(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】カールフィッシャー滴定のための試薬組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20240702BHJP
G01N 31/16 20060101ALI20240702BHJP
C07D 233/56 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G01N31/00 B
G01N31/16 Z
C07D233/56
(21)【出願番号】P 2021556769
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 US2020025104
(87)【国際公開番号】W WO2020198549
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-17
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】シーカンプ、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】コノパツキ、マルコ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-147650(JP,A)
【文献】特開平03-015751(JP,A)
【文献】特開平08-054383(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0127726(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109406713(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00-31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物であって、前記試薬組成物は、
(1) 二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せと、
(2) 以下の構造を有するイミダゾールの誘導体であって、
【化1】
式中、R、R
1、及びR
2の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはない、イミダゾールの誘導体と、
(3) アルコールと、
(4) 前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大
15重量パーセントの量で存在する、少なくとも1つのアミノ酸と、を含み、
前記二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せに対する前記イミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である、試薬組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンである、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項3】
前記
少なくとも1つのアミノ酸は、前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大
10重量パーセントの量で存在する、請求項
1または2に記載の試薬組成物。
【請求項4】
前記プロリンは、前記試薬組成物の総重量に基づいて、
0.1~
2重量パーセントの量で存在する、請求項2に記載の試薬組成物。
【請求項5】
前記プロリンは、前記試薬組成物の総重量に基づいて、
0.2~
0.5重量パーセントの量で存在する、請求項2に記載の試薬組成物。
【請求項6】
前記二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せは、前記試薬組成物の
0.05~
1モル/リットルの量で存在し、
前記イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、前記試薬組成物の
0.5~
5モル/リットルの量で存在し、
前記少なくとも1つのアミノ酸は、前記試薬組成物の総重量に基づいて、
0.2~
0.5重量パーセントの量で存在し、
前記アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項7】
前記二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せは、前記試薬組成物の
0.05~
1モル/リットルの量で存在し、
前記イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、前記試薬組成物の
0.5~
5モル/リットルの量で存在し、
前記少なくとも1つのアミノ酸は、前記試薬組成物の総重量に基づいて、
0.1~
2重量パーセントの量で存在し、
前記アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項8】
カールフィッシャー滴定を介して試料中の水の量を決定するための方法であって、前記方法は、
A. 前記試料を準備する工程と、
B. 試薬組成物を準備する工程であって、前記試薬組成物は、
(1) 二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せと、
(2) 以下の構造を有するイミダゾールの誘導体であって、
【化2】
式中、R、R
1、及びR
2の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはない、イミダゾールの誘導体と、
(3) アルコールと、
(4) 前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大
10重量パーセントの量で存在する、少なくとも1つのアミノ酸と、
(5) 任意選択的にヨウ素(I
2)と、を含み、
前記二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せに対する前記イミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である、試薬組成物を準備する工程と、
C. 前記試薬組成物を用いて前記試料を滴定する工程と、を含む、方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物であって、前記試薬組成物は、
(1) 二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せと、
(2) 以下の構造を有するイミダゾールの誘導体であって、
【化3】
式中、R、R
1、及びR
2の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはない、イミダゾールの誘導体と、
(3) アルコールと、
(4) 前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大
10重量パーセントの量で存在する、少なくとも1つのアミノ酸と、
(5) ヨウ素(I
2)と、を含み、
前記二酸化硫黄
、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル又はそれらの組合せに対する前記イミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である、試薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、カールフィッシャー滴定用の1成分及び2成分試薬組成物、並びに試薬組成物を使用して試料中の水の量を決定する方法に関する。本開示は、より具体的には、試薬組成物中のイミダゾール及びアミノ酸の誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カールフィッシャー法による、すなわちカールフィッシャー滴定を介する水の決定は、以下の反応を利用しており、
(1)SO2+ROH+B →BHSO3R、
(2)BHSO3R+I2+H2O+2B→BHSO4R+2BH、
(3)SO2+I2+H2O+3B→BSO3+2BHI、
(4)BSO3+H2O+B→BHSO4+BH
式中、Bは塩基であり、ROHはアルコールである。この滴定は、2つの基本形態、すなわち容量滴定及び電量滴定として実行される。
【0003】
古典的カールフィッシャー滴定では、試薬は亜硫酸アルキルを含み、水の存在下で酸化されて硫酸アルキルを生成する。カールフィッシャー滴定は、典型的には、アルコール溶液中(メタノールなど)で、又は化学量論的若しくは最小量のアルコールの存在下で実行される。アルコールの使用は、カールフィッシャー反応の化学量論を安定化させ、反応したヨウ素と水との比は、1:1である。
【0004】
SO2及びピリジンを含む試薬の使用も記載されており、ピリジンは過剰に使用される。しかしながら、その弱塩基性のために、ピリジンは、上記のアルキル-亜硫酸中間体を完全に中和することができない。その結果、反応は遅くなり、完了せず、終点が安定しない。この安定性の欠如のため、結果の再現性は非常に乏しいことが多い。加えて、ピリジンは有害な臭気を有する。更に、そのような系では、決定可能な水当量は、実験条件に大きく依存する。例えば、そのような系では、ピリジン-SO3付加物を生成し、滴定結果を偽り得る水消費性副反応(反応(4))に関与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ピリジンは、その後、亜硫酸アルキルに対する親和性の高いより強い塩基となる。例えば、イミダゾールは、有害な臭気を有さないこと以外に、ピリジンより更に利益を有することが見出された。イミダゾールは、反応が急速に完了することを可能にし、安定した終点を提供する。後に、研究者らは、第2の塩基、2-メチルイミダゾールをイミダゾールに添加することにより、安定性が高まり、望ましくない結晶化の外観が低減されることを見出した。しかしながら、毒性の懸念は残っている。したがって、改善されたカールフィッシャー試薬を開発する機会が残っている。
【0006】
本開示は、2成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物を提供する。試薬組成物は、(1)二酸化硫黄又はその誘導体と、(2)以下の構造を有するイミダゾールの誘導体と、を含む。
【化1】
式中、R、R
1、及びR
2の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはない。試薬組成物はまた、(3)アルコールと、(4)試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約10重量パーセントの量で存在する少なくとも1つのアミノ酸と、を含む。更に、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体対のモル比は、1:1超である。
【0007】
本開示はまた、1成分カールフィッシャー滴定のための試薬を提供する。この試薬組成物は、(1)二酸化硫黄又はその誘導体と、(2)イミダゾールの誘導体と、(3)アルコールと、(4)少なくとも1つのアミノ酸と、(5)ヨウ素(I2)と、を含む。
【0008】
本開示は、カールフィッシャー滴定を介して試料中の水の量を決定するための方法を更に提供する。本方法は、試料を準備する工程と、任意選択的にヨウ素(I2)を含む試薬組成物を準備する工程と、試薬組成物を用いて試料を滴定して、その中の水の量を決定する工程と、を含む。
【0009】
少なくとも1つのアミノ酸の含有は、滴定測定の標準偏差を減少させ、それによって滴定測定及び水の量の決定をより正確にする。加えて、少なくとも1つのアミノ酸の含有は、滴定を実施するのに必要な時間を減少させる。更に、本開示の試薬組成物は、典型的には、当該技術分野において既知であるように、様々な政府又は民間機関によって定義される、発癌性、変異原性、又は生殖毒性(CMR)である物質であるCMR物質を不含である。これにより、様々な環境における試薬組成物の安全性及び有用性が高まる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明は、性質のおける単なる例示であり、方法又は試薬を限定することは意図されない。更に、前述の背景技術又は以下の詳細な説明で提示される、いずれの理論によっても拘束されることは意図していない。
【0011】
本開示の実施形態は、概して、滴定の方法及びそのための組成物に関する。簡潔にするために、従来の技術は、本明細書で詳細に説明されない場合がある。更に、本明細書に記載される様々なタスク及びプロセス工程は、本明細書に詳細に記載されていない追加の工程又は機能を有する、より包括的な手順又はプロセスに組み込まれ得る。特に、滴定における様々な工程は周知であるので、簡潔さのために、多くの従来の工程は、本明細書で簡単に言及されるだけであるか、又は周知のプロセスの詳細を提供せずに完全に省略される。本開示の様々な望ましい特徴及び特性は、後続する本開示の詳細な説明及び添付の請求項を、添付図面及び本開示の背景技術と併せることで明らかになるであろう。
【0012】
本開示は、2成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物、及び1成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物を提供する。換言すれば、2成分滴定用の試薬組成物は、当該技術分野において理解されるように、典型的にはヨウ素源(I2)を含まない単一の組成物又は溶液である。このような2成分組成物を使用する際にヨウ素が必要とされる場合、ヨウ素は、2成分滴定の第2の成分として添加される。1成分滴定のための試薬組成物はまた、単一の組成物であり、典型的にはヨウ素源を含む。この組成物では、独立したヨウ素源は典型的に必要とされず、そのため、必要とされる第2の成分は存在しない。したがって、このような組成物及び滴定は、典型的に、1成分として記載される。
【0013】
一実施形態では、2成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物は、(1)二酸化硫黄又はその誘導体と、(2)以下の構造を有するイミダゾールの誘導体と、を含む。
【化2】
式中、R、R
1、及びR
2の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはない。この試薬組成物はまた、(3)アルコールと、(4)当該試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約10重量パーセントの量で存在する少なくとも1つのアミノ酸と、を含む。更に、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体対のモル比は、1:1超である。典型的には、そのような実施形態では、試薬組成物はヨウ素(I
2)を不含である。
【0014】
本開示はまた、1成分カールフィッシャー滴定のための試薬組成物を提供する。この試薬組成物は、(1)二酸化硫黄又はその誘導体と、(2)上記のようなイミダゾールの誘導体と、(3)アルコールと、(4)少なくとも1つのアミノ酸と、(5)ヨウ素(I2)と、を含む。
【0015】
本開示は、カールフィッシャー滴定を介して試料中の水の量を決定するための方法を更に提供する。この方法は、任意選択的にヨウ素(I2)を含む前述の試薬組成物を提供する工程と、試薬組成物で試料を滴定する工程と、を含む。典型的には、この方法は、試料中の水又は水分の量を決定するために使用されるカールフィッシャー滴定の形式又は変形として説明することができる。
【0016】
上記のそれぞれは、以下でより詳細に記載される。
カールフィッシャー滴定のタイプ:
【0017】
全般的には、カールフィッシャー滴定を実施するために使用される2つの方法がある。第1は、容量カールフィッシャー滴定として知られている。この滴定では、試料中の水の量の決定は、水を変換するために使用される試薬の量又は容積に基づく。この滴定では、滴定が始まる前に、試料を溶媒に溶解させる。水が除去されるまで試薬を添加する。
【0018】
第2の方法は、電量カールフィッシャー滴定として知られている。この滴定では、試薬及び溶媒は滴定セル内で組み合わされる。試料が滴定セルに導入されて溶解されると、試薬は電流の誘導によって放出される。水を変換するのに必要とされる電流の量は、試料中の水の量の決定要因である。電量カールフィッシャー滴定の利点は、少量の水、例えば、0.1マイクログラム(μg)まで低い水を正確に測定する能力である。各滴定は、以下でより詳細に記載される。
試薬組成物:
【0019】
本方法は、試薬組成物を準備する工程を含む。用語「試薬」及び「試薬組成物」は、以下で代替的に使用されてもよく、両方とも本開示の試薬組成物を指す。試薬組成物は、代替的に「カールフィッシャー試薬」として記載され得る。試薬組成物は、1成分試薬組成物又は2成分試薬組成物であり得る。試薬組成物は、その中に水の量を含む試料を滴定する際に使用される。例えば、試薬組成物は、上記のカールフィッシャー法、例えば、容量滴定又は電量滴定のいずれかで使用され得る。試薬組成物は、例えば、電量滴定で使用されるとき、滴定溶液として記載され得る。例えば、1成分又は2成分試薬組成物における容量滴定では、本開示の試薬組成物は溶媒として作用することができ、その中にアルコールなどの溶媒を含んでもよい。
【0020】
一実施形態では、試薬組成物は、(1)二酸化硫黄又はその誘導体と、(2)イミダゾールの誘導体と、(3)アルコールと、(4)試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約10重量パーセントの量で存在する少なくとも1つのアミノ酸と、を含む。更に、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体対のモル比は、1:1超である。別の実施形態では、試薬組成物は、前述の成分(1)~(4)及びヨウ素(I2)を含む。試薬は、前述の化合物であるか、前述の化合物から本質的になるか、又は前述の化合物からなり得る。
【0021】
用語「から本質的になる」は、6を超えるpKAを有するものなどの1つ以上のアミン、例えば、ピリジン及びその誘導体などの任意選択的な置換脂肪族、環式、複素環式、又は芳香族アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジメチル-n-ブチルアミン、更にN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンなどのトリアルキルアミン、イミダゾール、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、1,2-ジメチルピロリジン、1-メチルピロリジン、N-エチルモルホリン、N-メチルモルホリン、及びこれらの組み合わせを不含である実施形態を説明し得る。
【0022】
用語「から本質的になる」は、ヨウ化ナトリウムなどの1つ以上の可溶性ヨウ化物、又はヨウ化テトラブチルアンモニウム、イミダゾールヨウ化水素、若しくはトリメチルアミンヨウ化水素などの有機カチオンのヨウ化物、及び/又は、例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、ジエタノールアミン臭化水素、グアニジニウムベンゾエートなどのグアニジニウム塩などの解離有機塩、及び/又はそれらの組み合わせを不含である実施形態を代替的に説明し得る。試薬組成物は、イミダゾール自体を含み得るか、又はそれを不含である。試薬はまた、テトラメチルアンモニウムアセテート、トリメチルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、プロピオン酸酢酸リチウム、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、ジエタノールアンモニウムベンゾエート若しくはイミダゾリウムアセテートなどの緩衝物質、又はそれらの組み合わせなどの、塩若しくはカルボン酸などの窒素塩基を含み得るか、又はこれらを不含である。
【0023】
用語「から本質的になる」は、二酸化硫黄の誘導体を不含であるか、又は二酸化硫黄を不含であるか、又はイミダゾールを不含であるか、又は本明細書で企図されるイミダゾールの任意の誘導体のヨウ化水素などのイミダゾール誘導体のヨウ化水素を不含である、などの実施形態を代替的に説明し得る。
【0024】
試薬組成物はまた、限定するものではないが、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチロラクトンなどのエステル類、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロプロパン、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの酸アミド類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、エチレンカーボネート、アセチルアセトンなどケトン類、及び例えば、ジメチルアセタールなどの他の非プロトン性溶媒を含む、非プロトン性溶媒を不含であり得る。一実施形態では、非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、エチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド又は塩化メチレン、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、非プロトン性溶媒は、環状並びに非環状カーボネート、エーテル、エステル、ハロ炭化水素、酸アミド、ニトリル、ケトン、グリコールエーテル、及びそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びそれらの組み合わせから選択される。別の実施形態では、非プロトン性溶媒は、アセトニトリル、プロピレンカーボネート、及びそれらの組み合わせから選択される。一実施形態では、非プロトン性溶媒は、アセトニトリルである。別の実施形態では、非プロトン性溶媒は、プロピレンカーボネートである。更に他の実施形態では、非プロトン性溶媒は、本明細書に記載されるいずれかなど、イミダゾールの純粋な(液体)誘導体であり得る。試薬組成物は、上記非プロトン性溶媒のうちの1つ以上が不含であり得るか、又は試薬の総重量に基づいて、上記非プロトン性溶媒のうちの1つ以上を、5、4、3、2、1、0.5、又は0.1重量パーセント未満含み得る。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0025】
試薬組成物はまた、ピリジン及びその誘導体などの置換脂肪族、環式、複素環式、又は芳香族アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミンなどのトリアルキルアミン、イミダゾール、N-エチルモルホリン、N-メチルモルホリン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、1-メチルピロリジン、並びにこれらの組み合わせを不含であり得る。
【0026】
本明細書全体を通して「不含」という用語は、試薬組成物の総重量に基づいて、化合物の5、4、3、2、1、0.5、又は0.1重量パーセント未満を説明し得る。あるいは、「不含」は、化合物のゼロ重量パーセントの量、すなわち完全に不含であることを指し得る。
二酸化硫黄/二酸化硫黄の誘導体
【0027】
再び言及すると、二酸化硫黄は、SO2であることが当該技術分野において既知である。用語「その誘導体」は、カールフィッシャー滴定における二酸化硫黄と同じ又は実質的に同様に作用する化合物を説明し、当業者によって理解されるであろう。例えば、使用され得る誘導体には、限定されないが、還元剤である亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、及びそれらの組み合わせなどの亜硫酸塩が含まれる。
【0028】
1つの追加の実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体は、試薬の約0.05~約5モル/リットルの量で存在する。他の実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体は、試薬の約0.05~約1、約0.1~約1、又は約0.1~約0.5モル/リットルの量で存在する。他の実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体は、当該試薬組成物の総重量に基づいて約6~約10、例えば、約6、7、8、9、又は10重量パーセントの量で存在する。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
イミダゾールの誘導体:
【0029】
イミダゾールの誘導体は、以下の構造を有し、
【化3】
式中、R、R
1、及びR
2の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基である、請求項14に記載の試薬。この構造では、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはできず、これは構造がイミダゾール自体であるためである。様々な実施形態では、第1のヒドロカルビル基は、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を有する。第2のヒドロカルビル基はまた、独立して、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含み得、基の鎖の1つ以上の位置において、ヘテロ原子は、限定されないが、窒素、酸素、リン、塩素、臭素、又はヨウ素を含む。更に、R
1及びR
2の各々は、環上の任意の位置に配置され得る。1つの更なる実施形態では、R、R
1、及びR
2のそれぞれは、独立して、水素原子、又はメチル基、エチル基、若しくはブチル基であり、但し、R、R
1、及びR
2はすべてが水素原子であることはない。一実施形態では、イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールである。
【0030】
様々な実施形態では、イミダゾールの誘導体は、二酸化硫黄又はその誘導体に対して上記で示される量で試薬組成物中に存在する。他の実施形態では、イミダゾールの誘導体は、試薬の約0.5~約5.5、又は約0.5~約5、又は約0.5~約2.5モル/リットルの量で存在する。他の実施形態では、イミダゾールの誘導体は、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体の1:1超の前述のモル比のうちの1つ以上を反映する量で存在する。例えば、このモル数の二酸化硫黄又はその誘導体が試薬中に存在する場合、イミダゾールの誘導体は、例えば上記の比率のいずれかで、又は過剰に使用される場合、例えば溶媒として、1:1超であるモル数で存在し得る。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比:
【0031】
試薬組成物は、典型的に、1:1超である二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比を含む。換言すれば、この開示は、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体の1:1モル比を利用しない。様々な実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比は、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1、約5.5:1、約6:1、約6.5:1、約7:1、約7.5:1、約8:1、約8.5:1、約9:1、約9.5:1、約10:1、約10.5:1、約11:1、約11.5:1、約12:1、約12.5:1、約13:1、約13.5:1、約14:1、約14.5:1、約15:1、約15.5:1、約16:1、約16.5:1、約17:1、約17.5:1、約18:1、約18.5:1、約19:1、約19.5:1、又は約20:1である。様々な実施形態では、液体イミダゾール誘導体が使用される場合、モル比は例えば30:1、40:1、50:1、又は更により高いものなど、20:1よりはるかに高いものであることができる。一実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比は、2:1超である。別の実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比は、5:1超である。更なる実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比は、約14:1である。更に、試薬組成物は、上記の比率のいずれか「よりも大きい」量、例えば、約2:1「よりも大きい」量、約2.5:1より大きい量などを含み得ることが企図される。様々な非限定的な実施形態では、上記の値の範囲及び上記の値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書で使用されることが明確に企図されることも考えられる。
アルコール:
【0032】
試薬組成物はアルコールも含む。カールフィッシャープロセスを用いた水の決定は、ほとんどのアルコールで問題にならない。アルコールは、一般的なカールフィッシャー作業媒体において易溶性である。非常に長い鎖を有するアルコールのみが、可溶化剤の添加を必要とする。副反応は予期されない。したがって、カールフィッシャー滴定の技術分野において既知の任意のアルコールが、本明細書で使用され得る。典型的には、アルコールは、メタノール、エタノール、又はこれらの組み合わせである。あるいは、アルコールは、任意の長さアルキルアルコール、すなわち、R-OHであってもよく、Rは、直鎖、分岐、又は環状基で例えば、1~10、2~9、3~8、4~7、又は5、又は6個の炭素原子を有するアルキル基である。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0033】
アルコールの量は、特に限定されず、組成物の総重量に基づいて、約60~約80、約65~約75、約75~約80、約70~約80、約60~約70、又は約65~約70重量パーセントの量で存在し得る。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
少なくとも1つのアミノ酸:
【0034】
組成物はまた、例えば滴定添加剤として、少なくとも1つのアミノ酸を含む。用語「少なくとも1つ」は、1つ又は2つ以上のアミノ酸が使用され得ることを意味する。例えば、2つ以上のアミノ酸の組み合わせが使用され得る。アミノ酸は、特に限定されず、当該技術分野において既知の任意のものであってもよい。用語「アミノ酸」は、典型的には、それぞれのアミノ酸に特異的な側鎖(R基)と共に、アミン(-NH2)及びカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物を説明する。当該技術分野において既知であるように、約500の天然アミノ酸が知られている。これらのアミノ酸は、アルファ-(α-)、ベータ-(β-)、ガンマ-(γ-)、又はデルタ-(δ-)アミノ酸として、コア構造官能基の位置に従って分類され得る。これらは、極性、pHレベル、及び側鎖基の種類(ヒドロキシル又は硫黄を含有する脂肪族、非環式、芳香族など)に対して代替的に記載され得る。少なくとも1つのアミノ酸は、「L」若しくは「D」形態で、又は両方の形態で混合物として存在し得る。
【0035】
様々な実施形態において、本開示の少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンである。プロリンは、α-アミノ基、α-カルボン酸基、及び側鎖ピロリジンを含むタンパク質原性アミノ酸であり、それを非極性(生理学的pHで)、脂肪族アミノ酸として分類する。あるいは、プロリンの誘導体も使用され得る。これらは、限定するものではないが、ヒドロキシプロリン、アルキル化プロリンを含む、当該技術分野において既知の任意のものであってよく、アルキル基は、直鎖、分岐、又は環状基で例えば、1~10、2~9、3~8、4~7、又は5、又は6個の炭素原子を有してもよい。更に、ヒドロキシ基及び/又はアルキル基は、プロリン中の任意の原子、すなわち任意の位置に存在し得る。他の実施形態では、使用され得るプロリンの誘導体としては、アルキル化プロライン(メチル化プロリンなど)、ベンジルプロリン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられる。少なくとも1つのアミノ酸は、プロリン及び/若しくはこれらの任意の誘導体であるか又はプロリン及び/若しくはこれらの任意の誘導体からなり得る。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0036】
少なくとも1つのアミノ酸は、典型的には、試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超から最大約10重量%の任意の量で試薬組成物中に存在する。用語「ゼロ超からの任意の量で」は、典型的には、試薬組成物の総重量に基づいて、任意の正の量、例えば、約0.001、約0.005、約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、又はそれ以上の重量パーセントを意味する。他の実施形態では、組成物の総重量に基づいて、少なくとも1つのアミノ酸は、約0.1~約2、約1~約2、約1~約5、約5~約10、約0.1~約1、約0.1~約0.5、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.5などの重量パーセントの量で存在する。一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約5、7.5、10、12.5、又は更には15重量パーセントの量で存在する。例えば、アミノ酸は、例えばメタノール中で使用される場合、最大約15重量パーセントの量で存在し得る。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
CMR物質
【0037】
典型的に、本開示の試薬組成物は、様々な政府又は民間機関によって定義される、発癌性、変異原性、又は生殖毒性(CMR)である物質であるCMR物質を含まない。管轄官庁が適切な調和された分類及び通信要素を選択し得るフレームワークであるGlobally Harmonized System(GHS)を使用して、化学物質又は混合物の性質及びその危険性の相対的な重大度を決定することができる。したがって、様々な実施形態において、試薬組成物は、GHSによって、カテゴリ1A:ヒトエビデンスに基づいた既知のヒト発癌性物質(H340)、突然変異誘発物質(H350)、若しくは生殖毒素(H360)、カテゴリ1B:動物研究に基づいた推定されるヒト発癌性物質(H340)、突然変異誘発物質(H350)、若しくは生殖毒素(H360)、並びに/又は、カテゴリ2:動物研究若しくは/及びヒトからの限定されたエビデンスに基づいた疑いのある発がん性物質(H341)、突然変異誘発物質(H351)、若しくは生殖毒素(H361)に分類される、1つ以上のCMR物質を不含である。例えば、試薬組成物は、典型的にはイミダゾールを不含である。本明細書全体を通して「不含」という用語は、試薬組成物の総重量に基づいて、CMR物質の5、4、3、2、1、0.5、又は0.1重量パーセント未満を説明し得る。あるいは、「不含」は、試薬組成物においてCMR物質のゼロ重量パーセントの量、すなわち完全に不含であることを指し得る。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
試薬組成物の更なる実施形態:
【0038】
一実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体は、試薬組成物の約0.05~約1モル/リットルの量で存在し、イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、試薬組成物の約0.5~約5モル/リットルの量で存在し、少なくとも1つのアミノ酸は、試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約5、7.5、10、12.5、又は15重量パーセントの量で存在し、アルコールはメタノール及び/又はエタノールである。例えば、少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンであり得る。同様の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、約0.1~約0.5、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.5などの重量パーセントの量で存在する。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0039】
別の実施形態では、二酸化硫黄又はその誘導体は、試薬組成物の約0.05~約1モル/リットルの量で存在し、イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、試薬組成物の約0.5~約5モル/リットルの量で存在し、少なくとも1つのアミノ酸は、試薬組成物の総重量に基づいて、約0.1~約2重量パーセントの量で存在し、アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである。やはり、少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンであり得る。同様の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~約0.5、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.5などの重量パーセントの量で存在する。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0040】
更に別の実施形態では、試薬組成物は、試薬組成物の約0.05~約1モル/リットルの量で存在する二酸化硫黄又はその誘導体からなり、イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、試薬組成物の約0.5~約5モル/リットルの量で存在し、少なくとも1つのアミノ酸は、試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超から最大約5、7.5、10、12.5、又は15重量パーセントの量で存在し、アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである。同様の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~約0.5、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.5などの重量パーセントの量で存在する。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0041】
更なる実施形態では、試薬組成物は、試薬組成物の約0.05~約1モル/リットルの量で存在する二酸化硫黄又はその誘導体からなり、イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、試薬組成物の約0.5~約5モル/リットルの量で存在し、少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンであり、試薬組成物の総重量に基づいて、約0.1~約2重量パーセントの量で存在し、アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである。同様の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、組成物の総重量に基づいて、約0.1~約0.5、約0.2~約0.5、約0.2~約0.4、約0.2~約0.3、約0.3~約0.4、約0.3~約0.5、約0.4~約0.5などの重量パーセントの量で存在する。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0042】
更に別の実施形態では、試薬組成物は、1成分カールフィッシャー滴定用である。本実施形態の試薬組成物は、二酸化硫黄又はその誘導体と、上記のイミダゾール誘導体と、アルコールと、少なくとも1つのアミノ酸と、ヨウ素(I2)と、を含み、二酸化硫黄又はその誘導体に対するイミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である。ヨウ素(I2)は、典型的には、以下に詳細に記載される量で存在する。
カールフィッシャー滴定を介して試料中の水の量を決定するための方法:
【0043】
再び言及すると、本開示はまた、カールフィッシャー滴定を介して試料中の水の量を決定するための方法を提供する。本方法は、試料を準備する工程と、上記の試薬組成物を準備する工程と、試薬組成物を使用して試料を滴定する工程と、を含む。
【0044】
試料を準備する工程について言及すると、試料は、当業者によって典型的に選択されるような任意の形態で準備されてもよい。試料は、水を含む任意の種類の試料であってもよい。試料中の水の量は、特に限定されず、当業者によって選択され得る。例えば、電量滴定では、試料中の水の量は、典型的に約0.1~約3000μgの水、又は約20~約3000μgの水である。容量滴定では、水の量は、3000μgを大きく超え得る。更なるなる他の実施形態では、水の最大量は、必要とされる試薬の量のために使用される容器のサイズによって決定される。試料は、試料がその中に水のある量を含むことを条件として、液体、気体、又は固体であり得る。試料は、典型的には、その中に水のある量を含む液体である。更に、試料は、滴定の当業者によって典型的に選択される任意の量で準備されてもよい。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0045】
試薬組成物を準備する工程について具体的に言及すると、試薬組成物は、添加の任意の順序を使用して生成/準備され得る。例えば、上記成分のいずれかの任意の総量又は部分量は、任意の他の成分の任意の総量又は部分量と組み合わされ得る。
【0046】
一実施形態では、本方法は、試薬組成物を用いて試料を滴定する工程を含む。一実施形態では、これは、電量法として記載される。別の実施形態では、これは、容量法として記載される。例えば、本方法は、試料を滴定することができるように試料と試薬組成物とを混合する工程を含み得る。この実施形態では、本方法は、典型的には、ヨウ素源(I2)を提供する工程を含む。これは、典型的には、容量法として説明される。ヨウ素源は、当該技術分野において既知の任意のもの、例えば、任意の好適な溶媒に溶解される固体I2であり得る。様々な実施形態では、ヨウ素が添加される溶液は、その添加後に約1~約10重量パーセントのヨウ素を有し得る。電量法では、ヨウ素の追加又は外部源は必要とされない/使用されないように、ヨウ化物の陽極酸化によってヨウ素を生成することができる。試料は、上記のカールフィッシャー法のうちの1つを使用することによって、試料中の水の量を決定するために滴定することができる。様々な非限定的な実施形態では、上記で示されるこれらの値の間及びこれらの値を含むすべての値及び値の範囲が、本明細書における使用について明確に企画されることも考えられる。
【0047】
例えば、任意の必要なヨウ素は、添加することができるか、又は添加されたヨウ化物からの陽極酸化によって生成することができる。方法の際、添加されたか、陽極によって生成したヨウ素は、典型的には、二酸化硫黄又はその誘導体と水との反応によってヨウ化物に還元される。水が既に存在しない場合、遊離ヨウ素は残される。ヨウ素過剰は、エンドポイントを示すために、例えば、視覚的又は測光的指示のために使用することができる。また、エンドポイントを電気化学的、例えば、電位差測定法又は二電流測定法によって示すことが可能である。
【0048】
容量法による決定は、試薬組成物を溶媒成分として滴定容器に導入することによって実行することができる。次いで、試料は滴定容器に添加され得、それによって、水は、本開示の1成分試薬組成物又は2成分試薬組成物を含有するヨウ素を導入することによって滴定される。典型的には、従来のように、ヨウ素、塩基及びSO2の溶液である1成分試薬組成物を利用する滴定は、容器内に溶媒を準備することと、溶媒を含む容器に試料を添加することと、次いで、1成分試薬組成物を容器内の試料と溶媒との混合物に添加することと、を含む。本開示の試薬組成物は、溶媒としてこの滴定に使用することができる。2成分試薬組成物を利用する滴定は、典型的には、例えば、本開示の試薬組成物のような塩基及びSO2含有溶媒を容器内に準備することを含む。次いで、試料は、典型的には容器に添加される。次いで最後に、2成分試薬組成物は、典型的には、滴定反応が開始できるように容器に添加される。
【0049】
電量法による決定は、例えば、分割されたセルなどの電量セルに試薬組成物の成分を導入し、次いで、セル構造に従って試料を添加し、電解電流を切り替えることによって、試料中に存在する水が変換されるまで電解することで実行することができる。
【0050】
試料中の水の量の決定前に、アルコールに含有される水をブランク滴定で取り除くことができる(例えば、電量測定の場合に前分解による)。様々な実施形態では、例えば、電量セルが、約1~約10mS/cmの導電率を有する試薬を必要とする場合、追加の支持電解質を添加することが必要であり得る。これらは、例えばテトラブチルアンモニウムクロライド、イミダゾリウム臭化水素などの可溶性無機塩であり得る。
【0051】
エンドポイントを示すために、容量分析及び電量滴定の両方で、電位差測定又は二電流測定指標が利用され得ることが考えられる。例えば、試薬組成物及び/又は試料には、既知の再現可能なエンドポイントを有する1つ以上の既知の化合物が添加され得る。これらは、当業者によって選択され得る。更に、1つ以上の緩衝剤が利用され得る。
【実施例】
【0052】
一連の滴定は、本開示による2成分系を用いて、比較例として実施される。結果を以下に示す。
【0053】
第1の一連の実施例では、10mg/gの水を有するHydranal水標準品10.0、#34849の反復滴定を完了する。使用される塩基は、2-エチルイミダゾールである。使用されるアルコールは、エタノールである。10回の個々の滴定は、いずれのアミノ酸も含まない比較例で実施される。10回の個々の滴定はまた、アミノ酸として0.23重量%のプロリンを含む本発明の実施例で実施される。次いで、比較例及び本発明の実施例の両方の標準偏差を計算する。以下に示すように、本発明の実施例の標準偏差は、比較例のものより驚くほど優れている。当該技術分野において既知のように、KF付きMetrohm Titrando 888機器を利用した。滴定タイプは、容量法である。存在するSO
2の量は、約8%(w/w)である。
【表1】
【0054】
第2の一連の実施例では、合成のためのマレイン酸標準品、Merck #8.00380の反復滴定を完了する。使用される塩基は、2-エチルイミダゾールである。使用されるアルコールは、メタノールである。4回の個々の滴定(滴定1~4)は、任意のアミノ酸を含まない比較例で実施される。5回の個々の滴定(滴定5~9)はまた、アミノ酸として0.46重量%のプロリンを含む本発明の実施例で実施される。それぞれの滴定を完了するために必要な時間量を記録し、標準偏差を計算する。以下に示すように、本発明の実施例の標準偏差は、比較例のものより驚くほど優れている。当該技術分野において既知のように、KF付きMetrohm Titrando 888機器を利用した。滴定タイプは、容量法である。存在するSO
2の量は、約8%(w/w)である。
【表2】
【0055】
少なくとも1つのアミノ酸の含有は、滴定測定の標準偏差を減少させ、それによって滴定測定及び水の量の決定をより正確にする。加えて、少なくとも1つのアミノ酸の含有は、滴定を実施するのに必要な時間を減少させる。更に、本開示の試薬組成物は、典型的には、当該技術分野において既知であるように、様々な政府又は個人機関によって定義される、発癌性、変異原性、又は生殖毒性(CMR)である物質であるCMR物質を含まない。これにより、様々な環境における試薬組成物の安全性及び有用性が高まる。実験を実施している間、本開示の組成物は、例えばボトル縁部で結晶化する傾向がないことが観察される。これは、滴定機器との組み合わせにおいて有益であり得る。
【0056】
前述の詳細な説明で、少なくとも1つの例示の実施形態が提示されたが、膨大な数の変更例が存在することを理解されたい。例示の実施形態又は複数の例示の実施形態は、あくまで例示であり、いかなるようにも範囲、適用性、又は構成を制限する意図がないこともまた理解されたい。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者らに例示の実施形態を実装するのに簡便なロードマップを提供するだろう。添付の特許請求の範囲に記載される範囲から逸脱することなく、例示の実施形態に説明された要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができるものと理解される。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[項目1]
2成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物であって、前記試薬組成物は、
(1) 二酸化硫黄又はその誘導体と、
(2) 以下の構造を有するイミダゾールの誘導体であって、
【化4】
式中、R、R
1
、及びR
2
の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1
、及びR
2
はすべてが水素原子であることはない、イミダゾールの誘導体と、
(3) アルコールと、
(4) 前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約10重量パーセントの量で存在する、少なくとも1つのアミノ酸と、を含み、
前記二酸化硫黄又はその誘導体に対する前記イミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である、試薬組成物。
[項目2]
前記少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンである、項目1に記載の試薬組成物。
[項目3]
前記プロリンは、前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約15重量パーセントの量で存在する、項目2に記載の試薬組成物。
[項目4]
前記プロリンは、前記試薬組成物の総重量に基づいて、約0.1~約2重量パーセントの量で存在する、項目2に記載の試薬組成物。
[項目5]
前記プロリンは、前記試薬組成物の総重量に基づいて、約0.2~約0.5重量パーセントの量で存在する、項目2に記載の試薬組成物。
[項目6]
前記二酸化硫黄又はその誘導体は、前記試薬組成物の約0.05~約1モル/リットルの量で存在し、
前記イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、前記試薬組成物の約0.5~約5モル/リットルの量で存在し、
前記少なくとも1つのアミノ酸は、前記試薬組成物の総重量に基づいて、約0.2~約0.5重量パーセントの量で存在し、
前記アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである、項目1に記載の試薬組成物。
[項目7]
前記二酸化硫黄又はその誘導体は、前記試薬組成物の約0.05~約1モル/リットルの量で存在し、
前記イミダゾールの誘導体は、2-エチルイミダゾールであり、前記試薬組成物の約0.5~約5モル/リットルの量で存在し、
前記少なくとも1つのアミノ酸は、前記試薬組成物の総重量に基づいて、約0.1~約2重量パーセントの量で存在し、
前記アルコールは、メタノール及び/又はエタノールである、項目1に記載の試薬組成物。
[項目8]
カールフィッシャー滴定を介して試料中の水の量を決定するための方法であって、前記方法は、
A. 前記試料を準備する工程と、
B. 試薬組成物を準備する工程であって、前記試薬組成物は、
(1) 二酸化硫黄又はその誘導体と、
(2) 以下の構造を有するイミダゾールの誘導体であって、
【化5】
式中、R、R
1
、及びR
2
の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1
、及びR
2
はすべてが水素原子であることはない、イミダゾールの誘導体と、
(3) アルコールと、
(4) 前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約10重量パーセントの量で存在する、少なくとも1つのアミノ酸と、
(5) 任意選択的にヨウ素(I
2
)と、を含み、
前記二酸化硫黄又はその誘導体に対する前記イミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である、試薬組成物を準備する工程と、
C. 前記試薬組成物を用いて前記試料を滴定する工程と、を含む、方法。
[項目9]
前記少なくとも1つのアミノ酸は、プロリンである、項目8に記載の方法。
[項目10]
1成分カールフィッシャー滴定用の試薬組成物であって、前記試薬組成物は、
(1) 二酸化硫黄又はその誘導体と、
(2) 以下の構造を有するイミダゾールの誘導体であって、
【化6】
式中、R、R
1
、及びR
2
の各々は、独立して、水素原子、フェニル基、置換フェニル基、1~6個の炭素原子を有する第1のヒドロカルビル基、又は少なくとも1つの位置にヘテロ原子が介在する1~6個の炭素原子を有する第2のヒドロカルビル基であり、但し、R、R
1
、及びR
2
はすべてが水素原子であることはない、イミダゾールの誘導体と、
(3) アルコールと、
(4) 前記試薬組成物の総重量に基づいて、ゼロ超及び最大約10重量パーセントの量で存在する、少なくとも1つのアミノ酸と、
(5) ヨウ素(I
2
)と、を含み、
前記二酸化硫黄又はその誘導体に対する前記イミダゾールの誘導体のモル比は、1:1超である、試薬組成物。