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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20240702BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20240702BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240702BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240702BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240702BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20240702BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240702BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240702BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/264
B29C64/295
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C08F290/06
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021517990
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 IB2019058336
(87)【国際公開番号】W WO2020070639
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】18000783.3
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519053061
【氏名又は名称】クビキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フランク、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴーシュ、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】グマイナー、ロベルト
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-168915(JP,A)
【文献】特開2002-332311(JP,A)
【文献】特開2016-060058(JP,A)
【文献】国際公開第00/020517(WO,A1)
【文献】特表2021-509369(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0070941(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/124
B29C 64/264
B29C 64/295
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 40/00
B33Y 70/00
B33Y 80/00
C08F 290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元印刷用の樹脂組成物であって、
a)式(I)に記載のマレイミド誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーならびにこれらの異性体から構成される群から選択される1つまたは複数の化学種を有する熱硬化性成分Aと、
【化1】

式中
-nは、1~10の整数であり、
-Rは、H、CHまたはCHを表し、
-Rは、1つまたは複数の、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cチオエーテル、ハロゲン、-NO、-SOH、-CF、-OH、-NH、-SH、-CN、-イソシアナート、-トリメトキシシリル、-トリエトキシシリルまたはマレイミドおよびシトラコンイミド化合物の物質クラスならびに/もしくはこれらの異性体からの重合可能な基で必要に応じて置換された、フェニル、ベンジル、フェネチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸および対応するエステル、アルキルまたは芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ビス(メチレン)オキシ、ビス(エチレン)オキシ、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)アミノおよびビス(フェニル)スルホンからなる群の1つまたは複数の直鎖、分岐または環状C-C40脂肪族または芳香族残基を独立して表し、
b)(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニル、アリル、アルキニルまたはスチレン化合物ならびに成分Aがそれから選択される群からの少なくとも1つの分子で置換されたこれらの誘導体から構成される群から選択される1つまたは複数の化学種を有する光硬化性成分Bと、
を含み、
成分Aの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて30重量%~95重量%の範囲であり、前記光硬化性成分Bの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて5~70重量%の範囲であり、
成分Aが、nが2~10の整数であり、メチレン基を介して、式Iのマレイミド環のN原子に連結された芳香族残基を有する成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、20重量%~100重量%の範囲の量で含むことを特徴とする、樹脂組成物。
【請求項2】
成分Aの量が、成分AおよびBの総重量に基づいて、40重量%~95重量%であり、前記光硬化性成分Bの量が、成分AおよびBの総重量に基づいて、5重量%~60重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分Aが、nが2~10の整数であり、Rが脂肪族残基である成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、0.5重量%~50重量%の範囲の量でさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
成分Aが、nが1であり、Rが、1つまたは複数の、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cチオエーテル、ハロゲン、-NO、-SOH、-CF、-OH、-NH、-SH、-CN、-イソシアナート、-トリメトキシシリルまたは-トリエトキシシリルで必要に応じて置換された、フェニル、ベンジル、フェネチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸および対応するエステル、アルキルまたは芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、(メチレン)オキシ、(エチレン)オキシからなる群の1つまたは複数の直鎖、分岐または環状C-C40脂肪族または芳香族残基を独立して表す成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%の範囲の量で含むことを特徴とする、請求項1、2または3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分Aが、m-キシリレンビスマレイミド、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、および/またはこれらのオリゴマーおよび/またはプレポリマーからなる群の1つもしくは複数である、またはこれらの群の1つもしくは複数を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記組成物が、熱可塑性樹脂、反応性ゴム、ならびに/または柔軟なリンカーとともに反応性マレイミド-もしくはシトラコンイミド基を含むモノマー、Q-ボンド(ビスマレイミド36炭素脂環式分岐構造)および/またはMIA(オリゴマーポリエーテルビスマレイミド、ポリ(オキシブチレン)-ジ(2-マレイミドアセタート)などのモノマー、これらのオリゴマーおよび/またはプレポリマーからなる群から選択される靭性改質剤を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
成分Bが多官能性(メタ)アクリラートならびに/または単官能性および多官能性(メタ)アクリラートの混合物を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物が、光励起時のラジカル重合に適した少なくとも1つの光開始剤を、成分AおよびBの重量に基づいて、0.01重量%~10重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの光開始剤が、単独でまたは互いに組み合わせて、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシラート、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾアート、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセタート、ビス(シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピリル)フェニル]チタン、アシル-またはビスアシル-ホスフィンオキシドベースの開始剤であることを特徴とする、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
樹脂組成物が、ラジカル重合のための1つおよび/または複数の開始剤を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
樹脂組成物が、少なくとも1つの重合阻害剤を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
光開始剤、熱開始剤および/または重合阻害剤が、成分Aまたは成分Bのいずれかとの共重合を受けることができる重合可能な官能基でさらに官能化されていることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
成分Aが、成分Aとおよびその誘導体と共重合することができる、コモノマーおよび/またはコオリゴマーおよび/またはコプレポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
樹脂組成物が、成分Aの熱硬化のための少なくとも1つの触媒を含み、前記触媒は、第3級アミン、ホスフィン、トリフェニルホスホナート、イミダゾール、有機酸および/または過酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
室温(20℃)での樹脂組成物が>5Pa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
組成物が、光誘起構造化工程に供され、その後に熱誘起硬化工程に供されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物の使用。
【請求項17】
前記光誘起構造化工程が、前記樹脂組成物の上昇した処理温度で実施されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記樹脂組成物の層が、キャリア上に形成され、前記樹脂組成物が、前記処理温度において、0.01~40Pa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記光誘起構造化工程が、3D印刷によって成形体を構築するために実行され、ここで、前記成形体の層は、透明なもしくは少なくとも部分的に透明なキャリアと機械的に調整可能な構築プラットフォームとの間に、前記樹脂組成物の所定の厚さの材料層をそれぞれ形成することによって、次々と、順に重ねて形成されるか、または、前記成形体は、少なくとも部分的に前記構築プラットフォーム上に形成され、このような画定された材料層は、特に前記透明なもしくは少なくとも部分的に透明なキャリアを通した照射によって、前記成形体層の所望の形状を与えるために、位置選択的な様式で硬化される、ことを特徴とする、請求項16、17または18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
請求項1~15のいずれか一項に記載の樹脂組成物を、光誘起構造化工程の後に熱誘起硬化工程に供することによって製造された物品。
【請求項21】
前記物品が、250℃~360℃の範囲の荷重たわみ温度(HDT(B))、250℃~360℃範囲の温度まで1GPaを超える貯蔵弾性率、250℃~360℃の範囲のガラス転移温度および3GPaを超える室温(20℃)での曲げ弾性率を有することを特徴とする、請求項20に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温耐熱性材料を形成する高温での三次元印刷用樹脂組成物およびその使用、ならびに本発明の樹脂組成物から製造された物品に関する。
【0002】
ステレオリソグラフィーなどのリソグラフィーベースの付加製造技術(L-AMT)は、しばしば複雑な形状を有するプロトタイプを作製する分野で活用されている(ラピッドプロトタイピング)。最近の技術的進歩は、機能部品を実際に製造する方向にこれらのL-AMTをさらに進ませようとしている。このような産業的挑戦が成功した例は、補聴器のシェルまたは透明な歯科矯正固定の分野である。それにもかかわらず、確立された光硬化性材料の多くの1つの重大な欠点は、100℃未満の耐熱性であり、このため、特に、耐熱性がしばしば不可欠な要件である産業環境における他の潜在的な適用が除外される。
【0003】
L-AMT用の光硬化性材料(樹脂または配合物)は、通例、光照射時に重合し、硬化する反応性成分(一般的には、モノマーと光開始剤)と、全体的な材料性能をさらに調整するある種の添加剤とを基礎とする。典型的には、光開始剤は、光照射によって活性化され、次いでそれぞれのモノマー(例えば、(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、スチレン化合物、マレイミドなど)と反応することができる反応部位(例えば、ラジカル)を生成する。
【0004】
このような光硬化性配合物の加工は、ステレオリソグラフィー、デジタル光加工、デジタルインクジェット印刷またはマルチジェット造形などの様々なL-AMTを介して実施することができる。上記技術はすべて、最終3D部品の交互吸着積層に基づいている。より最近になって、Carbon社が、高度なL-AMTであって、本分野において高速生産をさらに進展させる連続液体界面生成「CLIP」を開発した。このような技術に対して適用されている現行の配合物は、低粘度(<1Pa・s)のものであり、これは積層作業または積層工程を成功させるために不可欠である(I.Gibson,D.W.Rosen,B.Stucker et al.,’’Additive Manufacturing Technologies’’,Vol.238,Springer Verlag(2010)参照)。
【0005】
出願人は、いわゆるホットリソグラフィー法(欧州特許第3,284,583A1号)を開発し、これにより、室温(20℃)で15Pa・sを超える高い粘度を有する光硬化性樹脂の高温でのリソグラフィーベース3D構造化が可能になる。欧州特許第3,284,583A1号の文脈では、加工材料が、高分子量(>2000g mol-1)および/もしくは高溶融温度もしくは軟化温度および/もしくは強い分子間力を有するモノマー、オリゴマーおよび/もしくはプレポリマーの高含量ならびに/または最終的な材料の性能を調整するために粘性光硬化性樹脂に添加される充填材料の高含量を有している場合に、高い粘度が見出される。高温と高粘度配合物の加工との組み合わせにより、靭性、耐熱性および耐衝撃性を兼ね備えた光硬化性材料の3D構造化が可能になる。
【0006】
最大300℃およびそれを上回る耐熱性を示すプラスチック材料を形成するためのリソグラフィーベースの3D構造化用樹脂組成物はこれまで開発されていなかった。最近、シアナートエステルベースの二重硬化樹脂が、付加製造用の高温熱硬化性樹脂のクラスとして導入された(国際公開第2017/040883A1号)。光に対する反応性を維持するために、光硬化性成分のかなりの含量を有する配合物を配合し、250℃までのガラス転移温度(T)と240℃未満の荷重たわみ温度THDT(B)を有する材料を生成する必要がある。純粋なシアナートエステル樹脂は、非常に高いガラス転移温度(最大400℃)を示すことが知られており、配合物中にかなりの割合の光硬化性成分が必要とされるために、これまでL-AMTによる加工には利用できなかった。
【0007】
Novoset社は、ラジカル硬化可能な成分(例えば、UV光、陽イオン性、電子ビーム、レーザー、過酸化物および/または化学添加剤硬化によって硬化可能)である成分と熱硬化性樹脂である別の成分とを有する二重硬化樹脂を開示した(米国特許第9,708,440 B2号)。この特許に記載されている例は、シアナートエステルベースの配合物に限定されており、最大300℃のガラス転移温度を報告した。このような二重硬化樹脂は、米国特許出願公開第2017/0173866A1号において、射出成形、射出成形コア、エンジン翼、宇宙船または熱シールド部品などの航空宇宙用途、ボートおよび海軍用途、羽根車、レドーム、衛星構造物、自動車部品(例えば、ハウジングおよび内装)、プリント回路基板、電子機器用の梱包および冷却構造、チップ実装、ロボットハンド、電池保管用の囲い(enclosures)、ヘルスケア用途(例えば、滅菌のために高温にさらされる部品)、手術器具(例えば、開創器、拡張器、解剖器具)、歯科用のサージカルガイドなどの口腔内装置、または150℃を超える高温での機械的安定性が要求されるその他の例のための潜在的なツールとして記載されている。
【0008】
マレイミドベースの樹脂(例えば、ビスマレイミド樹脂、いわゆるBMI)は、その高い性能(例えば、高い耐熱性、耐薬品性および難燃性、高い機械的安定性、低い吸水性、低い熱膨張係数)のために、航空宇宙、接着剤、包装およびマイクロエレクトロニクスの産業分野において確立されているが、加工性が劣るために、BMIのより広範な産業的利用が制限され、特に、L-AMTにおける使用は著しく制限されている。この材料は、通常、高い融解温度(>50℃)を有する固体または半固体であり、このため、従来のL-AMTと適合的でない。さらに、BMI熱硬化性樹脂は、架橋密度が高く、通常は結晶含有量が高いため、脆性を示す。
【0009】
マレイミドベースの成分は、樹脂の粘度を増大させ、最終的な配合物をしばしば加工不能とする傾向があるので、とりわけ、コーティング、印刷インクおよびL-AMTなどの高い粘度が問題となる用途分野において、マレイミドベースの成分の限られた例が光硬化性配合物に導入されてきた(例えば、米国特許出願公開第2013/0025495A1号)。
【0010】
したがって、本発明の目的は、L-AMT、特にステレオリソグラフィーにおいて使用されるように適合された樹脂組成物を提供することであり、これにより、著しく高い耐熱性および同時に高い機械的強度の製品の3D印刷が可能になる。
【発明の概要】
【0011】
この目的を解決するために、高温での三次元印刷用の高温耐熱性樹脂組成物であって、
a)式(I)に記載のマレイミド誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーならびにこれらの異性体、特にイタコンイミドから構成される群から選択される1つまたは複数の化学種を有する熱硬化性成分Aと、
【化1】

式中
-Rは、H、CHまたはCHを表し、
-Rは、1つまたは複数の、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cチオエーテル、ハロゲン、-NO、-SOH、-CF、-OH、-NH、-SH、-CN、-イソシアナート、-トリメトキシシリル、-トリエトキシシリルまたはマレイミドおよびシトラコンイミド化合物の物質クラスならびに/もしくはこれらの異性体、特にイタコンイミドからの重合可能な基で必要に応じて置換された、フェニル、ベンジル、フェネチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸および対応するエステル、アルキルまたは芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ビス(メチレン)オキシ、ビス(エチレン)オキシ、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)アミノおよびビス(フェニル)スルホンからなる群の1つまたは複数の直鎖、分岐または環状C-C40脂肪族または芳香族残基を独立して表し、
b)(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニル、アリル、アルキニルまたはスチレン化合物ならびに成分Aがそれから選択される群からの少なくとも1つの分子で置換されたこれらの誘導体から構成される群から選択される1つまたは複数の化学種を有する光硬化性成分Bと、
を含み、
成分Aの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて30重量%~95重量%の範囲であり、光硬化性成分Bの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて5~70重量%の範囲である、耐熱性樹脂組成物が提供される。
他の記載と重複するが、本発明の諸態様を以下に示す。ただし、本発明は以下に限定されない。
[1]
三次元印刷用の樹脂組成物であって、
a)式(I)に記載のマレイミド誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーならびにこれらの異性体、特にイタコンイミドから構成される群から選択される1つまたは複数の化学種を有する熱硬化性成分Aと、
[化1]

式中
-nは、1~10の整数であり、
-R は、H、CH またはCH を表し、
-R は、1つまたは複数の、C -C アルキル、C -C アルコキシ、C -C チオエーテル、ハロゲン、-NO 、-SO H、-CF 、-OH、-NH 、-SH、-CN、-イソシアナート、-トリメトキシシリル、-トリエトキシシリルまたはマレイミドおよびシトラコンイミド化合物の物質クラスならびに/もしくはこれらの異性体、特にイタコンイミドからの重合可能な基で必要に応じて置換された、フェニル、ベンジル、フェネチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸および対応するエステル、アルキルまたは芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、ビス(メチレン)オキシ、ビス(エチレン)オキシ、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)アミノおよびビス(フェニル)スルホンからなる群の1つまたは複数の直鎖、分岐または環状C -C 40 脂肪族または芳香族残基を独立して表し、
b)(メタ)アクリラート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニル、アリル、アルキニルまたはスチレン化合物ならびに成分Aがそれから選択される群からの少なくとも1つの分子で置換されたこれらの誘導体から構成される群から選択される1つまたは複数の化学種を有する光硬化性成分Bと、
を含み、
成分Aの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて30重量%~95重量%の範囲であり、前記光硬化性成分Bの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて5~70重量%の範囲であり、
成分Aが、nが2~10の整数であり、好ましくはメチレン基を介して、式Iのマレイミド環のN原子に連結された芳香族残基を有する成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、20重量%~100重量%、好ましくは30重量%~100重量%、より好ましくは40重量%~100重量%の範囲の量で含むことを特徴とする、樹脂組成物。
[2]
成分Aの量が、成分AおよびBの総重量に基づいて、40重量%~95重量%、好ましくは50重量%~95重量%、より好ましくは60重量%~95重量%、さらにより好ましくは70重量%~95重量%の範囲であり、前記光硬化性成分Bの量が、成分AおよびBの総重量に基づいて、5重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、より好ましくは5重量%~40重量%、さらにより好ましくは5重量%~30重量%の範囲であることを特徴とする、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
成分Aが、nが2~10の整数であり、R が脂肪族残基である成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、0.5重量%~50重量%、好ましくは3重量%~30重量%、より好ましくは5重量%~15重量%の範囲の量でさらに含むことを特徴とする、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
成分Aが、nが1であり、R が、1つまたは複数の、C -C アルキル、C -C アルコキシ、C -C チオエーテル、ハロゲン、-NO 、-SO H、-CF 、-OH、-NH 、-SH、-CN、-イソシアナート、-トリメトキシシリルまたは-トリエトキシシリルで必要に応じて置換された、フェニル、ベンジル、フェネチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸および対応するエステル、アルキルまたは芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、(メチレン)オキシ、(エチレン)オキシからなる群の1つまたは複数の直鎖、分岐または環状C -C 40 脂肪族または芳香族残基を独立して表す成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で含むことを特徴とする、[1]、[2]または[3]に記載の樹脂組成物。
[5]
成分Aが、N-フェニルマレイミド、2,6-キシリルマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4-メチル-m-フェニレン)-ビスマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-キシリレンビスマレイミド、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、1,6-ビスマレイミド-(トリメチル)ヘキサン(2,2,4-および2,4,4-トリメチルの異性体混合物)および/またはこれらのオリゴマーおよび/またはプレポリマーからなる群の1つもしくは複数である、またはこれらの群の1つもしくは複数を含むことを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記組成物が、熱可塑性樹脂、特にポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド、反応性ゴム、特にマレイミド末端ブタジエン-アクリロニトリルコポリマーならびに/または柔軟なリンカー、特に長い脂肪族鎖および/もしくはエチレングリコールスペーサーとともに反応性マレイミド-もしくはシトラコンイミド基を含むモノマー、Q-ボンド(ビスマレイミド36炭素脂環式分岐構造)および/またはMIA(オリゴマーポリエーテルビスマレイミド、ポリ(オキシブチレン)-ジ(2-マレイミドアセタート)などのモノマー、これらのオリゴマーおよび/またはプレポリマーからなる群から選択される靭性改質剤を含むことを特徴とする、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
成分Bが多官能性(メタ)アクリラートならびに/または単官能性および多官能性(メタ)アクリラートの混合物、特にメチル-、エチル-、2-ヒドロキシエチル、ブチル-、ベンジル-、テトラヒドロフルフリル-またはイソボルニル(メタ)アクリラート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ-(メタ)アクリラートまたは1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリラート、2-(2-ビフェニルオキシ)-エチル(メタ)アクリラート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート、エトキシ-もしくはプロポキシ化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート(例えば、2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]-2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-プロパン)または2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,6-ビス-[2-(メタ)-アクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]-2,2,4-トリメチルヘキサン、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、ジ-、トリ-もしくはテトラエチレングリコール-ジ(メタ)アクリラートおよび/またはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートを含むことを特徴とする、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
樹脂組成物が、光励起、好ましくは150nm~580nm、より好ましくは300nm~500nmの間の波長スペクトル内の光励起時のラジカル重合に適した少なくとも1つの光開始剤を、成分AおよびBの重量に基づいて、好ましくは0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%の量で含むことを特徴とする、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記少なくとも1つの光開始剤が、単独でまたは互いに組み合わせて、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシラート、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾアート、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセタート、ビス(シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピリル)フェニル]チタン、アシル-またはビスアシル-ホスフィンオキシドベースの開始剤、特に2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、アシル-、ビスアシル-またはテトラアシルゲルマン、特にビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマン(BMDG)、アシル-、ビスアシル-またはテトラアシルシラン、アシル-、ビスアシル-またはテトラアシルスタンナン、ベンゾフェノン類、特にベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノンおよび/または4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾイン、ジケトン、特に9,10-フェナントレンキノン、1-フェニル-プロパン-1,2-ジオン、ジアセチルもしくは4,4’-ジクロロベンジルおよび/またはこれらの誘導体、チオキサントン、特に2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オンであることを特徴とする、[8]に記載の樹脂組成物。
[10]
樹脂組成物が、ラジカル重合のための1つおよび/または複数の開始剤、特に熱開始剤、好ましくはアゾ化合物、より好ましくは2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)および/またはアゾビス-(4-シアノ吉草酸))および/または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、ジ-(tert-ブチル)-ペルオキシド)および/または1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオールを含むことを特徴とする、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
樹脂組成物が、少なくとも1つの重合阻害剤、好ましくは、ヒドロキノン、ベンゾキノンおよび/またはフェノチアジンからなる群から選択される阻害剤を含むことを特徴とする、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]
光開始剤、熱開始剤および/または重合阻害剤が、成分Aまたは成分Bのいずれかとの共重合を受けることができる重合可能な官能基でさらに官能化されていることを特徴とする、[9]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]
成分Aが、成分Aとおよびその誘導体と共重合することができる、コモノマーおよび/またはコオリゴマーおよび/またはコプレポリマー、特に、アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジン、シアナートエステル、ジアリルフタラート、トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ビニルおよび/またはスチレン官能基の群から選択されるコモノマーおよび/またはコオリゴマーおよび/またはコプレポリマーをさらに含むことを特徴とする、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14]
樹脂組成物が、成分Aの熱硬化のための少なくとも1つの触媒を含み、前記触媒は、好ましくは、第3級アミン、特にDABCOおよびトリエチルアミン、ホスフィン、トリフェニルホスホナート、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、有機酸および/または過酸化物からなる群から選択されることを特徴とする、[1]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15]
室温(20℃)での樹脂組成物が>5Pa・s、好ましくは>50Pa・sの粘度を有することを特徴とする、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16]
組成物が、光誘起構造化工程に供され、その後に熱誘起硬化工程に供されることを特徴とする、[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の使用。
[17]
前記光誘起構造化工程が、前記樹脂組成物の上昇した処理温度で、好ましくは40℃~150℃、より好ましくは60℃~120℃、さらにより好ましくは70℃~110℃の間の温度で実施されることを特徴とする、[16]に記載の使用。
[18]
前記樹脂組成物の層が、好ましくはリコーターブレードによって、キャリア上に形成され、前記樹脂組成物が、好ましくは、前記処理温度において、0.01~40Pa・s、好ましくは、0.1~25Pa・sの粘度を有することを特徴とする、[17]に記載の使用。
[19]
前記光誘起構造化工程が、3D印刷によって成形体を構築するために実行され、ここで、前記成形体の層は、プレート、キャリアフィルムもしくはタンクの底などの透明なもしくは少なくとも部分的に透明なキャリアと機械的に調整可能な構築プラットフォームとの間に、前記樹脂組成物の所定の厚さの材料層をそれぞれ形成することによって、次々と、順に重ねて形成されるか、または、前記成形体は、少なくとも部分的に前記構築プラットフォーム上に形成され、このような画定された材料層は、特に前記透明なもしくは少なくとも部分的に透明なキャリアを通した照射によって、前記成形体層の所望の形状を与えるために、位置選択的な様式で硬化される、ことを特徴とする、[16]、[17]または[18]に記載の使用。
[20]
[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物を、光誘起構造化工程の後に熱誘起硬化工程に供することによって製造された物品。
[21]
前記物品が、250℃~360℃の範囲の荷重たわみ温度(HDT(B))、250℃~360℃範囲の温度まで1GPaを超える貯蔵弾性率、250℃~360℃の範囲のガラス転移温度および3GPaを超える室温(20℃)での曲げ弾性率を有することを特徴とする、[20]に記載の物品。
【0012】
本発明の文脈において、nは1~10の整数である。
【0013】
本発明のタイプの樹脂組成物は、室温(20℃)を著しく超える温度を意味する高温での3D印刷用途において加工することができ、該用途において、本発明の樹脂組成物は加熱され、続いて交互吸着光誘起積層工程に供され、該工程において、本発明の樹脂組成物の光硬化性成分Bは、リソグラフィーベースの付加製造法を介して三次元物体を得るために光硬化によって構造化されて、高温耐熱性熱硬化性化合物の前述された望ましい熱的、機械的および化学的特性を有する材料を生成する。
【0014】
光硬化性成分Bの含有量は、熱硬化された成分Aの望ましい(熱)機械的特性を維持するために、好ましくは最小に(成分AおよびBの総重量に基づいて5重量%の少量にさえ)保たれる。ホットリソグラフィーは、成分Aの高含量を有する樹脂の3D構造化を可能にするための処理方法として使用され、成分Aは、マレイミドもしくはシトラコンイミドベースのまたはこれらの異性体、オリゴマーもしくはプレポリマーをベースとするような熱硬化性前駆体であり、通常、樹脂配合物の高い融解温度(>50℃)および従来のL-AMTのために同等に高い粘度(室温で>15Pa・s、処理温度で0.01~40Pa・s、好ましくは0.1~25Pa・s)によって特徴付けられる。得られた材料は、特有の耐熱性を与える(最大300℃以上の高温への継続的な曝露の間、周囲条件での当初の特性の許容され得る割合が保持されることを意味する)。これは、L-AMTを介して製造された3D部品の本明細書に開示されている(熱)機械的特性(最大300℃以上のガラス転移温度Tおよび荷重たわみ温度THDT(B))によって実証される。
【0015】
例として、本発明の樹脂組成物の成分Aの熱硬化性モノマーは、以下の化学式によって表される。
【化2-1】

【化2-2】

【化2-3】

【化2-4】
【0016】
好ましくは、成分Aの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて、40重量%~95重量%、好ましくは50重量%~95重量%、より好ましくは60重量%~95重量%、さらにより好ましくは70重量%~95重量%の範囲であり、光硬化性成分Bの量は、成分AおよびBの総重量に基づいて、好ましくは5重量%~60重量%、好ましくは5重量%~50重量%、より好ましくは5重量%~40重量%、さらにより好ましくは5重量%~30重量%の範囲である。
【0017】
が芳香族残基を表す成分Aの多官能性種は、高い架橋のためにより高い耐熱性をもたらすが、樹脂の融解温度または粘度を上昇させ、光硬化性を低下させる。芳香族残基が短いアルキル鎖(例えば、メチレン基)によって式Iのマレイミド環のN原子に連結されている場合には、粘度の増加および制限された光硬化性は相殺され得る。芳香族残基が短いアルキル鎖によって式Iのマレイミド環のN原子に連結されている場合には、融解温度または粘度の上昇は低減され得る。したがって、成分Aは、nが2~10の整数であり、好ましくはメチレン基を介して、式Iのマレイミド環のN原子に連結された芳香族残基を有する成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、20重量%~100重量%、好ましくは30重量%~100重量%、より好ましくは40重量%~100重量%の範囲の量で含むことが好ましい。成分Aのこのような好ましい種は、特に、以下の式によって表される種である。
【化3】
【0018】
好ましくは、成分Aは、nが2~10の整数であり、Rが、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、0.5重量%~50重量%、好ましくは3重量%~30重量%、より好ましくは5重量%~15重量%の範囲の量の脂肪族残基である成分Aの種をさらに含む。成分Aのこれらの種は、硬化されていない樹脂組成物のより低い融解温度または粘度およびさらなる光硬化性をもたらし、これによって、加工性が高められる。しかしながら、このような誘導体は、最終的な熱硬化された材料の耐熱性も低下させるので、上記の含有量に限定されるべきである。成分Aのこのような好ましい種は、特に、以下の式によって表される種である。
【化4】
【0019】
さらに、成分Aの単官能性種は、樹脂組成物のより良い加工性、すなわち、より低い粘度または融解温度をもたらすが、最終材料のより低い架橋密度の故に、硬化されたときに樹脂のより低い耐熱性ももたらす。したがって、成分Aは、好ましくは、nが1であり、Rが、1つまたは複数の、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cチオエーテル、ハロゲン、-NO、-SOH、-CF、-OH、-NH、-SH、-CN、-イソシアナート、-トリメトキシシリルまたは-トリエトキシシリルで必要に応じて置換された、フェニル、ベンジル、フェネチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デカニル、ドデカニル、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、安息香酸および対応するエステル、アルキルまたは芳香族エステル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、イソボルニル、プロペニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピレニル、(メチレン)オキシ、(エチレン)オキシからなる群の1つまたは複数の直鎖、分岐または環状C-C40脂肪族または芳香族残基を独立に表す成分Aの種を、樹脂組成物中に含まれる成分Aの総重量に基づいて、0.5重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、より好ましくは5重量%~20重量%の範囲の量で含む。成分Aのこのような好ましい種は、特に、以下の式によって表される種である。
【化5】
【0020】
本発明の樹脂組成物の成分Aのいくつかの他の好ましい化合物は、以下の化学式によって表される、N-フェニルマレイミド、2,6-キシリルマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4-メチル-m-フェニレン)-ビスマレイミド、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-キシリレンビスマレイミド、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、1,6-ビスマレイミド-(トリメチル)ヘキサン(2,2,4-および2,4,4-トリメチルの異性体混合物)および/またはこれらのオリゴマーおよび/またはプレポリマーである。
【化6】
【0021】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、特にポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド、反応性ゴム、特にマレイミド末端化(terminated)ブタジエン-アクリロニトリルコポリマーおよび/または柔軟なリンカー、特に長い脂肪族鎖および/またはエチレングリコールスペーサーとともに反応性マレイミド-またはシトラコンイミド基を含むモノマー、Q-ボンド(ビスマレイミド36炭素脂環式分岐構造)および/またはMIA(オリゴマーポリエーテルビスマレイミド、ポリ(オキシブチレン)-ジ(2-マレイミドアセタート)などのモノマー、これらのオリゴマーおよび/またはプレポリマーからなる群から選択される靭性改質剤を含む。
【化7】
【0022】
好ましくは、樹脂組成物は、成分Bが多官能性(メタ)アクリラートならびに/または単官能性および多官能性(メタ)アクリラートの混合物、特にメチル-、エチル-、2-ヒドロキシエチル、ブチル-、ベンジル-、テトラヒドロフルフリル-またはイソボルニル(メタ)アクリラート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、1,10-デカンジオールジ-(メタ)アクリラートまたは1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリラート、2-(2-ビフェニルオキシ)-エチル(メタ)アクリラート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート((メタ)アクリル酸とビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルからの付加生成物)、エトキシ-またはプロポキシ化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート(例えば、2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]-2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-プロパン)または2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,6-ビス-[2-(メタ)-アクリロイルオキシエトキシカルボニルアミノ]-2,2,4-トリメチルヘキサン(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリラートと2,2,4-(2,4,4)-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートからの付加生成物)、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラート、ジ-、トリ-またはテトラエチレングリコール-ジ(メタ)アクリラートおよび/またはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラートを含むように考案される。
【0023】
単官能性(メタ)アクリラートは、1つのラジカル重合可能な基を有する成分である。多官能性(メタ)アクリラート成分は、2つまたはそれを超えるラジカル重合可能な基を有する成分である。より好ましい実施形態では、本発明に関連する配合物は、少なくとも1つのジおよび/もしくは多官能性(メタ)アクリラート、またはモノおよび/もしくはジおよび/もしくは多官能性(メタ)アクリラートの混合物から構成される。これらは、ラジカル重合可能なモノマーであり、したがって、光によって重合可能なモノマーであり、したがって、本発明の樹脂組成物の成分Bのための光硬化性成分マトリックスとして特に好ましい。成分Bの好ましい多官能性モノマーは、重合収縮の傾向が低く、硬化された樹脂の耐熱性が高いという理由で、芳香族または脂環式基から構成される群から選択される。成分Bのこのような多官能性モノマーは、好ましくは、2-(2-ビフェニルオキシ)-エチル(メタ)アクリラート、ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート((メタ)アクリル酸およびビスフェノール-A-ジグリシジルエーテルからの付加生成物)、エトキシ化またはプロポキシ化ビスフェノール-A-ジ(メタ)アクリラート(例えば、2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ)フェニル]-2-[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]-プロパン)または2,2-ビス[4-(2-(メタ)アクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラートまたはトリス[2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌラートである。多官能性モノマーは、好ましくは、さらに多くの官能性部位を有する三官能性、四官能性、五官能性および/または六官能性(メタ)アクリラートおよび/または超分岐および/または樹状(メタ)アクリラートである。これらは、反応速度が速く、架橋密度が高いという理由で適している。
【0024】
硬化されていない樹脂の低い融解温度または粘度での硬化された樹脂の高い耐熱性および加工性を高めるための良好な光硬化性というこれらの矛盾する側面の下で、本発明の樹脂組成物の好ましい実施形態は、以下の例を含む。
【表1】
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明の樹脂組成物は、光励起、好ましくは150nm~580nm、より好ましくは300nm~500nmの間の波長スペクトル内の光励起時のラジカル重合に適した少なくとも1つの光開始剤を、成分AおよびBの重量に基づいて、好ましくは0.01重量%~10重量%、好ましくは0.1重量%~7重量%、より好ましくは0.2重量%~5重量%の量で含む。これは、光開始剤が光で活性化され、配合物の重合可能な成分の重合を開始することができることを意味する。
【0026】
適用される露光が光開始剤を活性化するのに適切な波長であり、十分な出力である場合に、光開始重合(光重合)は成功する。光開始剤に対して適切な露光は別として、全体的な配合物(必要に応じて光吸収モノマーまたは添加剤を含む)は、放出された光と光開始剤との相互作用を妨害してはならない。ここで適用される露光には、重合を開始することができる任意の波長および出力が含まれる。光の好ましい波長は、150nm~580nmであり、さらにより好ましいのは、300nm~500nmの間である。レーザーまたはLED源を含むがこれらに限定されない、任意の適切なUVまたは可視光源を使用し得る。光源は、広帯域もしくは狭帯域の光スペクトルまたはこれらの組み合わせを放出し得る。光源は、単一のまたは繰り返される露光期間中に連続光またはパルス光を放出し得、露光の時間または強度によってさらに変化され得る。適切で上昇した過程温度は、システムの反応性を増大させ、したがって光誘起構造化過程を強化する。上記のパラメーターと変数を調整すると、記載された光重合反応を実行するための最適化されたプロトコルが得られ、L-AMTを介した最適な3D加工が得られる。
【0027】
好ましい光開始剤は、単独でまたは互いに組み合わせたノリッシュI型光開始剤である。いくつかの好ましい例は、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシラート、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、[1-(4-フェニルスルファニルベンゾイル)ヘプチリデンアミノ]ベンゾアート、[1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エチリデンアミノ]アセタート、ビス(シクロペンタジエニル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1-ピリル)フェニル]チタン、アシル-またはビスアシル-ホスフィンオキシドベースの開始剤、特に2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、エチル(3-ベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート、アシル-、ビスアシル-またはテトラアシルゲルマン、特にビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマン(BMDG)、アシル-、ビスアシル-またはテトラアシルシラン、アシル-、ビスアシル-またはテトラアシルスタンナンである。
【0028】
好ましい光開始剤はまた、ノリッシュII型光開始剤であり得る。いくつかの好ましい例は、ベンゾフェノン(特にベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン)、ベンゾイン、ジケトン(例えば、9,10-フェナントレンキノン、1-フェニル-プロパン-1,2-ジオン、ジアセチルもしくは4,4’-ジクロロベンジルおよび/またはこれらの誘導体)、チオキサントン(特に2,4-ジエチル-9H-チオキサンテン-9-オン)である。このようなII型光開始剤は、第三級アミン、特にN,N-ジアルキルアニリン、-p-トルイジンもしくは-3,5-キシリジン、p-N、N-ジアルキルアミノ-フェニルエタノール、-安息香酸誘導体、-ベンズアルデヒドもしくはトリエタノールアミンなどの芳香族第三級アミンなどの共開始剤と組み合わせて使用され得る。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、前記I型および/またはII型光開始剤の組み合わせが使用され得る。
【0030】
さらに好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、ラジカル重合のための1つおよび/または複数の開始剤、特に熱硬化に適した熱開始剤を含む。いくつかの好ましい例は、アゾ化合物、より好ましくは、2,2’アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)および/またはアゾビス-(4-シアノ吉草酸)および/または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジクミル、ペルオキシ安息香酸tert-ブチル、ジ-(tert-ブチル)-ペルオキシド)および/または1,1,2,2-テトラフェニル-1,2-エタンジオールである。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の樹脂組成物は、少なくとも1つの重合阻害剤、好ましくは、ヒドロキノン、ベンゾキノンおよび/またはフェノチアジンからなる群から選択される阻害剤を含む。
【0032】
前述の光開始剤、熱開始剤、阻害剤および他の添加剤は、本発明の好ましい実施形態に従うように、成分Aまたは成分Bとの共重合を受けることができる重合可能な官能基でさらに官能化され得る。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、成分Aは、成分Aならびにその誘導体と共重合することができるコモノマーおよび/またはコオリゴマーおよび/またはコプレポリマーをさらに含む。このようなコモノマーは、好ましくは、アルケニルフェノール、アルケニルフェニルエーテル、アルケニルフェノールエーテル、ポリアミン、アミノフェノール、アミノ酸ヒドラジン、シアナートエステル、フタル酸ジアリル、トリアリルイソシアヌラート、トリアリルシアヌラート、ビニルおよび/またはスチレン官能基からのモノマーおよび/またはオリゴマーおよび/またはプレポリマーから構成される群から選択され得る。このようなコモノマーなどのいくつかの好ましい例は、以下の化学式によって表される。
【化8】
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、少なくとも1つの触媒は、成分Aの熱硬化のために使用され得る。適切な触媒は、好ましくは、第三級アミン、特にDABCOおよびトリエチルアミン、ホスフィン、トリフェニルホスホナート、イミダゾール、特に2-メチル-1-ビニルイミダゾール、有機酸、および/または過酸化物からなる群から選択され得る。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、本発明の樹脂組成物は、有機および/または無機充填剤を含む。このような混合物は、一般に複合材料と記載される。好ましい有機充填剤は、コアシェル粒子、ブロックコポリマー、PTFE、高性能ポリマー、熱可塑性物質、特にポリ(エーテルイミド)またはポリスルホン、ゴムなどであり得るが、これらに限定されない。
【0036】
好ましい無機充填剤は、金属、金属酸化物、および/またはセラミック(例えば、1~20μmの平均粒径を有するSiO、ZrO、TiO、ZnOもしくはこれらの混合物、または10nm~1000nm平均粒径を有する好ましいナノまたはマイクロ充填剤)、タルク、粘土、シリカおよび/またはマイカなどのシリカート、ガラス粉末(特に、0.01~20μmの平均粒径を有する好ましいナノまたはマイクロ充填剤として、石英、ガラスセラミック)、カーボンブラック、グラフェン、グラファイトであり得る。充填剤の平均粒径は、平均粒径および粒径分布の決定のために、DIN/ISO 13320に準拠したミー理論を使用する静的光散乱法を介して決定され得る。第2の態様では、このような有機または無機充填剤は、繊維(例えば、ナノファイバー、ウィスカーおよび/またはこれらの混合物)、球、破砕物(fractures)、および/または定義された三次元(特にグラファイト)および/または二次元構造物(特にグラフェンの単分子層)であり得る。
【0037】
好ましくは、充填剤は、それらの表面上で修飾され得る(例えば、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどのラジカル重合可能なシランを介してシラン化される)。ZrOまたはTiOなどの無機充填剤の表面修飾のために、官能化された酸性ホスファート(例えば、10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスファート)を使用し得る。このような修飾により、凝集、混合物の安定性、ポリマーマトリックスへの粒子の結合などの現象が制御されおよび/または影響を受ける。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、安定剤、着色剤、抗菌剤、蛍光増白剤、軟化剤および/またはUV吸収剤をさらに含み得る。
【0039】
一般式Iによる成分Aの本明細書に開示される混合物は、上記のように、成分Bおよび追加の成分と様々な比率で混合され得る。配合物を混合するための好ましい比率は、以下であり得る。
・式Iによる少なくとも1つの成分A(熱硬化性成分):成分AおよびBの重量に基づいて、30~95重量%
・少なくとも1つの成分B(光硬化性成分、好ましくは(メタ)アクリラートベース):成分AおよびBの重量に基づいて、5~70重量%
・少なくとも1つの光開始剤:成分AおよびBの重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.2~5重量%
・成分Aと共重合する適切なコモノマー、コオリゴマーおよび/またはコプレポリマー:成分Aとコモノマー、コオリゴマーおよび/またはコプレポリマーの総重量に基づいて、1~70重量%、好ましくは5~50重量%、さらにより好ましくは5~40重量%
・成分Aに対する適切な触媒:成分AおよびBの重量に基づいて、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%。
【0040】
モノマーまたはオリゴマー性の単官能性または多官能性の成分Aの存在は、重合反応物(polymerisate)の比較的高い耐熱性(荷重たわみ温度THDT(B)>250℃およびガラス転移温度T>250℃)を与える。第二に、光を介して硬化することができるモノマーまたはオリゴマーの、単官能性および/または多官能性の物質(成分B)の存在は、好ましくは、40~150℃の積層工程における温度を使用するホットリソグラフィーを介して、配合物の3D構造化を可能にする。
【0041】
好ましくは、室温(20℃)での樹脂組成物は、>5Pa・s、好ましくは>50Pa・sの粘度を有する。これらの粘度は、本発明の樹脂組成物から形成された材料の著しく高い耐熱性を与える成分Aの特に高い含有量に起因する。
【0042】
本発明の樹脂の使用は、組成物が、光誘起構造化工程とその後の熱誘起硬化工程に供されることを特徴とする。当業者には明らかであるように、光による硬化過程は、極めて可能性が高いのは付加製造過程であり、より好ましくは、所望の化学的、機械的および熱的特性を有する最終生成物を得るための各熱的後処理工程を伴う3D印刷過程である。したがって、本発明の樹脂配合物は、付加製造を介して三次元物体を作製するための樹脂配合物として使用され得る。その結果得られる3D部品は、高い強度、硬度および剛性を示しながら、並外れた耐熱性と耐薬品性を与える。前記材料から得られるこのような付加製造された3D物体に関する可能な用途は、射出成形、深絞り、熱成形、押し出しおよび/または加圧形成のためのツール、射出成形コア、連続鋳造用のダイ、エンジン翼、宇宙船または熱シールド部品などの航空宇宙用途、ボートおよび海軍用途、羽根車、レドーム、衛星構造物、自動車部品(例えば、ハウジングおよび内装、コネクタなど燃料と接触する部品)、プリント回路基板、電子機器用の包装および冷却構造、チップ実装、ロボットハンド、電池保管用の囲い、ヘルスケア用途(例えば、滅菌のために高温にさらされる部品)、手術器具(例えば、開創器、拡張器、解剖器具)、歯科用のサージカルガイドなどの口腔内装置、または高温(>150℃)での機械的安定性が要求されるその他の例であり得る。
【0043】
好ましい実施形態では、光誘起構造化工程は、樹脂組成物の高い処理温度で、好ましくは40℃~150℃、より好ましくは60℃~120℃、さらにより好ましくは70℃~110℃の温度で実施される。これは、高含有量の成分Aに溶解性または混和性を与え、構造化工程の間に本発明の樹脂組成物の粘度を低下させるために行われる。
【0044】
好ましい実施形態では、樹脂組成物の層は、好ましくはリコーターブレードによって、キャリアプレート上に形成され、樹脂組成物は、好ましくは、前記処理温度において、0.01~40Pa・s、好ましくは0.1~25Pa・sの粘度を有する。
【0045】
光誘起構造化工程は、好ましくは、3D印刷によって成形体を構築するために実行され、ここで、前記成形体の層は、プレート、キャリアフィルムもしくはタンクの底などの透明なもしくは少なくとも部分的に透明なキャリアと機械的に調整可能な構築プラットフォームとの間に、樹脂組成物の所定の厚さの材料層をそれぞれ形成することによって、次々と、順に重ねて形成されるか、または、成形体は、構築プラットフォーム上に少なくとも部分的に形成され、このような画定された材料層は、特に透明なもしくは少なくとも部分的に透明なキャリアを通した照射によって、成型体層の所望の形状を与えるために、位置選択的な様式で硬化される。
【0046】
好ましい実施形態によれば、光誘起構造化工程は、第1の放射源を使用することによって実行され、ここで、第1の放射源の放射は、透明なキャリアプレートを通して樹脂組成物に適用され、構造化されるべき樹脂組成物の層の加熱は、第2の放射源を使用することによって実施され、キャリアプレートは、第2の放射源の放射に対して本質的に不浸透性である。このようにして、キャリアプレートは第2の放射源の放射によって加熱され、前記放射は本質的に樹脂組成物の層中に入らず、キャリアプレートを介してこのように間接的に加熱された樹脂組成物は、第1の放射源の放射によって構造化される。
【0047】
本発明の樹脂の光硬化工程が実施された後、さらなる硬化を与えるために、熱誘起硬化工程が実施される。加熱工程は、150~400℃の温度領域内で実施することができ、それぞれ規定された温度で規定された時間間隔を有する1つまたは複数の個別の硬化工程に分割され得る。このような熱誘起硬化工程の非限定的な例は、以下のとおりであり得る。方法A→170℃で2時間、220℃で4時間および250℃で2時間;方法B→180℃で1時間、220℃で1時間、250℃で4時間および300℃で1時間。
【0048】
本発明の樹脂組成物を光誘起構造化工程に供した後、熱誘起硬化工程に供することから得られる本発明の物品は、物品が、好ましくは、250℃~360℃の範囲の荷重たわみ温度(HDT(B))、250℃~360℃の範囲の温度まで1GPaを超える貯蔵弾性率、250℃~360℃の範囲のガラス転移温度および3GPaを超える室温(20℃)での曲げ弾性率を有することを特徴とする。
【0049】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、共有化学結合によって接続された反復構造単位から構成され、かなりの数の反復単位(例えば、10以上の反復単位、しばしば50以上の反復単位、およびしばしば100以上の反復単位)および高分子量(例えば、5000Da以上、10000Da以上または20000Da以上)によって特徴付けられる分子を指す。ポリマーは通常、1つまたは複数のモノマー前駆体の重合生成物である。「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、または単一の反復モノマーサブユニットから本質的になるポリマーを含む。「ポリマー」という用語は、2つまたはそれを超える異なる種類のモノマーが同じポリマー中で連結されるときに形成されるコポリマーも含む。コポリマーは、2つまたはそれを超えるモノマーサブユニットを含み得、ランダム、ブロック、交互、セグメント化、グラフト化、テーパー状(tapered)およびその他のコポリマーを含み得る。「ポリマー」という用語には、架橋されたポリマーも含まれる。
【0050】
本明細書において、「オリゴマー」は、共有化学結合によって接続された反復構造単位から構成され、ポリマーの反復単位の数より少ない反復単位の数(例えば、10個以下の反復単位)およびポリマーより低い分子量(例えば、5,000Da未満または2,000Da未満)によって特徴付けられる分子を指す。オリゴマーは、1つまたは複数のモノマー前駆体の重合生成物であり得る。一実施形態では、オリゴマーまたはモノマーそれ自体は、ポリマーと見なすことはできない。
【0051】
「プレポリマー」は、その分子が反応性基を介してさらなる重合に入ることができるポリマーまたはオリゴマーを指す。
【0052】
オリゴマーおよびポリマー混合物は、分子量および分子量分布の測定によって特徴付けられ、オリゴマーおよびポリマーの他の混合物と区別され得る。
【0053】
本発明に開示される実施形態は、以下の非限定的な例を参照することによってより詳細に説明される。これらの例は、例示のみを目的として提示されており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0054】
本明細書で使用されるすべての化学物質は、商業的供給源から購入され、さらに精製することなく使用された。
【0055】
本発明による硬化性組成物は、それぞれの化合物をビーカー内で60~110℃の温度で混合することによって調製された。均質な配合物になるまで樹脂を混合した。
【0056】
すべての材料に対するレオロジー測定は、Anton PaarのMCR 92で行った。すべての試料は回転モードで測定した(PP-25、50*s-1、温度ウィンドウ50~110°C、加熱速度0.05℃・s-1、ギャップサイズ:1mm)。通例、従来のL-AMTには、周囲条件または50℃未満のわずかにより高い温度で1Pa・s未満の粘度を有する配合物が必要とされ、50℃を超える温度に達することはまれであり、適切でもない。50℃より高い温度での1Pa・sより高い樹脂粘度については、高温での高粘度樹脂用のL-AMT(例えば、ホットリソグラフィー)が最適な印刷過程となる。
【0057】
本発明による最終材料の(熱)機械的試験標本は、Cubicure GmbH社からのCaligma 200でのホットリソグラフィーを介して、それぞれの光硬化性組成物から製造された。配合物と接触するすべてのプリンタ部品(すなわち、材料タンク、再コーティングユニット、再コーティングブレードおよび構築プラットフォーム)を、各配合物に対する調整された印刷温度に応じて、45℃から110℃の範囲の温度に加熱した。すべての3D部品は、12000mm・s-1のスキャン速度、155mWのレーザー強度および50または100μmの層厚で印刷された。ハッチング距離は一方向に15μmに設定され、レーザースポットは材料タンクの上面上において25μmの直径を有した。それぞれの配合物の反応性に応じて、層ごとに最大10回のレーザー照射の反復を行った。
【0058】
熱的後処理は、Carbolite Gero LHTオーブン中で、次の温度プロトコルを用いて実施した。
方法A→170℃で2時間、220℃で4時間および250℃で2時間
方法B→180℃で1時間、220℃で1時間、250℃で4時間、300℃で1時間。
【0059】
荷重たわみ温度(HDT)の測定は、HDT/Vicat 3-300標準上で実施した。HDT(B)およびHDT(C)試験は、DIN EN ISO 75-1:2013に従って実施した。試料標本(80×10×4mmの長方形の形状を有する)は、HDT(B)に対しては0.45 MPa、HDT(C)に対しては8MPaの負荷力を用いて、貫層方向に試験した。各測定の開始温度を26℃に設定し、試料にそれぞれの負荷力を5分間加えた。次いで、120K・min-1の温度傾斜を実施した。
【0060】
貯蔵弾性率とガラス転移温度Tを特定するためのDMA測定は、設定温度プログラム(30℃~400℃)および3℃・min-1の加熱速度を用いて、Dynamic Mechanical Analyzer(TA Instruments 2980,ニューキャッスル,デラウェア州,米国)上で行った。25×4×2mmのボックス形状を有する試料を、3点曲げモードで測定した。試験条件は、1Hzの周波数、20μmの振幅および0.1Nの前負荷力に設定した。ガラス転移温度Tは、損失係数tanδの最大値から導出される。
【0061】
Zwick/RoellのProLine Z010 TH材料テスターを使用して、3D印刷された材料の3点曲げ試験を行い、曲げ弾性率と曲げ強度を特定した。試験は、DIN EN ISO 178:2013に従って実施した。長方形試料(80×10×4mm)の曲げ弾性率を2mm・min-1の速度で記録し、続いて、曲げ強度を10mm・min-1で評価した。
比較例1:単官能性マレイミドおよびそのポリマーを有する硬化性樹脂MM1~3
【表2】
【0062】
樹脂配合物の調製:
参照1:28.5gの多官能性アクリラートBomar 741-XSおよび21.5gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)を、0.5gの光開始剤エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィナート(TPO-L)とともに均質化した。
【0063】
MM1:23gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、17gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)および10gの単官能性2,6-キシリルマレイミドを、0.5gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0064】
MM2:17gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、13gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)および10gの単官能性2,6-キシリルマレイミドを、0.5gの光開始剤TPO-Lおよび10gの無機充填剤(BaSO)とともに均質化した。
【0065】
Ref2:25gの多官能性アクリラートBomar 741-XSおよび25gの多官能性エポキシアクリラート(1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ジアクリラート)を、0.5gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0066】
MM3:20gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、20gの多官能性エポキシアクリラート(1,4-ブタンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ジアクリラート)および10gの単官能性2,6-キシリルマレイミドを、0.5gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0067】
上記の3D構造化された試料の熱的後処理は、方法Aに従って行った。
【表3】
【0068】
考察:
2つの(メタ)アクリラートベースの参照材料(かなり硬いマトリックスRef1およびかなり柔らかいマトリックスRef2)を使用して、最終的な材料の性能に対するマレイミド添加の影響を評価した。予想通り、かなり良好な溶解度および低い融解温度(2,6-キシリルマレイミドの場合、120℃未満)を有する単官能性マレイミドは、特に20重量%未満の低含有量において、最終配合物の全体的な粘度に著しい影響を与えない。しかしながら、Ref1の参照ポリマーからMM1の単官能性マレイミドベースのポリマーへと、荷重たわみ温度およびガラス転移温度の著しい増加を観察することができる。無機充填剤の添加は、改善された荷重たわみ温度とガラス転移温度を維持しながら、剛性および全体的な弾性率をさらに押し上げる(MM2のポリマーを参照)。Ref2からのより柔らかいポリマーマトリックスは、20重量%の2,6-キシリルマレイミドの添加によって、より高い荷重たわみおよびガラス転移温度の方向に著しく改善することもできる。強度と剛性の改善は、Ref2からの材料と比較してMM3のポリマーについても明らかである。概説された例は、標準的な光硬化性配合物へのマレイミド添加による改善された荷重たわみおよび安定性、強度および剛性の効果を確認し、マレイミド含有量の下限または最終的な3D部品の材料性能への寄与を構成する。
例1:二官能性マレイミド、シトラコンイミドおよびコモノマーならびにこれらのポリマーを有する硬化性樹脂(DM1~4)
【表4-1】

【表4-2】
【0069】
樹脂配合物の調製:
DM1:5.50gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、4.50gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)および40.00gのBMI樹脂混合物(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-キシリレンビスマレイミドおよび1,6-ビスマレイミド-(トリメチル)ヘキサン(2,2,4-および2,4,4-トリメチルの異性体混合物)の共融ビスマレイミド混合物)を、0.50gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0070】
DM2:5.50gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、4.50gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)、13.3gの二官能性m-キシリレンビスマレミド、10.90gの二官能性4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドおよび15.80gのジアリルコモノマー4,4’-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンを、0.50gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0071】
DM3:4.50gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、3.50gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)、10.60gの二官能性m-キシリレンビスマレミド、8.75gの二官能性4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、10.00gの二官能性シトラコンイミド1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼンおよび12.65gのジアリルコモノマー4,4’-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンを、0.50gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0072】
DM4:4.50gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、3.50gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)、10.60gの二官能性m-キシリレンビスマレミド、8.75gの二官能性4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドおよび12.65gのジアリルコモノマー4,4’-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンを、0.50gの光開始剤TPO-Lおよび10.00gの無機充填剤(BaSO)とともに均質化した。
【0073】
DM5:18gの多官能性アクリラート(トリシクロデカンジメタノールジアクリラート)、2.00gの多官能性エポキシアクリラート(1,4-ブ-タンジイルビス[オキシ(2-ヒドロキシ-3,1-プロパンジイル)]ジアクリラート)、30.00gの二官能性m-キシリレンビスマレミドを、0.50gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0074】
上記3D構造化された試料の熱的後処理は、方法Bに従って行った。
【表5】
【0075】
ビスマレイミド(BMI)ベースおよびシトラコンイミド(CI)ベースの熱硬化性成分との(メタ)アクリラートベースの光硬化性成分の組み合わせにより、大幅に向上した耐熱性を有する3D印刷された部品(DM1~5のポリマー)が得られ、これは、L-AMTから得られる3D部品の特有の特徴としての、300℃超の荷重たわみ温度THDT(B)によって裏付けられる。HDT(C)試験でのかなり高い力負荷は、DM1の高BMI含有量ポリマーについては概ね230℃、BMIベースの樹脂DM5については250℃超という150℃を超える温度を用いて高い力を加えた場合でさえ、高い耐熱性をさらに証明する。これは、芳香族基の高含有量を示すBMIを有する材料(例えば、DM5)の耐熱性が最も高いことを確認する。さらに、DM5の熱的後処理前(荷重たわみ温度<<150℃)と後(荷重たわみ温度>>250℃)を比較することによって、所望の(熱)機械的特性に到達するために熱的後処理工程が必要であることが明らかである。ガラス転移温度は、BMIベースのポリマーDM1~5については300℃を優に上回る。強度および剛性も、DM1からの3D部品について、>100MPa(曲げ強度)および>3000MPa(曲げ弾性率)という好ましい範囲にある。他のBMI材料も、好ましい範囲内の特性を示すが、曲げ強度は例外であり、これは、これらの材料のかなりの脆性挙動によって説明することができる。これにより、試験標本は、曲げ試験において早く破損する。それにもかかわらず、限られた耐熱性を有する標準的な(メタ)アクリラートベースのポリマーとは対照的に、より高温での曲げ強度は維持されると予想される。最高のBMI含有量を有するBMI材料(80重量%、DM1のポリマー)は最高の性能を示すが、試料DM2~4は、コモノマー4,4’-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンをさらに含有するので、加工性はより優れている。このことは、DM2およびDM3と比較してDM1の粘度がより高いことによっても観察することができる。DM4は、配合物中に無機充填剤が存在するために、より高い粘度を示す。
例2:オリゴマーマレイミドおよびそのポリマーを有する硬化性樹脂OM1
【表6】
【0076】
樹脂配合物の調製:
OM1:5.00gの多官能性アクリラートBomar 741-XS、4.00gの多官能性メタクリラート(トリシクロデカンジメタノールジメタクリラート)、11.95gの二官能性m-キシリレンビスマレミド、9.85gの二官能性4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、5.00gのオリゴマーBMI樹脂(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドおよび4,4’-メチレンジアニリンからのコポリマー)および14.20gのジアリルコモノマー4,4’-ビス(o-プロペニルフェノキシ)ベンゾフェノンを、0.50gの光開始剤TPO-Lとともに均質化した。
【0077】
上記3D構造化された試料の熱的後処理は、方法Bに従って行った。
【表7】
【0078】
20重量%未満の光硬化性(メタ)アクリラート成分、概ね30重量%のアリルベースのコモノマー、およびさらにBMI-コポリマー(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドと4,4’-メチレンジアニリンからのコポリマー、10重量%)を含有するBMIベースの樹脂を評価した。上記試験されたDMと比較して、粘度が増加されている。しかしながら、90℃付近の温度で加工性に達し、3D部品が首尾よく製造された。観測された荷重たわみ温度(HDT(C)については127℃)および290℃を超えるガラス転移温度は、他のBMI例を下回っているが、3D構造化されたBMI材料の顕著な性能をなおさらに裏付ける。BMIコポリマーの使用が、熱収縮、ゲル含有量および部品のひび割れにおいて有益性をもたらすことが当業者には明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1図1は、3D印刷過程によって本発明による硬化性組成物を硬化させるために使用される高温付加製造装置の模式的構成を示す。
図2図2は、第1の光硬化工程およびその後の熱誘起硬化工程(すなわち、熱的後処理)を介したネットワーク形成の図解例を表す。
図3図3は、配合物DM1から印刷された3D部品(錐体フィルター、後処理された;ファンダクト、緑色の部分)を示す。
図4図4は、様々な温度での比較例1ならびに例1および2による硬化性配合物の粘度測定から取得されたデータを示す。
図5図5は、比較例1ならびに例1および2に従って、印刷され、後硬化されたポリマーのDMA測定(貯蔵弾性率G’)から取得されたデータを示す。
【0080】
図1において、参照番号1は、材料層11がその上に配置されている材料支持体を示している。材料支持体1から空間を隔てて、構築プラットフォーム8が配置されており、これは、z方向に高さ調節可能であり、軸4の周りに傾斜可能に取り付けられている。構築プラットフォーム8と材料支持体1の間に、いくつかの材料層11がすでに構築されている。材料支持体1は、z方向に垂直なx方向に沿って並進的に移動可能である。
【0081】
さらに、第1のリコーターブレード5および第2のリコーターブレード6を備える材料導入装置3が設けられている。第1のリコーターブレード5は、リコーターモーター10によってz方向に高さ調節可能であり、第2のリコーターブレード6は、第2のリコーターブレード6をz方向に材料支持体1と隣接して保持するばね7を有する。2つのリコーターブレード5および6の間に、材料リザーバー2が形成されており、コンベヤー9によって、これに本発明の樹脂組成物を供給することができる。
【0082】
図1に示されている方法の段階では、材料支持体1は第2の位置にある。本発明の樹脂組成物の新しい材料層11が材料層11によって形成されることができ、材料支持体1を通って下から、図示されていない放射線源によって材料支持体1上で選択的に照射され、これにより構造化および固化されるように、構築プラットフォーム8は材料支持体1の方向に下げられる。材料層11は、第1のリコーターブレード5によって、第2の位置においける材料支持体1の移動の間に塗布される。
図1
図2
図3
図4
図5