(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240702BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240702BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240702BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/80 F
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L21/28 301B
H01L29/58 Z
(21)【出願番号】P 2021514818
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 JP2020009797
(87)【国際公開番号】W WO2020213291
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019077283
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 浩隆
(72)【発明者】
【氏名】近松 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼堂 真也
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 和也
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-72528(JP,A)
【文献】特開2015-204304(JP,A)
【文献】特開2017-73506(JP,A)
【文献】特開2008-159681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/337
H01L 21/28
H01L 29/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、
前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート部とを含み、
前記ゲート部は、
前記第2窒化物半導体層上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体からなるリッジ形状の半導体ゲート層と、
前記半導体ゲート層上に形成されたゲート電極とを含み、
前記半導体ゲート層は、前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート層本体部と、前記ゲート層本体部の上面の幅中間部上に形成された上方張出部とからなり、
前記上方張出部の頂面上に前記ゲート電極が形成されて
おり、
前記上方張出部の両側面の下縁と前記ゲート層本体部の対応する側面の上縁とをそれぞれ接続するゲート層本体部の両側部の上面は、前記ゲート層本体部の幅中央に向かって徐々に厚くなる傾斜面に形成されている、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記上方張出部の側面と当該側面の下縁に接続された前記ゲート層本体部の上面とを覆う第1誘電体膜と、
前記ゲート層本体部の側面と前記第2窒化物半導体層の表面とを覆う第2誘電体膜とをさらに含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記第2誘電体膜には、前記第2誘電体膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールが形成されており、
前記窒化物半導体装置は、
前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールをそれぞれ貫通して前記第2窒化物半導体層にオーミック接触しているソース電極およびドレイン電極をさらに含む、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記上方張出部の厚さが、前記ゲート層本体部の厚さよりも薄い、請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記上方張出部の厚さが、前記ゲート層本体部の厚さよりも厚い、請求項1~3のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記ゲート層本体部の両側面は、前記ゲート電極側に向かって前記ゲート層本体部の幅が徐々に狭くなる傾斜面に形成されており、
前記上方張出部の両側面は、前記ゲート電極側に向かって前記ゲート層本体部の幅が徐々に狭くなる傾斜面に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート層本体部の側面の平均傾斜角度が、前記上方張出部の側面の平均傾斜角度と異なる、請求項6に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記ゲート電極は、前記上方張出部の頂面全体を覆うように形成されている、請求項
1~7のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
平面視において、前記ゲート電極の下面の両側縁は、前記上方張出部の頂面の対応する側縁よりも内側に後退している、請求項
1~7のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記第1窒化物半導体層がGaN層からなり、
前記第2窒化物半導体層がAl
xGa
1-xN(0<x≦1)層からなり、
前記半導体ゲート層がp型GaN層からなる、請求項
1~9のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記半導体ゲート層を第1半導体ゲート層とすると、前記第1半導体ゲート層と前記ゲート電極との間に、前記第1半導体ゲート層よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる第2半導体ゲート層が介在している、請求項
1~10のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記半導体ゲート層を第1半導体ゲート層とすると、前記第1半導体ゲート層と前記ゲート電極との間に、窒化物半導体からなる第2半導体ゲート層が介在しており、
前記第2半導体ゲート層が、Al
yGa
1-yN(0≦y<1,y≦x)層からなる、請求項
10に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記ゲート電極は、Ti膜、TiN膜およびTiW膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されている、請求項
1~12のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記ゲート電極の上面に形成された第3誘電体層をさらに含む、請求項
1~13に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
前記ゲート電極の上面に形成された第3誘電体層をさらに含み、前記第3誘電体層の厚さが、前記第2誘電体層の厚さよりも厚い、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項16】
前記第1誘電体層および前記第2誘電体層が、SiN膜、SiO
2膜、SiON膜、Al
2O
3膜、AlN膜、およびAlON膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項17】
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが同じ材料から構成されている、請求項
16に記載の窒化物半導体装置。
【請求項18】
電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、
前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート部とを含み、
前記ゲート部は、
前記第2窒化物半導体層上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体からなるリッジ形状の半導体ゲート層と、
前記半導体ゲート層上に形成されたゲート電極とを含み、
前記半導体ゲート層は、前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート層本体部と、前記ゲート層本体部の上面の幅中間部上に形成された上方張出部とからなり、
前記上方張出部の頂面上に前記ゲート電極が形成されており、
前記上方張出部の側面と当該側面の下縁に接続された前記ゲート層本体部の上面とを覆う第1誘電体膜と、
前記ゲート層本体部の側面と前記第2窒化物半導体層の表面とを覆う第2誘電体膜とをさらに含み、
前記第1誘電体層および前記第2誘電体層が、SiN膜、SiO
2
膜、SiON膜、Al
2
O
3
膜、AlN膜、およびAlON膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されており、
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが異なる材料から構成されてい
る、窒化物半導体装置。
【請求項19】
前記上方張出部の側面と当該側面の下縁に接続された前記ゲート層本体部の上面とを覆う第1誘電体膜と、
前記第1誘電体膜を覆う第2誘電体膜とをさらに含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項20】
基板上に、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体からなる半導体ゲート材料膜とを、その順に形成する工程と、
前記半導体ゲート材料膜上に、ゲート電極膜を形成する工程と、
前記ゲート電極膜上にトップ用誘電体膜を選択的に形成する工程と、
前記トップ用誘電体膜をマスクとしたドライエッチングにより、前記ゲート電極膜および前記半導体ゲート材料膜を、前記半導体ゲート材料膜の厚さ途中まで選択的に除去することにより、前記ゲート電極膜からなるゲート電極と、前記ゲート電極上に配された前記トップ用誘電体膜からなるトップウォールと、前記ゲート電極直下に上方張出部を有する前記半導体ゲート材料膜を形成する工程と、
前記トップウォール、前記ゲート電極および前記半導体ゲート材料膜の露出面を覆うサイド用誘電体膜を形成する工程と、
前記サイド用誘電体膜のうち、前記トップウォール、前記ゲート電極膜および前記上方張出部の側面を覆っている部分以外の部分をエッチングによって除去することにより、前記サイド用誘電体膜からなりかつ前記トップウォール、前記ゲート電極および前記上方張出部の側面を覆うサイドウォールを形成する工程と、
前記トップウォールおよび前記サイドウォールをマスクしたドライエッチングによって、前記第2窒化物半導体層の表面が露出するまで前記半導体ゲート材料膜を選択的に除去することにより、前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート層本体と、前記ゲート層本体上面の幅中間部上に形成された前記上方張出部とからなる半導体ゲート層を形成する半導体ゲート層形成工程とを含む、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記半導体ゲート層形成工程の後、前記トップウォール、前記サイドウォールおよび前記第2窒化物半導体層の露出面を覆うパッシベーション膜を形成する工程と、
前記パッシベーション膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを、前記パッシベーション膜に形成する工程と、
前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールをそれぞれ貫通して前記第2窒化物半導体層にオーミック接触するソース電極およびドレイン電極を形成する工程をさらに含む、請求項20に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、III族窒化物半導体(以下単に「窒化物半導体」という場合がある。)からなる窒化物半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体とは、III-V族半導体においてV族元素として窒素を用いた半導体である。窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)が代表例である。一般には、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができる。
【0003】
このような窒化物半導体を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)が提案されている。このようなHEMTは、例えば、GaNからなる電子走行層と、この電子走行層上にエピタキシャル成長されたAlGaNからなる電子供給層とを含む。電子供給層に接するように一対のソース電極およびドレイン電極が形成され、それらの間にゲート電極が配置される。
【0004】
GaNとAlGaNとの格子不整合に起因する分極のために、電子走行層内において、電子走行層と電子供給層との界面から数Åだけ内方の位置に、二次元電子ガスが形成される。この二次元電子ガスをチャネルとして、ソース・ドレイン間が接続される。ゲート電極に制御電圧を印加することで、二次元電子ガスを遮断すると、ソース・ドレイン間が遮断される。ゲート電極に制御電圧を印加していない状態では、ソース・ドレイン間が導通するので、ノーマリーオン型のデバイスとなる。
【0005】
窒化物半導体を用いたデバイスは、高耐圧、高温動作、大電流密度、高速スイッチングおよび低オン抵抗といった特徴を有するため、パワーデバイスへの応用が、例えば特許文献1において提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、AlGaN電子供給層にp型GaNゲート層(窒化物半導体ゲート層)を積層し、その上にゲート電極を配置し、前記p型GaNゲート層から広がる空乏層によってチャネルを消失させることで、ノーマリーオフを達成する構成を開示している。
【0008】
このような構成では、p型GaNゲート層の上面とゲート電極の下面の側縁との接触部(ゲート電極の下面の幅方向端)に電界が集中しやすいため、ゲートリーク電流が大きいという問題がある。
【0009】
ゲートリーク電流が大きい場合、所望のオン抵抗を得るために必要なゲート電圧が確保できない、またはゲートドライブ回路での消費電力が増加するといった問題に繋がり、パワー回路、および制御回路部での効率低下、発熱増加が懸念される。これは、高周波スイッチングを特長に掲げるHEMTにとって大きな課題となる。
【0010】
この発明の目的は、ゲートリーク電流を低減でき、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、前記第1窒化物半導体層上に形成され、前記第1窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きく、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート部とを含み、前記ゲート部は、前記第2窒化物半導体層上に形成され、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体からなるリッジ形状の半導体ゲート層と、前記半導体ゲート層上に形成されたゲート電極とを含み、前記半導体ゲート層は、前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート層本体部と、前記ゲート層本体部の上面の幅中間部上に形成された上方張出部とからなり、前記上方張出部の頂面上に前記ゲート電極が形成されている、窒化物半導体装置を提供する。
【0012】
この構成では、半導体ゲート層のゲート層本体部の上面と上方張出部の側面とが交わる箇所に電界が集中する。つまり、この構成では、電界が集中する位置を、ゲート電極の下面の幅方向端から離すことができる。これにより、ゲート電極の幅方向端からのゲートリーク電流を抑制することが可能となる。これにより、ゲートリーク電流を低減でき、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる窒化物半導体装置を実現することができる。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記上方張出部の側面と当該側面の下縁に接続された前記ゲート層本体部の上面とを覆う第1誘電体膜と、前記ゲート層本体部の側面と前記第2窒化物半導体層の表面とを覆う第2誘電体膜とをさらに含む。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記第2誘電体膜には、前記第2誘電体膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールが形成されており、前記窒化物半導体装置は、ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールをそれぞれ貫通して前記第2窒化物半導体層にオーミック接触しているソース電極およびドレイン電極をさらに含む。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記上方張出部の厚さが、前記ゲート層本体部の厚さよりも薄い。
【0016】
本発明の一実施形態では、前記上方張出部の厚さが、前記ゲート層本体部の厚さよりも厚い。
【0017】
本発明の一実施形態では、前記ゲート層本体部の両側面は、前記ゲート電極側に向かって前記ゲート層本体部の幅が徐々に狭くなる傾斜面に形成されており、前記上方張出部の両側面は、前記ゲート電極側に向かって前記ゲート層本体部の幅が徐々に狭くなる傾斜面に形成されている。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記ゲート層本体部の側面の平均傾斜角度が、前記上方張出部の側面の平均傾斜角度と異なる。
【0019】
本発明の一実施形態では、前記上方張出部の両側面の下縁と前記ゲート層本体部の対応する側面の上縁とをそれぞれ接続するゲート層本体部の両側部の上面は、前記ゲート層本体部の幅中央に向かって徐々に厚くなる傾斜面に形成されている。
【0020】
本発明の一実施形態では、前記ゲート電極は、前記上方張出部の頂面全体を覆うように形成されている。
【0021】
本発明の一実施形態では、平面視において、前記ゲート電極の下面の両側縁は、前記上方張出部の頂面の対応する側縁よりも内側に後退している。
【0022】
本発明の一実施形態では、前記第1窒化物半導体層がGaN層からなり、前記第2窒化物半導体層がAlxGa1-xN(0<x≦1)層からなり、前記半導体ゲート層がp型GaN層からなる。
【0023】
本発明の一実施形態では、前記半導体ゲート層を第1半導体ゲート層とすると、前記第1半導体ゲート層と前記ゲート電極との間に、前記第1半導体ゲート層よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる第2半導体ゲート層が介在している。
【0024】
本発明の一実施形態では、前記半導体ゲート層を第1半導体ゲート層とすると、前記第1半導体ゲート層と前記ゲート電極との間に、窒化物半導体からなる第2半導体ゲート層が介在しており、前記第2半導体ゲート層が、AlyGa1-yN(0≦y<1,y≦x)層からなる。
【0025】
本発明の一実施形態では、前記ゲート電極は、Ti膜、TiN膜およびTiW膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されている。
【0026】
本発明の一実施形態では、前記ゲート電極の上面に形成された第3誘電体層をさらに含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記ゲート電極の上面に形成された第3誘電体層をさらに含み、前記第3誘電体層の厚さが、前記第2誘電体層の厚さよりも厚い。
【0028】
本発明の一実施形態では、前記第1誘電体層および前記第2誘電体層が、SiN膜、SiO2膜、SiON膜、Al2O3膜、AlN膜、およびAlON膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されている。
【0029】
本発明の一実施形態では、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが同じ材料から構成されている。
【0030】
本発明の一実施形態では、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層とが異なる材料から構成されている。
【0031】
本発明の一実施形態は、基板上に、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体からなる半導体ゲート材料膜とを、その順に形成する工程と、前記半導体ゲート材料膜上に、ゲート電極膜を形成する工程と、前記ゲート電極膜上にトップ用誘電体膜を選択的に形成する工程と、前記トップ用誘電体膜をマスクとしたドライエッチングにより、前記ゲート電極膜および前記半導体ゲート材料膜を、前記半導体ゲート材料膜の厚さ途中まで選択的に除去することにより、前記ゲート電極膜からなるゲート電極と、前記ゲート電極上に配された前記トップ用誘電体膜からなるトップウォールと、前記ゲート電極直下に上方張出部を有する前記半導体ゲート材料膜を形成する工程と、前記トップウォール、前記ゲート電極および前記半導体ゲート材料膜の露出面を覆うサイド用誘電体膜を形成する工程と、前記サイド用誘電体膜のうち、前記トップウォール、前記ゲート電極膜および前記上方張出部の側面を覆っている部分以外の部分をエッチングによって除去することにより、前記サイド用誘電体膜からなりかつ前記トップウォール、前記ゲート電極および前記上方張出部の側面を覆うサイドウォールを形成する工程と、前記トップウォールおよび前記サイドウォールをマスクしたドライエッチングによって、前記第2窒化物半導体層の表面が露出するまで前記半導体ゲート材料膜を選択的に除去することにより、前記第2窒化物半導体層上に形成されたゲート層本体と、前記ゲート層本体上面の幅中間部上に形成された前記上方張出部とからなる半導体ゲート層を形成する半導体ゲート層形成工程とを含む、窒化物半導体装置の製造方法を提供する。
【0032】
この製造方法によれば、ゲートリーク電流を低減でき、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる窒化物半導体装置を製造できる。
【0033】
本発明の一実施形態では、前記半導体ゲート層形成工程の後、前記トップウォール、前記サイドウォールおよび前記第2窒化物半導体層の露出面を覆うパッシベーション膜を形成する工程と、前記パッシベーション膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを、前記パッシベーション膜に形成する工程と、前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールをそれぞれ貫通して前記第2窒化物半導体層にオーミック接触するソース電極およびドレイン電極を形成する工程をさらに含む。
【0034】
本発明における上述の、またはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図3】
図3は、比較例に係る窒化物半導体装置を示す断面図である。
【
図4】
図4は、この発明の第2実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図5】
図5は、この発明の第3実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、この発明の第4実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図7】
図7は、この発明の第5実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、この発明の第6実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、この発明の第7実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、この発明の第8実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、この発明の第1実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための断面図である。
【0037】
窒化物半導体装置1は、基板2と、基板2の表面に形成されたバッファ層3と、バッファ層3上にエピタキシャル成長された第1窒化物半導体層4と、第1窒化物半導体層4上にエピタキシャル成長された第2窒化物半導体層5と、第2窒化物半導体層5上に形成されたゲート部20とを含む。
【0038】
さらに、この窒化物半導体装置1は、第2窒化物半導体層5およびゲート部20を覆うパッシベーション膜(第2誘電体膜)6を含む。さらに、この窒化物半導体装置1は、パッシベーション膜6に形成されたソースコンタクトホール7およびドレインコンタクトホール8を貫通して第2窒化物半導体層5にオーミック接触しているソース電極9およびドレイン電極10を含む。ソース電極9およびドレイン電極10は、間隔を開けて配置されている。ソース電極9は、ゲート部20を覆うように形成されている。
【0039】
基板2は、例えば、低抵抗のシリコン基板であってもよい。低抵抗のシリコン基板は、例えば、0.001Ωmm~0.5Ωmm(より具体的には0.01Ωmm~0.1Ωmm程度)の電気抵抗率を有したp型基板でもよい。また、基板2は、低抵抗のシリコン基板の他、低抵抗のSiC基板、低抵抗のGaN基板等であってもよい。基板2の厚さは、半導体プロセス中においては、例えば650μm程度であり、チップ化する前段階において、300μm以下程度に研削される。基板2は、ソース電極9に電気的に接続されている。
【0040】
バッファ層3は、この実施形態では、複数の窒化物半導体膜を積層した多層バッファ層から構成されている。この実施形態では、バッファ層3は、基板2の表面に接するAlN膜からなる第1バッファ層(図示略)と、この第1バッファ層の表面(基板2とは反対側の表面)に積層されたAlN/AlGaN超格子層からなる第2バッファ層(図示略)とから構成されている。第1バッファ層の膜厚は、100nm~500nm程度である。第2バッファ層の膜厚は、500nm~2μm程度である。バッファ層3は、例えば、AlGaNの単膜または複合膜から構成されていてもよい。
【0041】
第1窒化物半導体層4は、電子走行層を構成している。この実施形態では、第1窒化物半導体層4は、GaN層からなり、その厚さは0.5μm~2μm程度である。また、第1窒化物半導体層4を流れるリーク電流を抑制する目的で、表面領域以外には半絶縁性にするための不純物が導入されていてもよい。その場合、不純物の濃度は、4×1016cm-3以上であることが好ましい。また、不純物は、例えばCまたはFeである。
【0042】
第2窒化物半導体層5は、電子供給層を構成している。第2窒化物半導体層5は、第1窒化物半導体層4よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体からなっている。具体的には、第2窒化物半導体層5は、第1窒化物半導体層4よりもAl組成の高い窒化物半導体からなっている。窒化物半導体においては、Al組成が高いほどバッドギャップは大きくなる。この実施形態では、第2窒化物半導体層5は、AlxGa1-xN層(0<x≦1)からなり、その厚さは5nm~15nm程度である。
【0043】
このように第1窒化物半導体層(電子走行層)4と第2窒化物半導体層(電子供給層)5とは、バンドギャップ(Al組成)の異なる窒化物半導体からなっており、それらの間には格子不整合が生じている。そして、第1窒化物半導体層4および第2窒化物半導体層5の自発分極と、それらの間の格子不整合に起因するピエゾ分極とによって、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面における第1窒化物半導体層4の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、第1窒化物半導体層4内には、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面に近い位置(例えば界面から数Å程度の距離)に、二次元電子ガス(2DEG)11が広がっている。
【0044】
ゲート部20は、第2窒化物半導体層5上にエピタキシャル成長されたリッジ形状の半導体ゲート層21と、半導体ゲート層21上に形成されたゲート電極22とを含む。ゲート部20は、ソースコンタクトホール7寄りに偏って配置されている。
【0045】
この実施形態では、半導体ゲート層21は、横断面が略矩形のゲート層本体部211と、ゲート層本体部211の上面の幅中間部上に形成され、横断面が略矩形の上方張出部212とからなる。上方張出部212の頂面(上面)212bとゲート層本体部211の一方側の上面211bとの間に段差が形成されているとともに、上方張出部212の頂面212bとゲート層本体部211の他方側の上面211bとの間に段差が形成されている。
【0046】
ゲート層本体部211の一方の側部の上面211bは、上方張出部212の一方の側面212aの下縁と、ゲート層本体部211の一方の側面211aの上縁とを接続している。ゲート層本体部211の他方の側部の上面211bは、上方張出部212の他方の側面212aの下縁と、ゲート層本体部211の他方の側面211aの上縁とを接続している。
【0047】
上方張出部212の頂面に、ゲート電極22が形成されている。この実施形態では、ゲート電極22は、上方張出部212の頂面212b全体を覆うように形成されている。
【0048】
半導体ゲート層21は、アクセプタ型不純物がドーピングされた窒化物半導体からなる。この実施形態では、半導体ゲート層21は、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)からなっている。半導体ゲート層21の膜厚は、閾値電圧を適切な大きさにするために、50nm以上であることが好ましく、70nm以上であることがより好ましい。
【0049】
この実施形態では、上方張出部212の厚さは、ゲート層本体部211の厚さよりも薄い。ゲート層本体部211の厚さは、40nm~60nm程度であり、上方張出部212の厚さは、10nm~40nm程度である。
【0050】
半導体ゲート層21に注入されるアクセプタ型不純物の濃度は、1×1019cm-3以上であることが好ましい。この実施形態では、アクセプタ型不純物は、Mg(マグネシウム)である。アクセプタ型不純物は、Zn(亜鉛)等のMg以外のアクセプタ型不純物であってもよい。半導体ゲート層21は、ゲート部20の直下の領域において、第1窒化物半導体層4(電子走行層)と第2窒化物半導体層5(電子供給層)との界面付近に生じる二次元電子ガス11を相殺するために設けられている。
【0051】
ゲート電極22は、半導体ゲート層21の上方張出部212にショットキー接合している。ゲート電極22は、TiNからなる。ゲート電極22の膜厚は、50nm~150nm程度である。ゲート電極22は、Ti膜、TiN膜およびTiW膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されてもよい。
【0052】
ゲート部20は、ゲート電極22の上面を覆うトップウォール(第3誘電体膜)23と、トップウォール23および上方張出部212の両側面212aをそれぞれ覆うサイドウォール(第1誘電体膜)24とをさらに含んでいる。各サイドウォール24は、ゲート層本体部211における対応する側部の上面211bをも覆っている。この実施形態では、トップウォール23およびサイドウォール24は、SiN膜からなる。
【0053】
パッシベーション膜6は、第2窒化物半導体層5の表面(コンタクトホール7,8が臨んでいる領域を除く)およびゲート部20の側面および表面を覆っている。この実施形態では、パッシベーション膜6は、SiN膜からなる。
【0054】
トップウォール23の膜厚は、50nm~200nm程度である。サイドウォール24の膜厚は、110nm~390nm程度である。パッシベーション膜6の膜厚は、50nm~200nm程度である。ゲート電極22上面からのゲートリーク電流を抑制するために、トップウォール23の膜厚は、パッシベーション膜6の膜厚よりも厚いことが好ましい。
【0055】
トップウォール23、サイドウォール24およびパッシベーション膜6は、SiN膜、SiO2膜、SiON膜、Al2O3膜、AlN膜、およびAlON膜のうちのいずれか1つの単膜またはそれらの2以上の任意の組み合わせからなる複合膜から構成されてもよい。サイドウォール24とパッシベーション膜6とは、同じ材料から構成されてもよいし、異なる材料から構成されてもよい。
【0056】
ソース電極9およびドレイン電極10は、例えば、第2窒化物半導体層5にオーミック接触する第1金属層(オーミックメタル層)と、第1金属層に積層された第2金属層(主電極メタル層)と、第2金属層に積層された第3金属層(密着層)と、第3金属層に積層された第4金属層(バリアメタル層)とからなる。第1金属層は、例えば、厚さが10nm~20nm程度のTi層である。第2金属層は、例えば、厚さが100nm~300nm程度のAl層である。第3金属層は、例えば、厚さが10nm~20nm程度のTi層である。第4金属層は、例えば、厚さが10nm~50nm程度のTiN層である。
【0057】
この窒化物半導体装置1では、第1窒化物半導体層4(電子走行層)上にバンドギャップ(Al組成)の異なる第2窒化物半導体層5(電子供給層)が形成されてヘテロ接合が形成されている。これにより、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との界面付近の第1窒化物半導体層4内に二次元電子ガス11が形成され、この二次元電子ガス11をチャネルとして利用したHEMTが形成されている。ゲート電極22は、半導体ゲート層21を挟んで、第2窒化物半導体層5に対向している。
【0058】
ゲート電極22の下方においては、p型GaN層からなる半導体ゲート層21に含まれるイオン化アクセプタによって、第1窒化物半導体層4および第2窒化物半導体層5のエネルギーレベルが引き上げられる。このため、第1窒化物半導体層4と第2窒化物半導体層5との間のヘテロ接合界面における伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも大きくなる。したがって、ゲート電極22(ゲート部20)の直下では、第1窒化物半導体層4および第2窒化物半導体層5の自発分極ならびにそれらの格子不整合によるピエゾ分極に起因する二次元電子ガス11が形成されない。
【0059】
よって、ゲート電極22にバイアスを印加していないとき(ゼロバイアス時)には、二次元電子ガス11によるチャネルはゲート電極22の直下で遮断されている。こうして、ノーマリーオフ型のHEMTが実現されている。ゲート電極22に適切なオン電圧(たとえば5V)を印加すると、ゲート電極22の直下の第1窒化物半導体層4内にチャネルが誘起され、ゲート電極22の両側の二次元電子ガス11が接続される。これにより、ソース-ドレイン間が導通する。
【0060】
使用に際しては、たとえば、ソース電極9とドレイン電極10との間に、ドレイン電極10側が正となる所定の電圧(たとえば10V~500V)が印加される。その状態で、ゲート電極22に対して、ソース電極9を基準電位(0V)として、オフ電圧(0V)またはオン電圧(5V)が印加される。
【0061】
図2A~
図2Iは、前述の窒化物半導体装置1の製造工程の一例を説明するための断面図であり、製造工程における複数の段階における断面構造が示されている。
【0062】
まず、
図2Aに示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、基板2上に、バッファ層3、第1窒化物半導体層(電子走行層)4および第2窒化物半導体層(電子供給層)5がエピタキシャル成長される。さらに、MOCVD法によって、第2窒化物半導体層5上に、半導体ゲート層21の材料膜である半導体ゲート材料膜71がエピタキシャル成長される。
【0063】
次に、
図2Bに示すように、スパッタ法によって、露出した表面全体を覆うように、ゲート電極22の材料膜であるゲート電極膜72が形成される。そして、ゲート電極膜72上に、ゲート電極形成予定領域を覆うようにトップウォール23の材料である第3誘電体膜73が形成される。第3誘電体膜73は、例えばSiNからなる。
【0064】
次に、
図2Cに示すように、第3誘電体膜73をマスクとしたドライエッチングにより、ゲート電極膜72および半導体ゲート材料膜71が、半導体ゲート材料膜71の厚さ途中まで選択的に除去される。エッチングされる。これにより、ゲート電極膜72からなるゲート電極22と、ゲート電極22上に配された第3誘電体膜73からなるトップウォール23と、ゲート電極22直下に上方張出部212を有する半導体ゲート材料膜71とが形成される。
【0065】
次に、
図2Dに示すように、トップウォール23、ゲート電極22および半導体ゲート材料膜71の露出面を覆うように、サイドウォール24の材料である第1誘電体膜74が形成される。第1誘電体膜74は例えばSiNからなる。
【0066】
次に、
図2Eに示すように、第1誘電体膜74のうち、トップウォール23、ゲート電極22および上方張出部212の側面212aを覆っている部分以外の部分を、異方性ドライエッチングによって除去する。これにより、第1誘電体膜74からなり、トップウォール23、ゲート電極22および上方張出部212の側面212aを覆うサイドウォール24が形成される。
【0067】
次に、
図2Fに示すように、トップウォール23およびサイドウォール24をマスクとしたドライエッチングにより、第2窒化物半導体層5の表面が露出するまで半導体ゲート材料膜71が選択的に除去される。これにより、第2窒化物半導体層5上に形成されたゲート層本体部211と、ゲート層本体上面の幅中間部上に形成された上方張出部212とからなる半導体ゲート層21が形成される。これにより、半導体ゲート層21と、ゲート電極22と、トップウォール23と、サイドウォール24とからなるゲート部20が形成される。
【0068】
次に、
図2Gに示すように、露出した表面全体を覆うように、パッシベーション膜6が形成される。パッシベーション膜6は例えばSiNからなる。そして、パッシベーション膜6に、第2窒化物半導体層5に達するソースコンタクトホール7およびドレインコンタクトホール8が形成される。
【0069】
次に、
図2Hに示すように、露出した表面全体を覆うようにソース・ドレイン電極膜75が形成される。
【0070】
最後に、フォトリソグラフィおよびエッチングによってソース・ドレイン電極膜75がパターニングされることにより、第2窒化物半導体層5にオーミック接触するソース電極9およびドレイン電極10が形成される。こうして、
図1に示すような構造の窒化物半導体装置1が得られる。
【0071】
図3は、比較例に係る窒化物半導体装置101を示す断面図である。
図3において、前述の
図1の各部に対応する部分には、
図1と同じ符号を付して示す。比較例に係る窒化物半導体装置101は、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1に比べて、半導体ゲート層21の形状が異なっている。比較例の半導体ゲート層21の横断面形状は、幅が
図1の本体部211の幅と同じで厚さが
図1の半導体ゲート層21の厚さと同じ矩形である。そして、半導体ゲート層21の上面全体にゲート電極22が形成されている。この比較例においても、ゲート電極22の上面を覆うトップウォールは形成されているが、サイドウォール24は形成されていない。
【0072】
比較例に係る窒化物半導体装置101では、半導体ゲート層21の上面とゲート電極22の下面の側縁との接触部Cに電界が集中しやすいため、ゲート電極22の幅方向端Cからのゲートリーク電流が大きくなる。
【0073】
これに対して、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1では、半導体ゲート層21のゲート層本体部211の上面211bと上方張出部212の側面212aとが交わる箇所A(
図1参照)に電界が集中する。つまり、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1では、電界が集中する位置を、ゲート電極22の下面の幅方向端Bから離すことができる。これにより、ゲート電極22の幅方向端Bからのゲートリーク電流を抑制することが可能となる。これにより、ゲートリーク電流を低減でき、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる窒化物半導体装置を実現することができる。
【0074】
また、半導体ゲート層21の上方張出部212の厚さが、半導体ゲート層21のゲート層本体部211の厚さよりも薄いので、半導体ゲート層21内で電界が横方向全域にわたって均一になりやすい。このため、ゲート部20直下の二次元電子ガス11の密度も均一となりやすいので、オン抵抗の上昇を抑制できる。
【0075】
また、ゲート電極22は、上方張出部212の頂面212b全体を覆うように形成されているので、ゲート電極22と上方張出部212との境界部付近での電界が横方向全域にわたってほぼ均一となる。これにより、ゲート電極22の両側部でのショットキーバリアが低下する領域が存在しないので、ゲートリーク電流を低減することができ、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる。
【0076】
図4~
図10は、この発明の第2~第8実施形態に係る窒化物半導体装置1A~1Fの構成を説明するための断面図である。
図4~
図10において、前述の
図1の各部に対応する部分には、
図1と同じ符号を付して示す。
【0077】
図4を参照して、第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aでは、ゲート電極22の幅は、半導体ゲート層21の上方張出部212の幅よりも狭い。そして、ゲート電極22は、上方張出部212の頂面212bの幅中間部上に形成されている。したがって、平面視において、ゲート電極22の下面の両側縁は、上方張出部212の頂面212bの対応する側縁よりも内側に後退している。
【0078】
第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aでは、ゲート電極22の両側縁から半導体ゲート層21の側面までの抵抗が増加するので、半導体ゲート層21の側壁近傍を通る経路のゲートリーク電流を低減することができる。
【0079】
図5を参照して、第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bは、半導体ゲート層21の上方張出部212の厚さが、半導体ゲート層21のゲート層本体部211の厚さよりも厚い。この場合、ゲート層本体部211の厚さは、20nm~40nm程度であり、上方張出部212の厚さは、30nm~60m程度である。
【0080】
第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bでは、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1に比べて、電界が集中する箇所Aを、ゲート電極22の下面の幅方向端Bから遠ざけることができるので、上方張出部212とゲート電極22との接合部でのゲートリーク電流の増加を抑制できる。
【0081】
図6および
図7を参照して、この発明の第4および第5実施形態に係る窒化物半導体装置1C,1Dでは、ゲート層本体部211の両側面211aは、ゲート電極22側に向かってゲート層本体部211の幅が徐々に狭くなる傾斜面に形成されている。また、上方張出部212の両側面212aは、ゲート電極22側に向かって上方張出部212の幅が徐々に狭くなる傾斜面に形成されている。
【0082】
第4実施形態に係る窒化物半導体装置1Cでは、ゲート層本体部211の側面211aの第2窒化物半導体層5の表面に対する平均傾斜角度が、上方張出部212の側面212aの第2窒化物半導体層5の表面に対する平均傾斜角度よりも大きい。
【0083】
第5実施形態に係る窒化物半導体装置1Dでは、ゲート層本体部211の側面211aの第2窒化物半導体層5の表面に対する平均傾斜角度が、上方張出部212の側面212aの第2窒化物半導体層5の表面に対する平均傾斜角度よりも小さい。
【0084】
ゲート層本体部211の側面211aの平均傾斜角度および上方張出部212の側面212aの平均傾斜角度のいずれかが大きいのは、構造形成のためのエッチング条件が異なることを意味するが、ゲート層側面の途中にプラズマダメージの小さい領域(抵抗の高い領域)が存在することで、ゲートリーク電流を低減し、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる。
【0085】
図8を参照して、この発明の第6実施形態に係る窒化物半導体装置1Eでは、上方張出部212の両側面212aの下縁とゲート層本体部211の対応する側面211aの上縁とをそれぞれ接続するゲート層本体部211の両側部の上面211bは、ゲート層本体部211の両側部の厚さがゲート層本体部211の幅中央に向かって厚くなる傾斜面に形成されている。
【0086】
第6実施形態に係る窒化物半導体装置1Eでは、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1に比べて、電界が集中する箇所Aでの電界集中を緩和できるので、ゲートリーク電流を低減することができ、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる。
【0087】
図9を参照して、この発明の第7実施形態に係る窒化物半導体装置1Fでは、半導体ゲート層21を第1半導体ゲート層21とすると、第1半導体ゲート層21とゲート電極22との間に、窒化物半導体からなる第2半導体ゲート層25が介在している。
【0088】
第2半導体ゲート層25は、第1半導体ゲート層21よりもバンドギャップが大きい窒化物半導体からなる。第7実施形態では、第2半導体ゲート層25は、AlyGa1-yN(0≦y<1,y≦x)層からなっており、その厚さは10nm程度である。第1半導体ゲート層21に注入されるアクセプタ型不純物がMgである場合、メモリ効果により、第2半導体ゲート層25にMgが注入される。
【0089】
第7実施形態に係る窒化物半導体装置1Eでは、第1半導体ゲート層(pGaN)21と第2半導体ゲート層(AlGaN)25との境界において、価電子帯中にホールに対する障壁が形成される。これにより、ゲート電極22から第1半導体ゲート層(pGaN)21へのホールの注入を抑制することができるので、ゲートリーク電流をより低減することができ、ゲートに安定して印加可能な最大値であるゲート定格電圧の低下を抑止できる。
【0090】
図10を参照して、この発明の第8実施形態に係る窒化物半導体装置1Gは、トップウォール23およびサイドウォール24が形成されていない点で、
図1の窒化物半導体装置1と異なる。上方張出部211および上方張出部212からなる半導体ゲート層21と、上方張出部212上に形成されたゲート電極22とから構成されている。
【0091】
以上、この発明の第1~第7実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の実施形態で実施することもできる。例えば、前述の実施形態では、基板2の材料例としてシリコンを例示したが、ほかにも、サファイア基板や絶縁基板などの任意の基板材料を適用できる。
【0092】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0093】
この出願は、2019年4月15日に日本国特許庁に提出された特願2019-077283号に対応しており、その出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。
【符号の説明】
【0094】
1,1A~1G 窒化物半導体装置
2 基板
3 バッファ層
4 第1窒化物半導体層
5 第2窒化物半導体層
6 パッシベーション膜(第2誘電体膜)
7 ソースコンタクトホール
8 ドレインコンタクトホール
9 ソース電極
10 ドレイン電極
11 二次元電子ガス(2DEG)
20 ゲート部
21 半導体ゲート層(第1半導体ゲート層)
211 ゲート層本体部
211a 側面
211b 上面
212 上方張出部
212a 側面
212b 頂面(上面)
22 ゲート電極
23 トップウォール
24 サイドウォール
25 第2半導体ゲート層
71 半導体ゲート材料膜
72 ゲート電極膜
73 第3誘電体膜
74 第1誘電体膜
75 ソース・ドレイン電極膜