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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】試験台において走行試験を実行する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/10 20060101AFI20240702BHJP
   G01M 15/04 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01M15/10
G01M15/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021532245
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 AT2019060423
(87)【国際公開番号】W WO2020118331
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】A51093/2018
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】398055255
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クーラル・エムレ
(72)【発明者】
【氏名】フレック・アンドレアス
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-288006(JP,A)
【文献】特開2000-314680(JP,A)
【文献】特開2002-206991(JP,A)
【文献】特表2016-520841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 15/00-15/14
G01M 17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験物(2)を有する試験台(1)での走行試験を実行する方法であって、いくつかの基準値(ref)が、基準ユニット(5)によってシミュレーションユニット(4)に設定され、いくつかのシミュレーション値(sim)が、いくつかの基準値(ref)を用いて、シミュレーションユニット(4)によってシミュレーションされ、少なくとも1つの目標量(T)と、さらに、被試験物(2)を制御するための少なくとも1つの制御量とがいくつかのシミュレーション値(sim)に基づいて算出される、前記方法において、
いくつかの基準値(ref)に基づく比較基準値とのいくつかのシミュレーション値(sim)に基づく比較シミュレーション値の偏差(x)が検出ユニット(7)によって確認されること、偏差(x)が確認された場合に、いくつかの基準値のうち選択された1つの基準値(ref)に基づき補正された基準値(ref’)が補正ユニット(8)によって算出されること、選択された基準値(ref)に代えて、補正された基準値(ref’)が、補正されたシミュレーション値(sim’)をシミュレーションするためにシミュレーションユニット(4)に設定され、これにより、偏差(x)が低減されること、及び少なくとも1つの目標量(T)が、補正されたシミュレーション値(sim’)を用いて算出されることを特徴とする方法。
【請求項2】
被試験物(2)に結合された少なくとも1つの負荷機械(3)のための少なくとも1つの別の目標量(n)が、少なくとも1つの補正されたシミュレーション値(sim’)を用いて算出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補正された基準値(ref’)が、連続的に高められるか、又は低減されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
偏差(x)がもはや生じなくなるまで、補正された基準値(ref’)が連続的に高められるか、又は低減されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
当該方法が、走行試験の開始時に開始されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
当該方法が、走行試験全体の間に行われることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
いくつかの基準値(ref)が、基準時間(t_ref)における基準位置(s_ref)と、基準時間(t_ref)での基準速度(v_ref)とを含むこと、及びシミュレーションユニット(4)によってシミュレーションされるいくつかのシミュレーション値(sim)が、シミュレーション時間(t_sim)におけるシミュレーション速度(v_sim)と、シミュレーション時間(t_ref)でのシミュレーション位置(s_sim)とを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
シミュレーション位置(s_sim)が比較シミュレーション値として用いられ、基準位置(s_ref)が比較基準値として用いられ、基準速度(v_ref)が選択された基準値(ref)として用いられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
シミュレーション位置(s_sim)が基準位置(s_ref)より大きく、シミュレーション速度(v_sim)が速度閾値を超過するときに、基準速度(v_ref)よりも小さな補正された基準速度(v_ref’)がシミュレーションユニット(4)に設定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
シミュレーション位置(s_sim)が基準位置(s_ref)より小さく、シミュレーション速度(v_sim)が速度閾値を超過するときに、基準速度(v_ref)よりも大きな補正された基準速度(v_ref’)がシミュレーションユニット(4)に設定されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
シミュレーション時間が基準時間(t_ref)とは異なっているとともに、シミュレーション速度(v_sim)が速度閾値を超過しないときに、シミュレーション時間(t_sim)が補正されたシミュレーション時間(t_sim’)へ変更されることを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
走行試験を実行する、被試験物(2)を有する試験台(1)であって、いくつかの基準値(ref)をシミュレーションユニット(4)に設定する基準ユニット(5)が設けられており、シミュレーションユニット(4)が、いくつかの基準値(ref)を用いていくつかのシミュレーション値(sim)をシミュレーションし、いくつかのシミュレーション値(sim)に基づき少なくとも1つの目標量(T)を算出して制御ユニット(ECU)へ伝達するように構成されており、制御ユニット(ECU)が、被試験物(2)を制御するための少なくとも1つの制御量を少なくとも1つの目標量(T)に基づいて設定するように構成されている、前記試験台において、
検出ユニット(7)が設けられており、検出ユニットは、いくつかの基準値(ref)に基づく比較基準値とのいくつかのシミュレーション値(sim)に基づく比較シミュレーション値の偏差(x)を確認するように構成されていること、及び補正ユニット(8)が設けられており、補正ユニットは、確認された偏差(x)において、いくつかの基準値のうち選択された1つの基準値(ref)に基づき補正された基準値(ref’)を算出し、選択された基準値(ref)に代えて、補正されたシミュレーション値(sim’)をシミュレーションするためにシミュレーションユニット(4)に設定するように構成されており、これにより、偏差(x)が低減され、少なくとも1つの目標量(T)が、補正されたシミュレーション値(sim’)を用いて算出されることを特徴とする試験台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具体的な本発明は、被試験物を有する試験台での走行試験を実行する方法であって、いくつかの基準値が、基準ユニットによってシミュレーションユニットに設定され、いくつかのシミュレーション値が、いくつかの基準値を用いて、シミュレーションユニットによってシミュレーションされ、少なくとも1つの目標量と、被試験物を制御するための少なくとも1つの別の制御量とがいくつかのシミュレーション値に基づいて算出される、前記方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
さらに、具体的な本発明は、走行試験を実行する、被試験物を有する試験台であって、いくつかの基準値をシミュレーションユニットに設定する基準ユニットが設けられており、シミュレーションユニットが、いくつかの基準値を用いていくつかのシミュレーション値をシミュレーションし、いくつかのシミュレーション値に基づき少なくとも1つの目標量を算出して制御ユニットへ伝達するように構成されており、制御ユニットが、被試験物を制御するための少なくとも1つの制御量を少なくとも1つの目標量に基づいて設定するように構成されている、前記試験台に関するものである。
【0003】
車両の許容される汚染物質排出(特にCO、CO、NO及び粒子数)についての法的なガイドライン、例えばEuro5, Euro 6基準が規定されたヨーロッパ議会及び理事会の規定(EG)No.715/2007が存在する。これまでは、当該法的なガイドラインの車両による遵守は、(例えばNew European Driving Cycle(NEDC)のような)標準化されたテストサイクルを用いて試験台においてチェックされる。このために、テストサイクル中に生じる排ガスが試験台において取り出され、検査される。この場合の問題は、車両が現実の区間において移動する場合に、標準化されたテストサイクルの下での試験台における条件を現実の特性と比較可能でないことである。これにより、車両は、試験台における法的な規定を遵守することができるものの、現実の動作においては当該規定を超過することがある。
【0004】
これを防止するために、設定(規定)された汚染物質排出制限値のチェックを試験台から現実の道路へシフトさせる立法者の試みがある。これには、現実の区間における車両の現実の走行中の汚染物質排出が車載式排出ガス測定システム(Portable Emission Measurement System(PEMS))によって測定され、チェックされることが必要である。したがって、標準化されたテストサイクルはもはや存在しない。なぜなら、通常の交通を伴う公共の道路における走行は常にランダムな影響を受けるためである。ここで、立法者の目的は、試験台においてのみではなく通常の動作条件の下で車両が汚染物質排出の制限値を遵守することである。テスト走行後の汚染物質排出の評価のためにも、立法者によって規定(例えば所定のデータ解析ツールの使用)がなされる。
【0005】
このために、立法者は、実路走行排出(RDE)テスト手順を規定する。これにおいては、車両質量と、周囲温度と、テスト走行が行われる必要がある地理的な高度とについてのより多くの所定の規定のみが設定されている。加えて、テスト手順における走行状況がどのくらいの割合で含まれる必要があるか、例えば、33%±10%が市街地、郊外及び高速道路に分配され、少なくともそれぞれ16kmであり、車速が郊外において60~90km/hであり、テスト走行の長さが90~120分であるなどが更に規定される。当該チェックが公共の道路において行われることとなる以上、各テスト走行は、例えば他の交通、信号機の位置及び切換フェーズ(現示フェーズ)などのようなランダムな影響も受ける。これにより、現実のテスト走行は、再現可能ではなく、それぞれ多少ランダムな事象連鎖となることが直接認識可能である。
【0006】
当該パラダイムシフトは、新たな車両及び特に新たなエンジンの開発に際して車両メーカーに直接的な影響を有している。これまで、各開発ステップは、標準化されたテストサイクルを用いて試験台においてチェックされることが可能であった。このために、各被試験物のみが各開発ステップ後にテストサイクルに従い、汚染物質排出が検査される必要がある。このことは、RDEテスト手順ではもはや機能しない。なぜなら、基本的に、新たに開発される車両が開発の最後に汚染物質排出の制限値の遵守によってRDEテスト手順を無事に終えるかどうかを予測することができないためである。完成された車両は初めて現実の道路において移動することができ、すなわち、開発が完全に終了して初めてRDEテスト手順を実行することができる。車両がチェックに合格しなければ、車両メーカーに多大な影響を及ぼし、車両メーカーは、極端な場合には、多大なコスト及び手間の下で何年もの開発を少なくとも部分的に新たに展開しなければならなくなってしまう。
【0007】
このとき、車両開発中のこれまでの標準化されたテストサイクルの使用は、もはや助けとならない。なぜなら、このような標準化されたテストサイクルの使用における汚染物質排出の制限値の遵守は、RDEテスト手順の下での当該制限値の遵守も自動的には保証しないためである。
【0008】
テストシナリオにおける車両のあり得る全ての動作状態をまとめることができ、当該テストシナリオを各開発ステップのチェックのために用いることができる。しかし、これはほとんど有効ではない。なぜなら、試験台へのこのようなテストシナリオの転換には非常に長い時間がかかり、これにより、開発が遅れ、高価な試験台時間が高まり、全体として非常に手間がかかってしまう。テストシナリオの任意の作成も同様に有効ではない。なぜなら、これにより、RDEテスト手順の下での法的な規定の遵守を達成することが保証され得ないためである。
【0009】
このために、さらに、各走行操作、例えば低回転数からの加速、郊外道路での追い越し、市街地交通での右左折などが各車両において汚染物質排出に同様の作用を有する必要がないこととなる。これは、あるテストシナリオは所定の車両には適し得るものの他の車両にとってはそうではないことを意味する。
【0010】
上記事項は、これについて(少なくともまだ)法的な規定は存在しないものの、車両の開発の目標量、例えば車両の消費にも同様に当てはまる。しかし、通常、消費は、車両の開発において開発目標であるため、ここでも、例えばRDEテスト手順における目標とする消費の達成が目指される。
【0011】
したがって、現実のテスト走行中の実際の車両動作における排出テストのために、車両の現実の速度及び現実の位置が基準速度として記録され、基準時間にわたる基準位置が走行操作についての基準として記録される。当該基準値は、試験台でのシミュレーションユニット中に基準ユニットから提供されるとともに、シミュレーションの実行前に評価されることも可能である。基準値は、変更されることができ、及び/又はワーストケースシナリオを表すことが可能である。試験台におけるシミュレーションが進行すると、車両モデルの所定の部分、例えばエンジン又はパワートレーンを試験台における対応する部分によっても置換することが可能である。
【0012】
車両のシミュレーションは、3つの基礎的な構成要素を備えており、これら構成要素は、シミュレーションされる区間、シミュレーションされる車両及びシミュレーションされる運転者である。シミュレーションされる運転者は、あらかじめ規定された基準速度に対応すべきシミュレーション速度でシミュレーションされる区間に沿ってシミュレーションされる車両を制御する。このために、シミュレーションされる運転者は、基準時間又は基準位置に維持されることが可能である。しかし、このとき、基準速度からのシミュレーション速度の若干の偏差は防止されることができない。シミュレーションされる区間は、温度、気圧、風、例えば他の車両のような「対向」交通などのような周囲の環境も含み得る。
【0013】
基準時間に基づいてシミュレーション速度が設定されると、基準速度からのシミュレーション速度の若干の偏差により、基準位置からのシミュレーション位置の蓄積した偏差が生じる。例えば所定の時間後のシミュレーション中に80kmの基準位置において20mの蓄積された位置偏差が存在すると、当該80km+1mのシミュレーション位置は、0.025%のみの相対的な誤差を有する。ヒルスタート中の排出をテストするために、車両が急こう配の丘において停止(すなわちシミュレーション速度ゼロ)すべき場合には、80kmの推定上の基準位置におけるシミュレーションされる車両は、既に80km+20mのシミュレーション位置にある。当該シミュレーション位置が勾配のない区間のある箇所に存在すれば、車両のシミュレーションされる停止及び発進は、特に排出測定に関して誤った結果に結び付く。
【0014】
基準位置に基づいてシミュレーション速度が設定されると、基準速度からのシミュレーション速度の若干の偏差により、基準時間からのシミュレーション時間の偏差が生じる。例えば、まず、130km/hの基準速度が設定され、つづいて、所定の基準時間において、例えば高速道路出口の急なカーブにより基準速度が40km/hへ低減され、シミュレーション時間が基準時間から数秒異なる場合には、これにより、急なカーブにおいて130km/hの速度となってしまう。このことは、同様に、例えば非常に大きな、誤ってシミュレートされた横加速度により、シミュレーション又は再現における問題につながり得る。加えて、位置に依存するシミュレーション速度では、所定の基準位置において停止した後発進することはできず、したがって、シミュレーションは進行しない。
【0015】
したがって、時間に基づくシミュレーション速度の決定は基準位置からのシミュレーション位置の偏差を生じさせ、位置に基づくシミュレーション速度の決定は基準時間からのシミュレーション時間の偏差を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
それゆえ、具体的な本発明の課題は、方法及び試験台を提供することにあり、上述の問題が回避されるシミュレーションが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
当該課題は、いくつかの基準値に基づく比較基準値とのいくつかのシミュレーション値に基づく比較シミュレーション値の好ましくは許容差だけの偏差が検出ユニットによって確認され、偏差が確認された場合に、いくつかの基準値のうち選択された1つの基準値に基づき補正された基準値が補正ユニットによって算出されること、選択された基準値に代えて、補正された基準値が、補正されたシミュレーション値をシミュレーションするためにシミュレーションユニットに設定され、これにより、偏差が低減される、少なくとも1つの目標量が、補正されたシミュレーション値を用いて算出されることによって解決される。
【0018】
当該課題は、同様に、試験台によって解決され、当該試験台では、検出ユニットが設けられており、検出ユニットは、いくつかの基準値に基づく比較基準値とのいくつかのシミュレーション値に基づく比較シミュレーション値の好ましくは許容差だけの偏差を確認するように構成されており、補正ユニットが設けられており、補正ユニットは、偏差が確認された場合に、いくつかの基準値のうち選択された1つの基準値に基づき補正された基準値を算出し、選択された基準値に代えて、補正されたシミュレーション値をシミュレーションするためにシミュレーションユニットに設定するように構成されており、これにより、偏差が低減され、少なくとも1つの目標量が、補正されたシミュレーション値を用いて算出される。
【0019】
したがって、まず、比較シミュレーション値と同等の比較基準値との比較シミュレーション値の比較が行われ、すなわち、例えば、シミュレーション位置が基準位置と比較される。当然、各偏差を確認するために、複数の比較シミュレーション値を対応する比較基準値と比較することも可能である。比較シミュレーション値と対応する比較基準値の間の偏差が確認されると、本発明により、比較シミュレーション値自体が変更されるのではなく、いくつかの基準値の中から選択された基準値が補正された基準値で置換され、通常、選択された基準値は比較基準値に対応しない。シミュレーションユニットは、(制御されない)シミュレーション値に代えて補正された基準値に基づき補正されたシミュレーション値を演算するため、連続して偏差が低減される。これにより、少なくとも1つの目標量が補正されたシミュレーション値を用いて算出され、これにより、少なくとも1つの目標量も同様に補正されている。
【0020】
したがって、方法あるいは検出ユニットあるいは補正ユニットは、現存の試験台にも統合されることが可能である。事前に基準ユニットからシミュレーションユニットへ提供された選択された基準値は、補正された基準値へ変更され、そして、当該補正された基準値は、元々の選択された基準値に代えてシミュレーションユニットへ提供される。したがって、方法は、試験台において統合される必要はなく、基準ユニットとシミュレーションユニットの間に適当な検出ユニットあるいは補正ユニットが接続されることで、後で増備することも可能である。選択された基準値のみが補正された基準値によって置換されるため、方法は、シミュレーションユニットがこのように基準ユニットによって設定されていくつかの基準値を得る全ての試験台で用いられることができる。方法は、偏差を低減し、又は除去するために、進行するシミュレーションにおいても起動されることが可能である。したがって、複雑な運転者モデルを有するシミュレーションユニット、例えば速度情報及び勾配情報のような予見される情報を必要とする試験台における方法の起動あるいは当該試験台における補正ユニットの結合が可能である。
【0021】
被試験物に結合された少なくとも1つの負荷機械についての別の目標量も補正されたシミュレーション値を用いて設定されることが可能である。
【0022】
本発明による方法は、走行試験の1つ又は複数のサイクルにおいて実行されることが可能である。
【0023】
有利には、補正された基準値を連続的に高めるか、又は低減することが可能であり、これにより、選択された基準値の急上昇を設定することなく、比較シミュレーション値と比較基準値の間の偏差の迅速な低減を行うことができる。これにより、本発明による方法は、走行試験の複数のサイクルにおいて実行される。
【0024】
補正された基準値は、偏差がもはや生じなくなるまで高められることができるか、又は低減されることができる。これにより、比較シミュレーション値が比較基準値に対応することを達成することが可能である。
【0025】
有利には、方法は走行試験の開始時に開始され、これにより、最初から偏差を、わずかに維持することができるか、又は防止することが可能である。当然、シミュレーションが既に進行しているとき、及び場合によっては既に比較的大きな偏差が存在しているときに方法を開始することも可能である。方法は、例えば、シミュレーション中に行われる変更、例えば運転者の値又はギヤ装置の値の変更を評価するために、試験台での動作中にも応用されることができるか、又は走行試験中にも複数回起動及び作動停止されることが可能である。
【0026】
方法は、例えば公差バンド内で偏差を完全に防止するか、又は小さく維持するために、走行試験全体において実行されることが可能である。これにより、本発明による方法は、走行試験の全てのサイクルにおいて実行される。
【0027】
好ましくは、いくつかの基準値は、基準時間における基準位置と、基準時間における基準速度とを含んでおり、シミュレーションユニットによってシミュレートされるいくつかのシミュレーション値は、シミュレーション時間におけるシミュレーション速度と、シミュレーション時間におけるシミュレーション位置とを含んでいる。したがって、これにより、基準時間における基準速度が基準ユニットによってシミュレーションユニットへ設定され、これに基づき、シミュレーションユニットは、シミュレーション時間におけるシミュレーション位置のようなシミュレーション速度をシミュレーションする。
【0028】
シミュレーション位置は比較シミュレーション値として用いられることができ、基準位置は比較基準値として用いられることができ、基準速度は選択された基準値として用いられることができる。
【0029】
さらに、シミュレーション位置が基準位置より大きく、シミュレーション速度が速度閾値、好ましくはゼロを超過するときに、基準速度よりも小さな補正された基準速度がシミュレーションユニットに設定されることが可能である。
【0030】
加えて、シミュレーション位置が基準位置より小さく、シミュレーション速度が速度閾値、好ましくはゼロを超過するときに、基準速度よりも大きな補正された基準速度がシミュレーションユニットに設定されることが可能である。
【0031】
これにより、基準位置からのシミュレーション位置の位置偏差は、同等の比較基準値からの比較シミュレーション値の偏差とみなされる。基準速度(選択された基準値)は、基準速度よりも大きいか、又は小さい補正された基準速度(補正された基準値)で置換される。これにより、当然、その結果、以前のようにシミュレーションユニットにおいてシミュレーション位置はシミュレーションされず、補正されたシミュレーション位置(補正されたシミュレーション値)がシミュレーションされ、これにより、偏差が低減される。結果として、少なくとも1つの目標量及び少なくとも1つの制御量が、補正されたシミュレーション位置を用いて設定される。
【0032】
好ましくは、シミュレーション時間が基準時間とは異なるとともに、シミュレーション速度が速度閾値、好ましくはゼロを超過しないときに、シミュレーション時間は補正されたシミュレーション時間へ変更される。したがって、シミュレーション時間は、例えば加速され、又は減速され、これにより基準時間に適合されることが可能である。
【0033】
シミュレーション時間の変更がシミュレーションに対して重大な影響を有さないように、速度閾値を選択することが可能である。このことは、速度閾値がゼロ、ゼロから6km/hの範囲又は3~6km/hにある場合に当てはまり、すなわち、車両は、停止段階において、静止しているか、又は低速で移動する。したがって、停止段階の長さのみが適合される。これにより、シミュレーション位置のみが適合される場合に生じる特異性問題が解決される。なぜなら、ゼロのシミュレーション速度ではシミュレーション位置が増大し得るためである。特にRDEテストでは、車両が移動しない多くの停止段階が基準ユニットによって設定されるため、シミュレーション時間の変更によって当該停止段階の継続時間を変更することによって、既に蓄積された偏差、例えば時間偏差及び/又は位置偏差を理想的にはゼロへ低減することが可能である。したがって、あらかじめ時間偏差を補整することで、位置偏差も補正することが可能である。
【0034】
以下に、具体的な本発明を、例示的、概略的、かつ、制限せずに本発明の有利な形態を示す図1図7を参照しつつ詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】被試験物のための典型的な試験台構造を示す図である。
図1b】シミュレーションユニットのあり得る構成を示す図である。
図2】例示的な基準走行を示す図である。
図3】時間に基づくシミュレーション速度の設定を示す図である。
図4】場所に基づくシミュレーション速度の設定を示す図である。
図5】本発明による試験台構造を示す図である。
図6】基準速度の本発明による補正を示す図である。
図7】停止段階におけるシミュレーション時間の本発明による補正を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、ここでは内燃エンジン用のエンジン試験台である、被試験物2用の典型的な試験台1が図示されている。被試験物2は、ここでは、図1に示唆されているように、例えば結合軸を介して負荷機械3に結合されている。しかし、被試験物2は、パワートレーン、車両全体、ギヤ装置、バッテリのような1つ又は複数の構成要素などを含むことが可能である。したがって、試験台1は、例えばパワートレーン試験台又はローラ試験台であってよく、また、1つより多くの負荷機械3を例えば駆動される半軸ごとに、又は軸ごとに設けることも可能である。このとき、例えば汚染物質排出(量)、消費量、車両の音響的な特性、車両の走行性、車両の耐久性、個々の構成要素の設計/最適化のための情報などのような、車両の所定の測定量mに関するエビデンスを得るために、被試験物2は、走行試験の設定に従い動作される。このとき、測定量は目標量と比較される。測定量が内燃エンジンの汚染物質排出あるいは内燃エンジンの消費量に関するものであれば、被試験物2は、当然内燃エンジンも含んでいる。
【0037】
シミュレーションユニット4には、試験区間において移動する車両がシミュレーションされる。このために、基準ユニット5によって、いくつかの基準値refがシミュレーションユニット4にあらかじめ設定される。シミュレーションユニット4は、シミュレーションにおいていくつかのシミュレーション値simを算出する。シミュレーションユニット4では、上記いくつかのシミュレーション値simに基づいて同様に少なくとも1つの目標量T、例えばトルクが算出され、当該少なくとも1つの目標量Tは、シミュレーション値simに相当し得る。少なくとも1つの目標量Tは、アクセルペダルのペダル位置であってもよく、又はペダル位置に基づき演算されることが可能である。少なくとも1つの目標量Tは制御ユニットECUへ伝達され、当該制御ユニットECUは、少なくとも1つの目標量Tに基づき被試験物2を少なくとも1つの制御量によって制御する。ここではエンジン制御ユニットとして構成された制御ユニットECUは、発生されるべきトルク(目標量T)に基づき、スロットルバルブ位置α及び/又は燃料量k(制御量)を被試験物2にあらかじめ設定することが可能である。
【0038】
シミュレーションユニット4は、少なくとも1つの別の目標量、例えば回転数nも別の制御ユニット30へ供給することができ、当該別の制御ユニット30は、図1に図示されているように、負荷機械3を制御することが可能である。負荷機械3の実際の回転数は、ここでは負荷機械3から軸を介して被試験物2へ作用する。
【0039】
ローラ試験台には走行ロボットも設けることができ、当該走行ロボットは、実行されるべき試験の設定に従い、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバーのような車両の操作要素を操作する。
【0040】
通常、試験台1には一連の(不図示の)測定センサが存在し、当該測定センサによって、例えば、被試験物2のトルクTist及び回転数nistの現在の実際値を検出することができるとともに、シミュレーションユニット4へ伝達することが可能である。
【0041】
試験台1では、具体的な被試験物2について走行試験が実行され、このとき、例えば汚染物質排出が測定量として測定される。測定量に応じて、試験台1では、例えば内燃エンジンの排ガスが供給され、CO、CO、NOのような所定の汚染物質排出、全炭化水素量(THC)及び/若しくは(すす粒子のような)粒子数を測定する排出測定ユニット6、並びに/又は内燃エンジンの燃料消費を測定する消費測定ユニット7のような適当な測定ユニットを設けることができる。
【0042】
シミュレーションユニット4及び制御ユニットECUは、ユニットとしても構成されることができるか、又は図1に図示されているように独立したユニットとして構成されることが可能である。基準ユニット5は、図1では独立したユニットとして構成されているが、同様にシミュレーションユニット4と一体化することも可能である。シミュレーションユニット4は、シミュレーションハードウェア及び/又はシミュレーションソフトウェアを備えており、当該シミュレーションハードウェア及び/又はシミュレーションソフトウェアによって、車両の試験走行がシミュレーションされる。このために、シミュレーションユニット4では、例えば運転者モデル11、車両モデル12及び区間モデル13を含むシミュレーションモデルが実装されている。例えばタイヤモデル、道路モデルなどのような別のモデルを実装することも可能である。これにより、シミュレーションユニット4は、仮想的な運転者によって制御される(運転者モデル11)仮想的な車両(車両モデル12)の仮想的なテスト区間(周囲モデル13)に沿った走行をシミュレートし、例えば道路標識、信号機、他の交通などのような所定の事象もシミュレーションされることが可能である。当該事象は、運転者モデル11における仮想的な運転者によって認識され、対応する応答の形態に変換される。内燃エンジン又はパワートレーンのような車両の一部は、被試験台2としての試験台1における現実のハードウェアとして物理的に構成されているとともに、試験台1における試験に従うシミュレーションの設定によって動作される。試験の実行の当該過程は、十分に知られており、しばしば「X-In-The-Loop」試験と呼ばれ、「X」は、現実に存在する各試験台2を表す。この種の試験の実行は、非常にフレキシブルであるとともに、現実の車両による現実の試験走行の特徴に非常に近似し得る。ワーストケース推定についての変形態様も、行い、評価することが可能である。変化態様は、非常に抽象的に、例えば、より多くの車両量、より多くの交通、強い向かい風、よりアグレッシブな走行特性などの形態で規定されることが可能である。
【0043】
したがって、このように作成された走行試験によって、全ての開発研究における車両の開発を行うことができ、RDE試験手順によるチェック時に、目標量、例えば汚染物質排出の法的な制限値の所定の設定(規定)の遵守の可能性を大幅に高めることが可能である。このことは、汚染物質排出に代えて、例えば消費、走行性、音響的な特性、耐久性のような他の測定量についても同様に当てはまる。
【0044】
通常、走行試験は、多くの様々な走行操作、例えば加速、減速、静止、定常走行、カーブ走行などを含んでおり、所定の境界条件は、例えば回転数、トルク、操舵、道路の勾配、交通などと理解される。走行操作として、静止からの発進、カーブからの加速、車速の変更、遅い車両の追い越し、赤信号への惰性走行などが行われ得る。車両の各走行ひいては走行試験は、このような走行操作の時間的な連続とみなされることが可能である。そのような走行操作が多く設定され得ることが直接的に理解しやすい。走行操作は、基準ユニット5にメモリされているとともに、例えば、現実に測定された試験走行、既に行われたシミュレーションなどに基づくものである。
【0045】
走行試験は、このような走行操作の時間的な連続として作成される。このことは、ユーザによって、ランダム選択によって、又は目的をもった選択によって、手動で行われることが可能である。当然、車両操作は、走行試験において不連続性、例えば突然の速度上昇に至らないように互いに結び付けられる必要がある。また、被試験物2は、シミュレーションモデルと組み合わせて所望の設定を行うことができることが保証される必要がある。このとき、走行試験は、好ましくは車両の可能な限り大きな動作範囲をカバーすべき多くの異なる走行操作を含むべきである。したがって、どの操作がどの割合で含まれる必要があるかという正確な設定を行うことが可能である。
【0046】
シミュレーションの実行のために、シミュレーションユニット4は、上述のように、走行試験における実際に所望される走行操作に合わせていくつかの基準値refを基準ユニット5から受け取る。基準値refとして、例えば基準速度v_ref及び基準位置s_refがそれぞれ基準時間t_refの関数として用いられる。したがって、シミュレーションユニット4には、走行試験に合わせて、例えば運転者モデル11によってシミュレーションされる基準速度v_refが設定される。したがって、運転者モデル11は、車両モデル12及び区間モデル13を用いて計算される基準速度v_refに追従する。
【0047】
走行試験あるいは個々の走行操作は、基準時間t_refにわたる基準速度v_refの推移として基準ユニット5において設定されているとともに、基準値refとしてシミュレーションユニット4へ伝達される。シミュレーションユニット4は、シミュレーションにおいて、シミュレーション速度v_simをもって基準速度v_refに追従しようとする。このことは、位置に基づいて(すなわち、シミュレーション位置s_simについてのシミュレーション速度v_simは、常に基準位置s_refについての基準速度v_refに対応する)、又は時間に基づいて(すなわち、シミュレーション時間t_simについてのシミュレーション速度v_simは、常に基準時間t_refについての基準速度v_refに対応する)行われることができる。しかし、シミュレーション速度v_simは基準速度v_refに正確に追従することはできないため、このとき、位置に基づくアプローチの場合には時間差が生じ、時間に基づくアプローチの場合には位置差が生じる。
【0048】
図2図3図4図5及び図7には、それぞれ1つの時間-速度-距離グラフが示されており、正の横軸には時間t、負の横軸には速度v、正の縦軸には位置sが記入されている。これにより、グラフの左側部分では速度-時間関係が得られ、グラフの右側部分では距離-時間関係が得られる。
【0049】
図2では、以下の適当な基準値refによって基準走行が得られる:基準速度v_refは各基準時間t_refについて設定され、同様に、基準位置s_refは各基準時間t_refについて設定され、これにより、それぞれ基準曲線が形成される:左側では基準位置s_refに依存した基準速度v_refであり、右側では基準時間t_refについての基準位置s_refである。当該関係により、同様に各基準時間t_refについての基準速度v_refが設定されている。
【0050】
図3には、基準値refに加えて、シミュレーションのシミュレーション値simが示されており、時間に基づくシミュレーション速度v_simの設定がなされている。これにより、シミュレーション速度v_simは、シミュレーション時間t_simの各時点において基準速度v_refに追従する。シミュレーション速度v_simは基準速度v_refに正確に追従することができないため、それにもかかわらず、グラフの左側の象限において見られるように、シミュレーション速度v_simと基準速度v_refの間の速度差v_xが存在し得る。ここでは、シミュレーション速度v_simは小さすぎる。これにより、更なる順序において、グラフの右側部分から見て取ることができるように、偏差xとして、シミュレーション位置s_simの基準位置s_refからの位置差s_xが得られる。
【0051】
図4には、シミュレーション速度v_simの位置に基づく設定を介して算出されるシミュレーション値simが図示されている。これにより、シミュレーション速度v_simは、シミュレーション位置s_simの各点において基準位置s_refに追従する。シミュレーション速度v_simが基準速度v_refにここでも正確には追従できないため、ここでも同様に、シミュレーション速度v_simと基準速度v_refの間に速度差v_xが存在し(再び例示的に小さすぎるシミュレーション速度v_simとして図示されている)、そのため、偏差xとして、基準時間t_refとのシミュレーション時間t_simの時間差t_xが生じる。
【0052】
図5において分かるように、本発明により、ここではユニットとしてシミュレーションユニット4と基準ユニット5の間に接続された検出ユニット7及び補正ユニット8が試験台1に設けられている。このことは、これにより、シミュレーションユニット4自体にアクセスされず、対応するシミュレーション値simを同等の基準値refと比較するために、対応するシミュレーション値simのみが存在すればよいため、特に有利である。図5では、シミュレーション位置s_simは、シミュレーションユニット4から検出ユニット7へ供給される。
【0053】
そして、検出ユニット7を用いて、比較基準値との比較シミュレーション値の偏差xが算出される。ここで、偏差xとして、比較基準値としての基準位置s_refとの比較シミュレーション値としてのシミュレーション位置s_simの位置偏差s_xが算出される。このとき、当然、偏差(バンド)を設定することが可能である。つづいて、ここでは、有利には検出ユニット7に統合された補正ユニット8によって、基準速度v_refが、選択された基準値refとして補正された基準速度v_ref’へ変更され、当該補正された基準速度v_ref’は、つづいて、基準速度v_refの代わりにシミュレーションユニット4へ提供される。これにより、更なる推移では、シミュレーションユニット4では補正されたシミュレーション位置s_sim’がシミュレーションされ、これにより、よりわずかな位置偏差s_xが得られる。
【0054】
図6では、時点t1において位置偏差s_x、すなわちここでは基準位置s_refに対して小さすぎるシミュレーション位置s_simが見て取れる。当該位置偏差s_xは、図面にも示唆されているように、小さすぎるシミュレーション速度v_simに基づいて生じ得る。時点t1の後、(選択された基準値refとしての)基準速度v_refの代わりに、ここではより大きな補正された基準速度v_ref’がシミュレーションユニット4に設定されることが図4について見て取れ、このことは、破線で図示されている。これに基づき、シミュレーションユニット4では、より大きなシミュレーション速度v_simがシミュレーションされる。なぜなら、当該シミュレーション速度がいまや補正された基準速度v_ref’に追従するためである。このとき、補正された基準値ref’(すなわち、ここでは補正された基準速度v_ref’)は、更に連続的に高められることができるか、又は低減されることができる。
【0055】
これにより、時点t1からはシミュレーション速度v_simに代えて補正されたシミュレーション速度v_sim’がシミュレーションユニット4に設定され、これにより、位置偏差s_xが、図示の場合には時点t2まで低減され、もはや位置偏差s_xは生じない。その後、位置偏差s_xをゼロに維持するために、補正された基準速度v_ref’が維持される。これにより、シミュレーション速度v_simは例えば基準速度v_refに追従し、シミュレーション位置s_simは基準位置s_refに追従する。
【0056】
これにより、少なくとも1つの補正されたシミュレーション値sim’を用いて、いまや補正されている少なくとも1つの目標量Tをシミュレーションユニット4が制御ユニットECUへ伝達することとなる。制御ユニットECUは、当該少なくとも1つの目標量Tを用いて、同様に補正されている少なくとも1つの制御量によって被試験物2を制御する。このとき、補正されたシミュレーション値sim’を用いて、負荷機械3の別の制御ユニット30についての少なくとも1つの別の目標量nも算出することが可能である。
【0057】
当然、方法は、走行試験の開始時に既に開始されることもでき、好ましくは、走行試験全体の間行われることができる。これにより、シミュレーション中にわずかな偏差xが生じる。なぜなら、当該偏差は、好ましくは連続的かつ最適に補正されるためである。
【0058】
しかし、本実施例では、補正された基準速度v_ref’への(選択された基準値refとしての)基準速度v_refの低減のために、シミュレーション速度v_simが第1の速度閾値を超過することが常に保証される必要がある。基準速度v_refを高めるために、シミュレーション速度v_simが速度閾値を超過することも同様に保証される必要がある。特に、ここでは、シミュレーション速度v_simはゼロであってはならない。
【0059】
加えて、小さな基準速度v_refひいては小さなシミュレーション速度v_simにおいては、特にシミュレーション位置s_simが基準位置s_refよりも大きい場合には、選択された基準値refとしての基準速度v_refの適合を介した補正の可能性が小さい。基準速度v_refがわずかであるため、当該基準速度は、ゼロに到達する前に、当然、もはや更に低減されることがない。
【0060】
図7では、時点t4における基準速度v_refはゼロである。時間差t_xが生じるため、シミュレーション速度v_simは、時点t3で初めてゼロになる。これにより、シミュレーション速度v_simは、時点t3で(ゼロの)速度閾値に達し、これにより、速度閾値をもはや超過せず、このことが、好ましくは検出ユニット7によって認識される。したがって、好ましくは補正ユニット8によって、基準時間t_refとは異なるシミュレーション時間t_simが変更される。時点t5では、基準速度v_refひいてはシミュレーション速度v_simが再び高められる。当該時点が再び同期するように、シミュレーション速度v_simがゼロである期間が低減される。参照によれば、停止期間はt4からt5まで継続する必要があり、シミュレーションでは、停止期間は、t3からt5へ低減された。シミュレーション時間t_simの変更は、シミュレーション時間t_simの変更された範囲におけるシミュレーション時間t_simあるいは基準時間t_refのより迅速な、又はより緩慢な推移とみなされることも可能である。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.被試験物(2)を有する試験台(1)での走行試験を実行する方法であって、いくつかの基準値(ref)が、基準ユニット(5)によってシミュレーションユニット(4)に設定され、いくつかのシミュレーション値(sim)が、いくつかの基準値(ref)を用いて、シミュレーションユニット(4)によってシミュレーションされ、少なくとも1つの目標量(T)と、さらに、被試験物(2)を制御するための少なくとも1つの制御量とがいくつかのシミュレーション値(sim)に基づいて算出される、前記方法において、
いくつかの基準値(ref)に基づく比較基準値とのいくつかのシミュレーション値(sim)に基づく比較シミュレーション値の好ましくは許容差だけの偏差(x)が検出ユニット(7)によって確認されること、偏差(x)が確認された場合に、いくつかの基準値のうち選択された1つの基準値(ref)に基づき補正された基準値(ref’)が補正ユニット(8)によって算出されること、選択された基準値(ref)に代えて、補正された基準値(ref’)が、補正されたシミュレーション値(sim’)をシミュレーションするためにシミュレーションユニット(4)に設定され、これにより、偏差(x)が低減されること、及び少なくとも1つの目標量(T)が、補正されたシミュレーション値(sim’)を用いて算出されることを特徴とする方法。
2.被試験物(2)に結合された少なくとも1つの負荷機械(3)のための少なくとも1つの別の目標量(n)が、少なくとも1つの補正されたシミュレーション値(sim’)を用いて算出されることを特徴とする上記1.に記載の方法。
3.補正された基準値(ref’)が、連続的に高められるか、又は低減されることを特徴とする上記1.又は2.に記載の方法。
4.偏差(x)がもはや生じなくなるまで、補正された基準値(ref’)が連続的に高められるか、又は低減されることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の方法。
5.当該方法が、走行試験の開始時に開始されることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の方法。
6.当該方法が、走行試験全体の間に行われることを特徴とする上記5.に記載の方法。
7.いくつかの基準値(ref)が、基準時間(t_ref)における基準位置(s_ref)と、基準時間(t_ref)での基準速度(v_ref)とを含むこと、及びシミュレーションユニット(4)によってシミュレーションされるいくつかのシミュレーション値(sim)が、シミュレーション時間(t_sim)におけるシミュレーション速度(v_sim)と、シミュレーション時間(t_ref)でのシミュレーション位置(s_sim)とを含むことを特徴とする上記1.~6.のいずれか1つに記載の方法。
8.シミュレーション位置(s_sim)が比較シミュレーション値として用いられ、基準位置(s_ref)が比較基準値として用いられ、基準速度(v_ref)が選択された基準値(ref)として用いられることを特徴とする上記7.に記載の方法。
9.シミュレーション位置(s_sim)が基準位置(s_ref)より大きく、シミュレーション速度(v_sim)が速度閾値、好ましくはゼロを超過するときに、基準速度(v_ref)よりも小さな補正された基準速度(v_ref’)がシミュレーションユニット(4)に設定されることを特徴とする上記8.に記載の方法。
10.シミュレーション位置(s_sim)が基準位置(s_ref)より小さく、シミュレーション速度(v_sim)が速度閾値、好ましくはゼロを超過するときに、基準速度(v_ref)よりも大きな補正された基準速度(v_ref’)がシミュレーションユニット(4)に設定されることを特徴とする上記8.に記載の方法。
11.シミュレーション時間が基準時間(t_ref)とは異なっているとともに、シミュレーション速度(v_sim)が速度閾値、好ましくはゼロを超過しないときに、シミュレーション時間(t_sim)が補正されたシミュレーション時間(t_sim’)へ変更されることを特徴とする上記9.又は10.に記載の方法。
12.走行試験を実行する、被試験物(2)を有する試験台(1)であって、いくつかの基準値(ref)をシミュレーションユニット(4)に設定する基準ユニット(5)が設けられており、シミュレーションユニット(4)が、いくつかの基準値(ref)を用いていくつかのシミュレーション値(sim)をシミュレーションし、いくつかのシミュレーション値(sim)に基づき少なくとも1つの目標量(T)を算出して制御ユニット(ECU)へ伝達するように構成されており、制御ユニット(ECU)が、被試験物(2)を制御するための少なくとも1つの制御量を少なくとも1つの目標量(T)に基づいて設定するように構成されている、前記試験台において、
検出ユニット(7)が設けられており、検出ユニットは、いくつかの基準値(ref)に基づく比較基準値とのいくつかのシミュレーション値(sim)に基づく比較シミュレーション値の好ましくは許容差だけの偏差(x)を確認するように構成されていること、及び補正ユニット(8)が設けられており、補正ユニットは、確認された偏差(x)において、いくつかの基準値のうち選択された1つの基準値(ref)に基づき補正された基準値(ref’)を算出し、選択された基準値(ref)に代えて、補正されたシミュレーション値(sim’)をシミュレーションするためにシミュレーションユニット(4)に設定するように構成されており、これにより、偏差(x)が低減され、少なくとも1つの目標量(T)が、補正されたシミュレーション値(sim’)を用いて算出されることを特徴とする試験台。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7