150の所定の方向は、当該進行方向に限らず、例えば、進行方向と直交する方向(つまり進行方向を向いた場合の左右方向)であってもよい。
【0034】
図4に示すように、壁部150は、第1壁面151と、当該第1壁面151と反対の第2壁面152と、第1壁面151と第2壁面152を繋ぐ端面153とを有してよい。冷却液は、冷却液層200において、冷却液入力部121から流入し、第1壁面151に沿って進み、次に端面153に沿って進み、次に第2壁面152に沿って進み、冷却液出力部122から流出してよい。
【0035】
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bに示すように、冷却液層200の壁部150の少なくとも一部は、第1面状部材101から第2面状部材102に向かって突出した第1凸部161と、第2面状部材102から第1面状部材101に向かって突出した第2凸部162と、で構成されてよい。第1凸部161は、第1面状部材101をプレス加工することによって形成されてよい。第2凸部162は、第2面状部材102をプレス加工することによって形成されてよい。すなわち、第1凸部161及び第2凸部162は、互いに組み合わさって、冷却液層200の壁部150の少なくとも一部を形成してよい。なお、第1凸部161の位置については後述する。
【0036】
冷媒層300における冷媒の流路は、第3面状部材103の形状によって構成されてよい。冷媒の流路は、第3面状部材103をプレス加工することによって形成されてよい。
【0037】
例えば、
図4に示すように、冷媒の流路は、壁部150の所定の方向(例えばY軸方向)と同じ方向に延びる少なくとも2つの冷媒流路(以下、入力冷媒流路301、及び、出力冷媒流路302という)と、入力冷媒流路301及び出力冷媒流路302を結ぶ複数の冷媒流路(以下、分岐冷媒流路303という)とによって構成されてよい。入力冷媒流路301は冷媒入力部131に繋がり、出力冷媒流路302は冷媒出力部132に繋がってよい。以下、互いに隣接する2つの分岐冷媒流路303をそれぞれ、第1冷媒流路303A及び第2冷媒流路303Bと称する場合がある。
【0038】
図4に示すように、冷却液層200の壁部150の少なくとも一部と、第1冷媒流路303Aの少なくとも一部とは、所定の面(例えば車体2の床面)の法線方向から見て、第1交点171で交差してよい。冷却液層200の壁部150の少なくとも一部と、第2冷媒流路303Bの少なくとも一部とは、所定の面(例えば車体2の床面)の法線方向から見て、第2交点172で交差してよい。
【0039】
第1面状部材101の第1凸部161は、冷却液層200の壁部150の少なくとも一部と、冷媒の流路の少なくとも一部とが交差する交点に対応して配置されてよい。例えば、第1凸部161は、第1交点171と第2交点172の間に配置されてよい。この場合、第1凸部161は、複数の電池モジュール30の内の一に対応しない位置に配置されてよい。
【0040】
次に、
図7を参照して、第1凸部161を形成しない場合に生じる問題について説明すし、さらに、
図5A、
図5B、
図6A、
図6Bを参照して、第1凸部161及び第2凸部162によって構成される壁部150の一例について説明する。
【0041】
図7に示すように、第2面状部材102のみをプレス加工して壁部150を形成する場合、分岐冷媒流路303(第1冷媒流路303A)を流れる冷媒が、壁部150の内部空間を通って、隣の分岐冷媒流路303(第2冷媒流路303B)に流れてしまう。この場合、冷媒流路の設計で狙った冷却効果を得ることができない。
【0042】
そこで、
図5A及び
図5Bに示すように、第1冷媒流路303Aと冷却液層200の壁部150とが交差する第1交点171(
図4参照)と、第2冷媒流路303Bと冷却液層200の壁部150とが交差する第2交点172(
図4参照)との間において、冷却液層200の壁部150の一部を構成するように、第1面状部材101に第1凸部161を形成する。そして、第2面状部材102の第2凸部162を形成する際に、第1凸部161と対向する部分の押し出しを行わない。これにより、
図5Bに示すように、第2面状部材102の第2凸部162と、第1面状部材101の第1凸部161とがぴったり嵌り合い、冷却液層200の壁部150の一部を形成する。加えて、第1冷媒流路303Aから第2冷媒流路303Bに繋がる壁部150の内部空間が、第1交点171と第2交点172との間に形成された第1凸部161によって分断される。これにより、第1冷媒流路303Aを流れる冷媒が、壁部150の内部空間を通って、第2冷媒流路303Bに流れてしまうこと、あるいは、第2冷媒流路303Bを流れる冷媒が、壁部150の内部空間を通って、第1冷媒流路303Aに流れてしまうことを防止できる。
【0043】
あるいは、
図6A及び
図6Bに示すように、第1冷媒流路303Aと冷却液の壁部150とが交差する第1交点171において、冷却液層200の壁部150の一部を構成するように、第1面状部材101に第1凸部161を形成してよい。例えば、第1交点171における第1冷媒流路303AのY軸方向の幅以上となるように、第1面状部材101に第1凸部161を形成する。そして、第2面状部材102の第2凸部162を形成する際に、第1凸部161と対向する部分の押し出しを行わない。これにより、
図6Bに示すように、第2面状部材102の第2凸部162と、第1面状部材101の第1凸部161とがぴったり嵌り合い、冷却液層200の壁部150を形成する。加えて、第1交点171上における第1冷媒流路303Aから壁部150の内部空間に繋がる箇所は、第1凸部161によって塞がれる。これにより、第1冷媒流路303Aを流れる冷媒が、壁部150の内部空間を通って、第2冷媒流路303Bに流れてしまうこと、あるいは、第2冷媒流路303Bを流れる冷媒が、壁部150の内部空間を通って、第1冷媒流路303Aに流れてしまうことを防止できる。なお、第2交点172及び他の交点についても同様の構成とされてよい。
【0044】
第1凸部161は、第1面状部材101の電池モジュール30が配置されない部分に形成されてよい。第1面状部材101の電池モジュール30が配置される部分に第1凸部161を形成した場合、電池モジュール30の底面と接する第1面状部材101の面積が減少し、電池モジュール30の冷却効果が低減し得るためである。
【0045】
<変形例>
図8は、実施の形態1に係る熱交換プレート100の変形例を示す模式図である。
【0046】
図8に示すように、第2面状部材102に第2凸部162を形成せず、第1面状部材101に形成した第1凸部161によって冷却液層200の壁部150を構成してもよい。この場合、上述したような隣接する2つの分岐冷媒流路303を繋げてしまう壁部150の内部空間は形成されない。
【0047】
しかし、
図8の(a)に示すように、第1面状部材101の第1凸部161の上に電池モジュール30を配置した場合、上述したように、電池モジュール30の底面と接する第1面状部材101の面積が減少し、電池モジュール30の冷却効果が低減し得る。そのため、本実施の形態に係る変形例では、
図8の(b)に示すように、第1面状部材101の第1凸部161を避けて電池モジュール30を配置できるように、第1面状部材101の第1凸部161は形成されてよい。これにより、電池モジュール30の底面と接する第1面状部材101の面積が減少することを抑制できる。よって、電池モジュール30の冷却効果が低減することを抑制できる。
【0048】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1にて説明済みの構成要素については共通の参照符号を付し、説明を省略する場合がある。また、実施の形態2の内容は、実施の形態1の内容と組み合わせることができる。
【0049】
図9~
図15を参照して、実施の形態2の熱交換プレート100の構成を説明する。なお、当該熱交換プレート100は、実施の形態1にて説明したように、車両1に搭載される。
図9は、熱交換プレート100と、当該熱交換プレート100に繋がる冷媒回路50及び冷却液回路40とを含む電池冷却システムの構成例を示す模式図である。
図10は、熱交換プレート100の構成例を示す平面図である。
図11は、熱交換プレート100に含まれる冷却液流路210の構成例を示す平面図である。
図12は、熱交換プレート100に含まれる冷媒流路310の構成例を示す平面図である。
図13は、冷媒流路310における冷媒入力部131及び冷媒出力部132の付近の構成例を示す平面図である。
図14は、
図13のB-B断面の第1例を示す断面図である。
図15は、
図13のB-B断面の第2例を示す断面図である。なお、
図9~
図12、及び、後述する
図17~
図21は、熱交換プレート100を下から上に向かって(Z軸の負方向からZ軸の正方向に向かって)見た場合の平面図である。
【0050】
車両1は、少なくともポンプ41を有する冷却液回路40を備える。冷却液回路40は、さらにリザーバタンク42を備えてよい。冷却液回路40は、熱交換プレート100の冷却液層200に接続される。冷却液は、冷却液回路40及び冷却液層200を循環する。
【0051】
車両1は、少なくともコンプレッサ51とコンデンサ52とを有する冷媒回路50を備える。冷媒回路50は、車内向けの空調蒸発器53をさらに備えてよい。冷媒回路50は、熱交換プレート100の冷媒層300に接続される。冷媒は、冷媒回路50及び冷媒層300を循環する。
【0052】
熱交換プレート100は、所定の面に沿って配置された第1面181と、第1面181と反対の第2面182とを有する。本実施の形態では、第1面181を上面、第2面182を下面として説明する。ただし、第1面181が下面、第2面182が上面であってもよい。また、所定の面は、車体2の床面であってよい。
【0053】
熱交換プレート100は、第1面181と第2面182との間において冷却液を循環させる冷却液層200を有する。加えて、熱交換プレート100は、第1面181と第2面182との間において冷媒を循環させる冷媒層300を有する。本実施の形態では、冷媒層300の上に冷却液層200が設けられる構成について説明する。ただし、冷却液層200の上に冷却液層200が設けられる構成であってもよい。
【0054】
第1面181は、電池セル群32が配置される領域である第1領域と電池セル群32が配置されない領域である第2領域とを有する。すなわち、第1面181の第2領域には、電池セル群32が配置されなくてよい。第1領域及び第2領域は、所定の面(例えば車体2の床面)の法線方向から見た場合の領域であってよい。なお、本実施の形態では、電池セル群32が第1領域に配置されるとして説明するが、電池セル群32を含む電池モジュール群31が第1領域に配置される構成であってもよい。そして、複数の電池モジュール群31を含めて電池パック10としてもよい。
【0055】
冷媒層300は、冷媒回路50から冷媒が冷媒層300に入る冷媒入力部131と、冷媒層300から冷媒が冷媒回路50へ出る冷媒出力部132とを有する。
【0056】
冷却液層200は、冷却液回路40から冷却液層200に入る冷却液入力部121と、冷却液層200から冷却液回路40へ出る冷却液出力部122とを有する。
【0057】
冷却液入力部121、及び、冷却液出力部122の少なくとも一方は、第2領域に配置される。
【0058】
冷媒層300における冷媒流路310は、第1領域及び第2領域に渡って構成される。
【0059】
図13~
図15に示すように、冷媒入力部131及び冷媒出力部132は冷媒フランジ401によって冷媒層300に接続される。冷媒フランジ401は、
図14に示すように、冷媒層300と冷却液層200を隔てるプレート402に接合されてもよいし、
図15に示すように、冷却液層200の上面(第1面181)を構成するプレートに接合されてもよい。
図14又は
図15に示すように、冷媒出力部132は、第2領域に配置される。加えて、
図14又は
図15に示すように、冷媒入力部131は、第2領域において、冷媒出力部132よりも第1領域に近い位置に配置されてよい。
【0060】
例えば、冷媒層300における冷媒流路310は、冷媒入力部131に繋がる第1冷媒流路311と、第1冷媒流路311から分岐する複数の分岐冷媒流路315と、複数の分岐冷媒流路315が合流する第2冷媒流路312と、第2冷媒流路312から冷媒出力部132に繋がる第3冷媒流路313と、を含む。ここで、第3冷媒流路313の少なくとも一部は、第2領域に含まれる。
【0061】
例えば、冷却液層200における冷却液流路210は、冷却液入力部121に接続され、所定の方向に沿って配置された第1冷却液流路211と、第1冷却液流路211に接続され、所定の方向に沿って配置され、冷却液出力部122に接続された第2冷却液流路212と、を有する。所定の方向は、車両1の進行方向であってよい。第1冷却液流路211の少なくとも一部は、第2領域において、所定の面(例えば車体2の床面)の法線方向から見て、分岐冷媒流路315の少なくとも一部と交差(例えば直交)してよい。第2冷却液流路212の少なくとも一部は、第2領域において、所定の面の法線方向から見て、分岐冷媒流路315の少なくとも一部と交差(例えば直交)してよい。
【0062】
上述した構成によれば、電池セル群32による熱負荷を受けない第2領域において、冷媒流路310を流れる冷媒と冷却液流路210を流れる冷却液との間で熱交換が可能となる。
【0063】
例えば、第1領域における冷却液の最低温度をT1とし、熱交換プレート100の外側にある冷却液回路40を流れることによる冷却液の昇温をT2とする。この場合、第2領域における冷却液の温度をT1-T2まで低下させることが可能である。つまり、第2領域における冷却液の最低温度はT1-T2であってよい。これにより、電池セル群32による熱負荷を受けない第2領域を適切に構成して当該第2領域における熱交換を制御することにより、第1領域における冷却液の最低温度をより適正な温度とすることができる。よって、第1領域に配置される電池セル群32をより適正な温度とすることができる。
【0064】
なお、冷媒流路310に伝熱フィン及び伝熱リブの少なくとも一方を設けて熱交換を促進してもよい。また、冷却液流路210の冷媒流路310と隣接する部分に伝熱フィン及び伝熱リブの少なくとも一方を設けて熱交換を促進してもよい。
【0065】
図16は、
図9及び
図10に示す冷媒回路50及び冷媒流路310を流れる冷媒に関するp-h線図の一例を示す。
図16に示すp-h線図において、縦軸が圧力を示し、横軸が比エンタルピーを示す。
図16は、上述したように、冷媒出力部132が第2領域に配置され、冷媒入力部131が第2領域において冷媒出力部132よりも第1領域に近い位置に配置された構成の場合におけるp-h線図である。
【0066】
例えば、
図16に示すように、第1領域において、冷媒の温度は20度から10度に低下し、冷媒の圧力は0.47MPaGから0.31MPaGに低下する。そして、例えば、第2領域において、さらに、冷媒の温度は10度から5度に低下し、冷媒の圧力は0.31MPaGから0.25MPaGに低下する。
【0067】
図12の冷媒流路310の構成が示すように、冷媒流路310の下流部分では、圧損により冷媒の圧力が低下し得る。仮にこの冷媒流路310の下流部分を第1領域に設けた場合、当該第1領域において局所的な温度低下が生じ得る。これに対して、本実施の形態では、この冷媒流路310の下流部分を、第2領域に設けている。これにより、第1領域における局所的な温度低下を抑止することができる。
【0068】
また、冷媒流路310の最下流部分(例えば冷媒出力部132の付近)では、冷媒がガス化し温度上昇が起こり得る。仮にこの冷媒流路310の最下流部分を第1領域に設けた場合、当該第1領域において局所的な温度上昇が生じ得る。これに対して、本実施の形態では、この冷媒流路310の最下流部分を、第2領域に設けている。これにより、第1領域における局所的な温度上昇を抑止することができる。
【0069】
また、仮に第1領域にてドライアウトを促進させた場合、第1領域において温度上昇が生じ得る。これに対して、本実施の形態では、第2領域においてドライアウトを促進させることができる。これにより、第1領域における温度上昇を伴わずに、冷媒出力部132(つまり蒸発器出口)のスーパーヒート(過熱度)を確保することができ、冷媒の流量を増加させることができる。例えば、第2領域の冷媒出力部132の付近に温度式膨張弁(TXV(Thermal Expansion Valve))を設け、温度式膨張弁は、
図16のポイントPにおいて、第2領域の冷媒出力部132(つまり第2領域の出口)の付近の冷媒の温度を検知し、検知した温度に応じて冷媒の流量を調整するように動作してよい。例えば、温度式膨張弁は、検知した冷媒の温度が所定の第1閾値より高い場合、冷媒の流量を増やすように動作してよい。また、温度式膨張弁は、検知した冷媒の温度が所定の第2閾値より低い場合、冷媒の流量を減らすように動作してよい。
【0070】
図17は、熱交換プレート100の構成の第1の変形例を示す平面図である。
【0071】
図17に示すように、熱交換プレート100における第1面181は、第1領域を挟んだ第2領域とは反対側に、電池セル群32が配置されない領域である第3領域をさらに有してよい。冷媒層300における冷媒流路310は、第1領域、第2領域、及び第3領域に渡って構成されてよい。
【0072】
例えば、第1冷媒流路311の冷媒入力部131とは反対の端を第3領域まで延ばし、第3領域において当該端から第2冷媒流路312に繋がる第4冷媒流路314を設けてよい。
【0073】
冷媒流路310の冷媒入力部131から遠い部分は冷媒が流れにくく、第1冷却液流路211から第2冷却液流路212への折り返し部分の冷却液の温度は上昇しやすい傾向にある。これに対して、
図17に示す構成によれば、電池セル群32の熱負荷を受けない第3領域において、第4冷媒流路314を流れる冷媒と、第1冷却液流路211から第2冷却液流路212への折り返し部分を流れる冷却液との間で熱交換が可能となる。よって、第3領域において冷却液が冷却され、冷却液の温度の均一化が改善される。
【0074】
図18は、熱交換プレート100の構成の第2の変形例を示す平面図である。
【0075】
図18に示すように、冷媒層300における冷媒流路310は、第2冷媒流路312と第3冷媒流路313との間に、冷媒の流量を絞る絞り部403をさらに備えてよい。第3冷媒流路313の冷媒の圧力は、第2冷媒流路312の冷媒の圧力より低くてよい。これにより、第2領域における冷媒の蒸発温度をさらに低下させることができる。
【0076】
図19は、熱交換プレート100の構成の第3の変形例を示す平面図である。
【0077】
熱交換プレート100は、熱交換プレート100の第1領域の少なくとも一部において、電池セル群32と熱交換プレート100の間に配置され、第1の熱伝導率を有する熱伝導部材を有してよい。加えて、熱交換プレート100は、
図19に示すように、熱交換プレート100の第2領域の少なくとも一部において、第2の熱伝導率を有する断熱部材404を有してよい。第1の熱伝導率は、第2の熱伝導率より大きくてよい。例えば、第1の熱伝導率は、第2の熱伝導率の100倍以上であってよい。
【0078】
このように、第2領域の少なくとも一部に断熱部材404を有することにより、低温になる第2領域において結露水が発生することを抑制できる。加えて、第2領域の少なくとも一部に断熱部材404を有することにより、第2領域に発生した結露水が、電池セル群32の電力を出力する高圧電系に接近することを抑止できる。
【0079】
図20は、熱交換プレート100の構成の第4の変形例を示す平面図である。
【0080】
図20に示すように、熱交換プレート100は、熱交換プレート100の第2領域に、熱交換プレート100の第2領域を含む部分に生じた凝縮水を回収する凝縮水回収部405をさらに備えてよい。
【0081】
これにより、低温になる第2領域において発生し得る凝縮水が凝縮水回収部405に回収されるので、第2領域に発生した凝縮水が、電池セル群32の電力を出力する高圧電系に接近することを抑止できる。
【0082】
加えて、凝縮水回収部405は、回収した凝縮水を、電池パック10の外に設けられた凝縮水貯留部(図示しない)に排出する構成を備えてよい。凝縮水貯留部に貯留された水分は乾燥剤によって吸着可能であってよい。
【0083】
なお、
図18、
図19及び
図20に示す構成は、適宜組み合わせることができる。例えば、熱交換プレート100は、
図18に示す絞り部403と、
図19に示す断熱部材404と、
図29に示す凝縮水回収部405との少なくとも2つを備える構成であってもよい。
【0084】
図21は、熱交換プレート100の構成の第5の変形例を示す平面図である。
図22は、冷媒回路50及び
図21に示す冷媒流路310を流れる冷媒に関するp-h線図の一例を示す。
図21に示すp-h線図において、縦軸が圧力を示し、横軸が比エンタルピーを示す。
【0085】
図21に示すように、熱交換プレート100の冷媒層300における冷媒流路310は、冷媒入力部131に繋がる第3冷媒流路313と、第3冷媒流路313に接続され、所定の方向に沿って配置された第2冷媒流路312と、第2冷媒流路312から分岐する複数の分岐冷媒流路315と、複数の分岐冷媒流路315が合流し冷媒出力部132に繋がる第1冷媒流路311と、を含んでよい。第3冷媒流路313の少なくとも一部は、第2領域に含まれてよい。すなわち、冷媒入力部131から流入した冷媒は、第3冷媒流路313、第2冷媒流路312、分岐冷媒流路315、及び、第1冷媒流路311の順に流れて、冷媒出力部132から流出する。
【0086】
冷媒流路310の圧損により、冷媒の温度は冷媒入力部131から冷媒出力部132に向かって低下する傾向にあるので、冷媒の温度は次のような関係になる場合がある。
【0087】
冷媒入力部131の冷媒の温度>冷却液入力部121の冷却液の温度>冷却液出力部122の冷却液の温度>冷媒出力部132の冷媒の温度
【0088】
この場合、
図21に示す構成によれば、冷媒流路310に入った冷媒が第2領域において冷却液と熱交換を行うことにより、
図22に示すように、冷媒が冷却されるので、第1領域における冷却効率が向上し得る。
【0089】
なお、
図21に示す熱交換プレート100に、
図18、
図19及び
図20に示す構成を適宜組み合わせることができる。例えば、
図21に示す熱交換プレート100は、
図18に示す絞り部403と、
図19に示す断熱部材404と、
図29に示す凝縮水回収部405との少なくとも1つを備える構成であってもよい。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても本開示の技術的範囲に属すると了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示の技術は、車載電池の温度調整に有用である。
【符号の説明】
【0092】
1 車両
2 車体
3 車輪
3a 第1車輪
3b 第2車輪
4 電動機
10 電池パック
20 筐体
30 電池モジュール
31 電池モジュール群
32 電池セル群
40 冷却液回路
41 ポンプ
42 リザーバタンク
50 冷媒回路
51 コンプレッサ
52 コンデンサ
53 空調蒸発器
100 熱交換プレート
101 第1面状部材
102 第2面状部材
103 第3面状部材
110F 前面
121 冷却液入力部
122 冷却液出力部
131 冷媒入力部
132 冷媒出力部
150 壁部
151 第1壁面
152 第2壁面
153 端面
161 第1凸部
162 第2凸部
171 第1交点
172 第2交点
200 冷却液層
210 冷却液流路
211 第1冷却液流路
212 第2冷却液流路
300 冷媒層
301 入力冷媒流路
302 出力冷媒流路
303 分岐冷媒流路
303A 第1冷媒流路
303B 第2冷媒流路
310 冷媒流路
311 第1冷媒流路
312 第2冷媒流路
313 第3冷媒流路
314 第4冷媒流路
315 分岐冷媒流路
401 冷媒フランジ
402 プレート
403 絞り部
404 断熱部材
405 凝縮水回収部