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特許7513592エチレンに富むエラストマー、過酸化物および特定のアクリレート誘導体を含む組成物を有するタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】エチレンに富むエラストマー、過酸化物および特定のアクリレート誘導体を含む組成物を有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240702BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/101 20060101ALI20240702BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/36
C08K5/14
C08K5/101
B60C1/00 C
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
C08K3/04
C08L9/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021509149
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019071646
(87)【国際公開番号】W WO2020038762
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】18/57605
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ピブレ ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】メッシーナ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ゴーナード ベンジャミン
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-080269(JP,A)
【文献】特開2011-052089(JP,A)
【文献】特開2014-028887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08F259-289
B60C1、13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分をベースとするゴム組成物を含むタイヤ:
-エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーを主に含み、このコポリマー中のエチレン単位のモル分率が50%~95%の範囲内であるエラストマーマトリックス、
-少なくとも1種の過酸化物であって、組成物中の量が、エラストマー100質量部当たり0.1~10質量部(phr)の範囲内である過酸化物、および
-下記式(I)の少なくとも1種の多官能アクリレート誘導体であって、組成物中の量が、5~15phrの範囲内である多官能アクリレート誘導体
[X]p A (I)
〔式中:
o Aは、1個以上のヘテロ原子で中断および/または置換されている、直鎖、分枝鎖または環状C4-C30炭化水素基を示し、
o Aは、p個の自由原子価を含み、pは、2~6の範囲の値を有し、
o [X]pは、下記式(II)の基に対応し、
【化1】
(式中、
・R1、R2およびR3は、独立して、水素原子または直鎖、分枝鎖または環状アルキル基、アルキルアリール基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択されるC1-C8炭化水素基を示し、これらの基は1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、R2とR3が一緒になって非芳香族環を形成してもよく、
・(*)は、式(II)の基のAへの結合点を示す)、
o 2~6個のX基は、同一であっても異なっていてもよい〕。
【請求項2】
前記共役ジエン単位が、ブタジエン単位、イソプレン単位およびこれらの共役ジエン単位の混合物からなる群から選択される、請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
Aのヘテロ原子(1個以上)が、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子およびリン原子、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2記載のタイヤ。
【請求項4】
Aが、1個以上の酸素原子および/またはイオウ原子で中断および/または置換されている、直鎖、分枝鎖または環状C4-C30炭化水素基を示す、請求項1~3のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項5】
Aが、1個以上の酸素原子および/またはイオウ原子で中断されている、直鎖、分枝鎖または環状C4-C30炭化水素基を示す、請求項1~3のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項6】
式(I)の多官能アクリレート誘導体が、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールグリコールジ(メタ)アクリレートグリコール、プロポキシル化ヘキサンジオールグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エステルジオールジ(メタ)アクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートビス[6-(アクリロイルオキシ)ヘキサノエート、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項7】
前記組成物中の過酸化物の量が、0.5~5phrの範囲内である、請求項1~6のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項8】
前記組成物が、5~65phrの補強用充填剤を含む、請求項1~7のいずれか1項記載のタイヤ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項記載の組成物が、前記タイヤのトレッドおよび/または少なくとも1つの内部層中に存在する、請求項1~のいずれか1項記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、より詳細には、トレッドの組成物または内側層の組成物が多官能アクリレート誘導体および過酸化物を含むタイヤに関する。
【0002】
トレッドまたは内側層などのタイヤ層は、低転がり抵抗、高耐摩耗性、良好な道路挙動、さらに、材料の良好な凝集レベルを含む、多数の技術的な要求、多くの場合矛盾した要求に従わなければならない。
タイヤ設計者は、タイヤの少なくとも1つの特性を改善することにより、他のものを不利にすることなく、既存の特性の妥協を進化させる解決策を常に探索している。
耐摩耗性を向上させるためにトレッドの一定の剛性が望ましく、トレッドの剛性化は、例えば、補強用充填剤の含有量を増加させることによって、またはこれらのトレッドを構成するゴム組成物中に特定の補強用樹脂を組み込むことによって、得ることができることが知られている。残念ながら、経験から、このようなトレッドの剛性化が、知られているように、ゴム組成物のヒステリシス損の著しい増大を伴って、転がり抵抗特性を減少させることができることがわかっている。したがって、低転がり抵抗を維持しつつ剛性性能の向上を図ることがタイヤ設計者にとって解決すべき課題である。
転がり抵抗の観点から、上記特性の妥協は、タイヤの組成物中に使用される種々の半製品の製造に使用できるゴム組成物の形態で用いることができるように良好な機械的特性および可能な限り低いヒステリシスを有する新規な混合物の使用によって、改善させる可能性がある。例えば、文書WO 2016/102480号およびWO 2016/102483号は、ジエン系エラストマー組成物において多官能アクリレート誘導体および過酸化物を使用することを提案している。
【0003】
このように、製造業者は、剛性と転がり抵抗の両方をさらに改善するために、常に解決策を追求している。
その研究を継続して、本出願人は、驚くべきことに、エチレン単位と共役ジエン単位とを含む特定のランダムコポリマーを含む組成物における特定のアクリレート誘導体の使用が、その組成物の転がり抵抗、剛性および補強を向上させることができることを発見した。
【0004】
従って、本発明の主題は、特に、下記成分をベースとするゴム組成物を含むタイヤである:
-エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーを主に含み、このコポリマー中のエチレン単位のモル分率が50%~95%の範囲内であるエラストマーマトリックス、
-少なくとも1種の過酸化物、および
-下記式(I)の少なくとも1種の多官能アクリレート誘導体
[X]p A (I)
〔式中:
o Aは、1個以上のヘテロ原子で中断および/または置換されている、直鎖、分枝鎖または環状C4-C30炭化水素基を示し、
o Aは、p個の自由原子価を含み、pは、2~6の範囲の値を有し、
o [X]pは、下記式(II)の基に対応し:
【化1】
(式中、
・R1、R2およびR3は、独立して、水素原子または直鎖、分枝鎖または環状アルキル基、アルキルアリール基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択されるC1-C8炭化水素基を示し、これらの基は1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、R2とR3が一緒になって非芳香族環を形成してもよく、
・(*)は、式(II)の基のAへの結合点を示す)、
o 2~6個のX基は、同一であっても異なっていてもよい〕。
【0005】
I-定義
「ベースとする組成物」という表現は、使用する各種構成成分の混合物および/またはその場反応生成物を含む組成物を意味し、これらの構成成分の一部は、少なくとも部分的に、その組成物の製造の様々な段階の間、互いに反応できかつ/または反応することを意図されており;従って、その組成物が完全または部分的架橋状態または非架橋状態にあることができると理解すべきである。
本発明のために、「エラストマー100質量部当たりの質量部」(またはphr)という表現は、エラストマーの100質量部当たりの質量部を意味すると理解すべきである。
本文書において、特に明記しない限り、示した全てのパーセント(%)は質量パーセント(%)である。
さらに、「aとbの間」という表現により示される値の間隔は、いずれも、「a」よりも大きくから「b」よりも小さいまでに至る値の範囲を示し(即ち、限界値aとbは除外する)、一方、「a~b」という表現により示される値の間隔は、いずれも、「a」から「b」までに至る値の範囲を意味する(すなわち、厳格な限定値aおよびbを包含する)。本文書において、値の間隔が「a~b」という表現により記載されている場合、「aとbの間」という表現により示される間隔もまた、できれば記載される。
「主要」化合物に言及する場合、この用語は、本発明のために、この化合物が上記組成物において、同じタイプの化合物のうちで主要であること、すなわち、この化合物が同じタイプの化合物のうちで質量による最大量を示す化合物であることを意味すると理解されたい。したがって、例えば、主要エラストマーは、上記組成物におけるエラストマーの総質量に対して最大質量を示すエラストマーである。同様に、「主要」充填剤は、上記組成物の充填剤のうちで最大質量を示す充填剤である。一例として、単一のエラストマーを含む系において、そのエラストマーは本発明のために主要なものであり、2種のエラストマーを含む系においては、上記主要エラストマーは、エラストマーの質量の半分よりも多いエラストマーを示す。好ましくは、「主要」という用語は、50%よりも多く、好ましくは60%、70%、80%、90%よりも多く存在することを意味し、より好ましくはこの「主要」化合物は100%を示すことを理解されたい。
本明細書に記載の炭素を含む化合物は、化石起源またはバイオ由来起源のものであり得る。後者の場合、それらは、部分的にまたは完全に、バイオマスから生じるかまたはバイオマスから生じる再生可能な原料から得ることができる。特に、ポリマー、可塑剤、充填剤などが関係する。
【0006】
II-本発明の説明
II-1 エラストマーマトリックス
本発明に従うタイヤの組成物は、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマー(本明細書において「コポリマー」ともいう)を主に含み、このコポリマー中のエチレン単位のモル分率が50%~95%の範囲内であるエラストマーマトリックスを含むという本質的な特徴を有する。
本発明によれば、上記共役ジエン単位は、ブタジエン単位、イソプレン単位およびこれらの共役ジエン単位の混合物からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、この共役ジエン単位は、主にブタジエン単位であるか、さらに好ましくはブタジエン単位のみである。
上記コポリマーのミクロ構造は、有利には均一である。これらの単位の各々について、各重合時点において、鎖中の濃度が同一または実質的に同一である場合に均一なミクロ構造を有する。このように、これらの各単位の各々について、所定の時点において、濃度は、重合の直前および直後の時点で、従って重合の任意の時点でその濃度と同一または実質的に同一である。本発明のために、「濃度が同一または実質的に同一である」という表現において、「実質的に同一」という用語は、2mol%未満の変動を意味することが意図される。
【0007】
特に、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーにおいて、これらの単位の各々におけるモル濃度は、コポリマー鎖全体にわたって一定である。このように、このコポリマー鎖の始め、中間または末端または任意の他の位置に存在するセグメントを規定する連続する単位の代表的な数について、エチレン単位と共役ジエン単位の濃度は、各セグメントにおいて、同一または実質的に同一である。10単位の配列が代表的な数であり得る。
エチレン単位と共役ジエン単位(好ましくはブタジエン単位)の濃度は、有利には、コポリマーの鎖全体にわたって同一または実質的に同一である。各単位の濃度を選択された触媒系の種類および操作条件(特に、モノマー濃度および圧力)に従って予め定めることが可能である。
上記コポリマー中のエチレン単位のモル分率は、有利には60%~90%、好ましくは65%~85%の範囲内である。
上記コポリマー中の共役ジエン単位(好ましくはブタジエン単位)のモル分率は、50%以下である。好ましくは5%~50%、好ましくは10%~40%、好ましくは15%~35%の範囲内ある。
【0008】
本発明によれば、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、トランス-1,2-シクロヘキサン単位を含んでもよい。このコポリマーが、トランス-1,2-シクロヘキサン単位を含む場合、コポリマー中のトランス-1,2-シクロヘキサン単位のモル分率は、好ましくは0%と25%の間、好ましくは1%~10%、より好ましくは1%~5%である。
本発明によれば、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、ビニル芳香族単位を含むことができる。ビニル芳香族単位としては、下記のもの、例えば:スチレン、オルト-、メタ-、またはパラ-メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、パラ-tert-ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンが適している。有利には、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、ビニル芳香族単位を含まない。
エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、有利には20 000g/mol~1 500 000g/molの範囲、より好ましくは60 000g/mol~250 000g/molの範囲の質量Mnを有する。
【0009】
エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、2.5未満である多分散指数を有することも有利である。上記コポリマーのPDI値は、好ましくは2未満であり、このPDI値は、より好ましくは1.9以下である。分子量Mnと同様に、多分散指数PDIは、本出願においてサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。
エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、25℃未満であるガラス転移温度Tgを有することも有利である。これらのコポリマーは、より詳しくは、例えば、-45℃と-20℃の間の温度Tgを有してもよい。
エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーが、トランス-1,2-シクロヘキサン単位をさらに含む場合、このコポリマーは、有利には25%未満、より有利には15%未満、さらに有利には10%未満の結晶化度を有する。
モル分率、分子量、ガラス転移温度および結晶化度を決定するために使用される技術は、下記の実施例に記載する。
本発明に関連して使用できるエチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーは、既知の合成法、特に文書EP 1 092 731号、EP 1 554 321号、EP 1 656 400号、EP 1 829 901号、EP 1 954 705号、EP 1 957 506号、FR 3 045 612号またはFR 3 045 613号に記載されているものに従って得ることができる。
【0010】
本発明によれば、上記エラストマーマトリックスは、エラストマーとして、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマーのみを含むことが有利である。
あるいは、上記エラストマーマトリックスは、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むランダムコポリマー以外のジエンエラストマーをさらに含んでもよい(本明細書において「他のエラストマー」ともいう)。他のエラストマーは、それが存在する場合には少量である。すなわち、上記エラストマーマトリックスの50質量%未満、40質量%未満、30質量%未満、20質量%未満または10質量%未満でも存在する。
本発明に従うタイヤのエラストマーマトリックスの他のエラストマーは、好ましくは、ポリブタジエン(「BR」と略記する)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる高不飽和ジエン系エラストマー群から選択されることが好ましい。このようなコポリマーは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマー(NBR)、ブタジエン/スチレン/アクリロニトリルコポリマー(NSBR)またはこれらの化合物の2種以上の混合物からなる群から選択されることがより好ましい。
【0011】
II-2 多官能アクリレート
本発明に従うタイヤは、下記式(I)の少なくとも1種の多官能アクリレート誘導体を含む組成物を含む
[X]p A (I)
〔式中:
o Aは、1個以上のヘテロ原子で中断および/または置換されている、直鎖、分枝鎖または環状C4-C30炭化水素基を示し、
o Aは、p個の自由原子価を含み、pは、2~6の範囲の値を有し、
o [X]pは、下記式(II)の基に対応し:
【化2】
(式中、
・R1、R2およびR3は、独立して、水素原子または直鎖、分枝鎖または環状アルキル基、アルキルアリール基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選択されるC1-C8炭化水素基を示し、これらの基は1個以上のヘテロ原子で中断されていてもよく、R2とR3が一緒になって非芳香族環を形成してもよく、
・(*)は、式(II)の基のAへの結合点を示す)、
o 2~6個のX基は、同一であっても異なっていてもよい〕。
【0012】
環状アルキル基は、1個以上の環を含むアルキル基を意味すると理解されたい。
1個以上のヘテロ原子で中断された炭化水素基または炭化水素鎖は、1個以上のヘテロ原子を含む基または鎖を意味すると理解され、各ヘテロ原子は、上記基または上記鎖の2つの炭素原子の間に、または上記基または上記鎖の炭素原子と上記基または上記鎖の別のヘテロ原子の間に、または上記基または上記鎖の2つの他のヘテロ原子の間にある。
1個以上のヘテロ原子で置換されている炭化水素基または炭化水素鎖は、1個以上のヘテロ原子を含む基または鎖を意味すると理解され、各ヘテロ原子は、この炭化水素基または炭化水素鎖に共有結合によって、この炭化水素基または炭化水素鎖を中断することなく結合している。
R1、R2およびR3基のヘテロ原子(1個以上)は、窒素原子、イオウ原子または酸素原子であり得る。
R1、R2およびR3は、独立して、水素原子、メチル基またはエチル基を示すことが好ましい。R1、R2およびR3は、それぞれ、水素原子を示すことがより好ましい。あるいは、R2およびR3は、水素原子を示し、R1は、メチル基を示す。
価数pは、本発明に従う基Aの種類に依存する。本発明によれば、pは2、3、4、5または6であってもよい。好ましくは、pは、2、3または4、好ましくは2である。
Aのヘテロ原子(1個以上)は、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子およびリン原子、およびこれらの原子の組合せからなる群から選択され得る。Aのヘテロ原子(1個以上)は、好ましくは酸素原子およびイオウ原子からなる群から選択される。Aのヘテロ原子は、より好ましくは酸素原子である。
換言すれば、Aは、有利には酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子およびリン原子、およびこれらの原子の組合せから選択される1個以上のヘテロ原子で中断および/または置換されている直鎖、分枝鎖または環状C4-C30炭化水素基を示す。より好ましくは、Aは、有利には1個以上の酸素原子および/またはイオウ原子で中断および/または置換されている、好ましくは1個以上の酸素原子で中断および/または置換されているC4-C30炭化水素基を示す。
Aは、好ましくは、1個以上の酸素原子および/またはイオウ原子で中断されている、好ましくは1個以上の酸素原子で中断されている、直鎖、分枝鎖または環状、好ましくは直鎖または分枝鎖C4-C30炭化水素基を示す。Aは、より好ましくは、1個以上の酸素原子で中断されている直鎖または分枝鎖C4-C30炭化水素基を示す。
AがC4-C30炭化水素基を示す場合は、例えば、C5-C20、好ましくはC6-C16炭化水素基であってもよい。
Aが環状炭化水素基を含む場合は、非芳香族または芳香族、好ましくは非芳香族の環状炭化水素基であってもよい。
Aは、有利には、下記式(III)の基を示す:
[Y]q Z (III)
〔式中
- Zは、q個の自由原子価を含み、qは2~6の範囲の値を有し、
- [Y]qは、式(IV)の基に対応する:
【化3】
(式中
o Rは、水素原子またはメチル基を示し、
o mは、1~13、好ましくは2~6の範囲の整数であり、
o (*)は、式(IV)の基の式(II)の基への結合点を示し、
o (~)は、式(IV)の基のZへの結合点を示し、
o Zは、下記からなる群における基に対応する:
【化4】
ここで、oは、2~16、好ましくは4~10の範囲の整数であり、(~)は、Zの式(IV)の基への結合点を示す)〕。
【0013】
Aが式(III)の基を示す場合、Aの価数pがZの価数qに等しいことを当業者が理解することは明らかである。
Aが式(III)の基を示す式(I)の多官能アクリレート誘導体の一例として、商品名SR264(ポリエチレングリコール(300))ジアクリレート)、SR268G(テトラエチレングリコールジアクリレート)、SR306(トリプロピレングリコールジアクリレート)、SR349(エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(3))、SR508(ジプロピレングリコールジアクリレート)、CD561(エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート(5))、SR9003(プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(2))、SR454(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(3))、SR492(プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(3))、SR494(エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート(4))、SR9020(プロポキシル化グリセリルトリアクリレート(3))、SR205(トリエチレングリコールジメタクリレート)、SR210(ポリエチレングリコールジメタクリレート(200))、SR348(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(3))、SR596(アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラメタアクリレート)としてSartomer社からのもの、商品名Miramer M202、M206、M210、M216、M220、M222、M232、M240、M244、M270、M280、M282、M284、M286、M290、M320、M360、M2040、M2100、M2300、M3130、M3150、M3160、M3190、LR3130、M4004、M233、M241、M245、M2101、M2301、M281、M283、M287としてMiwon Speciality Chemical社のもの;あるいは商品名Photomer 4028、4050、4054、4056、4062、4070、4127、4226、4361、4362、4072、4094、4158、3005としてIGM Resins社からのものを挙げることができる。
【0014】
あるいは、Aは、下記からなる群から選択される基を示すことができる:
【化5】
【0015】
Aが上記段落で列記した群から選択された基を示す式(I)の多官能アクリレート誘導体の一例として、Sigma-Aldrich社からのもの:ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA);商品名ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(SR355)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(SR444)、ジエチレングリコールジメタクリレート(SR231)としてSartomer社からのもの、商品名Miramer M340、M410、M500、M600、M231としてMiwon Speciality Chemical社からのものまたは商品名Photomer 4306、4600、4666としてIGM Resin社からのものを挙げることができる。
【0016】
本発明によれば、式(I)の多官能アクリレート誘導体は、好ましくは、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アシレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチルプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エステルジオールジ(メタ)アクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートビス[6-(アクリロイルオキシ)ヘキサノエート]およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
式(I)の多官能アクリレート誘導体は、好ましくは、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチルロールプロパントリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールグリコールジアクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールグリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エステルジオールジアクリレート、トリ(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ヒドロキシピバロイルヒドロキシピバレートビス[6-(アクリロイルオキシ)ヘキサノエート]およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
式(I)の多官能アクリレート誘導体は、好ましくは、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチルプロパントリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
本発明に従うタイヤ組成物において、本発明に従うタイヤの組成物中の式(I)の多官能アクリレート誘導体の量は、好ましくは5~50phr、好ましくは5~30phr、好ましくは5~20phr、好ましくは5~15phrの範囲であるである。
【0019】
II-3 過酸化物
上記のエラストマーマトリックスおよび多官能アクリレートに加えて、本発明のタイヤのゴム組成物は、過酸化物を使用し、これは当業者に知られている任意の過酸化物であってもよい。
当業者には周知である過酸化物のうちで、本発明には、有機過酸化物系から選択される過酸化物を使用することが好ましい。従って、上記過酸化物は有機過酸化物であることが有利である。
「有機過酸化物」という用語は、有機化合物、すなわち、-O-O-基(共有結合単結合により結合された2個の酸素原子)を含む炭素含有化合物を意味すると理解されたい。
上記有機過酸化物は、有利には、ジアルキルペルオキシド、モノペルオキシカーボネート、ジアシルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
上記ジアルキルペルオキシドは、好ましくは、ジクミルペルオキシド、ジ(t-ブチル)ペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-アミルペルオキシ)ヘキサ-3-イン、α,α'-ジ-[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、α,α'-ジ-[(t-アミルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、ジ-(t-アミル)ペルオキシド、1,3,5-トリ[(t-ブチルペルオキシ)イソプロピル]ベンゼン、1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブタノールおよび1,3-ジメチル-3-(t-アミルペルオキシ)ブタノールおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
OO-tert-ブチルO-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、OO-tert-ブチルO-イソプロピルモノペルオキシカーボネート、OO-tert-アミル-O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、およびこれらの混合物などのいくつかのモノペルオキシカーボネートも使用できる。
上記ジアシルペルオキシドのうちでは、好ましいペルオキシドは過酸化ベンゾイルである。
上記ペルオキシケタールのうちで、好ましい過酸化物は、1,1-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル4,4-ジ-(t-ブチルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ブチレート、2,2-ジ(t-アミルペルオキシ)プロパン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキシノナン(またはメチルエチルケトンペルオキシ環状三量体)、3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン、n-ブチル4,4-ビス(t-アミルペルオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-アミルペルオキシ)ブチレート、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
上記ペルオキシエステルは、好ましくは、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエートおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0021】
上記有機過酸化物は、好ましくは、ジクミルペルオキシド、アリールまたはジアリールペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化ジベンゾイル、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、n-ブチル4,4'-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、OO-(t-ブチル)O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,3(4)-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンおよびこれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは、ジクミルペルオキシド、n-ブチル4,4'-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、OO-(t-ブチル)O-(2-エチルヘキシル)モノペルオキシカーボネート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,3(4)-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンおよびこれらの混合物からなる群から選択される。
本発明に従うタイヤ組成物において、過酸化物の量は、0.1~10phrの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、上記組成物における過酸化物の量は、0.5~5phr、好ましくは1~4phrの範囲内である。
商品名として知られる様々な包装製品が市販されている;Hercules Powder社からDicup、Noury van der Lande社からPerkadox Y12、Montecatini Edison S.p.A.社からPeroximon F40、Noury van der Lande社からTrigonox、R.T.Vanderbilt社からVarox、また、Wallace & Tiernan社からLuperkoも挙げることができる。
【0022】
II-4 補強用充填剤
本発明に従うタイヤの組成物は、補強用充填剤を必要とせず、このことは、この組成物のヒステリシスを大幅に低減し、従ってタイヤの転がり抵抗を低減することを可能にするのでその利点の1つである。
このように、本発明に従うタイヤの組成物は補強用充填剤を含まないかまたはその160phr未満を含むことが好ましい。
タイヤの製造に使用できるゴム組成物を補強する能力が知られているタイヤの組成物は、有利には5~120phr、好ましくは5~65phr、好ましくは5~60phr、好ましくは10~55phrの補強用充填剤を含むことができる
上記補強用充填剤は、カーボンブラックのような有機充填剤、シリカのような無機充填剤あるいはこれらの2つのタイプの充填剤の混合物であり得る。
全てのカーボンブラック、特に、タイヤまたはタイヤのトレッドにおいて、通常使用するブラック類は、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347、N375、N550、N683およびN772ブラック類のような100、200および300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM D-1765-2017級)が挙げられる。これらのカーボンブラックは、商業的に利用できるように、単離された状態で、または、例えば使用するゴム添加剤の一部の支持体として、他のいかなる形でも使用できる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、ジエンエラストマー、特にイソプレンエラストマーに既に混入させていてもよい(例えば、出願WO 9736724-A2号またはWO 99/16600-A1号を参照されたい)。
【0023】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願WO2006/069792-A1号、WO2006/069793-A1号、WO2008/003434-A1号およびWO2008/003435-A1号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
「補強用無機充填剤」という用語は、ここでは、カーボンブラックと対比して「白色充填剤」、「透明充填剤」とも、または「非黒色充填剤」とも知られ、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強することのできる、その色合いおよびその由来(天然または合成)が何であっても、任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである。ある種の補強用無期充填剤は、知られている通り、特に、その表面でのヒドロキシル基(-OH)の存在に特徴を有し得る。
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30~400m2/g、特に60~300m2/gの範囲内のBET比表面積とCTAB比表面積を有する任意の沈降またはヒュームドシリカであり得る。
【0024】
例えばシリカのような無機充填剤について、無機充填剤のBET比表面積は、「The Journal of the American Chemical Society」(Vol. 60, page 309, February 1938)に記載されているブルナウアー-エメット-テラー法を使用するガス吸着によって、より詳しくは、2010年6月の規格NF ISO 5794-1、付録Eに由来する方法[マルチポイント(5ポイント)容積法-ガス:窒素-脱ガス真空下:160℃で1時間-相対圧力範囲p/po:0.05~0.17]に従って測定される。さらに、CTAB比表面積値は、2010年6月の規格NF ISO 5794-1、付録Gに従って決定された。この方法は、CTAB(N-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド)の上記補強用充填剤の「外側」表面への吸着に基づいている。
任意のタイプの沈降シリカは、特に高分散性沈降シリカを使用できる(「高分散性」または「高分散性シリカ」には「HDS]と称する)。これらの沈降シリカは、高度に分散性であってもなくても当業者には周知である。例えば、出願WO 03/016215-A1号およびWO 03/016387-A1号に記載されているシリカを挙げることができる。市販のHDSシリカのうちで、特に、Evonik社からのシリカ「Ultrasil(登録商標)5000GR」、「Ultrasil(登録商標)7000GR」、Solvay社からのシリカ「Zeosil(登録商標)1085GR」、「Zeosil(登録商標)1115 MP」、「Zeosil(登録商標)1165MP」、「Zeosil(登録商標)Premium 200MP」、「Zeosil(登録商標)HRS 1200 MP」を使用することが可能である。非HDSシリカとして、下記の市販のシリカを使用できる:Evonik社からの「Ultrasil(登録商標)VN2GR」シリカ、「Ultrasil(登録商標)VN3GR」、Solvay社からのシリカ「Zeosil(登録商標)175GR」、PPG社からのシリカ「Hi-Sil EZ120G(-D)」、「Hi-Sil EZ160G(-D)」、「Hi-Sil EZ200G(-D)」、「Hi-Sil 243LD」、「Hi-Sil 210」、「Hi-Sil HDP 320G」。
【0025】
本発明のゴム組成物に使用できる無機充填剤の他の例として、アルミニウム系の鉱質充填剤、特にアルミナ(Al2O3)、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミノケイ酸塩、酸化チタン、炭化ケイ素または窒化ケイ素、例えば出願WO 99/28376-A2号、WO 00/73372-A1号、WO 02/053634-A1号、WO2004/003067-A1号、WO2004/056915-A2号、US6610261-B1号およびUS6747087-B2号に記載されているような補強タイプの全てを挙げることができる。特に、アルミナ「Baikalox A125」または「CR125」(Baikowski社)、「APA-100RDX」(Condea社)、「Aluminoxid C」(Evonik社)または「AKP-G015」(住友化学)を挙げることができる。
補強用無機充填剤を供給する物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、あるいはビーズまたは任意の他の適切な高密度化形態のいずれの形状であれ重要でない。もちろん、補強用無機充填剤は、異なる補強用無機充填剤の混合物、特に上述のようなシリカの混合物を意味すると理解されたい。
当業者は、上述の補強用無機充填剤の代わりに、別の種類の補強用充填剤を使用することができ、この別の種類の補強用充填剤がシリカのような無機層で覆われているかあるいはその表面に官能部位、特にヒドロキシルを含み、この補強用充填剤とジエンエラストマーとの間の結合にカップリング剤の使用を必要とする限り使用できる。一例として、シリカで一部または全部が覆われているカーボンブラック、またはCabot社からの「CRX2000]シリーズまたは「CRX4000」シリーズの「Ecoblack(登録商標)」タイプの充填剤のような限定されないシリカで変性されたカーボンブラックを挙げることができる。
【0026】
上記補強用無機充填剤を上記ジエンエラストマーにカップリングさせるために、周知の通り、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間に、化学的および/または物理的性質を有する充分な結合を与えることを意図する少なくとも二官能性カップリング剤(または結合剤)を使用できる。特に、少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが使用される。「二官能性」という用語は、その無機充填剤と相互作用することのできる第1の官能基およびそのジエンエラストマーと相互作用することのできる第2の官能基を有する化合物を意味すると理解されたい。例えば、このような二官能性化合物は、無機充填剤のヒドロキシル基と相互作用できる、ケイ素原子を含む第1の官能基と、ジエンエラストマーと相互作用できる、イオウ原子を含む第2の官能基とを含むことができる。
上記オルガノシランは、好ましくは、Evonik社により商品名「Si69」として販売されているTESPTと略記するビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドのようなオルガノシランポリスルフィド(対称または非対称)またはEvonik社により商品名「Si75」として販売されているTESPDと略記するビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、ブロックトメルカプトシラン、例えば商品名「NXT Silane」としてMomentive社により販売されているS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエートからなる群から選択される。より好ましくは、このオルガノシランは、オルガノシランポリスルフィドである。
【0027】
もちろん、上述のカップリング剤の混合物を使用することもできる。
無機充填剤を使用する場合、本発明に従うタイヤの組成物中のカップリング剤の含有量は、有利には10phr以下であり、可能な限り少量を使用することが一般に望ましいことが理解される。典型的には、カップリング剤の含有量は、補強用無機充填剤の量に対して0.5質量%~15質量%である。その含有量は、好ましくは0.5~7.5phrの範囲内、好ましくは3~3phrの範囲内である。この含有量は、本発明の組成物中に使用される補強用無機充填剤の含有量に従って当業者によって容易に調整される。
本発明に従うタイヤのゴム組成物の補強用充填剤は、好ましくはカーボンブラック、シリカまたはこれらの混合物を含む。さらに好ましくは、この補強用充填剤は、主にカーボンブラックを含む。この補強用充填剤は、例えば、50質量%~100質量%、好ましくは55質量%~90質量%、好ましくは60質量%~80質量%のカーボンブラックを含むことができる。特に有利には、この補強用充填剤は、カーボンブラックのみを含む。
本発明に従うタイヤの組成物において、補強用充填剤、好ましくはカーボンブラックを主に含む補強用充填剤の含有量は、有利には10~55phr、好ましくは15~50phr、好ましくは20~45phrの範囲内である。
【0028】
II-5 加硫系
本発明に従うタイヤの組成物は、加硫系を必要とせず、このことは配合物、およびその組成物の調製を簡略化することを可能にするのでその利点の1つである。しかしながら、加硫系がこの組成物中に存在する場合には、少量で存在することが好ましい。
適切な加硫系は、通常、イオウ(またはイオウ供与剤)および一次加硫促進剤をベースとする。様々な公知の二次加硫促進剤または加硫活性剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸または同等の化合物、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)は、このベース加硫系に添加され、引き続いて記載されるように、非生産第1段階の間および/または生産段階の間に混入される。
分子イオウ(または等価的には分子イオウ供与剤)は、それが使用される場合、好ましくは0.5phr未満の含有量である。
このように、上記組成物は、非常に好ましくは、加硫剤として分子イオウまたはイオウ供与剤を含まないかまたはその0.5phr未満、好ましくは0.3phr未満、より好ましくは0.1phr未満を含有する。本発明に従うタイヤの組成物は、より好ましくは、加硫剤として分子イオウまたはイオウ供与剤を含有しない。
【0029】
本発明に従う組成物の加硫系は、1種以上の追加の促進剤、例えばチウラム系、ジチオカルバミン酸亜鉛誘導体、スルフェンアミド類、グアニジン類またはチオホスフェート類の化合物を含むこともできる。特に、イオウの存在下でジエンエラストマーの加硫促進剤、特に、チアゾールタイプおよびその誘導体の促進剤、およびチウラムまたはジチオカルバミン酸亜鉛タイプの促進剤として作用することのできる任意の化合物を使用し得る。これらの促進剤は、より好ましくは、2-メルカプトベンゾチアゾールジスルフィド(「MBTS」と略記する)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」と略記する)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」と略記する)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」と略記する)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」と略記する)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。好ましくは、スルフェンアミドタイプの一次促進剤を使用する。
促進剤を使用する場合には、タイヤ用加硫組成物の当業者により使用されたもののような含有量で使用される。それにもかかわらず、本発明に従うタイヤの組成物は、加硫促進剤を含まないことが好ましい。
【0030】
II-6 他の可能な添加剤
本発明に従うタイヤのゴム組成物は、タイヤ用エラストマー組成物に通例使用される通常の添加剤の全部または一部、例えば、可塑剤(可塑化油および/または可塑化用樹脂など)、顔料、オゾン防止ワックスのような保護剤、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、疲労防止剤、補強用樹脂(例えば、出願WO 02/10269号に記載されているような)を含んでもよい。
好ましくは、本発明のタイヤの組成物は、抗酸化剤を含まない。
1つの好ましい様式によれば、本発明のタイヤの組成物は、可塑化剤を含まない。あるいは、また、好ましい実施形態によれば、本発明に従う組成物は、可塑化剤をさらに含む。好ましくは、この可塑化剤は、固形炭化水素樹脂(または可塑化用樹脂)、増量剤オイル(または可塑化用オイル)、またはこの2成分の混合物である。
【0031】
II-7 タイヤ
本発明の主題は、また、本発明に従う組成物を含む、完成または半完成ゴム物品だけでなく、タイヤもである。
本発明は、特に、乗用車タイプの自動車、SUV(「スポーツ用多目的車」)、または二輪車(特にオートバイ)、または航空機、あるいはバンタイプ、大型車、すなわち、地下鉄列車、バス、大型道路輸送車両(トラック、トラクター、トレーラ)またはオフロード車、例えば大型農業用車両または工事車両から選択される産業用車両などを装備することを意図するタイヤに関する。
タイヤ内で3種類の領域を規定することが可能である:
・周囲空気と接触している半径方向外側領域、この領域は、本質的に、タイヤのトレッドおよび外側のサイドウォールからなる。外側のサイドウォールは、クラウンとビードの間に、クラウンからビードまで延在するカーカス補強の領域を完全にまたは部分的に覆うようにタイヤの内部空洞に対してカーカス補強の外側に配置されたエラストマー層である。
・膨張ガスと接触している半径方向内側領域、この領域は、一般に、膨張ガスに対して気密な層からなり、内部気密層またはインナーライナーと呼ばれることもある。
・タイヤの内部領域、すなわち、外側領域と内側領域との間。この領域は、本明細書でタイヤの内部層と呼ばれる層またはプライを含む。これらは、例えば、カーカスプライ、トレッド副層、タイヤのベルトプライまたはタイヤの周囲空気または膨張ガスと接触していない他の層である。
【0032】
本明細書中で定義される組成物は、タイヤの内部層およびトレッドに特によく適している。
このように、本発明に従うタイヤにおいて、上記組成物は、タイヤのトレッドおよび/または少なくとも1つの内部層に存在させることができる。本発明によれば、上記内部層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリング、クラウンフィート、デカップリング層、エッジラバー、パディングゴム、トレッドアンダーレイヤーおよびこれらの内部層の組合せからなる群から選択できる。好ましくは、上記内部層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビード-ワイヤーフィリング、クラウンフィート、デカップリング層およびこれらの内部層の組合せからなる群から選択される。
本発明は、上記のタイヤおよびタイヤ用の半製品、生状態(すなわち、硬化前)および硬化状態(すなわち、架橋または加硫後)両方のゴム物品に関する。
【0033】
II-8 ゴム組成物の調製
本発明に従うゴム組成物は、適切なミキサー内で当業者に周知の2つの連続する調製段階を使用して製造される:
-第1の熱機械加工または混練段階(「非生産」段階)、これは単一の熱機械的工程で行うことができ、この間に、架橋系を除く全ての必要な成分、特にエラストマーマトリックス、任意選択の充填剤および任意選択の他の各種添加剤を標準の内部ミキサー(例えば『バンバリー』タイプ)のような適切なミキサー内に導入する。任意選択の充填剤のエラストマーへの混入は、熱機械的に混錬しながら1回以上行うことができる。この非生産段階は、高温で、110℃と200℃の間、好ましくは130℃と185℃の間の最高温度までの高温で一般に2分と10分の間の時間行うことができる。
-第2の機械加工段階(「生産」段階)、これは上記第1の非生産段階で得られた混合物を、典型的には120℃未満、例えば40℃と100℃の間の低めの温度まで冷却した後、オープンミルのような外部ミキサーで実施される。次いで、架橋系が混入され、次いで、混ぜ合わせた混合物が数分間、例えば5分と15分の間混合する。
このような段階は、例えば、特許出願EP-A-0501227号、EP-A-0735088号、EP-A-0810258号、WO 00/05300号またはWO 00/05301号に記載されている。
このようにして得られた最終組成物は、その後、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはプレートの形にカレンダー加工するか、あるいは例えば、乗用車用のタイヤトレッドまたは内部層として使用できるゴム半完成品(または型出し)要素の形で押出される。これらの製品は、その後、当業者に知られている技術によれば、タイヤの製造に使用できる。
生状態(架橋または加硫前)または硬化状態(架橋または加硫後)であってもよい上記組成物は、タイヤに使用できる半完成品とすることができる。
上記組成物の架橋は、当業者に公知の方法で、例えば130℃と200℃の間の温度で、加圧下に実施できる
【0034】
III-実施例
III-1 使用する測定法および試験
モル質量の定量:コポリマーのサイズ排除クロマトグラフィー分析
a)周囲温度でテトラヒドロフラン(THF)に溶解性であるコポリマーについて、THFにおけるサイズ排除クロマトグラフィーによって、モル質量を決定した。このサンプルを一連のpolymer LaboratoriesカラムにWaters 717注入器およびWaters 515 HPLCポンプを使用して1ml.min-1の流量で注入した。45℃のサーモスタットチャンバ内に配置されたこの一連のカラムは、下記のものから構成されている:
-1PLゲル5μmプレカラム、
-2PLゲル5μm混合Cカラム、
-1PLゲル5μm-500オングストロームカラム。
検出は、Waters 410屈折計使用して実施した。モル質量は、Polymer Laboratoriesにより認定されたポリスチレン標準および屈折計と粘度計へのカップリングによる二重検出を使用してユニバーサル校正によって決定した。
絶対的な方法ではなく、SECは、ポリマーの分子量分布を把握することを可能にする。ポリスチレンタイプの標準市販品に基づいて、異なる数平均分子量(Mn)および質量平均分子量(Mw)を決定することができ、多分散指数(PDI=Mw/Mn)を算出できる。
b)周囲温度でテトラヒドロフランに不溶性であるコポリマーについて、1,2,4-トリクロロベンゼン中でモル質量を決定した。最初に、高温条件下(150℃で4時間00)で溶解し、次いで3本のStyragelカラム(2本のHT6Eカラムおよび1本のHT2カラム)を備えたWaters Alliance GPCV 2000クロマトグラフへ150℃において流量1ml.min-1で注入した。Waters屈折計を使用して検出を実施した。Polymer Laboratoriesにより認定されたポリスチレン標準を使用した相対校正によってモル質量を決定した。
【0035】
モル分率の決定
エチレン単位、共役ジエン単位および任意のトランス-1,2-シクロヘキサン単位のモル分率を決定するために本出願において特に使用された1H NMRおよび13C NMR技術の詳細な説明について、論文「Investigation of ethylene/butadiene copolymers microstructure by 1H and 13C NMR, Llauro M.F., Monnet C., Barbotin F., Monteil V., Spitz R., Boisson C., Macromolecules 2001, 34, 6304-6311」を参照にする。
【0036】
結晶化度の決定
EBRの場合に観察される融解エンタルピーを比較することにより結晶化度の測定を実施した。この吸熱現象は、DSC(示差走査熱量計)測定のサーモグラムを分析する際に観察される。この測定は、不活性(ヘリウム)雰囲気下20℃/分の勾配で-150℃から200℃までの前後のスキャン走査によって実施する。
吸熱現象(融着)に対応する信号は一体化され、結晶化度は測定されたエンタルピーと完全に結晶性のポリエチレンの結晶化度(290J/g)との比である。
結晶化度%=(測定されたエンタルピー、単位J/g)/(100%結晶性ポリエチレンの理論的エンタルピー、単位J/g)
【0037】
ガラス転移温度の決定
ガラス転移温度、Tgは、本出願においては、Setaram DSC 131装置によるDSC(示差走査熱量測定)技術によって測定する。使用される温度プログラムは、-120℃から10℃/分の速度で150℃までの温度上昇に対応する。出願WO 2007/054224(11頁)に記載されている方法を参照にしてもよい。
【0038】
動的特性(硬化後):引張試験
これらの引張試験は、弾性応力および破断時特性を定量することができる。特に明記しない限り、これらは、1988年9月のフランス規格NF T 46-002に従い実施する。引張記録の処理は、また、モジュラス曲線を伸びの関数としてプロットすることができる。ここで使用されるモジュラスは、試験標本の初期断面積に戻ることにより計算される、第1の伸びで測定された公称の(または見掛けの)割線モジュラスである。公称割線モジュラス(または見掛けの応力、単位MPa)は、M50、M100およびM300と表示するそれぞれ50%、100%および300%伸びの最初の伸びで測定される。
破断時伸び(EB%)および破断時応力(SB)についての試験は、H2型のダンベル型試験標本による2005年12月の規格NF ISO 37に基づくものであり、引張速度500mm/分で測定される。破断時伸びは%伸びで表される。破断時応力はMPaで表される。
全てのこれらの引張測定は、フランス規格NF T 40-101(1979年12月)に従い、温度(23±2℃)および湿度測定(50±5%相対湿度)の標準の条件下に実施する。
動的特性G*(10%)、G*(25%)および60℃におけるtan(δ)maxを、規格ASTM D 5992-96に従い、粘度アナライザー(Metravib VA4000)により測定する。単純な交互正弦剪断応力に、10Hzの周波数で、規格ASTM D 1349-99に従う所定の温度条件下、例えば60℃でまたは場合によっては異なる温度で供した架橋組成物試料(厚さ4mmおよび断面積400mm2を有する円筒状の試験標本)の応答を記録する。ひずみ振幅掃引を0.1%から50%まで(外向きサイクル)、次いで50%から1%まで(戻りサイクル)で実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラスG*および損失係数tan(δ)である。tan(δ)maxと表示される、観察されたtan(δ)の最高値、および60℃における10%または25%ひずみの複素動的剪断モジュラスG*は、戻りサイクルに示される。
【0039】
レオメトリー
測定は、規格DIN 53529-パート3(1983年6月)に従い、振動ディスクレオメーターによって、所定の温度(例えば140℃)で実施する。時間の関数としてのレオメトリートルク、Δトルクの変化は、加硫反応の結果としての組成物の剛性化の変化を説明する。測定は、規格DIN 53529-パート2(1983年3月)に従い処理する:t0は、誘導時間(分で表される)、すなわち、架橋反応の開始に要する時間であり;tα(例えばt95)は、α%(例えば95%)変換、すなわち、最小トルクと最大トルクとの差のα%(例えば95%)を達成するのに必要とする時間である。tαの値が低いほど、組成物が迅速に架橋したことになり、すなわち、硬化は高速であったことになる。
【0040】
III-2 組成物の調製
以下の試験を以下の方法で実施する:上記エラストマー、上記補強用充填剤、上記多官能アクリレート、さらに、上記加硫系を除いた各種他の成分を、初期容器温度が約90℃であるブレードミキサー内に連続して導入する(最終充填度:約70容量%)。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1工程で実施し、この工程は150℃の最高「落下」温度に達するまで全体で約3~4分間続く。
このようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、架橋系(必要に応じて過酸化物または硫黄)を23℃または50℃のミキサー(ホモフィニッシャー)で、それぞれ全体(生産段階)をシリンダツール内で適切な時間(例えば、5分と12分の間)混合することにより、混入させる。
このようにして得られた組成物を、その後、その物理的または機械的性質を測定するためにスラブ(2~3mmの厚さ)または薄いゴムシートの形にカレンダー加工するか、あるいは形状要素の形に押出加工する。
【0041】
III-3 ゴム組成物に関する試験
III-3.1 架橋系の種類の効果
特に本発明に従うアクリレート誘導体の効果(組成物C1)を、架橋系の種類によって本発明に従う組成物と異なる対照組成物(T1)、およびアクリレート誘導体を含まないだけで本発明に従う組成物と異なる対照組成物、さらに多官能アクリレート誘導体の種類によってだけ異なる対照組成物(T3)と比較するために本実施例を実施した。これらのゴム組成物は、上記要点III-2に示したように調製した。その配合(単位phr)およびその特性を下記の表1にまとめた。
組成物T3およびC1において、多官能アクリレート誘導体の量を調整したので、これらの組成物は一定のモル含有量の(メタ)アクリレート官能基を有する。
対照組成物T1に関して、60℃におけるG*25%、M300およびtan(δ)maxの結果を「ベース100」で示す。60℃におけるG*25%およびM300値については、値が大きいほど、結果が改善される。さらに、60℃におけるtan(δ)maxの値がベース100より低くなるほど、組成物のヒステリシスが低くなり、従って転がり抵抗が改善されることになる。
【0042】
表1



(1)出願人の名義で特許EP 1 954 705 B1号の実施例4-2に従ってエチレンとブタジエンの重合方法に従い調製された80モル%のエチレン単位を有するエチレン-ブタジエンコポリマー、この重合時間は、モル質量Mn=153 000g/mol、多分散指数が1.9を得るように調整されている
(2)カーボンブラックN234(規格ASTM D-1765に従う商品名)
(3)1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(Arkema社からのLuperox 231)
(4)ヘキサンジオールジアクリレート(Sigma-Aldrich社からのSR238)
(5)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sigma-Aldrich社からのSR399)
(6)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(Flexsys社からのSantocure CBS)
(7)酸化亜鉛(工業級-Umicore社)
(8)Stearin(Uniqema社からのPristerene 4931)
【0043】
これらの結果は、従来の加硫系の過酸化物および本発明に従うアクリレート誘導体をベースとする架橋系への置換が、転がり抵抗を改善しつつ、架橋速度を速くすること、剛性を増大させることおよび組成物の補強を向上させることができることを示している。
【0044】
III-3.2 エラストマーマトリックスの種類の効果
天然ゴムおよびエチレン単位と共役ジエン単位とを含むコポリマーによるポリブタジエンをベースとするエラストマーマトリックスの置換の効果を比較するために他の実施例を実施した。
従って、対照組成物T4を、上記の本発明に従う組成物(C1)と比較するために要点III-2に示したように調製した。これらの配合物(単位phr)およびこれらの特性を下記の表2にまとめた。
CRおよび60℃におけるG*25%の結果は、対照組成物T4に関して「ベース100」で示されている。数値が大きいほど、結果が良好になる。
【0045】
表2



(1)~(4):上記表1を参照されたい
(8)天然ゴム
(9)1,2が0.7%、トランス1,4が1.7%、シス1,4が98%のポリブタジエン(Nd)(Tg = -105℃)(Arlanxeo社からのBuna CB24)
【0046】
これらの結果は、エチレン単位と共役ジエン単位とを含むコポリマーをベースとするエラストマーマトリックスおよび過酸化物系架橋系において、本発明に従うアクリレート誘導体の使用が、従来のエラストマーマトリックスを含む組成物と比較して、機械的特性および剛性を向上させることができることを示している。