(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】受光装置および測距装置
(51)【国際特許分類】
G01J 1/42 20060101AFI20240702BHJP
G01S 17/10 20200101ALI20240702BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20240702BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240702BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240702BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01J1/42 H
G01S17/10
G01S7/4863
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
H01L31/10 B
H01L31/10 G
(21)【出願番号】P 2021504060
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008420
(87)【国際公開番号】W WO2020179696
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019041998
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田湯 賢一
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179732(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094362(WO,A1)
【文献】特表2008-542706(JP,A)
【文献】特開2018-173379(JP,A)
【文献】特開2006-179828(JP,A)
【文献】国際公開第2018/234309(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60
G01C 3/00-3/32
G01S 7/48-7/51、17/00-17/95
H01L 31/10-31/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電圧に基づき所定の電位に充電された状態で入射された光子に応じてアバランシェ増倍が発生して電流が流れ、リチャージ電流により該状態に戻る受光素子と、
前記電流を検出し、該電流の電流値が閾値を跨いだ場合に出力信号を反転させる検出部と、
前記受光素子に前記リチャージ電流を供給する電流源と、
前記検出部の前記出力信号に応じて前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御するスイッチ部と、
を備え
、
前記電流源は、
前記受光素子が前記アバランシェ増倍を維持可能な所定の保持電流より電流値の小さい電流を、前記リチャージ電流として前記受光素子に供給し、
前記スイッチ部は、
前記検出部の前記出力信号が、前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転することでオフ状態とされ、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転することでオン状態とされる、
受光装置。
【請求項2】
前記電流源は、
前記検出部の前記出力信号が前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転してから、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転するまでの時間が、前記受光素子における前記アバランシェ増倍の発生により流れる電流に応じた内部発光により蓄積された電荷を排出する時間以上となる電流値の前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
請求項1に記載の受光装置。
【請求項3】
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が該出力信号の論理を変えない回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
請求項1に記載の受光装置。
【請求項4】
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が、それぞれ該出力信号の論理を変えない複数の回路のうち選択された回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
請求項1に記載の受光装置。
【請求項5】
前記スイッチ部による前記受光素子への前記バイアス電圧の供給の制御を有効および無効の何れか一方に設定する設定部をさらに備える
請求項1に記載の受光装置。
【請求項6】
前記電流源は、
電流値を可変で前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
請求項1に記載の受光装置。
【請求項7】
前記電流源と、前記スイッチ部における前記バイアス電圧の供給源と、が異なる電源に接続される
請求項1に記載の受光装置。
【請求項8】
第1の基板と、該第1の基板が積層される第2の基板と、を含み、
少なくとも前記受光素子が前記第1の基板に配置され、
前記検出部、前記電流源および前記スイッチ部のうち少なくとも一部が前記第2の基板に配置される
請求項1に記載の受光装置。
【請求項9】
バイアス電圧に基づき所定の電位に充電された状態で入射された光子に応じてアバランシェ増倍が発生して電流が流れ、リチャージ電流により該状態に戻る受光素子と、
前記電流を検出し、該電流の電流値が閾値を跨いだ場合に出力信号を反転させる検出部と、
前記受光素子に前記リチャージ電流を供給する電流源と、
前記検出部の前記出力信号に応じて前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御するスイッチ部と、
光源が発光した発光タイミングから、前記受光素子が受光した受光タイミングまで、の時間を計測して計測値を取得する時間計測部と、
前記計測値のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記ヒストグラムに基づき被測定物までの距離を演算する演算部と、
を備え
、
前記電流源は、
前記受光素子が前記アバランシェ増倍を維持可能な所定の保持電流より電流値の小さい電流を、前記リチャージ電流として前記受光素子に供給し、
前記スイッチ部は、
前記検出部の前記出力信号が、前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転することでオフ状態とされ、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転することでオン状態とされる、
測距装置。
【請求項10】
前記電流源は、
前記検出部の前記出力信号が前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転してから、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転するまでの時間が、前記受光素子における前記アバランシェ増倍の発生により流れる電流に応じた内部発光により蓄積された電荷を排出する時間以上となる電流値の前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
請求項
9に記載の測距装置。
【請求項11】
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が該出力信号の論理を変えない回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
請求項
9に記載の測距装置。
【請求項12】
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が、それぞれ該出力信号の論理を変えない複数の回路のうち選択された回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
請求項
9に記載の測距装置。
【請求項13】
前記スイッチ部による前記受光素子への前記バイアス電圧の供給の制御を有効および無効の何れか一方に設定する設定部をさらに備える
請求項
9に記載の測距装置。
【請求項14】
前記電流源は、
電流値を可変で前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
請求項
9に記載の測距装置。
【請求項15】
前記電流源と、前記スイッチ部における前記バイアス電圧の供給源と、が異なる電源に接続される
請求項
9に記載の測距装置。
【請求項16】
第1の基板と、該第1の基板が積層される第2の基板と、を含み、
少なくとも前記受光素子が前記第1の基板に配置され、
前記検出部、前記電流源および前記スイッチ部のうち少なくとも一部が前記第2の基板に配置される
請求項
9に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光装置および測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
受光した光を光電変換により電気信号に変換して出力可能な受光素子が知られている。このような受光素子の一つとして、アバランシェ増倍により1光子の入射に応じて大電流を得ることができる単一光子アバランシェダイオード(以下、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ぶ)が知られている。SPADのこの特性を利用することで、1光子の入射を高感度で検知することができる。
【0003】
SPADによる光子検出動作について、概略的に説明する。例えば、電源電圧Vddが供給され、基準電圧Vrefに基づき出力電流が制御される電流源を、SPADのカソードに接続する。SPADのアノードは、アバランシェ増倍が発生する大きな負電圧(-Vbd)を与える。この状態でSPADに光子が入射されると、アバランシェ増倍が開始されSPADのカソードからアノードの方向に向けて電流が流れ、それに伴いSPADにおいて電圧降下が発生し、アノード-カソード間電圧が電圧(-Vbd)まで下がるとアバランシェ増倍が停止される(クエンチング動作)。その後、電流源からの電流によりSPADが充電され、SPADの状態が光子入射前の状態に戻る(リチャージ動作)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SPADの動作において、アバランシェ増倍により発生した電子に基づき素子内部で発光が起こり、この素子内部での発光に応じて再びアバランシェ増倍が発生する、アフターパルシングと呼ばれる事象が発生する場合がある。アフターパルシングが発生すると、SPADに対する光子の入射無しにアバランシェ増倍が開始されることになり、SPADの動作制御が困難になる。
【0006】
本開示は、受光素子の動作をより安定して制御可能とする受光装置および測距装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る受光装置は、バイアス電圧に基づき所定の電位に充電された状態で入射された光子に応じてアバランシェ増倍が発生して電流が流れ、リチャージ電流により該状態に戻る受光素子と、前記電流を検出し、該電流の電流値が閾値を跨いだ場合に出力信号を反転させる検出部と、前記受光素子に前記リチャージ電流を供給する電流源と、前記検出部の前記出力信号に応じて前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御するスイッチ部と、を備え、前記電流源は、前記受光素子が前記アバランシェ増倍を維持可能な所定の保持電流より電流値の小さい電流を、前記リチャージ電流として前記受光素子に供給し、前記スイッチ部は、前記検出部の前記出力信号が、前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転することでオフ状態とされ、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転することでオン状態とされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】各実施形態に適用可能な直接ToF方式による測距を模式的に示す図である。
【
図2】各実施形態に適用可能な、受光部が受光した時刻に基づく一例のヒストグラムを示す図である。
【
図3】各実施形態に係る測距装置を用いた電子機器の一例の構成を示すブロック図である。
【
図4】各実施形態に適用可能な測距装置の一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
【
図5】各実施形態に適用可能な画素の基本的な構成例を示す図である。
【
図6】各実施形態に係る測距装置に適用可能なデバイスの構成の例を示す模式図である。
【
図7】SPADとしての受光素子の動作を概略的に示す図である。
【
図8A】受光素子において発生するアフターパルシングについて、概略的に説明するための図である。
【
図8B】受光素子において発生するアフターパルシングについて、概略的に説明するための図である。
【
図8C】受光素子において発生するアフターパルシングについて、概略的に説明するための図である。
【
図8D】受光素子において発生するアフターパルシングについて、概略的に説明するための図である。
【
図9】第1の実施形態に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図10】第1の実施形態に係る構成における、受光素子のカソードの電圧Vcaの変化の例を示す図である。
【
図11】第1の実施形態の第1の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図12】第1の実施形態の第2の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図13】第1の実施形態の第3の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図14】第1の実施形態の第3の変形例に適用可能な処理回路の一例の構成を示すブロック図である。
【
図15】第1の実施形態の第4の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図16】第1の実施形態の第5の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図17】第1の実施形態の第6の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図18】第1の実施形態の第7の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
【
図19】第1の実施形態の第7の変形例に係る構成における、受光素子のアノードの電圧Vanの変化の例を示す図である。
【
図20】第1の実施形態の第8の変形例に係る、画素の各部の配置の例を示す図である。
【
図21】第1の実施形態およびその各変形例に係る画素の何れかを用いた電子機器を使用する使用例を示す図である。
【
図22】本開示に係る技術が適用され得る、カプセル型内視鏡を用いた患者の体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図23】本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図24】カメラヘッドおよびCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図25】本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。
【0010】
(各実施形態に共通の構成)
本開示は、光子の検出を行う技術に用いて好適なものである。本開示の各実施形態の説明に先んじて、理解を容易とするために、各実施形態に適用可能な技術の一つとして、光子の検出により測距を行う技術について説明する。この場合の測距方式として、直接ToF(Time Of Flight)方式を適用する。直接ToF方式は、光源から射出された光が被測定物により反射した反射光を受光素子により受光し、光の射出タイミングと受光タイミングとの差分の時間に基づき測距を行う方式である。
【0011】
図1および
図2を用いて、直接ToF方式による測距について、概略的に説明する。
図1は、各実施形態に適用可能な直接ToF方式による測距を模式的に示す図である。測距装置300は、光源部301と受光部302とを含む。光源部301は、例えばレーザダイオードであって、レーザ光をパルス状に発光するように駆動される。光源部301から射出された光は、被測定物303により反射され、反射光として受光部302に受光される。受光部302は、光電変換により光を電気信号に変換する受光素子を含み、受光した光に応じた信号を出力する。
【0012】
ここで、光源部301が発光した時刻(発光タイミング)を時間t0、光源部301から射出された光が被測定物303により反射された反射光を受光部302が受光した時刻(受光タイミング)を時間t1とする。定数cを光速度(2.9979×108[m/sec])とすると、測距装置300と被測定物303との間の距離Dは、次式(1)により計算される。
D=(c/2)×(t1-t0) …(1)
【0013】
測距装置300は、上述の処理を、複数回繰り返して実行する。受光部302が複数の受光素子を含み、各受光素子に反射光が受光された各受光タイミングに基づき距離Dをそれぞれ算出してもよい。測距装置300は、発光タイミングの時間t0から受光部302に光が受光された受光タイミングまでの時間tm(受光時間tmと呼ぶ)を階級(ビン(bins))に基づき分類し、ヒストグラムを生成する。
【0014】
なお、受光部302が受光時間tmに受光した光は、光源部301が発光した光が被測定物により反射された反射光に限られない。例えば、測距装置300(受光部302)の周囲の環境光も、受光部302に受光される。
【0015】
図2は、各実施形態に適用可能な、受光部302が受光した時刻に基づく一例のヒストグラムを示す図である。
図2において、横軸はビン、縦軸は、ビン毎の頻度を示す。ビンは、受光時間t
mを所定の単位時間d毎に分類したものである。具体的には、ビン#0が0≦t
m<d、ビン#1がd≦t
m<2×d、ビン#2が2×d≦t
m<3×d、…、ビン#(N-2)が(N-2)×d≦t
m<(N-1)×dとなる。受光部302の露光時間を時間t
epとした場合、t
ep=N×dである。
【0016】
測距装置300は、受光時間tmを取得した回数をビンに基づき計数してビン毎の頻度310を求め、ヒストグラムを生成する。ここで、受光部302は、光源部301から射出された光が反射された反射光以外の光も受光する。このような、対象となる反射光以外の光の例として、上述した環境光がある。ヒストグラムにおいて範囲311で示される部分は、環境光による環境光成分を含む。環境光は、受光部302にランダムに入射される光であって、対象となる反射光に対するノイズとなる。
【0017】
一方、対象となる反射光は、特定の距離に応じて受光される光であって、ヒストグラムにおいてアクティブ光成分312として現れる。このアクティブ光成分312内のピークの頻度に対応するビンが、被測定物303の距離Dに対応するビンとなる。測距装置300は、そのビンの代表時間(例えばビンの中央の時間)を上述した時間t1として取得することで、上述した式(1)に従い、被測定物303までの距離Dを算出することができる。このように、複数の受光結果を用いることで、ランダムなノイズに対して適切な測距を実行可能となる。
【0018】
図3は、各実施形態に係る測距装置を用いた電子機器の一例の構成を示すブロック図である。
図3において、電子機器6は、測距装置1と、光源部2と、記憶部3と、制御部4と、光学系5と、を含む。
【0019】
光源部2は、上述した光源部301に対応し、レーザダイオードであって、例えばレーザ光をパルス状に発光するように駆動される。光源部2は、面光源としてレーザ光を射出するVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を適用することができる。これに限らず、光源部2として、レーザダイオードをライン上に配列したアレイを用い、レーザダイオードアレイから射出されるレーザ光をラインに垂直の方向にスキャンする構成を適用してもよい。さらにまた、単光源としてのレーザダイオードを用い、レーザダイオードから射出されるレーザ光を水平および垂直方向にスキャンする構成を適用することもできる。
【0020】
測距装置1は、上述した受光部302に対応して、複数の受光素子を含む。複数の受光素子は、例えば2次元格子状に配列されて受光面を形成する。光学系5は、外部から入射する光を、測距装置1が含む受光面に導く。
【0021】
制御部4は、電子機器6の全体の動作を制御する。例えば、制御部4は、測距装置1に対して、光源部2を発光させるためのトリガである発光トリガを供給する。測距装置1は、この発光トリガに基づくタイミングで光源部2を発光させると共に、発光タイミングを示す時間temを記憶する。また、制御部4は、例えば外部からの指示に応じて、測距装置1に対して、測距の際のパターンの設定を行う。
【0022】
測距装置1は、受光面に光が受光されたタイミングを示す時間情報(受光時間tm)を取得した回数を所定の時間範囲内で計数し、ビン毎の頻度を求めて上述したヒストグラムを生成する。測距装置1は、さらに、生成したヒストグラムに基づき、被測定物までの距離Dを算出する。算出された距離Dを示す情報は、記憶部3に記憶される。
【0023】
図4は、各実施形態に適用可能な測距装置1の一例の構成をより詳細に示すブロック図である。
図4において、測距装置1は、画素アレイ部100と、測距処理部101と、画素制御部102と、全体制御部103と、クロック生成部104と、発光タイミング制御部105と、インタフェース(I/F)106と、を含む。これら画素アレイ部100、測距処理部101、画素制御部102、全体制御部103、クロック生成部104、発光タイミング制御部105およびI/F106は、1つの半導体チップ上に配置することができる。
【0024】
これに限らず、測距装置1は、第1の半導体チップと第2の半導体チップとを積層した構成としてもよい。この場合、例えば画素アレイ部100の一部(受光部など)を第1の半導体チップ上に配置し、測距装置1に含まれる他の部分を第2の半導体チップ上に配置する構成が考えられる。
【0025】
図4において、全体制御部103は、例えば予め組み込まれるプログラムに従い、この測距装置1の全体の動作を制御する。また、全体制御部103は、外部から供給される外部制御信号に応じた制御を実行することもできる。クロック生成部104は、外部から供給される基準クロック信号に基づき、測距装置1内で用いられる1以上のクロック信号を生成する。発光タイミング制御部105は、外部から供給される発光トリガ信号に従い発光タイミングを示す発光制御信号を生成する。発光制御信号は、光源部2に供給されると共に、測距処理部101に供給される。
【0026】
画素アレイ部100は、2次元格子状に配列される、それぞれ受光素子を含む複数の画素10、10、…を含む。各画素10の動作は、全体制御部103の指示に従った画素制御部102により制御される。例えば、画素制御部102は、各画素10からの画素信号の読み出しを、行方向にp個、列方向にq個の、(p×q)個の画素10を含むブロック毎に制御することができる。また、画素制御部102は、当該ブロックを単位として、各画素10に対する行方向の走査を行い、さらに列方向の走査を行い、各画素10から画素信号を読み出すことができる。これに限らず、画素制御部102は、各画素10をそれぞれ単独で制御することもできる。さらに、画素制御部102は、画素アレイ部100の所定領域を対象領域として、対象領域に含まれる画素10を、画素信号を読み出す対象の画素10とすることができる。さらにまた、画素制御部102は、複数行(複数ライン)に対して纏めて走査を行い、それを列方向にさらに走査して、各画素10から画素信号を読み出すこともできる。
【0027】
なお、以下では、走査は、光源部2を発光させ、画素10からの受光に応じた信号Vplsの読み出しを、1つの走査領域内において走査対象として指定した各画素10について連続的に行う処理をいうものとする。1回の走査において複数回の発光と読み出しとを実行することができる。
【0028】
各画素10から読み出された画素信号は、測距処理部101に供給される。測距処理部101は、変換部110と、生成部111と、信号処理部112と、を含む。
【0029】
各画素10から読み出され、画素アレイ部100から出力された画素信号は、変換部110に供給される。ここで、画素信号は、各画素10から非同期で読み出され、変換部110に供給される。すなわち、画素信号は、各画素10において光が受光されたタイミングに応じて受光素子から読み出され、出力される。
【0030】
変換部110は、画素アレイ部100から供給された画素信号を、デジタル情報に変換する。すなわち、画素アレイ部100から供給される画素信号は、当該画素信号が対応する画素10に含まれる受光素子に光が受光されたタイミングに対応して出力される。変換部110は、供給された画素信号を、当該タイミングを示す時間情報に変換する。
【0031】
生成部111は、変換部110により画素信号が変換された時間情報に基づきヒストグラムを生成する。ここで、生成部111は、時間情報を、設定部113により設定された単位時間dに基づき計数し、ヒストグラムを生成する。生成部111によるヒストグラム生成処理の詳細については、後述する。
【0032】
信号処理部112は、生成部111により生成されたヒストグラムのデータに基づき所定の演算処理を行い、例えば距離情報を算出する。信号処理部112は、例えば、生成部111により生成されたヒストグラムのデータに基づき、当該ヒストグラムの曲線近似を作成する。信号処理部112は、このヒストグラムが近似された曲線のピークを検出し、検出されたピークに基づき距離Dを求めることができる。
【0033】
信号処理部112は、ヒストグラムの曲線近似を行う際に、ヒストグラムが近似された曲線に対してフィルタ処理を施すことができる。例えば、信号処理部112は、ヒストグラムが近似された曲線に対してローパスフィルタ処理を施すことで、ノイズ成分を抑制することが可能である。
【0034】
信号処理部112で求められた距離情報は、インタフェース106に供給される。インタフェース106は、信号処理部112から供給された距離情報を、出力データとして外部に出力する。インタフェース106としては、例えばMIPI(Mobile Industry Processor Interface)を適用することができる。
【0035】
なお、上述では、信号処理部112で求められた距離情報を、インタフェース106を介して外部に出力しているが、これはこの例に限定されない。すなわち、生成部111により生成されたヒストグラムのデータであるヒストグラムデータを、インタフェース106から外部に出力する構成としてもよい。この場合、設定部113が設定する測距条件情報は、フィルタ係数を示す情報を省略することができる。インタフェース106から出力されたヒストグラムデータは、例えば外部の情報処理装置に供給され、適宜、処理される。
【0036】
図5は、各実施形態に適用可能な画素10の基本的な構成例を示す図である。
図5において、画素10は、受光素子1000と、PチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1001と、インバータ1002と、を含む。
【0037】
受光素子1000は、入射された光を光電変換により電気信号に変換して出力する。各実施形態においては、受光素子1000は、入射された光子(光子)を光電変換により電気信号に変換し、光子の入射に応じたパルスを出力する。各実施形態では、受光素子1000として、単一光子アバランシェダイオードを用いる。以下、単一光子アバランシェダイオードを、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)と呼ぶ。SPADは、カソードにアバランシェ増倍が発生する大きな負電圧を加えておくと、1光子の入射に応じて発生した電子がアバランシェ増倍を生じ、大電流が流れる特性を有する。SPADのこの特性を利用することで、1光子の入射を高感度で検知することができる。
【0038】
図5において、SPADである受光素子1000は、カソードがトランジスタ1001のドレインに接続され、アノードが受光素子1000の降伏電圧である電圧Vbdに対応する負電圧(-Vop)の電圧源に接続される。トランジスタ1001のソースが過剰バイアス電圧Veに接続される。トランジスタ1001のゲートには、基準電圧Vrefが入力される。トランジスタ1001は、過剰バイアス電圧Veおよび基準電圧Vrefに応じた電流をドレインから出力する電流源である。このような構成により、受光素子1000には、逆バイアスが印加される。また、光電流は、受光素子1000のカソードからアノードに向けた方向に流れる。
【0039】
より詳細には、受光素子1000は、カソードに過剰バイアス電圧Veが印加され、カソード-アノード間の電圧VCTH-ANが電圧VDD+Vopとなっている状態で光子が入射されると、アバランシェ増倍が開始されカソードからアノードの方向に向けて電流が流れ、それに伴い受光素子1000において電圧降下が発生する。この電圧降下により、受光素子1000のカソード-アノード間の電圧VCTH-ANが電圧Vopまで下がるとアバランシェ増倍が停止される(クエンチング動作)。その後、電流源であるトランジスタ1001からの電流(リチャージ電流)により受光素子1000が充電され、受光素子1000の状態が光子入射前の状態に戻る(リチャージ動作)。
【0040】
トランジスタ1001のドレインと受光素子1000のカソードとの接続点から取り出された電圧Vcaが、インバータ1002に入力される。インバータ1002は、入力された電圧Vcaに対して閾値電圧Vthに基づき閾値判定を行い、出力する信号Vinvを、当該電圧Vcaが閾値電圧Vthを正方向または負方向に超える毎に反転させる。
【0041】
より具体的には、インバータ1002は、受光素子1000に対する光子の入射に応じたアバランシェ増倍による電圧降下において、電圧Vcaが閾値電圧Vthを跨いだ第1のタイミングで、信号Vinvを反転させる。次に、リチャージ動作により受光素子1000の充電が行われ電圧Vcaが上昇する。インバータ1002は、この上昇する電圧Vcaが閾値電圧Vthを跨いだ第2のタイミングで、信号Vinvを再び反転させる。この第1のタイミングと第2のタイミングとの時間方向の幅が、受光素子1000に対する光子の入射に応じた出力パルスとなる。
【0042】
この出力パルスは、
図4を用いて説明した、画素アレイ部100から非同期に出力される画素信号に対応する。
図4において、変換部110は、この出力パルスを、当該出力パルスが供給されたタイミングを示す時間情報に変換して生成部111に渡す。生成部111は、この時間情報に基づきヒストグラムを生成する。
【0043】
図6は、各実施形態に係る測距装置1に適用可能なデバイスの構成の例を示す模式図である。
図6において、測距装置1は、それぞれ半導体チップからなる第1のチップ210と、第2のチップ211とが積層されて構成される。なお、
図5では、説明のため、第1のチップ210と第2のチップ211とを分離した状態で示している。また、以下では、便宜上、第1のチップ210を上チップ210、第2のチップ211を下チップ211と呼ぶ。
【0044】
上チップ210は、画素アレイ部100の領域において、複数の画素10それぞれに含まれる受光素子1000が2次元格子状に配列される。また、画素10において、トランジスタ1001およびインバータ1002は、下チップ211上に形成される。受光素子1000の両端は、例えばCCC(Copper-Copper Connection)などによる結合部1105を介して、上チップ210と下チップ211との間で接続される。
【0045】
下チップ211は、受光素子1000によって取得された信号を処理する信号処理部を含むロジックアレイ部200が設けられる。下チップ211に対して、さらに、当該ロジックアレイ部200と近接して、受光素子1000によって取得された信号の処理を行う信号処理回路部201と、測距装置1としての動作を制御する装置制御部203と、を設けることができる。
【0046】
例えば、信号処理回路部201は、上述した測距処理部101を含むことができる。また、装置制御部203は、上述した画素制御部102、全体制御部103、クロック生成部104、発光タイミング制御部105およびインタフェース106を含むことができる。
【0047】
なお、上チップ210および下チップ211上の構成は、この例に限定されない。また、装置制御部203は、ロジックアレイ部200の制御以外にも、例えば受光素子1000の近傍に、他の駆動や制御の目的で配置することができる。装置制御部203は、
図6に示した配置以外にも、上チップ210および下チップ211の任意の領域に、任意の機能を有するように設けることができる。
【0048】
(既存技術による受光素子の制御の例)
次に、本開示に係る技術の説明に先んじて、理解を容易とするために、既存技術による受光素子1000の制御の例について説明する。
図7は、SPADとしての受光素子1000の動作を概略的に示す図である。
図7の上段のチャート40は、特性線400により受光素子1000におけるカソード-アノード間の電圧V
CTH-ANの変化の例を示し、縦軸が電圧[V]、横軸が時間を示している。
【0049】
また、
図7の下段のチャート41は、受光素子1000におけるポテンシャルのシリコン(Si)基板内での変化の例を示し、縦軸がポテンシャル、横軸が基板の厚み方向(Si厚み)を示している。なお、チャート41は、電子の振る舞いに関するものであって、縦軸の上方向に向けてポテンシャルが高くなる。
【0050】
まず、チャート40を用いて、受光素子1000の基本的な動作例について説明する。なお、ここでは、
図5を用いて説明した回路構成において、トランジスタ1001の代わりに抵抗値Rqの抵抗素子を接続した構成を用いている。時間t
100で、受光素子1000のカソード-アノード間に、降伏電圧である電圧Vbdに過剰バイアス電圧Veを加えた電圧が印加され、受光素子1000が光子の入射の待機状態とされる。待機状態では、受光素子1000において、カソードからアノードに向けた電流は流れない。
【0051】
この待機状態の受光素子1000に対して、例えば時間t101に光子が入射すると、入射された光子を種にしてアバランシェ増倍が発生し、受光素子1000のカソードからアノードに向けて電流が流れる。これにより、受光素子1000に直列に接続される抵抗素子において電圧降下が発生し、受光素子1000の電圧VCTH-ANが低下する。電圧VCTH-ANが降伏電圧である電圧Vbdまで低下すると、受光素子1000においてアバランシェ増倍が停止する(時間t102、クエンチング動作)。その後、受光素子1000は、抵抗素子を介して供給される電流により充電され(リチャージ動作)、チャート40に特性線400で示されるように、電圧VCTH-ANが過剰バイアス電圧Veに漸近する。
【0052】
ここで、受光素子1000に光子が入射された時間t101から、リチャージ動作により電圧VCTH-ANが所定の電圧まで上昇する時間t103までの時間は、受光素子1000のリセットに要する時間であり、デッドタイム(Dead time)と呼ばれる。受光素子1000は、デッドタイム期間中に光子が入射されても、アバランシェ増倍を発生しない。
【0053】
図7のチャート41において、左端側に受光素子1000における増倍領域410が示され、この増倍領域410から右方向に向けて受光面に近付く。増倍領域410では、厚みの変化に対して急峻にポテンシャルが上昇する特性となる。チャート41において、特性線411および412は、ポテンシャルの厚み方向の変化を表すポテンシャル曲線の例を示している。
【0054】
ここで、チャート40において待機状態として示される時間t100~t101の期間では、チャート41に特性線411として例示されるように、増倍領域410から受光面に近付くに連れ、ポテンシャルが増加する。一方、受光素子1000においてアバランシェ増倍が発生しクエンチング動作が開始されると、過剰バイアス電圧Veの低下により、チャート41に特性線412として例示されるように、増倍領域410から受光面に近付く過程において、ポテンシャルが減少する区間が発生する。ポテンシャルは、ある厚みにおいて最も減少し、その厚みから受光面に向けて緩やかに増加する。以下では、このポテンシャルの減少および増加によるポテンシャル曲線の窪を、「ポテンシャルの撓み」と呼ぶ。ポテンシャルの撓みは、チャート41に矢印Aとして示されるように、リチャージ動作により徐々に解消される。
【0055】
次に、
図8A~
図8Dを用いて、受光素子1000において発生するアフターパルシングについて、概略的に説明する。なお、
図8A~
図8Dは、上述した
図7のチャート41に対応する。
図8Aは、受光素子1000において、光子の到来、または、暗電流によりアバランシェ増倍が開始された状態の例を示す図である。待機状態の受光素子1000に光子430が到来すると、アバランシェ増倍が発生し、矢印Bに示されるように、電子420aが、増倍領域410において急峻に変化する特性線411に沿って加速しながら移動する。この
図8Aの状態は、例えば上述した
図7におけるチャート40の時間t
101の近辺の状態に対応する。
【0056】
アバランシェ増倍が発生し、受光素子1000にカソードからアノードに向けて電流が流れると、電圧V
CTH-ANが低下する。これにより、ポテンシャル曲線が特性線411から特性線412の状態に変化し、ポテンシャルに撓みが生じる。また、
図8Bに、増倍領域410において特性線411を跨いで移動する電子420bとして例示されるように、アバランシェ増倍に寄与するキャリアのごく一部がSi界面にトラップされることにより、受光素子1000内で発光431が起きる。
【0057】
図8Cに示されるように、この素子内部での発光431により、ポテンシャルの撓みに電子420bが溜まる。すなわち、ポテンシャルの撓み部分は、その両側の厚みに対してポテンシャルが低い窪となっており、この窪に対して電子420bが溜まる。これら
図8Bおよび
図8Cの状態は、例えば
図7におけるチャート40の時間t
102の近辺の状態に対応する。
【0058】
リチャージ動作によりポテンシャルの撓みが解消されると、
図8Dに矢印Dにて示されるように、ポテンシャル曲線が特性線412の状態から特性線411の状態に変化する。これにより、増倍領域410内の電子420aが受光素子1000から排出される。この状態は、例えば
図7におけるチャート40の時間t
103の近辺の状態に対応する。
【0059】
この
図8Dの状態において、
図8D内の矢印Eにて示されるように、ポテンシャルの撓みに溜まった電子420bが特性線411に示すポテンシャル曲線に従い移動する。この移動した電子420bが増倍領域410に到達すると、この電子420bを種として、再びアバランシェ増倍が開始される。すなわち、受光素子1000は、光子の到来が無くとも、アバランシェ増倍が発生し、電流が流れることになる。
【0060】
ここで、
図8Cに示したように、ポテンシャルの撓み部分に溜まった電子420bを、アフターパルシングによりアバランシェ増倍が発生する前に、受光素子1000から排出する処理を実行する。例えば、リチャージ動作中に電子420bの排出を行う。この場合、リチャージ電流の電流値を小さくすることで、リチャージ動作が完了するまでの時間が長くなり、電子420bをより確実に排出することが可能となる。その一方で、リチャージ動作の時間が長くなると、デッドタイムが長くなり、受光素子1000の光子の入射に対する反応速度が下がってしまう。
【0061】
[第1の実施形態]
次に、本開示の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、受光素子1000から出力される信号Vplsに基づくインバータ1002の出力の反転に応じて、受光素子1000のカソードに、過剰バイアス電圧Veに対応する電源電圧VDDを印加し、カソードの電圧を強制的に電圧VDDに引き上げる。それと共に、リチャージ電流の電流値を、既存技術で用いるリチャージ電流の電流値に対して小さい電流値とし、カソードの電圧の電源電圧VDDへの復帰を緩やかにする。これにより、リチャージ動作に要する時間を延長せずに、ポテンシャルの撓み部分に溜まった電子をより確実に排出可能となる。
【0062】
なお、以下では、特に記載の無い限り、「電流の電流値が小さい(大きい)」などの表現を「電流が小さい(大きい)」のように省略して記述する。
【0063】
図9は、第1の実施形態に係る画素の一例の構成を示す図である。
図9において、画素10aは、SPADである受光素子1000と、PチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1001と、インバータ1002と、PチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1010と、NチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1020と、を含む。画素10aに対して、バッファ回路1021をさらに含めてもよい。
【0064】
図9において、受光素子1000と、トランジスタ1001と、インバータ1002と、の接続は、上述した
図5の構成と同様である。すなわち、受光素子1000は、カソードがトランジスタ1001のドレインに接続され、アノードが負電圧(-Vop)の電源に接続される。ここで、負電圧(-Vop)は、
図5の負電圧(-Vbp)に対応するもので、受光素子1000の降伏電圧に対応する電圧である。トランジスタ1001のソースが電源電圧VDDの供給線に接続される。この電源電圧VDDは、
図5の過剰バイアス電圧Veに対応する。
【0065】
なお、以下では、特に記載の無い限り、「電源電圧VDDの供給線に接続される」旨を、「電源電圧VDDに接続される」のように記述する。
【0066】
トランジスタ1001のゲートには、基準電圧Vrefが入力される。トランジスタ1001は、電源電圧VDD(過剰バイアス電圧Ve)および基準電圧Vrefに応じた電流をドレインから出力する電流源である。例えば、トランジスタ1001は、カレントミラー回路における複製先のトランジスタであって、図示されない当該カレントミラー回路の複製元のトランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流が複製されて、ドレインから出力される。
【0067】
トランジスタ1001のドレインと受光素子1000のカソードが接続される接続点から取り出された電圧Vcaが、インバータ1002に入力される。インバータ1002は、入力された電圧Vcaに対して例えば判定を行い、当該電圧Vcaが閾値電圧Vthを正方向または負方向に超える毎に反転する信号Vinvを出力する。インバータ1002から出力された信号Vinvは、例えばバッファ回路1021を介して、信号Vplsとして出力される。
【0068】
トランジスタ1001のドレインと受光素子1000のカソードが接続される接続点に対して、さらに、トランジスタ1010のドレインと、トランジスタ1020のドレインと、が接続される。トランジスタ1020は、ソースが接地電位GNDに接続され、ゲートに信号STBYが入力される。信号STBYがハイ(High)状態でトランジスタ1020のドレイン-ソース間がオン(ON)状態となり、受光素子1000のカソードの電圧Vcaが強制的に接地電位とされる。これにより、スタンバイ状態における受光素子1000のアバランシェ増倍反応を起こりにくくさせる。
【0069】
トランジスタ1010のソースが電源電圧VDDに接続される。また、トランジスタ1010のゲートに、インバータ1002から出力された信号Vinvが、制御信号Vctrlとして入力される。トランジスタ1010は、信号Vinvすなわち信号Vctlrがロー(Low)状態でオン状態となり、受光素子1000のカソードを電源電圧VDDに接続する。
【0070】
図10は、
図9に示した、第1の実施形態に係る構成における、受光素子1000のカソードの電圧Vcaの変化の例を示す図である。なお、
図10において、特性線50は、第1の実施形態を適用しない場合の電圧Vcaを示し、特性線51は、第1の実施形態を適用した場合の電圧Vcaを示している。
【0071】
図10において、時間t
10は、
図7のチャート40における時間t
100に対応し、受光素子1000のカソード-アノード間に、降伏電圧(-Vop)に電源電圧VDDを加えた電圧が印加される。ここで、電源電圧VDDは、受光素子1000に対する、上述した過剰バイアス電圧Veに相当する電圧であって、受光素子1000が光子の入射の待機状態とされる。この状態において、インバータ1002の出力の信号Vinvは、ロー状態であり、受光素子1000のカソードがトランジスタ1010を介して電源電圧VDDに接続されている。
【0072】
この待機状態の受光素子1000に対して、例えば時間t11に光子が入射すると、入射された光子を種にしてアバランシェ増倍が発生する。このアバランシェ増倍により、受光素子1000のカソードからアノードに向けて電流が流れ、受光素子1000のカソードの電圧Vcaが低下する。
【0073】
受光素子1000のカソードから取り出された電圧Vcaは、インバータ1002に入力され、インバータ1002において閾値電圧Vthと比較される。時間t20で、電圧Vcaが閾値電圧Vthを跨ぐと、インバータ1002の出力の信号Vinv(制御信号Vctrl)が反転してハイ状態となり、トランジスタ1010がオフ(OFF)状態となる。
【0074】
時間t12で受光素子1000のカソードの電圧Vcaが電圧(-Vop)まで低下してアバランシェ増倍が停止する。受光素子1000のカソードには、トランジスタ1001を介して電流が流れ込み、受光素子1000に対するリチャージ動作が開始される。
【0075】
このとき、リチャージ電流を所定より小さい電流とすることで、特性線51に例示されるように、リチャージ動作によるカソードの電圧Vcaの上昇の傾きを、第1の実施形態を適用しない場合(特性線50参照)に比べて緩やかにすることができる。例えば、リチャージ電流を、本開示による技術を適用しない場合に比べて小さい電流とする。これにより、当該電圧Vcaが次に閾値電圧Vthを跨ぐまでの時間が、本開示による技術を適用しない場合に比べて長くなり、ポテンシャルの撓み部分に溜まる電子をより確実に排出でき、アフターパルシングの発生を抑制することが可能となる。
【0076】
受光素子1000のカソードの電圧Vcaがインバータ1002の閾値電圧Vthを跨ぐと(時間t
21)、インバータ1002の出力の信号Vinvが反転してロー状態となる。信号Vinvがロー状態となると、トランジスタ1010がオン状態となり、受光素子1000のカソードに対して、トランジスタ1010を介して電源電圧VDDが供給される。これにより、
図10に時間
21からの特性線51に示されるように、受光素子1000のカソードの電圧Vcaが強制的に電源電圧VDDまで引き上げられ、リチャージ動作が完了する(時間t
13)。
【0077】
このように、本開示の第1の実施形態では、インバータ1002から出力される信号Vinvに応じたトランジスタ1010の動作により、受光素子1000に対する電源電圧VDD(過剰バイアス電圧Ve)の供給を制御する。これにより、第1の実施形態の構成によれば、リチャージ動作に要する時間を延長すること無く、アフターパルシングの発生を抑制することが可能となる。
【0078】
ここで、トランジスタ1010がオン状態の場合において、トランジスタ1010を介して受光素子1000のカソードに所定以上の電流が流れ込むと、受光素子1000に残っている電子に、アバランシェ増倍を開始可能な程度のエネルギーが与えられ、アフターパルシングが発生してしまう可能性がある。そのため、トランジスタ1010がオン状態の場合において受光素子1000に流れ込む電流が、受光素子1000のラッチングカレントより小さくなるようにする。ラッチングカレントは、受光素子1000においてアバランシェ増倍を維持するために必要な、受光素子1000に固有の電流である。
【0079】
例えば、時間t21の時点では、受光素子1000に対して、トランジスタ1010から電流が供給されると共に、トランジスタ1001からも電流が供給されている。したがって、受光素子1000に対してトランジスタ1001から供給される電流と、トランジスタ1010から供給される電流と、を加算した電流がラッチングカレントよりも小さい電流となるようにすることが考えられる。
【0080】
例えば、トランジスタ1010のサイズ(アスペクト比)を調整することで、トランジスタ1010のソース-ドレイン間を流れる電流を調整することができる。トランジスタ1001についても同様である。
【0081】
(第1の実施形態の第1の変形例)
次に、本開示の第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
図11は、第1の実施形態の第1の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図11において、画素10bは、上述した
図9の構成に対して、電流源としてのトランジスタ1001の代わりに抵抗素子1003を用いた例である。それ以外の部分は、上述した
図9の構成と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0082】
図11の構成の場合、受光素子1000の待機状態においては抵抗素子1003に電流が流れず、受光素子1000のカソードには電源電圧VDDが印加される。受光素子1000においてアバランシェ増倍が発生し電流が流れると、抵抗素子1003において電圧降下が発生する。これにより、受光素子1000のカソード-アノード間の電圧V
CTH-ANが低下し、その結果、アバランシェ増倍が停止する。
【0083】
この動作の場合、
図10に示す時間t
10から時間t
11を介して時間t
21の間のカソードの電圧Vcaの変化は、
図10のように直線的ではなく、
図7のチャート40に特性線400として示したように曲線的となる。
図10の時間t21で電圧Vcaがインバータ1002の閾値電圧Vthを跨ぐと、トランジスタ1010がオン状態とされ、受光素子1000のカソードが電源電圧VDDに接続され、電圧Vcaが強制的に電源電圧VDDに引き上げられる。
【0084】
この
図11の構成においても、トランジスタ1010がオン状態の場合に受光素子1000に流れ込む電流を、ラッチングカレントより小さくする必要がある。
図11の構成の場合、トランジスタ1010のサイズと、抵抗素子1003の抵抗値と、を調整することで、当該電流をラッチングカレントより小さくすることが可能である。
【0085】
(第1の実施形態の第2の変形例)
次に、第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
図12は、第1の実施形態の第2の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図12において、画素10cは、
図9に示した画素10aに対して、処理回路1030が追加されている。それ以外の部分は、上述した
図9の構成と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0086】
処理回路1030は、インバータ1002から出力された信号Vinvが供給される。処理回路1030は、この信号Vinvに対して所定の処理を施して、バッファ回路1021に供給する。バッファ回路1021は、処理回路1030から供給された信号を、出力信号Vpls’として出力する。
【0087】
また、処理回路1030は、入力された信号Vinvの論理を変更しない制御信号Vctrlを出力する。処理回路1030から出力された制御信号Vctrlは、トランジスタ1010のゲートに入力される。処理回路1030から、インバータ1002から出力された信号Vinvの論理を変更しない制御信号Vctrlをトランジスタ1010のゲートに供給することで、画素10cは、
図10を用いて説明した動作と同様に動作することが可能である。
【0088】
処理回路1030は、例えばバッファ回路を含むことができる。例えば、処理回路1030は、当該バッファ回路によりインピーダンス変換を行うことができる。処理回路1030が含む回路は、インバータ1002から供給される信号Vinvの論理を変更しない制御信号Vctrlを出力可能であれば、特に限定されない。
【0089】
この第1の実施形態の第2の変形例の構成によれば、インバータ1002から出力される信号Vinvに対して所定の処理を施して出力することが可能である。
【0090】
(第1の実施形態の第3の変形例)
次に、第1の実施形態の第3の変形例について説明する。
図13は、第1の実施形態の第3の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図13において、画素10dは、
図9に示した画素10aに対して、処理回路1031と、セレクタ1032と、が追加されている。それ以外の部分は、上述した
図9の構成と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0091】
図13において、処理回路1031は、インバータ1002から供給された信号Vinvに対して所定の処理を施して、バッファ回路1021に供給する。また、処理回路1031は、供給された信号Vinvの論理を変更しない、複数の制御信号Vctrl
1、Vctrl
2、…、Vctrl
nを出力可能とされている。セレクタ1032は、画素10dの外部から供給される信号Selに従い、処理回路1031から出力された各制御信号Vctrl
1、Vctrl
2、…、Vctrl
nから1つの信号を選択し、選択した信号を制御信号Vctrlとしてトランジスタ1010のゲートに入力する。
【0092】
図14は、第1の実施形態の第3の変形例に適用可能な処理回路1031の一例の構成を示すブロック図である。
図14の例では、処理回路1031は、直列に接続される複数の処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nを含む。各処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nは、入力された信号の論理を変更しない各制御信号Vctrl
1、Vctrl
2、…、Vctrl
nをそれぞれ出力する。各処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nとしては、例えばバッファ回路や、遅延回路を適用することができる。
【0093】
各処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nの内容は、入力された信号の論理を変更せずに出力するものであれば、特に限定されない。また、各処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nは、互いに同一の内容の回路に限らず、異なる内容の回路を含んでいてもよい。さらに、
図14の例では、各処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nが直列に接続されているが、これはこの例に限定されない。例えば、各処理回路1300
1、1300
2、…、1300
nは、インバータ1002から供給される信号Vinvに対して並列に接続されていてもよいし、並列接続と直列接続とが混在していてもよい。
【0094】
この第1の実施形態の第3の変形例によれば、インバータ1002から出力される信号Vinvに対して、複数の信号処理から選択した信号処理を施すことができる。
【0095】
(第1の実施形態の第4の変形例)
次に、第1の実施形態の第4の変形例について説明する。
図15は、第1の実施形態の第4の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図15において、画素10eは、
図9に示した画素10aに対して、トランジスタ1010と、受光素子1000のカソードと、間に、PチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1022が挿入されている。それ以外の部分は、上述した
図9の構成と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0096】
より具体的には、画素10eにおいて、トランジスタ1022のソースが、トランジスタ1010のドレインに接続される。トランジスタ1022のドレインが、受光素子1000のカソードとトランジスタ1001のドレインとが接続される接続点に接続される。また、トランジスタ1022のゲートに、画素10eの外部から供給される信号enが入力される。トランジスタ1022は、この信号enに従い、オン/オフが制御される。
【0097】
この
図15の構成において、トランジスタ1022をオン状態とした場合の動作は、
図9および
図10を用いて説明した、第1の実施形態に係る画素10aと同様である。トランジスタ1022をオフ状態とした場合の動作については、既存技術による動作において、リチャージ動作に要する時間が延長された動作となる。
【0098】
例えば、時間t10において受光素子1000のカソード-アノード間に、降伏電圧(-Vop)に電源電圧VDDを加えた電圧が印加される。この状態において、インバータ1002の出力の信号Vinvは、ロー状態であり、受光素子1000のカソードがトランジスタ1010を介して電源電圧VDDに接続されている。待機状態の受光素子1000に対して、例えば時間t11に光子が入射すると、入射された光子を種にしてアバランシェ増倍が発生し、受光素子1000のカソードからアノードに向けて電流が流れ、受光素子1000のカソードの電圧Vcaが低下する。
【0099】
受光素子1000のカソードから取り出された電圧Vcaがインバータ1002において閾値電圧Vthと比較され、時間t20で、電圧Vcaが閾値電圧Vthを跨ぐと、インバータ1002の出力の信号Vinv(制御信号Vctrl)が反転してハイ状態となり、トランジスタ1010がオフ状態となる。
【0100】
時間t12で受光素子1000のカソードの電圧Vcaが電圧(-Vop)まで低下してアバランシェ増倍が停止する。受光素子1000のカソードには、トランジスタ1001を介して電流が流れ込み、受光素子1000に対するリチャージ動作が開始される。
【0101】
ここで、リチャージ電流が所定より小さな値とされているため、リチャージ動作によるカソードの電圧Vcaの上昇の傾きが、例えば
図10において時間t
12から時間t
21の間の特性線51に示される傾きとなり、第1の実施形態を適用しない場合(特性線50参照)に比べて緩やかになる。これにより、当該電圧Vcaが次に閾値電圧Vthを跨ぐまでの時間が、本開示による技術を適用しない場合に比べて長くなり、ポテンシャルの撓み部分に溜まる電子をより確実に排出でき、アフターパルシングの発生を抑制することが可能となる。
【0102】
受光素子1000のカソードの電圧Vcaがインバータ1002の閾値電圧Vthを跨ぐと(時間t
21)、インバータ1002の出力の信号Vinvが反転してロー状態となる。ここで、トランジスタ1010に直列に接続されるトランジスタ1022がオフ状態となっているため、トランジスタ1010を介した受光素子1000への電源電圧VDDの供給がなされず、電圧Vcaは、
図10において時間t
12から時間t
21の間の特性線51に示される傾きのまま、上昇する。電圧Vcaが電源電圧VDDに到達した時点で、リチャージ動作が完了する。
【0103】
この場合、第1の実施形態の第4の変形例に係る画素10eは、リチャージ動作が完了するまでの時間が、例えば第1の実施形態に係る画素10aにおける当該時間に対して長くなる。一方で、当該画素10eは、トランジスタ1022をオフ状態とした場合、電源電圧VDDが受光素子1000に供給されないため、電源電圧VDDを受光素子1000に供給する場合と比較して、消費電力を削減することが可能である。
【0104】
また、上述では、トランジスタ1022を、受光素子1000の動作期間中、常時オフ状態としているが、これはこの例に限定されない。例えば、受光素子1000の待機中(
図10の時間t
10から時間t
11の間の期間)のみ、トランジスタ1022をオフ状態とし、他の期間ではトランジスタ1022をオン状態とすることもできる。この場合、リチャージ動作が完了するまでの時間を延長すること無くアフターパルシングを抑制できると共に、受光素子1000の待機中の消費電力を削減することが可能となる。
【0105】
なお、この第1の実施形態の第4の変形例に係る構成は、上述した第1の実施形態および第1の実施形態の第1~第3の変形例の何れかと組み合わせて実施することが可能である。
【0106】
(第1の実施形態の第5の変形例)
次に、第1の実施形態の第5の変形例について説明する。
図16は、第1の実施形態の第5の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図16において、画素10fは、
図9に示した画素10aに対して、電流源となるトランジスタ1001’から供給される電流を可変とする構成の例である。それ以外の部分は、上述した
図9の構成と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0107】
上述したように、電流源となるトランジスタ1001’は、カレントミラー回路の複製先のトランジスタである。
図16の例では、トランジスタ1001’は、PチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1023をカレントミラー回路の複製元とし、電流源1040により供給される電流を複製して受光素子1000に供給する。
【0108】
この構成において、トランジスタ1001’、トランジスタ1023および電流源1040のうち少なくとも1つにおいて、供給する電流を可変とする。これにより、受光素子1000に供給されるリチャージ電流が可変とされ、受光素子1000を充電する充電速度を調整可能となる。トランジスタ1001’は、例えば並列に接続された複数のトランジスタにより構成し、当該複数のトランジスタのうちオン状態とするトランジスタの数に応じて、供給する電流を可変にできる。トランジスタ1023も、同様にして、供給する電流を可変にできる。
【0109】
これに限らず、例えばトランジスタ1010が供給する電流を可変とすることも可能である。この場合、インバータ1002の出力の信号Vinvが反転し、受光素子1000のカソードの電圧Vcaを電源電圧VDDに引き上げる時間(例えば
図10における時間t
21から時間t
13まで)を調整することが可能となる。
【0110】
なお、この第1の実施形態の第5の変形例に係る構成は、上述した第1の実施形態および第1の実施形態の第1~第4の変形例の何れかと組み合わせて実施することが可能である。
【0111】
(第1の実施形態の第6の変形例)
次に、第1の実施形態の第6の変形例について説明する。
図17は、第1の実施形態の第6の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図17において、画素10gは、
図9に示した画素10aに対して、電流源となるトランジスタ1001と、受光素子1000のカソードの電圧Vcaを電源電圧VDDに引き上げるためのトランジスタ1010と、がそれぞれ異なる電源に接続される例である。それ以外の部分は、上述した
図9の構成と同様であるので、ここでの詳細な説明を省略する。
【0112】
図17に示されるように、トランジスタ1001のソースが、電源電圧VDD
1に接続される。一方、トランジスタ1010のソースが、電源電圧VDD
1とは異なる、電源電圧VDD
2に接続される。ここで、電源電圧VDD
1と電源電圧VDD
2は、異なる電圧が供給可能な経路を介して供給されていればよく、電圧は、必ずしも異なっていなくても良い。
【0113】
このように、トランジスタ1001および1010の各ソースを異なる電源電圧VDD1およびVDD2に接続することで、リチャージ動作と、受光素子1000のカソードの電圧Vcaを電源電圧VDDに引き上げる動作と、をそれぞれ最適に制御することが容易となる。
【0114】
なお、この第1の実施形態の第6の変形例に係る構成は、上述した第1の実施形態および第1の実施形態の第1~第5の変形例の何れかと組み合わせて実施することが可能である。
【0115】
(第1の実施形態の第7の変形例)
次に、第1の実施形態の第7の変形例について説明する。
図18は、第1の実施形態の第7の変形例に係る画素の一例の構成を示す図である。
図18において、画素10hは、
図9に示した画素10aに対して、受光素子1000が電源側に接続される例である。
【0116】
すなわち、
図18において、画素10hは、受光素子1000と、NチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1100と、インバータ1002と、NチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1110と、PチャネルのMOSトランジスタであるトランジスタ1120と、を含む。画素10hに対して、バッファ回路1121をさらに含めてもよい。
【0117】
図18において、受光素子1000は、カソードが受光素子1000の降伏電圧に対応する電圧Vopの電源に接続され、アノードが電流源となるトランジスタ1100のドレインに接続される。トランジスタ1100のソースは、接地電位GNDに接続される。ここで、電圧Vopは、受光素子1000の降伏電圧である電圧Vbdに、過剰バイアス電圧Veを加算した電圧である。トランジスタ1100のゲートには、基準電圧Vrefが入力される。トランジスタ1100は、接地電位GNDおよび基準電圧Vrefに応じた電流をドレインから出力する電流源である。
【0118】
受光素子1000のアノードとトランジスタ1100のドレインとが接続される接続点から取り出された電圧Vanが、インバータ1002に入力される。インバータ1002は、入力された電圧Vanに対して例えば判定を行い、当該電圧Vanが閾値電圧Vthを正方向または負方向に超える毎に反転する信号Vinvを出力する。インバータ1002から出力された信号Vinvは、例えばバッファ回路1121を介して、信号Vplsとして出力される。
【0119】
受光素子1000のアノードとトランジスタ1100のドレインとが接続される接続点に対して、さらに、トランジスタ1110のドレインと、トランジスタ1120のドレインと、が接続される。トランジスタ1120は、ソースが過剰バイアス電圧Veに対応する電源電圧VDDに接続され、ゲートに信号STBYが入力される。信号STBYがロー状態でトランジスタ1120のソース-ドレイン間がオン状態となり、受光素子1000のアノードの電圧Vanが強制的に電圧VDDとされる。これにより、受光素子1000のカソード-アノード間の電圧VCTH-ANが電圧Vbdとされ、受光素子1000のアバランシェ増倍反応を起こりにくくさせる。
【0120】
トランジスタ1110のソースが接地電位GNDに接続される。また、トランジスタ1110のゲートに、インバータ1002から出力された信号Vinvが、制御信号Vctrlとして入力される。トランジスタ1110は、信号Vinvすなわち制御信号Vctrlがハイ状態でオン状態となり、受光素子1000のアノードを接地電位GNDに接続する。
【0121】
図19は、
図18に示した、第1の実施形態の第7の変形例に係る構成における、受光素子1000のアノードの電圧Vanの変化の例を示す図である。なお、
図19において、特性線60は、第1の実施形態の第7の変形例を適用しない場合の電圧Vanを示し、特性線61は、第1の実施形態の第7の変形例を適用した場合の電圧Vanを示している。
【0122】
図19において、時間t
30は、
図7のチャート40における時間t
100に対応し、受光素子1000のカソード-アノード間に電圧Vopが印加される。ここで、電圧Vopは、受光素子1000に対する、上述した過剰バイアス電圧Veに相当する電圧に受光素子1000の降伏電圧である電圧Vbdを加算した電圧であって、受光素子1000が光子の入射の待機状態とされる。この状態において、インバータ1002の出力の信号Vinvは、ハイ状態であり、受光素子1000のアノードがトランジスタ1110を介して接地電位GNDに接続されている。
【0123】
この待機状態の受光素子1000に対して、例えば時間t31に光子が入射すると、入射された光子を種にしてアバランシェ増倍が発生する。このアバランシェ増倍により、受光素子1000のカソードからアノードに向けて電流が流れ、受光素子1000のアノードの電圧Vanが上昇する。
【0124】
受光素子1000のアノードから取り出された電圧Vanは、インバータ1002に入力され、インバータ1002において閾値電圧Vthと比較される。時間t40で、電圧Vanが閾値電圧Vthを跨ぐと、インバータ1002の出力の信号Vinv(制御信号Vctrl)が反転してロー状態となり、トランジスタ1110がオフ状態となる。
【0125】
時間t32で受光素子1000のアノードの電圧Vanが電圧Vbdまで上昇し、受光素子1000のカソード-アノード間の電圧VCTH-ANが電圧Vbdとなってアバランシェ増倍が停止する。受光素子1000のアノードには、トランジスタ1100を介して電流が流れ出し、受光素子1000に対するリチャージ動作が開始される。
【0126】
このとき、リチャージ電流を所定より小さな値とすることで、特性線61に例示されるように、リチャージ動作によるアノードの電圧Vanの上昇の傾きを、第1の実施形態の第7の変形例を適用しない場合(特性線60参照)に比べて緩やかにすることができる。例えば、リチャージ電流を、本開示による技術を適用しない場合に比べて小さい電流とする。これにより、当該電圧Vanが次に閾値電圧Vthを跨ぐまでの時間が、本開示による技術を適用しない場合に比べて長くなり、ポテンシャルの撓み部分に溜まる電子をより確実に排出でき、アフターパルシングの発生を抑制することが可能となる。
【0127】
受光素子1000のアノードの電圧Vanがインバータ1002の閾値電圧Vthを跨ぐと(時間t
41)、インバータ1002の出力の信号Vinvが反転してハイ状態となる。信号Vinvがハイ状態となると、トランジスタ1110がオン状態となり、受光素子1000のアノードに対して、トランジスタ1110を介して接地電位GNDが供給される。これにより、
図19に時間
41からの特性線61に示されるように、受光素子1000のアノードの電圧Vanが強制的に接地電位GNDまで引き下げられ、リチャージ動作が完了する(時間t
33)。
【0128】
以上の動作により、受光素子1000が電源側に接続される構成であっても、
図9および
図10を用いて説明した第1の実施形態の構成と同様に、リチャージ動作に要する時間を延長すること無く、アフターパルシングの発生を抑制することが可能となる。
【0129】
なお、この例においても、上述した第1の実施形態と同様に、トランジスタ1110がオン状態の場合において、トランジスタ1110を介して受光素子1000のアノードから所定以上の電流が流れ出すと、受光素子1000に残っている電子に、アバランシェ増倍を開始可能な程度のエネルギーが与えられ、アフターパルシングが発生してしまう可能性がある。そのため、トランジスタ1110がオン状態の場合において受光素子1000に流れ込む電流が、受光素子1000のラッチングカレントより小さくなるようにする。
【0130】
なお、この第1の実施形態の第7の変形例に係る構成は、上述した第1の実施形態および第1の実施形態の第1~第6の変形例の何れかと組み合わせて実施することが可能である。
【0131】
(第1の実施形態の第8の変形例)
次に、第1の実施形態の第8の変形例について説明する。第1の実施形態の第8の変形例は、本開示の技術に係る構成を、
図6を用いて説明した、2つの半導体チップを積層して構成する積層構造に適用した例である。ここでは、一例として、
図9を用いて説明した第1の実施形態に係る画素10aを積層構造に適用させた例について説明する。
【0132】
図20は、第1の実施形態の第8の変形例に係る、画素10aの各部の配置の例を示す図である。画素10aの構成は、
図9を用いて説明した構成と同一である。
図6を参照して、
図20の例では、画素10aに含まれる各要素のうち受光素子1000が上チップ210に配置され、その他の要素(トランジスタ1001、1010および1020、ならびに、インバータ1002およびバッファ回路1021)が下チップ211に配置されている。
【0133】
受光素子1000は、カソードが、結合部212aを介して下チップ211に配置されるトランジスタ1001のドレインに接続される。また、受光素子1000は、アノードが、結合部212bを介して下チップ211に配置される電圧(-Vbd)の配線に接続される。結合部212aおよび212bは、例えばCCC(Copper-Copper Connection)などにより形成される。
【0134】
このように、受光素子1000を上チップ210に配置し、他の要素を下チップ211に配置することで、受光素子1000の受光面の面積を大きくすることが可能となり、受光素子1000の感度を向上させることが可能である。
【0135】
なお、
図20に示した上チップ210および下チップ211に対する画素10aの各要素の配置は、一例であって、この例に限定されない。例えば、上チップ210に対して受光素子1000とインバータ1002と、を配置し、下チップ211に対してその他の要素を配置してもよい。また、積層構造は、半導体チップが3層あるいはそれ以上に積層された構造でもよく、その場合、例えば受光素子1000は最表面の半導体チップに配置され、他の要素は、それぞれの層に適宜に配置される。
【0136】
なお、
図20では、この第1の実施形態の第8の変形例に係る構成を、上述した第1の実施形態に係る構成に適用させた例を説明したが、これはこの例に限定されない。すなわち、第1の実施形態の第8の変形例に係る構成は、上述した第1の実施形態の第1~第7の変形例の何れかと組み合わせて実施することが可能である。
【0137】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態として、本開示に係る、第1の実施形態およびその各変形例による画素10a~10hの何れかを用いた電子機器6の適用例について説明する。
図21は、上述の第1の実施形態およびその各変形例に係る画素10a~10hの何れかを用いた電子機器6を使用する使用例を示す図である。
【0138】
上述した電子機器6は、例えば、以下のように、可視光や、赤外光、紫外光、X線等の光をセンシングする様々なケースに使用することができる。
【0139】
・ディジタルカメラや、カメラ機能付きの携帯機器等の、鑑賞の用に供される画像を撮影する装置。
・自動停止等の安全運転や、運転者の状態の認識等のために、自動車の前方や後方、周囲、車内等を撮影する車載用センサ、走行車両や道路を監視する監視カメラ、車両間等の測距を行う測距センサ等の、交通の用に供される装置。
・ユーザのジェスチャを撮影して、そのジェスチャに従った機器操作を行うために、TVや、冷蔵庫、エアーコンディショナ等の家電に供される装置。
・内視鏡や、赤外光の受光による血管撮影を行う装置等の、医療やヘルスケアの用に供される装置。
・防犯用途の監視カメラや、人物認証用途のカメラ等の、セキュリティの用に供される装置。
・肌を撮影する肌測定器や、頭皮を撮影するマイクロスコープ等の、美容の用に供される装置。
・スポーツ用途等向けのアクションカメラやウェアラブルカメラ等の、スポーツの用に供される装置。
・畑や作物の状態を監視するためのカメラ等の、農業の用に供される装置。
【0140】
[本開示に係る技術のさらなる適用例]
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ適用することができる。例えば、本開示に係る技術は、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
【0141】
(体内情報取得システムへの適用例)
図22は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る、カプセル型内視鏡を用いた患者の体内情報取得システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
【0142】
体内情報取得システム10001は、カプセル型内視鏡10100と、外部制御装置10200とから構成される。
【0143】
カプセル型内視鏡10100は、検査時に、患者によって飲み込まれる。カプセル型内視鏡10100は、撮像機能および無線通信機能を有し、患者から自然排出されるまでの間、胃や腸等の臓器の内部を蠕動運動等によって移動しつつ、当該臓器の内部の画像(以下、体内画像ともいう)を所定の間隔で順次撮像し、その体内画像についての情報を体外の外部制御装置10200に順次無線送信する。
【0144】
外部制御装置10200は、体内情報取得システム10001の動作を統括的に制御する。また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信されてくる体内画像についての情報を受信し、受信した体内画像についての情報に基づいて、表示装置(図示しない)に当該体内画像を表示するための画像データを生成する。
【0145】
体内情報取得システム10001では、このようにして、カプセル型内視鏡10100が飲み込まれてから排出されるまでの間、患者の体内の様子を撮像した体内画像を随時得ることができる。
【0146】
カプセル型内視鏡10100と外部制御装置10200の構成および機能についてより詳細に説明する。
【0147】
カプセル型内視鏡10100は、カプセル型の筐体10101を有し、その筐体10101内には、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、給電部10115、電源部10116、および制御部10117が収納されている。
【0148】
光源部10111は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、撮像部10112の撮像視野に対して光を照射する。
【0149】
撮像部10112は、撮像素子、および当該撮像素子の前段に設けられる複数のレンズからなる光学系から構成される。観察対象である体組織に照射された光の反射光(以下、観察光という)は、当該光学系によって集光され、当該撮像素子に入射する。撮像部10112では、撮像素子において、そこに入射した観察光が光電変換され、その観察光に対応する画像信号が生成される。撮像部10112によって生成された画像信号は、画像処理部10113に提供される。
【0150】
画像処理部10113は、CPUやGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサによって構成され、撮像部10112によって生成された画像信号に対して各種の信号処理を行う。画像処理部10113は、信号処理を施した画像信号を、RAWデータとして無線通信部10114に提供する。
【0151】
無線通信部10114は、画像処理部10113によって信号処理が施された画像信号に対して変調処理等の所定の処理を行い、その画像信号を、アンテナ10114Aを介して外部制御装置10200に送信する。また、無線通信部10114は、外部制御装置10200から、カプセル型内視鏡10100の駆動制御に関する制御信号を、アンテナ10114Aを介して受信する。無線通信部10114は、外部制御装置10200から受信した制御信号を制御部10117に提供する。
【0152】
給電部10115は、受電用のアンテナコイル、当該アンテナコイルに発生した電流から電力を再生する電力再生回路、および昇圧回路等から構成される。給電部10115では、いわゆる非接触充電の原理を用いて電力が生成される。
【0153】
電源部10116は、二次電池によって構成され、給電部10115によって生成された電力を蓄電する。
図22では、図面が煩雑になることを避けるために、電源部10116からの電力の供給先を示す矢印等の図示を省略しているが、電源部10116に蓄電された電力は、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、および制御部10117に供給され、これらの駆動に用いられ得る。
【0154】
制御部10117は、CPU等のプロセッサによって構成され、光源部10111、撮像部10112、画像処理部10113、無線通信部10114、および、給電部10115の駆動を、外部制御装置10200から送信される制御信号に従って適宜制御する。
【0155】
外部制御装置10200は、CPU、GPU等のプロセッサ、又はプロセッサとメモリ等の記憶素子が混載されたマイクロコンピュータ若しくは制御基板等で構成される。外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100の制御部10117に対して制御信号を、アンテナ10200Aを介して送信することにより、カプセル型内視鏡10100の動作を制御する。カプセル型内視鏡10100では、例えば、外部制御装置10200からの制御信号により、光源部10111における観察対象に対する光の照射条件が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、撮像条件(例えば、撮像部10112におけるフレームレート、露出値等)が変更され得る。また、外部制御装置10200からの制御信号により、画像処理部10113における処理の内容や、無線通信部10114が画像信号を送信する条件(例えば、送信間隔、送信画像数等)が変更されてもよい。
【0156】
また、外部制御装置10200は、カプセル型内視鏡10100から送信される画像信号に対して、各種の画像処理を施し、撮像された体内画像を表示装置に表示するための画像データを生成する。当該画像処理としては、例えば現像処理(デモザイク処理)、高画質化処理(帯域強調処理、超解像処理、ノイズリダクション処理、手ブレ補正処理等)、拡大処理(電子ズーム処理)等、それぞれ単独で、あるいは、組み合わせて、各種の信号処理を行うことができる。外部制御装置10200は、表示装置の駆動を制御して、生成した画像データに基づいて撮像された体内画像を表示させる。あるいは、外部制御装置10200は、生成した画像データを記録装置(図示しない)に記録させたり、印刷装置(図示しない)に印刷出力させてもよい。
【0157】
以上、本開示に係る技術が適用され得る体内情報取得システムの一例について説明した。撮像部10112に本開示に係る技術を適用することにより、撮像部10112をより安定的に制御することが可能となる。
【0158】
(内視鏡手術システムへの適用例)
本開示に係る技術は、さらに、内視鏡手術システムに適用されてもよい。
図23は、本開示に係る技術(本技術)が適用され得る内視鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【0159】
図23では、術者(医師)11131が、内視鏡手術システム11000を用いて、患者ベッド11133上の患者11132に手術を行っている様子が図示されている。図示するように、内視鏡手術システム11000は、内視鏡11100と、気腹チューブ11111やエネルギー処置具11112等の、その他の術具11110と、内視鏡11100を支持する支持アーム装置11120と、内視鏡下手術のための各種の装置が搭載されたカート11200と、から構成される。
【0160】
内視鏡11100は、先端から所定の長さの領域が患者11132の体腔内に挿入される鏡筒11101と、鏡筒11101の基端に接続されるカメラヘッド11102と、から構成される。図示する例では、硬性の鏡筒11101を有するいわゆる硬性鏡として構成される内視鏡11100を図示しているが、内視鏡11100は、軟性の鏡筒を有するいわゆる軟性鏡として構成されてもよい。
【0161】
鏡筒11101の先端には、対物レンズが嵌め込まれた開口部が設けられている。内視鏡11100には光源装置11203が接続されており、当該光源装置11203によって生成された光が、鏡筒11101の内部に延設されるライトガイドによって当該鏡筒の先端まで導光され、対物レンズを介して患者11132の体腔内の観察対象に向かって照射される。なお、内視鏡11100は、直視鏡であってもよいし、斜視鏡又は側視鏡であってもよい。
【0162】
カメラヘッド11102の内部には光学系および撮像素子が設けられており、観察対象からの反射光(観察光)は当該光学系によって当該撮像素子に集光される。当該撮像素子によって観察光が光電変換され、観察光に対応する電気信号、すなわち観察像に対応する画像信号が生成される。当該画像信号は、RAWデータとしてカメラコントロールユニット(CCU:Camera Control Unit)11201に送信される。
【0163】
CCU11201は、CPUやGPU等によって構成され、内視鏡11100および表示装置11202の動作を統括的に制御する。さらに、CCU11201は、カメラヘッド11102から画像信号を受け取り、その画像信号に対して、例えば現像処理(デモザイク処理)等の、当該画像信号に基づく画像を表示するための各種の画像処理を施す。
【0164】
表示装置11202は、CCU11201からの制御により、当該CCU11201によって画像処理が施された画像信号に基づく画像を表示する。
【0165】
光源装置11203は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の光源から構成され、術部等を撮影する際の照射光を内視鏡11100に供給する。
【0166】
入力装置11204は、内視鏡手術システム11000に対する入力インタフェースである。ユーザは、入力装置11204を介して、内視鏡手術システム11000に対して各種の情報の入力や指示入力を行うことができる。例えば、ユーザは、内視鏡11100による撮像条件(照射光の種類、倍率および焦点距離等)を変更する旨の指示等を入力する。
【0167】
処置具制御装置11205は、組織の焼灼、切開又は血管の封止等のためのエネルギー処置具11112の駆動を制御する。気腹装置11206は、内視鏡11100による視野の確保および術者の作業空間の確保の目的で、患者11132の体腔を膨らめるために、気腹チューブ11111を介して当該体腔内にガスを送り込む。レコーダ11207は、手術に関する各種の情報を記録可能な装置である。プリンタ11208は、手術に関する各種の情報を、テキスト、画像又はグラフ等各種の形式で印刷可能な装置である。
【0168】
なお、内視鏡11100に術部を撮影する際の照射光を供給する光源装置11203は、例えばLED、レーザ光源又はこれらの組み合わせによって構成される白色光源から構成することができる。RGBレーザ光源の組み合わせにより白色光源が構成される場合には、各色(各波長)の出力強度および出力タイミングを高精度に制御することができるため、光源装置11203において撮像画像のホワイトバランスの調整を行うことができる。また、この場合には、RGBレーザ光源それぞれからのレーザ光を時分割で観察対象に照射し、その照射タイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御することにより、RGBそれぞれに対応した画像を時分割で撮像することも可能である。当該方法によれば、当該撮像素子にカラーフィルタを設けなくても、カラー画像を得ることができる。
【0169】
また、光源装置11203は、出力する光の強度を所定の時間ごとに変更するようにその駆動が制御されてもよい。その光の強度の変更のタイミングに同期してカメラヘッド11102の撮像素子の駆動を制御して時分割で画像を取得し、その画像を合成することにより、いわゆる黒つぶれおよび白とびのない高ダイナミックレンジの画像を生成することができる。
【0170】
また、光源装置11203は、特殊光観察に対応した所定の波長帯域の光を供給可能に構成されてもよい。特殊光観察では、例えば、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、通常の観察時における照射光(すなわち、白色光)に比べて狭帯域の光を照射することにより、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影する、いわゆる狭帯域光観察(Narrow Band Imaging)が行われる。あるいは、特殊光観察では、励起光を照射することにより発生する蛍光により画像を得る蛍光観察が行われてもよい。蛍光観察では、体組織に励起光を照射し当該体組織からの蛍光を観察すること(自家蛍光観察)、又はインドシアニングリーン(ICG)等の試薬を体組織に局注するとともに当該体組織にその試薬の蛍光波長に対応した励起光を照射し蛍光像を得ること等を行うことができる。光源装置11203は、このような特殊光観察に対応した狭帯域光および/又は励起光を供給可能に構成され得る。
【0171】
図24は、
図23に示すカメラヘッド11102およびCCU11201の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0172】
カメラヘッド11102は、レンズユニット11401と、撮像部11402と、駆動部11403と、通信部11404と、カメラヘッド制御部11405と、を有する。CCU11201は、通信部11411と、画像処理部11412と、制御部11413と、を有する。カメラヘッド11102とCCU11201とは、伝送ケーブル11400によって互いに通信可能に接続されている。
【0173】
レンズユニット11401は、鏡筒11101との接続部に設けられる光学系である。鏡筒11101の先端から取り込まれた観察光は、カメラヘッド11102まで導光され、当該レンズユニット11401に入射する。レンズユニット11401は、ズームレンズおよびフォーカスレンズを含む複数のレンズが組み合わされて構成される。
【0174】
撮像部11402は、撮像素子で構成される。撮像部11402を構成する撮像素子は、1つ(いわゆる単板式)であってもよいし、複数(いわゆる多板式)であってもよい。撮像部11402が多板式で構成される場合には、例えば各撮像素子によってRGBそれぞれに対応する画像信号が生成され、それらが合成されることによりカラー画像が得られてもよい。あるいは、撮像部11402は、3D(Dimensional)表示に対応する右目用および左目用の画像信号をそれぞれ取得するための1対の撮像素子を有するように構成されてもよい。3D表示が行われることにより、術者11131は術部における生体組織の奥行きをより正確に把握することが可能になる。なお、撮像部11402が多板式で構成される場合には、各撮像素子に対応して、レンズユニット11401も複数系統設けられ得る。
【0175】
また、撮像部11402は、必ずしもカメラヘッド11102に設けられなくてもよい。例えば、撮像部11402は、鏡筒11101の内部に、対物レンズの直後に設けられてもよい。
【0176】
駆動部11403は、アクチュエータによって構成され、カメラヘッド制御部11405からの制御により、レンズユニット11401のズームレンズおよびフォーカスレンズを光軸に沿って所定の距離だけ移動させる。これにより、撮像部11402による撮像画像の倍率および焦点が適宜調整され得る。
【0177】
通信部11404は、CCU11201との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11404は、撮像部11402から得た画像信号をRAWデータとして伝送ケーブル11400を介してCCU11201に送信する。
【0178】
また、通信部11404は、CCU11201から、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を受信し、カメラヘッド制御部11405に供給する。当該制御信号には、例えば、撮像画像のフレームレートを指定する旨の情報、撮像時の露出値を指定する旨の情報、並びに/又は撮像画像の倍率および焦点を指定する旨の情報等、撮像条件に関する情報が含まれる。
【0179】
なお、上記のフレームレートや露出値、倍率、焦点等の撮像条件は、ユーザによって適宜指定されてもよいし、取得された画像信号に基づいてCCU11201の制御部11413によって自動的に設定されてもよい。後者の場合には、いわゆるAE(Auto Exposure)機能、AF(Auto Focus)機能およびAWB(Auto White Balance)機能が内視鏡11100に搭載されていることになる。
【0180】
カメラヘッド制御部11405は、通信部11404を介して受信したCCU11201からの制御信号に基づいて、カメラヘッド11102の駆動を制御する。
【0181】
通信部11411は、カメラヘッド11102との間で各種の情報を送受信するための通信装置によって構成される。通信部11411は、カメラヘッド11102から、伝送ケーブル11400を介して送信される画像信号を受信する。
【0182】
また、通信部11411は、カメラヘッド11102に対して、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を送信する。画像信号や制御信号は、電気通信や光通信等によって送信することができる。
【0183】
画像処理部11412は、カメラヘッド11102から送信されたRAWデータである画像信号に対して各種の画像処理を施す。
【0184】
制御部11413は、内視鏡11100による術部等の撮像、および、術部等の撮像により得られる撮像画像の表示に関する各種の制御を行う。例えば、制御部11413は、カメラヘッド11102の駆動を制御するための制御信号を生成する。
【0185】
また、制御部11413は、画像処理部11412によって画像処理が施された画像信号に基づいて、術部等が映った撮像画像を表示装置11202に表示させる。この際、制御部11413は、各種の画像認識技術を用いて撮像画像内における各種の物体を認識してもよい。例えば、制御部11413は、撮像画像に含まれる物体のエッジの形状や色等を検出することにより、鉗子等の術具、特定の生体部位、出血、エネルギー処置具11112の使用時のミスト等を認識することができる。制御部11413は、表示装置11202に撮像画像を表示させる際に、その認識結果を用いて、各種の手術支援情報を当該術部の画像に重畳表示させてもよい。手術支援情報が重畳表示され、術者11131に提示されることにより、術者11131の負担を軽減することや、術者11131が確実に手術を進めることが可能になる。
【0186】
カメラヘッド11102およびCCU11201を接続する伝送ケーブル11400は、電気信号の通信に対応した電気信号ケーブル、光通信に対応した光ファイバ、又はこれらの複合ケーブルである。
【0187】
ここで、
図24の例では、伝送ケーブル11400を用いて有線で通信が行われていたが、カメラヘッド11102とCCU11201との間の通信は無線で行われてもよい。
【0188】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡手術システムの一例について説明した。撮像部10402に本開示に係る技術を適用することにより、撮像部10402をより安定的に制御することが可能となる。
【0189】
なお、ここでは、一例として内視鏡手術システムについて説明したが、本開示に係る技術は、その他、例えば、顕微鏡手術システム等に適用されてもよい。
【0190】
(移動体への適用例)
本開示に係る技術は、さらに、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボットといった各種の移動体に搭載される装置に対して適用されてもよい。
【0191】
図25は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0192】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図25に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、および統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、および車載ネットワークI/F(インタフェース)12053が図示されている。
【0193】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、および、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0194】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0195】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット12030は、例えば、受信した画像に対して画像処理を施し、画像処理の結果に基づき物体検出処理や距離検出処理を行う。
【0196】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0197】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0198】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0199】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0200】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0201】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声および画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図25の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062およびインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイおよびヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0202】
図26は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
図26では、車両12100は、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104および12105を有する。
【0203】
撮像部12101、12102、12103、12104および12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドアおよび車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101および車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。撮像部12101および12105で取得される前方の画像は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0204】
なお、
図26には、撮像部12101~12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112および12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102および12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101~12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0205】
撮像部12101~12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101~12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0206】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101~12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111~12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0207】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101~12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0208】
撮像部12101~12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101~12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101~12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101~12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0209】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、撮像部12031に適用され得る。撮像部12031に本開示に係る技術を適用することにより、撮像部12031を安定的に制御することが可能となる。
【0210】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0211】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
バイアス電圧に基づき所定の電位に充電された状態で入射された光子に応じてアバランシェ増倍が発生して電流が流れ、リチャージ電流により該状態に戻る受光素子と、
前記電流を検出し、該電流の電流値が閾値を跨いだ場合に出力信号を反転させる検出部と、
前記受光素子に前記リチャージ電流を供給する電流源と、
前記検出部の前記出力信号に応じて前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御するスイッチ部と、
を備える受光装置。
(2)
前記スイッチ部は、
前記受光素子に前記バイアス電圧を供給した場合に、前記受光素子が前記アバランシェ増倍を維持可能な所定の保持電流より電流値の小さい電流を前記受光素子に供給する
前記(1)に記載の受光装置。
(3)
前記電流源は、
電流値が前記保持電流より電流値の小さい前記リチャージ電流を前記受光素子に供給し、
前記スイッチ部は、
前記受光素子に前記バイアス電圧を供給した場合に、前記保持電流より電流値の小さい電流を前記受光素子に供給する
前記(2)に記載の受光装置。
(4)
前記電流源は、
前記検出部の前記出力信号が前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転してから、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転するまでの時間が、前記受光素子における前記アバランシェ増倍の発生により流れる電流に応じた内部発光により蓄積された電荷を排出する時間以上となる電流値の前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
前記(1)乃至(3)の何れかに記載の受光装置。
(5)
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が該出力信号の論理を変えない回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
前記(1)乃至(4)の何れかに記載の受光装置。
(6)
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が、それぞれ該出力信号の論理を変えない複数の回路のうち選択された回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
前記(1)乃至(5)の何れかに記載の受光装置。
(7)
前記スイッチ部による前記受光素子への前記バイアス電圧の供給の制御を有効および無効の何れか一方に設定する設定部をさらに備える
前記(1)乃至(6)の何れかに記載の受光装置。
(8)
前記電流源は、
電流値を可変で前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
前記(1)乃至(7)の何れかに記載の受光装置。
(9)
前記電流源と、前記スイッチ部における前記バイアス電圧の供給源と、が異なる電源に接続される
前記(1)乃至(8)の何れかに記載の受光装置。
(10)
第1の基板と、該第1の基板が積層される第2の基板と、を含み、
少なくとも前記受光素子が前記第1の基板に配置され、
前記検出部、前記電流源および前記スイッチ部のうち少なくとも一部が前記第2の基板に配置される
前記(1)乃至(9)の何れかに記載の受光装置。
(11)
バイアス電圧に基づき所定の電位に充電された状態で入射された光子に応じてアバランシェ増倍が発生して電流が流れ、リチャージ電流により該状態に戻る受光素子と、
前記電流を検出し、該電流の電流値が閾値を跨いだ場合に出力信号を反転させる検出部と、
前記受光素子に前記リチャージ電流を供給する電流源と、
前記検出部の前記出力信号に応じて前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御するスイッチ部と、
光源が発光した発光タイミングから、前記受光素子が受光した受光タイミングまで、の時間を計測して計測値を取得する時間計測部と、
前記計測値のヒストグラムを生成するヒストグラム生成部と、
前記ヒストグラムに基づき被測定物までの距離を演算する演算部と、
を備える測距装置。
(12)
前記スイッチ部は、
前記受光素子に前記バイアス電圧を供給した場合に、前記受光素子が前記アバランシェ増倍を維持可能な所定の保持電流より電流値の小さい電流を前記受光素子に供給する
前記(11)に記載の測距装置。
(13)
前記電流源は、
電流値が前記保持電流より電流値の小さい前記リチャージ電流を前記受光素子に供給し、
前記スイッチ部は、
前記受光素子の前記バイアス電圧を供給した場合に、前記保持電流より電流値の小さい電流を前記受光素子に供給する
前記(12)に記載の測距装置。
(14)
前記電流源は、
前記検出部の前記出力信号が前記受光素子による前記アバランシェ増倍の発生に応じて反転してから、前記リチャージ電流の供給に応じてさらに反転するまでの時間が、前記受光素子における前記アバランシェ増倍の発生により流れる電流に応じた内部発光により蓄積された電荷を排出する時間以上となる電流値の前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
前記(11)乃至(13)の何れかに記載の測距装置。
(15)
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が該出力信号の論理を変えない回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
前記(11)乃至(14)の何れかに記載の測距装置。
(16)
前記スイッチ部は、
前記検出部の出力信号が、それぞれ該出力信号の論理を変えない複数の回路のうち選択された回路を介して供給された信号に応じて、前記受光素子への前記バイアス電圧の供給を制御する
前記(11)乃至(15)の何れかに記載の測距装置。
(17)
前記スイッチ部による前記受光素子への前記バイアス電圧の供給の制御を有効および無効の何れか一方に設定する設定部をさらに備える
前記(11)乃至(16)の何れかに記載の測距装置。
(18)
前記電流源は、
電流値を可変で前記リチャージ電流を前記受光素子に供給する
前記(11)乃至(17)の何れかに記載の測距装置。
(19)
前記電流源と、前記スイッチ部における前記バイアス電圧の供給源と、が異なる電源に接続される
前記(11)乃至(18)の何れかに記載の測距装置。
(20)
第1の基板と、該第1の基板が積層される第2の基板と、を含み、
少なくとも前記受光素子が前記第1の基板に配置され、
前記検出部、前記電流源および前記スイッチ部のうち少なくとも一部が前記第2の基板に配置される
前記(11)乃至(19)の何れかに記載の測距装置。
【符号の説明】
【0212】
1 測距装置
10,10a,10b,10c,10d,10e,10f,10g,10h 画素
210 上チップ
211 下チップ
1000 受光素子
1001,1001’,1010,1020,1022,1023,1100,1110,1120 トランジスタ
1002 インバータ
1030,1031,13001,13002,1300n 処理回路
1032 セレクタ