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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電子ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021554080
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029179
(87)【国際公開番号】W WO2021084824
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2019196044
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 航平
(72)【発明者】
【氏名】新井 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健一
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-182088(JP,A)
【文献】特開2005-196746(JP,A)
【文献】特開2001-100901(JP,A)
【文献】実開平06-065928(JP,U)
【文献】特開2015-103143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の筐体と、
前記筒状の筐体の中空部内に、前記筐体の軸心方向が長手方向となるように配設される回路基板と、
前記回路基板に配設される電子回路部と、
柱状形状を備え、前記柱状形状の中心線方向の一方の端面から導出されている正及び負の電極導体が前記回路基板側に延伸される状態で、前記筐体の前記中空部内の軸心方向において前記回路基板のペン先側とは反対側に配設される電池と、
を備え、
前記電池は、前記正及び負の電極導体が導出されている前記柱状形状の中心線方向の一方の端面と前記回路基板の長手方向の端部との間に離間空間が存在すると共に、前記正及び負の電極導体の先端側が前記回路基板と接触する状態で配設されており、
前記回路基板と前記正及び負の電極導体の先端側とは、はんだ付け部により電気的に接続されて、前記電池の電圧が前記電子回路部に電源電圧として供給されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項2】
前記離間空間の少なくとも前記正及び負の電極導体の付け根側は樹脂で覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項3】
前記電池の前記正及び負の電極導体は、前記離間空間の前記筐体の軸心方向の中間部に設けられている壁部に形成されている貫通部を介して前記回路基板側に延伸されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項4】
前記離間空間の内の、少なくとも、前記壁部と前記電池の前記正及び負の電極導体が導出されている前記柱状形状の中心線方向の一方の端面との間の空間に樹脂が充填されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン。
【請求項5】
前記壁部よりもペン先側に位置する前記回路基板の前記電子回路部が形成されている面は、前記電池の前記正及び負の電極導体の先端側とのはんだ付け部を含んで、樹脂で覆われている
ことを特徴とする請求項4に記載の電子ペン。
【請求項6】
前記樹脂は、紫外線硬化樹脂である
ことを特徴とする請求項2、請求項4又は請求項5に記載の電子ペン。
【請求項7】
前記電池の前記正及び負の電極導体は、前記回路基板の前記上面に平行な方向に延伸されていると共に、前記電池の中心線方向の一方の端面から離れるにしたがって互いの距離が大きくなるようにされている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項8】
前記電池の前記正及び負の電極導体の先端側は、前記回路基板の上面と下面との間の側端面において前記回路基板と接触している
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項9】
前記電池の前記正及び負の電極導体は、前記回路基板の前記上面に平行な方向に延伸されていると共に、前記電池の中心線方向の一方の端面から離れるにしたがって互いの距離が大きくなるようにされており、
前記回路基板の前記電池の前記正及び負の電極導体が接触する側の端部は、前記電池の前記正及び負の電極導体の先端部と前記側端面において接触するように、徐々に幅が狭くなるような形状とされている
ことを特徴とする請求項に記載の電子ペン。
【請求項10】
前記回路基板の前記電子回路部が形成されている面は、前記電池の前記正及び負の電極導体の先端側とのはんだ付け部を含んで、樹脂で覆われている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項11】
ボート状の形状を有し、前記壁部を備えるホルダーに、前記回路基板と前記電池とが、前記壁部に隔てられた状態で、軸心方向に並べられて収納されている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電子ペン。
【請求項12】
前記ホルダーのペン先側には、ペン先側部材が嵌合される嵌合部が形成されていると共に、前記嵌合部は筒状部の構成とされており、前記筒状部の外周面には、前記筐体の内壁面に弾性的に密着するリング状シーリング部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項11に記載の電子ペン。
【請求項13】
前記筐体の前記電池の回路基板側とは反対側には、前記筐体の内壁面に弾性的に密着するリング状シーリング部材を備える後端部材が設けられている
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項14】
ペン先側にフェライトコアに巻回されたコイルを備え、前記電子回路部に前記コイルと並列に接続されて共振回路を構成するコンデンサを含み、電磁誘導方式の構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項15】
前記フェライトコアのペン先側と前記筐体の内壁面に弾性的に密着するリング状シーリング部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項14に記載の電子ペン
【請求項16】
ペン先側に導電性の芯体を備えると共に、前記電子回路部に前記芯体を通じて送出する信号を発生する信号発生回路を含み、静電容量方式の構成とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【請求項17】
前記電池は、リチウムイオン電池である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池を内蔵する電子ペンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子ペンとしては、電磁誘導方式や静電結合方式など、種々の方式のものがあるが、最近は、その高機能化が進んでおり、種々の電子回路部を搭載するものが増加している。そのため、そのような電子ペンでは、電子回路部に電源電圧を供給する電池を内蔵する必要がある(例えば特許文献1(特許第5762659号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5762659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の電子ペン用の電池としては、高エネルギー化及び電子ペンの細型化に応じた小型で細型の形状のものが要求されており、例えばチウムイオン電池が好適である。しかし、このリチウムイオン電池などの小型で細型の電池は、取り扱いに配慮が必要であり、耐衝撃、正負の電極導体へのストレスの低減などが要求されるという課題がある。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決することができるようにした電子ペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、
筒状の筐体と、
前記筒状の筐体の中空部内に、前記筐体の軸心方向が長手方向となるように配設される回路基板と、
前記回路基板に配設される電子回路部と、
柱状形状を備え、前記柱状形状の中心線方向の一方の端面から導出されている正及び負の電極導体が前記回路基板側に延伸される状態で、前記筐体の前記中空部内の軸心方向において前記回路基板のペン先側とは反対側に配設される電池と、
を備え、
前記電池は、前記正及び負の電極導体が導出されている前記柱状形状の中心線方向の一方の端面と前記回路基板の長手方向の端部との間に離間空間が存在すると共に、前記正及び負の電極導体の先端側が前記回路基板と接触する状態で配設されており、
前記回路基板と前記正及び負の電極導体の先端側とは、電気的接続固定部により電気的に接続されて、前記電池の電圧が前記電子回路部に電源電圧として供給されるように構成されている
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0007】
上述の構成の電子ペンにおいては、電池の正及び負の電極導体は、柱状形状の中心線方向の一方の端面から回路基板側に延伸され、先端側が前記回路基板と接触する状態で配設される。そして、電池は、その正及び負の電極導体が導出されている柱状形状の中心線方向の一方の端面と回路基板の長手方向の端部との間に離間空間が存在する状態で、電気的接続固定部により回路基板と電気的に接続されて固定される。
【0008】
したがって、ペン先側からの力は、電池の正及び負の電極導体の軸心方向において受けると共に、上記離間空間の部分で受ける構成であるので、電池について、耐衝撃及び正負の電極導体へのストレスの低減の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明による電子ペンの実施形態が用いられる電子機器の例を説明するための図である。
図2】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例を説明するための分解斜視図である。
図3】この発明による電子ペンの実施形態における筆圧検出モジュールの構成例を説明するための分解斜視図である。
図4】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
図5】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
図6】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
図7】この発明による電子ペンの実施形態の内部構成例における要部を説明するための図である。
図8】この発明による電子ペンの実施形態のペン先側の構成例を示す図である。
図9】この発明による電子ペンの実施形態の後端側の構成例を示す図である。
図10】この発明による電子ペンの他の実施形態の一例を説明するための図である。
図11】この発明による電子ペンの他の実施形態の他の一例を説明するための図である。
図12】この発明による電子ペンの他の実施形態の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明による電子ペンの実施形態を、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態の電子ペン1は、位置検出装置に対して電磁誘導方式で指示位置を伝達するタイプの場合である。
【0011】
図1は、この実施形態の電子ペン1を用いる電子機器200の一例を示すものである。この例では、電子機器200は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置の表示画面200Dを備える高機能携帯電話端末であり、表示画面200Dの下部(裏側)に、電磁誘導方式の位置検出装置202を備えている。
【0012】
この例の電子機器200の筐体は、電子ペン1を収納する収納凹穴201を備えている。使用者は、必要に応じて、収納凹穴201に収納されている電子ペン1を、電子機器200から取り出して、表示画面200Dを入力面として位置指示操作を行う。
【0013】
電子機器200においては、表示画面200D上で、電子ペン1により位置指示操作がされると、表示画面200Dの裏側に設けられた位置検出装置202が、電子ペン1で操作された位置及び筆圧を検出し、電子機器200の位置検出装置202が備えるマイクロコンピュータが、表示画面200Dでの操作位置及び筆圧に応じた表示処理を施す。
【0014】
この実施形態の電子ペン1においては、例えば樹脂からなる筒状のケース(筐体)2の中空部内に、電子ペン1の複数個の部品が軸心方向に並べられて収納されている。そして、筒状のケースの一端側は先細形状にされると共に、その端部に開口(図1では図示を省略)が設けられ、その開口を通じて後述する棒状の芯体3の先端部32がペン先として露出するようにされている。そして、ケース2のペン先側とは反対側は、後端キャップ21が嵌合されて、防水性及び防塵性を考慮したシーリングが確保される状態で閉塞されている。
【0015】
そして、この例では、電子ペン1は、サイドスイッチを備える。すなわち、ケース2の内部の中空部には、図2に示すようにプリント基板10が設けられ、このプリント基板10上にサイドスイッチ104が載置されている。そして、電子ペン1のケース2の側周面の、サイドスイッチ104に対応する位置には貫通孔(図示は省略)が穿かれており、この貫通孔部分に、図1に示すように、サイドスイッチ用の押下操作子22が、貫通孔を通じてプリント基板に載置されているサイドスイッチ104を押下することができるように露呈される状態で配設されている。この場合、押下操作子22によるサイドスイッチ104の押下操作に対しては、位置検出装置202を備える電子機器200側で所定の機能が割り当て設定される。例えば、この例の電子機器200においては、押下操作子22によるサイドスイッチ104の押下操作は、マウスなどのポインティングデバイスにおけるクリック操作と同様の操作として割り当て設定が可能である。
【0016】
そして、この例では、電子ペン1の筒状のケース2の内部の中空部には、図2に示すように、ペン先側部材と、プリント基板10と、電池11とが、軸心方向に順に並べられて収納されている。
【0017】
図2は、電子ペン1のケース2内に収納される部品群を、部品毎に並べた分解斜視図である。なお、図2には図示しなかったが、この実施形態では、ケース2の中心軸に直交する方向の外形形状(ケース2の横断面の輪郭形状に等しい)は、扁平形状とされている。そして、このケース2の内部の中空部も、その横断面形状がケース2の外形形状に応じた扁平形状とされており、ケース2内に収納される部品も中空部の扁平形状に対応した形状とされている。
【0018】
図2に示すように、ケース2の中空部内には、ペン先側から順に、ケース2の軸心方向(以下、説明の簡単のために、単に軸心方向という)に、芯体3と、シーリング部材を構成するフロントキャップ4と、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と、押圧部材7と、筆圧検出モジュール8と、基板ホルダー9とが配置される。芯体3、フロントキャップ4、コイル部材5、コイル部材ホルダー6、押圧部材7及び筆圧検出モジュール8は、ペン先側部材を構成する。
【0019】
基板ホルダー9は、絶縁性材料例えば樹脂からなり、ボート状の形状を備え、その軸心方向の中間部に基板収納部91を備える。そして、基板ホルダー9は、軸心方向において、基板収納部91のペン先側には、ペン先側部材との嵌合部92を備え、基板収納部91のペン先側とは反対側には、電池収納部93を備える。
【0020】
基板収納部91及び電池収納部93は、軸心方向の開口部91a及び93aを備え、それぞれプリント基板10及び電池11が収納されて係止されるように構成されている。ただし、この実施形態では、基板収納部91と電池収納部93とは軸心方向において壁部94により隔てられている。
【0021】
プリント基板10は回路基板の一例であり、この例では、プリント基板10の上面10aと、プリント基板10の下面10b(後述の図8参照)の両方に、電子回路部品及び導電パターンが形成されている。
【0022】
また、基板ホルダー9の嵌合部92は筒状に構成されており、後述するように、ペン先側部材の一部を構成する筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84を嵌合するように構成されている。
【0023】
次に、ペン先側部材の構成例について説明する。芯体3は、この例では、硬質の非導電性材料の例としての樹脂、例えばポリカーボネート、合成樹脂やABS(acrylonitrile-butadiene-styrene)樹脂等からなり、芯体本体部31と、ペン先となる先端部32とで構成される。芯体3は、ケース2の中空部内に上記の部品の全てが収納されている状態で、ケース2のペン先側の開口から芯体本体部31が挿入されて、後述するように筆圧検出モジュール8に設けられる押圧部材7と係合することで取り付けられる。この場合に、芯体3は、電子ペン1に対して、挿脱可能とされている。芯体3は、先端部32に印加される圧力(筆圧)を、筆圧検出部81の感圧部83に伝達する役割をする。
【0024】
コイル部材5は、コイル51と、このコイル51が巻回された磁性体コア、この例ではフェライトコア52とからなる。コイル部材5のフェライトコア52は、この例では、中心軸位置に、棒状の芯体3の芯体本体部31を挿通するための貫通孔52aを有する柱状形状を備える。このフェライトコア52は、この実施形態では、ケース2の中空部の横断面形状に対応した扁平の横断面形状を有し、ペン先側は、先細となるテーパー部52bの構成されている。
【0025】
フロントキャップ4は、フェライトコア52の電子ペンのペン先側となるテーパー部52b側に設けられる。このフロントキャップ4は、弾性を有する材料、例えば弾性ゴムで構成されており、フェライトコア52のペン先側を覆うようなキャップ形状を備えると共に、芯体3の芯体本体部31を挿通するための開口(貫通孔)4aを有している。そして、この例では、フロントキャップ4の外観は、図示のように、裾広がりのスカート形状とされている。
【0026】
コイル部材ホルダー6は、フェライトコア52のテーパー部52bとは反対側の端部52c側に設けられる。このコイル部材ホルダー6は、弾性を有する材料、例えば弾性ゴムで構成されている。コイル部材ホルダー6は、フェライトコア52の端部52cを嵌合収納する嵌合部61を備えると共に、筆圧検出モジュール8の後述する筆圧伝達部材82の中空部821aに圧入嵌合される突部62を備える。
【0027】
コイル部材ホルダー6の嵌合部61には、コイル非巻回部52cの外形形状に対応した凹孔61aが設けられている。そして、突部62には、芯体3の芯体本体部31が挿通される貫通孔(図示な省略)が形成されている。この突部62の貫通孔は、嵌合部61の凹孔61aと連通している。したがって、コイル部材ホルダー6には、嵌合部61及び突部62を通して、芯体3の芯体本体部31を挿通する中空空間が形成されている。
【0028】
そして、コイル部材5のフェライトコア52の端部52cがコイル部材ホルダー6の嵌合部61に嵌合された状態では、フェライトコア52には、芯体3の芯体本体部31が挿通される貫通孔52aが形成されていることから、コイル部材5と、コイル部材ホルダー6と通じて、芯体3の芯体本体部31を挿通する中空空間が形成されることになる。
【0029】
コイル部材ホルダー6の突部62側に設けられる押圧部材7は、芯体3の芯体本体部31の端部31aが圧入嵌合される嵌合凹穴7aを備える。芯体3は、押圧部材7の存在により、抜け落ちない状態となる。ただし、芯体3を先端部32側に強く引けば、芯体本体部31の端部31aと、押圧部材7の嵌合凹穴7aとの嵌合が解除されて、芯体3は、引き抜くことができ、芯体3は交換可能である。
【0030】
筆圧検出モジュール8は、この実施形態では、筆圧検出部81と筆圧伝達部材82とが係合されて結合されることで構成されている。図3は、筆圧検出モジュール8の構成例をより詳細に説明するための分解斜視図である。また、図4(A)は、ケース2内に収納された状態における筆圧検出モジュール8の近傍の断面図である。そして、図4(B)は、筆圧伝達部材82を、筆圧検出部81との結合部側からみたときの外観斜視図である。
【0031】
この例の筆圧検出部81は、芯体3に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサを用いた場合であり、図3及び図4(A)に示すように、この実施形態では、誘電体831と、スペーサ832と、導電性弾性体833とで構成されている感圧部83と、当該感圧部83を保持すると共に、電気的な接続を行う機能を備えるホルダー84とからなる。ホルダー84は、絶縁性材料例えば樹脂からなり、図3に示すように、感圧部83を保持する保持部841と、この保持部841に保持されている感圧部83が備える2個の電極を基板ホルダー9に収納されているプリント基板10と電気的に接続するための接続部842とを一体として備える。
【0032】
筆圧伝達部材82は、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841と係合することで、感圧部83を、ホルダー84の保持部841に保持させるようにする。筆圧伝達部材82は、また、前述したように、コイル部材ホルダー6の突部62が圧入嵌合される中空部821aを備える。筆圧検出部81と係合して結合した筆圧伝達部材82の中空部821aに、コイル部材ホルダー6の突部62が圧入嵌合されることで、筆圧検出モジュール8と、コイル部材5とが結合される。
【0033】
筆圧検出部81の感圧部83は、容量可変キャパシタとして、誘電体831とリング状スペーサ832と導電性弾性体833からなる。誘電体831の一方の面831a上には、導体層が形成され、容量可変キャパシタの第1の電極を構成する。芯体3からの筆圧が、押圧部材7を介して、更に筆圧伝達部材82を介して導電性弾性体833に印可され、これにより、当該導電性弾性体833が誘電体831の他方の面831b側にリング状スペーサ832を介して押し込まれて変形させられる。この変形により導電性弾性体833が誘電体831の他方の面831bに接触する。この導電性弾性体833と誘電体831の他方の面831bとの接触面積が第2の電極を構成する。
【0034】
したがって、芯体3に印可される筆圧の大きさによって、導電性弾性体833と誘電体831の他方の面831bとの接触面積、すなわち、誘電体831が第1の電極及び第2の電極で挟まれることで構成されている可変容量キャパシタの第2の電極の面積が変化し、この可変容量キャパシタの容量が変化する。この可変容量キャパシタの容量の変化を検出することで、筆圧を検出する。
【0035】
筆圧検出部81のホルダー84は、樹脂を用いた例えば射出成型品として、保持部841と接続部842とを一体に備える構成とされている。接続部842は、プリント基板10の上面10aに対して平行な方向であって軸心方向に突出する板状の突出部8421を備える。突出部8421は、筆圧検出モジュール8が基板ホルダー9と嵌合してプリント基板10と係合したときに、プリント基板10の上面10aと丁度接するように設けられている。
【0036】
この実施形態では、ホルダー84には、導電性の立体微細パターンとして、保持部841から接続部842にまでに亘って、2個の端子部材843及び844(理解を容易にするために、図2及び図3では、斜線を付して示す)が、軸心方向に形成されている。2個の端子部材843及び844は、図2及び図3に示すように、突出部8421において、筆圧が印加される方向に直交する方向の両端縁において露出する状態で形成されている。
【0037】
この実施形態では、筆圧検出部81のホルダー84の保持部841に感圧部83を収納保持することにより、感圧部83の第1の電極及び第2の電極は、接続部842の2個の端子部材843及び844に自動的に電気的に接続される状態となる。
【0038】
なお、図3で斜線を付して示すように、ホルダー84の保持部841の凹部841aの底部には、感圧部83の第1の電極(誘電体831の一方の面831a側)と接触して電気的に接続されるように、端子部材844の一方の端部844aが露出して形成されている。また、同様に、図3で斜線を付して示すように、ホルダー84の保持部841には、端子部材843の一方の端部843aが露出して形成されており、感圧部83の第2の電極となる導電性弾性体833の突出部833aが、この端子部材843の一方の端部843aと衝合することで接触して電気的に接続される。
【0039】
そして、この実施形態では、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の2個の端子部材843及び844は、基板ホルダー9に収納されているプリント基板10に形成されている導電パターンと、電気的に接続されるように構成される。
【0040】
筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82は、図3及び図4(B)に示すように、内部に中空部821aを備える筒状体部821と、筒状体部821の中空部821aの中空空間を閉塞する障壁822とが一体的に形成されて構成されている。
【0041】
障壁822は、この例では、弾性部材、例えばエラストマーからなる薄い板状体で構成されており、その板厚方向に弾性的に変移可能なように構成されている。筒状体部821は、弾性を有しない材料、例えば樹脂により構成されていてもよい。
【0042】
そして、筒状体部821の中空部821aの障壁822が設けられていない側は開口部とされ、この開口部側から、中空部821a内にコイル部材ホルダー6の突部62が圧入嵌合される。
【0043】
芯体3の芯体本体部31が、コイル部材5のフェライトコア52の貫通孔52a、コイル部材ホルダー6の嵌合部61の凹孔61a及び突部62の貫通孔62aを挿通されて押し込まれると、芯体3の芯体本体部31の端部31aは、図4(A)に示すように、筆圧伝達部材82の中空部821aの押圧部材7の嵌合凹穴7aに圧入嵌合される。
【0044】
したがって、芯体3に筆圧が印加されると、その筆圧が押圧部材7に伝達されて、当該押圧部材7が筆圧伝達部材82の障壁822を押圧し、障壁822は、その印加された筆圧に応じて軸心方向に弾性的に変移する。
【0045】
そして、ホルダー84の保持部841に感圧部83を収納している状態において、ホルダー84に対して、筆圧伝達部材82を軸心方向に結合させると、図5に示すように、両者が結合して、これにより、感圧部83がホルダー84の保持部841に保持されるようになる。
【0046】
そして、この筆圧伝達部材82がホルダー84に係合して結合する状態では、筆圧伝達部材82の障壁822は、図4(A)に示すように、感圧部83の導電性弾性体833を押圧することが可能な状態になる。
【0047】
そして、前述したように、芯体3に筆圧が印加されると、その印加された筆圧に応じて押圧部材7により筆圧伝達部材82の障壁822が押圧され、障壁822は、その印加された筆圧に応じて軸心方向に弾性的に変移し、この障壁822の弾性的な変移により、感圧部83の導電性弾性体833が押圧される。このため、スペーサ832を介して離間されている導電性弾性体833と誘電体831とが接触し、その接触面積が筆圧に応じて変化する。この導電性弾性体833と誘電体831との接触面積に応じた静電容量が、感圧部83の第1の電極と第2の電極との間に得られる。すなわち、感圧部83としての容量可変キャパシタの静電容量から、筆圧を検出することができる。
【0048】
以上のようにして、コイル部材5が、コイル部材ホルダー6を介して筆圧検出モジュール8に嵌合されて結合されてペン先側部材が構成される。そして、このペン先側部材の筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84の接続部842が基板ホルダー9の嵌合部92を介してプリント基板10と結合される。
【0049】
基板ホルダー9の嵌合部92は、この実施形態では、図2に示すように、筆圧検出モジュール8の筆圧検出部81のホルダー84の接続部842が挿入される中空部を有する筒状形状を有する。そして、図2に示すように、プリント基板10には、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の、感圧部83の2個の電極に接続されている2個の端子部材843,844と電気的に接続されるように位置合わせされて形成されている導体パターン101,102が形成されている。
【0050】
そして、この実施形態では、筆圧検出モジュール8のホルダー84の接続部842は、基板ホルダー9の嵌合部92に挿入されると、基板ホルダー9の基板収納部91に収納されているプリント基板10の上面10aと接触するように係合する。これにより、筆圧検出部81に保持されている感圧部83の2個の電極と、プリント基板10の上面10aに形成されている導体パターン101及び102とが、接続部842の2個の端子部材843,844を通じて、電気的に接続される。なお、導電パターン101及び102は、プリント基板10の上面10aに設けられている、コイル51と共に共振回路を構成するキャパシタ103の両端に接続されている。
【0051】
そして、この実施形態では、図2及び図5に示すように、基板ホルダー9の嵌合部92には、コイル51の一方及び他方の端部51a及び51bと端子部材843及び端子部材844との接続部分(半田付け部分)が、筆圧検出モジュール8との嵌合を妨げないようするために、切欠き92c及び切欠き92d形成されている。
【0052】
また、この実施形態では、図3図4(B)及び図5に示すように、筆圧検出モジュール8の筆圧伝達部材82には、軸心方向の凹溝824a,凹溝824bが形成されていると共に、筆圧検出部81のホルダー84の周側面にも、筆圧伝達部材82の凹溝824a,凹溝824bと連なるようにされた軸心方向の凹溝845a,凹溝845bが形成されている。
【0053】
そして、コイル部材5のコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bは、この凹溝824a,凹溝824b及び凹溝845a,凹溝845b内を通って、筆圧検出部81のホルダー84の接続部842の端子部材843及び端子部材844に半田付けされて接続されている。
【0054】
このようにしてコイル51の一方及び他方の端部51a及び51bを端子部材843及び端子部材844に電気的に接続することで、端子部材843及び端子部材844がプリント基板10のキャパシタ103に接続されていることから、コイル51とっキャパシタ103とからなる共振回路が構成されると共に、当該共振回路に並列に、感圧部83により構成される容量可変キャパシタが接続されることになる。これにより、コイル51の一方及び他方の端部51a及び51bを、プリント基板10にまで延長して、プリント基板10の上面10aにおいて、半田付けすることが不要になる。
【0055】
そして、この実施形態では、基板ホルダー9の嵌合部92には、図2及び図4(A)に示すように、ケース2内に収納したときに、ケース2の中空部の内壁との間の隙間を塞ぐシーリング部材95が設けられている。図6は、このシーリング部材95の外観を示すもので、弾性体、例えばゴム製のリング状部材で構成されている。そして、基板ホルダー9の嵌合部92には、図4(A)に示すように、その周側部にリング状凹溝92aが形成されており、このリング状凹溝92a内にシーリング部材95が固定収納されている。なお、この実施形態では、シーリング部材95が嵌合部92の周方向に回転してしまわないように、シーリング部材95には、突起95aが形成されていると共に、嵌合部92のリング状凹溝の一部には、シーリング部材95の突起95aを収納する切欠き92b(図4(A)参照)が形成されている。
【0056】
このシーリング部材95により、ケース2内の中空部のプリント基板10が配置される空間は、筆圧検出モジュール8が存在する芯体3を突出させる開口部2a(図7参照)側の空間とは分離される。
【0057】
そして、この実施形態では、図7に示すように、ケース2の中空部のペン先側の開口部2a近傍には、前述したように、フェライトコア52のテーパー部52bを覆うように弾性ゴムで構成されたフロントキャップ4が配されている。この場合、フロントキャップ4は、ケースキャップ21がケース2に嵌合されたときには、ケース2の開口部2a側に押圧された状態となる。したがって、フロントキャップ4は、コイル部材5のフェライトコア52の先端側と、ケース2の中空部の内壁面との間の隙間を無くすようにシーリングするシーリング部材となる。この例では、フロントキャップ4は、上述したように、裾広がりのスカート形状を備えているので、図7に示すように、フロントキャップ4とケース2の内壁面とは2か所で密着し、シーリングによる防塵効果及び防水効果が向上する。
【0058】
このフロントキャップ4によるケース2の開口部2a側でのシーリングにより、フェライトコア52の貫通孔52aと連なる空間と、ケース2の内部のペンモジュール部品が収納される中空部の空間とが分離される。フェライトコア52の貫通孔52aと連なる空間は、コイル部材ホルダー6の凹孔61a及び貫通孔62a、筆圧伝達部材82の中空部821aからなり、筆圧伝達部材82の障壁822により閉塞されている。
【0059】
そして、コイル部材ホルダー6の突部62と筆圧伝達部材82との嵌合部においては、コイル部材ホルダー6と筆圧伝達部材82の中空部821aの内壁と隙間なく密着することで、シーリングが確保されている。したがって、フェライトコア52の貫通孔52aと連なる空間は、フェライトコア52の貫通孔52aの開口側以外は、他とは隔絶されている独立の空間となっている。なお、この実施形態の電磁誘導方式の電子ペン1の場合、この空間内には、図4(A)に示すように、芯体3と押圧部材7とが存在するだけで、電気的な部品は存在せず、また、電気的な接続部分も存在しない。
【0060】
次に、基板ホルダー9のペン先側とは反対側の構成、特に、プリント基板10と電池11との電気的な接続部分についての構成例について、図2及び図8を参照して説明する。なお、図8は、電池11とプリント基板10とを結合する際の手順を説明するための図でもある。
【0061】
この実施形態では、電池11としては、リチウムイオン電池が用いられ、充電が可能とされている。電池11の充電方式としては、電磁誘導を用いる方式、電界結合を用いる方式など種々の方式があるが、いずれの方式であってもよい。
【0062】
この例の電池11は、柱状形状、この例では円柱状形状を備えている。そして、図2及び図8に示すように、柱状形状の電池11の中心線方向の一端側の端面11cから正及び負の電極導体11a及び11bが導出され、かつ、この正及び負の電極導体11a及び11bがプリント基板10側に延伸される状態で、基板ホルダー9の電池収納部93に収納されるようにされる。
【0063】
この場合に、正及び負の電極導体11a及び11bは、その中心線が、電池11の柱状形状の中心線位置を含む平面又はこの平面に平行な平面に含まれるように、電池11の端面11cから導出されている。
【0064】
ただし、この実施形態では、正及び負の電極導体11a及び11bは、図2及び図8(A),(C),(E)に示すように、電池11の端面11cに対して直交する方向に延伸されるのではなく、端面11cから離れるにしたがって、徐々に互いの距離が大きくなるような状態で延伸されている。すなわち、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bは、柱状形状の電池11の中心線方向、すなわち、電子ペン1の軸心方向に対して、互いに逆方向に所定の鋭角角度だけずれた方向となるようにされている。
【0065】
そして、基板ホルダー9の基板収納部91と電池収納部93との間に設けられている壁部94には、図2及び図8に示すように、電池11の対の電極導体11a及び11bが、当該壁部94を貫通して基板収納部91側に突出するようにするための貫通部の例としての貫通孔94a及び94bが設けられている。この例では、貫通孔94a及び94bは、基板収納部91に収納されているプリント基板10の板面位置と同一となる壁部94の位置に形成されている。
【0066】
一方、プリント基板10の長手方向の電池11側の端部は、図2及び図8(A),(C),(E)に示すように、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの延伸方向に合わせて、徐々に幅が狭くなるようにされたテーパー状側面10c及び10dを有する形状とされている。そして、プリント基板10の上面10aの、当該長手方向の電池11側の端部においては、図8(A)に示すように、テーパー状側面10cに沿って電源端子の一方となる導体パターン105が形成されていると共に、テーパー状側面10dに沿って電源端子の他方となる導体パターン106が形成されている。
【0067】
そして、この実施形態では、以上のような構成とすることで、図2及び図8に示すように、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bは、壁部94の貫通孔94a及び94bをそれぞれ挿通して基板収納部91側に延伸されたときには、図8(A)~(F)に示すように、プリント基板10の長手方向の電池11側の端部における、上面10aと下面10bとの間のテーパー状側面10c及び10dと接触する状態となるようにされている。
【0068】
この場合に、基板ホルダー9の電池収納部93には、電池11は、その端面11cが壁部94に突き当たるように収納されるのではなく、図8(A)に示すように、その端面11cが、壁部94から所定距離dだけ離れた状態となるように収納される。そのため、基板ホルダー9の電池収納部93には、電池11の端面11cが突き当たる段部93bが設けられている。したがって、壁部94と電池11の端面11cとの間には、軸心方向の距離dの離間空間96が形成されるようにされる。
【0069】
次に、図8(A)~(F)を参照して、電池11とプリント基板10とを結合する際の手順を説明する。
【0070】
まず、図8(A)に示すように、基板収納部91にプリント基板10が収納されている状態において、電池11を、その正及び負の電極導体11a及び11bを壁部94の貫通孔94a及び94bを挿通させて電池収納部93に収納させる。すると、前述したように、電池11は、電池収納部93に、壁部94との間に離間空間96を形成する状態で収納され、その正及び負の電極導体11a及び11bの先端部は、プリント基板10のテーパー状側面10c及び10dと接触する状態となる。
【0071】
図8(B)は、図8(A)の状態をプリント基板10の上面10aに平行な側面方向から見た図であり、説明の便宜上、基板ホルダー9の部分のみを破断した状態の側面図である。なお、図8(B)に示すように、この実施形態では、プリント基板10には、その上面10a上のみならず、下面10bにも電子部品が搭載されており、例えばICからなる制御回路107や、例えばブルートゥース(登録商標)規格の近距離無線通信を行う無線通信部108などが搭載されている。なお、無線通信部108は、制御回路107の制御にしたがって、位置検出装置202と無線通信により、筆圧検出部81で検出した筆圧情報や、電子ペン1の識別情報などを送信すると共に、位置検出装置202からの指示信号を受信する。
【0072】
次に、このようにプリント基板10のテーパー状側面10c及び10dに対して電池11の正及び負の電極導体11a及び11bが接触している状態において、図8(C)に示すように、導体パターン105及び106と、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bとを電気的に接続するように、電気的接続固定手段の例として、この例でははんだ付けをする。はんだ付けによるはんだ付け固定部は、電気的接続固定部の例である。
【0073】
図8(D)は、図8(C)の状態をプリント基板10の上面10aに平行な側面方向から見た図であり、説明の便宜上、基板ホルダー9の部分のみを破断した状態の側面図である。なお、図8(C)及び(D)において、はんだ付け固定部は、黒く塗りつぶして示している。
【0074】
以上のようにして、プリント基板10と電池11との電気的な接続が終了したら、この実施形態では、図8(E)に示すように、電池収納部93の電池11の端面11cと壁部94との間の離間空間96に樹脂を充填して硬化させ、樹脂充填部97とする。また、基板ホルダー9の基板収納部91のプリント基板10の上面10a上及び下面10b上にも樹脂を充填して、プリント基板10の上面10a及び下面10bを覆う樹脂充填部98及び樹脂充填部99を形成するようにする。この例では、樹脂としては、紫外線硬化樹脂を用いる。
【0075】
図8(F)は、図8(E)の状態をプリント基板10の上面10aに平行な側面方向から見た図であり、説明の便宜上、基板ホルダー9の部分のみを破断した状態の側面図である。なお、図8(E)及び(F)において、樹脂充填部98及び樹脂充填部99は、網点て塗り潰して示している。
【0076】
なお、図8(E),(F)では、サイドスイッチ104の上部もすべて樹脂で覆うように示したが、実際上は、サイドスイッチ104の押下操作子22により押圧されてスイッチ切り替えを行うサイドスイッチ104の上面は、樹脂で覆われずに露出される状態となる。
【0077】
以上のようにして形成された、プリント基板10及び電池11が保持される基板ホルダー9の嵌合部92にペン先側部材が結合されたペンモジュールが、ケース2の中空部に、ケース2の後端側から収納された後、後端キャップ21により、ケース2の後端側が閉塞されることで、電子ペン1が完成する。
【0078】
図9は、後端キャップ21が嵌合されたケース2の後端側の構成を示す断面図である。ただし、電池11は断面とはしていない。この図9に示すように、後端キャップ21は、ケース2の中空部の形状に応じた柱状形状を備える。そして、この実施形態では、図9に示すように、後端キャップの柱状形状部には、例えば弾性ゴムなどの弾性材料からなるリング状のシーリング部材24が取り付けられており、これにより、ケース2の中空部の内壁面との間の隙間を無くすようにシーリングされる。
【0079】
したがって、この実施形態では、このシーリング部材24の存在により、ケース2の後端側の開口を通じた水分や塵埃の侵入を防ぐことができ、防水及び防塵ができる。また、ケース2のペン先側の開口に対する防水及び防塵は、前述したように、フロントキャップ4と、基板ホルダー9の嵌合部92のシーリング部材95により実現できる。そして、ケース2に、サイドスイッチ104の押下操作子22用の開口を設けた場合においても、プリント基板10の上面10a上及び下面10b上は、樹脂充填部98及び99で覆われていると共に、電池11の端面11cと壁部94との間の離間空間96は、樹脂充填部97で覆われているので、それぞれ防水及び防塵の構成となっている。
【0080】
そして、この実施形態では、ペン先側からの力は、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの軸心方向において受けると共に、離間空間96の部分で受ける構成であるので、電池11について耐衝撃及び正負の電極導体へのストレスの低減の効果を得ることができる。
【0081】
そして、この実施形態では、基板ホルダー9の基板収納部91と電池収納部93との間には、壁部94が設けられており、芯体3に印可される筆圧や衝撃荷重により、プリント基板10に加わる軸心方向の力は、プリント基板10の後端部が衝合している壁部94で受け止められて、電池11に直接的に加わらないようにされている。そして、電池11に軸心方向の力が加わったとしても、電池11の端面11cと壁部94との間に離間空間96で吸収され、加わる力が軽減される。
【0082】
しかも、正及び負の電極導体11a及び11bは、軸心方向に対して傾いた方向に延伸されているので、軸心方向の力に対する耐性が大きくなる。すなわち、正及び負の電極導体11a及び11bが、電池11の端面11cに対して垂直の方向であって、軸心方向に平行な方向に導出されている場合には、軸心方向の力をそのまま正及び負の電極導体11a及び11bが受けることになる。これに対して、正及び負の電極導体11a及び11bが、軸心方向に対して傾いた方向に延伸されている場合には、その傾き角に応じて、軸心方向の力と、軸心方向に直交する方向の力とに分割されるので、軸心方向の力をすべて受ける場合に比べて受ける力が小さくなる。
【0083】
そして、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの先端部は、プリント基板10の後端部のテーパー状側面10c及び10dで接触して、かつ、その部分ではんだ付けされて電気的接続固定されるので、テーパー状側面10c及び10dで、正及び負の電極導体11a及び11bの先端部を係合させる状態となる。したがって、電池11について耐衝撃及び正負の電極導体へのストレスの低減の効果を、より大きく得ることができる。
【0084】
さらに、この実施形態では、電池11の端面11cと壁部94との間の正及び負の電極導体11a及び11bの付け根部分を含む離間空間96は樹脂充填部97で固化されているので、電池11の軸心方向の力に対する耐性がより大きくなる。また、上述したように、この樹脂充填部97は、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの付け根部分を含む防塵及び防水の役割もするという効果を奏する。
【0085】
[他の実施形態又は変形例]
なお、上述の実施形態では、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの先端部側は、プリント基板10の後端部のテーパー状側面10c及び10dで接触するように構成したが、図10(A)及び(B)に示すように、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの先端部側は、プリント基板10Aの上面10Aa又は下面10Abの一方、図10の例では、上面10Aaと接触するようにして、電気的接続固定するようにしてもよい。なお、図10(B)に示すように、この図10の例では、プリント基板10Aの後端部には、テーパー状側面は形成されず、矩形の形状のままとされている。
【0086】
図10(A)は、図8(D)と同様に、基板ホルダー9の部分を破断した状態で示すプリント基板10Aと電池11との接続固定部の近傍を示す図であり、また、図10(B)は、図8(C)と同様に、図10(A)の状態をプリント基板10Aの上面10Aa側から見た図である。
【0087】
これらの図10(A)及び(B)に示すように、この例においては、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bは、壁部94Aの貫通孔94Aa及び94Abを挿通して、基板収納部91側に延伸されて、基板収納部91に収納されているプリント基板10Aの上面10Aaと接触するようにされる。この場合に、図10(B)に示すように、プリント基板10Aの上面10Aaには、正及び負の電極導体11a及び11bが接触する位置に、電源端子の一方及び他方を構成する導体パターン105A及び106Aが形成されている。
【0088】
そして、図10(A)及び(B)に示すように、プリント基板10Aの導体パターン105A及び106A上に接触している電池11の正及び負の電極導体11a及び11bを、はんだ付け(図10(A)及び(B)において黒く塗りつぶして示してある)して、両者を電気的接続固定する。
【0089】
その後、図8(E)及び(F)に示したのと同様にして、壁部94と電池11の端面11cとの間の離間空間96を紫外線硬化樹脂で充填するとともに、プリント基板10Aの上面10Aa及び下面10Abを、樹脂で覆うようにする。
【0090】
この図10の例によっても、上述と同様の作用効果が得られる。
【0091】
また、図11(A)及び(B)に示すように、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bの一方が、プリント基板10Bの上面10Baに接触し、他方がプリント基板10Bの下面10Bbに接触するように構成し、それぞれ電気的接続固定するように構成してもよい。なお、図11(B)に示すように、この図11の例では、プリント基板10Bの後端部には、テーパー状側面は形成されず、矩形の形状のままとされていると共に、電源端子の一方及び他方を構成する導体パターン105B及び106Bは、プリント基板10Bの上面10Baと下面10Bbとの別々の面に形成されている。
【0092】
図11(A)は、図8(D)と同様に、基板ホルダー9の部分を破断した状態で示すプリント基板10Bと電池11との接続固定部の近傍を示す図であり、また、図11(B)は、図8(C)と同様に、図11(A)の状態をプリント基板10Bの上面10Ba側から見た図である。
【0093】
これらの図11(A)及び(B)に示すように、この例においても、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bは、壁部94Bの貫通孔94Ba及び94Bbを挿通して、基板収納部91側に延伸される。この場合に、貫通孔94Baと貫通孔94Bbとは、プリント基板10Bの上面10Baに平行な方向ではなく、図11(A)に示すように、壁部94Bの高さ方向に僅かに異なる位置に形成され、これにより、この例では、正の電極導体11aの先端部が、基板収納部91に収納されているプリント基板10Bの上面10Baと接触するようにされると共に、負の電極導体11bの先端部が、基板収納部91に収納されているプリント基板10Bの下面10Bbと接触するようにされる。
【0094】
そして、この場合に、図11(B)に示すように、プリント基板10Bの上面10Baには、正の電極導体11aの先端部が接触する位置に、電源端子の一方を構成する導体パターン105Bが形成され、また、プリント基板10Bの下面10Bbには、負の電極導体11bの先端部が接触する位置に、電源端子の他方を構成する導体パターン106Bが形成されている。
【0095】
そして、図11(A)及び(B)に示すように、プリント基板10Bの導体パターン105B及び106B上に接触している電池11の正及び負の電極導体11a及び11bを、はんだ付け(図11(A)及び(B)において黒く塗りつぶして示してある)して、両者を電気的接続固定する。
【0096】
その後、図8(E)及び(F)に示したのと同様にして、壁部94と電池11の端面11cとの間の離間空間96を紫外線硬化樹脂で充填するとともに、プリント基板10Bの上面10Ba及び下面10Bbを、樹脂で覆うようにする。
【0097】
この図11の例によっても、上述と同様の作用効果が得られる。
【0098】
なお、上述の実施形態では、壁部94、94Bに形成される貫通部としては、貫通孔94a、94b、94Ba、94Bbを用いた。しかし、壁部に形成される貫通部としては、貫通孔に限られるものではなく、図12に示すような貫通溝であってもよい。
【0099】
すなわち、図12は、基板ホルダー9の電池収納部93の横断面を示すもので、この例の壁部94Cは、電池11の正及び負の電極導体11a及び11bを、壁部94Cを貫通させて、基板収納部91側に延伸させるための貫通溝94Ca及び94Cbを備える。この例の場合には、樹脂を離間空間96に充填させたり、プリント基板10,10Bの上面10a,10Ba上を樹脂で覆ったりするときに、貫通溝94Ca,94Cbにも樹脂が入り込んで、正及び負の電極導体11a及び11bを覆うようになる。
【0100】
[その他の実施形態]
以上の実施形態は、電子ペンが電磁誘導方式の場合であったが、アクティブ静電方式の電子ペンの場合にも、この発明は適用可能である。すなわち、アクティブ静電方式の電子ペンの場合には、ペン先側部材において、コイルが巻回されるフェライトコアの代わりに、導電性の芯体を備えるように構成されると共に、プリント基板に形成される電子回路が、導電性の芯体から位置検出装置の位置検出センサに送出する信号を発生する信号発生回路を備えるなどが異なるだけで、その他の構成は同様とすることができる。
【0101】
図2の例を参照して、アクティブ静電方式の電子ペンの場合の構成を説明すると、基板ホルダー9の基板収納部91に、アクティブ静電方式の電子ペン用の電子回路を搭載したプリント基板10を収納すると共に、電池収納部93に電池11を収納して、上述したように電気的な結合部分を形成するように構成することができる。そして、基板ホルダー9の嵌合部92に、筆圧検出モジュール8を嵌合させる構成も同様とすることができる。
【0102】
そして、芯体3を導電性のものとすると共に、コイルを巻回したフェライトコアの代わりに、例えば金属パイプなどの、芯体を貫通させて当該芯体を静電シールドするシールド部材を筆圧検出モジュールに嵌合させるように構成することができる。この場合には、シールド部材の先端にフロントキャップ4を被せる構成とすることができる。
【符号の説明】
【0103】
1…電子ペン、2…ケース(筐体)、3…芯体、4…フロントキャップ、5…コイル部材、8…筆圧検出モジュール、9…基板ホルダー、10,10A,10B…プリント基板、11…電池、11a,11b…正及び負の電極導体、11c…電池11の端面、21…後端キャップ、24…シーリング部材、91…基板収納部、92…嵌合部、93…電池収納部、94…壁部、95…シーリング部材
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