IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ センシリオン アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-静電容量式センサ 図1
  • 特許-静電容量式センサ 図2
  • 特許-静電容量式センサ 図3
  • 特許-静電容量式センサ 図4
  • 特許-静電容量式センサ 図5
  • 特許-静電容量式センサ 図6
  • 特許-静電容量式センサ 図7a
  • 特許-静電容量式センサ 図7b
  • 特許-静電容量式センサ 図8a
  • 特許-静電容量式センサ 図8b
  • 特許-静電容量式センサ 図9
  • 特許-静電容量式センサ 図10
  • 特許-静電容量式センサ 図11
  • 特許-静電容量式センサ 図12
  • 特許-静電容量式センサ 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】静電容量式センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/22 20060101AFI20240702BHJP
   G01R 27/26 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N27/22 A
G01R27/26 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021549278
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020054379
(87)【国際公開番号】W WO2020169676
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】19158447.3
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515023349
【氏名又は名称】センシリオン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Sensirion AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリュス, マーセル
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0180884(US,A1)
【文献】特開2006-058084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025665(US,A1)
【文献】特開2003-028824(JP,A)
【文献】特開平09-127260(JP,A)
【文献】特開2014-219408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(14)と、
少なくとも第1電極(11)および第2電極(12)と、前記第1電極(11)と前記第2電極(12)との間に配置された検知層(15)とを備える電極構造部(10)と、
測定回路(40、500、600)と、を備える静電容量式センサであって、
前記測定回路(40、500、600)は、
第1測定段階において、前記第1電極(11)に第1電極の第1電位を付与し、前記第2電極(12)に第2電極の第1電位を付与し、
第2測定段階において、前記第1電極(11)に第1電極の第2電位を付与し、前記第2電極(12)に第2電極の第2電位を与えることによって、前記電極構造部(10)の静電容量を測定するように構成され、
前記第2電極(12)の第1電位と前記第2電極(12)の第2電位とは、互いに異なり、
前記第1電極の第1電位、前記第2電極の第1電位、前記第1電極の第2電位及び前記第2電極の第2電位は、
【数25】
を満たすように付与される、
なお、上記式において、
A1は、前記第1測定段階における前記第1電極の第1電位であり、
A2は、前記第2測定段階における前記第1電極の第2電位であり、
B1は、前記第1測定段階における前記第2電極の第1電位であり、
B2は、前記第2測定段階における前記第2電極の第2電位であり、
AE は、前記検知層の面上に配置された仮想電極と前記第1電極との間の静電容量であり、
BEは、前記検知層の前記面上に配置された前記仮想電極と前記第2電極との間の静電容量である、静電容量式センサ。
【請求項2】
前記第1電極の第1電位、前記第2電極の第1電位、前記第1電極の第2電位及び前記第2電極の第2電位は、以下の式
【数27】
を満たすように付与される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1電極の第1電位と前記第2電極の第1電位との平均電位は、前記第1電極の第2電位と前記第2電極の第2電位との平均電位と同じである、請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記測定回路(40、700、800)は、前記第2電極(12)において、第1測定段階と第2測定段階との間で結果として生じる電荷差を検知するように構成されている、請求項1から3のいずれか一に記載のセンサ。
【請求項5】
前記測定回路は、前記第1電極の第1電位、前記第2電極の第1電位、前記第1電極の第2電位及び前記第2電極の第2電位を生成するための、および/または、前記結果として生じた電荷差を検知するための、スイッチドキャパシタ回路および/またはスイッチド電流回路を含む、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記測定回路(40、700、800)は、
結果として生じる電荷差をリファレンスコンデンサ(CInt)に転送し、
前記リファレンスコンデンサ(CInt)において結果である電圧を測定し、
前記結果として生じた電圧から前記電極構造部の静電容量を測定する、ように構成されている、請求項4または5記載のセンサ。
【請求項7】
前記測定回路(40、700、800)は、オフセットコンデンサ(CO)を含み、
前記測定回路(40、700、800)は、前記結果として生じた電荷差からオフセット電荷を減算するように構成されている、請求項4から6のいずれか一に記載のセンサ。
【請求項8】
前記測定回路(40、700、800)は、積分器(710)、特に、スイッチドキャパシタ増幅器を含み、前記積分器(710)は、前記結果として生じる電荷差を積分するように構成されている、請求項4から7のいずれか一に記載のセンサ。
【請求項9】
前記第1電極の第1電位は、前記第2電極の第2電位と同じであり、
前記第2電極の第1電位は、前記第1電極の第2電位と同じであり、
特に、
前記第1電極の第1電位と前記第2電極の第2電位とは、供給電圧電位であり、
前記第2電極の第1電位と前記第1電極の第2電位とは、接地電位であり、
または、特に、
前記第1電極の第1電位と前記第2電極の第2電位とは、接地電位であり、さらに、
前記第2電極の第1電位と前記第1電極の第2電位とは、供給電圧電位である、請求項1から8のいずれか一に記載のセンサ。
【請求項10】
前記センサは、
前記第1電極(11)および前記第2電極(12)を含む第1金属層(21)と、
シールド構造部(22)を含む第2金属層(22)と、を含む、請求項1から9のいずれか一に記載のセンサ。
【請求項11】
前記シールド構造部(22)は、固定電位、特に接地電位または供給電位に、前記第1電極(11)に、または前記第2電極(12)に電気的に接続されている、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記センサは、静電容量式湿度センサ、静電容量式ガスセンサ、または静電容量式粒子状物質センサである、請求項1から11のいずれか一に記載のセンサ。
【請求項13】
静電容量測定を行う方法であって、
少なくとも第1電極(11)および第2電極(12)と、前記第1電極(11)と前記第2電極(12)との間に配置された検知層(15)とを備える電極構造部(10)を設けるステップと、
第1測定段階において、前記第1電極(11)に前記第1電極の第1電位を付与し、前記第2電極(12)に前記第2電極の第1電位を付与し、
第2測定段階において、前記第1電極(11)に前記第1電極の第2電位を付与し、前記第2電極(12)に前記第2電極の第2電位を付与することにより、前記電極構造部の静電容量を測定するステップと、を含み、
前記第2電極(12)の第1電位と前記第2電極(12)の第2電位とは、互いに異なり、
前記第1電極の第1電位、前記第2電極の第1電位、前記第1電極の第2電位及び前記第2電極の第2電位は、以下の式
【数28】
のように付与される、なお、上記式において、
A1は、前記第1測定段階における前記第1電極の第1電位であり、
A2は、前記第2測定段階における前記第1電極の第2電位であり、
B1は、前記第1測定段階における前記第2電極の第1電位であり、
B2は、前記第2測定段階における前記第2電極の第2電位であり、
AE は、前記検知層の面上に配置された仮想電極と前記第1電極との間の静電容量であり、
BEは、前記検知層の前記面上に配置された仮想電極と前記第2電極との間の静電容量である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電容量式センサ、特に静電容量式湿度センサ、静電容量式ガスセンサ、および静電容量式粒子状物質センサに関する。開示のさらなる態様は、静電容量式検知、特に静電容量式湿度検知のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量式センサは、例えば、湿度センサとして、特に、環境空気の相対湿度を検知するセンサとして実施され、環境検知用途において汎用されている。
【0003】
湿度センサの1つのタイプは、静電容量式湿度センサであり、この湿度センサは、1つ以上の感湿層、特にポリマー層を備える。感湿層は、2つの電極の間に配置され、環境空気と相互作用する。2つの電極の間で測定された静電容量は、環境空気の湿度と相関するので、湿度を測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量式湿度センサの1つの問題は、検知層の環境が十分に画定されていないことである。特に、環境のインピーダンスは、制御できない態様で変化することがある。一例として、感湿層上での水または他の液体の結露の場合や、粒子による感湿層の汚染によって、測定された静電容量が、100%未満に低下する場合がある。このような飽和現象は、誤った測定につながることがある。特に、対応するセンサは、結露状態と、相対湿度が実際には100%未満である状態との間で区別することができない場合がある。
【0005】
従って、本発明が解決すべき1つの問題は、検知範囲が改善された静電容量式センサ、特に結露状態を検出することができる湿度センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の実施形態によれば、基板および電極構造部を備える静電容量式湿度センサが提供される。電極構造部は、少なくとも第1電極及び第2電極と、第1電極と第2電極との間に配置された検知層とを備える。検知層は、特に、感湿性誘電率を有するので、感湿層として実施することができる。センサは、さらに、測定回路を備える。測定回路は、第1測定段階において、第1電極及び第2電極に一対の第1電位を与えることによって、電極構造部の静電容量を測定するように構成されている。一対の第1電位は、第1電極の第1電位と、第2電極の第1電位とを含む。測定回路は、さらに、第2測定段階において、第1電極及び第2電極に一対の第2電位を与えるように構成されている。一対の第2電位は、第1電極の第2電位と、第2電極の第2電位とを含む。第1態様の実施形態は、特に、第2電極の第1電位と第2電極の第2電位とが異なることを特徴とする。第1態様の実施形態によれば、一対の第1電位および一対の第2電位は、以下の条件のうちの少なくとも1つを満たすように付与される。
【0007】
【数1】
【0008】
上記の式/条件において、VA1は、第1測定段階における第1電極の第1電位を示し、VA2は、第2測定段階における第1電極の第2電位を示す。さらに、VB1は、第1測定段階における第2電極の第1電位を示し、VB2は、第2測定段階における第2電極の第2電位を示す。CAE は、検知層の面上に配置された仮想電極と第1電極との間の相互容量であり、一方、CBEは、検知層の面上に配置された仮想電極と第2電極との間の静電容量である。
【0009】
そのように実施された静電容量式センサは、2段階測定によってその電極構造部の静電容量を測定するように構成されている。2段階測定は、第1測定段階および第2測定段階を含む。各段階において、特定のセットの電位が、第1電極及び第2電極に付与される。特に、第2電極の第1電位と、第2電極の第2電位とは、互いに異なる。言い換えれば、第2電極の電位は、第1測定段階と第2測定段階との間で変化する。これは、第2電極の電位が一定に保たれて、第2電極と接地電位または他の基準電位との間の寄生容量の測定を回避する従来のセンサとは対照的である。そのように実施されたセンサは、第2電極の異なる電位が使用されて、特定の測定状態に対するセンサ機能を適用させるという効果を提供する。
【0010】
特に、本出願人の研究は、2つの測定段階の間で第2電極の電位を変化させることによって、本発明の実施形態によるセンサは、検知層の表面上での結露および/または検知層の汚染によって、測定が誤ったものにならないように設計されている。
【0011】
仮想電極は、静電容量CAE およびCBE、または、より詳細には割合CAE/CBEを定義したり、および/または測定するために使用される電極と考えることができる。仮想電極は、検知層の表面上に配置される。検知層の表面は、環境空気と隣り合う検知層の領域である。換言すれば、検知層の表面は、環境空気との境界面を提供し、環境空気と相互作用する。
【0012】
仮想電極は、センサの検知動作中は物理的に存在しないことに留意されたい。実施形態によれば、仮想電極は、割合CAE /CBE を測定するサンプルセンサの検知層の表面に設けられてもよく、または、シミュレーションによって割合CAE /CBE を測定するために使用されてもよい。
【0013】
割合CBE /CAE は、当業者に知られているように、いくつかの異る方式または方法で測定することができる。
【0014】
一実施形態によれば、割合CBE /CAE は、有限要素法(FEM)によるシミュレーションによって測定されてもよい。このようなシミュレーション用に、市販のプログラム、例えばComsol Multiphysics (登録商標)ソフトウェアを使用することができる。
【0015】
実施形態によれば、FEMシミュレーションは、第1電極、第2電極、および仮想電極を含む電極構造部の幾何学的形状をシミュレートすることによって、割合CBE /CAE を導出する。実施形態によれば、割合CBE /CAEは、電極構造部間の誘電体の誘電率が均一であると仮定すると、電極構造部の幾何学的形状のみに依存する。
【0016】
対称電極構造部の場合、割合CBE /CAE =1となる。
【0017】
他の実施形態によれば、割合CBE /CAEは、測定によって、例えば、静電容量CAEおよびCBEによって形成される静電容量式分圧器を使用する測定によって測定されてもよい。そのような測定のために、仮想電極は、実際の電極として、または言い換えれば、例えば、検知層の表面上に導電層を形成することによって、検知層の表面上に物理的に設けても良い。
【0018】
上記の条件(不等式1および2)を確実に満たすために、実施形態では、割合CBE /CAE を正確に測定する必要がないことに留意されたい。むしろ、割合の大まかな仮定を行い、次に、上述の不等式において、大まかな仮定が最悪の場合でも不等式が満たされるように、一対の第1電位および一対の第2電位を選択することができる。
【0019】
実施形態によれば、電極構造部の幾何学的形状は、一定のままであり、測定中に変化しない。
【0020】
実施形態によれば、測定された静電容量は、検知層の特性または特徴、特に、検知層の材料の特性または特徴、特に、検知層の誘電率に依存する。
【0021】
実施形態によれば、検知層の表面と、検知層の表面を取り囲む電気構造との間の漏れ電流が、特に、検知層の表面の汚染の場合や検知層の表面での結露の場合に、減少し、特に、最小となるように、一対の第1電位と一対の第2電位とが、選択される。
【0022】
そのような電気構造部は、検知層を取り囲む任意の電気構造部でもよい。電気構造部は、特に、検知層の近傍に配置されたセンサの電気ハウジング及び/又は電気ライン又は電気回路である。
【0023】
実施形態によれば、第1測定段階と第2測定段階との間の第1電極と第2電極との中間電位は、任意の形状、特に長方形形状又は正弦波形状を有する。
【0024】
実施形態によれば、一対の第1電位と、一対の第2電位とは、それらが以下の条件のうちの少なくとも1つを満たすように付与される。
【0025】
【数2】
【0026】
このような実施形態によれば、第1電極の第1電位と、第1電極の第2電位とも、互いに異なる。これは、第1測定段階と第2測定段階との間で結果として生じる電荷差を増加させる。
【0027】
実施形態によれば、一対の第1電位と、一対の第2電位とは、以下の条件を満たすように付与される。
【0028】
【数3】
【0029】
実施形態によれば、第1電極の第1電位と、第1電極の第2電位とは、互いに異なっており、第2電極の第1電位と、第2電極の第2電位とは、互いに異なっている。
【0030】
両電極の電位を変化させることによって、測定回路の検知信号、特に検知電流は増加されることがある。
【0031】
実施形態によれば、一対の第1電位の平均電位は、一対の第2電位の平均電位と同じである。この実施形態は、特に、対称な電極構造部、すなわち、第1電極及び第2電極が検知層に対して対称に配置されて、検知層に対して同じ距離を有する電極構造部を有するセンサに適している。したがって、第1電極と環境との間の静電容量CAE と、第2電極と環境との間の静電容量CBEとは、同じ値を有する。
【0032】
本発明の実施形態は、結露する場合、検知層の表面と、検知層の表面を囲む外部電気構造部との間のインピーダンスは、無限大ではなく、これはこのインピーダンスを介して電流の損失をもたらすという本発明の発明者の洞察に基づいている。その結果、この電流損失は、第2電極を流れる電流を減少させ、したがって、何の対策なしには、センサは、結露状態を、湿度100%未満の湿度状態から区別することができない場合がある。
【0033】
本発明の実施形態によるセンサは、検知層の表面での結露または他の汚染の場合に、電流が外部電気構造部に失われることを、一対の電位の賢明な選択によって回避する。これは、測定回路による2つの状態の区別を容易にする。
【0034】
一実施形態によれば、測定回路は、特に、第2電極において、第1測定段階と第2測定段階との間の結果として生じた電荷差を検知するように構成されている。従って、測定回路は、第1測定段階と第2測定段階との間に蓄積される電荷差を評価する。すなわち、測定回路は、初期状態(第1測定段階の終了時の充電状態)を、最終状態(第2測定段階の終了時の充電状態)に比較する。しかしながら、そのような充電サイクルの実行は、考慮する必要はない。
【0035】
上述したように、実施形態によれば、第1電極と第2電極との間の総静電容量は、結露のない事例よりも、結露のある事例の方が大きい。したがって、本発明の実施形態による測定回路によって測定される結果として生じる電荷差は、結露がある事例において増加する。
【0036】
一実施形態によれば、測定回路は、結果として生じる電荷差をリファレンスコンデンサに転送し、結果として生じた電圧をリファレンスコンデンサで測定するように構成されている。一実施形態によれば、測定回路は、さらに、結果として生じた電圧から検知層の静電容量を測定するように構成されている。
【0037】
これは、結果として生じる電荷差を、測定可能な電圧に変換する効率的で信頼性のある方法である。リファレンスコンデンサの静電容量が分かっているので、検知層の静電容量は、基準容量、結果として生じた電圧、および第1および第2測定段階の間に付与された電位から導き出されことができる。
【0038】
一実施形態によれば、測定回路は、オフセットコンデンサを含む。測定回路は、結果として生じた電荷差からオフセット電荷を減算するように構成されている。
【0039】
このような実施形態が使用されて、0と対称であるリファレンスコンデンサに電荷が転送される。
【0040】
一実施形態によれば、測定回路は、積分器、特にスイッチドキャパシタ増幅器を含む。スイッチドキャパシタ増幅器は、結果として生じる電荷差を積分する、すなわち、第1測定段階から第2測定段階に切り替わるときに第2電極を流れる電流を積分するように構成されている。
【0041】
一実施形態によれば、積分器、特に、スイッチドキャパシタ増幅器は、演算増幅器として具体化される。このようなスイッチトキャパシタ増幅回路は、効率的な方法で実行され、製造される。
【0042】
一実施形態によれば、第1電極の第1電位は、第2電極の第2電位と同じである。そして、第1電極の第2電位は、第2電極の第1電位と同じである。
【0043】
2つの異なる電圧のみを有する、このように簡素化された一組の電位は、測定回路の効率的な設計および製造を容易にする。
【0044】
特に、第1電極の第1電位と、第2電極の第2電位とは、供給電圧電位であり、第2電極の第1電位と、第1電極の第2電位とは、接地電位である。または、第1電極の第1電位と、第2電極の第2電位とは、接地電位であり、第2電極の第1電位と、第1電極の第2電位とは、供給電圧電位である。
【0045】
このように簡略化された電位のセットは、測定回路の効率的な設計および製造を容易にする。その理由は、特に、対応する集積回路の接地電位および供給電圧電位が使用され、さらなる電圧発生または電圧変換が必要とされないためである。
【0046】
一実施形態によれば、センサは、第1電極および第2電極を含む第1金属層と、シールド構造部を含む第2金属層とを備える。シールド構造部は、複数のシールド電極を備えてもよい。
【0047】
シールド構造部は、電磁場のシールドを行う。加えて、そのようなシールド構造部は、エッチストップとなり、したがって、センサの効率的な製造を容易にし得る。
【0048】
一実施形態によれば、シールド構造部は、接地電位に電気的に接続されている。
【0049】
このような実施形態によれば、第2電極と接地面との間の寄生容量が、測定される。
【0050】
一実施形態によれば、シールド構造部は、第1電極に電気的に接続されている。
【0051】
このような実施形態によれば、第2電極と接地面との間の寄生容量は、2倍で測定される。
【0052】
一実施形態によれば、シールド構造部は、第2電極に電気的に接続されている。
【0053】
このような実施形態によれば、第2電極と接地面との間の寄生容量は、測定されない。
【0054】
本発明の別の態様の一実施形態によれば、静電容量を測定する方法が提供される。当該方法は、少なくとも第1電極と、第2電極と、第1電極及び第2電極の間に配置される検知層とを含む電極構造部を提供するステップを含む。当該方法は、さらに、第1測定段階において、第1電極及び第2電極に一対の第1電位を与え、第2測定段階において、第1電極及び第2電極に一対の第2電位を与えることによって、電極構造部の静電容量を測定するステップを含む。
【0055】
一対の第1電位は、第1電極の第1電位と、第2電極の第1電位とを含む。一対の第2電位は、第1電極の第2電位と、第2電極の第2電位とを含む。第2電極の第1電位と第2電極の第2電位とは、互いに異なる。
【0056】
一実施形態によれば、当該方法は、さらに、第2電極において、第1測定段階と第2測定段階との間で結果として生じた電荷差を検知するステップと、結果として生じた電荷差をリファレンスコンデンサに転送するステップとを含む。加えて、当該方法は、リファレンスコンデンサにおいて結果として生じた電圧を測定するステップと、結果として生じた電圧から電極構造部の静電容量を測定するステップとを含んでもよい。
【0057】
他の有利な実施形態は、従属請求項並びに以下の説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の一実施形態による静電容量式湿度センサの断面図を示す。
図2】本発明の実施形態による測定アプローチに含まれる静電容量の概略図を含む、図1の湿度センサの部分断面図を示す。
図3図2の部分断面図の対応する電気的等価回路の概略を示す。
図4】検知層の表面の実質的な汚染または結露を伴わない「正常な」測定状態を表す電気的等価回路を示す。
図5】検知層の表面の「局所的」汚染または結露状態を表す電気的等価回路を示す。
図6】検知層の表面の大規模な汚染または結露を伴う「広範囲的」汚染または結露状態を表す電気的等価回路を示す。
図7a】第1測定段階における本発明の一実施形態によるセンサの電極構造部の静電容量を測定する測定回路を示す図である。
図7b】第2測定段階における図5aの測定回路を示す。
図8a】第1測定段階における本発明の別の実施形態によるセンサの電極構造部の静電容量を測定する測定回路を示す図である。
図8b】第2測定段階における図6aの測定回路を示す。
図9】湿度測定を実行する方法の方法ステップのフローチャートを示す。
図10】本発明の一実施形態による測定装置の静電容量式センサの断面図を示す。
図11図10の例示的な測定装置の対応する電気的等価回路を示す。
図12】割合CAE /CBEを測定する例示的な測定装置を形成する図10のセンサの上面図を示す。
図13】別の電極構造部の割合CAE /CBE を測定する別の例示的な測定装置の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、以下の詳細な記載から、より良く理解され、上記以外の目的が明らかにされる。係る記載は、添付の図面を参照する。
【0060】
図1は、本発明の一実施形態による静電容量式センサ100の断面図を示す。静電容量式センサ100は、特に湿度センサとして具体化されてもよく、第1電極11および第2電極12を備える電極構造部10を備える。本実施例において、センサ100は、3つの第1電極11と2つの第2電極12とを含む。検知層15が、第1電極11と第2電極12との間に配置されている。第1電極11は、電極Aとしても示され、第2電極12は、電極Bとしても示される。電極構造部10は、第1または上部金属層21を形成する。検知層15は、湿度感知誘電率(humidity sensitive permittivity)を有する。したがって、電極構造部10は、湿度感知静電容量を有し、ポリマーを含んでもよく、または、ポリマーからなってもよい。検知層15は、第1電極11と第2電極12との間に延在し、斜線パターンで示されている。センサ100は、さらに、誘電体層18を備え、この誘電体層18は、第1金属層21と第2金属層22との間を電気的に絶縁する。第2金属層22は、第2最終金属層として示されてもよい。第2金属層22は、複数の電極23を備える。これらの電極23は、接地電位に電気的に接続され、故に、接地電極として示される。第2金属層22は、シールド構造部22を形成する。他の実施形態では、第2金属層22、特に電極23は、第1電極11または第2電極22に接続されてもよい。
【0061】
センサ100は、ベース基板14を備え、ベース基板14に接して、第2金属層22、誘電体層18、第1金属層21および検知層15が形成されている。ベース基板14は、特に、半導体基板、例えばSi基板からなる。
【0062】
検知層15は、検知環境30に対する面31を有する。検知環境30は、センサを取り囲む気体、特に環境空気であってもよい。検知環境30は、点線パターンによって示される。検知環境30は、検知層15の面31近傍のローカル検知環境30aと、さらなる検知環境30bとを包含する。さらなる検知環境30bは、センサより広い、又は換言すればより大きい領域を包含し、そして、遠隔又は離れた検知環境として示すこともできる。図2において、さらなる検知領域30bは、ローカル検知環境30aよりも低密度のドットで示されている。検知層15の面31は、検知層15と検知環境30との間に界面を作る。したがって、面31は、環境界面31としても示すことができる。
【0063】
環境空気は、特に、検知層15の面31を介して、検知層15と相互作用する。より詳細には、環境空気の湿気が検知層15内に拡散し、それによって、隣接する電極11および電極12間の検知層15の誘電率を変え、故に電極構造部10の静電容量を変化させる。この静電容量の変化が測定されて、環境空気30の湿度を検知する。換言すれば、湿度センサ100は、電極構造部10の静電容量から環境空気の湿度、すなわち、より一般的には、湿度センサ100を取り囲むガス環境の湿度を導き出す。
【0064】
このような測定のために、測定回路が、第1電極11及び第2電極12に接続されてもよい。
【0065】
図2は、湿度センサの部分断面図200を示し、より詳細には、図1に示されるような、センサ100の切り抜き部101を示し、本発明の実施形態による測定アプローチ用に考慮されるべき静電容量の概念図を含む。
【0066】
図3は、図2の部分断面図200の対応する電気的等価回路300の概略を示す。
【0067】
部分断面図200および電気的等価回路300は、第1電極Aと第2電極Bとの間に主静電容量CMAINを含む。第1電極Aは、電位VAに接続され、第2電極Bは電位VBに接続される。
【0068】
部分断面図200および電気的等価回路300は、検知層15の面31上の第1基準ノードNE1と第1電極11との間の静電容量CAEと、検知層15の面31上の第2基準ノードNE2 と第2電極12との間の静電容量CBEとを含む。換言すれば、静電容量CAE は、検知層15の面31上に配置された仮想電極と第1電極11との間の相互容量として定義してもよく、一方、CBEは、第2電極12と仮想電極との間の静電容量として定義してもよい。
【0069】
静電容量CAEは、インターフェース静電容量CAEとして表され、静電容量CBEは、インターフェース静電容量CBEとして表される。電気的等価回路300は、電極23の固定電位VG、特に接地電位と電極Aとの間の寄生容量CAPと、電極23の固定電位VG、特に接地電位と電極Bとの間の寄生容量CBPと、を備える。
【0070】
さらに、電気的等価回路300は、環境容量Cを含む。環境容量Cは、検知環境30の2つの仮想「ポイント」間、特に検知層15の面31上の2つの仮想ポイント間、特に基準ノードNE1,E2間の静電容量と考えられる。また、環境容量は、表面容量として表されてもよい。
【0071】
また、等価回路300は、第1基準ノードNE1 と第3基準ノードNE3 との間のインピーダンスZ0A と、第2基準ノードNE2 と第3基準ノードNE3との間のインピーダンスZ0B とを備える。第3基準ノードNE3は、浮動電位VEに接続される仮想ノードでもある。インピーダンスZ0A およびインピーダンスZ0Bは、抵抗性、静電容量性および/または誘導性であってもよく、検知層15の面31近傍のローカル検知環境30aのローカルインピーダンスと考えられる。インピーダンスZ0A ,Z0B は、CMAIN、CAE及びCBEから独立して変化することがある。
【0072】
さらに、等価回路300は、第3基準ノードNE3 と第4基準ノードNE4との間のインピーダンスZ0 を含む。第4番基準ノードNE4も、仮想ノードであり、電位V0に接続されている。インピーダンスZ0 は、検知層30の面31近傍のローカル検知環境30aと、センサ100のさらなる検知環境30bと、の間のインピーダンスと考えられる。インピーダンスZ0 は、CMAIN、CAE、CBE、Z0A及びZ0B から独立して変化しても良い。電位V0 は、センサの規定されたリモート電位として考えてもよい。特に、これは、検知層15の面31を囲む電気構造部50の平均電位として定義されてもよい。検知層15の面31を囲む電気構造部50は、単一の線で集約的に図示されている。電気構造部50は、例えば、センサの電線、電子回路または電気構造部を包含しても良い。センサに向けて、検知層の面の結露または汚染の場合に、漏れ電流ILが検知環境30を介して発生することがある。
【0073】
実施形態によれば、仮想電極は、CEを短絡することによってCAEおよびCBEを測定するために使用される電極と考えてもよい。したがって、このような測定に対し、Z0A =Z0B =Z0 =0 およびNE1 =NE2 =NE3 と仮定しても良い。短絡は、例えば、検知層の面に導電層を設けることによって行われてもよい。
【0074】
本発明の実施形態によれば、測定回路40が提供され、この測定回路は、第1測定段階において、第1電極A及び第2電極Bに一対の第1電位を与えることによって、検知層15の誘電率を測定する。次に、第2測定段階において、測定回路40は、第1電極A及び第2電極Bに一対の第2電位を与える。
【0075】
以下、図4図5および図6を参照して、3つの異なる測定状態を検討する。
【0076】
より詳細には、図4は、検知層15の面31に実質的な汚染又は結露がない「正常」、すなわち、通常の測定状態を表す電気的等価回路を示す。この場合、一般に、
(Z0A, Z0B, Z0)の絶対値 ≫ max (1/(wE), 1/(wAE), 1/(wBE))
と推測される。上記式において、wは、第1電極および第2電極の励起周波数である。この推測は、以下の推測に単純化されてもよい。
【0077】
【数4】
【0078】
次に、後者の推定は、単純化された電気的等価回路400に帰着する。したがって、第1電極11と第2電極12とは、CAE、CBE及びCEの直列接続と、主静電容量CMAINとの並列接続によって、電気的に接続される。
【0079】
この通常状態において、第2電極12に流れる電流ibnは、次のように算出することができる。
【0080】
【数5】
【0081】
項「d/dt」は、通常、印加電圧VA及びVBの導関数を表す。各段階において一定電圧が印加される2段階測定の場合、それは、2つの段階で印加される電圧間の差を示す。
【0082】
上記の式から分かるように、第1電極および第2電極の両方の電位を変化させることによって、電流ibn、したがってセンサ信号、すなわち測定回路の検知信号が増加する場合がある。
【0083】
以下のさらなる検討のために、以下のような初期の仮定を行うものとする。
【0084】
【数6】
【0085】
これにより、関係演算子
【0086】
【数7】
【0087】
の検討が容易になる。
しかしながら、同等の検討が、反対の仮定、すなわち、
【0088】
【数8】
がなされてもよい。
【0089】
後者の場合、対応する符号および関係演算子も反転しなければならない。
【0090】
図5は、検知層15の面31の局所的又は小規模の汚染又は結露を仮定している汚染又は結露状態を表す電気的等価回路を示す。このような局所的汚染または結露状態に対して、一般に、(Z0A 及びZ0B)の絶対値 << 1/(w*CE) が想定される。この式において、w は第1電極と第2電極の励起周波数であり、Z0の絶対値 >> Z0A ,Z0である。これは、以下のようにさらに簡略化することができる。
【0091】
【数9】
【0092】
後者の仮定によって、簡略化された電気的等価回路500になる。従って、第1電極11と第2電極12とは、主静電容量CMAINと、CAE及びCBEの直列接続との並列接続によって電気的に接続される。
【0093】
この局所的汚染状態において第2電極12に流れる電流iB1は、次のようにして計算される。
【0094】
【数10】
【0095】
したがって、直列接続において、静電容量、すなわちCEを省略することができ、その結果、総静電容量が大きくなる。
【0096】
検知層の表面に局所的な結露を有する湿度センサの実施例において、第2電極での電流の増加は、より大きな静電容量、従って、より大きな湿度として解釈される。これは、係る局所的な結露が最大湿度として解釈されるので、いかなる問題も生じさせない。したがって、この事例は、以下の検討のために無視しても良い。
【0097】
図6に、検知層15の面31の大面積又は大規模な汚染又は結露を想定した汚染又は結露状態を表す電気的等価回路を示す。このような大面積の汚染または結露は、特に、検知層15を越えて延在して、検知層15を囲む電気構造部50への漏れ電流になるかもしれない汚染または結露状態を含む。この事例に対して、一般に(Z0A、Z0B、Z0)の絶対値 << 1/(wE)と推定される。この式において、wは、第1電極と第2電極との励起周波数である。この推定は、さらに、以下の推定に簡略化することができる。

0A = Z0B =Z0 = 0
【0098】
この後者の推定が、簡略化された電気的等価回路500になる。この回路500において、CEは短絡される。
【0099】
次に、第2電極12に流れる電流iBgは、次のようにして計算することができる。
【0100】
【数11】
【0101】
したがって、iBgは、CAEに依存せず、CBEを流れる電流は、
【0102】
【数12】
【0103】
のみに依存するが、
【0104】
【数13】
【0105】
には依存しない。
【0106】
本発明の実施形態によれば、第2電極の電極電流iBに対して、以下の条件が望まれる。
【0107】
【数14】
【0108】
すなわち、第2電極12での電流は、通常の測定状態におけるものよりも、大面積汚染または大面積結露(「広範囲の汚染」)の場合は、大きくならなければならない。したがって、センサは、汚染・結露が大きい場合に、より大きなセンサ信号を送出する。以下の検討のために、以下のように推測される。
【0109】
【数15】
【0110】
すなわち、V0は、時間に対し一定であると仮定する。これは、例えば、電子回路設計エンジニアに知られているように、電極構造部の周辺部の中にある電気構造部50の電気回路、配線およびリード線の適切な配置によって達成される。特に、これは、電極構造部の近傍、特にセンサチップの面近傍に測定線(clocked lines)を配置することを回避することによって達成することができる。次に、上記条件を、以下のようにさらに特定しても良い。
【0111】
【数16】
【0112】
一般に、CBE /CEは、不明であり、検知層の誘電率と共に変化し、検知環境の誘電率にも依存する。不明なCBE /CE に対し、
【数17】
に対する最も厳しい条件は、CBE /CE = 0 またはCE = ∞である。条件は、以下の初期仮定と共に、
【0113】
【数18】
【0114】
以下のようにさらに簡単になる。
【0115】
【数19】
【0116】
割合CBE /CAEは、電極構造部の配置によって判別される。それは、経時的に変化せず、また、測定量に依存して変化しない。
【0117】
本発明の実施形態により提供される第1測定段階および第2測定段階を含む2段階測定に対し、上記の条件は、次のように表すことができる。
【0118】
【数20】
【0119】
上記式において、VA1は、第1測定段階における第1電極11の第1電位を示す。VA2は、第2測定段階における第1電極11の第2電位である。VB1は、第1測定段階における第2電極12の第1電位である。VB2は、第2測定段階における第2電極12の第2電位である。VA1、VA2、VB1及びVB2に、各測定段階の終了時に達する。第1測定段階から第2測定段階への移行は、任意のコースをとることができる。
【0120】
実施形態によれば、条件の上記セットは、以下のような条件を含む。
【0121】
【数21】
【0122】
第1電極11と第2電極12とが対称的に配置されている特殊な事例において、特に、第1電極11と第2電極12とが検知層15の面31に対して同じ距離にある場合には、割合CBE /CAE =1である。したがって、このような電極の対称配置に対する上記条件は、以下のように表すことができる。
【0123】
【数22】
【0124】
すなわち、一対の第1電位の平均電位は、一対の第2電位の平均電位と同じである。
【0125】
すなわち、電極Aおよび電極Bの平均電位は、第1測定段階および第2測定段階の間、一定に保たれる。
【0126】
電極Bの電位が第1測定段階と第2測定段階との間で変化するので、寄生容量CBPも、電極23が接地電位にあるものと仮定して測定される。
【0127】
割合CBE /CAE は、複数の異なる方法で測定されても良い。上述のように、係る測定は、非対称電極配置の事例においてのみ必要とされる。一方、対称電極配置において、割合は1である。
【0128】
一実施形態によれば、割合CBE /CAE は、有限要素法(FEM)によるシミュレーションによって、例えば、Comsol Multiphysics(登録商標)ソフトウエアによって測定することができる。このようなシミュレーションのために、検知層15の面31上に仮想電極が設けられている。
【0129】
他の実施形態によれば、割合CBE /CAEは、測定によって、例えば、静電容量CAEおよびCBEによって形成される静電容量式分圧器に基づいた測定によって測定されてもよい。
【0130】
後者の実施形態を、図10および図11を参照して以下に詳細に説明する。図10は、静電容量式センサ1000の断面図を示す。このセンサ1000は、本質的に図1のセンサ100に対応する。しかしながら、センサ1000は、検知層15の面31上に導電層1010を備える。センサ1000は、割合CAE/CBEを測定する例示的な測定装置を構成する。導電層1010は、仮想電極13を構成する。仮想電極13は、測定電極として、特に、割合CAE/CBEを測定する補助測定電極と考えられる。導電層1010は、例えば、スプレーまたはスパッタリングによって形成された金属層でもよい。実施形態によれば、このような層は、例えば、100nmの厚さを有するスパッタリング金層(AU層)でもよい。金層は、ワイヤボンディングによって、またはプローブと接触させることができる既存のパッドに接続させてもよい。
【0131】
導電層1010は、対応する一連のセンサの割合CBE /CAE を測定するために、1回だけ、または1のサンプルセンサに対してのみ形成されてもよい。測定は、実験室環境で実施しても良い。前述したように、このような方法は、特に、非対称の電極配列に対して有用であり、対称的な配列に対しては、割合CBE /CAE は、1であると仮定してもよい。
【0132】
図11に、例示的な測定装置の対応する電気的等価回路を示す。図6の等価回路と比較すると、図11の等価回路は、静電容量CMAIN、CAPおよびCBPを有しない。後者の静電容量は、第1電極11および第2電極12が規定された電位での測定に対して動作されるので、無視するか、または省略してもよい。
【0133】
第1測定工程では、所定のセットの電圧VA1およびVB1が、それぞれ第1電極11および第2電極12に印加される。実施形態によれば、VA1およびVB1は、以下のように選択される。
A1 = VB1 = 0V
【0134】
次に、導電層1010の電位VE1が測定される。
【0135】
さらなるステップ(第2ステップ)において、別の(異なる)セットの電圧VA2およびVB2が、それぞれ第1電極11および第2電極12に印加される。この事例において、電圧のセットは、特に、VA2 = -VB2, 、例えば、VA2 =1VおよびVB2=-1Vとなるように選択される。次に、導電層1010の電位、すなわちVE2の変化が測定される。この電位の変化は、CAEとCBEとの静電容量式分圧器によって測定される。
【0136】
静電容量CAEとCBE が直列に接続されるので、静電容量CAE 及び静電容量CBEにおいてそれぞれに対応する電荷QCAEと電荷QCBEとは、特に、電荷差ΔQAEと電荷差ΔQBE とは、互いに等しくなる。
【0137】
したがって、
【0138】
【数23】
【0139】
さらに別の実施形態によれば、割合CBE /CAE は、直接的ではなく、むしろ間接的に測定されてもよい。
【0140】
より具体的には、2つの測定を行ってもよい。第1測定において、検知環境が100%またはおよそ100%の相対湿度を提供する。このような相対湿度は、例えば、結露が生じるまで、密閉された環境(例えば、センサを収納する封止された箱)をゆっくりと冷却することによって、適切な実験機器を用いて提供される。センサの静電容量を連続的に測定することにより、結露の直前と直後とのセンサ信号の差を測定することができる。このような手順は、異なるレベルのVA1、VA2、VB1およびVB2について繰り返されるべきである。
【0141】
さらに、第2測定が行われる。第2測定において、図6に示されるように、結露層が、広範囲の汚染・結露状態に相当する検知層30に加えられる。このような結露層は、例えば、検知層30上に水を塗布して薄い層を形成することによって、形成することができる。
【0142】
実施形態によれば、電圧VA1, A2, B1 およびVB2 は、第2電極において結果とて生じる電荷差が、相対湿度100%での測定と、広範囲汚染・結露状態における測定とで、同じになるように、実験・試行によって選択される。
【0143】
したがって、不等式1において、例えば、不等号は等号に置換してもよく、割合CBE /CAE は、以下のように導出される。
【0144】
【数24】
【0145】
不等式1または2が充足されることを確実にするために、割合CBE /CAE を正確または厳密な態様で測定することは、実施形態によっては必要ではないことに留意されたい。むしろ、割合CBE /CAE の大まかな仮定を実行し、次に、仮定の最悪事例の状態でさえ不等式が満たされるように、例えば不等式1または2において、上記のように電圧値を選択してもよい。
【0146】
一実施例として、不等式1において、VA1 =2V、VA2 =1V、(割合CBE /CAE の仮定値)=0.75と仮定する。次に、例えば、いずれの事例においても、積((VB2 -VB1BE/CAE )≧1Vとなるように、電位差(VB2 - VB1)を、例えば3Vのように、十分大きな値に選択することができる。電位差(VB2 -VB1)が3Vとなる実施例において、不等式1は、0.75の推定値の代わりに、割合CBE /CAE =0.34 に対して充足される。
【0147】
図7aおよび図7bは、本発明の実施形態によるセンサの、例えば図1のセンサの検知層の静電容量を測定する測定回路700を示す。より具体的には、図7aは、第1測定段階における測定回路700を示し、図7bは、第2測定段階における測定回路700を示す。
【0148】
測定回路700は、第1回路部701と第2回路部702とを備える。
【0149】
第1回路部701は、第1電極A/11と、第2電極B/12と、それらの間にある検知層とを備える電極構造部を備える。左側の回路部701は、さらに、電圧発生器(不図示)を含み、供給電圧のみを示す。測定回路700の電圧発生器は、第1測定段階において、電位VDDを電極構造部の第2電極Bに付与し、接地電位を第1電極Aに与える。検知されるべき静電容量をCSで示す。第2電極Bと接地面との間に、寄生容量CP1が存在する。
【0150】
第2回路部702は、積分器710、特にスイッチドキャパシタ増幅器を形成する。積分器710は、以下に説明するように、結果として生じる電荷差を積分するように構成されている。積分器710は、スイッチドキャパシタ増幅器として実施され、演算増幅器711を備える。演算増幅器711の正の入力部は、接地される。フィードバックパスは、演算増幅器711の出力部を、積分コンデンサCINTを介して、演算増幅器711の負の(反転)入力部に接続する。積分コンデンサCINTは、リファレンスコンデンサとも呼ばれる。負の入力部は、寄生容量CP2を介して接地電位に接続される。第1測定段階において、積分コンデンサCINT は短絡される。さらに、第2回路部702は、第1測定段階中は、第1回路部701に接続されない。
【0151】
図7bに示される第2測定段階において、測定回路の電圧発生器は、電位VDDを電極構造部の第1電極Aに供給し、接地電位を第2電極Bに供給する。第2回路部702は、第2測定段階の間、第1回路部701に接続される。より詳細には、演算増幅器711の負の入力部は、第2電極Bに接続される。したがって、第2電極Bの接地電位は、演算増幅器711の仮想接地電位によって提供される。さらに、積分コンデンサCINT は、これ以降は短絡されない。
【0152】
測定回路700は、当業者には明らかなように、適切なスイッチによって、第1測定段階と第2測定段階との間で切り替えられる。対応するスイッチは、説明を容易にするために、図7aおよび図7bには示さない。
【0153】
図7bに示される第2測定段階において、測定回路700は、第2電極Bで生じる結果として生じた電荷差を積分コンデンサCINTに移すように構成されている。すなわち、積分器710は、第2測定段階において第1電極及び第2電極を流れる電流を積分する。
【0154】
積分コンデンサCINT は、リファレンスコンデンサを形成する。
【0155】
測定回路700は、リファレンスコンデンサCINT と演算増幅器711の出力とで得られた電圧Vout を提供する。次に、得られた電圧Vout は、センサによって使用されて、検知層の誘電率と対応する相対湿度とを測定する。
【0156】
図8aおよび図8bは、本発明の実施形態によるセンサ、例えば図1のセンサの検知層の誘電率を測定する測定回路800を示す。より詳細には、図8aは第1測定段階での測定回路800を示し、図8bは第2測定段階での測定回路800を示す。
【0157】
測定回路800は、第1回路部701と、第2回路部702と、第3回路部803とを備える。回路部701および702は、図7aおよび図7bを参照して図示および説明された、回路部701および702に対応する。
【0158】
第3回路部803は、オフセット容量COを有する。第1測定段階において、オフセット容量COは、電圧VDDでオフセット電荷QOまで充電される。
【0159】
第2測定段階において、オフセット容量CO は、演算増幅器711の負の入力部と接地電位との間に接続される。従って、測定回路800は、オフセット電荷QOを結果として生じた電荷差から減算するように構成されている。これは、結果として生じる電荷差が対称的な方法で測定されるという効果をもたらす。より詳細には、積分容量CINTは0に対称な電荷信号(QSense - Q0)で充電されてもよい。特に、(Qsense_max -Q0)=-(Qsense_min-Q0) である。
【0160】
図9は、相対湿度を測定する方法の方法ステップを示すフローチャートである。当該方法は、例えば、上述した本発明の実施形態によるセンサを用いて実行することができる。
【0161】
ステップ910において、少なくとも第1電極および第2電極を含む電極構造部を設ける。
【0162】
ステップ920において、検知層を設ける。検知層は、第1電極と第2電極との間に配置され、湿度の影響を受ける誘電率を有する。第1電極、検知層および第2電極は、コンデンサを形成する。
【0163】
ステップ930において、第1測定段階が実行され、一対の第1電位が、第1電極及び第2電極に付与される。
【0164】
ステップ940において、第2測定段階が実行され、一対の第2電位が、第1電極及び第2電極に付与される。
【0165】
一対の第1電位は、第1電極の第1電位と、第2電極の第1電位とを含む。一対の第2電位は、第1電極の第2電位と、第2電極の第2電位とを含む。第2電極の第1電位と、第2電極の第2電位とは、互いに異なる。
【0166】
ステップ950において、第2電極において、第1測定段階と第2測定段階との間で結果として生じた電荷差が、測定回路、特に読出回路によって検知される。より詳細には、第1測定段階と第2測定段階との間のコンデンサの電荷の変化が、第1電極及び第2電極を通過する電流になる。第2電極における電流は積分されて、コンデンサで観察される電荷差になる。
【0167】
ステップ960において、結果として生じる電荷差は、リファレンスコンデンサに、特に既知の静電容量を有するコンデンサに転送される。
【0168】
ステップ970において、結果として生じた電圧が、リファレンスコンデンサで測定される。この測定された電圧によって、電極構造部の静電容量が測定される。電極構造部の測定された静電容量は、検知環境の湿度の測定値である。
【0169】
図12は、本発明の実施の形態による、割合CAE /CBE を測定する例示的な測定装置を形成する図10のセンサ1000の上面図1200を示す。測定目的のために追加された仮想電極13は、検知層15の全表面31を覆う。第1電極11及び第2電極13は、仮想電極13の下に配置され、互いにかみ合う形状を有する電極に形成されている。
【0170】
図13は、本発明の他の実施形態による割合CAE /CBE を測定する例示的な測定配置の上面図1300を示す。
【0171】
測定装置1300は、また、本発明の一実施形態によるセンサの検知層を覆う仮想電極13を備える。しかし、図13の実施形態では、第1電極11及び第2電極12は、互いにかみ合う形状を有する電極ではなく、簡単な長方形の形状のみを有する。
【0172】
他の多数の電極構造部が、実施形態による第1電極および第2電極に対して使用することができることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13