(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】鉄道車両用の空調システム
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20240702BHJP
F28D 20/02 20060101ALI20240702BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240702BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B61D27/00 L
F28D20/02 D
F25B1/00 399Y
B60H1/22 651A
(21)【出願番号】P 2021565119
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(86)【国際出願番号】 DE2020100636
(87)【国際公開番号】W WO2021018346
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】102019120719.3
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521260053
【氏名又は名称】ファイベリー トランスポート ライプツィヒ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボック,ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ケストナー,ローレンツ
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-058420(JP,U)
【文献】米国特許第06260376(US,B1)
【文献】特開平10-315750(JP,A)
【文献】特開2002-310464(JP,A)
【文献】特開2004-085176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
F28D 20/02
F25B 1/00
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用の空調システムであって、
少なくとも1つのチラーと、
相変化材料(PCM)を有する少なくとも1つの冷蔵ユニットを有するPCM貯蔵システムであって、前記少なくとも1つのチラーが、前記PCM貯蔵システムを充填するための第1の冷却力および鉄道車両の客室を空調するための第2の冷却力を提供するように構成され、前記PCM貯蔵システムが、前記鉄道車両の選択された動作状態で前記鉄道車両の客室を空調するように構成された1つまたは複数の車両アセンブリーに冷エネルギーを供給するように構成された、PCM貯蔵システムと、
前記少なくとも1つのチラーが配置された、冷媒を有する一次回路と、
水とグリコールの混合物および水熱交換器を有する二次回路であって、前記空調システムが、前記一次回路と前記二次回路との間にプレート熱交換器を含み、前記PCM貯蔵システムおよび前記水熱交換器が、前記二次回路の流れの方向に、前記二次回路に順々に配置され、前記相変化材料が、前記PCM貯蔵システムの容器内に配置され、前記二次回路が、前記水とグリコールの混合物の流れを前記容器内の前記相変化材料の周りに導くように構成された、二次回路と、
前記PCM貯蔵システムに配置された第1のバイパスラインおよび前記二次回路内の前記水熱交換器に配置された第2のバイパスラインであって、該第1のバイパスラインまたは該第2のバイパスラインのうちの1つまたは複数が、前記空調システムの異なる動作モードの機能として、対応する三方弁によって開閉されるように構成された、第1のバイパスラインおよび第2のバイパスラインと
を含み、前記異なる動作モードのうちの第1の動作モードで動作する前記空調システムは、前記PCM貯蔵システムを充填するための前記第1の冷却力を提供するように構成され、前記異なる動作モードのうちの第2の動作モードで動作する前記空調システムは、前記鉄道車両の客室を空調するための第2の冷却力を提供するように構成され、
前記空調システムは、前記PCM貯蔵システムの充填状態が所定の閾値に達することと、前記鉄道車両の位置とに基づいて動作モードを変更するように構成され、
前記空調システムの前記動作モードの変更は、前記第1のバイパスラインの三方弁または前記第2のバイパスラインの三方弁のうちの1つまたは複数の設定を変更することを含む、
空調システム。
【請求項2】
前記鉄道車両の運転中、トンネルの外を走行している間、
前記PCM貯蔵システムの充填状態が前記所定の閾値に達するまで、前記PCM貯蔵システムに前記冷エネルギーを充填することと、
前記鉄道車両の運転中、トンネルの外を走行している間、前記少なくとも1つのチラ
ーが作動していないとき、前記PCM貯蔵システ
ムに貯蔵された
前記冷エネルギー
を前記水熱交換
器に供給
することと含む、請求項1に記載の鉄道車両用の空調システムを動作させる方法。
【請求項3】
前記鉄道車両の運転中に、
前記トンネルの外を走行している間、
前記PCM貯蔵システムに前記第1の冷却力を提供する前記少なくとも1つのチラーによって前記PCM貯蔵システムに前記冷エネルギーを充填することが、前記車両の客室を冷却するための
前記冷エネルギーを提供すること
も含む、請求項2に記載の
鉄道車両用の空調システムを動作させる方法。
【請求項4】
前記PCM貯蔵システムおよび前記客室に対する
前記冷エネルギーの充填または供給のパーセンテージ比
を、前記PCM貯蔵システムの充填状態に基づいて調節することをさらに含む、請求項3に記載の
鉄道車両用の空調システムを動作させる方法。
【請求項5】
前記PCM貯蔵システムを充填することが、前記PCM貯蔵システムが完全に充填された後に、前記PCM貯蔵システムに貯蔵された前記冷エネルギーを前記水熱交換器に供給することを含む、請求項2に記載の
鉄道車両用の空調システムを動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ドイツ特許出願No.10 2019 120 719.3(出願日2019年7月31日)の優先権を主張する国際出願No.PCT/DE2020/100636(出願日2020年7月21日)の国内移行の出願である。それらの出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのチラーと、1つの相変化材料を有するPCM貯蔵システムとして設計された、1つの冷蔵ユニットを含み、客室の空調に必要な冷却力、およびPCM貯蔵システムの充填に必要な冷却力が、チラーによって提供され、PCM貯蔵システムに貯蔵された冷気が、鉄道車両の選択された動作状態で客室を空調するためのアセンブリーに供給される、鉄道車両用の空調システムに関する。さらに、本発明は、そのような空調システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
乗客輸送鉄道車両の空調には、それによって客室の暖房または冷房が実現される多くの技術的解決策が公知である。
【0004】
例えば、DE102009056968B3は、空調に必要なアセンブリーが車両の屋根に配置される鉄道車両用の空調システムについて説明している。これらのアセンブリーは、デバイストラフに配置される。デバイストラフの上部は、鉄道車両の輪郭内で屋根の形状の一部を形成するように、別のコンポーネントで覆われている。
【0005】
これと多くの同様の設計が、鉄道車両の客室を空調するために本質的に適している。ただし、特定の動作条件については、さらに態様を考慮する必要がある。例えば、空調システムの動作に関する技術仕様(電流/電圧比、冷却/暖房電力、風量など)に加えて、トンネルを通るより長い旅に対する要件はますます重要になっている。なぜなら、長距離移動の高速列車や人口密度の高い地域のローカル列車の線路には、近年、トンネルが頻繁に装備されるからである。空調システムからの加熱された空気の外部への放出により、トンネル内の気温は急激に上昇し、後続する車両の通過の間、最小限にしか冷却できない。このため、当業者には、車両がトンネル内を走行している間、空冷に必要な空調システムのチラーアセンブリーがオフになっていることは本質的に明らかである。
【0006】
関連する技術的解決策が、WO2005/014365A1で提案される。しかしながら、機能的な冷却を確実にするために、鉄道車両は、氷または他の低温液体の形態の凍結水が別々の容器に保持される複数の冷媒貯蔵システムを含む。トンネルを通過する際、氷または液体を使用して空気を冷却する。これにより、実際のチラーのスイッチを切ることができ、トンネル空間に追加の加熱空気が放出されることはほとんどない。ただし、不利な点は、冷媒貯蔵システムを定期的に補充する必要があることである。
【0007】
いわゆるPCM(「Phase Change Material」、「相変化材料」)貯蔵システムが低温の一時的な貯蔵に使用される場合、冷媒貯蔵システムの定期的な補充は必要ない。これらのシステムは、相変化貯蔵システムまたは潜熱貯蔵システムとも呼ばれる。これは機能的には、入ってくる熱エネルギーを蓄え、相の変化を通してそれを放出する蓄熱システムである。PCM貯蔵システムは、低損失で多くの繰り返しサイクルで熱エネルギーを保存できる。好ましくは、固相-液相転移、すなわち凝固-溶融が使用される。水や氷以外では、特別な塩やパラフィンワックスが貯蔵媒体として使用される。PCM貯蔵システムは、当初はコールドパック、加熱パッド、および同様の小さな対象物に対してのみ使用されていたが、現在は大きな対象物にも使用されている。
【0008】
例えば、DE102009058842A1は、相変化材料を客室および/または車両の駆動コンポーネントと熱接触させることができる車両用の空調システムを記載している。この技術的解決策は、電気モータードライブを搭載した車両向けに設計されている。相変化材料から客室に熱を伝導することによって客室が加熱される、または客室から相変化材料に熱を伝導することによって、または相変化材料から客室に冷気を伝導することによって、客室を冷却する、実施形態について説明する。
【0009】
鉄道車両の場合、同様の解決アプローチがEP2570280B1で公知である。技術的解決策は、冷却サイクルを実行するために冷却回路を使用して客室内の空気を冷却することに関するものである。第1の冷却サイクルでは、客室を冷却するために現在必要とされるよりも多くの冷気が生成される。この過剰な冷気は、PCM貯蔵システムとして設計された冷蔵ユニットに貯蔵される。第2の冷却サイクルでは、貯蔵された冷気は特定の動作状態で冷蔵ユニットから取り出され、さらに客室内の空気を冷却するために使用される。第1または第2の冷却サイクルの実行は、鉄道車両がブレーキ段階にあるかローリング段階にあるかによって決まる。ただし、この参照では、車両がトンネルの外を走行しているか、トンネルの中を走行しているかに応じて、PCM貯蔵システムの動作に関する情報は提供されていない。
【0010】
EP3290288B1は、トンネルを通過するために必要な冷気が事前に貯蔵システムに供給され、トンネル内の移動中に再び貯蔵システムから取り出される、鉄道車両用の空調システムについて説明している。このシステムは、車両内に分散された複数の冷却ユニット、これらの冷却ユニットに冷気を供給するチラー、およびチラーによって冷気を充填することもできる貯蔵ユニットを含む。トンネルまたは線路の同様の部分的に囲まれたセクションの外にあるとき、チラーは空調システムの冷却ユニットに冷気を供給する。冷却力に余剰がある場合、この余剰分は貯蔵ユニットに充填される。より長いトンネル通路の間、貯蔵された冷気が貯蔵ユニットから取り出され、客室を冷却するためにアセンブリーに供給される。このプロセスの間、チラーはオフになり、トンネルスペースに追加の熱を放出しない。ただし、不利な点は、冷蔵ユニットが充填されるのは、余剰の冷気がある場合のみであることである。したがって、冷蔵ユニットから利用できる冷気の量は、長いトンネル通過またはいくつかのトンネルを通る連続する短い走行セクションには不十分であることが多い。結果として、チラーのスイッチを切ることができないか、一時的にしかオフにできないため、セクションにおいて、強く加熱された空気がトンネルに排出され続ける。
【0011】
DE19860057A1は、一次冷媒冷却回路、二次水グリコール回路、およびこれらを順々に接続するプレート熱交換器を含む車両空調システムについて説明している。二次回路には、冷蔵システムと熱交換器が順々に配置されている。これにより、一次回路が動作していないときに空調が可能になる。
【発明の概要】
【0012】
本発明の課題は、PCM貯蔵システムとして設計された冷蔵ユニットを含み、十分な量の冷気が、PCM貯蔵システムの相変化材料から客室に伝導され得、その結果、より長いトンネル通路の間、冷気発生のために設計された空調システムのチラーが大部分オフにされ、これにより、鉄道車両からトンネルへの大量の熱の排出が回避される、鉄道車両用の空調システムを提供することである。
【0013】
この課題は、冷却回路を、冷媒を使用する一次回路と水とグリコールの混合物を使用する二次回路に分割し、一次回路が、客室の空調とPCM貯蔵システムの充填に冷却力を供給し、冷却力が、プレート熱交換器を介して二次回路に伝達されることで解決される。
【0014】
客室内の空気を冷却するためのPCM貯蔵システムと水熱交換器は、二次回路の流れの方向に前後に配置されている。このようにして、冷蔵ユニットに対してより低い温度レベルを達成することができる。結果として生じる、冷蔵ユニットを出る際の冷媒のわずかに高い温度レベルは、客室内への熱交換器にとって依然として十分である。それにより、冷蔵ユニットは、客室への熱交換器よりも低い温度レベルにある。冷蔵ユニットから動作する場合、チラー動作時と比較して温度レベルに大きな変化はない。
【0015】
相変化材料は、PCM貯蔵システムの容器に配置される小さな板状のセグメントの形態で設計されており、二次回路の水とグリコールの混合物は、この容器内の相変化材料の周りを流れる。
【0016】
1つのバイパスラインが二次回路のPCM貯蔵システムに配置され、もう1つが二次回路の水熱交換器に配置される。バイパスラインが、空調システムの現在の動作モードの機能として、三方弁によって開閉される。
【0017】
プロセス技術の観点から、この空調システムは、トンネルの外を走行している間、
鉄道車両の運転中に、チラーが主に冷蔵ユニットに冷気を充填し、チラーが作動していないときは、PCM貯蔵システムに蓄えられた冷エネルギーが水熱交換器に供給されるように操作される。さまざまな代替手段が可能である。
【0018】
例えば、鉄道車両がトンネルの外を走行しているとき運転中、チラーは、最初は冷蔵ユニットに冷気を充填することのみをおこない冷蔵ユニットが完全に充填された後のみ、客室を冷却するために冷気を提供することができる。
【0019】
しかしながら、好ましくは、空調システムは、チラーが、トンネルの外の走行中に作動している間、冷蔵ユニットに冷気を充填し、同時に客室内を冷却するための冷気も提供するように、並列運転で使用される。この変形例では、冷蔵ユニットおよび客室の冷気の充填または供給のパーセンテージ比が調整可能であることが好ましい。この場合、ルートの地形、内部と外部の温度、乗客の数、駅でのドアの開放の頻度と期間、および同様のパラメーターを、例えば、規制または制御に基づいて考慮することができる。
【0020】
選択した特定のバリエーションに関係なく、冷蔵ユニットが充填されるとすぐに、客室の冷却をさらに最適化できる。客室内と冷蔵ユニットの間で利用可能な冷却力の割り当ての優先順位を変更することが可能であり、そのうちの3つの可能な選択肢を以下に示す。
【0021】
(a)例えば、ラッシュアワーの通勤交通に典型的な、客室内の冷却力に対する需要が非常に高い場合の冷蔵ユニットの充填を放棄する。
【0022】
(b)客室の上限温度を利用し、冷却力の需要が低い場合にのみ冷蔵ユニットを充填する。
【0023】
(c)許容温度制御範囲内での客室温度の目標を定めた積極的な低下、およびそれによる貯蔵システムとして客室を使用する。
【0024】
本発明による技術的解決策は、これまで使用されてきた従来の設計に比べていくつかの利点をもたらす。例えば、コンプレッサーのエネルギーを貯蔵する必要がないため、冷エネルギー貯蔵システムは、温エネルギー貯蔵システムよりも少ないエネルギーを貯蔵すればよい。より優れた成績係数(coefficient of performance、COP)が、貯蔵モードでこの目的に使用されるエネルギーに対し生成された冷却力の比率で達成される。さらなる利点は、二次冷却回路と組み合わせることにより、使用される冷媒の量が削減されることである。同様に、ハイブリッドモードと従来の冷却モードで給気を冷却するために同じ熱交換器が使用されるため、必要なアセンブリーが少なくなる。別の熱交換器を追加して給気の流れを変更する必要はない。
【0025】
本発明による技術的解決策は、長距離交通における高速列車、および線路がより長いトンネルセクションまたは同様の閉鎖された線路セクションを有する都市中心部における地方列車に優先的に適している。さらに、電源なしの運転時間が、例えば、高い外気温での運転開始前の駐車中の鉄道車両の予冷、または突然の故障の場合の緊急冷却のために橋渡しすることができる。特定の用途とは関係なく、十分な量の冷気がPCM貯蔵システムの相変化材料から客室に供給されており、冷房用に設計された空調システムのチラーが、鉄道車両から大量の熱を放出することなく作動していないときでも、客室の十分な冷却が確保される。
【0026】
以下に、本発明の実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、冷蔵ユニットとしてPCM貯蔵システムを用いて本発明に従って設計された鉄道車両用の空調システムの基本構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に様式化された形で示される空調システムは、鉄道車両用に設計されており、チラー1および冷蔵ユニット12を含む。冷蔵ユニット12は、相変化材料を備えたPCM貯蔵システムとして設計される。チラー1は、客室(図示せず)を空調するために必要な冷却力と、-PCM貯蔵システム12を充填するために必要な冷却力を提供する。PCM貯蔵システム12に貯蔵された冷気は、鉄道車両の選択された動作状態で、優先的にはトンネル内を移動している間、客室を空調するためのアセンブリーに供給される。
【0029】
図面から、冷却回路は、冷媒を使用する一次回路(TOP)と水とグリコールの混合物を使用する二次回路(BELOW)に分割されることがわかる。利用可能な全ての冷媒は、一次回路の冷媒として適している。つまり、合成冷媒(例えば、R134a)と天然冷媒(例えば、CO2またはプロパン)の両方である。
【0030】
チラー1、コンデンサー2、および膨張弁9を備えた一次回路は、客室を空調し、システム12を充填するための冷却力を提供する。
【0031】
この目的のために、冷却力は、プレート熱交換器10を介して一次回路から二次回路に伝達される。この二次回路では、PCM貯蔵システム12および客室内の空気を冷却するための水熱交換器3が、プレート熱交換器10からの流れの方向に順々に配置される。水ポンプ11は、プレート熱交換器10と動作可能に接続される流路において水熱交換器3の下流に配置される。
【0032】
より詳細には示されていない相変化材料は、小さな板状のセグメントの形態であり、これもまたより詳細には示されていないPCM貯蔵システム12の容器内に配置される。二次回路の水とグリコールの混合物は、この容器内の相変化材料の周りを流れる。相変化材料は、主に、この目的のために市場で入手可能な任意の材料、好ましくは、融点が0℃から15℃の間のパラフィンワックスまたは水であり得る。
【0033】
さらに、二次回路内のPCM貯蔵システム12および水熱交換器3は、それぞれ、別個の三方弁14に動作可能に接続される。2つの三方弁14は、PCM貯蔵システム12および水熱交換器3が、空調システムの現在の動作モードに依存する関連するバイパスラインを使用してバイパスされ得るように切り替えることができる。
【0034】
このように設定された空調システムは、トンネルの外を走行中の鉄道車両の運転中に、主にチラー1が冷蔵ユニット/PCM貯蔵システム12に冷気を充填するように操作される。同時に、冷蔵ユニット12はそれによって冷気を充填することができ、冷気が客室を冷却するために提供されることができる。この動作状態において、冷蔵ユニット12および客室の冷気の充填または供給のパーセンテージ比を設定することができる。あるいは、最初に冷蔵ユニット12のみが冷気で充填され、冷蔵ユニット12が完全に充填された後にのみ客室を冷却するために冷気が提供されることも可能である。チラー1が作動していない場合、すなわち、優先的にトンネル内を運転している間、PCM貯蔵システム12に貯蔵された冷エネルギーが、水熱交換器3に供給される。
【符号の説明】
【0035】
1 チラー
2 コンデンサー
3 水熱交換器
9 膨張弁
10 プレート熱交換器
11 水ポンプ
12 冷蔵ユニット/PCM貯蔵システム
14 三方弁