(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20240702BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240702BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/78 655B
H01L29/78 653C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 658A
H01L29/78 655F
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L29/06 301D
H01L29/78 652P
(21)【出願番号】P 2021039143
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 剛史
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-307104(JP,A)
【文献】特開2019-186261(JP,A)
【文献】特開2013-098415(JP,A)
【文献】特開2005-175062(JP,A)
【文献】特開2009-218543(JP,A)
【文献】特開2019-067890(JP,A)
【文献】特開2002-246597(JP,A)
【文献】特開2006-351924(JP,A)
【文献】特開平01-282872(JP,A)
【文献】特開平06-204481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/336
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、少なくとも1つの前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、少なくとも1つの前記第1導電形の第6半導体層と、前記第1導電形の第7半導体層と、を含み、第1表面と、前記第1表面の反対側の第2表面を有する半導体部と、 前記半導体部の前記第1表面上に設けられた第1電極であって、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、
前記第3半導体層および前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、
前記半導体部の前記第1表面に沿って並ぶ前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体部の前記第2表面上に設けられた第2電極であって、
前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第5半導体層は、前記第2電極と前記第1半導体層との間に設けられ、前記第
2電極に電気的に接続され、
前記第6半導体層および前記第7半導体層は、前記第1半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第5半導体層に沿って並び、前記第1半導体層の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物をそれぞれ含み、
前記第6半導体層は、前記第2表面に平行な平面における第1面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第7半導体層は、前記第2表面に平行な前記平面における第2面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第1面密度は、前記第2面密度よりも高く、
前記第7半導体層は、前記第6半導体層の隣り合う2つの部分の間、もしくは、前記第6半導体層と別の第6半導体層との間に設けられるように配置された
、第2電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1絶縁膜を介して前記第1半導体層および前記第2半導体層に向き合う少なくとも1つの制御電極であって、前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層は、前記第1絶縁膜に沿って並ぶように設けられた
、制御電極と、
を備え
、
前記第6半導体層は、前記
第2電極から前記第1電極に向かう第1方向における第1導電形不純物分布において第1ピーク濃度を有し、
前記第7半導体層は、前記第1方向における第1導電形不純物分布の第2ピーク濃度を有し、
前記第2ピーク濃度は、前記第1ピーク濃度よりも高い半導体装置。
【請求項2】
前記制御電極は、前記第1電極と前記第6半導体層との間に設けられ、前記第1電極と前記第7半導体層との間には設けられない請求項
1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第6半導体層との間に設けられた第1制御電極と、
前記第1電極と前記第7半導体層との間に設けられた第2制御電極と、
前記第1電極と前記第7半導体層との間に設けられた第3制御電極と、
前記第1制御電極および前記第2制御電極に電気的に接続された第1制御端子と、
前記第3制御電極に電気的に接続された第2制御端子と、
を備えた請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第3制御電極は、前記第2制御電極に隣り合う位置に設けられる請求項
3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1電極と前記第6半導体層との間に設けられた第1制御電極と、
前記第1電極と前記第7半導体層との間に設けられた第2制御電極と、
をさらに備え、
前記半導体部は、前記第1電極と前記第7半導体層との間において、前記第2半導体層中に延在し、前記第1半導体層と前記第4半導体層とにつながった前記第2導電形の第8半導体層をさらに含み、
前記第8半導体層は、前記第2半導体層の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む請求項1~
4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、少なくとも1つの前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、少なくとも1つの前記第1導電形の第6半導体層と、前記第1導電形の第7半導体層と、を含み、第1表面と、前記第1表面の反対側の第2表面を有する半導体部と、 前記半導体部の前記第1表面上に設けられた第1電極であって、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、
前記第3半導体層および前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、
前記半導体部の前記第1表面に沿って並ぶ前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体部の前記第2表面上に設けられた第2電極であって、
前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第5半導体層は、前記第2電極と前記第1半導体層との間に設けられ、前記第
2電極に電気的に接続され、
前記第6半導体層および前記第7半導体層は、前記第1半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第5半導体層に沿って並び、前記第1半導体層の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物をそれぞれ含み、
前記第6半導体層は、前記第2表面に平行な平面における第1面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第7半導体層は、前記第2表面に平行な前記平面における第2面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第1面密度は、前記第2面密度よりも高く、
前記第7半導体層は、前記第6半導体層の隣り合う2つの部分の間、もしくは、前記第6半導体層と別の第6半導体層との間に設けられるように配置された
、第2電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1絶縁膜を介して前記第1半導体層および前記第2半導体層に向き合う少なくとも1つの制御電極であって、前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層は、前記第1絶縁膜に沿って並ぶように設けられた
、制御電極と、
前記第1電極と前記第6半導体層との間に設けられた第1制御電極と、
前記第1電極と前記第7半導体層との間に設けられた第2制御電極と、
前記半導体部の前記第1表面上において、前記第1電極から離間して設けられ、前記第
4半導体層とは別の第
4半導体層に電気的に接続された第4電極と
、
を備え、
前記第4電極は、前記第2電極から前記第1電極に向かう第1方向において、前記第7半導体層に重なる位置に設けられる半導体装置。
【請求項7】
第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、少なくとも1つの前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、少なくとも1つの前記第1導電形の第6半導体層と、前記第1導電形の第7半導体層と、を含み、第1表面と、前記第1表面の反対側の第2表面を有する半導体部と、 前記半導体部の前記第1表面上に設けられた第1電極であって、
前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられ、
前記第3半導体層および前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、
前記半導体部の前記第1表面に沿って並ぶ前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体部の前記第2表面上に設けられた第2電極であって、
前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在し、
前記第5半導体層は、前記第2電極と前記第1半導体層との間に設けられ、前記第
2電極に電気的に接続され、
前記第6半導体層および前記第7半導体層は、前記第1半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第5半導体層に沿って並び、前記第1半導体層の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物をそれぞれ含み、
前記第6半導体層は、前記第2表面に平行な平面における第1面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第7半導体層は、前記第2表面に平行な前記平面における第2面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第1面密度は、前記第2面密度よりも高く、
前記第7半導体層は、前記第6半導体層の隣り合う2つの部分の間、もしくは、前記第6半導体層と別の第6半導体層との間に設けられるように配置された
、第2電極と、
前記半導体部と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1絶縁膜を介して前記第1半導体層および前記第2半導体層に向き合う少なくとも1つの制御電極であって、前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層は、前記第1絶縁膜に沿って並ぶように設けられた
、制御電極と、
前記第1電極と前記第6半導体層との間に設けられた第1制御電極と、
前記第1電極と前記第7半導体層との間に設けられ、前記第1制御電極の材料の熱伝導
率よりも高い熱伝導率を有する材料を含む第2制御電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項8】
前記第6半導体層は、前記
第2電極から前記第1電極に向かう第1方向における第1導電形不純物分布において第1ピーク濃度を有し、
前記第7半導体層は、前記第1方向における第1導電形不純物分布の第2ピーク濃度を有し、
前記第2ピーク濃度は、前記第1ピーク濃度よりも高い請求項
6または
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2電極から前記第1電極に向かう第1方向における前記第7半導体層の層厚は、前記第1方向における前記第6半導体層の層厚よりも薄い請求項1
~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体部は、前記第1表面に平行な平面において、前記第2半導体層を含む活性領域と、前記活性領域を囲む終端領域と、を有し、
前記第7半導体層は、前記活性領域内に設けられる請求項1~
9のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記制御電極は、前記半導体部の前記第1表面から前記第1半導体層に至る
第1トレンチの内部に設けられる請求項1~
10のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項12】
前記半導体部の前記第1表面から前記第1半導体層に至る
第2トレンチの内部に設けられた第3電極をさらに備えた請求項1~
11のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置には、電流の局部的な集中に対して大きな破壊耐量を有することが求められる。例えば、電力制御用のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)では、所謂、電流フィラメントを介した過剰電流によりnpn寄生トランジスタがターンオンする。これにより、さらなる電流集中が生じ、最終的に素子破壊に至る場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、寄生トランジスタのターンオンを防ぐことにより破壊耐量を向上させる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、半導体部と、第1電極と、第2電極と、少なくとも1つの制御電極と、を備える。前記半導体部は、第1導電形の第1半導体層と、第2導電形の第2半導体層と、前記第1導電形の第3半導体層と、少なくとも1つの前記第2導電形の第4半導体層と、前記第2導電形の第5半導体層と、少なくとも1つの前記第1導電形の第6半導体層と、前記第1導電形の第7半導体層と、を含む。前記半導体部は、第1表面と、前記第1表面の反対側の第2表面を有し、前記第1電極は、前記半導体部の前記第1表面上に設けられ、前記第2電極は、前記半導体部の前記第2表面上に設けられる。前記半導体部は、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられ、前記第1半導体層は、前記第1電極と前記第2電極との間に延在する。前記第2半導体層は、前記第1半導体層と前記第1電極との間に設けられる。前記第3半導体層および前記第4半導体層は、前記第2半導体層と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部の前記第1表面に沿って並ぶ。前記第2電極は、前記第3半導体層および前記第4半導体層に電気的に接続される。前記第5半導体層は、前記第2電極と前記第1半導体層との間に設けられ、前記第1電極に電気的に接続される。前記第6半導体層および前記第7半導体層は、前記第1半導体層と前記第5半導体層との間に設けられ、前記第5半導体層に沿って並び、前記第1半導体層の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物をそれぞれ含む。前記第6半導体層は、前記第2表面に平行な平面における第1面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第7半導体層は、前記第2表面に平行な前記平面における第2面密度の前記第1導電形不純物を含み、前記第1面密度は、前記第2面密度よりも高い。前記第7半導体層は、前記第6半導体層の隣り合う2つの部分の間、もしくは、前記第6半導体層と別の第6半導体層との間に設けられる。前記制御電極は、前記半導体部と前記第1電極との間に設けられ、前記半導体部から第1絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1電極から第2絶縁膜により電気的に絶縁され、前記第1絶縁膜を介して前記第1半導体層および前記第2半導体層に向き合う。前記第1半導体層、前記第2半導体層および前記第3半導体層は、前記第1絶縁膜に沿って並ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図4】第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図5】第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図6】第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図7】第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図8】第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図9】第1実施形態の第6変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図10】第1実施形態の第7変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
【
図11】第2実施形態に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図12】第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図13】第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【
図14】第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。図面中の同一部分には、同一番号を付してその詳しい説明は適宜省略し、異なる部分について説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
【0008】
さらに、各図中に示すX軸、Y軸およびZ軸を用いて各部分の配置および構成を説明する。X軸、Y軸、Z軸は、相互に直交し、それぞれX方向、Y方向、Z方向を表す。また、Z方向を上方、その反対方向を下方として説明する場合がある。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式断面図である。半導体装置1は、例えば、IGBTである。
【0010】
図1に示すように、半導体装置1は、半導体部SBと、第1電極10と、第2電極20と、第3電極30と、制御電極40と、を備える。半導体部SBは、例えば、シリコンである。第1電極10は、例えば、エミッタ電極である。第2電極20は、例えば、コレクタ電極である。第3電極30は、例えば、エミッタ電極と同電位の電極板である。制御電極40は、例えば、ゲート電極である。
【0011】
半導体部SBは、第1表面1Sと第2表面2Sとを有する。第2表面は、第1表面1Sとは反対側の裏面である。第1電極10は、第1表面1S上に設けられる。第2電極20は、第2表面2S上に設けられる。すなわち、半導体部SBは、第1電極10と第2電極20との間に設けられる。
【0012】
半導体部SBは、例えば、第1導電形の第1半導体層11と、第2導電形の第2半導体層12と、第1導電形の第3半導体層13と、第2導電形の第4半導体層14と、第2導電形の第5半導体層15と、第1導電形の第6半導体層16と、第1導電形の第7半導体層17と、を含む。以下、第1導電形をn形、第2導電形をp形として説明する。
【0013】
第1半導体層11は、例えば、n形ベース層である。第1半導体層11は、第1電極10と第2電極20との間に延在する。
【0014】
第2半導体層12は、例えば、p形ベース層である。第2半導体層12は、第1半導体層11と第1電極10との間に設けられる。
【0015】
第3半導体層13は、例えば、n形エミッタ層である。第3半導体層13は、第2半導体層12と第1電極10との間に部分的に設けられる。第3半導体層13は、第1電極10に電気的に接続される。
【0016】
第4半導体層14は、例えば、p形コンタクト層である。第4半導体層14は、第2半導体層12と第1電極10との間に部分的に設けられる。第4半導体層14は、第1電極10に電気的に接続される。第4半導体層14は、第2半導体層12の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。
【0017】
第3半導体層13および第4半導体層14は、第2半導体層12上に設けられ、例えば、半導体部SBの第1表面1Sに沿って並ぶ。第2半導体層12は、第4半導体層14を介して、第1電極10に電気的に接続される。
【0018】
第5半導体層15は、例えば、コレクタ層である。第5半導体層15は、第1半導体層11と第2電極20との間に設けられる。第5半導体層15は、第2電極20に電気的に接続される。
【0019】
第6半導体層16および第7半導体層17は、例えば、n形バッファ層である。第6半導体層16および第7半導体層17は、第1半導体層11と第5半導体層15との間に設けられる。第6半導体層16および第7半導体層17は、例えば、半導体部SBの第2表面2Sに沿った方向、例えば、X方向に並ぶ。第6半導体層16および第7半導体層17は、それぞれ、第1半導体層11の第1導電形不純物の濃度よりも高濃度の第1導電形不純物を含む。
【0020】
第7半導体層17は、例えば、第6半導体層16の一部と、第6半導体層16の別の一部と、の間に設けられる。もしくは、第7半導体層17は、第6半導体層16と、別の第6半導体層16と、の間に設けられる。
【0021】
第6半導体層16は、例えば、半導体部SBの第2表面2Sに平行な平面における第1面密度を有する第1導電形不純物を含む。第7半導体層17は、例えば、半導体部SBの第2表面2Sに平行な平面における第2面密度を有する第1導電形不純物を含む。第1面密度は、第2面密度よりも高い。
【0022】
また、第2電極20から第1電極10に向かう方向、例えば、Z方向において、第6半導体層16の層厚は、第7半導体層17の層厚よりも厚い。
【0023】
第3電極30および制御電極40は、例えば、半導体部SBと第1電極10との間に設けられる。第3電極30および制御電極40は、半導体部SBの第1表面1Sから第1半導体層11に至る深さを有するトレンチTGの内部にそれぞれ設けられる。第3電極30および制御電極40は、第1表面1Sに沿って並ぶ。例えば、X方向に並ぶ2つの制御電極40の間に、複数の第3電極30が設けられる。第3電極30および制御電極40は、例えば、導電性を有するポリシリコンである。
【0024】
第3電極30と半導体部SBとの間には、絶縁膜33が設けられる。絶縁膜33は、例えば、シリコン酸化膜である。第3電極30は、第1電極10に電気的に接続される。第3電極30は、例えば、第1電極10と同電位になるように設けられる。
【0025】
制御電極40は、絶縁膜43により半導体部SBから電気的に絶縁される。また、制御電極40は、絶縁膜45により第1電極10から電気的に絶縁される。制御電極40は、制御端子GT1に電気的に接続される。絶縁膜43および絶縁膜45は、例えば、シリコン酸化膜である。制御端子GT1は、例えば、ゲートパッドである。
【0026】
第2半導体層12は、例えば、隣り合う2つの第3電極30の間、および、第3電極30と制御電極40との間にそれぞれ設けられる。例えば、隣り合う2つの制御電極40が設けられ、第2半導体層12は、2つの制御電極40の間に設けられても良い。
【0027】
実施形態は、複数の第2半導体層12が設けられる実施例に限定される訳ではなく、第2半導体層12は一体に設けられ、2つの第3電極30の間、および、第3電極30と制御電極40との間にそれぞれ設けられる部分を含む構成であっても良い。
【0028】
第1半導体層11および第2半導体層12は、絶縁膜43を介して、第3電極30に向き合う。また、第1半導体層11および第2半導体層12は、絶縁膜43を介して、制御電極40に向き合う。第3半導体層13は、第1電極10と第2半導体層12との間において、例えば、絶縁膜43に接するように設けられる。
【0029】
例えば、半導体装置1のターンオン時に、第2半導体層12と絶縁膜33との界面に第1導電形の反転層が誘起され、第1半導体層11と第3半導体層13は電気的に接続される。これにより、第1導電形のキャリア(電子)が、第3半導体層13から第1導電形の反転層を介して第1半導体層11へ注入される。これに対応して、第2導電形のキャリア(以下、正孔)が第5半導体層15から第6半導体層16および第7半導体層17を介して第1半導体層11に注入される。さらに、第1半導体層11から第2半導体層12に正孔が注入され、第4半導体層14を介して第1電極20に排出される。
【0030】
第7半導体層17は、第6半導体層16の第1導電形不純物の面密度よりも低い面密度の第1導電形不純物を含む。これにより、第7半導体層17を介して第1半導体層11に注入される正孔の量は、第6半導体層16を介して第1半導体層11に注入される正孔の量よりも多くなる。このため、第2半導体層12と第7半導体層17との間に位置する第1半導体層11の領域における正孔密度は、第2半導体層12と第6半導体層16との間に位置する第1半導体層11の領域の正孔密度よりも高くなる。その結果、第7半導体層17と第1電極10との間において、第1半導体層11から第1電極10へより多くの正孔が排出される。すなわち、第7半導体層17と第1電極10との間において、正孔電流Ihによる電流フィラメントが生じ易くなる。
【0031】
さらに、このような電流フィラメントが生じると、その近傍の温度が上昇し、電流フィラメントはより低温の領域へ移動する。半導体装置1では、電流フィラメントは、半導体部SBの第2表面2Sに平行な領域であって、第7半導体層17が設けられた領域内を移動する。言い換えれば、半導体装置1では、第7半導体層17を設けた領域内に電流フィラメントを閉じ込めることができる。
【0032】
一方、半導体装置1では、第3半導体層13は、第1電極10と第6半導体層16との間に設けられる。すなわち、半導体装置1におけるnpn寄生トランジスタは、第1電極10と第6半導体層16との間に設けられる。このため、半導体装置1では、電流フィラメントがnpn寄生トランジスタの近傍で発生することがなく、そのターンオンを回避し、破壊耐量を向上させることができる。
【0033】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置1の構成を示す模式図である。
図2は、第1半導体層11、第5半導体層15、第6半導体層16、第7半導体層17における不純物分布を表している。横軸は、第1表面1Sから第2表面2Sに向かう方向の深さである。縦軸は、各層の不純物濃度である。第1半導体層11、第6半導体層16および第7半導体層17では、第1導電形不純物(n形不純物)の濃度分布、第5半導体層15では、第2導電形不純物(p形不純物)の濃度分布を示している。
【0034】
図2に示すように、第6半導体層16および第7半導体層17の不純物濃度は、第1半導体層11の不純物濃度よりも高い。また、第5半導体層15の不純物濃度のピーク値は、第6半導体層16の不純物濃度および第7半導体層17の不純物濃度よりも高い。第6半導体層16の深さ方向の幅は、例えば、第7半導体層17の深さ方向の幅よりも広い。
【0035】
第7半導体層17の不純物濃度のピーク値は、例えば、第6半導体層16の不純物濃度のピーク値よりも高い。また、第7半導体層17の不純物分布のピーク位置から半導体部SBの第2表面2S(
図1参照)までの距離は、第6半導体層16の不純物分布のピーク位置から半導体部SBの第2表面2Sまでの距離よりも短い。すなわち、第7半導体層17の不純物分布のピークは、第5半導体層15の不純物分布のピーク位置と、第6半導体層16の不純物分布のピーク位置と、の間に位置する。
【0036】
第5半導体層15、第6半導体層16および第7半導体層17は、例えば、半導体部SBの第2表面2Sを通して、第2導電形不純物および第1導電形不純物をイオン注入することにより形成される。第1導電形不純物は、例えば、リン(P)であり、第2導電形不純物は、例えば、ボロン(B)である。
【0037】
例えば、第7半導体層17を形成するためのイオン注入エネルギーは、第6半導体層16を形成するためのイオン注入エネルギーよりも低い。また、第5半導体層15を形成するためのイオン注入エネルギーは、第7半導体層17を形成するためのイオン注入エネルギーよりも低い。第7半導体層17における第1導電形不純物のドーズ量は、第6半導体層16における第1導電形不純物のドーズ量よりも少ない。なお、実施形態は、上記の例に限定される訳ではなく、例えば、第7半導体層17を形成するために、第1導電形不純物を第2表面2Sの全面にイオン注入した後、第6半導体層16を形成するために、第1導電形不純物を選択的にイオン注入しても良い。すなわち、第6半導体層16は、2重のイオン注入により形成されても良い。
【0038】
図3は、第1実施形態に係る半導体装置1を示す模式平面図である。
図3は、第1電極10および絶縁膜45を除いた、半導体部SBの第1表面を表している。
図1は、例えば、
図3中に示すA-A線に沿った断面図である。
【0039】
図3に示すように、第3電極30および制御電極40は、それぞれ、Y方向に延在するように設けられる。例えば、X方向において近接するように設けられた2つの制御電極40の間において、第3半導体層13および第4半導体層14は、Y方向に交互に並ぶ。第3半導体層13のY方向の幅は、例えば、第4半導体層14のY方向の幅よりも狭い。また、別の第4半導体層14は、X方向において隣り合う2つの第3電極30の間、および、X方向において隣り合う第3電極30と制御電極50との間において、それぞれY方向に延在するように設けられる。
【0040】
図3中に破線で示すように、第6半導体層16および第7半導体層17は、それぞれ、第3電極および制御電極40と同じ方向(Y方向)に延在するように設けられる。
【0041】
図4は、第1実施形態の第1変形例に係る半導体装置2を示す模式平面図である。
図4は、第1電極10および絶縁膜45を除いた、半導体部SBの第1表面1S(
図1参照)を表している。この例でも、第3電極30および制御電極40は、それぞれY方向に延在する。
【0042】
図4に示すように、第3半導体層13は、X方向において隣り合う第3電極30と制御電極40との間に部分的に設けられる。さらに、複数の第3半導体層13が制御電極40の延在方向(Y方向)に並ぶように設けられる。第3半導体層13は、それぞれ、絶縁膜43に接するように設けられる。また、複数の第3半導体層13は、Y方向において相互に離間して設けられる。また、第3半導体層13は、制御電極40を挟んで、X方向に並ぶ。
【0043】
第4半導体層14は、X方向において隣り合う2つの第3電極30の間に設けられ、Y方向に延在する。また、第4半導体層14は、X方向において隣り合う第3電極30と制御電極40との間にも設けられる。第4半導体層14は、第3電極30と制御電極40との間において、絶縁膜33に接するように設けられる。また、第4半導体層14は、第3電極30と制御電極40との間において、第1部分14aと、第2部分14bと、を有する。第1部分14aは、第3半導体層13と絶縁膜33との間に位置する。第2部分14bは、Y方向において隣り合う2つの第3半導体層13の間に延在し、絶縁膜43に接するように設けられる。
【0044】
第6半導体層16および第7半導体層17は、それぞれX方向に延在する。第7半導体層17は、Y方向に並んだ2つの第6半導体層16の間に設けられる。第7半導体層17は、第4半導体層14の第2部分14bの下方に位置する。また、第6半導体層16は、第3半導体層13の下方に位置するように設けられる。
【0045】
図5は、第1実施形態の第2変形例に係る半導体装置3を示す模式平面図である。
図5は、第1電極10および絶縁膜45を除いた、半導体部SBの第1表面1S(
図1参照)を表している。第3電極30および制御電極40は、それぞれY方向に延在する。
【0046】
図5に示すように、第3半導体層13は、X方向において隣り合う第3電極30と制御電極40との間に部分的に設けられる。さらに、複数の第3半導体層13が制御電極40の延在方向(Y方向)に並ぶように設けられる。複数の第3半導体層13は、絶縁膜43に接し、Y方向において相互に離間して設けられる。また、第3半導体層13は、制御電極40を挟んで、X方向に並ぶ。
【0047】
第4半導体層14は、X方向において隣り合う2つの第3電極30の間、および、X方向において隣り合う第3電極30と制御電極40との間に設けられる。この例でも、第4半導体層14は、第3電極30と制御電極40との間において、第1部分14aと、第2部分14bと、を有する。第1部分14aは、第3半導体層13と絶縁膜33との間に位置する。第2部分14bは、Y方向において隣り合う2つの第3半導体層13の間に延在し、絶縁膜43に接する。
【0048】
第7半導体層17は、2つの第3電極30の間の第4半導体層14の下方、第4半導体層14の第1部分14aの下方、および、第2部分14bの下方に位置する。また、第6半導体層16は、第3半導体層13の下方に位置するように設けられる。
【0049】
図3~
図5に示すように、第6半導体層16および第7半導体層17は、任意に配置できる。以下、
図6(a)~
図10(b)を参照して、第6半導体層16および第7半導体層17の平面配置を説明する。
【0050】
図6(a)~(c)は、第1実施形態の第3変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図6(a)~(c)は、第5半導体層15上に設けられた第6半導体層16および第7半導体層17を例示する平面図である。
【0051】
図6(a)に示すように、第6半導体層16は、複数の第7半導体層17を囲むように設けられる。複数の第7半導体層17は、それぞれY方向に延在し、X方向に並ぶ。第6半導体層16は、X方向に並んだ第7半導体層17の間に延在する部分を含む。
【0052】
図6(b)に示すように、複数の第7半導体層17は、第6半導体層16中において、それぞれX方向に延在し、X方向に並んでも良い。
【0053】
図6(c)に示すように、第7半導体層17は、例えば、格子状に設けられる。第6半導体層16は、第7半導体層17の外周に沿って、格子状の第7半導体層17を囲む。また、第6半導体層16は、格子状の第7半導体層17の内側にも設けられる。
【0054】
図7(a)~(c)は、第1実施形態の第4変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図7(a)~(c)は、第5半導体層15上に設けられた第6半導体層16および第7半導体層17を例示する平面図である。
【0055】
図7(a)に示すように、第7半導体層17は、例えば、枠状に設けられる。第6半導体層16は、第7半導体層17の外周に沿って、第7半導体層17を囲むように設けられる。また、第6半導体層16は、枠状の第7半導体層17の内側にも設けられる。
【0056】
図7(b)に示すように、第7半導体層17は、例えば、枠状の部分と、その内側に設けられた格子状の部分と、を組み合わせた形状に設けられる。第6半導体層16は、第7半導体層17の外周に沿って、第7半導体層17を囲むように設けられる。第6半導体層16は、格子状の第7半導体層17の内側にも設けられる。
【0057】
図7(c)に示すように、第7半導体層17は、円形もしくは楕円形の枠状に設けられても良い。第6半導体層16は、第7半導体層17の外周に沿って、第7半導体層17を囲むように設けられる。第6半導体層16は、枠状の第7半導体層17の内側にも設けられる。
【0058】
図8(a)および(b)は、第1実施形態の第5変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図8(a)および(b)は、第5半導体層15上に設けられた第6半導体層16および第7半導体層17を例示する平面図である。
【0059】
図8(a)に示すように、複数の第7半導体層17が、それぞれ島状に設けられる。第7半導体層17は、円形、楕円形もしくは方形の形状を有する。第6半導体層16は、複数の第7半導体層17を囲むように設けられる。複数の第7半導体層17は、例えば、X方向およびY方向に並ぶ。
【0060】
図8(b)に示すように、複数の第7半導体層17は、その一部が相互に連結されても良い。複数の第7半導体層17のうちの相互に連結されないものは、島状に配置される。複数の第7半導体層17の一部は、例えば、X方向およびY方向に連結され、一体化される。
【0061】
図9(a)および(b)は、第1実施形態の第6変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図9(a)および(b)は、第5半導体層15上に設けられた第6半導体層16および第7半導体層17を例示する平面図である。
【0062】
半導体部SBは、例えば、第2半導体層11、第3半導体層13および第4半導体層14を含む活性領域ACRと、活性領域ACRを囲む終端領域ETRと、を含む。
図9(a)中および
図9(b)中に示す破線は、活性領域ACRと終端領域ETRとの境界BDである。
【0063】
図9(a)に示すように、複数の第7半導体層17は、活性領域ACRに設けられる。第7半導体層17は、例えば、Y方向に延在し、その両端は、活性領域ACRと終端領域ETRの境界BDに位置する。第6半導体層16は、X方向に並ぶ複数の第7半導体層17の間に設けられる部分を含む。また、第6半導体層16は、終端領域ETRに設けられ、境界BDに沿って活性領域ACRを囲む部分を含む。
【0064】
図9(b)に示すように、第7半導体層17は、活性領域ACRにおいて、格子状に設けられる。第7半導体層17のX方向およびY方向にそれぞれ延在する部分の両端は、活性領域ACRと終端領域ETRとの境界BDに位置する。第6半導体層16は、終端領域ETRにおいて、境界BDに沿って第7半導体層17を囲むように設けられる。また、第6半導体層16は、格子状の第7半導体層17の内側にも設けられる。終端領域ETRに設けられる第6半導体層16は、第7半導体層17の端部間に延在する部分16cを含む。第7半導体層17は、活性領域ACRにおいて、例えば、隣り合う2つの第6半導体層16の間に位置する部分を含む。
【0065】
図9(a)および(b)に示すように、第7半導体層17は、電流フィラメントが活性領域ACRの内部で発生するように設けられる。すなわち、終端領域ETRにおける電流集中を防ぐように設けられる。
【0066】
図10(a)および(b)は、第1実施形態の第7変形例に係る半導体装置を示す模式平面図である。
図10(a)および(b)は、第5半導体層15上に設けられた第6半導体層16および第7半導体層17を例示する平面図である。
【0067】
図10(a)に示すように、第7半導体層17は、活性領域ACRに設けられた枠状の部分と、枠状の部分から活性領域ACRと終端領域ETRとの境界BDに伸びる複数の延伸部17exと、を含む。第6半導体層16は、枠状の第7半導体層17の内側に設けられる。また、第6半導体層16は、終端領域ETRに設けられ、境界BDに沿って活性領域ACRを囲むように設けられる。さらに、終端領域ETRに設けられる第6半導体層16は、第7半導体層17の延伸部17exの間に延在する部分16dを含む。例えば、活性領域ACRと終端領域ETRとの境界近傍で発生した電流フィラメントは、第7半導体層17の延伸部17exを介して枠状の部分へ導かれる。
【0068】
図10(b)に示すように、第7半導体層17は、活性領域ACRと終端領域ETRとの境界BDに沿って設けられる。第6半導体層16は、活性領域ACRおよび終端領域ETRの両方にそれぞれ設けられる。第7半導体層17は、活性領域ACRに設けられた第6半導体層16と、終端領域ETRに設けられた第6半導体層16との間に位置する。これにより、電流フィラメントは、活性領域ACRと終端領域ETRとの間に発生し、境界BDに沿って移動する。
【0069】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る半導体装置4を示す模式断面図である。半導体装置4は、例えば、IGBTである。
【0070】
図11に示すように、半導体装置4は、半導体部SBと、第1電極10と、第2電極20と、第3電極30と、制御電極40と、制御電極50と、を備える。半導体部SBは、第1電極10と第2電極20との間に設けられ、第1~第7半導体層11~17を含む。
【0071】
この例では、制御電極40は、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。また、第1電極10と第7半導体層17との間において、第3半導体層13cが制御電極40に接するように設けられる。すなわち、npn寄生トランジスタは、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。
【0072】
さらに、制御電極50は、第1電極10と第7半導体層17との間において、制御電極40と隣り合う位置に設けられる。制御電極50は、半導体部SBの第1表面1Sから第1半導体層11に至る深さを有する別のトレンチTGの内部に配置される。
【0073】
制御電極50は、半導体部SBと第1電極10との間に位置する。制御電極50は、絶縁膜53により半導体部SBから電気的に絶縁される。また、制御電極50は、絶縁膜55により第1電極10から電気的に絶縁される。制御電極50は、例えば、制御端子GT2に電気的に接続される。制御電極50は、制御電極40から独立して制御される。制御端子GT2は、例えば、別のゲートパッドであり、制御端子GT1とは電気的に絶縁される。
【0074】
制御電極50は、絶縁膜53を介して、第1半導体層11および第2半導体層12に向き合う。例えば、制御端子GT2を介して、制御電極50に負電位を印加することにより、第1半導体層11と絶縁膜53との界面に、第2導電形の反転層を誘起することができる。これにより、第1半導体層11から第2半導体層12へ、第2導電形の反転層を介して、正孔を排出する経路が形成される。
【0075】
例えば、第1電極10と第7半導体層17との間において、制御電極40の近傍に電流フィラメントが生じた場合、第2導電形の反転層、絶縁膜53に接した第2半導体層12および第4半導体層14を介して第1電極10に正孔電流を流すことができる。これにより、第1半導体層11と第3半導体層13cとの間に位置する第2半導体層12に正孔が過剰に注入されることを回避し、npn寄生トランジスタのターンオンを防ぐことができる。
【0076】
図12は、第2実施形態の第1変形例に係る半導体装置5を示す模式断面図である。半導体装置5は、例えば、IGBTである。
【0077】
図12に示すように、半導体装置5は、半導体部SBと、第1電極10と、第2電極20と、第3電極30と、制御電極40と、を備える。半導体部SBは、第1電極10と第2電極20との間に設けられ、第1~第7半導体層11~17を含む。
【0078】
この例では、制御電極40は、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。また、第1電極10と第7半導体層17との間において、第3半導体層13cが制御電極40に接するように設けられる。すなわち、npn寄生トランジスタは、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。
【0079】
半導体装置5は、さらに、第1電極10から電気的に分離された別の第1電極10aをさらに備える。第1電極10aは、例えば、Z方向において、第7半導体層17と重なる位置に設けられる。第7半導体層17は、第1電極10aと第2電極20との間に位置する。第1電極10aは、制御電極40に隣接する第4半導体層14cに電気的に接続される。第4半導体層14cは、第1電極10aと第7半導体層17との間に位置する。また、第4半導体層14cは、第3半導体層13cに近接した位置に設けられる。
【0080】
第1電極10aは、例えば、第1電極10よりも低い電位にバイアスされる。このため、正孔電流は、第1電極10aと第1半導体層11との間に位置する第2半導体層12および第4半導体層14cを介して、第1半導体層11から第1電極10aにより多く流れる。例えば、制御電極40の近傍に電流フィラメントが生じた場合、第1半導体層11から第1電極10aへ正孔電流を流すことにより、第1半導体層11と第3半導体層13cとの間に位置する第2半導体層12に正孔が過剰に注入されることを回避できる。これにより、npn寄生トランジスタのターンオンを防ぐことができる。
【0081】
図13は、第2実施形態の第2変形例に係る半導体装置6を示す模式断面図である。半導体装置6は、例えば、IGBTである。
【0082】
図13に示すように、半導体装置6は、半導体部SBと、第1電極10と、第2電極20と、第3電極30と、制御電極40と、制御電極60と、を備える。半導体部SBは、第1電極10と第2電極20との間に設けられ、第1~第7半導体層11~17を含む。制御電極60は、半導体部SBの第1表面1Sから第1半導体層11に至る深さを有する別のトレンチTGの内部に配置される。
【0083】
この例では、制御電極60は、第1電極10と第7半導体層17との間に設けられる。制御電極60は、半導体部SBと第1電極10との間に位置する。制御電極60は、絶縁膜63により半導体部SBから電気的に絶縁される。また、制御電極60は、絶縁膜65により第1電極10から電気的に絶縁される。制御電極60は、例えば、制御端子GT1に電気的に接続される。すなわち、制御電極60には、制御電極40と同じ電位が印加される。
【0084】
さらに、第3半導体層13cは、絶縁膜63を介して制御電極60に隣接するように設けられる。第3半導体層13cは、絶縁膜63に接する。すなわち、npn寄生トランジスタは、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。
【0085】
制御電極60は、第3電極30および制御電極40とは異なる材料を含む。制御電極60の材料は、第3電極30および制御電極40の材料よりも高い熱伝導率を有する。制御電極60は、例えば、タングステンなどの金属である。第3電極30および制御電極40は、例えば、ポリシリコンである。
【0086】
この例では、半導体部SBで発生したジュール熱の制御電極60を介した放熱が促進される。これにより、制御電極60に近接したnpn寄生トランジスタの温度上昇を抑制し、ターンオンを防ぐことができる。
【0087】
図14(a)および(b)は、第2実施形態の第3変形例に係る半導体装置7を示す模式断面図である。
図14(b)は、
図14(a)中に示すB-B線に沿った断面図である。半導体装置7は、例えば、IGBTである。
【0088】
図14(a)に示すように、半導体装置7は、半導体部SBと、第1電極10と、第2電極20と、第3電極30と、制御電極40と、を備える。半導体部SBは、第1電極10と第2電極20との間に設けられ、第1~第7半導体層11~17を含む。
【0089】
制御電極40は、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。また、第3半導体層13cも、第1電極10と第7半導体層17との間に設けられ、絶縁膜43を介して制御電極40に隣接する。すなわち、npn寄生トランジスタは、第1電極10と第7半導体層17との間にも設けられる。
【0090】
図14(b)に示すように、半導体部SBは、第2導電形の第8半導体層18をさらに含む。第8半導体層18は、第3半導体層13cの近傍において、第2半導体層12中に延在し、第1半導体層11と第4半導体層14とをつなぐように設けられる。第8半導体層18は、第2半導体層12の第2導電形不純物の濃度よりも高濃度の第2導電形不純物を含む。
【0091】
第8半導体層18は、第1半導体層11から第4半導体層14に至る低抵抗の正孔排出経路となる。このため、制御電極40の近傍に電流フィラメントが生じた場合、正孔電流は、第8半導体層18を介して第4半導体層14に流れる。これにより、第1半導体層11と第3半導体層13cとの間に位置する第2半導体層12の領域に正孔が過剰に注入されることを回避し、npn寄生トランジスタのターンオンを防ぐことができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1~7…半導体装置、 1S…第1表面、 2S…第2表面、 10、10a…第1電極、 11…第1半導体層、 12…第2半導体層、 13、13c…第3半導体層、 14、14c…第4半導体層、 15…第5半導体層、 16…第6半導体層、 17…第7半導体層、 17ex…延伸部、 18…第8半導体層、 20…第2電極、 30…第3電極、 33、43、45、53、55、63、65…絶縁膜、 40、50、60…制御電極、 ACR…活性領域、 BD…境界、 ETR…終端領域、 GT1、GT2…制御端子、 Ih…正孔電流、 SB…半導体部、 TG…トレンチ、