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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240702BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240702BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 655A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652F
H01L29/78 658H
H01L29/78 658F
H01L29/78 652D
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021039142
(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公開番号】P2022138962
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 剛史
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-015747(JP,A)
【文献】特開2010-258386(JP,A)
【文献】特開2018-046163(JP,A)
【文献】特開2009-164558(JP,A)
【文献】特開2017-152579(JP,A)
【文献】特開2015-144232(JP,A)
【文献】特開2005-057059(JP,A)
【文献】特開平10-294461(JP,A)
【文献】特開平09-008304(JP,A)
【文献】特開平09-270513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0161736(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、を含む半導体部と、
前記半導体部上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の前記第1電極に向き合う表面側に設けられた複数のトレンチ内にそれぞれ配置され、前記半導体部から絶縁膜を介して電気的に絶縁された複数の制御電極であって、第1制御電極と、前記第1制御電極に隣り合う第2制御電極と、を含む複数の制御電極と、
を備え、
前記第2半導体層は、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間において、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記絶縁膜を介して前記第1制御電極および前記第2制御電極に向き合い、
前記第3半導体層および前記4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第2半導体層の前記第1電極に向き合う表面に沿って並び、前記第1電極に電気的に接続され、
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、前記第1半導体層と前記第3半導体層との間に位置する領域をさらに含み、
前記領域は、前記第1半導体層の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有し、
前記半導体部の前記領域は、アモルファス化された半導体を含む半導体装置。
【請求項2】
前記第3半導体層と前記第4半導体層は離間して配置され、前記第2半導体層は、前記第3半導体層と前記第4半導体層との間に設けられる部分を含む請求項記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の制御電極は、前記半導体部の前記第1電極に向き合う表面上に設けられ、前記第1制御電極および前記第2制御電極をつなぐ平面制御部を含み、
前記平面制御部は、前記第2半導体層の前記部分に前記絶縁膜を介して向き合うように設けられる請求項記載の半導体装置。
【請求項4】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、前記第2導電形の第4半導体層と、を含む半導体部と、
前記半導体部上に設けられた第1電極と、
前記半導体部の前記第1電極に向き合う表面側に設けられた複数のトレンチ内にそれぞれ配置され、前記半導体部から絶縁膜を介して電気的に絶縁された複数の制御電極であって、第1制御電極と、前記第1制御電極に隣り合う第2制御電極と、を含む複数の制御電極と、
を備え、
前記第2半導体層は、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間において、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記絶縁膜を介して前記第1制御電極および前記第2制御電極に向き合い、
前記第3半導体層および前記4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第2半導体層の前記第1電極に向き合う表面に沿って並び、前記第1電極に電気的に接続され、
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、前記第1半導体層と前記第3半導体層との間に位置する領域をさらに含み、
前記領域は、前記第1半導体層の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有し、
前記第3半導体層と前記第4半導体層は離間して配置され、前記第2半導体層は、前記第3半導体層と前記第4半導体層との間に設けられる部分を含み、
前記複数の制御電極は、前記半導体部の前記第1電極に向き合う表面上に設けられ、前記第1制御電極および前記第2制御電極をつなぐ平面制御部を含み、
前記平面制御部は、前記第2半導体層の前記部分に前記絶縁膜を介して向き合うように設けられる半導体装置。
【請求項5】
前記半導体部の前記領域は、絶縁体を含む請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記絶縁体は、前記複数の制御電極を前記半導体部から絶縁する前記絶縁膜と同じ材料を含む請求項記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体部の前記領域は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との境界に沿って、前記第1半導体層と前記第4半導体層の一部との間に延在する請求項1~のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体部に電気的に接続された第2電極をさらに備え、
前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に位置し、前記第1半導体層と前記第2電極との間に設けられた前記第1導電形の第5半導体層をさらに含む請求項1~7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記半導体部は、前記第5半導体層と前記第2電極との間に設けられた前記第2導電形の第6半導体層をさらに含む請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第4半導体層との間に部分的に設けられ、前記第1半導体層から前記第4半導体層に向かう方向に延在し、前記第1半導体層および前記第4半導体層につながる前記第2導電形の第7半導体層をさらに含み、
前記第7半導体層は、前記第2半導体層の第2導電形不純物よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項1~9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力制御用半導体装置は、過電流による発熱に対して高い耐性を有することが望ましい。例えば、MOS(Metal Oxide Semiconductor)構造を有するトランジスタは、pnp寄生トランジスタを含み、過電流による発熱は、寄生トランジスタをターンオンさせる。寄生トランジスタのターンオンは、さらなる電流の増加と発熱、所謂、熱暴走を生じさせ、最終的に素子破壊に至る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-274327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、寄生トランジスタのターンオンを防ぎ、過電流に起因した熱暴走を抑制できる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1導電形の第1半導体層と第2導電形の第2半導体層と前記第1導電形の第3半導体層と前記第2導電形の第4半導体層とを含む半導体部と、前記半導体部上に設けられた第1電極と、前記半導体部の前記第1電極に向き合う表面側に設けられた複数のトレンチ内にそれぞれ配置され、前記半導体部から絶縁膜を介して電気的に絶縁される複数の制御電極と、を備える。前記複数の制御電極は、第1制御電極と、前記第1制御電極に隣り合う第2制御電極と、を含む。前記第2半導体層は、前記第1制御電極と前記第2制御電極との間において、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記絶縁膜を介して前記第1制御電極および前記第2制御電極に向き合う。前記第3半導体層および前記4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記第2半導体層の前記第1電極に向き合う表面に沿って並び、前記第1電極に電気的に接続される。前記半導体部は、前記第1半導体層と前記第2半導体層との間に部分的に設けられ、前記第1半導体層と前記第3半導体層との間に位置する領域をさらに含み、前記領域は、前記第1半導体層の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置を模式的に示す斜視図である。
図2】実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図3】実施形態の第1変形例に係る半導体装置を模式的に示す斜視図である。
図4】実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
図5】実施形態の第3変形例に係る半導体装置を模式的に示す斜視図である。
図6】実施形態の第4変形例に係る半導体装置を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
図1は、実施形態に係る半導体装置1を模式的に示す斜視図である。半導体装置1は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、もしくは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0010】
半導体装置1は、例えば、半導体部10と、第1電極と、第2電極と、複数の制御電極GE1~GE3と、を含む。第1電極は、半導体部10の表面上に設けられ、第2電極は、半導体部10の裏面上に設けられる(図2参照)。なお、図1では、第1電極および第2電極の図示を省略している。
【0011】
図1に示すように、半導体装置1は、複数の制御電極GE1~GE3を含む。制御電極GE1~GE3は、それぞれ、半導体部10に設けられたトレンチTRの内部に配置され、ゲート絶縁膜GIにより半導体部10から電気的に絶縁される。制御電極GE1およびGE2は、例えば、ゲート電極である。制御電極GE3は、例えば、制御電極GE1およびGE2とは独立に制御される。
【0012】
制御電極GE1は、制御電極GE2と隣り合うように設けられる。また、制御電極GE2は、制御電極GE1と制御電極GE3との間に設けられる。制御電極GE3もまた制御電極GE2と隣り合う。
【0013】
半導体部10は、例えば、第1導電形の第1半導体層11と、第2導電形の第2半導体層13と、第1導電形の第3半導体層15と、第2導電形の第4半導体層17と、を含む。半導体部10は、例えば、シリコンを含む。以下、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0014】
第1半導体層11は、例えば、n形ドリフト層もしくはn形ベース層である。制御電極GE1~GE3は、半導体部10の表面側から第1半導体層11中に延在する。
【0015】
第2半導体層13は、例えば、p形拡散層もしくはp形ベース層である。第2半導体層13は、例えば、制御電極GE1と制御電極GE2との間、および、制御電極GE2と制御電極GE3との間において、それぞれ、第1半導体層11の上に設けられる。第2半導体層13は、ゲート絶縁膜GIを介して、制御電極GE1~GE3のそれぞれに向き合うように設けられる。
【0016】
第3半導体層15は、例えば、n形ソース層もしくはn形エミッタ層である。第3半導体層15は、制御電極GE1と制御電極GE2との間において、第2半導体層13の上に設けられる。第3半導体層15は、例えば、ゲート絶縁膜GIに接するように設けられる。
【0017】
第4半導体層17は、例えば、p形コンタクト層である。第4半導体層17は、制御電極GE1と制御電極GE2との間、および、制御電極GE2と制御電極GE3との間において、それぞれ、第2半導体層13の上に設けられる。第3半導体層15および第4半導体層17は、制御電極GE1と制御電極GE2との間において、第2半導体層13上に並ぶ。第4半導体層17は、第2半導体層13の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。
【0018】
図1に示すように、半導体部10は、ガード領域GRをさらに含む。制御電極GE1と制御電極GE2との間において、ガード領域GRは、第1半導体層11と第2半導体層13の間に部分的に設けられる。さらに、ガード領域GRは、第1半導体層11と第3半導体層15との間に位置するように設けられる。
【0019】
ガード領域GRは、第1半導体層11の熱伝導率よりも低い熱伝導率を有する材料を含む。すなわち、ガード領域GRは、第1半導体層11で発生するジュール熱が第3半導体層15の下に位置する第2半導体層13の領域に伝わることを抑制する。
【0020】
ガード領域GRは、例えば、絶縁体を含んでも良い。ガード領域GRは、ゲート絶縁膜GIと同じ材料、例えば、酸化シリコンを含む。また、ガード領域GRは、アモルファス構造の半導体、例えば、アモルファスシリコンを含んでも良い。
【0021】
図2(a)は、実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。図2(a)は、制御電極GE1と制御電極GE2との間におけるY-Z平面に平行な断面を表す模式図である。半導体装置1は、MOSFETである。
【0022】
図2(a)に示すように、半導体装置1は、第1電極SEと第2電極DEとを備える。第1電極SEは、例えば、ソース電極である。第2電極DEは、例えば、ドレイン電極である。半導体部10は、第1電極SEと第2電極DEとの間に設けられる。制御電極GE1~GE3は、半導体部10の第1電極SEに向き合う表面から第1半導体層11中に延在するように設けられる(図1参照)。
【0023】
第1半導体層11は、第1電極SEと第2電極DEとの間に延在する。第1半導体層11は、例えば、n形ドリフト層である。
【0024】
第2半導体層13は、第1半導体層11と第1電極SEとの間に設けられる。第2半導体層13は、例えば、p形拡散層である。
【0025】
第3半導体層15および第4半導体層17は、第2半導体層13と第1電極SEとの間に設けられる。第3半導体層15は、例えば、n形ソース層である。
【0026】
第3半導体層15および第4半導体層17は、第2半導体層13の第1電極SEに向き合う表面に沿って並ぶ。第3半導体層15および第4半導体層17は、第1電極SEに接し、且つ、電気的に接続される。第2半導体層13は、第4半導体層17を介して、第1電極SEに電気的に接続される。
【0027】
制御電極GE1~GE3(図1参照)は、半導体部10の表面に沿った方向(例えば、Y方向)に延在する。第2半導体層13および第4半導体層17は、制御電極GE1~GE3の延在方向(Y方向)に沿って延在する。
【0028】
第3半導体層13および第4半導体層17は、例えば、制御電極GE1およびGE2の延在方向(Y方向)に並ぶ。第4半導体層17のY方向の幅は、第3半導体層15のY方向の幅よりも広い。
【0029】
ガード領域GRは、第1半導体層11と第2半導体層13との間に部分的に設けられ、第1半導体層11と第3半導体層15との間に位置する。第1半導体層11と第2半導体層13との境界に沿った方向(例えば、Y方向)において、ガード領域GRの幅WRは、第3半導体層15の幅WSよりも広い。第2半導体層13は、ガード領域GRと第4半導体層17との間に位置する部分を含む。
【0030】
半導体部10は、第1導電形の第5半導体層19をさらに含む。第5半導体層19は、例えば、ドレイン層である。第5半導体層19は、第1半導体層11と第2電極DEとの間に位置する。第5半導体層19は、第1半導体層11の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。第5半導体層19は、例えば、第2電極DEに接し、且つ、電気的に接続される。第2電極DEは、第5半導体層19を介して、第1半導体層11に電気的に接続される。
【0031】
図2(b)は、実施形態に係る半導体装置2を示す模式断面図である。図2(b)は、制御電極GE1と制御電極GE2との間におけるY-Z平面に平行な断面を表す模式図である。半導体装置2は、例えば、IGBTである。
【0032】
図2(b)に示すように、半導体装置2は、第1電極EEと、第2電極CEと、を備える。第1電極EEは、例えば、エミッタ電極である。第2電極CEは、例えば、コレクタ電極である。半導体部10は、第1電極EEと第2電極CEとの間に設けられる。
第1半導体層11は、例えば、n形ベース層である。第2半導体層13は、例えば、p形ベース層である。第3半導体層15は、例えば、n形エミッタ層である。また、第5半導体層19は、例えば、n形バッファ層である。
【0033】
半導体部10は、第2導電形の第6半導体層21をさらに含む。第6半導体層21は、第5半導体層19と第2電極CEとの間に設けられる。第6半導体層21は、例えば、p形コレクタ層である。第6半導体層21は、例えば、第2電極CEに接し、且つ、電気的に接続される。
【0034】
この例でも、半導体部10は、ガード領域GRを含む。ガード領域GRは、第1半導体層11と第2半導体層13との間に部分的に設けられる。また、ガード領域GRは、第1半導体層11と第3半導体層15との間に位置する。
【0035】
実施形態に係る半導体装置1もしくは半導体装置2は、例えば、インバータなどの電力変換装置に用いられ、電力線間に別の半導体装置と直列接続される。例えば、別の半導体装置が短絡故障を起こした場合、半導体装置1もしくは2には、短絡電流(過電流)が流れる。半導体装置1および半導体装置2では、ガード領域GRを設けることにより、そのような過電流により生じるジュール熱が、第1半導体層11から第2半導体層13に伝わることを抑制する。このため、第1半導体層11、第2半導体層13および第3半導体層15により構成されるnpn寄生トランジスタにおいて、第2半導体層13の温度上昇に起因するターンオンを防ぐことができる。その結果、過電流のさらなる増加およびそれに起因する発熱、所謂、熱暴走を抑制し、素子破壊を回避することができる。
【0036】
ガード領域GRは、第1半導体層11中に、例えば、酸化シリコンなどの絶縁体を部分的に形成した後、第2半導体層13、第3半導体層15および第4半導体層17となる別の半導体層をエピタキシャル成長することにより形成できる。また、第1半導体層11に、例えば、水素原子をイオン注入し、ガード領域GRとなる部分をアモルファス化しても良い。
【0037】
図3は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置3を模式的に示す斜視図である。半導体装置3は、例えば、MOSFETである。図3では、第1電極SE、第2電極DEおよび制御電極GE1~GE3の図示を省略している。なお、半導体装置3は、IGBTであっても良い。以下の実施例についても同様である。
【0038】
半導体装置3では、制御電極GE1および制御電極GE2により第2半導体層13とゲート絶縁膜GIとの界面に第1導電形の反転層が誘起される。半導体装置3は、ターンオン時に、第3半導体層15から反転層を介して第1半導体層11へ電子電流を流すことにより動作する。これは、他の実施例に係る半導体装置でも同じである。
【0039】
実施形態では、ガード領域GRが第1半導体層11と第2半導体層13との間に設けられるため、電子電流Ieは、第3半導体層15からガード領域GRを迂回して第1半導体層11へ流れる。このため、第3半導体層15から第1半導体層11に至るチャネル長が長くなり、オン抵抗が大きくなるが、実施形態は、熱暴走を抑止する利点を重視する。
【0040】
図3に示すように、第4半導体層17は、第3半導体層15から離間して設けられる。第2半導体層13は、第3半導体層15と第4半導体層17との間に延在する部分を有する。これにより、第2半導体層13とゲート絶縁膜GIとの界面に誘起される第1導電形反転層のZ方向の幅を広げることができる。その結果、半導体装置3では、第3半導体層15から第1半導体層11に反転層を介して流れる電子電流の経路が広がり、オン抵抗を低減することができる。
【0041】
図4(a)および(b)は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置4を示す模式断面図である。
図4(a)は、図4(b)中に示すA-A線に沿った断面を表す模式図である。
図4(b)は、図4(a)中に示すB-B線に沿った断面を表す模式図である。
【0042】
図4(a)に示すように、半導体装置4は、制御電極GE1と制御電極GE2とをつなぐ平面制御部PGを含む。平面制御部PGは、半導体部10の表面上に設けられる。
【0043】
平面制御部PGは、第2半導体層13と第1電極SEとの間に設けられ、ゲート絶縁膜GIを介して、第2半導体層13に向き合う。また、平面制御部PGは、層間絶縁膜LIにより第1電極SEから電気的に絶縁される。制御電極GE1と制御電極GE2との間において、ガード領域GRは、第1半導体層11と平面制御部PGとの間に位置する。また、ガード領域GRと平面制御部PGとの間には、第3半導体層15は設けられない。
【0044】
図4(b)に示すように、平面制御部PGは、第3半導体層15と第4半導体層17とが離間した領域の上に設けられる。平面制御部PGは、第2半導体層13の第3半導体層15と第4半導体層17との間に延在する部分の上に設けられる。
【0045】
半導体装置4では、第2半導体層13と制御電極GE1との間、および、第2半導体層13と制御電極GE2との間に加えて、第2半導体層13と平面制御部PGとの間にも、第1導電形の反転層が誘起される。これにより、第3半導体層15から第1半導体層11に至る、第1導電形反転層を介した電子電流の経路が拡大され、オン抵抗を低減することができる。
【0046】
図5は、実施形態の第3変形例に係る半導体装置5を模式的に示す斜視図である。図5は、半導体装置5の半導体部10を示している。図5では、例えば、第1電極SE、第2電極DEおよび制御電極GE1~GE3の図示を省略している。
【0047】
図5に示すように、半導体部10は、第2導電形の第7半導体層23をさらに含む。第7半導体層23は、第1半導体層11と第4半導体層17との間に部分的に設けられる。第7半導体層23は、第2半導体層13中に延在し、第1半導体層11および第4半導体層17に接するように設けられる。第7半導体層23は、第2半導体層13の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。
【0048】
第7半導体層23を設けることにより、第1半導体層11から第4半導体層17に至る正孔電流Ihの経路が形成される。第7半導体層23は、第1半導体層11から第1電極SEもしくは第1電極EEへ至る正孔の排出経路となる。これにより、半導体装置4のターンオフ時に、第1半導体層11の正孔の排出を促進し、スイッチング損失を低減することができる。第7半導体層23は、この例に限定される訳ではなく、ここに示す他の半導体装置にも適用することができる。
【0049】
図6は、実施形態の第4変形例に係る半導体装置6を模式的に示す斜視図である。図6は、半導体装置6の半導体部10を示す模式図である。図6では、例えば、第1電極SEおよび第2電極DEの図示を省略している。
【0050】
半導体装置6では、制御電極GE2と制御電極GE3との間にもガード領域GRが設けられる。ガード領域GRは、第1半導体層11と第2半導体層13との間に部分的に設けられる(図2(b)参照)。制御電極GE3は、例えば、第1電極SEもしくは第1電極EEと同電位となるようにバイアスされる。
【0051】
図6に示すように、制御電極GE2と制御電極GE3との間には、第3半導体層15が設けられない。このため、制御電極GE2と制御電極GE3との間に位置する半導体部10の領域には、電子電流は流れず、正孔の排出経路として機能する。
【0052】
例えば、トレンチゲート構造が微細化され、制御電極GE1と制御電極GE2との間だけにガード領域GRを設けることが難しい場合、ガード領域GRは、制御電極GE2と制御電極GE3との間にも設けられる。これにより、制御電極GE2と制御電極GE3との間の正孔の排出経路が狭められるが、第7半導体層23(図5参照)を設けることにより正孔の排出を促進することができる。
【0053】
以上、いくつかの実施形態を例示したが、各半導体装置の特徴を示す構成は、それぞれの例に限定される訳ではなく、技術的に可能であれば他の実施例にも適用できることにも留意すべきである。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1、2、3、4、5、6…半導体装置、 10…半導体部、 11…第1半導体層、 13…第2半導体層、 15…第3半導体層、 17…第4半導体層、 19…第5半導体層、 21…第6半導体層、 23…第7半導体層、 CE、DE…第2電極、 EE、SE…第1電極、 GE1、GE2、GE3…制御電極、 GI…ゲート絶縁膜、 GR…ガード領域、 Ie…電子電流、 Ih…正孔電流、 LI…層間絶縁膜、 PG…平面制御部、 TR…トレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6