(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240702BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240702BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20240702BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H01L29/80 L
H01L29/44 L
H01L29/44 P
H01L29/44 S
H01L29/48 D
H01L29/50 J
(21)【出願番号】P 2021519279
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010866
(87)【国際公開番号】W WO2020230434
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019090147
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 浩隆
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-173151(JP,A)
【文献】特開2018-157177(JP,A)
【文献】特開2015-207610(JP,A)
【文献】特開2014-110393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 21/337
H01L 29/41
H01L 29/47
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、
前記第2窒化物半導体層上に配置され、少なくとも一部にリッジ部を有し、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層と、
前記半導体ゲート層の少なくとも前記リッジ部上に形成されたゲート電極と、
前記第2窒化物半導体層上に配置されたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体ゲート層内のホールを引き抜くために前記半導体ゲート層上に形成され、前記ソース電極に電気的に接続されたホール引抜電極とを含
み、
前記ソース電極は、前記リッジ部に平行なソース主電極部を有し、
前記ドレイン電極は、前記リッジ部を挟んで、前記ソース主電極部と対向するように配置されており、
前記半導体ゲート層は、前記ソース主電極部と前記ドレイン電極とが対向していない領域に形成された延長部を有しており、
前記延長部の表面における前記ゲート電極が形成されていない領域に、前記ホール引抜電極が形成されている、窒化物半導体装置。
【請求項2】
平面視において、前記半導体ゲート層が、前記ソース主電極部を囲むように配置されており、
前記半導体ゲート層は、前記ソース主電極部の両側それぞれに配置された一対の前記リッジ部と、これらのリッジ部の対応する端部どうしを連結する2つのリッジ連結部とを有しており、
前記ドレイン電極は、前記一対のリッジ部の一方のリッジ部を挟んで前記ソース主電極部と対向しており、
前記ホール引抜電極は、前記2つのリッジ連結部のうちの少なくとも一方のリッジ連結部上に形成されている、請求項
1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極は、前記一対のリッジ部上にそれぞれ形成された一対のゲート主電極部と、前記リッジ連結部上に形成され、前記一対のゲート主電極部の対応する端部どうしを連結する2つのベース部とを有しており、
前記2つのベース部のうちの少なくとも一方のベース部には、前記ベース部が形成されていない除去領域が形成されており、
前記除去領域内において、前記リッジ連結部の表面上に、前記ホール引抜電極が形成されている、請求項
2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記ソース主電極部の両側に、前記ゲート主電極部および前記ドレイン電極が、前記ソース主電極部に近い方からその順に配置されている、請求項
3に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記半導体ゲート層における前記ホール引抜電極が形成されている領域の厚さが、前記リッジ部の厚さよりも薄い、請求項
1~4のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、
前記第2窒化物半導体層上に配置され、少なくとも一部にリッジ部を有し、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層と、
前記半導体ゲート層の少なくとも前記リッジ部上に形成されたゲート電極と、
前記第2窒化物半導体層上に配置されたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体ゲート層内のホールを引き抜くために前記半導体ゲート層上に形成され、前記ソース電極に電気的に接続されたホール引抜電極とを含み、
前記半導体ゲート層における前記ホール引抜電極が形成されている領域の厚さが、前記リッジ部の厚さよりも薄
い、窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記除去領域直下の前記リッジ連結部は、厚さが前記リッジ部の厚さよりも薄い薄膜領域を有しており、前記薄膜領域の表面に前記ホール引抜電極が形成されている、請求項
3に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記ホール引抜電極と前記ゲート電極とが、異なる材料から構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層上に形成され、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、
前記第2窒化物半導体層上に配置され、少なくとも一部にリッジ部を有し、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層と、
前記半導体ゲート層の少なくとも前記リッジ部上に形成されたゲート電極と、
前記第2窒化物半導体層上に配置されたソース電極およびドレイン電極と、
前記半導体ゲート層内のホールを引き抜くために前記半導体ゲート層上に形成され、前記ソース電極に電気的に接続されたホール引抜電極とを含み、
前記ホール引抜電極と前記ゲート電極とが、異なる材料から構成されている、窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記ゲート電極は、前記半導体ゲート層に対して第1ショットキー接触しており、
前記ホール引抜電極は、前記半導体ゲート層に対して第2ショットキー接触しており、
前記第1ショットキー接触は、前記第2ショットキー接触よりも、ホールに対するバリアハイトが高い、請求項
8または9に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記ゲート電極は、前記半導体ゲート層に対してショットキー接触しており、
前記ホール引抜電極は、前記半導体ゲート層に対してオーミック接触している、請求項
8または9に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記ホール引抜電極と前記半導体ゲート層との間に、第3窒化物半導体層が形成されている、請求項
1~11のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記第1窒化物半導体層がGaN層からなり、
前記第2窒化物半導体層がAlxGa(1-x)N(0<x<1)層からなり、
前記半導体ゲート層がp型GaN層からなる、請求項
1~12のいずれか一項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
基板上に、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層材料膜とを、その順に形成する工程と、
前記半導体ゲート層材料膜上に、ゲート電極およびホール引抜電極の材料膜である電極膜を形成する工程と、
前記電極膜および前記半導体ゲート層材料膜をエッチングによってパターニングすることにより、リッジ形状のリッジ部と前記リッジ部から延びた延長部を有する半導体ゲート層と、前記半導体ゲート層上に形成された電極膜を形成する工程と、
前記電極膜、前記半導体ゲート層および前記第2窒化物半導体層の露出面を覆うように第1誘電体膜を形成した後、前記第1誘電体膜における前記リッジ部を挟んで対向する位置に、前記第1誘電体膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを形成する工程と、
前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを貫通し、前記第2窒化物半導体層に接触するソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記延長部において、前記第1誘電体膜に平面視環状の第1環状開口部を形成するとともに、前記電極膜に前記
第1環状開口部に連通する平面視環状の第2環状開口部を形成することにより、前記第2環状開口部の内側の前記電極膜からなりかつ前記延長部に接触する前記ホール引抜電極と、前記第2環状開口部の外側の前記電極膜からなる前記ゲート電極を形成する工程とを含む、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項15】
基板上に、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層材料膜とを、その順に形成する工程と、
前記半導体ゲート層材料膜上に、ゲート電極の材料膜であるゲート電極膜を形成する工程と、
前記ゲート電極膜および前記半導体ゲート層材料膜をエッチングによってパターニングすることにより、リッジ形状のリッジ部と前記リッジ部から延びた延長部を有する半導体ゲート層と、前記半導体ゲート層上に形成されたゲート電極膜を形成する工程と、
前記ゲート電極膜、前記半導体ゲート層および前記第2窒化物半導体層の露出面を覆うように第1誘電体膜を形成した後、前記第1誘電体膜における前記リッジ部を挟んで対向する位置に、前記第1誘電体膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを形成する工程と、
前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを貫通し、前記第2窒化物半導体層に接触するソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、
前記延長部において、前記第1誘電体膜を厚さ方向に貫通する第1開口部を形成するとともに、前記ゲート電極膜に前記第1開口部に連通する第2開口部を形成することにより、ゲート電極を形成する工程と、
前記第2開口部の底面を覆う第2誘電体膜を形成する工程と、
前記第2誘電体膜に、前記第2誘電体膜を厚さ方向に貫通する第3開口部を形成する工程と、
前記第3開口部を覆い、前記延長部に接触するホール引抜電極を形成するホール引抜電極形成工程とを含む、窒化物半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記ホール引抜電極形成工程は、
前記延長部の表面に、前記第3開口部に連通する凹部を形成する工程と、
前記第2誘電体膜上に前記第3開口部を覆うように形成され、その一部が前記凹部内で前記延長部に接触するホール引抜電極を形成する工程とを含む、請求項
15に記載の窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、III族窒化物半導体(以下単に「窒化物半導体」という場合がある。)からなる窒化物半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
III族窒化物半導体とは、III-V族半導体においてV族元素として窒素を用いた半導体である。窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)が代表例である。一般には、AlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦x+y≦1)と表わすことができる。
【0003】
このような窒化物半導体を用いたHEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)が提案されている。このようなHEMTは、例えば、GaNからなる電子走行層と、この電子走行層上にエピタキシャル成長されたAlGaNからなる電子供給層とを含む。電子供給層に接するように一対のソース電極およびドレイン電極が形成され、それらの間にゲート電極が配置される。
【0004】
GaNとAlGaNとの格子不整合に起因する分極のために、電子走行層内において、電子走行層と電子供給層との界面から数Åだけ内方の位置に、二次元電子ガスが形成される。この二次元電子ガスをチャネルとして、ソース・ドレイン間が接続される。ゲート電極に制御電圧を印加することで、二次元電子ガスを遮断すると、ソース・ドレイン間が遮断される。ゲート電極に制御電圧を印加していない状態では、ソース・ドレイン間が導通するので、ノーマリーオン型のデバイスとなる。
【0005】
窒化物半導体を用いたデバイスは、高耐圧、高温動作、大電流密度、高速スイッチングおよび低オン抵抗といった特徴を有するため、パワーデバイスへの応用が例えば特許文献1において提案されており、現在ではこのようなコンセプトのデバイスが量産され、市場に流通している。
【0006】
特許文献1は、AlGaN電子供給層にリッジ形状のp型GaNゲート層(半導体ゲート層)を積層し、その上にゲート電極を配置し、前記p型GaNゲート層から広がる空乏層によってチャネルを消失させることで、ノーマリーオフを達成する構成を開示している。
【0007】
しかし、p型GaNゲート層を利用したノーマリーオフ型の窒化物半導体HEMTでは、p型GaNゲート層におけるAlGaN電子供給層との界面付近にホールが蓄積される価電子帯の溝が形成される。このため、特許文献1に記載の窒化物半導体HEMTでは、p型GaNゲート層にホールが注入された場合にホールが容易に抜け出すことができず、ゲート閾値が変動するおそれがある。なお、この傾向はゲート電極とpGaNゲート層の間でショットキー接合が形成されている場合に、より影響が大きい。
【0008】
この問題を解決するために、特許文献2は、AlGaN電子供給層上のp型GaNゲート層とソース電極との間に、AIN層とAlGaN層との積層膜を形成し、AIN層とAlGaN層の界面近傍に二次元ホールガスを発生させることにより、p型GaNゲート層内のホールをソース電極側に引き抜くことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2に記載の窒化物半導体HEMTでは、AlGaN電子供給層上にリッジ形状のp型GaNゲート層を形成した後に、AlGaN電子供給層上にAIN層とAlGaN層とを成長させる必要があり、結晶品質の確保が難しいという問題がある。また、再成長工程が必要になるため、コスト増加の背反が存在する。
【0011】
この発明の目的は、半導体ゲート層を形成した後に電子供給層上に結晶を成長させることなく、半導体ゲート層内のホールをソース電極側に引き抜くことができる、窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の一実施形態は、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、前記第1窒化物半導体層上に形成され、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、前記第2窒化物半導体層上に配置され、少なくとも一部にリッジ部を有し、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層と、前記半導体ゲート層の少なくとも前記リッジ部上に形成されたゲート電極と、前記第2窒化物半導体層上に配置されたソース電極およびドレイン電極と、前記半導体ゲート層内のホールを引き抜くために前記半導体ゲート層上に形成され、前記ソース電極に電気的に接続されたホール引抜電極とを含む、窒化物半導体装置を提供する。
【0013】
この構成では、半導体ゲート層を形成した後に電子供給層上に結晶を成長させることなく、半導体ゲート層内のホールをソース電極側に引き抜くことができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記ソース電極は、前記リッジ部に平行なソース主電極部を有し、前記ドレイン電極は、前記リッジ部を挟んで、前記ソース主電極部と対向するように配置されており、前記半導体ゲート層は、前記ソース主電極部と前記ドレイン電極とが対向していない領域に形成された延長部を有しており、前記延長部の表面における前記ゲート電極が形成されていない領域に、前記ホール引抜電極が形成されている。
【0015】
この発明の一実施形態では、平面視において、前記半導体ゲート層が、前記ソース主電極部を囲むように配置されており、前記半導体ゲート層は、前記ソース主電極部の両側それぞれに配置された一対の前記リッジ部と、これらのリッジ部の対応する端部どうしを連結する2つのリッジ連結部とを有しており、前記ドレイン電極は、前記一対のリッジ部の一方のリッジ部を挟んで前記ソース主電極部と対向しており、前記ホール引抜電極は、前記2つのリッジ連結部のうちの少なくとも一方のリッジ連結部上に形成されている。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記ゲート電極は、前記一対のリッジ部上にそれぞれ形成された一対のゲート主電極部と、前記リッジ連結部上に形成され、前記一対のゲート主電極部の対応する端部どうしを連結する2つのベース部とを有しており、前記2つのベース部のうちの少なくとも一方のベース部には、前記ベース部が形成されていない除去領域が形成されており、前記除去領域内において、前記リッジ連結部の表面上に、前記ホール引抜電極が形成されている。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記ソース主電極部の両側に、前記ゲート主電極部および前記ドレイン電極が、前記ソース主電極部に近い方からその順に配置されている。
【0018】
この発明の一実施形態では、前記半導体ゲート層における前記ホール引抜電極が形成されている領域の厚さが、前記リッジ部の厚さよりも薄い。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記除去領域直下の前記リッジ連結部は、厚さが前記リッジ部の厚さよりも薄い薄膜領域を有しており、前記薄膜領域の表面に前記ホール引抜電極が形成されている。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記ホール引抜電極と前記ゲート電極とが、異なる材料から構成されている。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記ゲート電極は、前記半導体ゲート層に対して第1ショットキー接触しており、前記ホール引抜電極は、前記半導体ゲート層に対して第2ショットキー接触しており、前記第1ショットキー接触は、前記第2ショットキー接触よりも、ホールに対するバリアハイトが高い。
【0022】
この発明の一実施形態では、前記ゲート電極は、前記半導体ゲート層に対してショットキー接触しており、前記ホール引抜電極は、前記半導体ゲート層に対してオーミック接触している。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記ホール引抜電極と前記半導体ゲート層との間に、第3窒化物半導体層が形成されている。
【0024】
この発明の一実施形態では、前記第1窒化物半導体層がGaN層からなり、前記第2窒化物半導体層がAlxGa(1-x)N(0<x<1)層からなり、前記半導体ゲート層がp型GaN層からなる。
【0025】
この発明の一実施形態は、基板上に、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層材料膜とを、その順に形成する工程と、前記半導体ゲート層材料膜上に、ゲート電極およびホール引抜電極の材料膜である電極膜を形成する工程と、前記電極膜および前記半導体ゲート層材料膜をエッチングによってパターニングすることにより、リッジ形状のリッジ部と前記リッジ部から延びた延長部を有する半導体ゲート層と、前記半導体ゲート層上に形成された電極膜を形成する工程と、前記電極膜、前記半導体ゲート層および前記第2窒化物半導体層の露出面を覆うように第1誘電体膜を形成した後、前記第1誘電体膜における前記リッジ部を挟んで対向する位置に、前記第1誘電体膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを形成する工程と、前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを貫通し、前記第2窒化物半導体層に接触するソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記延長部において、前記第1誘電体膜に平面視環状の第1環状開口部を形成するとともに、前記電極膜に前記開口部に連通する平面視環状の第2環状開口部を形成することにより、前記第2環状開口部の内側の前記電極膜からなりかつ前記延長部に接触する前記ホール引抜電極と、前記第2環状開口部の外側の前記電極膜からなる前記ゲート電極を形成する工程とを含む、窒化物半導体装置の製造方法を提供する。「環状」には、円環状の他、楕円環状、四角環状、三角環状等の閉曲線形状が含まれる。
【0026】
この製造方法では、半導体ゲート層を形成した後に電子供給層上に結晶を成長させることなく、半導体ゲート層内のホールをソース電極側に引き抜くことができる窒化物半導体装置を製造できる。
【0027】
この発明の一実施形態は、基板上に、電子走行層を構成する第1窒化物半導体層と、電子供給層を構成する第2窒化物半導体層と、アクセプタ型不純物を含む半導体ゲート層材料膜とを、その順に形成する工程と、前記半導体ゲート層材料膜上に、ゲート電極の材料膜であるゲート電極膜を形成する工程と、前記ゲート電極膜および前記半導体ゲート層材料膜をエッチングによってパターニングすることにより、リッジ形状のリッジ部と前記リッジ部から延びた延長部を有する半導体ゲート層と、前記半導体ゲート層上に形成されたゲート電極膜を形成する工程と、前記ゲート電極膜、前記半導体ゲート層および前記第2窒化物半導体層の露出面を覆うように第1誘電体膜を形成した後、前記第1誘電体膜における前記リッジ部を挟んで対向する位置に、前記第1誘電体膜を厚さ方向に貫通するソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを形成する工程と、前記ソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールを貫通し、前記第2窒化物半導体層に接触するソース電極およびドレイン電極を形成する工程と、前記延長部において、前記第1誘電体膜を厚さ方向に貫通する第1開口部を形成するとともに、前記ゲート電極膜に前記第1開口部に連通する第2開口部を形成することにより、ゲート電極を形成する工程と、前記第2開口部の底面を覆う第2誘電体膜を形成する工程と、前記第2誘電体膜に、前記第2誘電体膜を厚さ方向に貫通する第3開口部を形成する工程と、前記第3開口部を覆い、前記延長部に接触するホール引抜電極を形成するホール引抜電極形成工程とを含む、窒化物半導体装置の製造方法を提供する。
【0028】
この製造方法では、半導体ゲート層を形成した後に電子供給層上に結晶を成長させることなく、半導体ゲート層内のホールをソース電極側に引き抜くことができる窒化物半導体装置を製造できる。
【0029】
この発明の一実施形態では、前記ホール引抜電極形成工程は、前記延長部の表面に、前記第3開口部に連通する凹部を形成する工程と、前記第2誘電体膜上に前記第3開口部を覆うように形成され、その一部が前記凹部内で前記延長部に接触するホール引抜電極を形成する工程とを含む。
【0030】
本発明における上述の、またはさらに他の目的、特徴および効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、この発明の第1実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための平面図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿う拡大断面図である。
【
図4A】
図4Aは、
図1の窒化物半導体装置の製造工程の一例を示す断面図であって、
図2の切断面に対応した断面図である。
【
図5A】
図5Aは、
図1の窒化物半導体装置の製造工程の一例を示す断面図であって、
図3の切断面に対応した断面図である。
【
図6】
図6は、比較例に対して行ったI
G-V
GS測定実験の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、比較例に対して行ったゲート-ソース間電圧V
GSに対するドレイン電流I
Dの測定結果を示すグラフである。
【
図8】
図8は、比較例において閾値電圧が低下した理由を説明するためのエネルギー分布図である。
【
図9】
図9は、
図1の窒化物半導体装置のゲートーソース間の構造に対応した等価回路を示す回路図である。
【
図10】
図10は、この発明の第2実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための平面図である。
【
図15】
図15は、この発明の第3実施形態に係る窒化物半導体装置を説明するための平面図である。
【
図17】
図17は、第3実施形態に係る窒化物半導体装置の第1変形例を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る窒化物半導体装置の第2変形例を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第3実施形態に係る窒化物半導体装置の第3変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、この発明の第1実施形態に係る窒化物半導体装置の構成を説明するための部分平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う拡大断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う拡大断面図である。
【0033】
説明の便宜上、
図1においては、
図2および
図3に符号16で示されるパッシベーション膜は省略されている。また、説明の便宜上、
図1においては、
図2に符号3Aで示されるソース主電極部3Aを実線で表し、
図2に符号3Bで示される延長部3Bは省略されている。ただし、
図1においては、延長部3Bの輪郭を二点鎖線で示している。
【0034】
また、説明の便宜上、以下において、
図1、
図2および
図3に示した+X方向、-X方向、+Y方向および-Y方向を用いることがある。+X方向は、平面視において、窒化物半導体装置1の表面に沿う所定の方向であり、+Y方向は、窒化物半導体装置1の表面の沿う方向であって、+X方向に直交する方向である。-X方向は、+X方向とは反対の方向であり、-Y方向は、+Y方向とは反対の方向である。+X方向および-X方向を総称するときには単に「X方向」という。+Y方向および-Y方向を総称するときには単に「Y方向」という。
【0035】
窒化物半導体装置1は、半導体積層構造(窒化物半導体構造)2と、半導体積層構造2上に配置された電極メタル構造とを含む。
【0036】
電極メタル構造は、
図1に示すように、複数のソース電極3、複数のゲート電極4、複数のドレイン電極5および複数のホール引抜電極6を含む。ソース電極3およびドレイン電極5はX方向に延びている。ゲート電極4は、互いに平行にX方向に延びた一対のゲート主電極部4Aと、これらの一対のゲート主電極部4Aの対応する端部どうしをそれぞれ連結する2つのベース部4B、4Cとを含む。以下において、2つのベース部4B、4Cのうちの一方を第1ベース部4Bといい、他方を第2ベース部4Cという場合がある。
【0037】
第2ベース部4Cには、平面視円形の除去領域7が形成されている。除去領域7は、ゲート電極4が形成されていない領域である。除去領域7には、ホール引抜電極6が配置されている。ゲート電極4とホール引抜電極6との間には間隔が設けられており、これらは互いに絶縁されている。
【0038】
1つのソース電極3は、平面視において、1つのゲート電極4の一対のゲート主電極部4Aのほぼ全域を覆うように形成されている。ソース電極3は、平面視において、一対のゲート主電極部4A間の幅中央部に配置されたソース主電極部3Aと、ソース主電極部3Aの周囲の延長部3Bとからなる。この実施形態では、ソース主電極部3Aとは、平面視において、ソース電極3の全領域のうち、ソースコンタクトホール8の輪郭に囲まれた領域およびその周辺領域からなる領域をいうものとする。延長部3Bは、平面視において、ソース電極3の全領域のうち、ソース主電極部3A以外の部分をいう。延長部3Bは、一対のゲート主電極部4Aのほぼ全域を覆っている。
【0039】
1つのソース電極3の両側のそれぞれに、ドレイン電極5が配置されている。隣り合うドレイン電極5およびソース主電極部3Aは、ゲート主電極部4Aを挟んで互いに対向している。この実施形態では、ドレイン電極5の長さとソース主電極部3Aの長さはほぼ等しく、ドレイン電極5の両端のX方向位置とソース主電極部3Aの対応する端のX方向位置とは、ほぼ一致している。
【0040】
図1の例では、ソース主電極部3A(S)、ゲート主電極部4A(G)およびドレイン電極5(D)は、Y方向にDGSGDGSの順に周期的に配置されている。これにより、ソース主電極部3A(S)およびドレイン電極5(D)でゲート主電極部4A(G)を挟むことによって素子構造が構成されている。半導体積層構造2上の表面の領域は、当該素子構造を含むアクティブエリア51と、アクティブエリア51の外側のノンアクティブエリア52とからなる。ゲート電極4のベース部4Bは、ノンアクティブエリア52において、一対のゲート主電極部4Aの対応する端部どうしをそれぞれ連結している。
【0041】
半導体積層構造2は、
図2および
図3に示すように、基板11と、基板11の表面に形成されたバッファ層12と、バッファ層12上にエピタキシャル成長された第1窒化物半導体層13と、第1窒化物半導体層13上にエピタキシャル成長された第2窒化物半導体層14とを含む。
【0042】
基板11は、例えば、低抵抗のシリコン基板であってもよい。低抵抗のシリコン基板は、例えば、0.001Ωmm~0.5Ωmm(より具体的には0.01Ωmm~0.1Ωmm程度)の電気抵抗率を有したp型基板でもよい。また、基板11は、低抵抗のシリコン基板の他、低抵抗のSiC基板、低抵抗のGaN基板等であってもよい。基板11の厚さは、半導体プロセス中においては、例えば650μm程度であり、チップ化する前段階において、300μm以下程度に研削される。基板11は、ソース電極3に電気的に接続されている。
【0043】
バッファ層12は、この実施形態では、複数の窒化物半導体膜を積層した多層バッファ層から構成されている。この実施形態では、バッファ層12は、基板11の表面に接するAlN膜からなる第1バッファ層(図示略)と、この第1バッファ層の表面(基板11とは反対側の表面)に積層されたAlN/AlGaN超格子層からなる第2バッファ層(図示略)とから構成されている。第1バッファ層の膜厚は、100nm~500nm程度である。第2バッファ層の膜厚は、500nm~2μm程度である。バッファ層12は、例えば、AlGaNの単膜または複合膜から構成されていてもよい。
【0044】
第1窒化物半導体層13は、電子走行層を構成している。この実施形態では、第1窒化物半導体層13は、GaN層からなり、その厚さは0.5μm~2μm程度である。また、第1窒化物半導体層13を流れるリーク電流を抑制する目的で、表面領域以外には半絶縁性にするための不純物が導入されていてもよい。その場合、不純物の濃度は、4×1016cm-3以上であることが好ましい。また、不純物は、例えばCまたはFeである。
【0045】
第2窒化物半導体層14は、電子供給層を構成している。第2窒化物半導体層14は、第1窒化物半導体層13よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体からなっている。この実施形態では、第2窒化物半導体層14は、第1窒化物半導体層13よりもAl組成の高い窒化物半導体からなっている。窒化物半導体においては、Al組成が高いほどバンドギャップは大きくなる。この実施形態では、第2窒化物半導体層14は、Alx1Ga1-x1N層(0<x1<1)からなり、その厚さは5nm~25nm程度である。
【0046】
このように第1窒化物半導体層(電子走行層)13と第2窒化物半導体層(電子供給層)14とは、バンドギャップ(Al組成)の異なる窒化物半導体からなっており、それらの間には格子不整合が生じている。そして、第1窒化物半導体層13および第2窒化物半導体層14の自発分極と、それらの間の格子不整合に起因するピエゾ分極とによって、第1窒化物半導体層13と第2窒化物半導体層14との界面における第1窒化物半導体層13の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、第1窒化物半導体層13内には、第1窒化物半導体層13と第2窒化物半導体層14との界面に近い位置(例えば界面から数Å程度の距離)に、二次元電子ガス(2DEG)10が広がっている。
【0047】
第2窒化物半導体層14とゲート電極4(4A,4B,4C)との間には、半導体ゲート層15が介在している。半導体ゲート層15は、エピタキシャル成長によって、第2窒化物半導体層14の表面に形成されている。半導体ゲート層15は、平面視において、ゲート電極4とほぼ同じ形状を有している。具体的には、半導体ゲート層15は、互いに平行にX方向に延びた一対のリッジ部15Aと、これらの一対のリッジ部15Aの対応する端部どうしをそれぞれ連結する2つのリッジ連結部15B,15Cとを含む。以下において、2つのリッジ連結部15B,15Cのうちの一方を第1リッジ連結部15Bといい、他方を第2リッジ連結部15Cという場合がある。第2リッジ連結部15Cは、本発明の「延長部」の一例である。
【0048】
図1、
図2および
図3に示すように、半導体ゲート層15のリッジ部15A上にゲート電極4のゲート主電極部4Aが形成され、半導体ゲート層15の第1および第2リッジ連結部15B,15C上にそれぞれゲート電極4の第1および第2ベース部4B,4Cが形成されている。したがって、
図1に示すように、平面視において、半導体ゲート層15は、ゲート電極4と同様に、ソース主電極部3Aを取り囲むように形成されている。つまり、ゲート電極4および半導体ゲート層15は、それぞれ平面視で環状に形成されている。
図2に示すように、半導体ゲート層15のリッジ部15Aと、その上に形成されたゲート電極4のゲート主電極部4Aとによって、ゲート部20が構成されている。
【0049】
半導体ゲート層15は、アクセプタ型不純物がドーピングされた窒化物半導体からなる。この実施形態では、半導体ゲート層15は、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)からなっている。半導体ゲート層15の厚さは、40nm~150nmが好ましく、40nm~100nmがさらに好ましい。半導体ゲート層15に注入されるアクセプタ型不純物の濃度は、1×1019cm-3以上であることが好ましい。この実施形態では、アクセプタ型不純物は、Mg(マグネシウム)である。アクセプタ型不純物は、Zn(亜鉛)等のMg以外のアクセプタ型不純物であってもよい。半導体ゲート層15(15A)は、ゲート部20の直下の領域において、第1窒化物半導体層(電子走行層)13と第2窒化物半導体層(電子供給層)14との界面付近に生じる二次元電子ガス10を電圧印加のない定常状態において消滅させるために設けられている。
【0050】
ゲート電極4は、この実施形態では、TiNからなる。ゲート電極4の膜厚は、50nm~200nm程度である。
【0051】
図1および
図3に示すように、ゲート電極4の第2ベース部4Cには、平面視円形状の除去領域7が形成されている。半導体ゲート層15の第2リッジ連結部15Cにおける除去領域7に露出している表面上に、半導体ゲート層15内のホールを引き抜くためのホール引抜電極6が形成されている。平面視において、ホール引抜電極6とゲート電極4の第2ベース部4Cとの間には、平面視環状の環状空間部7aが形成されている。ホール引抜電極6は、この実施形態では、TiNからなる。ホール引抜電極6の膜厚は、50nm~200nm程度である。
【0052】
図2および
図3に示すように、第2窒化物半導体層14上には、ゲート電極4、ホール引抜電極6および半導体ゲート層15の露出面(環状空間部7aに臨む領域を除く)ならびに第2窒化物半導体層14の露出面(ソースおよびドレインコンタクトホール8,9に臨む領域を除く)を覆うパッシベーション膜(第1誘電体膜)16が形成されている。
【0053】
この実施形態では、パッシベーション膜16はSiN膜からなり、その厚さ50nm~200nm程度である。パッシベーション膜16は、SiN、SiO2およびSiONのいずれか1つからなる単膜またはそれらの任意の組み合わせからなる複合膜から構成されてもよい。
【0054】
パッシベーション膜16には、パッシベーション膜16を厚さ方向に貫通しかつ環状空間部7aに連通する平面視環状の環状開口部16aならびにパッシベーション膜16を厚さ方向に貫通するコンタクトホール8およびドレインコンタクトホール9が形成されている。ソースコンタクトホール8およびドレインコンタクトホール9は、ゲート部20を挟む配置で形成されている。
【0055】
ソース電極3のソース主電極部3Aは、ソースコンタクトホール8を貫通して、第2窒化物半導体層14に接触している。
図1および
図2に示すように、アクティブエリア51において、ソース電極3の延長部3Bは、ゲート部20(ゲート主電極部4A)を覆っている。ドレイン電極5は、ドレインコンタクトホール9を貫通して、第2窒化物半導体層14に接触している。なお、ソース電極3およびドレイン電極5は、二次元電子ガス10に対してオーミック接触している。
【0056】
ソース電極3およびドレイン電極5は、例えば、第2窒化物半導体層14に接する第1金属層(オーミックメタル層)と、第1金属層に積層された第2金属層(主電極メタル層)と、第2金属層に積層された第3金属層(密着層)と、第3金属層に積層された第4金属層(バリアメタル層)とからなる。第1金属層は、例えば、厚さが10nm~20nm程度のTi層である。第2金属層は、例えば、厚さが100nm~300nm程度のAlを含む層である。第3金属層は、例えば、厚さが10nm~20nm程度のTi層である。第4金属層は、例えば、厚さが10nm~50nm程度のTiN層である。
【0057】
ホール引抜電極6は、図示しない内部配線(ビアプラグ、配線膜等)を介してソース電極3に電気的に接続されている。
【0058】
この窒化物半導体装置1では、第1窒化物半導体層(電子走行層)13上にバンドギャップ(Al組成)の異なる第2窒化物半導体層(電子供給層)14が形成されてヘテロ接合が形成されている。これにより、第1窒化物半導体層13と第2窒化物半導体層14との界面付近の第1窒化物半導体層13内に二次元電子ガス10形成され、この二次元電子ガス10をチャネルとして利用したHEMTが形成されている。ゲート電極4のゲート主電極部4Aは、半導体ゲート層15のリッジ部15Aを挟んで第2窒化物半導体層14に対向している。
【0059】
ゲート主電極部4Aの下方においては、p型GaN層からなるリッジ部15Aに含まれるイオン化アクセプタによって、第1窒化物半導体層13および第2窒化物半導体層14のエネルギーレベルが引き上げられる。このため、第1窒化物半導体層13と第2窒化物半導体層14との間のヘテロ接合界面における伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも大きくなる。したがって、ゲート主電極部4A(ゲート部20)の直下では、第1窒化物半導体層13および第2窒化物半導体層14の自発分極ならびにそれらの格子不整合によるピエゾ分極に起因する二次元電子ガス10が形成されない。
【0060】
よって、ゲート電極4にバイアスを印加していないとき(ゼロバイアス時)には、二次元電子ガス10によるチャネルはゲート主電極部4Aの直下で遮断されている。こうして、ノーマリーオフ型のHEMTが実現されている。ゲート電極4に適切なオン電圧(たとえば5V)を印加すると、ゲート主電極部4Aの直下の第1窒化物半導体層13内にチャネルが誘起され、ゲート主電極部4Aの両側の二次元電子ガス10が接続される。これにより、ソース-ドレイン間が導通する。
【0061】
使用に際しては、たとえば、ソース電極3とドレイン電極5の間に、ドレイン電極5側が正となる所定の電圧(たとえば10V~500V)が印加される。その状態で、ゲート電極4に対して、ソース電極3を基準電位(0V)として、オフ電圧(0V)またはオン電圧(5V)が印加される。
【0062】
【0063】
まず、
図4Aおよび
図5Aに示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、基板11上に、バッファ層12、第1窒化物半導体層13および第2窒化物半導体層14がエピタキシャル成長される。これにより、半導体積層構造2が得られる。さらに、MOCVD法によって、第2窒化物半導体層14上に、半導体ゲート層15の材料膜であるゲート層材料膜31が形成される。
【0064】
次に、
図4Bおよび
図5Bに示すように、スパッタ法によって、ゲート層材料膜31上に、ゲート電極4およびホール引抜電極6の材料膜であるゲート・引抜電極膜32が形成される。この実施形態では、ゲート層材料膜31はp型GaN膜であり、ゲート・引抜電極膜32はTiN膜である。
【0065】
次に、
図4Cおよび
図5Cに示すように、フォトリソグラフィにより、ゲート・引抜電極膜32におけるゲート電極4および引抜電極6となる部分および環状空間部7aが形成される部分を覆うように、ゲート・引抜電極膜32上にレジストパターン33が形成される。そして、レジストパターン33をマスクとするエッチングにより、ゲート・引抜電極膜32およびゲート層材料膜31がパターニングされる。
【0066】
これにより、ゲート層材料膜31からなる半導体ゲート層15(15A,15B,15C)と、半導体ゲート層15上に形成されたゲート・引抜電極膜32が得られる。半導体ゲート層15は、リッジ部15Aとリッジ部15Aの対応する端部どうしを連結する2つのリッジ連結部15B,15Cとからなる。半導体ゲート層15上に形成されたゲート・引抜電極膜32は、リッジ部15A上に形成されたゲート主電極部4Aと、第1リッジ連結部15B上に形成された第1ベース部4Bと、第2リッジ連結部15C上に形成された部分32Cとからなる。これにより、リッジ部15Aとその上に形成されたゲート主電極部4Aとからなるゲート部20が得られる。この後、レジストパターン33が除去される。なお、ゲート主電極部4Aとリッジ部15Aの端部は揃っている必要はなく、ゲート主電極部4Aの端部がリッジ部15A端部より内側にあってよい。
【0067】
次に、
図4Dおよび
図5Dに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、第2窒化物半導体層14の表面に、露出した表面全体を覆うように、パッシベーション膜16が形成される。パッシベーション膜16は例えばSiNからなる。そして、パッシベーション膜16に、第2窒化物半導体層14に達するソースコンタクトホール8およびドレインコンタクトホール9が形成される。
【0068】
次に、露出した表面全体を覆うようにソース・ドレイン電極膜が形成される。この後、フォトリソグラフィおよびエッチングによってソース・ドレイン電極膜がパターニングされることにより、
図4Eおよび
図5Eに示すように、第2窒化物半導体層14にオーミック接触するソース電極3およびドレイン電極5が形成される。
【0069】
次に、
図5Fに示すように、第2リッジ連結部15C上に配置されているパッシベーション膜16に、パッシベーション膜16を厚さ方向に貫通する環状開口部(第1環状開口部)16aが形成される。この後、第2リッジ連結部15C上に形成されているゲート・引抜電極膜32に、環状開口部16aに連通しかつゲート・引抜電極膜32を厚さ方向に貫通する環状空間部(第2環状開口部)7aが形成される。
【0070】
これにより、第2リッジ連結部15C上において、ゲート・引抜電極膜32における環状空間部7aに囲まれた領域によってホール引抜電極6が形成され、ゲート・引抜電極膜32における環状空間部7aの外側の領域によってゲート電極4の第2ベース部4Cが形成される。こうして、
図1~
図3に示すような構造の窒化物半導体装置1が得られる。
【0071】
図1の窒化物半導体装置1に対してホール引抜電極6が形成されていない、つまり、ゲート電極4に除去領域7が存在しない窒化物半導体装置を比較例ということにする。
【0072】
比較例に対して、ゲートリーク電流を測定するための実験(以下、「IG-VGS測定実験」という。)を行った。具体的には、0Vから5V、0Vから6V、…、0Vから20Vというように、0Vからの増加幅が1Vずつ大きくなるように、ゲート-ソース間電圧VGS[V]を0Vから繰り返し漸増させながら、ゲート-ソース間電流IG(ゲートリーク電流)を測定した。
【0073】
図6は、比較例に対して行ったI
G-V
GS測定実験の結果を示すグラフである。
【0074】
図6から、0Vからの増加幅を変化させてくと、ゲートリーク電流特性が変動することがわかる。
【0075】
IG-VGS測定実験を行う前の比較例に対して、ゲート-ソース間VGSに対するドレイン電流IDの特性を測定した。そして、IG-VGS測定実験を行った後の比較例に対して、ゲート-ソース間VGSに対するドレイン電流IDの特性を測定した。
【0076】
図7は、比較例に対して行ったゲート-ソース間V
GSに対するドレイン電流I
Dの測定結果を示すグラフである。
図7において、グラフaは、I
G-V
GS測定実験前の測定結果を示し、グラフbは、I
G-V
GS測定実験後の測定結果を示している。
【0077】
1×10
-3Aのドレイン電流I
Dが流れるときのゲート-ソース間V
GSをしきい値電圧と定義すると、
図7に矢印で示すように、I
G-V
GS測定実験後のしきい値電圧は、I
G-V
GS測定実験前の閾値電圧に比べて低下している。
【0078】
この理由について説明する。
図8に示すように、第1窒化物半導体層13(GaN)における第2窒化物半導体層14(AlGaN)との界面付近には、電子に対して抵抗が低い伝導帯の溝が形成される。これにより、第1窒化物半導体層13(GaN)内に二次元電子ガス10が形成される。
【0079】
一方、半導体ゲート層15(pGaN)における第2窒化物半導体層14(AlGaN)との界面付近には、ホールに対して抵抗の低い価電子帯の溝が形成される。このため、半導体ゲート層15(pGaN)内にホールが注入された場合、ホールが容易に抜け出すことができなくなる。これにより、ゲート電極4に電圧を印可していない場合でも、ホールによってゲート電極4に電圧が印可された状態となるため、しきい値電圧が下がったと考えられる。この傾向は、ゲート電極4が半導体ゲート層15に対してショットキー接合している場合に、より顕著になる。
【0080】
図9は、
図1の窒化物半導体装置1のゲートーソース間の構造に対応した等価回路を示す回路図である。
【0081】
ゲート電極4は、ショットキーダイオードD1、pn接合ダイオードD2および二次元電子ガス領域の抵抗Racおよびゲート-ソース間のインダクタンスLgsを介してソース電極3に接続されている。ショットキーダイオードD1は、ゲート電極4と半導体ゲート層15との接合部によって形成されるショットキーダイオードである。pn接合ダイオードD2は、半導体ゲート層15と第2窒化物半導体層14との接合部によって形成されるダイオードである。
【0082】
本実施形態では、半導体ゲート層15にホール引抜電極6が形成されており、ホール引抜電極6は内部配線により、ソース電極3に電気的に接続されている。したがって、ショットキーダイオードD1とpn接合ダイオードD2との接続点は、ホール引抜電極6およびホール引抜電極6をソース電極3に接続するための内部配線からなるホール回収経路を介してソース電極3に接続されている。
【0083】
言い換えれば、ショットキーダイオードD1とpn接合ダイオードD2との接続点は、ホール回収経路の抵抗R
Hを介してソース電極3に接続されている。これにより、
図9に矢印で示すように、半導体ゲート層15に蓄積されたホールは、回収経路を通ってソース電極3側に回収される。これにより、しきい値電圧の変動を抑制できる。
【0084】
また、本実施形態では、半導体ゲート層15を形成した後に電子供給層14上に結晶を成長させることなく、半導体ゲート層15内のホールをソース電極側に引き抜くことができる。
【0085】
また、本実施形態では、ホール引抜電極6をノンアクティブエリア52に形成しているため、ホール引抜電極6の存在による総ゲート幅の減少を抑制でき、チャネル抵抗の増加を抑制できる。
【0086】
なお、アクティブ領域51の長さは、ホール引抜電極6によるゲート主電極部4Aからのホール引抜き効果度合いを上げるために、適切に設計されていてよい。例えば、80μm未満に設計されていてよい。
【0087】
図10は、この発明の第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aを説明するための平面図である。
図11は、
図10のXI-XI線に沿う断面図である。
図12は、
図10のXII-XII線に沿う断面図である。
【0088】
図10において、前述の
図1の各部に対応する部分には、
図1と同じ符号を付して示す。
図11において、前述の
図2の各部に対応する部分には、
図2と同じ符号を付して示す。
図12において、前述の
図3の各部に対応する部分には、
図3と同じ符号を付して示す。
【0089】
説明の便宜上、
図10においては、
図11および
図12に符号16で示されるパッシベーション膜および符号43で示される層間絶縁膜は省略されている。また、説明の便宜上、
図10においては、
図11に符号3Aで示されるソース主電極部3Aを実線で表し、
図11に符号3Bで示される延長部3Bは省略されている。ただし、
図10においては、延長部3Bの輪郭を二点鎖線で示している。
【0090】
第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aは、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1と比べて、主としてホール引抜電極の構造および形成方法が異なっている。
【0091】
半導体ゲート層15の第2リッジ連結部15C上には、ゲート電極4の第2ベース部4Cが形成されている。ゲート電極4の第2ベース部4Cには、平面視円形状の除去領域(第2開口部)41が形成されている。半導体ゲート層25の第2リッジ連結部15Cにおける除去領域41に露出している表面の中央部には、平面視円形状の凹部42が形成されている。
【0092】
第2窒化物半導体層14上には、ゲート電極4および半導体ゲート層25の露出面(除去領域41に臨む領域を除く)と、第2窒化物半導体層14の露出面(ソースおよびドレインコンタクトホール8,9に臨む領域を除く)とを覆うパッシベーション膜(第1誘電体膜)16が形成されている。パッシベーション膜16には、平面視において、除去領域41と整合する円形開口部(第1開口部)16b(
図12参照)が形成されている。
【0093】
第2窒化物半導体層14上には、除去領域41の側面および底面(凹部42に臨む領域を除く)と、パッシベーション膜16の露出面と、ソース電極3と、ドレイン電極5とを覆う層間絶縁膜(第2誘電体膜)43が形成されている。層間絶縁膜43は、例えば、SiN膜からなる。除去領域41において、層間絶縁膜43には、層間絶縁膜43を厚さ方向に貫通し、凹部42に連通する平面視円形の開口部(第3開口部)43aが形成されている。除去領域41において、層間絶縁膜43上には、開口部43aを覆う、平面視円形状のホール引抜電極6が形成されている。ホール引抜電極6の一部は、開口部43aおよび凹部42内に入り込み、凹部42内で半導体ゲート層15(15C)に接合されている。
【0094】
ホール引抜電極6とゲート電極4とは同じ材料から構成されてもよいし、異なる材料から構成されてもよい。例えば、ゲート電極4がTiz1N1-z1(0<z1<1)からなり、ホール引抜電極6がTiz2N1-z2(0<z2<1、z1>z2)からなってもよい。この場合、ゲート電極4は、半導体ゲート層15に対して第1ショットキー接触し、ホール引抜電極6は、半導体ゲート層15に対して第2ショットキー接触する。そして、第1ショットキー接触は、第2ショットキー接触よりも、ホールに対するバリアハイトが高くなる。
【0095】
また、例えば、ゲート電極4がTiNからなり、ホール引抜電極6がTi/Alからなってもよい。この場合、ゲート電極4は、半導体ゲート層15に対してショットキー接触し、ホール引抜電極6は、半導体ゲート層15に対してオーミック接触する。
【0096】
【0097】
第1実施形態に係る窒化物半導体装置1の
図4A~
図4Eおよび
図5A~
図5Eの製造工程は、第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aにも共通している。ただし、第1実施形態の「ゲート電極4および引抜電極6の材料であるゲート・引抜電極膜32」は、第2実施形態では、「ゲート電極4の材料膜であるゲート電極膜32」となる。
【0098】
前述した
図4Eおよび
図5Eの工程によって、ソース電極3およびドレイン電極5が形成されると、
図13A(
図4Eと同じ図)および
図14Aに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、第2リッジ連結部15C上に配置されているパッシベーション膜16に、パッシベーション膜16を厚さ方向に貫通する円形開口部(第1開口部)16bが形成される。この後、第2リッジ連結部15C上に形成されているゲート電極膜32に、円形開口部16bに連通する除去領域(第2開口部)41が形成される。これにより、第2リッジ連結部15C上にゲート電極4の第2ベース部4Cが形成される。
【0099】
次に、
図13Bおよび
図14Bに示すように、露出した全面を覆う層間絶縁膜43が形成される。この後、フォトリソグラフィおよびエッチングによって、平面視で除去領域41内において、平面視円形の開口部(第3開口部)43aが層間絶縁膜43に形成され、続いて開口部43aに連通する凹部42が半導体ゲート層15に形成される。
【0100】
次に、
図14Cに示すように、平面視で除去領域41内において、層間絶縁膜43上に開口部43aを覆い、かつ凹部42内で第2リッジ連結部15Cに接合されるホール引抜電極6が形成される。これにより、
図10~
図12に示すような構造の窒化物半導体装置1Aが得られる。
【0101】
第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aにおいても、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1と同様な効果が得られる。第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aでは、半導体ゲート層15におけるホール引抜電極6が形成されている領域の厚さが、リッジ部15Aの厚さよりも薄い。これにより、第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aでは、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1に比べて、半導体ゲート層15における第2窒化物半導体層14との界面付近に蓄積されるホールをより効果的にソース電極3側に引き抜くことができる。
【0102】
なお、第2実施形態に係る窒化物半導体装置1Aでは、第2リッジ連結部15Cに凹部42が形成されているが、凹部42は形成されなくてもよい。この場合には、層間絶縁膜43上に開口部43aを覆うように形成されたホール引抜電極6は、第2リッジ連結部15Cの表面に接合される。
【0103】
図15は、この発明の第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bを説明するための平面図である。
図16は、
図15のA-B-C線に沿う断面図である。
【0104】
図15において、前述の
図1の各部に対応する部分には、
図1と同じ符号を付して示す。
図16において、前述の
図2および
図3の各部に対応する部分には、
図2および
図3と同じ符号を付して示す。
【0105】
説明の便宜上、
図15においては、
図16に符号16で示されるパッシベーション膜は省略されている。また、説明の便宜上、
図15においては、第1および第2ソース主電極部3Aa,3Abを実線で表し、
図16に符号3Bで示される延長部3Bは省略されている。ただし、
図15においては、延長部3Bの輪郭を二点鎖線で示している。
【0106】
第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bにおいても、ソース電極3は、ソース主電極部3Aと延長部3Bとからなる。しかし、ソース主電極部3Aは、その長さ方向中間部が切除されており、第1ソース主電極部3Aaと第2ソース主電極部3Abとに分離されている。ソースコンタクトホール8も同様に、その長さ方向中間部が切除されており、第1ソース主電極部3Aaが貫通する第1ホール部8aと、第2ソース主電極部3Abが貫通する第2ホール部8bとからなる。
【0107】
この実施形態では、第1および第2ソース主電極部3Aa,3Abは、平面視において、ソース電極3の全領域のうち、対応する第1および第2ホール部8a,8bの輪郭に囲まれた領域およびその周辺領域からなる領域をいうものとする。延長部3Bは、平面視において、ソース電極3の全領域のうち、第1および第2ソース主電極部3Aa,3Ab以外の部分をいう。延長部3Bは、一対のゲート主電極部4Aのほぼ全域を覆っている。第1および第2ソース主電極部3Aa,3Abは、本発明の「ソース主電極」の一例である。
【0108】
半導体ゲート層15は、一対のリッジ部15Aと、一対のリッジ部15Aの対応する端部どうしをそれぞれ連結する第1および第2リッジ連結部15B,15Cと、一対のリッジ部15Aの長さ中央部どうしを連結する第3連結部15Dを含む。第3連結部15Dは、第1ソース主電極部3Aaと第2ソース主電極部3Abとの間に配置されている。言い換えれば、第3連結部15Dは、第1ソース主電極部3Aaおよび第2ソース主電極部3Abとドレイン電極5とが対向している領域から外れた領域に配置されている。第3連結部15Dは、本発明の「延長部」の一例である。
【0109】
ゲート電極4は、一対のリッジ部15A上に形成されたゲート主電極部4Aと、第1および第2リッジ連結部15B,15C上にそれぞれ形成された第2および第3ベース部4B,4Cとからなる。
【0110】
第2窒化物半導体層14上には、ゲート電極4および半導体ゲート層15の露出面ならびに第2窒化物半導体層14の露出面(ソースコンタクトホール8(8a,8b)およびドレインコンタクトホール9に臨む領域を除く)を覆うパッシベーション膜16が形成されている。第3連結部15D上のパッシベーション膜16の中央部には、平面視矩形状の開口部16cが形成されている。第3連結部15D上のパッシベーション膜16上には、開口部16cを覆うホール引抜電極6が形成されている。ホール引抜電極6の一部は、開口部16cに入り込み、開口部16c内で半導体ゲート層15(15D)に接合されている。
【0111】
第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bにおいても、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1と同様な効果が得られる。
【0112】
【0113】
図17を参照して、第1変形例に係る窒化物半導体装置1Cでは、半導体ゲート層15の第3連結部15Dの表面に、開口部16cに連通する凹部45が形成されている。第3連結部15D上のパッシベーション膜16上に、開口部16cおよび凹部45を覆うホール引抜電極6が形成されている。ホール引抜電極6の一部は、開口部16cおよび凹部45に入り込み、凹部45内で半導体ゲート層15(15D)に接合されている。
【0114】
第1変形例では、半導体ゲート層15におけるホール引抜電極6が形成されている領域の厚さが、リッジ部15Aの厚さよりも薄い。これにより、第1変形例では、第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bに比べて、半導体ゲート層15における第2窒化物半導体層14との界面付近に蓄積されるホールをより効果的にソース電極3側に引き抜くことができる。
【0115】
図18を参照して、第2変形例に係る窒化物半導体装置1Dは、第1変形例に係る窒化物半導体装置1Cとほぼ同様である。第2変形例においても、第1変形例と同様に、半導体ゲート層15の第3連結部15Dの表面に、開口部16cに連通する凹部45が形成されている。第2変形例では、凹部45の底面の表層部には、n型領域(n型GaN)46が形成されている。第3連結部15D上のパッシベーション膜16上に、開口部16cおよび凹部45を覆うホール引抜電極6が形成されている。ホール引抜電極6の一部は、開口部16cおよび凹部45に入り込み、凹部45内で半導体ゲート層15のn型領域46に接合されている。
【0116】
図19を参照して、第3変形例に係る窒化物半導体装置1Eは、第3実施形態に係る窒化物半導体装置1Bとほぼ同様である。第3変形例では、半導体ゲート層15とゲート電極4との間および半導体ゲート層15とホール引抜電極6との間に、第3窒化物半導体層47が介在している点で、第1変形例と異なっている。第3窒化物半導体層47は、例えば、n型GaN層である。第3窒化物半導体層47は、AlGaN層であってもよい。
【0117】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の実施形態で実施することもできる。例えば、前述の第1および第2実施形態では、ホール引抜電極6は、第1リッジ連結部15Bおよび第2リッジ連結部15Cのうち、第2リッジ連結部15C上にのみ形成されているが、第1リッジ連結部15B上にのみ形成されてもよい。また、第1リッジ連結部15Bおよび第2リッジ連結部15Cのそれぞれにホール引抜電極6が形成されてもよい。
【0118】
また、前述の実施形態では、基板11の材料例としてシリコンを例示したが、かにも、サファイア基板やGaN基板などの任意の基板材料を適用できる。
【0119】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【0120】
この出願は、2019年5月10日に日本国特許庁に提出された特願2019-090147号に対応しており、その出願の全開示はここに引用により組み込まれるものとする。
【符号の説明】
【0121】
1,1A,1B、1C,1E 窒化物半導体装置
2 半導体積層構造
3 ソース電極
3A ソース主電極部
3Aa 第1ソース主電極部
3Ab 第2ソース主電極部
3B 延長部
4 ゲート電極
4A ゲート主電極部
4B,4C ベース部
5 ドレイン電極
6 ホール引抜電極
7 除去領域
7a 環状空間部(第2環状開口部)
8 ソースコンタクトホール
8a 第1ホール部
8b 第2ホール部
9 ドレインコンタクトホール
10 二次元電子ガス(2DEG)
11 基板
12 バッファ層
13 第1窒化物半導体層(電子走行層)
14 第2窒化物半導体層(電子供給層)
15 半導体ゲート層
15A リッジ部
15B,15C,15D リッジ連結部
16 パッシベーション膜
16a 環状開口部(第1環状開口部)
16b 円形開口部(第1開口部)
20 ゲート部
31 ゲート層材料膜
32 ゲート・引抜電極膜
33 レジストパターン
34 ソース・ドレイン電極膜
41 除去領域(第2開口部)
42 凹部
43 層間絶縁膜
43a 開口部(第3開口部)
44 開口部
45 凹部
46 n型領域
47 第3窒化物半導体層
51 アクティブエリア
52 ノンアクティブエリア