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特許7513599二酸化炭素ニュートラルかつ生分解性ポリマーの生成方法及びその生成された包装製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素ニュートラルかつ生分解性ポリマーの生成方法及びその生成された包装製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20240702BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240702BHJP
   B29C 48/00 20190101ALI20240702BHJP
   B29C 49/00 20060101ALI20240702BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20240702BHJP
   B65D 1/12 20060101ALI20240702BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20240702BHJP
   D01F 6/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
C08L23/06
B29C45/00
B29C48/00
B29C49/00
B65D1/02 100
B65D1/12 BRQ
C08J5/18 CES
C08K5/00
C08L101/16
D01F6/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021518792
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 DK2019050294
(87)【国際公開番号】W WO2020069711
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】PA201800669
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】521136297
【氏名又は名称】エコ パッケージング エイピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベドチェール - ハンセン、マッズ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-006923(JP,A)
【文献】特表2018-525457(JP,A)
【文献】Polyethylene biodegradation by a developed Penicillium-Bacillus biofilm,CURRENT SCIENCE,VOL. 90, NO. 1,2006年,P.20-21
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/06
B29C 45/00
B29C 48/00
B29C 49/00
B65D 1/02
B65D 1/12
C08J 5/18
C08K 5/00
C08L 101/16
D01F 6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程からなる、複合ポリマー(PE-真菌-細菌混合物)材料を製造する方法:
(a)二酸化炭素ニュートラルな、サトウキビエタノールから作られるポリエチレン材料を提供すること、
(b)生分解性の添加剤を提供すること、及び
(c)工程(a)の二酸化炭素ニュートラルなポリエチレン材料を工程(b)の生分解性の添加剤と配合すること、
- 工程(a)の二酸化炭素ニュートラルなポリエチレン材料と工程(b)の生分解性の添加剤の配合比は90~98重量%と10~2重量%であり
- 量の総和は100重量%であり、さらに、
工程(b)の生分解性の添加剤は、天然において生じる生物(organism)の成長のための、ペニシリウム-バチルス(Penicillium-Bacillus)の真菌-細菌混合物を含む有機混合物であり、前記ポリエチレン上のバイオフィルムの製造を可能にするものであり、酵素的分解を行う(effect)酵素及び酸も創り出し、該酵素はポリエチレンの二酸化炭素、水及びバイオマスへのいわゆる好気性分解による分解をもたらし、及び/又はポリエチレンの二酸化炭素、メタン及びバイオマスへのいわゆる嫌気性分解による分解をもたらす酵素である、方法。
【請求項2】
配合比が95~97重量%から5~3重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の二酸化炭素ニュートラルなポリエチレン材料及び工程(b)の生分解性の添加剤が、粒状の形態で提供される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)が、押出、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形、回転成形、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリマー加工段階によって行われる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(c)が、押出のみによって行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の方法により製造される複合ポリマー(PE-真菌-細菌混合物)材料。
【請求項7】
請求項6に記載の複合ポリマー(PE-真菌-細菌混合物)材料から製造される包装体。
【請求項8】
包装が、ボトル、ポット、缶、又はキャップのいずれかである、請求項7に記載の包装。
【請求項9】
複合ポリマー(PE-真菌-細菌混合物)材料が、包装体の重量の少なくとも98%を占める、請求項7又は8に記載の包装体。
【請求項10】
少なくとも90%の重量減少を、180日間にわたる好気性環境において、ISO 14855による測定において有し、及び少なくとも45%の重量減少の生分解率を、27日間にわたる嫌気性環境において、ISO 15985による測定において有する、請求項7~9のいずれかに記載の包装体。
【請求項11】
健康用製品及び医薬品の保管のための、請求項7~10のいずれかに記載の包装体の使用。
【請求項12】
以下の群から選択される物品の生成における、請求項6に記載の複合ポリマー(PE-真菌-細菌混合物)材料の使用:袋状物品、フィルム、膜、パイプ、繊維、玩具、ピクニック用品、台所用品、断熱材、及び燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二酸化炭素ニュートラルかつ完全生分解性であるポリマー材料、特にポリエチレンに関係する。本発明はまた、このポリマー材料から作製されたボトル、ポット、又は缶などの包装体にも関係する。本発明はまた、健康及び医薬品の保管のための包装体の使用にも関する。より詳細には、本発明は、サトウキビエタノールから作製されたポリエチレンと、真菌-細菌混合物を含む有機混合物の形態の生分解性添加剤とを配合することを含む方法から得られる、二酸化炭素ニュートラルかつ完全生分解性ポリマー材料を生成するための方法に関係する。代替として、サトウキビエタノールから作製されたポリエチレンの代わりに、生物学的供給源、すなわち石油化学的供給源ではないポリプロピレン及びポリスチレンから選択される別のポリマー材料が使用される。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、通常化石燃料から合成的に生成されるポリマー系材料である。そのようなプラスチックから作製された容器、特に缶、ボトル、及びそれらのキャップなどの包装製品は、通常450年以上をかけて自然に分解され、そのような分解は、実際にはプラスチックのマイクロプラスチックへの分解のみをもたらす。したがって、合成プラスチックは、完全に分解することは決してなく、むしろ、それらは、例えば海洋生物によって最終的に摂取される、ますます小さな断片に分解する。環境への悪影響は、非常に大きい:例えば、2050年までに海には魚よりも多くのプラスチックが存在すると推定されている。加えて、推定値はまた、海産食品を食べる平均的な人が毎年最大11000個のマイクロプラスチックを摂取することも示しているため、ヒトは、既に高度に曝露されている。プラスチックのリサイクルは、この問題の一部を軽減し得るが、現在、世界のプラスチックの9%しかリサイクルされておらず、すべてのプラスチックが実際にリサイクルに好適なわけではなく、したがって再利用可能ではないため、決して実行可能な解決策ではない。
【0003】
BRP1001309Aは、酵素触媒作用によって生分解性ポリエステルを得る方法、及びそのような生分解性ポリエステルの使用を開示している。
【0004】
米国特許出願公開第2006039980号は、酵素触媒を使用して生分解性ポリマーを調製する方法及びその方法によって調製された生分解性ポリマーを開示している。
【0005】
ES 2014344は、外気中で分解性であり、アミド及びその誘導体、糖、ならびに小麦粉などの天然ポリマーの負荷又は電荷を組み込むことによって、同時に光分解性かつ生分解性であり、それによって微生物攻撃に対するポリマーの傾向を高めることができるエチレン性ポリマーを開示している。
【0006】
国際公開第2008055240号は、ポリマー材料と物理的に配合して少なくとも部分的に生分解性生成物を創出する添加材料を開示している。添加剤は、フラノン、グルタル酸、ヘキサデカン酸、ポリカプロラクトンポリマー、ポリ(乳酸)酸、ポリ(グリコール酸)、及びポリ(乳酸_co_グリコール酸)、ならびに官能性膨潤剤を含み得る。
【0007】
国際公開第2007/027163号は、包装体又は非包装用途などのすべての工業用途に好適な化学的分解性かつ/又は生分解性の二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムを開示しており、このフィルムは、第1の工程において熱及びUVの組み合わせによって分解性を促進し、第2の工程において土壌中に天然に存在する微生物によって吸収を促進する薬剤の添加によって生分解性にされる。BOPPフィルムは、層(複数可)が分解性マスターバッチ又は化合物を含むことを特徴とし、これは、好ましくは、オクタノアート、アセタート、ステララート、オレアート、ナフテン、リノレアート、タラートなどの配位子である。
【0008】
米国特許出願公開第2016/0333147号は、押出、乾燥、及び射出成形によってポリマー/生物学的実体合金を調製するための方法を開示しており、生物学的実体は、ポリマーを分解する酵素又は微生物であり得る。ポリマー/酵素合金の具体的な実施形態は、ポリカプロラクトン(CAPA)/リパーゼであり、ポリマー/微生物合金の具体的な実施形態は、ポリ乳酸(PLA)/細菌、より具体的にはポリ乳酸(PLA)/バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)である。
【0009】
また、合成ベースポリマー、すなわち化石材料から生成されたポリエチレン及びポリスチレンなどの化石燃料から調製された合成ベースポリマーと、酵素触媒作用によってそのようなベースポリマー、すなわち従来のプラスチックの生分解性を著しく促進する有機化合物とを組み合わせることによって生分解性プラスチックを生成することも知られている。例えば、酵素反応によるポリエチレン表面のその後の分解を可能にする、合成ポリエチレン材料上のペニシリウム・バチルス(Penicillium-Bacillus)バイオフィルムの提供による合成ポリエチレンの生分解性は、Gamini SenevirateらによってCurrent science 90(1):20-21・2006年1月に発表されている。
【0010】
先行技術は、ポリマーが完全生分解性であるだけでなく、二酸化炭素ニュートラルであり、100%リサイクル可能であり、かつ食品安全性及び健康規制に準拠している、ポリマーを生成するための方法の提供については記載していない。
【0011】
先行技術はまた、方法が生分解性添加剤と組み合わせたサトウキビエタノールから作製されたポリエチレンの使用を含み、添加剤が真菌-細菌混合物を含む有機混合物である、ポリマー材料を生成するための方法についても記載していない。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、二酸化炭素ニュートラルかつ完全生分解性であるプラスチック材料、すなわちポリマー材料を生成するための方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、100%リサイクル可能であり、したがって再利用可能であるポリマー材料を生成するための方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、ポリマー材料及びポリマーから製造された製品、特に合成系ポリマーから作製された容器の食品安全性及び健康規制にも適合する容器などの包装体を生成するための方法を提供することである。
【0015】
これら及び他の目的は、本発明によって解決される。
【0016】
したがって、
(a)サトウキビエタノールから作製されたポリエチレンの形態の二酸化炭素ニュートラルであるポリマー材料を提供する工程と、
(b)生分解性添加剤を提供する工程と、
(c)工程(a)のポリマー材料と工程(b)の生分解性添加剤とを配合する工程と、
を含み、
工程(a)のポリマー材料対工程(b)の生分解性添加剤の配合比は、90~98から10~2重量%、好ましくは90~97から10~3重量%であり、量の合計は、最大100重量%であり、
工程(b)の生分解性添加剤は、好ましくはポリエチレン上のバイオフィルムとして真菌-細菌混合物を含み、かつ酵素触媒作用をもたらすための酵素及び酸も創出する天然に存在する生物の成長のための有機混合物である、
ポリマー材料を生成するための方法が提供される。
【0017】
したがって、ベースポリマー材料、すなわち工程(a)のポリマー材料は、二酸化炭素ニュートラルであり、具体的にはサトウキビエタノールから作製されたポリエチレンであるように選択される。
【0018】
二酸化炭素ニュートラルとは、そのようなポリマー材料の生成における二酸化炭素の正味の生成が、ゼロ又は負であることを意味する。
【0019】
通常、配合中の工程(b)の生分解性材料の含有量が比較的高いと、合成ポリマー、特に化石燃料から作製されたポリエチレン、又は工程(a)のポリマー材料中で保存するのに望ましい特徴又は特性が劣化するという考えがある。本発明によれば、配合中の材料(b)の量は、2~10重量%、好ましくは3~10重量%である。これらの範囲は、比較的高い濃度を表すが、驚くべきことに、そのような高濃度の材料(b)であっても、ポリマー材料及びそれから得られる製品において必要とされる特性は、食品安全規制の準拠を含めて保存され、通常、合成系ポリマーから作製された製品にのみ存在することが見出された。
【0020】
成長中に二酸化炭素を消費するサトウキビに由来するため、ポリエチレンは、CO中性である。さらに、工程(a)のポリエチレン材料を工程(b)の生分解性添加剤と上記の配合比(90~97から10~3重量%)で組み合わせることによって、完全生分解性ポリマー材料、特にここでは完全生分解性ポリエチレンの生成を可能にすることができるだけでなく、ベースポリマーの元の特性を保持するポリマー材料、すなわちサトウキビエタノールから作製されたポリエチレンの生成も可能にすることが見出された。したがって、得られたポリマー材料は、CO中性であり、完全生分解性であり、かつ少なくとも100%リサイクル可能でもあるポリマーである。生分解性添加剤と、非合成であり、かつCO中性であってもよい他のベースポリマー、例えばデンプン及びタンパク質に基づくベースポリマーとの相互作用は、100%リサイクル可能なポリエチレン材料又は生分解性ポリマーをもたらさない。
【0021】
このようにして得られた本発明の方法によるポリマー材料はまた、完全分解性ポリエチレン(PE)材料である。
【0022】
「完全分解性」とは、本発明によるポリエチレン材料が、好気性環境で1~10年以内に90%以上の重量減少によって生分解できることを意味する。これと比較して、合成ポリエチレンは、同じ好気性環境で0.2%のみを生分解するのに通常10年かかる、すなわち10年以内に0.2%の重量減少である。加えて、本発明によるポリエチレン材料は、32年で部分的にしか分解されない合成ポリエチレンと比較して、27日間で約47%の重量減少によって嫌気性環境(埋立地)で生分解することができる。さらに、本発明によるポリエチレン材料は、廃水中で63日間で約24%生分解することができるが、合成ポリエチレンは、12年で劣化又は分解の兆候を示さない。また、海水中では、本発明によるポリエチレンは、42年で約24%生分解する(合成ポリエチレンについて利用可能なデータはない)。
【0023】
得られたポリマー材料はまた、複合ポリマー材料、すなわち複合ポリエチレン(PE-及び真菌-細菌-混合物)と見なされ得る。
【0024】
好ましくは、工程(a)のポリエチレンポリマーは、商品名:I’m green(商標)PEで公的に入手可能ないわゆるグリーンポリエチレンである。
【0025】
工程(b)の生分解性添加剤は、好ましくは、工程(a)のポリマー材料、すなわちサトウキビエタノールから作製され、かつ酵素触媒作用をもたらすための酵素及び酸も創出するポリエチレン上のバイオフィルムとして、好ましくは真菌-細菌混合物を含む天然に存在する生物の成長のための有機混合物である。酵素触媒作用は、いわゆる好気性分解ではポリマー材料、すなわちポリエチレンを二酸化炭素、水、及びバイオマスに分解し、いわゆる嫌気性分解では、酵素触媒作用は、ポリエチレンを二酸化炭素、メタン、及びバイオマスに分解する。
【0026】
別の特定の実施形態では、真菌-細菌混合物は、ペニシリウム・バチルス(Penicillium-Bacillus)である。この微生物は、工程(a)のポリエチレン材料の生分解に特に好適なバイオフィルムの創出を可能にする。ペニシリウム・フレクタンタンス(Penicillium frequentans)の形態の真菌は、ベースポリエチレン上に菌糸体のネットワークの形成を提供し、次いでこれは、細菌バチルス・マイコイド(Bacillus mycoides)によって定着される。次いで、微生物は、ベースポリマー材料、すなわち工程(a)のポリマー材料、すなわちポリエチレンを炭素源として使用する。
【0027】
好ましくは、生分解性添加剤は、商品名POLY-BI(登録商標)又はPOLYDEGRADE(商標)で公的に入手可能な有機混合物である。
【0028】
別の実施形態では、配合比は、95~97から5~3重量%である。材料(b)の濃度が低すぎると、バイオフィルムの形成を得ることが困難になるため、ポリエチレン材料全体にわたって生分解方法を維持することもより困難になる。材料(b)の濃度が高すぎると、ポリエチレンの本来の特性、特に食品及び健康安全規制の準拠が損なわれる可能性がある。上記の特定の配合比では、これらの対向物の最良のトレードオフが得られる。
【0029】
実施形態では、工程(a)のポリエチレン材料及び工程(b)の生分解性添加剤は、粒状形態で提供される。これにより、標準的なポリマー加工によるそのような顆粒の直接加工が可能になる。顆粒の適切な粒径の選択は、ポリマー加工の当業者のすぐ手の届く範囲内である。同様に、適正な温度の選択は、ポリマー加工の当業者のすぐ手の届く範囲内である。典型的には、温度は、ポリエチレンの融点付近であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)の場合は105~115℃である。
【0030】
実施形態では、工程(c)は、押出成形、射出成形及びブロー成形などの成形、カレンダー成形、回転成形、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリマー加工段階によって実施される。押出は、このポリマー加工技術が、押出機出口に向かってバレルの長さ方向に沿ってスクリューによって搬送される際に、ホッパーに供給されている混合物を押出機のバレルに徐々に溶融することによって、工程(a)及び(b)の材料の顆粒の適正な混合を可能にするので、特に有利である。溶融は、バレル内の回転スクリュー及びヒータ要素の機械的エネルギーに起因する。次いで、溶融した材料を冷却することによって、完全生分解性ポリマー材料を得る。したがって、特定の実施形態では、工程(c)は、押出成形のみによって実施される。
【0031】
本発明はまた、上記の実施形態のいずれかのポリマー材料から製造された包装体も包含する。好ましくは、包装体は、ボトル、ポット、缶、キャップ、又は蓋のいずれかである。合成ポリマー、特に合成ポリエチレンを使用する場合に関して、包装製品を製造するための標準的なポリマー加工技術を変更する必要はなく、したがって合成ポリマーの使用から本発明の得られたポリマーへの移行が完全にシームレスで簡単になる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「包装体」という用語は、ボトル、ポット、缶、キャップ、又は蓋の形態の容器又はレセプタクルなどの何かを封入、収容、又は覆う、又は閉じるために使用される材料を意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「キャップ」という用語は、ボトル又はポット用の保護蓋などの容器用の保護蓋を意味する。
【0034】
「キャップ」及び「蓋」という用語は、本特許出願を通して互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「缶」という用語は、使用までの保存のために製品を密封し得る容器又はレセプタクルを意味する。
【0036】
工程(a)のポリエチレンは、好適には、高密度ポリエチレン(HDPE)又は低密度ポリエチレン(LDPE)の形態である。HDPEは、ボトルの製造に特に好適であり、LDPEは、キャップ/蓋、例えばボトルに使用されるキャップの製造に特に好適である。
【0037】
別の実施形態では、包装体ポリマー材料は、包装体の重量の少なくとも98%、好ましくは包装体の重量の少なくとも99%を占める。したがって、最大2重量%、好ましくは最大1重量%の他の添加剤は、ボトル、ポット、缶、又はキャップ/蓋に最終的な所望の外観を提供するために、上記の完全生分解性材料組成物、例えば顔料に添加され得る。
【0038】
本発明による包装体は、ISO 14855によって測定した際に好気性環境における180日間にわたる少なくとも90%の重量減少、及びISO 15985によって測定した際に嫌気性環境(埋立地)における27日間にわたる少なくとも45%の重量減少の生分解率を有する。これと比較して、合成ポリエチレン材料について好気性環境では10年で0.2%未満の重量減少であり、嫌気性環境では32年で部分的にしか分解されない。加えて、本発明による包装体は、合成ポリエチレンについて12年で劣化の兆候がないのと比較して、廃水中で63日間で約24%分解する。また、海水中では、本発明による包装体は、42日間で約24%分解する。
【0039】
本発明は、健康及び医薬品の保管のための上記実施形態のいずれかによる包装体の使用も包含する。合成系ポリマーから作製された容器又は包装体として食品安全性及び健康規制に準拠することができる包装材料の驚くべき効果のために、健康及び医薬品の保管のための使用も現在可能である。好適には、そのような製品は、カプセル、錠剤、丸剤、又は粉末の形態であり、したがって、本発明はまた、医薬及び健康産業が、合成ポリマー、特に合成ポリエチレンに基づく現行の包装体の使用に関連する環境上の懸念を著しく低減することも可能にする。
【0040】
本発明によれば、倉庫もしくは棚で保管した場合、又は熱及び太陽光に曝露された場合に包装体の分解が起こらない。分解、より具体的には生分解は、包装体が生物学的に活性な生態系を示す環境に曝露された場合にのみ起こる。
【0041】
本発明はまた、袋状物品、フィルム、膜、パイプ、繊維、玩具、ピクニック用品、台所用品、断熱材、及び燃料タンクの群から選択される物品の生成における上記の実施形態のいずれかに従って生成されたポリマー材料の使用も包含する。
【0042】
本発明はまた、工程(a)のポリマー材料が生物学的供給源、すなわち石油化学的供給源から作製されず、したがって好ましくは二酸化炭素ニュートラルでもあり、下記のポイント13~24でさらに記載されるように、ポリプロピレン及びポリスチレンから選択される方法も包含する。
【0043】
ここで、本発明を以下の例によってさらに説明する。
サトウキビエタノール(材料(a))から作製され、商品名I’m green(商標)PE又はグリーンポリエチレンで公的に入手可能であり、かつ粒状形態で提供される97(97)重量部の高密度ポリエチレン(HDPE)を、商品名POLY-BI(登録商標)又はPOLYDEGRADE(商標)で公的に入手可能な有機混合物の顆粒の形態の3(3)重量部の生分解性添加剤(材料(b))と共に押出機のホッパーに供給した。押出方法は、任意の合成ポリマーに適用されるのと同じ標準方法に従って実施した。押出方法は、2つの材料(a)及び(b)の混合及び溶融を提供し、したがって、押出に通常使用されるいかなる工程又はパラメータも変更する必要なく、ボトル、ポット、又は缶の製造に容易に使用されるポリエチレン材料で得られる。
【0044】
得られたポリエチレン材料及びそれから製造されたボトルを、いくつかの生分解性試験に供した。ISO 14855に従った好気性環境下での生分解性試験において、得られたポリエチレン材料は、180日間にわたって少なくとも90%の重量減少、より具体的には180日間で93%の生分解を示す。これは、10年の期間で0.2%未満の重量減少を示すと報告されている合成ポリエチレンに関して明らかに大きな改善である。ISO 15985に従って嫌気性条件下で測定した場合、重量減少は、27日間で少なくとも45%の重量減少であるが、合成ポリエチレンは、32年の期間で部分的にしか分解しなかった。次いで、得られたポリエチレン材料をHDPEボトルにさらに製造した。ISO 14853に従って水系(廃水)において嫌気性条件下で測定した場合、重量減少は、63日間で約25%であるが、合成ポリエチレンは、12年の期間にわたって劣化の兆候を示さない。海洋環境(海水)において好気条件下で測定した場合、重量減少は、42日間で約24%である。これらを、合成ポリエチレンから作製された包装製品に沿って、食品及び健康規制の準拠についてさらに試験し、それぞれの試験すべてに合格した。
【0045】
ISO 14855に従った好気性環境下での生分解性試験を、生物源、すなわち石油化学源ではないものから作製されたポリプロピレン(PP)及びポリスチレン(PS)に適用する場合、それらは、180日間でそれぞれ約82%及び45%生分解する。
【0046】
本発明は、以下のポイントを特徴とする:
【0047】
1.以下の工程を含む、ポリマー材料を生成するための方法:
(a)サトウキビエタノールから作製されたポリエチレンの形態の二酸化炭素ニュートラルであるポリマー材料を提供する工程、
(b)生分解性添加剤を提供する工程、
(c)工程(a)のポリマー材料と工程(b)の生分解性添加剤とを配合する工程、
工程(a)のポリマー材料対工程(b)の生分解性添加剤の配合比は、90~98から10~2重量%、好ましくは90~97から10~3重量%であり、量の合計は、最大100重量%であり、
工程(b)の生分解性添加剤は、好ましくはポリエチレン上のバイオフィルムとして真菌-細菌混合物を含み、かつ酵素触媒作用をもたらすための酵素及び酸も創出する天然に存在する生物の成長のための有機混合物である。
【0048】
2.真菌-細菌混合物が、ペニシリウム・バチルス(Penicillium-Bacillus)である、ポイント1に従う方法。
【0049】
3.配合比が、95~97から5~3重量%である、ポイント1又は2に従う方法。
【0050】
4.工程(a)のポリマー材料及び工程(b)の生分解性添加剤が、粒状形態で提供される、ポイント1~3のいずれかに従う方法。
【0051】
5.工程(c)が、押出、射出成形及びブロー成形などの成形、カレンダー成形、回転成形、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリマー加工段階によって実施される、ポイント1~4のいずれかに従う方法。
【0052】
6.工程(c)が、押出のみによって実施される、ポイント4及び5に従う方法。
【0053】
7.ポイント1~6のいずれかに従って生成されたポリマー材料から製造された包装体。
【0054】
8.包装体が、ボトル、ポット、缶、又はキャップのいずれかである、ポイント7に従う包装体。
【0055】
9.ポリマー材料が、包装体の重量の少なくとも98%、好ましくは包装体の重量の少なくとも99%を占める、ポイント7~8のいずれかに従う包装体。
【0056】
10.ISO 14855によって測定した際に好気性環境における180日間にわたる少なくとも90%の重量減少及びISO 15985によって測定した際に嫌気性環境における27日間にわたる少なくとも45%の重量減少の生分解率を有する、ポイント7~9のいずれかに従う包装体。
【0057】
11.健康及び医薬品の保管のための、ポイント7~10のいずれかに従う包装体の使用。
【0058】
12.袋状物品、フィルム、膜、パイプ、繊維、玩具、ピクニック用品、台所用品、断熱材、及び燃料タンクの群から選択される物品の生成における、ポイント1~6のいずれかに従う生成されたポリマー材料の使用。
【0059】
13.(a)ポリプロピレン及びポリスチレンから選択される生物学的供給源、すなわち石油化学的供給源から作製されないポリマー材料を提供する工程と、
(b)生分解性添加剤を提供する工程と、
(c)工程(a)のポリマー材料と工程(b)の生分解性添加剤とを配合する工程と、
を含み、
工程(a)のポリマー材料対工程(b)の生分解性添加剤の配合比は、90~98から10~2重量%、好ましくは90~97から10~3重量%であり、量の合計は、最大100重量%であり、
工程(b)の生分解性添加剤は、好ましくはポリエチレン上のバイオフィルムとして真菌-細菌混合物を含み、かつ酵素触媒作用をもたらすための酵素及び酸も創出する天然に存在する生物の成長のための有機混合物である、
ポリマー材料を生成するための方法。
【0060】
14.真菌-細菌混合物が、ペニシリウム・バチルス(Penicillium-Bacillus)である、ポイント13に従う方法。
【0061】
15.配合比が、95~97から5~3重量%である、ポイント13~14のいずれかに従う方法。
【0062】
16.工程(a)のポリマー材料及び工程(b)の生分解性添加剤が、粒状形態で提供される、ポイント13~15のいずれかに従う方法。
【0063】
17.工程(c)が、押出、射出成形及びブロー成形などの成形、カレンダー成形、回転成形、ならびにそれらの組み合わせから選択されるポリマー加工段階によって実施される、ポイント13~16のいずれかに従う方法。
【0064】
18.工程(c)が、押出のみによって実施される、ポイント16及び17に従う方法。
【0065】
19.ポイント13~18のいずれかに従って生成されたポリマー材料から製造された包装体。
【0066】
20.包装体が、ボトル、ポット、缶、又はキャップのいずれか一項である、ポイント19に従う包装体。
【0067】
21.ポリマー材料が、包装体の重量の少なくとも98%、好ましくは包装体の重量の少なくとも99%を占める、ポイント19又は20に従う包装体。
【0068】
22.ISO 14855によって測定した際に好気性環境における180日間にわたる少なくとも90%の重量減少及びISO 15985によって測定した際に嫌気性環境における27日間にわたる少なくとも45%の重量減少の生分解率を有する、ポイント19~21のいずれかに従う包装体。
【0069】
23.健康及び医薬品の保管のための、ポイント19~22のいずれかに従う包装体の使用。
【0070】
24.i)工程(a)において、ポリマー材料がポリプロピレンである場合:ビーカー、試験管、及びフラスコなどのプラスチック実験室用品、ならびに自動車産業用のプラスチック部品、ii)工程(a)において、ポリマー材料がポリスチレンである場合:断熱材、CDケース、及び器具ハウジングの群から選択される物品の生成におけるポイント13~18のいずれかに従って生成されたポリマー材料の使用。