(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】脂肪族ポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 63/16 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
C08G63/16
(21)【出願番号】P 2022026061
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2022-02-22
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202111508210.8
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】李 杰橙
(72)【発明者】
【氏名】林 得順
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-122144(JP,A)
【文献】特開平09-057849(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105061744(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112280011(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113512182(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンサクシネートを含む脂肪族ポリエステル組成物であって、
前記脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴は、第1特性ピークと第2特性ピークとを有し、
前記第1特性ピークは、3.84ppm~4.32ppmであり、
前記第2特性ピークは、5.65ppm~5.85ppmであり、
前記第2特性ピークの積分値は、前記第1特性ピークの積分値を100として、0.10未満であ
り、
硫黄又はリンと、チタンとを含む脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の前記プロトン核磁気共鳴は、第3特性ピークを有し、
前記第3特性ピークは、3.30ppm~3.42ppmであり、
前記第3特性ピークの積分値は、前記第1特性ピークの積分値を100として、0.001~2.0である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の前記プロトン核磁気共鳴は、第4特性ピークを有し、
前記第4特性ピークは、3.55ppm~3.70ppmであり、
前記第4特性ピークの積分値は、前記第1特性ピークの積分値を100として、0.01~0.50である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の前記プロトン核磁気共鳴は、第5特性ピークを有し、
前記第5特性ピークは、4.72ppm~4.90ppmであり、
前記第5特性ピークの積分値は、前記第1特性ピークの積分値を100として、0.15~0.50である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の前記プロトン核磁気共鳴は、第6特性ピークを有し、
前記第6特性ピークは、4.97ppm~5.15ppmであり、
前記第6特性ピークの積分値は、前記第1特性ピークの積分値を100として、0.21未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、100ppm未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物のリンの含有量は、50ppm未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、20ppm~100ppmである脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物のメルトフローインデックスは、40.0g/10min未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物のカルボン酸末端基の濃度は、30.0meq/kg未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の色度bは、15.0未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1つに記載の脂肪族ポリエステル組成物において、
前記脂肪族ポリエステル組成物の黄色度指数は、30.0未満である脂肪族ポリエステル組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脂肪族ポリエステル組成物に関し、特に、ポリブチレンサクシネートを含む脂肪族ポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
産業革命以来、プラスチックの全生産量は増加し続け、プラスチックの浪費も増加している。プラスチックの浪費によって引き起こされる環境問題を解決するために、生分解性プラスチックが生まれ、ポリブチレンサクシネート(PBS)が広く用いられる生分解性プラスチックの1つになっている。
【0003】
ポリブチレンサクシネートは、コハク酸とブタンジオールによって重合される。ポリブチレンサクシネートは、乳白色に見え、高い衝撃強さ及び引裂き強さを有している。主となる適用は、包装材、化粧品容器及び飲料ボトルである。前述の適用の外観は、マーケティングにおいて大きな影響を与える。そのため、ポリブチレンサクシネートの色は、当業者の研究課題の1つとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この観点から、本開示の目的は、ポリブチレンサクシネートの色調を改善して、その製品価値を高めることである。
【0006】
本開示の別の目的は、ポリブチレンサクシネートのカルボン酸末端基(CEG)の濃度を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を成し遂げるために、本開示は、ポリブチレンサクシネートを含む脂肪族ポリエステル組成物を提供し、脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H1-NMR)は、第1特性ピークと第2特性ピークとを有する。第1特性ピークは、3.84ppm~4.32ppmであり、第2特性ピークは、5.65ppm~5.85ppmである。第1特性ピークの積分値を100とすると、第2特性ピークの積分値は、0.10未満である。
【0008】
本開示によれば、脂肪族ポリエステル組成物のH1-NMRにおける第2特性ピークの積分値を管理することによって、本開示の脂肪族ポリエステル組成物は、素晴らしい色調と低濃度のカルボン酸末端基とを有し、その製品価値を高めるのに有益である。
【0009】
本開示によれば、第1特性ピークの積分値を100で基準として、第2特性ピークの積分値は、0.099未満であることが好ましい。当業者は、第2特性ピークのより小さい積分値は、脂肪族ポリエステル組成物におけるアルケン不純物の含有量がより少ないことを意味することがわかるだろう。1つの実施形態では、第1特性ピークの積分値を100として、第2特性ピークの積分値は、0.005~0.099であり得る。
【0010】
本開示によれば、第1特性ピーク及び第2特性ピークに加えて、脂肪族ポリエステル組成物のH1-NMRは、第3特性ピーク、第4特性ピーク、第5特性ピーク及び/又は第6特性ピークをさらに有する。一実施形態では、第3特性ピークは、3.30ppm~3.42ppmである。第1特性ピークの積分値を100として、第3特性ピークの積分値は、0.001~2.0であり得る。別の実施形態では、第4特性ピークは、3.55ppm~3.70ppmである。第1特性ピークの積分値を100として、第4特性ピークの積分値は、0.01~0.50であり得る。さらに別の実施形態では、第5特性ピークは、4.72pm~4.90ppmである。第1特性ピークの積分値を100として、第5特性ピークの積分値は、0.15~0.50であり得る。さらに別の実施形態では、第6特性ピークは、4.97ppm~5.15ppmである。第1特性ピークの積分値を100として、第6特性ピークの積分値は、0.21未満、又は0.010~0.205であり得る。
【0011】
当業者は、脂肪族ポリエステル組成物に含まれる成分のプロトンの化学的環境を特性ピークのそれぞれの化学シフトに従って確認できると理解されるべきであろう。様々な必要性に応じて、様々な出発物質及び添加物が脂肪族ポリエステル組成物に加えられ得る。脂肪族ポリエステル組成物におけるポリブチレンサクシネートは、下記の式(I)で表される。脂肪族ポリエステル組成物は、それに限定されないが、式(II)~式(IV)の構造を含んでいてもよい。
【0012】
【0013】
本開示によれば、脂肪族ポリエステル組成物のH1-NMRによって分析された特性ピーク及び対応するプロトンは、下記に述べられる。3.84ppm~4.32ppmに位置する第1特性ピークは、式(I)におけるエステル基以外の-CH2-基のプロトンに相当してもよく、それは式(I)において*で示される。5.65ppm~5.85ppmに位置する第2特性ピークは、式(II)におけるアルケン基のプロトンに相当してもよく、それは式(II)において1で示される。3.30ppm~3.42ppmに位置する第3特性ピークは、式(III)におけるエーテル基以外の-CH2-基のプロトンに相当してもよく、それは式(III)において*で示される。3.55ppm~3.70ppmに位置する第4特性ピークは、式(IV)におけるヒドロキシ基以外の-CH2-基のプロトンに相当してもよく、それは式(IV)において*で示される。4.72ppm~4.90ppmに位置する第5特性ピークは、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の鎖伸長反応から形成されたアミド基(-NH-CO)のプロトンに相当してもよい。4.97ppm~5.15ppmに位置する第6ピークは、アルケン基のプロトンに相当してもよく、それは、式(II)において2で示される。
【0014】
アルケン不純物は、式(II)の上記の構造に限定されないと理解されるべきである。アルケン不純物は、反応に酸触媒又は金属触媒に加えることによって産出される副生成物である。アルケン不純物は、端末アルケン又は内部アルケンであってもよい。
【0015】
脂肪族ポリエステル組成物は、微量の硫黄及びリンを含んでいてもよいと理解されるべきである。前述の微量の硫黄及びリンは、製造において加えられた酸触媒、脂肪族二塩基酸、脂肪族ジオール及び/又は装置における残余からのものであってもよい。脂肪族二塩基酸及び脂肪族ジオールにおける微量の硫黄及びリンは、製造又はそのリサイクルプロセスにおける残余からのものであってもよい。
【0016】
好ましくは、脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、100ppm未満であってもよい。より好ましくは、脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、90ppm未満であってもよい。さらに好ましくは、脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、80ppm未満であってもよい。随意に、脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、それに限定されないが、5ppm,10ppm,15ppm,20ppm,…,80ppm,85ppm,90ppm又は95ppmであってもよい。脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、前記値の任意の2つの間の範囲内に入っていてもよい。
【0017】
好ましくは、脂肪族ポリエステル組成物のリンの含有量は、50ppm未満であってもよい。さらに好ましくは、脂肪族ポリエステル組成物のリンの含有量は、45ppm未満であってもよい。随意に、脂肪族ポリエステル組成物のリンの含有量は、それに限定されないが、1ppm,2ppm,3ppm,4ppm,5ppm,6ppm,7ppm,8ppm,…,43ppm又は44ppmであってもよい。脂肪族ポリエステル組成物のリンの含有量は、前記値の任意の2つの間の範囲内に入っていてもよい。
【0018】
好ましくは、脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、20ppm~100ppmであってもよい。随意に、脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、それに限定されないが、20ppm,21ppm,22ppm,23ppm,24ppm,25ppm,26ppm,27ppm,28ppm,…99ppm又は100ppmであってもよい。脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、前記値の任意の2つの間の範囲内に入っていてもよい。
【0019】
一実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物のメルトフローインデックス(MI)は、40.0g/10min未満であってもよい。随意に、脂肪族ポリエステル組成物のメルトフローインデックスは、それに限定されないが、1g/10min,2g/10min,3g/10min,4g/10min,5g/10min,6g/10min,7g/10min,8g/10min,9g/10min,10g/10min,…,38g/10min又は39g/10minであってもよい。脂肪族ポリエステル組成物のメルトフローインデックスは、前記値の任意の2つの間の範囲内に入っていてもよい。
【0020】
一実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物のカルボン酸末端基の濃度は、30.0meq/kg未満である。別の実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物のカルボン酸末端基の濃度は、10.0meq/kg~30.0meq/kgである。さらに別の実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物のカルボン酸末端基の濃度は、15.0meq/kg~29.0meq/kgである。
【0021】
一実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物の色度bは、15.0未満である。別の実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物の色度bは、1.0~14.0である。さらに別の実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物の色度bは、2.0~13.0である。
【0022】
一実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物の黄色度指数(YI)は、30.0未満である。別の実施形態では、脂肪族ポリエステル組成物の黄色度指数は、4.0~29.0である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】実施例1の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【
図1B】実施例2の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【
図1C】実施例3の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【
図1D】実施例4の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【
図1E】実施例5の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【
図1F】実施例6の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【
図1G】比較例1の脂肪族ポリエステル組成物のプロトン核磁気共鳴(H
1-NMR)のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本開示の脂肪族ポリエステル組成物の実施を明らかにするために複数の例が提供される一方、比較としての複数の例も提供される。当業者は、本開示の利点及び効果を下記の実施例及び比較例から容易に理解できる。ここで提案される説明は、例解だけの目的のための単に好ましい実施形態であり、本開示の範囲を限定するつもりではない。様々な修正及び変更が、本開示の真意及び範囲からはずれることなく、本開示を実行又は適用するためになされるだろう。
【0025】
=脂肪族ポリエステル組成物=
-実施例1~6及び比較例1-
実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の出発物質は、コハク酸及びブタンジオールであり、これに酸触媒が反応触媒として加えられた。前述の酸触媒は、亜リン酸、 硫酸又はそれらの組み合わせであった。製造に用いられたオートクレーブは、撹拌装置、窒素入口、加熱装置、温度センサ及び減圧用のエアベントとを有していた。実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の詳細な製造は、それぞれ以下に説明される。
【0026】
〈実施例1〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)及び亜リン酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、亜リン酸の量は、130ppmであった。
【0027】
次に、オートクレーブは、68rpmの撹拌速度で210±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0028】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(チタン酸テトラブチル、TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、230±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の攪拌速度は、68rpmであり、プレ凝縮反応が2時間~4時間行われた。過剰のブタンジオールがプレ凝縮反応から継続的に取り除かれた。固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gに達したときに、プレ凝縮物が産出された。最終物の重量を基準にして、チタン触媒のチタンの含有量は、89ppmであった。
【0029】
ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が、プレ凝縮物に180℃~220℃の温度下で加えられた。混合物は、0.5時間~1時間、均一に攪拌された。そして、実施例1の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。実施例1の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。脂肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.8dL/g~2.5dL/gであった。
【0030】
〈実施例2〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)及び硫酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、硫酸の量は、125ppmであった。
【0031】
次に、オートクレーブは、68rpmの撹拌速度で200±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0032】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、230±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の攪拌速度は、68rpmであり、プレ凝縮反応が1時間~2.5時間行われた。過剰のブタンジオールがプレ凝縮反応から継続的に取り除かれた。固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gに達したときに、プレ凝縮物が産出された。最終物の重量を基準にして、 チタン触媒のチタンの含有量は、97ppmであった。
【0033】
HDIが、プレ凝縮物に180℃~220℃の温度下で加えられた。混合物は、0.5時間~1時間、均一に攪拌された。そして、実施例2の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。実施例2の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.8dL/g~2.5dL/gであった。
【0034】
〈実施例3〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)及び亜リン酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、亜リン酸の量は、65ppmであった。
【0035】
次に、オートクレーブは、68rpmの撹拌速度で200±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0036】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、228±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の攪拌速度は、68rpmであり、プレ凝縮反応が1.5時間~3.5時間行われた。過剰のブタンジオールがプレ凝縮反応から継続的に取り除かれた。固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gに達したときに、プレ凝縮物が産出された。最終物の重量を基準にして、チタン触媒のチタンの含有量は、29ppmであった。
【0037】
ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が、プレ凝縮物に180℃~220℃の温度下で加えられた。混合物は、0.5時間~1時間、均一に攪拌された。そして、実施例3の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。実施例3の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。脂肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.8dL/g~2.5dL/gであった。
【0038】
〈実施例4〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)、硫酸及び亜リン酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、硫酸の量は、200ppmであり、亜リン酸の量は、65ppmであった。
【0039】
次にオートクレーブは、68rpmの撹拌速度で200±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0040】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、235±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の攪拌速度は、68rpmであり、プレ凝縮反応が2時間~4時間行われた。過剰のブタンジオールがプレ凝縮反応から継続的に取り除かれた。固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gに達したときに、プレ凝縮物が産出された。最終物の重量を基準にして、チタン触媒のチタンの含有量は、27ppmであった。
【0041】
HDIが、プレ凝縮物に180℃~220℃の温度下で加えられた。混合物は、0.5時間~1時間、均一に攪拌された。そして、実施例4の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。実施例4の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。脂肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.2dL/g~1.8dL/gであった。
【0042】
〈実施例5〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)及び硫酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、硫酸の量は、200ppmであった。
【0043】
次に、オートクレーブは、68rpmの撹拌速度で200±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0044】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、235±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の最初の攪拌速度は、68rpmであった。粘度が大きくなるにつれて、攪拌装置の攪拌速度は、52rpmまで、又は、さらに32rpmまで調整された。凝縮反応が4時間~6時間行われた。過剰のブタンジオールが凝縮反応から継続的に取り除かれた。実施例5の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。最終物の重量を基準にして、チタン触媒のチタンの含有量は、77ppmであった。
【0045】
実施例5の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。脂肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.2dL/g~1.8dL/gであった。
【0046】
〈実施例6〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)及び硫酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、硫酸の量は、200ppmであった。
【0047】
次に、オートクレーブは、68rpmの撹拌速度で200±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0048】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、220±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の最初の攪拌速度は、68rpmであった。粘度が大きくなるにつれて、攪拌装置の攪拌速度は、52rpmまで、又は、さらに32rpmまで調整された。凝縮反応が6時間~7時間行われた。過剰のブタンジオールが凝縮反応から継続的に取り除かれた。実施例6の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。最終物の重量を基準にして、チタン触媒のチタンの含有量は、79ppmであった。
【0049】
実施例6の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。脂肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.2dL/g~1.8dL/gであった。
【0050】
〈比較例1〉
まず、コハク酸(100重量部)、ブタンジオール(103重量部)及び硫酸の混合物がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが減圧されて空気が抜かれ、1気圧になるまで窒素がオートクレーブに入れられた。オートクレーブが窒素で満たされるように前記作業が3回繰り返された。最終物の重量を基準にして、硫酸の量は、500ppmであった。
【0051】
次に、オートクレーブは、68rpmの撹拌速度で200±3℃まで加熱された。前記温度下でエステル化が行われた。エステル化の圧力は、50kPa~100kPaであり、反応時間は2時間であった。エステル化が行われている間、エステル化で生成された水は継続的に取り除かれた。そして、エステル化物が産出された。
【0052】
エステル化物は、凝縮オートクレーブに移された。チタン触媒(TBT)が加えられた。凝縮オートクレーブの反応温度は、240±3℃であり、反応圧力は、0.1kPa未満であり、攪拌装置の攪拌速度は、68rpmであり、プレ凝縮反応が1時間~2.5時間行われた。過剰のブタンジオールがプレ凝縮反応から継続的に取り除かれた。固有粘度が0.9dL/g~1.1dL/gに達したときに、プレ凝縮物が産出された。最終物の重量を基準にして、チタン触媒のチタンの含有量は、101ppmであった。
【0053】
HDIが、プレ凝縮物に180℃~220℃の温度下で加えられた。混合物は、0.5時間~1時間、均一に攪拌された。そして、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が産出された。比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の造粒が実行された。脂肪族ポリエステル組成物は、220℃の温度下でストランドになるように、凝縮オートクレーブの底から取り出された。ストランドは、10℃の水に漬けられ、ペレットに切断された。最終物は、粒状の脂肪族ポリエステル組成物であり、脂肪族ポリエステル組成物の固有粘度は、1.8dL/g~2.5dL/gであった。
【0054】
〈試験例1〉プロトン核磁気共鳴(H1-NMR)
この試験例では、実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が被検試料として用いられた。核磁気共鳴分光器(製造元:Bruker、モデル:Bruker CEGIII 400MHz)が分析に使用された。
【0055】
この試験例では、30mg~60mgの被検試料が容器に入れられ、0.5mLの乾燥d-クロロホルム(CDCl3)が加えられた。試料が完全に溶解するまで、容器は室温に2時間置かれた。得られた溶液は、NMR試験管に入れられ、25℃で測定された。
【0056】
d-クロロホルムの化学シフトは、得られたスペクトルにおいて7.26ppmになるように設定された。スペクトルは、Bruker TopSpin 4.0.7によって描かれた。位相は、特定の化学シフトの区域で調整された。4.07ppmの化学シフトは、ピボット点に設定され、0次位相補正(zero order phase correction)が行われた。C13結合から生成される付随信号は、同じ高さを有するように設定された。一次位相補正(first order phase correction)がさらに行われ、信号の平坦度が調整された。最後に、積分誤差を避けるために、係数Aによって基準線が上下に調整され、信号の下端が揃えられる。
【0057】
実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物に含まれる成分は、以下の式(I)~式(IV)で表された。
【0058】
【0059】
実施例1~6及び比較例1のH
1-NMRスペクトルは、
図1A~
図1Gに順に示される。3.84ppm~4.32ppmに位置する第1特性ピークは、式(I)におけるエステル基以外の-CH
2-基のプロトンに相当してもよく、それは式(I)において*で示される。5.65ppm~5.85ppmに位置する第2特性ピークは、式(II)におけるアルケン不純物のアルケン基のプロトンに相当してもよく、それは式(II)において1で示される。3.30ppm~3.42ppmに位置する第3特性ピークは、式(III)におけるエーテル基以外の-CH
2-基のプロトンに相当してもよく、それは式(III)において*で示される。3.55ppm~3.70ppmに位置する第4特性ピークは、式(IV)におけるヒドロキシ基以外の-CH
2-基のプロトンに相当してもよく、それは式(IV)において*で示される。4.72ppm~4.90ppmに位置する第5特性ピークは、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)の鎖伸長反応から形成されたアミド基(-NH-CO)のプロトンに相当してもよい。4.97ppm~5.15ppmに位置する第6ピークは、アルケン基のプロトンに相当してもよく、それは、式(II)において2で示される。それぞれの特性ピークの化学シフトの間隔及びそれぞれの特性ピークの積分値が四捨五入して表1に示される。
【0060】
【0061】
表1及び
図1A~1Fに示されるように、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおいて、第1特性ピークの積分値を100として、アルケン不純物に相当する第2特性ピークの積分値は、0.10未満であった。それに対し、表1及び
図1Gに示されるように、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおいて、第1特性ピークの積分値を100として、アルケン不純物に相当する第2特性ピークの積分値は、0.12よりも大きかった。よって、脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおける第1特性ピーク及び第2特性ピークの積分値は、実施例1~6と比較例1とでの脂肪族ポリエステル組成物の成分の相違を明らかに示した。その中でも、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物がより多くのアルケン不純物を含むために、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物における第2特性ピークの積分値は、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物における第2特性ピークの積分値よりも明らかに大きかった。
【0062】
表1及び
図1A~1Fに示されるように、第1特性ピークの積分値を100として、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおける第3特性ピークの積分値は0.001~2.0であり、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおける第4特性ピークの積分値は0.01~0.50であり、実施例1~4の脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおける第5特性ピークの積分値は0.15~0.50であり、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のH
1-NMRスペクトルにおける第6特性ピークの積分値は0.21未満であった。
【0063】
〈試験例2〉誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)
この試験例では、実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が被検試料として用いられた。誘導結合プラズマ発光分光計(モデル:CEM-MARS6)が分析に使用された。
【0064】
まず、0.2gの被検試料が量られ、9mLの硝酸及び3mLの塩酸が加えられた。前記材料は、マイクロ波分解容器に密封され、室温から210℃まで30分で加熱された。マイクロ波分解容器は、前記温度で30分間、マイクロ波が照射された。それから、マイクロ波分解容器は、60℃まで冷却され、超純水を加えることによって30mLに希釈された。希釈溶液は、孔径11μmで厚さ0.18mmの濾紙で濾過された。試料濾過液が得られた。
【0065】
硫黄、リン及びチタンの規準液がそれぞれ用意され、各要素の検定線が描かれた。前記試料濾過液が測定され、各被検試料における硫黄、リン及びチタンの含有量を表示するために、その結果が検定線にもたらされた。結果が表2に示されている。
【0066】
【0067】
表2に示されるように、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、100ppm未満であり、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のリンの含有量は、50ppm未満であり、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、20ppm~100ppmであった。
【0068】
それに対し、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量と異なり、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の硫黄の含有量は、150ppmよりも大きかった。比較例1の脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量と異なり、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物のチタンの含有量は、100ppmよりも大きかった。
【0069】
〈試験例3〉メルトフローインデックス(MI)
この試験例では、実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が被検試料として用いられた。メルトフローインデクサ(モデル:LMI5000)が分析に使用され、分析は、ISO 1133-1:2011(E)に従って行われた。
【0070】
試験の前に、被検試料が熱風循環式オーブンに4時間入れられ、被検試料に水分が付着していないことが確かめられた。熱風循環式オーブンの温度は、80±2℃に設定された。その後、4g~8gの被検試料が190±2℃の加熱管に入れられた。予熱後に、荷重がかけられた。10分後、試料採取が開始され、前記試料は加圧された。各被検試料は、2回試験された。その平均値が得られた。その結果が表3に示されている。
【0071】
〈試験例4〉カルボン酸末端基(CEG)の濃度
この試験では、実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が被検試料として用いられた。滴定装置725 DOSIMAT(製造元:Metrohm)が分析に使用された。
【0072】
この試験例では、0.4g~0.6gの被検試料が100mLの乾燥容器に入れられ、30mL~50mLのオルトクレゾールが加えられた。それから、容器は、加熱プレートに置かれ、被検試料が完全に溶解するまで、30分間、一定の攪拌と共に110±5℃まで加熱された。試料溶液は、室温まで冷却され、滴定の準備がなされた。
【0073】
3mLの0.01N塩化カリウム(KCL)溶液が前記試料溶液に加えられ、約1分間攪拌された。標準液の濃度、ブランク及び滴定のパラメータが確認され、滴定装置に設定された。電極が試料溶液に漬けられ、滴定が開始された。0.03N水酸化カリウム水溶液で電位差滴定が行われた。その結果が表3に示されている。
【0074】
〈試験例5〉色
この試験例では、実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が被検試料として用いられた。比色計(製造元:hunterlab、モデル:CQXE)がCIELAB色モデルに従って色度bを分析するために使用され、標準はD65で、観測角は10度であった。その結果が表3に示されている。
【0075】
脂肪族ポリエステル組成物の色は、国際照明委員会(CIE)の表色系に従って定義できることを当業者は理解できるだろう。色度bは、黄色と青色の相対的な度合いを示し、より大きいbの値は、試料が黄色に近いことを表し、より小さいbの値は、試料が青色に近いことを表す。
【0076】
〈試験例6〉黄色度指数(YI)
この試験例では、実施例1~6及び比較例1の脂肪族ポリエステル組成物が被検試料として用いられた。比色計(製造元:hunterlab、モデル:CQXE)がCIELAB色モデルに従って黄色度指数を分析するために使用され、標準はD65で、観測角は10度であった。その結果が表3に示されている。
【0077】
【0078】
表3に示されるように、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のメルトフローインデックスは、40g/10min未満であった。実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物のカルボン酸末端基の濃度は、30.0meq/kg未満であったが、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物のカルボン酸末端基の濃度は、30.0meq/kgよりも大きかった。
【0079】
表3に示されるように、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物の色度bは、15.0未満であったが、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の色度bは、15.0よりも大きかった。実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物の黄色度指数は、30.0未満であったが、比較例1の脂肪族ポリエステル組成物の黄色度指数は、35.0よりも大きかった。よって、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物は、より良好な外観を有していた。つまり、実施例1~6の脂肪族ポリエステル組成物は、小さい色度b及び小さい黄色度指数を有し、そのことはその製品価値を高めるのに有益である。
【0080】
要約すると、脂肪族ポリエステル組成物のH1-NMRスペクトルにおける第2特性ピークの積分値を管理することによって、脂肪族ポリエステル組成物は、良好な外観と低濃度のカルボン酸末端基を有し、その製品価値を高めるのに有益である。