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特許7513637簡略化された構造のシングルモードのハイブリッドIII-V・オン・シリコンレーザー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】簡略化された構造のシングルモードのハイブリッドIII-V・オン・シリコンレーザー
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/20 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
H01S5/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021566281
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020061501
(87)【国際公開番号】W WO2020224994
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】1904842
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィ・メネゾ
(72)【発明者】
【氏名】ジョイス・プーン
(72)【発明者】
【氏名】トーリー・シーセン
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0212399(US,A1)
【文献】特開2017-017112(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117077(WO,A1)
【文献】特開2016-046534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141541(US,A1)
【文献】特開2017-069494(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108075356(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-III-Vヘテロ構造増幅媒体(1、QW、2)と、
-前記増幅媒体の中央部分に面する結合セクション(51、61、71)、伝搬セクション(54、64、74)、及び前記結合セクション(51、61、71)と前記伝搬セクション(54、64、74)との間に配置された第1の遷移セクション(52、62、72)を含むシリコン光導波路(3、4)と、
-第1及び第2の反射構造(Mf、Mr)であって、ファブリペロー型共振キャビティが前記増幅媒体のためにそれらの間に形成されることを可能にする、第1及び第2の反射構造(Mf、Mr)と、
を含むレーザーデバイスであって、
前記結合セクション(51、61、71)は、前記結合セクションの厚さ及び/又は幅を減少させることによって設計されたマイクロ反射器を備えた屈折率外乱領域(510、610、71)を含み、前記マイクロ反射器は、m*λm0/(4eff)の長さを有し、n*λm0/(4eff)より大きい距離で互いに分離され、ここで、mは奇数の整数、nは整数、λm0は真空中の波長、neffは屈折率外乱領域の実効屈折率であり、
前記第1の反射構造(Mf)は、第1の厚さを有する導波路のセクションに形成され、
前記第2の反射構造(Mr)は、前記第1の厚さを有し、前記導波路の第2の遷移セクション(53、63、73)によって前記結合セクション(51、61、71)から分離された前記導波路のセクション(55、65、75)に形成され、前記第2の遷移セクション(53、63、73)は、前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さを有することを特徴とする、レーザーデバイス。
【請求項2】
前記第2の反射構造(Mf)の反射率は、前記第1の反射構造(Mr)の反射率よりも大きい、請求項1に記載のレーザーデバイス。
【請求項3】
前記第2の反射構造(Mr)の反射率は90%を超える、請求項2に記載のレーザーデバイス。
【請求項4】
前記第1の反射構造(Mf)の反射率は5%から60%の間である、請求項2又は3に記載のレーザーデバイス。
【請求項5】
前記第2の反射構造(Mr)はブラッググレーティングである、請求項1から4の何れか一項に記載のレーザーデバイス。
【請求項6】
前記第1の厚さは50から300nmの間であり、前記第2の厚さは前記第1の厚さよりも少なくとも100nm、好ましくは少なくとも150nm大きい、請求項1から5の何れか一項に記載のレーザーデバイス。
【請求項7】
前記第1の反射構造(Mf)は前記第1の遷移セクション(52)に形成される、請求項1から6の何れか一項に記載のレーザーデバイス。
【請求項8】
前記第1の遷移セクション(62、72)は前記第2の厚さを有する、請求項1から6の何れか一項に記載のレーザーデバイス。
【請求項9】
前記第1の反射構造は、前記結合セクション(61)に形成されたブラッググレーティングである、請求項8に記載のレーザーデバイス。
【請求項10】
前記第1の反射構造は、前記伝搬セクション(74)と前記第1の遷移セクション(72)との間に挿入された前記導波路のセクション(76)に形成されたブラッググレーティングである、請求項8に記載のレーザーデバイス。
【請求項11】
前記導波路は、前記増幅媒体から離れる方向に向けられたリブ(4)を備えた導波路である、請求項1から10の何れか一項に記載のレーザーデバイス。
【請求項12】
前記リブは、前記第2の遷移セクション(53)に位置する、請求項7と組み合わせられた請求項11に記載のレーザーデバイス。
【請求項13】
前記リブは、前記第1の遷移セクション(62、72)に、及び前記第2の遷移セクション(63、73)に位置する、請求項8から10の何れか一項と組み合わせられた請求項11に記載のレーザーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のこの分野は、光を放出することができる半導体材料の特性と、集積回路で従来使用されている半導体材料の特性との両方を使用する集積フォトニックコンポーネントの分野である。
【0002】
本発明は、より具体的には、III-Vヘテロ構造増幅媒体を含むハイブリッド・オン・シリコンレーザー(a hybrid on silicon laser)に関する。
【背景技術】
【0003】
ハイブリッドIII-V・オン・シリコンレーザー(hybrid III-V on silicon laser)は一般的に、以下を含む:
-少なくとも1つのIII-V型ヘテロ構造光増幅媒体を含むゲイン構造であって、ヘテロ構造は、光を放出することができ、シリコン導波路のセクションを覆ってそれとともにハイブリッド導波路セクションを形成するように配置される、ゲイン構造、
-増幅媒体用の共振キャビティを形成するための光帰還構造(optical feedback structure)、及び
-ハイブリッド導波路セクションとさらなるシリコン導波路セクション、特にレーザー放出光伝搬セクションとの間の光学的遷移。
【0004】
III-V型ヘテロ構造との用語は、以下の非網羅的なリスト:InP、GaAs、InGaAlAs、InGaAsP、AlGaAs、InAsP、から選択できる材料の使用を意味する。ゲイン媒体としても知られるそのような増幅媒体のヘテロ構造は、例えば、第1のドープされた層、好ましくはNドープされた層と、第2のドープされた層、好ましくはPドープされた層との間に挟まれた量子井戸を形成する層のスタックなど、様々な層のスタックを含むことができる。
【0005】
分布帰還型レーザー(DFBレーザーとして知られている)の場合、光帰還構造は、波長選択ミラーを形成する、ゲイン構造の下又は内部にあるブラッググレーティングなどの分布反射器で構成される。分布ブラッグ反射型レーザー(DBRレーザーとして知られている)の場合、光帰還構造は、ハイブリッド導波路セクションの両側の導波路に配置された反射器で構成される。
【0006】
図1は、DFBレーザーの簡略化された上面図を表しており、この上面図には、レーザーの様々な領域を示す、光の伝播方向に対して横方向に取られた3つの断面が付属している。
【0007】
DFBレーザーは、例えば、NドープInP層1とPドープInP層2との間に挟まれた量子井戸のスタックQWから形成されたIII-Vヘテロ構造増幅媒体を含む。層1及び2並びに量子井戸スタックQWによって形成されたサンドイッチの厚さは通常、2~3μmである。レーザーはシリコン光導波路を含む。それは例えば、リブ4で上部を覆われたスラブ導波路3を含むリブ導波路からなる。導波路は、増幅媒体の中央部分に面する結合セクション41と、結合セクション41の両側に配置された2つの遷移セクション42、43と、遷移セクション42、43の一方にそれぞれ光学的に結合された2つの伝播セクション44、45とを含む。遷移セクション42、43は、結合セクション41と対応する伝搬セクション44、45との間に実質的に伝送損失及び反射性を有さないように寸法決めされている。従来技術から知られているように、リブ導波路3、4は、この目的のために厚く(スラブ3及びリブ4の累積厚さは故に、通常、400nm以上、又は500nm以上である)、遷移セクション42、43は、伝搬セクション44、45よりも幅広い(通常、厚さ500nmに対して幅400nm)。光帰還を供給するため、結合セクション41にはブラッググレーティングが形成される。従って、レーザーキャビティからの光は、シリコンガイドと結合され、伝搬セクション44、45のそれぞれからの矢印F1及びF2に沿って出力で伝搬される。
【0008】
ブラッググレーティングは通常、リブ4に形成された1次の1/4波長構造λm0/(4.neff)をλm0/(2.neff))の周期でエッチングすることによって形成され、ここで、λm0は真空中の波長であり、neffは実効ハイブリッドガイド指数である(断面AA)。ブラッググレーティングは、結合セクションの中央に1/4波長タイプの位相ジャンプとして機能するセグメントSを導入することにより、レーザーデバイスのシングルモード動作を実行するように設計できる。真空中の波長λm0が1310nmで、標準指数neffが約3.25の場合、ブラッググレーティングの周期は通常、約200nmである。このようなグレーティングの製造には高解像度のリソグラフィーが必要であるため、制御が比較的複雑なままである。
【0009】
さらに、シングルモードレーザーは、低解像度リソグラフィーによって製造できるInP基板上に支持された量子井戸構造を備えていることが知られている。図2に示すように、これらのレーザーは、導波路の劈開面の形をとる帰還構造ミラーC1、C2に使用される。離散モードレーザー(DML)として知られるこれらのレーザーのシングルモード動作は、量子井戸構造と結合した導波路のリブに沿ってスロットFをエッチングすることによって作成される屈折率外乱(disturbance)によって提供される。スロットは、すべての光路の長さL(スロットの長さ、スロット間の距離、スロットとミラーとの間の距離)がL=(2.S+1)λm0/(4.neff)(ここで、Sは自然整数(0、1、2・・・)であり、λm0はレーザーモードの真空中の波長であり、neffはスリットにおける実効指数である)を観測するように形成される。従って、Lはモードλm0/(4.neff)の1/4波の奇数である。必要に応じて、スロット間又はスロットとミラーの間に、DFBレーザーのセグメントSに相当する追加の1/4波位相シフトを導入できる。
【0010】
InP基板上に製造されたDFBレーザーと比較して、DMLレーザーは、より狭い線幅と外部反射に対する感度の低下によって伝達される優れた選択性を有する。DMLレーザーは、スロットの長さとスロットを隔てる距離が高次のキャビティ(例えば、3*λm0/(4.neff)又は5*λm0/(4.neff))になり得るため、低解像度リソグラフィーを使用して製造できる。実際、これらの高次のキャビティによる放射線の損失は、DFBレーザーよりもDMLレーザーの方が不利ではなく、DMレーザーは、DFBレーザーのブラッググレーティングの歯数(長さ400μmのグレーティングに対して約2000歯)よりも著しく少ない数のスロット(通常は100未満)を必要とする。このようなDMLレーザーでは、スロットは、活性領域上のInP材料のリソグラフィーとエッチングによって作成される。従って、あるスロットと別のスロットの相対的な位置は非常によく制御される。他方、ミラーC1、C2は、最大10μmの劈開精度で劈開によって得られるので、異なるスロットに対するミラーC1、C2の位置を正確に制御することは不可能である。スロットに対するミラーの位置の不確実性は、レーザーの誤動作を引き起こす可能性がある。
【0011】
解決策は、劈開面ではなく、DBRレーザーによって採用された光帰還構造、すなわちハイブリッド導波路セクションの両側のシリコン導波路に配置された反射器を使用することからなり得る。
【0012】
この目的のために、図3は、DFBレーザーの簡略化された上面図を表しており、この上面図には、レーザーの様々な領域を示す、光の伝播方向に対して横方向に取られた3つの断面が付属している。DBRレーザーは、例えば、NドープInP層1とPドープInP層2との間に挟まれた量子井戸のスタックQWから形成されたIII-Vヘテロ構造増幅媒体を含む。レーザーは、シリコン光導波路、例えば、リブ4で上部を覆われたスラブ導波路3を含むリブ導波路を含む。導波路は、増幅媒体の中央部分に面する結合セクション41と、結合セクション41の両側に配置された2つの遷移セクション42、43と、遷移セクションの一方42に光学的に結合された伝搬セクション44と、遷移セクションの他方43に光学的に結合された反射セクション45とを含む。遷移セクション42、43は、実質的に伝送損失及び反射性を有さないように寸法決めされる。
【0013】
2つのミラーM1、M2が増幅媒体の外側に配置されて、光帰還構造を形成する。図3に示すように、それは典型的には、III-Vヘテロ構造増幅媒体に対して両側に配置されたブラッググレーティングで構成され、一方M2は伝搬セクション44によって支持され、他方M1は反射セクション45によって支持される。反射セクション45によって支持されるミラーM1は高い反射率(90%を超える)を有するが、伝搬セクション44によって支持されるミラーM2は低い反射率(50%未満)を有する。従って、レーザーキャビティからの光は、シリコン導路と結合され、伝搬セクション44からの矢印F3に沿った出力で伝搬される。
【0014】
しかしながら、増幅媒体を備える結合セクションの外側のシリコン導波路に形成された2つのミラーを備えるそのような解決策は、以下の2つの理由のために満足のいくものではない。
【0015】
遷移セクション42、43が伝送損失又は反射性を有さないように、リブ導波路3、4は、この目的のために厚く、スラブ3及びリブ4の累積厚さは通常、400nm以上又は500nm以上である。スラブ3の厚さが300nmであり、リブ4の厚さが200nmであり、リブ4の幅をwl=1500nmからwn=500nmに減少させることによってブラッググレーティングを形成することを考慮すると、ブラッググレーティングは、1310nmの波長に対して200nmの周期を有する。DFBレーザーに関しては、このようなグレーティングの製造には高解像度のリソグラフィーが必要であるため、制御が比較的複雑なままである。
【0016】
さらに、ブラッググレーティングの各基本構造(マイクロ反射器)に導入される反射係数が低いため、高い反射率を得るには、グレーティングを長くする必要がある。例えば、97%の反射率を達成するには、18μmの長さが必要である。従って、ミラーM1、M2は、レーザーキャビティを長くする(InPで作られたDMLレーザーに関して、ここでミラーは、レーザーの活性領域の端にすぐに配置された劈開面である)一方で、キャビティの各モード間の間隔を可能な限り広くすることでモードジャンプなしでのレーザー動作を保証するために、一般に、可能な限り最短でレーザーキャビティを配置することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、モードジャンプなしで(すなわち、キャビティが活性領域に関して可能な限り最短であるレーザーを提案することによって)このレーザーデバイスの動作を保証しながら、低解像度リソグラフィーツールで製造できるハイブリッドIII-V/Siプラットフォーム上のシングルモードレーザーデバイスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的のために、本発明は、以下を含むレーザーデバイスを提案する:
-III-Vヘテロ構造増幅媒体;
-増幅媒体の中央部分に面する結合セクション、伝搬セクション、及び結合セクションと伝搬セクションとの間に配置された第1の遷移セクションを含むシリコン光導波路;
-第1及び第2の反射構造であって、ファブリペロー型共振キャビティが増幅媒体のためにそれらの間に形成されることを可能にする、第1及び第2の反射構造。
【0019】
結合セクションは、結合セクションの厚さ及び/又は幅を減少させることによって設計されたマイクロ反射器を備えた屈折率外乱領域を含み、マイクロ反射器は、m*λm0/(4.neff)の長さを有し、n*λm0/(4.neff)より大きい距離で互いに分離され、ここで、mは奇数の整数、nは整数、λm0は真空中の波長、neffは屈折率外乱領域の実効屈折率である。
【0020】
第1の反射構造は、第1の厚さを有する導波路のセクションに形成される。
【0021】
第2の反射構造は、第1の厚さを有し、導波路の第2の遷移セクションによって結合セクションから分離された導波路のセクションに形成され、第2の遷移セクションは、第1の厚さよりも大きい第2の厚さを有する。
【0022】
このデバイスの特定の好ましいが非制限的な側面は次の通りである:
-第2の反射構造の反射率は、第1の反射構造の反射率よりも大きい;
-第2の反射構造(Mr)の反射率は90%を超える;
-第1の反射構造の反射率は5%から60%の間である;
-第2の反射構造はブラッググレーティングである;
-第1の厚さは50から300nmの間であり、第2の厚さは第1の厚さよりも少なくとも100nm、好ましくは少なくとも150nm大きい;
-第1の反射構造は第1の遷移セクションに形成される;
-第1の遷移セクションは第2の厚さを有する;
-第1の反射構造は、結合セクションに形成されたブラッググレーティングである;
-第1の反射構造は、伝搬セクションと第1の遷移セクションとの間に挿入された導波路のセクションに形成されたブラッググレーティングである;
-導波路は、増幅媒体から離れる方向に向けられたリブを備えた導波路である;
-リブは、第2の遷移セクションに位置し、該当する場合は第1の遷移セクションに位置する。
【0023】
本発明のさらなる態様、目的、利点及び特徴は、非限定的な例として、添付の図面を参照して与えられた、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことでより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】既に上で説明したような、ハイブリッドIII-V/Siプラットフォーム上のDFBレーザーの図である。
図2】既に上で説明したような、InP基板上のDMLレーザーの図である。
図3】既に上で説明したような、ハイブリッドIII-V/Siプラットフォーム上のDBRレーザーの図である。
図4】本発明の第1の可能な実施形態によるレーザーの上面図であり、この上面図には、レーザーの異なる領域を示す、光の伝搬方向に対して横方向に取られた3つの断面が付属している。
図5図4のレーザーの縦断面図である。
図6】本発明の第2の可能な実施形態によるレーザーの上面図であり、この上面図には、レーザーの異なる領域を示す、光の伝搬方向に対して横方向に取られた3つの断面が付属している。
図7】本発明の第3の可能な実施形態によるレーザーの上面図であり、この上面図には、レーザーの異なる領域を示す、光の伝搬方向に対して横方向に取られた3つの断面が付属している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図4から7を参照すると、本発明は、例えば、NドープInP層1とPドープInP層2との間に挟まれた量子井戸のスタックQWから形成されたIII-Vヘテロ構造増幅媒体を含むレーザーデバイスに関する。レーザーは、この増幅媒体の下に、シリコン光導波路、例えば、特に局所的にリブ4で上部を覆われ得るスラブ導波路3を含む。
【0026】
図5に示されるように、スラブ導波路3は、典型的にはSiOで作られた埋め込み絶縁体層7によってシリコン基板6からこうして分離されながら、シリコンオンインシュレーター基板の表層に形成することができる。さらに、導波路は、典型的にはSiOで作られた絶縁体層8で覆われており、これは特に、増幅媒体の結合を可能にする。図4、6及び7の横断面B-Bの図に示されているように、スラブ導波路3は、増幅媒体から離れる方向に向けられたリブ4で局所的に上部を覆うことができる。代替の実施形態では、この局在化したリブは、増幅媒体に向けることができる。
【0027】
レーザーはさらに、第1及び第2の反射構造Mf、Mrを含み、それらは、増幅媒体のためにそれらの間にファブリペロー型共振キャビティを形成することを可能にする。これらの反射構造については、以下でより詳細に説明するが、第2の反射構造Mrの反射率は、第1の反射構造Mfの反射率よりも大きくなり得ることに既に留意されたい。このような反射率の非対称性により、レーザーキャビティの片側の光を優先的に結合することが可能になる。第2の反射構造Mrの反射率は、好ましくは90%より大きく、一方、第1の反射構造Mfは、好ましくは5%から60%の間の反射率を有する。
【0028】
導波路は、増幅媒体の中央部分に面する結合セクション51、61、71と、レーザーによって生成された光の出力ポートとして機能する伝搬セクション54、64、74とを備える。結合セクション51、61、71は、共振キャビティがシングルモード方式で機能するように設計されたマイクロ反射器を備えた屈折率外乱領域510、610、71を備える。これらのマイクロ反射器は、シリコン導波路の厚さを減らすことによって、及び/又はシリコン導波路の幅を減らすことによって形成される。10から200の間がある。図では、これらのマイクロ反射器は、厚さを減らしているシリコン導波路のスロットで表されている。これらのマイクロ反射器は、例えばDMLレーザーに存在するスロットと同様に、マイクロ反射器がm*λm0/(4.neff)の長さを有し、n*λm0/(4.neff)より大きい距離だけ互いに分離されるように、上記のように具体化され、ここで、mは奇数の整数、nは整数、λm0は真空中の波長、neffは屈折率外乱領域の実効屈折率である。DFBレーザーのセグメントSに相当する追加の1/4波位相シフトを、必要に応じてマイクロ反射器間又はマイクロ反射器とミラーと間に導入できる。マイクロ反射器の位置は、例えば、S.O’Brienらによる文献「ファブリペローレーザーにおけるスペクトル操作:摂動逆散乱アプローチ(Spectral manipulation in Fabry-Perot lasers: perturbative inverse scattering approach)」、J.Opt.Soc.Am.B23,1046-1056頁(2006年)に示された手法により決定され得る。結合セクション51、51は、屈折率外乱領域510、610の両側に1つ又は複数の追加の領域511、611を含むことができる。
【0029】
導波路は、伝搬セクション54、64、74と結合セクション51、61、71との間に配置された第1の遷移セクション52、62、72をさらに含む。それはまた、いわゆる高反射率反射セクション55、65、75、及び、結合セクション51、61、71と高反射率セクション55、65、75との間に配置された第2の遷移セクション53、63、73を含む。
【0030】
本発明によれば、第1の反射構造Mfは、第1の厚さを有する導波路のセクションに形成され、第2の反射構造Mrは、第1の厚さを有し、導波路の第2の遷移セクション53、63、73によって結合セクション51、61、71から分離された導波路のセクションに形成され、第2の遷移セクションは、第1の厚さよりも大きい第2の厚さを有する。第1の厚さは、50から300nmの間であり得、第2の厚さは、第1の厚さよりも少なくとも100nm、好ましくは少なくとも150nmだけ大きい。
【0031】
図4及び5に示される第1の実施形態の範囲内で、第1の遷移セクション52は、共振キャビティの第1の反射構造Mfを形成する。
【0032】
第2及び第3の実施形態の範囲内で、共振キャビティの第1の反射構造Mfは、結合セクション61、71の内側(図6)又は外側(図7)の導波路によって支持されるブラッググレーティングである。そして第1の遷移セクション62、72は、第2の厚さを有する。
【0033】
従って、図6に示される第2の実施形態では、第1の反射構造Mfを形成するブラッググレーティングは、屈折率外乱領域610の外側の結合セクション61によって、すなわち、屈折率外乱領域610と第1の遷移セクション62との間に配置された結合セクションの追加領域611によって支持される。
【0034】
図7に示される第3の実施形態では、第1の反射構造Mfを形成するブラッググレーティングは、第1の遷移セクション72と伝搬セクション74との間に挿入されたいわゆる低反射率セクション76によってその部分が支持される。
【0035】
これらの実施形態では、第2の反射構造Mrは、その部分を、第1の反射構造Mfの反対側の結合セクション51、61、71の外側にある導波路の高反射率セクション55、65、75によって支持されたブラッググレーティングによって形成することができる(代替的に、高反射率ブラッググレーティングは、結合セクション内で支持され得る)。シリコン導波路は、第2の反射構造Mrを形成するブラッググレーティングで、並びに、該当する場合は第2の反射構造Mrを形成するブラッググレーティングで、小さい厚さを有することができる。そして、従来技術よりも周期が長い(通常は220nm以上、例えば、導波路の厚さが220nm、波長が1310nmである場合に227nm)ブラッググレーティングを具現化することが可能であることが分かり、それにより、グレーティングの長さを低減できる高い反力を有しながら製造上の制約を緩和することが可能になる(再度同じ例によると、長さ10μmのグレーティングは97%の反射率を達成することを可能にする)。
【0036】
また、面の位置が劈開によって定義される既知のDMLレーザーとは異なり、本発明の2つの反射構造は、結合セクション内のマイクロ反射器に関してこれらの構造の位置のより良い制御を可能にするリソグラフィーによって定義することができる。さらに、第1の実施形態の第1の反射構造は、従来のブラッググレーティングと比較して短縮された長さを有し、これにより、さらに短縮された長さのレーザーキャビティを設計することが可能になる。
【0037】
(例えば、ガイダンスや変調に関して)比較的薄いシリコン導波路(通常100nm~300nm)がシリコンフォトニックコンポーネントに従来から使用されているのに対し、ハイブリッドIII-V/シリコンレーザーは、断熱性の(すなわち損失のない)遷移セクションを設計するために、比較的大きい厚さ(通常500nm)を必要とすることが知られている。これらの遷移セクションでは、導波路の幅も減少/増加される。従って、図4、6及び7の断面B-Bに示されるように、導波路は、第2の遷移セクション53、63、73において(また、第2及び第3の実施形態の範囲内では、第1の遷移セクション62、72において)、(InP層2/量子井戸スタックQWの幅に匹敵する)例えば3μmの幅及び例えば500nmの厚さを有する。
【0038】
第1の実施形態の範囲内で第1の遷移セクション52を用いて第1の反射構造を形成するために、第2の遷移セクション53の厚さ及び/又は幅よりも小さい厚さ及び/又は幅を採用することが可能である。従って、第1の遷移セクション52の厚さは、50から300nmの間であり得、及び/又はその幅は、300nmから1μmの間であり得る。図5に示されるように、第1の遷移セクション52と第2の遷移セクション53との間の厚さの差は、第2の遷移セクション53で局所的に埋め込み絶縁体層7に生成されたシリコン4の余分な厚さによって得ることができる。
【0039】
同様に、第2及び第3の実施形態の範囲内で、第1の反射構造を形成するブラッググレーティングは、遷移セクション62、72及び63、73の厚さ及び/又は幅よりも小さい厚さ及び/又は幅、特に50から300nmの間の厚さ及び/又は300nmから1μmの間の幅を有する導波路のセクションによって支持される。厚さの差は、特に、第1の遷移セクション62、72で局所的に、及び第2の遷移セクション63、73で局所的に埋め込み絶縁体層7に生成されたシリコン4の追加の厚さによって得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 NドープInP層
2 PドープInP層
3 スラブ導波路
4 リブ、シリコン
6 シリコン基板
7 埋め込み絶縁体層
8 絶縁体層
41、51、61、71 結合セクション
42、43 遷移セクション
44、45、54、64、74 伝搬セクション
52、62、72 第1の遷移セクション
53、63、73 第2の遷移セクション
55、65、75 高反射率セクション
76 低反射率セクション
510、610 屈折率外乱領域
511、611 追加領域
QW 量子井戸のスタック
Mf 第1の反射構造
Mr 第2の反射構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7