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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240702BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240702BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240702BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20240702BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240702BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240702BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20240702BHJP
   H01M 50/209 20210101ALN20240702BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/6554
H01M10/653
H01M50/204 401H
H01M10/625
H01M50/209
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022012847
(22)【出願日】2022-01-31
(65)【公開番号】P2023111154
(43)【公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 智
(72)【発明者】
【氏名】本田 亮平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直剛
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022434(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6556
H01M 10/613
H01M 10/6568
H01M 10/6554
H01M 10/653
H01M 50/204
H01M 10/625
H01M 50/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層される複数の電池セルと、
複数の前記電池セルが載置される第1底部と、前記第1底部から立ち上がる第1側部とを有し、複数の前記電池セルを収容するケース体とを備え、
前記第1側部の内部には、冷媒が流通する冷媒通路が設けられ、さらに、
前記電池セルおよび前記ケース体の間に介挿される伝熱部材を備え、
前記伝熱部材は、前記電池セルおよび前記第1側部の間に配置される第2側部と、前記第2側部の下端部に連なり、前記電池セルおよび前記第1底部の間に配置される第2底部とを有し、さらに、
前記第1底部および前記第1側部の隅部に配置され、前記電池セルに向けて突出する突出部を備える、電池パック。
【請求項2】
前記第2側部の上端部は、前記冷媒通路よりも上方に配置され、
前記第2側部の下端部は、前記冷媒通路よりも下方に配置される、請求項に記載の電池パック。
【請求項3】
前記伝熱部材は、前記ケース体に対して前記電池セルを接合する接着剤からなる、請求項に記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1底部は、中実の板材からなる、請求項1からのいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記第1側部は、前記電池セルの積層方向に延び、中空部を区画形成するフレーム材からなり、
前記中空部は、前記冷媒通路をなしている、請求項1からのいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
複数のセル積層体を備え、
各前記セル積層体は、一方向に積層される複数の前記電池セルから構成され、
複数の前記セル積層体は、前記電池セルの積層方向に直交する方向において、互いに間隔を開けて並べられ、
前記第1側部は、前記第1底部から、互いに隣り合う前記セル積層体間の空間に向けて立ち上がり、前記電池セルの積層方向に延びる、請求項1からのいずれか1項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2013-25982号公報(特許文献1)には、複数の角形電池を積層してなる電池ブロックと、電池ブロックの底面に固定され、各角形電池に熱結合状態で連結される冷却プレートと、冷却プレートを冷却する冷却機構とを備える電源装置が開示されている。
【0003】
また、特開2015-207541号公報(特許文献2)には、複数のセルと、複数のセルのうちの少なくとも1つのセルにおいて、セルの底面の全部または一部と接しないように配置される熱伝導シートと、熱伝導シートが底面の全部または一部と接しないセルにおいて、セルの底面および熱伝導シートの間の空隙に介在する熱伝導ペーストとを備える蓄電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-25982号公報
【文献】特開2015-207541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に開示される電源装置では、冷却プレートが電池ブロックの底面に固定されている。しかしながら、冷却プレートには冷媒(冷却水を含む)が循環する冷媒路が設けられるため、冷却プレートが一定以上の厚みを有する必要がある。この場合、電源装置の全高(上下方向における全長)が大きくなってしまう。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、全高を低く抑えることが可能な電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に従った電池パックは、積層される複数の電池セルと、複数の電池セルが載置される第1底部と、第1底部から立ち上がる第1側部とを有し、複数の電池セルを収容するケース体とを備える。第1側部の内部には、冷媒が流通する冷媒通路が設けられる。
【0008】
このように構成された電池パックによれば、冷媒通路が第1側部に設けられることによって、上下方向における第1底部の厚みを小さく抑えることができる。これにより、電池パックの全高を低く抑えることができる。
【0009】
また好ましくは、電池パックは、電池セルおよびケース体の間に介挿される伝熱部材をさらに備える。伝熱部材は、電池セルおよび第1側部の間に配置される第2側部を有する。
【0010】
このように構成された電池パックによれば、電池セルからの熱を、第2側部を介して、冷媒通路が設けられる第1側部に効率的に伝えることができる。これにより、電池セルの冷却性能を高めることができる。
【0011】
また好ましくは、第2側部の上端部は、冷媒通路よりも上方に配置される。第2側部の下端部は、冷媒通路よりも下方に配置される。
【0012】
このように構成された電池パックによれば、第2側部が電池セルおよび冷媒通路の間により確実に配置されるため、電池セルからの熱を第2側部を介して第1側部にさらに効率的に伝えることができる。
【0013】
また好ましくは、伝熱部材は、第2側部の下端部に連なり、電池セルおよび第1底部の間に配置される第2底部をさらに有する。
【0014】
このように構成された電池パックによれば、電池セルからの熱を、第2底部および第1底部を介して、冷媒通路が設けられる第1側部に効率的に伝えることができる。これにより、電池セルの冷却性能をさらに高めることができる。
【0015】
また好ましくは、電池パックは、第1底部および第1側部の隅部に配置され、電池セルに向けて突出する突出部をさらに備える。
【0016】
このように構成された電池パックによれば、第1底部および第1側部の隅部に、伝熱部材が配置されない空隙が生じることを防止できる。
【0017】
また好ましくは、伝熱部材は、ケース体に対して電池セルを接合する接着剤からなる。このように構成された電池パックによれば、伝熱部材が、電池セルで発生した熱の伝導と、ケース体に対する電池セルの接合とを担うため、電池パックを簡易な構成にすることができる。
【0018】
また好ましくは、第1底部は、中実の板材からなる。このように構成された電池パックによれば、上下方向における第1底部の厚みをさらに小さく抑えることができる。
【0019】
また好ましくは、第1側部は、電池セルの積層方向に延び、中空部を区画形成するフレーム材からなる。中空部は、冷媒通路をなしている。
【0020】
このように構成された電池パックによれば、冷媒を、第1側部が区画形成する中空部に直接、流通させるため、電池パックを簡易な構成にすることができる。
【0021】
また好ましくは、電池パックは、複数のセル積層体を備える。各セル積層体は、一方向に積層される複数の電池セルから構成される。複数のセル積層体は、電池セルの積層方向に直交する方向において、互いに間隔を開けて並べられる。第1側部は、第1底部から、互いに隣り合うセル積層体間の空間に向けて立ち上がり、電池セルの積層方向に延びる。
【0022】
このように構成された電池パックによれば、電池パックの全高を低く抑えつつ、複数のセル積層体において電池セルを効率的に冷却することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上に説明したように、この発明に従えば、全高を低く抑えることが可能な電池パックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の実施の形態における電池パックを示す断面図である。
図2図1中の電池パックを構成する電池セルを示す斜視図である。
図3図1中の電池パックを構成する電池セルおよびケース体を示す分解組み立て図である。
図4】比較例における電池パックを示す断面図である。
図5図1中の電池パックの組み立て時の第1工程を示す断面図である。
図6図1中の電池パックの組み立て時の第2工程を示す断面図である。
図7図1中の電池パック(冷媒通路)の第1変形例を示す断面図である。
図8図1中の電池パック(突出部)の第2変形例を示す断面図である。
図9図1中の電池パック(突出部)の第3変形例を示す断面図である。
図10図1中の電池パック(突出部)の第4変形例を示す断面図である。
図11図1中の電池パックの第5変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態における電池パックを示す断面図である。図2は、図1中の電池パックを構成する電池セルを示す斜視図である。図3は、図1中の電池パックを構成する電池セルおよびケース体を示す分解組み立て図である。
【0027】
図1から図3を参照して、電池パック100は、ハイブリッド車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)または電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などの車両の駆動用電源として用いられる。
【0028】
本明細書においては、電池パック100の構造を説明する便宜上、後述する複数の電池セル11の積層方向、かつ、水平方向に延びる軸を「Y軸」といい、Y軸に直交する方向、かつ、水平方向に延びる軸を「X軸」といい、上下方向に延びる軸を「Z軸」という。
【0029】
電池パック100は、複数の電池セル11と、ケース体21とを有する。複数の電池セル11は、Y軸方向に積層されている。ケース体21は、複数の電池セル11を収容している。
【0030】
図2に示されるように、電池セル11は、リチウムイオン電池である。電池セル11は、角形であり、直方体の薄板形状を有する。複数の電池セル11は、Y軸方向が電池セル11の厚み方向となるように積層されている。
【0031】
電池セル11は、外装体12を有する。外装体12は、直方体形状の筐体からなり、電池セル11の外観をなしている。外装体12には、電極体および電解液が収容されている。
【0032】
外装体12は、第1側面13と、第2側面14と、頂面15と、底面16とを有する。第1側面13および第2側面14の各側面は、Y軸に直交する平面からなる。第1側面13および第2側面14は、Y軸方向において、互いに反対側を向いている。第1側面13および第2側面14の各側面は、外装体12が有する複数の側面のうちで最も大きい面積を有する。第1側面13および第2側面14の各側面は、矩形形状を有する。第1側面13および第2側面14の各側面は、X軸方向が長手方向となり、Z軸方向が短手方向となる矩形形状を有する。
【0033】
頂面15および底面16の各面は、Z軸に直交する平面からなる。頂面15は、上方を向いている。底面16は、下方を向いている。頂面15には、外装体12の内部で発生したガスにより外装体12の内圧が所定値以上となった場合に、そのガスを外装体12の外部に排出するためのガス排出弁17が設けられている。
【0034】
電池セル11は、正極端子18Pおよび負極端子18Nが対となった電極端子18をさらに有する。電極端子18は、頂面15に設けられている。正極端子18Pおよび負極端子18Nは、X軸方向において、互いに離れて設けられている。正極端子18Pおよび負極端子18Nは、X軸方向におけるガス排出弁17の両側にそれぞれ設けられている。
【0035】
複数の電池セル11は、Y軸方向に隣り合う電池セル11,11の間において、第1側面13同士が向かい合わせとなり、第2側面14同士が向かい合わせとなるように積層されている。これにより、複数の電池セル11が積層されるY軸方向において、正極端子18Pと負極端子18Nとが、交互に並んでいる。
【0036】
Y軸方向に隣り合う電池セル11,11の間において、Y軸方向に並ぶ正極端子18Pと負極端子18Nとが、図示されないバスバーにより、互いに接続されている。複数の電池セル11は、互いに電気的に直列に接続されている。複数の電池セル11は、互いに電気的に、並列、または、直列および並列の組み合わせで接続されてもよい。
【0037】
積層された複数の電池セル11により、セル積層体10が構成されている。セル積層体10は、直方体形状をなしている。Y軸方向におけるセル積層体10の長さは、Z軸方向におけるセル積層体10の長さよりも大きく、X軸方向におけるセル積層体10の長さよりも大きい。
【0038】
ケース体21は、直方体形状の外観を有する箱体からなる。Y軸方向におけるケース体21の長さは、Z軸方向におけるケース体21の長さよりも大きく、X軸方向におけるケース体21の長さよりも大きい。ケース体21は、ケース底部22と、第1ケース側部23(23A,23B)と、第2ケース側部25(25C,25D)と、ケース頂部24とを有する。本実施の形態では、ケース底部22が、本発明における「第1底部」に対応し、第1ケース側部23が、本発明における「第1側部」に対応している。
【0039】
ケース底部22は、ケース体21の底に配置されている。ケース底部22は、Z軸方向が厚み方向となり、水平方向に延在する板材からなる。ケース底部22は、中実の板材からなる。ケース底部22には、中空部が設けられていない。ケース底部22には、複数の電池セル11が載置されている。ケース底部22には、後述する伝熱部材41(底部42)を介して、複数の電池セル11が載置されている。
【0040】
第1ケース側部23は、ケース底部22から立ち上がり、上方に向けて延出している。第1ケース側部23は、X軸方向において一定の幅を有しながら、Y軸方向に延びている。第1ケース側部23は、Y軸方向に延びるケース底部22の周縁に沿って設けられている。第1ケース側部23Aおよび第1ケース側部23Bは、X軸方向において、互いに離れて設けられている。
【0041】
第1ケース側部23(23A,23B)は、中空部26を区画形成するフレーム材からなる。中空部26は、複数の電池セル11の積層方向であるY軸方向に延びている。第1ケース側部23は、X軸-Z軸平面により切断された場合に、Y軸方向における全ての切断位置で同一となる断面形状を有する。
【0042】
より具体的には、第1ケース側部23は、枠部27と、隔壁部28とを有する。枠部27は、X軸-Z軸平面により切断された場合に、矩形形状の4辺に沿って延びる断面を有する。枠部27は、第1ケース側部23の外観をなしている。隔壁部28は、枠部27の内側に設けられている。隔壁部28は、枠部27の内側の空間を複数の中空部26に区画している。各中空部26は、Y軸方向に見た場合に、矩形形状の開口をなしている。複数の中空部26は、X軸方向と、Z軸方向とに並んで設けられている。一例として、第1ケース側部23は、アルミニウムの押し出し材からなる。
【0043】
なお、第1ケース側部23に、単一の中空部26が設けられる構成であってもよいし、円形、または、矩形以外の多角形状を有する中空部26が設けられる構成であってもよい。
【0044】
第2ケース側部25は、ケース底部22から立ち上がり、上方に向けて延出している。第2ケース側部25は、Y軸方向において一定の幅を有しながら、X軸方向に延びている。第2ケース側部25は、X軸方向に延びるケース底部22の周縁に沿って設けられている。第2ケース側部25Cおよび第2ケース側部25Dは、Y軸方向において、互いに離れて設けられている。第2ケース側部25Cおよび第2ケース側部25Dは、Y軸方向に積層された複数の電池セル11の両側にそれぞれ設けられている。複数の電池セル11は、Y軸方向において、第2ケース側部25Cおよび第2ケース側部25Dにより拘束されている。
【0045】
第1ケース側部23および第2ケース側部25は、ケース底部22の周縁に沿って周回している。ケース底部22上であって、第1ケース側部23および第2ケース側部25により取り囲まれる位置には、上方を向いて開口し、複数の電池セル11(セル積層体10)を収容する空間70が規定されている。
【0046】
ケース頂部24は、Z軸方向において、ケース底部22と対向して配置されている。ケース頂部24は、第1ケース側部23および第2ケース側部25の上端部に対して着脱可能に取り付けられ、空間70の開口を塞ぐ蓋体をなしている。
【0047】
ケース底部22、第1ケース側部23、第2ケース側部25およびケース頂部24は、別々の部材からなり、互いに組み合わされてケース体21を構成している。本発明におけるケース体は、このような構成に限られず、たとえば、第1底部と、第1側部とが、一体の部材からなる構成であってもよい。
【0048】
第1ケース側部23(23A,23B)の内部には、冷媒通路31が設けられている。冷媒通路31は、第1ケース側部23の外観をなす枠部27の内側に設けられている。冷媒通路31は、冷媒(たとえば、冷却水)を流通させる。冷媒通路31は、Y軸方向に冷媒を流通させる。
【0049】
冷媒通路31は、X軸方向において、複数の電池セル11(セル積層体10)と隣り合って設けられている。冷媒通路31は、Y軸方向における複数の電池セル11の一方端および他方端の間に渡って延びている。
【0050】
電池パック100は、管部材32をさらに有する。管部材32は、中空部26に配置されている。管部材32は、複数の中空部26のうち、X軸方向において電池セル11と隣り合い、Z軸方向においてケース底部22の直上に位置する中空部26に配置されている。管部材32は、Y軸方向に延びている。管部材32は、中空部26を区画する第1ケース側部23の内壁と接触して設けられている。冷媒通路31は、管部材32により構成されている。
【0051】
図4は、比較例における電池パックを示す断面図である。図4を参照して、本比較例では、図1中の冷媒通路31(管部材32)に替わって、冷媒通路131が設けられている。冷媒通路131は、ケース底部22の内部に設けられている。このような構成では、ケース底部22に冷媒通路131を通すため、ケース底部22の厚みtが大きくなってしまう。この結果、電池パックの全高hが大きくなるため、電池パックの体積に対するエネルギー密度が低下したり、車両に対する電池パックの搭載性が低下したりする可能性がある。
【0052】
図1から図3を参照して、これに対して、本実施の形態における電池パック100では、冷媒通路31(管部材32)が第1ケース側部23の内部に設けられている。このような構成により、ケース底部22の厚みTを小さく抑えることが可能となるため、電池パック100の全高Hを小さくすることができる。
【0053】
電池パック100の構造を続けて説明する。電池パック100は、伝熱部材41をさらに有する。
【0054】
伝熱部材41は、電池セル11およびケース体21の間に介挿されている。伝熱部材41は、複数の電池セル11(セル積層体10)と、ケース体21との間に介挿されている。伝熱部材41は、Y軸方向における複数の電池セル11(セル積層体10)の一方端および他方端の間に渡って設けられている。
【0055】
伝熱部材41は、底部42と、側部43とを有する。本実施の形態では、底部42が、本発明における「第2底部」に対応し、側部43が、本発明における「第2側部」に対応している。底部42は、電池セル11(底面16)と、ケース底部22との間に配置されている。側部43は、電池セル11と、第1ケース側部23(23A,23B)との間に配置されている。底部42は、側部43の下端部43qに連なっている。
【0056】
側部43の上端部43pは、冷媒通路31(管部材32)よりも上方に配置されている。側部43の上端部43pは、第1ケース側部23に対する管部材32の接触位置よりも上方に配置されている。側部43の下端部43qは、冷媒通路31(管部材32)よりも下方に配置されている。
【0057】
伝熱部材41は、空気よりも高い熱伝導率を有する材料からなる。伝熱部材41は、たとえば、ギャップフィラーからなる。伝熱部材41は、電池パック100の組み立て時に流動性を有し、常温放置または加熱により硬化する。伝熱部材41は、アクリル、ウレタンまたはシリコーン等の樹脂製である。伝熱部材41は、ケース体21に対して電池セル11を接合する接着剤であってもよい。
【0058】
このような構成によれば、伝熱部材41の側部43が電池セル11および第1ケース側部23の間に配置されるため、発熱体である電池セル11からの熱を、側部43を通じて、冷媒通路31(管部材32)が内蔵された第1ケース側部23に効率的に伝えることができる。これにより、電池セル11の冷却性能を高めることができる。この場合に、側部43の上端部43pが、冷媒通路31よりも上方に配置され、側部43の下端部43qが、冷媒通路31よりも下方に配置されるため、電池セル11から冷媒通路31に伝わる熱の経路上に、側部43をより確実に配置することができる。また、伝熱部材41が電池セル11およびケース底部22の間に配置される底部42を有するため、電池セル11からの熱を、底部42およびケース底部22を通じて、第1ケース側部23に伝えることもできる。これにより、電池セル11の冷却性能をさらに高めることができる。
【0059】
また、伝熱部材41が接着剤である場合、電池セル11からの伝熱性を高めるための伝熱部材41を利用して、電池セル11をケース体21に対して固定することができる。
【0060】
電池パック100は、突出部51をさらに有する。突出部51は、ケース底部22および第1ケース側部23(23A,23B)の隅部に配置されている。突出部51は、電池セル11に向けて突出している。突出部51は、Y軸方向に延びている。突出部51は、Y軸方向に見た場合に、矩形形状を有する。突出部51の上端部51pは、電池セル11の底面16よりも上方に配置されている。突出部51の上端部51pは、第1ケース側部23に対する管部材32の接触位置よりも下方に配置されている。突出部51の下端部51qは、電池セル11の底面16よりも下方に配置されている。
【0061】
図5および図6は、図1中の電池パックの組み立て時の工程を示す断面図である。図5を参照して、流動性を有する伝熱材料46を空間70に配置する。伝熱材料46は、ケース底部22から一定の高さで配置される。図6を参照して、次に、複数の電池セル11(セル積層体10)を空間70に配置する。セル積層体10の底部を伝熱材料46に浸漬することによって、ケース底部22上の伝熱材料46がセル積層体10の側方の空間に流出する。このとき、ケース底部22および第1ケース側部23の隅部に配置される突出部51によって、伝熱材料46をセル積層体10の側方の空間に円滑に導くことができる。また、X軸方向における突出部51およびセル積層体10の間の隙間が小さくなるため、セル積層体10の側方の空間に向けた伝熱材料46の流出量を増やすことができる。
【0062】
このあと、伝熱材料46を硬化させることによって、底部42および側部43を有する伝熱部材41を形成する。なお、突出部51によって、ケース底部22および第1ケース側部23の間のシール性を高めたり、第1ケース側部23および電池セル11の間の距離を確保しつつ、Y軸方向において複数の電池セル11をより精度よく整列させたりすることもできる。
【0063】
続いて、電池パック100の各種変形例について説明する。図7は、図1中の電池パック(冷媒通路)の第1変形例を示す断面図である。図7を参照して、本変形例では、中空部26に図1中の管部材32が設けられておらず、中空部26が、冷媒が流通する冷媒通路31を構成している。このような構成によれば、電池パックの部品点数を削減することができる。
【0064】
図8から図10は、図1中の電池パック(突出部)の第2から第4変形例を示す断面図である。図8から図10中には、図1中の2点鎖線VIIIで囲まれた範囲に対応する電池パックの断面が示されている。
【0065】
図8を参照して、本変形例では、X軸方向において電池セル11と対向する突出部51の側部51rが、Z軸方向(上下方向)に対して傾斜するテーパ面からなる。X軸方向における突出部51の幅は、下端部51qから上端部51pに向かうほど小さくなる。図9を参照して、本変形例では、側部51rと上端部51pとの角部に、平面からなる面取り部52が設けられている。図10を参照して、本変形例では、側部51rと上端部51pとの角部に、湾曲面からなる面取り部53が設けられている。
【0066】
これら変形例によれば、複数の電池セル11(セル積層体10)を空間70に配置する工程時、突出部51によって、セル積層体10がケース底部22の直上の位置に円滑に案内される。このため、複数の電池セル11を空間70に配置する工程を容易に行なうことができる。また、突出部51に、図9および図10に示される面取り部52,53を設けることによって、突出部51との接触に起因した電池セル11(特に、電池セル11の外装体12を覆う絶縁性シート材)の破損を抑制することができる。
【0067】
図11は、図1中の電池パックの第5変形例を示す断面図である。図11を参照して、本変形例では、複数のセル積層体10(10A,10B,10C)が、Y軸方向に直交するX軸方向において、互いに間隔を開けて並べられている。ケース体21は、第1フレーム29(29A,29B)と、第2フレーム61(61A,61B,61C,61D,61E,61F)とをさらに有する。本変形例では、第2フレーム61が、本発明における「第1側部」に対応している。
【0068】
第1フレーム29は、第1ケース側部23と同様のフレーム構造を有し、ケース底部22上に立設されている。第1フレーム29Aは、セル積層体10Aおよびセル積層体10Bの間の空間でY軸方向に延びている。第1フレーム29Bは、セル積層体10Bおよびセル積層体10Cの間の空間でY軸方向に延びている。
【0069】
第2フレーム61は、ケース底部22から立ち上がり、Y軸方向に延びるフレーム材からなる。第2フレーム61Aは、第1ケース側部23Aおよびセル積層体10Aの間に介挿されている。第2フレーム61Bおよび第2フレーム61Cは、ケース底部22から、セル積層体10Aおよびセル積層体10Bの間の空間に向けて立ち上がっている。第2フレーム61Bは、セル積層体10Aおよび第1フレーム29Aの間に介挿され、第2フレーム61Cは、第1フレーム29Aおよびセル積層体10Bの間に介挿されている。第2フレーム61Dおよび第2フレーム61Eは、ケース底部22から、セル積層体10Bおよびセル積層体10Cの間の空間に向けて立ち上がっている。第2フレーム61Dは、セル積層体10Bおよび第1フレーム29Bの間に介挿され、第2フレーム61Eは、第1フレーム29Bおよびセル積層体10Cの間に介挿されている。第2フレーム61Fは、セル積層体10Cおよび第1ケース側部23Bの間に介挿されている。
【0070】
第2フレーム61(61A,61B,61C,61D,61E,61F)の内部には、冷媒通路36が設けられている。冷媒通路36は、Y軸方向に延びている。このような構成により、電池パックの全高を小さく抑えつつ、複数のセル積層体10において電池セル11を効率的に冷却することができる。
【0071】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
10,10A,10B,10C セル積層体、11 電池セル、12 外装体、13 第1側面、14 第2側面、15 頂面、16 底面、17 ガス排出弁、18 電極端子、18N 負極端子、18P 正極端子、21 ケース体、22 ケース底部、23,23A,23B 第1ケース側部、24 ケース頂部、25,25C,25D 第2ケース側部、26 中空部、27 枠部、28 隔壁部、29,29A,29B 第1フレーム、31,36,131 冷媒通路、32 管部材、41 伝熱部材、42 底部、43,51r 側部、43p,51p 上端部、43q,51q 下端部、46 伝熱材料、51 突出部、52,53 面取り部、61,61A,61B,61C,61D,61E,61F 第2フレーム、70 空間、100 電池パック。
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11