(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】魚釣用電動リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
A01K89/017
(21)【出願番号】P 2021093725
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】狩野 秀太
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 元博
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000030(JP,A)
【文献】特開2021-069316(JP,A)
【文献】特開平06-205629(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の側板間に回転自在に支持されるスプールと、
前記スプールに動力が伝達される動力伝達状態と前記スプールへの動力の伝達が遮断される動力遮断状態とを切り換えるクラッチ機構と、
前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記リール本体に前後方向に回動可能に支持され、前記駆動モータの出力を調節する操作部材と、
前記操作部材の回動角を検出する第1のセンサと、
前記クラッチ機構の前記動力伝達状態であるON位置と、前記クラッチ機構の前記動力遮断状態であるOFF位置とを検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサと前記第2のセンサを収容する収容部と、
を備え、
前記収容部は、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが、それぞれ前記操作部材の回動角及び前記クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部の移動を検知可能に配置されて
おり、
前記収容部に設けられる支持体の一方の面に前記第1のセンサが支持され、前記支持体の反対側の面に前記第2のセンサが支持されていることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
リール本体の側板間に回転自在に支持されるスプールと、
前記スプールに動力が伝達される動力伝達状態と前記スプールへの動力の伝達が遮断される動力遮断状態とを切り換えるクラッチ機構と、
前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記リール本体に前後方向に回動可能に支持され、前記駆動モータの出力を調節する操作部材と、
前記操作部材の回動角を検出する第1のセンサと、
前記クラッチ機構の前記動力伝達状態であるON位置と、前記クラッチ機構の前記動力遮断状態であるOFF位置とを検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサと前記第2のセンサを収容する収容部と、
を備え、
前記収容部は、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが、それぞれ前記操作部材の回動角及び前記クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部の移動を検知可能に配置されており、
前記収容部は、2つの筐体を備え、
前記2つの筐体の一方に前記第1のセンサが収容され、前記2つの筐体の他方に前記第2のセンサが収容されることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記収容部は、前記操作部材と前記クラッチ作動部との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記収容部は、前記操作部材の回動軸の中心軸線上に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記第1のセンサは、前記リール本体に回動可能に支持される前記操作部材の支軸に設けられる磁石の回転位相の変化を検知して、前記操作部材の回動位置を検出する磁気センサであり、
前記第2のセンサは、前記クラッチ作動部に設けられる磁石に伴う磁気の変化を検出する磁気センサである、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記第1及び第2のセンサは、それぞれ検知対象となる磁石同士が磁気的に干渉しない位置で磁気の変化を検出するように配置されていることを特徴とする請求項5に記載の魚釣用電動リール。
【請求項7】
前記クラッチ作動部は、前記クラッチ機構を前記OFF位置から前記ON位置へ切り換えるための切り換え部材、又は、前記スプールに対して動力を継脱させるピニオンを軸方向に沿って移動させるクラッチプレートであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項8】
前記収容部は、前記リール本体に支持されて前記第1及び第2のセンサの両方を収容する1つの筐体であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項9】
前記操作部材は、前記スプールの上方で前記側板間の略中央位置に設けられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部材によって駆動モータの出力を調節する魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
船釣り等、深場の魚層を対象とした魚釣りを行なう場合には、魚釣用電動リールが多用されており、その場合、駆動モータの出力を利用してスプールを回転させて釣糸を巻き取り、深場から仕掛け及び掛かった魚を回収する。駆動モータの出力は、リール本体に設けられた操作部材を手の指で回動操作することにより増減調節することが可能であり、実釣時の状況に対応して巻き取り駆動制御を行なっている。
【0003】
近年、実釣時の多様化に対応するべく、電動リールも多機能化されており、スプールを動力伝達状態と動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構のON/OFF状態の検出に基づいてモータ駆動状態を制御する機能(クラッチ自動切り換え機能、糸送り機能、自動棚停止機能など)を備えるものが、例えば特許文献1で知られている。
【0004】
この特許文献1に開示される電動リールでは、リール本体の側板間に回転自在に支持されるスプール内にスプール回転用の駆動モータが配設され、リール本体の上部に取着された操作パネル上のモータ制御用スイッチ(押しボタン式のオートスイッチ、マニュアルスイッチ)の操作により駆動モータの駆動状態が制御される。
【0005】
また、この特許文献1の電動リールにおいて、スプールを動力伝達状態と動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構のON/OFF状態を検出する検出装置は、クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動体に埋設された磁石と、この磁石に対向して配置されるとともに操作パネルの延設部内にリード線を介して接続されるリードスイッチとから構成されており、この検出装置の検出結果に基づいて駆動モータが駆動又は停止制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に開示される電動リールでは、検出装置を構成するリードスイッチを設置するために、操作パネルに延設部を設ける必要があり、したがって、その延設分だけリール本体内に新たにスペースを確保する必要がある。そのため、リール全体が大型化及び重量化するだけでなく、駆動力を伝達するギアボックス内における内部駆動機構の設計の自由度も制限される。
【0008】
また、特許文献1の電動リールは、操作パネル上に配置された押しボタン式の各種スイッチによってモータ駆動の断続運転及び自動運転を行なう構成であるため、実釣時の状況に応じたモータの出力増減調節を柔軟に行なうことが難しいとともに、検出装置の延設構成に起因するリール全体の大型化の影響により、良好な握持保持性を維持しながらの魚釣り操作性にも劣る。
【0009】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、多機能化の実現を図りつつ、それに伴うリールの大型化及び設計自由度の制限を回避できるとともに、良好な魚釣り操作性及び握持保持性にも寄与し得る魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体の側板間に回転自在に支持されるスプールと、前記スプールに動力が伝達される動力伝達状態と前記スプールへの動力の伝達が遮断される動力遮断状態とを切り換えるクラッチ機構と、前記リール本体に設けられ、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記リール本体に前後方向に回動可能に支持され、前記駆動モータの出力を調節する操作部材と、前記操作部材の回動角を検出する第1のセンサと、前記クラッチ機構の前記動力伝達状態であるON位置と、前記クラッチ機構の前記動力遮断状態であるOFF位置とを検出する第2のセンサと、前記第1のセンサと前記第2のセンサを収容する収容部と、を備え、前記収容部は、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが、それぞれ前記操作部材の回動角及び前記クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部の移動を検知可能に配置されていることを特徴とする。
【0011】
上記した構成の魚釣用電動リールでは、操作部材の回動角検出用の第1のセンサとクラッチ機構のON/OFF検出用の第2のセンサとを備える大型化し易い多機能化されたリール構造において、これらの2つのセンサをまとめて収容部内に収容して配置している。そして、前記収容部を、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが、それぞれ前記操作部材の回動角及び前記クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部の移動を検知可能に配置したことで、リール本体内において、2つのセンサがコンパクトに集約された配置形態を実現することが可能となる。更に、駆動機構が配設されるリール本体の限られたスペース(既存のスペース)を有効活用することも可能となり、リール本体内に2つのセンサのための各スペースを確保する必要性を排除して、省スペース化によるリール本体の小型化が実現される。また、これ伴い、駆動力を伝達するギアボックス内における内部駆動機構の設計の自由度が制限されるといった事態も回避できる。
【0012】
また、リール本体が小型化されることで、前後方向に回動可能な操作部材の動作形態とも相まって、操作性及び握持保持性を従来に比して向上させることが可能となる。この場合、操作部材は、スプールの上方で側板間の略中央位置に設けられていることが好ましく、そのような操作部材の配置形態によれば、操作性及び握持保持性の向上に寄与し得るだけでなく、操作部材とクラッチ機構とが、設計構造上、操作部材の回動軸の軸線方向で対向し易くなり、2つのセンサの同一箇所での検出を容易にすることができる。また、2つのセンサを一箇所にコンパクトに配置できれば、センサから延びる配線もコンパクトに集約することが可能となり、電気的及び機械的な部品の組み込み性の向上、防水性の向上、製造工程の簡略化、ひいては、コスト低減を実現することも可能となる。更に、収容部によるセンサの収容及び収容部の配置形態は、標準化し易く、多くの機種のリールに2つのセンサを搭載できるようにすることも可能となる。
【0013】
なお、上記した構成において、クラッチ作動部は、クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するものであれば、その部材については限定されることはなく、回動移動やスライド移動等、その移動方法については限定されることはない、また、操作部材については、回動操作できるものであれば良く、ダイアル式、レバー式等、その操作形態については限定されることはない。さらに、収容部は、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサを収容した構造、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサを夫々収容し、これを一体化した構造であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多機能化の実現を図りつつ、それに伴うリールの大型化及び設計自由度の制限を回避できるとともに、良好な魚釣り操作性及び握持保持性にも寄与し得る魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る魚釣用電動リールの一実施形態を示す平面図。
【
図2】
図1に示す魚釣用電動リールを右側板の側から見た図であり、要部構成を示す一部断面を伴う側面図。
【
図3】制御ケースを除いて第1及び第2のセンサを収容する収容部、及びその周辺を部分的に示す部分斜視図。
【
図4】収容部が制御ケースに取着された状態を示す
図3と同様の斜視図。
【
図5】クラッチ機構の側から見た収容部及びその内部構成の概略斜視図。
【
図6】操作部材の側から見た収容部及びその内部構成の概略斜視図。
【
図8】制御ケースと配線で繋がれた収容部を示す斜視図。
【
図9】本発明の第1の変形例を示す側面図(
図2に対応する側面図)。
【
図10】第1及び第2のセンサを含む各検出部の検知信号に伴う制御部による各駆動部の制御を概略的に示すブロック図。
【
図11】本発明の第2の変形例を示す概略的な模式図。
【
図12】本発明の第3の変形例を示す概略的な模式図。
【
図13】本発明の第4の変形例を示す概略的な模式図。
【
図14】収容部、収容部内に収容された第1のセンサと第2のセンサ、及び、クラッチ作動部の配置態様の第2実施形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用電動リールの実施形態について説明する。
図1から
図4は本発明の一実施形態に係る魚釣用電動リールの主要構成を示す図であり、
図1は、魚釣用電動リールの平面図、
図2は、
図1に示す魚釣用電動リールを右側板の側から見た図であり、要部構成を示す一部断面を伴う側面図、
図3は、制御ケースを除いて第1及び第2のセンサを収容する収容部、及びその周辺を部分的に示す部分斜視図、そして、
図4は、収容部が制御ケースに取着された状態を示す
図3と同様の斜視図である。
なお、以下の説明において、前後方向、左右方向、及び、上下方向は
図1及び
図2に矢印で記載の方向と定義する。
【0017】
本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻き取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸を中心に回転可能に支持されている。スプール7は、釣糸が巻回される釣糸巻回胴部7aと、釣糸巻回胴部7aに巻回される釣糸を両側で規制するフランジ7b(
図3及び
図4参照)とを備えている。
【0018】
また、本実施形態では、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻き取り操作及び駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構(ハンドル6の回転駆動力をスプールに伝達するハンドル側動力伝達機構10A、及び、駆動モータ8の回転駆動をスプールに伝達するモータ側動力伝達機構10B)を介して、釣糸巻き取り方向に回転駆動される。
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であってもよいが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。
【0019】
上記した動力伝達機構10A,10Bについては、一般的に公知であるため、詳細な構造については省略するが、本実施形態のハンドル側動力伝達機構10Aは、公知のように、手動ハンドル6のハンドル軸6aに回転可能に支持されたドライブギア12、ドライブギア12に噛合するピニオンギア(ピニオン)13、ハンドル軸6aの逆回転を防止する逆転防止機構(ラチェットや一方向クラッチ等で構成される;図示せず)等を備えている。
【0020】
また、モータ側動力伝達機構10Bは、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する遊星歯車機構等を備えた減速機構15、駆動モータ8の駆動力をスプール軸に伝達するギアトレイン(動力伝達ベルト等を備えていてもよい)等を備えており、更に、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機構等を備えている。このようなモータ側動力伝達機構10Bについては、
図1に示すように、左側板5A側に配設されていてもよいし、右側板5B側に配設されてもよく、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていてもよい。
【0021】
なお、上記した動力伝達機構10A,10Bの構成は、リール本体5の大きさ、駆動モータ8の仕様、対象魚種等によって適宜変形することができ、本発明においては、その構造については、特定の形態に限定されることはない。
【0022】
前記ハンドル軸6aには、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構が配設されており、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグとも称される)18が設けられている。また、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構(図示せず)が配設されている。
【0023】
また、リール本体5内には、ピニオンギア13を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態(スプール7に動力が伝達される動力伝達状態)とフリー回転状態(スプールへの動力の伝達が遮断される動力遮断状態)とに切り換える公知のクラッチ機構20が配置されている。このクラッチ機構20は、前記動力伝達機構に介在されて手動ハンドル6及び駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。
【0024】
前記クラッチ機構20は、動力伝達をON状態(動力伝達状態)からOFF状態(動力遮断状態)に切り換えるクラッチOFF切り換え部材21を備えており、更に、本実施形態では、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材22を備えている。そして、前記クラッチOFF切り換え部材21及びクラッチON切り換え部材22は、右側板内に配設され、クラッチ機構20を構成するクラッチプレート20aに係合している。
【0025】
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材21は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設されており、その表面に親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構20をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。すなわち、クラッチOFF切り換え部材21を押し下げ操作することで、クラッチプレート20aが移動され、前記ピニオンギア13に係合しているヨーク20bを駆動して、ピニオンギア13を軸方向に摺動させてスプール軸との係合が解除される(クラッチOFF状態)。
なお、クラッチOFF切り換え部材21は、クラッチプレート20aに設けられる振り分けバネ(図示せず)によって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で振り分け保持されている。
【0026】
また、前記クラッチON切り換え部材22は、右側板5B側に設置されており、振り分け保持バネによって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持されている。この場合、クラッチON切り換え部材22は、クラッチON状態では、右側板5B(右カバー4b)の表面と略面一状となり、クラッチOFF状態では、右側板5Bの表面から突出するようになっている(この構成については、第1の変形例に関連して後述する)。すなわち、クラッチOFF切り換え部材21によってクラッチ機構がOFF操作されると、クラッチON切り換え部材22は、右側板5Bの表面から突出し、リール本体5を保持した手の親指の押圧操作でクラッチON状態に切換え可能に構成されている。
【0027】
なお、クラッチON切り換え部材22は、機械式以外にも、電気式(例えば、ソレノイドを利用したもの)で構成されていてもよい。また、クラッチOFF切り換え部材21と一体部材で構成されていてもよい。さらに、前記クラッチON切り換え部材22は設けられない構成であってもよく、クラッチのONへの復帰は、ハンドル6の巻き取り操作で実現される構成であってもよい。
【0028】
ここで、前述したクラッチ機構20及びその周辺部分の構成について説明する。
前記ピニオンギア13は、スプール7に対して動力を継脱させる部材であり、クラッチ機構20のヨーク20bによってスプール7側に移動されると、スプール軸の係合部に嵌合状態で係合してクラッチON状態となり、ハンドル6の巻き取り操作(ドライブギア12の回転駆動力)をスプール軸(スプール7)に伝達する(釣糸巻き取り可能な動力伝達状態)。また、前記ピニオンギア13は、前記ヨーク20bによってハンドル6側に移動されると、スプール軸の係合部から外れてクラッチOFF状態となり、釣糸放出可能な動力遮断状態となる。
【0029】
図2から
図4に示されるように、本実施形態のクラッチ機構20は、公知のように、ピニオンギア13を中心に回動可能でカム部(後述する一対のカム面)を備えた略円板状に形成されたクラッチプレート20aと、クラッチプレート20aが回動駆動した際、前記カム部によってピニオン軸に沿ってピニオンギア13を軸方向に移動させるヨーク20bとを備えている。前記ヨーク20bは、ピニオンギア13の円周溝に略180°に亘って嵌合するとともに、径方向に延出する一対の腕部20baを有している。この場合、ヨーク20bは、右フレーム3bに突設された支持ピン25によって各腕部20baが保持されており、各支持ピン25に配設されたバネ部材(図示せず)によってクラッチプレート20aに向けて常時付勢されている。
【0030】
前記クラッチプレート20aは、その外周側で周方向に沿って延びるプレート部を一体に有しており、そのプレート部からは、径方向外側に向かって腕部20aaが形成されている。また、クラッチプレート20aの外周側には、スプール側に向けて屈曲する折曲部20ad(
図1及び
図4参照)が形成されており、この折曲部20adは、右フレーム3bに上下方向に形成された連結孔3ba(
図4参照)を介してクラッチOFF切り換え部材21に一体的に連結されている。
【0031】
これにより、前記クラッチOFF切り換え部材21は、スプール7を釣糸巻き取状態(動力伝達状態)と釣糸放出状態(動力遮断状態)とに切換えるためのクラッチレバーとして構成されており、クラッチプレート20aと一体に回動して、連結孔3baに沿って上下に移動可能となっている。
【0032】
前記クラッチプレート20aの表面には、前記ヨーク20bと係合可能な一対のカム面20ae(
図2では、ヨーク20bの一方の腕部20baに対応して一方のカム面のみが示される)が形成されている。これらのカム面20aeは、クラッチプレート20aの回動に伴ってヨーク20bの各腕部20baの裏面に係脱し、ヨーク20bをピニオンギア13と共にピニオン軸に沿って移動させる。なお、ヨーク20bは、上記したように、各支持ピン25に配設されたバネ部材(図示せず)によってクラッチプレート20aに向けて常時付勢されていることから、ヨーク20bは、バネ部材の付勢力に抗してハンドル側に移動される。
【0033】
また、右フレーム3bにはボス(ネジの軸部)60が突設されるとともに、クラッチプレート20aにはボス60が係合する周方向溝20acが形成されている(
図4参照)。この周方向溝20ac及びボス60は、周方向溝20acの両端にボス60が突き当たることにより、クラッチプレート20aの回動範囲を規定する。
【0034】
前記右フレーム3bとクラッチプレート20aとの間には、公知の振り分けバネ(図示せず)が設けられている。この振り分けバネは、回動するクラッチプレート20aを前記クラッチOFF位置と、クラッチON位置に振り分け保持する機能を有する。
なお、
図2から
図4中、参照符号98,99は、駆動モータ8又はハンドル6から得られる動力をスプール7に伝えるための連結ギアを示している。
【0035】
前記クラッチ機構20のクラッチON状態では、クラッチOFF切り換え部材21は上側に位置されている。このとき、クラッチプレート20aのカム面20aeはヨーク20bの各腕部20baの裏面から周方向に離れており、ヨーク20bと係合するピニオンギア13はスプール軸と係合している。したがって、この状態でハンドル6を回転操作すると、その操作力は、ドライブギア12及びピニオンギア13を介してスプール軸に伝達され、スプール7を釣糸巻き取方向に回転させることができる。
【0036】
一方、このクラッチON状態から、クラッチOFF切り換え部材21に親指Tを載置して押し下げ操作すると、この動作がクラッチプレート20aに伝えられ、クラッチプレート20aを振り分けバネの付勢力に抗して
図2の時計周りに回動させる。
【0037】
そして、クラッチプレート20aが
図2の二点鎖線で示される位置まで回動すると、クラッチプレート20aのカム面20aeは、ヨーク20bの各腕部20baの裏面に係合し、各支持ピン25に配設されたバネ部材の付勢力に抗してヨーク20bをクラッチプレート20aから離間させるようにピニオン軸に沿って移動させる。この移動によって、ヨーク20bと係合するピニオンギア13がスプール軸から外れ、クラッチOFF状態となる。このとき、クラッチOFF切り換え部材21の押し込み位置では、振り分けバネのデッドポイ
ントを越えるようになっており、クラッチON状態とクラッチOFF状態とが完全に振り分けられてクラッチOFF状態が機械的に保持されるようになっている。
【0038】
また、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8の駆動を制御する制御部60(
図10参照)を収容した箱型の制御ケース30が配設されている。この制御ケース30は、リール本体(左右側板5A,5B)の表面と面一状になるように左右側板間に配設されており、スプール7の上方で前方側に延出するように設けられている。具体的には、制御ケース30は、左右側板5A,5Bの各内面と制御ケース30の後端との間で、スプール7の少なくとも一部を露出させる(スプール7に巻回される釣糸を親指でサミング操作可能な露出状態)開口が生じる大きさに形成されており、前方側において、駆動モータ8及びレベルワインド機構を覆うような大きさを備えている。
【0039】
前記駆動モータ8の出力の調節は、操作部材50によって行うことが可能となっている。本実施形態の操作部材50は、リール本体の側板5A,5B間の上部の制御ケース30の後方部分に配設されており、前後方向に回転自在に支持されている。すなわち、操作部材50は、制御ケース30に対して回転可能に支持されており、スプール7の上方側でその操作部50aが側板5A,5B間の略中央位置となるように回転可能に支持されている。具体的には、前記操作部材50は、左右方向に延出する支軸51を備えており、その中央領域に360°に亘って厚肉化された円筒状の操作部50aが嵌合固定することで構成されている。
【0040】
この場合、操作部50aの外周面には、転がし操作(回転操作)し易いように、周方向に沿って凹凸部50b(
図3及び
図4参照)を形成しておいてもよい。また、操作部材50aは、支軸51と共に一体形成されていてもよく、その材質については、金属、硬質樹脂にする等、限定されることはない。また、操作部材50(操作部50a)は、内部の全部、或いは、一部が空洞状に形成されていてもよい。更に、操作部50aの表面に、駆動モータ8の出力位置を特定できるように、マーキングを付与したり、突起を形成しておいてもよい。この操作部材50の操作角度については、例えば、モータ出力が0~Maxに至るまで、略120°の範囲で操作される(回動可能に操作される)など任意に設定することが可能である。本実施形態では、後述するように、支軸51に回動範囲規制部を形成することで、操作部材50の操作角度(回動角度)は略120°に設定されている。
【0041】
前記操作部材50は、リール本体5を把持保持した状態の手の親指Tで、釣糸が巻回されたスプール7をサミング操作しながら当接操作できるようになっており、本実施形態では、制御ケース30の後端の略中央位置に形成された略コの字形の凹陥部31内に回転可能に支持されている。具体的に、支軸51は、その一方側(
図1の左側)が制御ケース30の支持部に回転可能に支持されるとともに、その他方側(
図1の右側)が、後述する2つのセンサを収容する収容部70を形成する筐体70Aの支持孔70b(
図3から
図5参照)に回転可能に支持されている。これにより、操作部材50の外周部(操作部50aの外周部)は、左右側板5A,5B間で、スプール7を露出させる開口領域内に面した状態となっている。
【0042】
前記制御ケース30は、例えば、制御基板や各種の電子部品(図示せず)を収容する防水構造の上下ケースによって構成することが可能である。前記制御ケース30内に収容される制御部(制御基板)60(
図10参照)は、駆動モータ8の駆動を制御し、操作部材50の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調節するようになっている。本実施形態の制御部60は、操作部材50を前方に向けて回転操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。これにより、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指Tをそのまま前方に延ばして、操作部材50を押し上げる操作(そのまま前方に転がすようなような操作)をすることで、釣糸の巻き取り操作が行なえるようになり、指の動きが単純化され、一連の探り操作をする際の操作性の向上が図れるようになる。なお、操作部材50については、後方に向けて回転操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定してもよい。
【0043】
前記制御ケース30の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)、仕掛けを投入してからの時間、駆動モータ8の駆動速度(インジケータによる表示でもよい)、更には、操作方法やメッセージなど、釣り人に対して各種情報を表示する表示部(液晶表示部)30Aが設けられている。また、表示部30Aの周囲、好ましくは、表示部30Aと操作部材50との間の領域には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン30Bが配設されている。これらの操作ボタン30Bは、各種のモード設定情報、投入した仕掛けを所望の深さで停止させる深さ情報、駆動モータ8の出力の可変範囲を変更する出力範囲設定情報など、釣人が設定、選択する各種の情報を受け付けるようになっている。
【0044】
前記スプール7から繰り出される釣糸の長さを計測する糸長計測装置88(
図10参照)は、各種公知のものを用いることができる。例えば、スプール7が釣糸の繰り出し/巻き取りで回転駆動された際、回転部分に装着されたマグネットと、これを検知する磁気センサとによって実際の回転量や回転方向を検知し、その検知信号を処理することで表示部30Aに表示することが可能である。
【0045】
前記制御ケース30内には、スプール7を回転駆動する駆動モータ8を駆動制御する機能を備えたモータ駆動回路が組み込まれている。例えば、制御部60(
図10参照)からの制御信号(PWM信号;パルス幅変調信号)に基づいて、駆動モータ8に対する駆動電流通電時間率(デューティ比)を可変制御し、駆動モータ8を停止状態(OFF状態)から高速回転状態(Max状態)まで連続的に増減調節可能となっている。この場合、制御部60からは、操作部材50の初期位置(OFF位置)から実際の操作量を検知する角度センサ38による検知信号に基づいて、角度毎に設定されているデューティ比に関する制御信号が出力され、それに応じて駆動モータ8の回転速度が可変制御される。
【0046】
前記操作部材50の側部領域には、操作部材50の外周部(操作部50aの外周部)よりも低い指載置部(保持面)40を形成しておいてもよい。本実施形態では、操作部材50を制御ケース30の後端に形成した凹陥部31内に回動可能に支持していることから、指載置部40は、凹陥部31の両側の側部の上面に形成されている。指載置部40は、平面状に形成してもよいが、前方及び側方に、次第に高くなるように規制部を形成しておくことが好ましい。指載置部40は、リール本体5を片手で把持(本実施形態では、右ハンドルタイプであるため左手で左側板5Aを把持)した際、その手の親指Tの腹部で、操作部材50の外周部と同時に当接可能となるように形成されている。
【0047】
また、本発明の魚釣用電動リール1は、前記操作部材50の回動角を検出する第1のセンサ38Bと、クラッチ機構20の動力伝達状態であるON位置とクラッチ機構20の動力遮断状態であるOFF位置とを検出する第2のセンサ39Bとを有している。そして、これらの2つのセンサ38B,39Bは、1つの収容部70内に一括して収容されている(
図3から
図6参照)。この収容部70は、前記第1のセンサ38B及び前記第2のセンサ39Bが、それぞれ操作部材50の回動角及び前記クラッチ機構の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部の移動を検知可能に配置されていればよい。本実施形態の収容部70は、前記操作部材50と、クラッチ機構20の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部との間に配置されている。また、本
実施形態におけるクラッチ作動部は、クラッチ機構20の切り換え動作に連動して回動する前記クラッチプレート20aが該当している。具体的に、前記収容部70は、リール本体5に支持されており、特に本実施形態では、制御ケース30の下面から下方に向けて延びるボス30aによって位置決め保持されており、第1及び第2のセンサ38B,39Bの両方を収容する収容空間S(
図7参照)を有する1つの筐体70Aによって構成されている。
【0048】
より具体的には、前記筐体70Aは、
図4から
図6に示されるように、前記制御ケース30のボス30aを受ける挿入孔70aと、操作部材50の支軸51を受けて支持する支持孔70bとを有する支持部75と、前記2つのセンサ38B,39Bを収容する収容空間Sを形成するセンサ格納部76とを有しており、収容空間S内には各センサ38B,39Bを支持固定するための支持体70Bが配設されている。
【0049】
また、本実施形態の収容部70(筐体70A)は、少なくとも一部が前記操作部材50の支軸(回動軸)51の中心軸線O上に位置するように配置されている。この場合、前記筐体70Aは、その上部側に位置される前記支持孔70bの中心軸が、操作部材50の回動軸の中心軸線Oと一致(略一致も含まれる)する状態で配置されていることが好ましいが、筐体70Aの主要部や中心部などが、前記操作部材50の回動軸の中心軸線O上に位置していても構わない。また、本実施形態の筐体70Aは、制御ケース30と別体を成して制御ケース30に取り付け固定されるが、制御ケース30と一体に形成されていてもよい。
【0050】
前記操作部材50の回動角を検出する第1のセンサ38Bは、本実施形態では、リール本体5に回動可能に支持される操作部材50の支軸51の端面に設けられる磁石38A(
図3及び
図4参照)の回転位相の変化を検知して、操作部材50の回動位置を検出する公知の磁気センサとして構成されており、前記収容空間S内において、磁石38Aと対向する位置で支持体70Bに支持固定されている。前記磁石38Aは、支軸51の端面に直径方向に沿って接着等によって取着された1つの棒磁石で構成することができ、磁気センサ38Bは、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、リニアホールIC等により構成することができる。このため、磁気センサ38Bは、支軸51の回転に伴って磁石38Aが回転すると、その回転位置に応じて磁束密度の大きさに比例した電圧を出力する。
【0051】
一方、クラッチ機構20のON/OFF位置を検出する第2のセンサ39Bは、本実施形態では、磁気センサとして構成されている。具体的には、前記クラッチプレート20aに磁石39A(
図3及び
図4参照)を設けておき、クラッチプレート20aの移動(回動)に伴う磁気の変化を検出する磁気センサとして構成され、クラッチプレート20aのクラッチON位置で磁石39Aと対向するように支持体(基板)70Bに支持固定されている。この磁気センサ39Bも、スイッチングタイプのホールICなど、任意のタイプのものを使用することができる。
【0052】
このような第2のセンサ39B及び磁石39Aの配置関係に伴って、前記クラッチプレート20aは、そのクラッチON位置(
図2の実線で示される位置;
図3及び
図4の位置)で、それが保持する磁石39Aを収容部70内の第2のセンサ39Bと対向させるように、径方向外側に延びる前述した腕部20aaを有しており、この腕部20aaの外端部に磁石39Aを保持する保持部20abを有している。
【0053】
なお、各センサ38B,39Bからは電気配線38C,39Cが延びており(
図6、
図7参照)、これらの電気配線38C,39Cは、フレキシブルケーブル80を介して制御ケース30の制御部60を実装する基板に電気的に接続されている(
図8も参照)。なお、
図8中、参照符号93,95は、リール本体5内の他の電子部品と基板とを接続する電気配線(フレキシブルケーブル)である。
【0054】
本実施形態において、前記第1及び第2のセンサ38B,39Bは、それぞれ検知対象となる磁石38A,39A同士が回動した際、磁気的に干渉しない位置で磁気の変化を検出するように配置されている。具体的に、そのような配置形態の一例として、本実施形態では、
図5から
図7に示されるように、支持体70Bの一方の面(操作部材50と対向する面)に第1のセンサ38Bが支持され、支持体70Bの反対側の面(クラッチ機構20と対向する面)に第2のセンサ39Bが支持されており、各センサが同一軸上とならないようにオフセットして配置されている。
このような磁気干渉対策は、2つの磁気センサが収容部70内にまとめて収容される場合に重要であり、上記したように、支持体70Bの一方の面に第1のセンサ38Bを支持するとともに、支持体70Bの反対側の面に第2のセンサ39Bを支持すること、更には、センサの検知方向や位置を互いにずらすことで、各磁石38A,39Aの磁気が相互に干渉することなく、センサからの検知信号を安定して取得することが可能となる。
【0055】
また、前記収容部70が配置される位置については、本実施形態のように操作部材50とクラッチプレート20aとの間の軸方向空間に限られず(この配置態様については後述する)、操作部材50の回転操作及びクラッチ機構20の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部(クラッチプレート20a)の移動操作を検知可能に配置されていればよい。さらに、そのようなクラッチ作動部としては、クラッチプレート20a以外に、例えば、クラッチ機構20をOFF位置からON位置へ切り換えるための前述したクラッチON切り換え部材22を挙げることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、収容部70は、操作部材50の回動軸の中心軸線O上に配置されているが、収容部70は、少なくとも一部が中心軸線上に存在していればよい。
図9は、そのような変形例(第1の変形例)を示しており、磁石39AをクラッチON切り換え部材22に設けた構成を示している。すなわち、クラッチON切り換え部材22は、そのクラッチON位置(
図9の実線で示される位置)で、それが保持する磁石39Aを収容部70内の第2のセンサ39Bと対向するように延在部22aを有しており、この延在部22aの外端部に磁石39Aを保持する保持部22bを有している。なお、
図9において、参照符号28は、クラッチON切り換え部材22をクラッチプレート20aの動きと連動させるための結合部材である。
【0057】
前記クラッチON切り換え部材22は、クラッチプレート20aの移動と連動しており、前述したように、クラッチON状態では、
図9に実線で示されるように、右側板5B(右カバー4b)の表面と略面一状となり、クラッチOFF状態では、
図9に二点鎖線で示されるように、右側板5Bの表面から突出するようになっている。すなわち、クラッチOFF切り換え部材21によってクラッチ機構がOFF操作されると、クラッチON切り換え部材22は、回動軸29を中心に回動して右側板5Bの表面から突出し、リール本体5を保持した手の親指の押圧操作でクラッチON状態に切換え可能に構成されている。
【0058】
したがって、収容部70を、操作部材50とクラッチON切り換え部材22との間に配置するとともに、前述した実施形態のように、第2のセンサ39Bが検出するための磁石39Aをクラッチプレート20aの腕部20aaの先端に設けることなく、磁石39AをクラッチON切り換え部材22に設けることも可能である。
【0059】
また、前記クラッチ機構20の切り換え動作に連動して移動するクラッチ作動部としては、
図11の模式図に示す第2の変形例のように、リンク機構110とすることも可能である。この
図11に示す第2の変形例では、操作部材50と同じ機能を有する操作部材100として、公知のように、例えば指で摘まんで操作するレバータイプの操作部材をスプール7の前方上側でリール本体5の右側板5Bに回動可能に設けられることを想定している。このような構成では、操作部材100とリンク機構110との間に位置されて操作部材100の回動軸102の中心軸線O上に配置される収容部70(筐体70A)内の第2のセンサ39Bと対向するように、磁石39AをクラッチON/OFF位置間で移動可能に保持するリンク機構110が、クラッチ機構20のクラッチプレート20aからその動きを伝えるように延びている。なお、この構成においても、操作部材100の回動軸102に設けられた磁石38Aと対向するべく第1のセンサ38Bが収容部70内に位置されている。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の魚釣用電動リール1によれば、操作部材50(100)の回動角検出用の第1のセンサ38Bとクラッチ機構のON/OFF検出用の第2のセンサ39Bとを備える大型化し易い多機能化されたリール構造において、これらの2つのセンサ38B,39Bを1つの収容部70(筐体70A)内に収容し、この収容部を、それぞれ関連付けられる操作部材50(100)及びクラッチ作動部20a(22,110)の両部材間の空間に配置し、しかも、その収容部70を操作部材50(100)の回動軸51(102)の中心軸線O上に位置するように配置しているため、限られたリール本体内において、2つのセンサ38B,39Bがコンパクトに集約された配置形態を実現することができる。すなわち、各種の駆動機構が配設されるリール本体5の限られたスペース(既存のスペース)を有効活用することが可能となり、リール本体5内に2つのセンサ38B,39Bのための新たなスペースを確保する必要性を排除して、省スペース化によるリール本体5の小型化を実現できる。また、これ伴い、駆動力を伝達するギアボックス内における内部駆動機構の設計の自由度が制限されるといった事態も回避できる。さらに、2つのセンサ38B,39Bを1つの筐体に収容したことで、取扱性が向上すると共に、組み込み作業も容易に行えるようになる。
【0061】
なお、2つのセンサ38B,39Bを利用した多機能化の例としては、例えば、
図10を参照して説明すると、前記クラッチ機構の動きに連動して制御部60により駆動モータ8の動きを制御することが考えられる。具体的には、制御部60は、第2のセンサ39Bからの検出信号によりクラッチON位置が検出されると、駆動モータ8を駆動可能状態とし、第2のセンサ39Bからの検出信号によりクラッチOFF位置が検出されると、駆動モータ8の回転を停止させるように制御する。
【0062】
これは、第2のセンサ39Bが搭載されていないと、駆動モータの駆動状態でクラッチをOFFにしても駆動モータが回り続けてしまうこととなり、仕掛けの落下時は魚のアタリに集中したいのに、モータ音や振動が邪魔になって集中することはできない。上記のように、クラッチ機構がONになったときに駆動モータを停止制御することでアタリに集中することができる。また、高速で駆動モータが回転している状態でクラッチ機構をONに戻す際、高速回転下での強引なクラッチ結合によりクラッチ嵌合時にダメージを与えてしまう。上記のように、クラッチ機構がOFFのときは駆動モータ8の回転が停止されているので、そのような破損等を防ぐことが可能となる。更には、糸長計測装置88からの出力信号やセンサ38B,39Bからの検出信号等を受けて制御部60がスプールフリー回転状態(クラッチOFF位置)であるか、或いは、ドラグ引き出し状態(クラッチON位置で釣糸がスプールから引き出されている)であるかどうかを判定し、ドラグ引き出し時のみ、ドラグ作動を知らせる電子音を音声出力部89から発生させてもよい。或いは、スプールフリー回転時のみ、水深に応じて、アラームを音声出力部89から発生させるようにしてもよい。
【0063】
上記した実施形態では、第2のセンサ39Bが磁気センサであったが、
図12の第3の変形例に示されるように、第2のセンサが光センサで構成されていてもよい。この場合、例えば、筐体70Aに凹状部を形成しておき、この凹状部の対向位置に光センサである発光部39Baと受光部39Bbを配置しておけばよい。そして、この凹状部内に、クラッチプレート20aの一部が通過可能となるように位置付けすることで、発光部39Baから受光部39Bbへ向かう光がクラッチプレート20aの移動によって遮断され、クラッチのON/OFF位置を検出することが可能である。
【0064】
また、上述した実施形態及び変形例では、収容部70が1つの筐体70Aによって形成されているが、
図13の第4の変形例に示されるように、収容部70が互いに隣接する2つの筐体90,92を備え、一方の筐体90に第1のセンサ38Bが収容され、他方の筐体92に第2のセンサ39Bが収容される構成であってもよい。このような収容部70は、一体的に結合されていることが好ましく、上述した実施形態と同様、操作部材50とクラッチプレート20aとの間で、操作部材50の支軸(回動軸)51の中心軸線O上に配置されている。
このように、各センサを個別の筐体に収容することで、一方のセンサに不具合が生じた際、メンテナンスが容易に行え、コストを削減することが可能となる。
【0065】
本発明は、上述したように、収容部70(1つの筐体70A、或いは2つの筐体90,92)内に収容された第1のセンサ38Bと第2のセンサ39Bが、それぞれ操作部材50の回動角及びクラッチ作動
部(クラッチプレート20a)の移動を検知可能に配置された構成であればよい。このため、その配置態様については、
図1から
図9に示した第1実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。以下、各種の配置態様例について、
図14から
図18の模式図を参照しながら説明する。
【0066】
図14は、配置態様の第2実施形態を示す図である。上記した実施形態では、収容部70は、操作部材50とクラッチ作動部(クラッチプレート20a)との間(
図14のスペースS´の領域)に配置されていたが、操作部材50とクラッチ作動部との間ではなく、これらに隣接するような位置に配置されていてもよい。また、収容部70は、操作部材50の支軸(回動軸)51の中心軸線O上に配置されるのではなく、各センサ38B,39Bが磁石38A,39Aの磁気変化を検知可能であれば、
図15の変形例に示すように、中心軸線Oからずれた位置、例えば、操作部材50の側面シルエット(直径Dj)の範囲に一部が配置されるような構成であってもよい。
【0067】
また、上記した実施形態では、第1のセンサ38B、第2のセンサ39Bは、それぞれ検知対象となる磁石同士が磁気的に干渉しない位置で磁気の変化を検出するように、
図7に示したように、支持体(基板)70Bの両面に、同一軸上にならないように配置している。この場合、
図16の第3実施形態に示すように、第1のセンサ38B、第2のセンサ39B、及びこれらを収容する収容部70は、磁石同士が磁気的に干渉しなければ、操作部材50の中心軸線O上に配置する構成であってもよい。或いは、持体70Bに防磁性を持たせる等してもよい。
【0068】
なお、第1のセンサ38B、第2のセンサ39Bは、検知対象となる磁石が検知できれば、
図17の第4実施形態に示すように、支持体(基板)70Bに支持固定されていなくてもよく(筐体70A内に支持固定されていればよい)、更には、第1のセンサ38B、第2のセンサ39Bは、操作部材50の中心軸線O上以外に配置されていてもよい。さらに、
図18の第5実施形態に示すように、クラッチ作動部(クラッチプレート20a)について、操作部材50の中心軸線O上に位置しない配置態様にする等、適宜、変形することが可能である。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態や変形例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
例えば、上記したクラッチ機構の構造形態、操作部材の操作形態、センサのタイプ、収容部の形態などは適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
7 スプール
8 駆動モータ
13 ピニオンギア(ピニオン)
20 クラッチ機構
20a クラッチプレート(クラッチ作動部)
22 クラッチON切り換え部材(クラッチ作動部)
38B 第1のセンサ
39B 第2のセンサ
50 操作部材
51 支軸(回動軸)
70 収容部
70A 筐体
70B 支持体
90,92 筐体
100 操作部材
102 回動軸
110 リンク機構(クラッチ作動部)
O 中心軸線