(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240702BHJP
C10M 105/04 20060101ALN20240702BHJP
C10M 145/14 20060101ALN20240702BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240702BHJP
C10N 30/18 20060101ALN20240702BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/04
C10M145/14
C10N20:02
C10N30:00 B
C10N30:02
C10N30:04
C10N30:06
C10N30:10
C10N30:12
C10N30:18
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2022099838
(22)【出願日】2022-06-21
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2021105414
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和徳
【審査官】林 建二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110196(JP,A)
【文献】特表2017-500426(JP,A)
【文献】特開2020-105347(JP,A)
【文献】特開2021-025025(JP,A)
【文献】国際公開第2022/210065(WO,A1)
【文献】特開2015-021129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマー由来の繰り返し単位を有する主鎖及びポリオレフィン構造を有する側鎖を有する(共)重合体(A)と、
GTL基油(B)と、
清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有する潤滑油組成物であり、
潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が2.25~2.54mPa・sであり、潤滑油組成物の80℃における動粘度が7.8~8.2mm
2/sであり、潤滑油組成物の60℃における動粘度が11.8~12.4mm
2/sであり、潤滑油組成物のNOACK蒸発量が15~25重量%である潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)が下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)と、下記一般式(2)で表される単量体であってR
4が炭素数2~4のアルキル基である単量体(b)と、下記一般式(2)で表される単量体であってR
4が炭素数12~16のアルキル基である単量体(c)とを構成単量体として含み、前記単量体(a)の数平均分子量が6,600~8,500であり、前記(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算する溶解性パラメータが9.23~9.25(cal/cm
3)
1/2であり、前記
(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)の重量割合が12~21重量%であり、前記単量体(b)の重量割合が54~75重量%であり、前記単量体(c)の重量割合が3~17重量%であり、前記単量体(a)、前記単量体(b)及び前記単量体(c)の合計重量割合が70重量%以上である内燃機関用の潤滑油組成物。
【化1】
[一般式(1)においてR
1は水素原子又はメチル基;-X
1-は-O(AO)
mで表される基であって、Aは炭素数2のアルキレン基であり、mは1の整数である;R
2は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基であり、前記炭化水素重合体の構成単量体が1,3-ブタジエンであり、前記炭化水素重合体の構成単量体の合計モル数を基準として、1,2-ブチレン基の比率が45~65モル%である;pは0である。]
【化2】
[一般式(2)においてR
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-で表される基;R
4は炭素数2~4又は12~16のアルキル基。]
【請求項2】
前記(共)重合体(A)の重量平均分子量が48万~60万である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記(共)重合体(A)を構成する前記単量体(a)と前記単量体(b)との重量比率(b/a)が3.5~4.9であり、前記単量体(b)と前記単量体(c)との重量比率(b/c)が4.1以上である共重合体である請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記(共)重合体(A)を0.1~10重量%含有する請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
前記GTL基油(B)の100℃動粘度が2.0~4.5mm
2/sである請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
さらに油性向上剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記潤滑油組成物の粘度指数が250以上である請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO2排出量低減及び石油資源保護等の実現のために、自動車の省燃費化がより一層要求されている。省燃費化の一つとして、エンジン油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられる。しかし、低粘度化すると液漏れや焼付きといった問題が生じてくる。この問題に対しては、米国SAEのエンジン油用粘度規格(SAE J300)で最低保証粘度が定められており、0W-20グレードにおいては、高温高剪断下での粘度(HTHS粘度)として、150℃HTHS粘度(ASTM D4683又はD5481)が2.6mPa・s以上および0W-16グレードでは2.3mPa・s以上と規定されている。
【0003】
省燃費化については、上記規格を満たした上で、実効温度域での動粘度(特に80℃、60℃)での動粘度がより低いエンジンオイルが求められるようになっている。実効温度域での動粘度を下げる方法については、従来から各種の粘度指数向上剤が提案されており、粘度の低い基油を多く用いる方法も知られている。しかしながら、エンジンオイルの蒸発損失割合(NOACK蒸発量[エンジン油蒸発性試験方法、ASTM D5800])が悪化する問題がある。一方、CO2排出量低減および石油資源保護等の実現のために、ハイブリッド車や電気自動車の普及が急速に進んでいる。中でもハイブリッド車の普及に伴い、エンジンの運転頻度が減り、低油温運転する頻度が高くなってきている。そのため、低温側の粘度低減が燃費向上に重要になる一方で、頻度は少ないながらも高速運転等での信頼性の観点から高温側(100℃)の信頼性も必要となる。従って、高温側でも適切な高粘度の確保が必要となる(特許文献1~4)。
一方で、従来の潤滑油組成物は、低温下において弾性が上昇し、寒冷地での始動性が悪いという問題がある。NOACK蒸発量を低く抑えつつ、低温弾性を低減し、寒冷地での始動性が良い潤滑油を得ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-147608号公報
【文献】国際公開第2015/129732号
【文献】特開2017-57378号公報
【文献】特開2020-105347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、燃費の低減を目的とし、NOACK蒸発量を低い範囲に抑えた場合でも、実効温度域(特に80℃、60℃)での粘度を低減し、低温(-20℃)での弾性を低くすることが可能な潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、重合性モノマー由来の繰り返し単位を有する主鎖及びポリオレフィン構造を有する側鎖を有する(共)重合体(A)と、
GTL基油(B)と、
清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有する潤滑油組成物であり、
潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が2.25~2.54mPa・sであり、潤滑油組成物の80℃における動粘度が7.8~8.2mm
2/sであり、潤滑油組成物の60℃における動粘度が11.8~12.4mm
2/sであり、潤滑油組成物のNOACK蒸発量が15~25重量%である潤滑油組成物であって、前記(共)重合体(A)が下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)と、下記一般式(2)で表される単量体であってR
4が炭素数2~4のアルキル基である単量体(b)と、下記一般式(2)で表される単量体であってR
4が炭素数12~16のアルキル基である単量体(c)とを構成単量体として含み、前記単量体(a)の数平均分子量が6,600~8,500であり、前記(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算する溶解性パラメータが9.23~9.25(cal/cm
3)
1/2であり、前記
(共)重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)の重量割合が12~21重量%であり、前記単量体(b)の重量割合が54~75重量%であり、前記単量体(c)の重量割合が3~17重量%であり、前記単量体(a)、前記単量体(b)及び前記単量体(c)の合計重量割合が70重量%以上である内燃機関用の潤滑油組成物である。
【化1】
[一般式(1)においてR
1は水素原子又はメチル基;-X
1-は-O(AO)
mで表される基であって、Aは炭素数2のアルキレン基であり、mは1の整数である;R
2は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基であり、前記炭化水素重合体の構成単量体が1,3-ブタジエンであり、前記炭化水素重合体の構成単量体の合計モル数を基準として、1,2-ブチレン基の比率が45~65モル%である;pは0である。]
【化2】
[一般式(2)においてR
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-で表される基;R
4は炭素数2~4又は12~16のアルキル基。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の潤滑油組成物は、NOACK蒸発量を低い範囲に抑えた場合でも、実効温度域(特に80℃、60℃)での粘度を低減し、低温(-20℃)での弾性を低くすることができ、燃費を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例で得られた潤滑油組成物と比較例で得られた潤滑油組成物の60℃における動粘度(横軸)と貯蔵弾性率(縦軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、重合性モノマー由来の繰り返し単位を有する主鎖及びポリオレフィン構造を有する側鎖を有する(共)重合体(A)と、
GTL基油(B)と、
清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有する潤滑油組成物であり、
潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が2.25~2.54mPa・sであり、潤滑油組成物の80℃における動粘度が7.8~8.2mm2/sであり、潤滑油組成物の60℃における動粘度が11.8~12.4mm2/sであり、潤滑油組成物のNOACK蒸発量が15~25重量%である潤滑油組成物である。
【0010】
<(共)重合体(A)>
本発明において(共)重合体(A)は、重合性モノマー由来の繰り返し単位を有する主鎖及びポリオレフィン構造を有する側鎖を有する。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性炭素-炭素二重結合を有するもの{ビニル基(H2C=CH-)、ビニリデン基又はビニレン基(-HC=CH-)}が含まれ、例えば、(メタ)アクリロイル基、(無水)マレイン酸又はフマル酸のモノ又はジエステル化物における炭素-炭素二重結合{―OC(O)HC=CH-C(O)O―}、ビニルエーテル基、スチリル基等を有する単量体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリロイル基を有する単量体が好ましい。重合性モノマーが(メタ)アクリロイル基を有するものであると、(共)重合体が主鎖骨格付近に高極性基(エステル基、アミド基等)を有し、側鎖として非極性のポリオレフィン構造を有するものとなり、低温下においては極性の低い基油に対して(共)重合体(A)のポリマー鎖が主鎖を中心に小さくまとまり、150℃におけるHTHS粘度を2.25~2.54mPa・sに調整した場合の低温(80℃、60℃)における動粘度を低くすることができ、低温(-20℃)での弾性を低くすることができる傾向がある。
【0011】
本発明において(共)重合体(A)は、片末端に炭素数50~1,000のポリオレフィン構造を有し、且つ他の末端に(メタ)アクリロイル基を有する単量体を構成単量体として含む(共)重合体であることが好ましく、更に好ましくは下記一般式(1)で表される単量体(a)を構成単量体として含む(共)重合体である。
下記一般式(1)で表される単量体(a)を構成単量体とすると、単量体(a)の有するR
2が(共)重合体(A)における「ポリオレフィン構造を有する側鎖」となる。単量体(a)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化1】
[一般式(1)においてR
1は水素原子又はメチル基;-X
1-は-O-、-O(AO)
m-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;R
2は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数である。]
【0012】
一般式(1)におけるR1は水素原子又はメチル基であり、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする(150℃HTHS粘度を一定に調整した場合の、低温(80℃、60℃)の動粘度を低くする、以下において同じ)の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0013】
一般式(1)における-X1-は-O-、-O(AO)m-又は-NH-で 表される基である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
mは1~10の整数であり、基油(エステル油(B)等、以下においても同じ。)への溶解性の観点から好ましくは1~4の整数、更に好ましくは1~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(AO)m部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
-X1-としては、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、-O-及び-O(AO)m-で表される基が好ましく、更に好ましくは-O-及び-O(CH2CH2O)m-で表される基である。
【0014】
一般式(1)におけるpは0又は1の数であり、基油への溶解性の観点から、0が好ましい。
【0015】
一般式(1)におけるR2は1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基である。温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましくは炭素数50~1,000である。
1,2-ブチレン基は、-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-で表される基である。
1,2-ブチレン基を構成単位とする炭化水素重合体としては、構成単量体(不飽和炭化水素(x))として1-ブテンを用いた重合体、1,3-ブタジエンを重合した1,2-付加物の二重結合を水素化した重合体等が挙げられる。
また、炭化水素重合体は、1-ブテン及び1,3-ブタジエンに加え、不飽和炭化水素(x)として以下の(1)~(3)の1種以上を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、イソブテン、2-ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。一態様において、R2における炭化水素重合体は、構成単量体として炭素数4の単量体のみを用いた炭化水素重合体であってよく、炭素数4の単量体は、1-ブテン及び1,3-ブタジエンからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。
【0016】
単量体(a)の数平均分子量(以下Mnと略記する)は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましくは800~10,000であり、より好ましくは1,000~9,000であり、さらに好ましくは1,200~8,500である。単量体(a)のMnが800以上であると基油への溶解性が良好である傾向があり、10,000以下であると他の単量体との共重合性が良好である傾向がある。
【0017】
本発明において、重量平均分子量(以下Mwと略記する)及びMnは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
<MwおよびMnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore H XL-M 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0018】
単量体(a)は、炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入して得られた片末端に水酸基を含有する重合体(Y)と、(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくは炭素数1~4)エステルとのエステル交換反応により得ることができる。なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0019】
片末端に水酸基を含有する重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y4)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(ナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた炭化水素重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-(AO)m-であり、p=0である化合物)。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-O-であり、p=0である化合物)。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-O-であり、p=1である化合物)。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の炭化水素重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)等(この場合、単量体(a)は、一般式(1)において、-X1-が-O-であり、p=0である化合物)。
これらの片末端に水酸基を含有する重合体(Y)のうち、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)であり、より好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0020】
一般式(1)中のR2を構成する全単量体のうちブタジエンの比率(1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、全構成単量体中の1,3-ブタジエンの重量割合)は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、50重量%以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0021】
一般式(1)における炭化水素重合体の1-ブテン及び/又は1,3-ブタジエン由来の構造について、炭化水素重合体の構成単量体の合計モル数を基準として、1,2-ブチレン基の比率(1,2-ブチレン基のモル数/構成単量体の合計モル数×100)は、粘度指数向上効果及び他の単量体との共重合性の観点から、30モル%以上が好ましく、更に好ましくは30~70モル%である。
1,2-ブチレン基の比率は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(1)を用いて、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づく1,2-ブチレン基のモル%を計算し決定することができる。13C-NMRにおいて、1,2-ブチレン基の3級炭素原子(-CH2CH(CH2CH3)-)に由来するにピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
1,2-ブチレン基の比率(モル%)={(積分値B)×4}/(積分値C)×100 (1)
なお、1,2-ブチレン基の比率を大きくするには、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合においては、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下とし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすればよく、1,2-ブチレン基の比率を小さくするには、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点以上とし、開始剤量を多くすればよい。
【0022】
一般式(1)における1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、イソブチレン基を有していてもよい。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づいて、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは50モル%以上である。
炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げる方法として、例えば、下記の方法などを採用することができる。上記のアルキレンオキサイド付加物(Y1)の場合は、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合において、反応温度を低く{例えば1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下}とし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすることにより、炭化水素重合体中のイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量の比率を上げることができる。上記のヒドロホウ素化物(Y2)、無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)及びヒドロホルミル-水素化物(Y4)の場合は片末端に二重結合を有する炭化水素重合体の重合度を大きくすることで、上記比率を上げることができる。
【0023】
一般式(1)における1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(2)を用いて計算し、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%を決定することができる。13C-NMRにおいて、イソブチレン基のメチル基に由来するピークが30~32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレン基の分岐メチレン基(-CH2CH(CH2CH3)-又は-CH(CH2CH3)CH2-)に由来するピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づくイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計のモル%は、上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計量(モル%)=100×{(積分値A)×2+(積分値B)×4}/(積分値C) (2)
【0024】
R2における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(1)中のR2の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造において、1,2-付加体と1,4-付加体のモル比(1,2-付加体/1,4-付加体)は温度に対する(A)の分子挙動を大きくする及び他の単量体との共重合性の観点から、好ましくは5/95~95/5、より好ましくは20/80~80/20、さらに好ましくは30/70~70/30である。
【0025】
R2における炭化水素重合体が構成単量体にブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテンを含む場合、一般式(1)中のR2の一部または全部を構成するブタジエン、又は、ブタジエン及び1-ブテン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比は1H-NMRや13C-NMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0026】
単量体(a)に由来する構成単位((a)のビニルが反応して単結合になった構造)の溶解性パラメータ(以下、SP値と略記する)は、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を適度にする及び基油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.0(cal/cm
3)
1/2であり、より好ましくは7.3~8.5(cal/cm
3)
1/2である。
SP値は、例えば、R
2の分岐度が大きく炭素数が大きい方が小さくなる傾向があり、分岐度が小さく炭素数が小さい方が大きくなる傾向がある。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2、P147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁の数式(28)により算出される値を意味する。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔe
i及びv
iの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔe
i/Σv
i)
1/2
【表1】
【0027】
単量体(a)に由来する構成単位のSP値は、単量体(a)に由来する構成単位の分子構造に基づいて、前記パラメータを用いて算出することができ、使用する単量体(不飽和炭化水素(x))、単量体(不飽和炭化水素(x))の重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。 また、(共)重合体(A)が2種以上の単量体(a)を併用している場合は、(a)を構成する複数の構成単位それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体(a)に由来する構成単位のSP値を、構成単量体単位の重量分率に基づいて相加平均値した値が前記単量体(a)に由来する構成単位のSP値の範囲を満たすことが好ましい。
【0028】
本発明において(共)重合体(A)は、下記一般式(2)で表される単量体であってR
4が炭素数2~4のアルキル基である単量体(b)及び下記一般式(2)で表される単量体であってR
4が炭素数12~16のアルキル基である単量体(b)を構成単量体として含むことが好ましい。
【化2】
[一般式(2)においてR
3は水素原子又はメチル基;-X
2-は-O-又は-NH-で表される基;R
4は炭素数2~4又は12~16のアルキル基。]
【0029】
単量体(b)又は(c)を示す一般式(2)におけるR3は水素原子又はメチル基であり、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、メチル基が好ましい。
単量体(b)又は(c)を示す一般式(2)における-X2-は-O-又は-NH-で表される基であり、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、-O-で表される基が好ましい。
【0030】
単量体(b)において、一般式(2)におけるR4は炭素数2~4のアルキル基であり、炭素数2~4のアルキル基としては、例えば、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基等)、ブチル基(例えば、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等)等が挙げられる。
これらの内、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましくはエチル基、n-ブチル基及びイソブチル基であり、更に好ましくはエチル基及びn-ブチル基であり、特に好ましくはn-ブチル基である。
【0031】
単量体(b)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸1-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルプロピル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチルエチル及びN-ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
これらの内、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸イソブチルが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸エチル及び(メタ)アクリル酸n-ブチルであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸n-ブチルである。
【0032】
単量体(c)において、一般式(2)におけるR4は炭素数12~16のアルキル基であり、例えば、直鎖アルキル基(例えば、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基等)、分岐アルキル基(例えば、2-メチルウンデシル基、イソドデシル基、2-メチルドデシル基、イソトリデシル基、2-メチルトリデシル基、イソテトラデシル基、2-メチルテトラデシル基、イソペンタデシル基、2-メチルペンタデシル基、イソヘキサデシル基等)等が挙げられる。
単量体(c)として、具体的には、直鎖アルキル(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル等)、直鎖アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N-トリデシル(メタ)アクリルアミド、N-テトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキサデシル(メタ)アクリルアミド等)、分岐アルキル(メタ)アクリレート(例えば、(メタ)アクリル酸2-メチルウンデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルトリデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンタデシル、(メタ)アクリル酸イソヘキサデシル等)、分岐アルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-2-メチルウンデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソドデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルドデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソトリデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルトリデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソテトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルテトラデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-2-メチルペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-イソヘキサデシル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる。
単量体(c)としては、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、直鎖アルキル(メタ)アクリレート及び分岐アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
単量体(c)としては、Neodol(登録商標)23(炭素数12~13の直鎖及び分岐アルキルアルコールの混合物、SHELL社製)、Neodol(登録商標)45(炭素数14~15の直鎖及び分岐アルキルアルコールの混合物、SHELL社製)等のアルキルアルコールの混合物の(メタ)アクリル酸エステルを用いてもよい。
【0033】
本発明において、(共)重合体(A)を構成する単量体(a)と(b)との重量比率(b/a)は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、3.5~4.9が好ましく、更に好ましくは3.8~4.5であり、特に好ましくは4.0~4.4である。3.5以上又は4.9以下であると温度に対する(A)の分子挙動が大きくなる傾向があり、150℃におけるHTHS粘度を一定にした場合の40~100℃での動粘度(特に60~80℃での動粘度)が低くなる傾向があり、低温での貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。
本発明において、(共)重合体(A)を構成する単量体(b)と(c)との重量比率(b/c)は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、4.1以上が好ましく、更に好ましくは4.5~10.0であり、特に好ましくは5.0~9.0である。4.1以上であると温度に対する(A)の分子挙動を大きくなる傾向があり、150℃におけるHTHS粘度を一定にした場合の40~100℃での動粘度(特に60~80℃での動粘度)が低くなる傾向があり、低温での貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。
【0034】
本発明において、(共)重合体(A)を構成する単量体(a)及び(c)の合計重量に対する(b)の重量比率{b/(a+c)}は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、2.0~3.5が好ましい。
【0035】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(a)の重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~22重量%が好ましく、さらに好ましくは10~21重量%であり、特に好ましくは12~20重量%である。
【0036】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(b)の重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、4.1~77重量%が好ましく、さらに好ましくは35~75重量%であり、特に好ましくは42~75重量%である。
【0037】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~17重量%が好ましく、さらに好ましくは3~15重量%であり、特に好ましくは8~13重量%である。
【0038】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)の合計重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、70重量%以上が好ましく、さらに好ましくは70~97重量%であり、特に好ましくは78~95重量%である。
【0039】
本発明において、(共)重合体(A)は、単量体(a)~(c)以外に、下記一般式(3)で表される単量体(d)、前記一般式(2)で表される単量体であってR4が炭素数1のアルキル基である単量体(e)及び炭素数17~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f)(以下、単量体(f)と略記することがある)からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成単量体として含む共重合体であってもよい。100℃でのHTHS粘度低減の観点から、単量体(d)を構成単量体として含む共重合体であることが好ましい。また、単量体(e)は極性基(エステル基等)に対するアルキル基の炭素数が短いため極性が高く、(共)重合体(A)の極性を高くすることができ、単量体(f)は極性基(エステル基等)に対するアルキル基の炭素数が(b)及び(c)より長く(a)より短いいため中間程度の極性があり、(共)重合体(A)の極性を調整することができる。
【0040】
【化3】
[一般式(3)においてR
5は水素原子又はメチル基;-X
3-は-O-又は-NH-で表される基;R
6は炭素数2~4のアルキレン基;qは1~20の整数であり、qが2以上の場合のR
6は同一でも異なっていてもよい;R
7は炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基。]
【0041】
一般式(3)におけるR5は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、100℃でのHTHS粘度低減の観点から、好ましいのはメチル基である。
【0042】
一般式(3)における-X3-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、100℃でのHTHS粘度低減の観点から、好ましいのは-O-で表される基である。
【0043】
一般式(3)におけるR6は、炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
R6Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、例えば、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(3)におけるqは1~20の整数であり、100℃でのHTHS粘度低減の観点から、好ましくは1~5の整数であり、更に好ましくは1~2の整数である。
qが2以上の場合のR6Oは同一でも異なっていてもよく、(R6O)q部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
【0044】
一般式(3)におけるR7は、炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基等が挙げられる。
炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキル基のうち、100℃でのHTHS粘度低減の観点から好ましいのは、炭素数1~4の直鎖アルキル基であり、更に好ましいのは炭素数4の直鎖アルキル基(n-ブチル基)である。
【0045】
単量体(d)として具体的には、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート及びブトキシブチル(メタ)アクリレート、並びに炭素数1~4の直鎖又は分岐アルキルアルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種を2~20モル付加したものと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。
単量体(d)のうち、100℃でのHTHS粘度低減の観点から好ましいのは、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレートであり、更に好ましくはn-ブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0046】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(d)の重量割合は、100℃でのHTHS粘度低減の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、25重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1~20重量%であり、特に好ましくは5~15重量%である。
【0047】
単量体(e)において、一般式(2)におけるR3は水素原子又はメチル基であり、粘度指数向上効果の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(2)における-X2-は-O-又は-NH-で表される基であり、粘度指数向上効果の観点から、-O-で表される基が好ましい。
一般式(2)におけるR4は炭素数1のアルキル基であり、例えば、メチル基等が挙げられる。
単量体(e)として具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる
単量体(e)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルである。
【0048】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(e)の重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、0.2重量%未満が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
【0049】
単量体(f)としては、(a)以外のものであり、炭素数17~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f1)及び下記一般式(4)で表される炭素数17~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f2)等が含まれる。
なお、単量体(f)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化4】
[一般式(4)においてR
8は水素原子又はメチル基;-X
4-は-O-又は-NH-で表される基;R
9Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R
10及びR
11はそれぞれ独立に炭素数1~24の直鎖アルキル基であり、R
10及びR
11の合計炭素数は15~34;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合のR
9Oは同一でも異なっていてもよい。]
【0050】
炭素数17~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(f1)(以下、単量体(f1)と略記することがある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル{炭素数17~36の直鎖アルキルアルコールとアクリル酸とのエステル化物であり、例えば、(メタ)アクリル酸n-ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-ドコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等}、炭素数17~36の直鎖アルキルアルコールのアルキレンオキサイド(炭素数2~4)1~20モル付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び(メタ)アクリル酸アルキルアミド{炭素数17~36の直鎖アルキルアミンとアクリル酸とのアミド化物等}等が挙げられる。
単量体(f1)のうち、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましいのは炭素数17~28の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数17~24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいのは炭素数17~20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
単量体(f1)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
単量体(f2)において、一般式(4)におけるR8は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましいのはメチル基である。
一般式(4)における-X4-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましいのは-O-で表される基である。
一般式(4)におけるR9は、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、イソプロピレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
R9Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、例えば、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(4)におけるsは0~20の整数であり、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、0~5の整数が好ましく、さらに好ましくは0~2の整数である。
sが2以上である場合のR9Oは同一でも異なっていてもよく、(R9O)s部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
一般式(4)におけるR10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1~24の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。炭素数1~24の直鎖アルキル基のうち、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から好ましいのは、どちらか一方が炭素数6~24の直鎖アルキル基であることであり、更に好ましいのはどちらか一方が炭素数6~20の直鎖アルキル基であることであり、特に好ましいのはどちらか一方が炭素数8~16の直鎖アルキル基であることである。
R10及びR11の合計炭素数は、15~34であり、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、15~30が好ましく、さらに好ましくは15~26である。
【0052】
単量体(f2)として具体的には、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、エチレングリコールモノ-2-オクチルペンタデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、(メタ)アクリル酸2-n-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-n-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘプタデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-n-エイコシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラコシルヘキサコシル及びN-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(f2)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
単量体(f2)のうち、炭化水素油(GTL基油(B)等)への溶解性および低温粘度低減の観点から好ましいのは、炭素数17~32の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体であり、特に好ましいのは炭素数17~28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体である。
【0054】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(f)の重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点及び(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましい。
【0055】
(共)重合体(A)において、単量体(d)、単量体(e)及び単量体(f)からなる群より選ばれる少なくとも1種を構成単量体として含む場合、(A)の構成単量体のうち単量体(d)、単量体(e)及び単量体(f)の合計重量割合は、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、3~30重量%が好ましく、さらに好ましくは5~22重量%である。
【0056】
本発明における(共)重合体(A)は、上記単量体(a)~(f)に加え、さらにリン原子含有単量体(g)、芳香環含有ビニル単量体(h)、単量体(i)~単量体(m)、窒素原子含有単量体(n)及び水酸基含有単量体(o)等のその他の単量体を構成単量体としてもよい。
単量体(g)~(o)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
リン原子含有単量体(g)としては、以下の単量体(g1)~(g2)が挙げられる。
【0058】
リン酸エステル基含有単量体(g1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0059】
ホスホノ基含有単量体(g2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0060】
単量体(g)のうち好ましいのは(g1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0061】
芳香環含有ビニル単量体(h):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0062】
単量体(h)のうち好ましいのは、スチレン及びα-メチルスチレンであり、更に好ましいのはスチレンである。
【0063】
単量体(i)としては、不飽和基を2つ以上有するものが含まれ、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0064】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(j)(単量体(j)と略記することがある):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0065】
エポキシ基含有単量体(k)(単量体(k)と略記することがある):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0066】
ハロゲン元素含有単量体(l)(単量体(l)と略記することがある):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0067】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(m)(単量体(m)と略記することがある):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0068】
窒素原子含有単量体(n)としては、単量体(a)~単量体(f)を除く、以下の単量体(n1)~(n4)が挙げられる。
アミド基含有単量体(n1):
(メタ)アクリルアミド、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-n-又はイソプロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0069】
ニトロ基含有単量体(n2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0070】
1~3級アミノ基含有単量体(n3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0071】
ニトリル基含有単量体(n4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0072】
単量体(n)のうち好ましいのは、(n1)及び(n3)であり、更に好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0073】
水酸基含有単量体(o):
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0074】
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(g)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下である。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(h)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下であり、特に好ましくは0.1重量%以下である。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(i)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度低下効果の観点から、5重量%以下が好ましい。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(j)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましい。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(k)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましい。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(l)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましい。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(m)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1重量%以下が好ましい。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(n)の重量割合は、実行温度でのHTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下である。
(共)重合体(A)において、(A)の構成単量体のうち単量体(o)の重量割合は、HTHS粘度低下効果及び粘度指数向上効果の観点から、(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、さらに好ましくは1重量%以下である。
【0075】
(共)重合体(A)のMwは、温度に対する(A)の分子挙動を大きくする観点から、好ましくは48万~60万である。(共)重合体(A)のMwが48万以上及び60万以下であると、温度に対する(A)の分子挙動が大きくなる傾向があり、HTHS粘度(100℃)が低くなる傾向があり、40~80℃での動粘度が低くなる傾向があり、低温での貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。
【0076】
(共)重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、剪断安定性の観点から、1.0~4.0が好ましく、さらに好ましくは1.5~3.5である。
なお、(共)重合体(A)のMw、分子量分布(Mw/Mn)の測定条件は上記単量体(a)のMw及びMnの測定条件と同様である。
【0077】
(共)重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、炭化水素油(鉱物油等)、合成油等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に分子量調整のために必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(共)重合体(A)を得ることができる。
(共)重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0078】
(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値は、好ましくは9.23~9.25(cal/cm3)1/2である。
(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値が9.23(cal/cm3)1/2以上であると温度に対する(A)の分子挙動が大きくなる傾向があり、40~80℃での動粘度が低くなる傾向があり、低温での貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。9.25(cal/cm3)1/2以下であると炭化水素油(特にGTL基油(B)等)に溶解しやすい傾向がある。
(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値は、前記SP値の算出方法を用いて(A)を構成する各単量体に由来する構成単位(ビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。例えば、単量体がメタクリル酸メチルの場合、メタクリル酸メチルに由来する構成単位は、原子団として、CH3が2個、CH2が1個、Cが1個、CO2が1個なので、下記数式により、メタクリル酸メチルに由来する構成単位のSP値は9.933(cal/cm3)1/2であることが分かる。同様に計算して、メタクリル酸エチルに由来する構成単位のSP値は9.721(cal/cm3)1/2であることがわかる。
ΣΔei=1125×2+1180+350+4300=8080
Σvi=33.5×2+16.1-19.2+18.0=81.9
δ=(8080/81.9)1/2=9.933(cal/cm3)1/2
共重合体がメタクリル酸メチル50重量%とメタクリル酸エチル50重量%との重合物である場合、共重合体のSP値は、下記の通り各単量体に由来する構成単位のSP値の重量分率に基づいて相加平均することにより算出される。
共重合体のSP値=(9.933×50+9.721×50)/100=9.827
(A)の重量分率に基づいて計算するSP値は、使用する単量体、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。具体的には、アルキル基の炭素数の長い単量体を多く使用することでSP値を小さくすることができ、アルキル基の炭素数の短い単量体を多く使用することでSP値を大きくすることができる。
【0079】
<(共)重合体(C)>
本発明の潤滑油組成物は、上記(共)重合体(A)に加えて、さらに(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体(C)を含有してもよく、(共)重合体(C)を含有することが低温粘度の観点から好ましい。
(共)重合体(C)としては、単量体(a)を含まない(共)重合体が含まれ、例えば炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(d)を必須構成単量体とする(共)重合体等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル及び(メタ)アクリル酸n-オクタデシル共重合体、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル/(メタ)アクリル酸メチル(モル比20~40/55~75/0~10)共重合体及びアクリル酸n-ドデシル/メタクリル酸n-ドデシル(モル比10~40/90~60)共重合体等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0080】
(共)重合体(C)の含有量は、低温粘度の観点から、(共)重合体(A)の重量に基づいて、0.01~30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01~10重量%である。
【0081】
(共)重合体(C)のMwは、流動点温度低下の観点から、5,000~100,000が好ましく、さらに好ましくは10,000~80,000である。
(共)重合体(C)の重量分率に基づいて計算するSP値は、基油への溶解性の観点から、7.0~10が好ましく、さらに好ましくは8.0~9.5である。
なお、(共)重合体(C)のMwの測定条件は上記単量体(a)のMwの測定条件と同様である。
【0082】
<GTL基油(B)>
本発明の潤滑油組成物は、GTL(Gas to Liquid)基油(B)を含有する。GTL基油は、天然ガスを液体燃料に変えるフィッシャー・トロプシュ法により合成される基油である。
一般的に、潤滑油に用いられる基油は、粘度が低いとNOACK蒸発量が高くなる傾向にあるものの、GTL基油(B)は、例えば鉱物油(原油から精製された油)の同じ粘度のものと比較して、硫黄分や芳香族分が極めて低く、パラフィン構成比率が極めて高く、酸化安定性に優れ、NOACK蒸発量が低い傾向があり、GTL基油(B)を用いることで、NOACK蒸発量を低くしつつ、実効温度域での動粘度(80℃、60℃)を低く調整しやすい傾向があると推察される。また、基油としてGTL基油(B)を含有することで、基油として鉱物油等のGTL基油以外のみを用いた場合と比較して、基油中での(共)重合体(A)のポリマー鎖の挙動(低温では基油に対して極性の高い部分(例えばエステル基等)を覆い隠すようにポリオレフィン鎖が凝集し、高温ではポリオレフィン鎖が広がる)の温度依存性が大きくなり、150℃でのHTHS粘度を調整した場合の実効温度域での動粘度(80℃、60℃)を低くすることが可能であり、低温(-20℃)での弾性を低くすることが可能であると推察される。
GTL基油(B)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは2種併用することである。
【0083】
GTL基油(B)のSP値は、(共)重合体(A)の溶解性の観点から、6~9(cal/cm3)1/2が好ましく、更に好ましくは7~9(cal/cm3)1/2であり、特に好ましくは8~9(cal/cm3)1/2である。
なお、GTL基油(B)として、複数の炭化水素化合物の混合物を用いる場合、GPCによる分子量の測定、1H-NMR及び13C-NMR等による分子構造の解析で、おおよその構成成分及びその分子構造がわかり、モル分率に基づく相加平均によりGTL基油(B)のSP値を算出することができる。
【0084】
GTL基油(B)の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの、以下において同じ)(単位:mm2/s、以下略記する)は、燃費低減の観点から、2.0~4.5が好ましく、更に好ましくは2.0~3.5である。
潤滑油組成物としては、GTL基油(B)の100℃における動粘度が上記範囲であるものを、潤滑油組成物中に含まれるGTL基油(B)の重量を基準として、80重量%以上含んでいることが好ましく、さらに好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
GTL基油(B)を2種併用する場合、燃費低減及びNOACK蒸散量を適度にする観点から、100℃における動粘度が2.00~3.50mm2/sであるGTL基油と100℃における動粘度が3.51~5.00mm2/sであるGTL基油との併用が好ましく、更に好ましくは100℃における動粘度が2.50~3.00mm2/sであるGTL基油と100℃における動粘度が3.80~4.50mm2/sであるGTL基油との併用である。
【0085】
GTL基油(B)の40℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの、以下において同じ)(単位:mm2/s、以下略記する)は、燃費低減の観点から、5.0~20.0が好ましく、更に好ましくは8.0~19.0である。
【0086】
GTL基油(B)の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの、以下において同じ)は、潤滑油組成物の粘度指数向上効果の観点から好ましくは90以上であり、更に好ましくは100以上である。
【0087】
GTL基油(B)の曇り点(JIS-K2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。GTL基油(B)の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好である傾向がある。
【0088】
本発明の潤滑油組成物は、上記GTL基油(B)以外の基油(G)を含有してもよい。
基油(G)としては、例えば、GTL基油以外の炭化水素油{鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油、ナフテン油、炭化水素系合成潤滑油(ポリα-オレフィン系合成潤滑油等)等}、非炭化水素系合成油(エーテル系合成潤滑油、エステル油、シリコン系合成潤滑油等)及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち(共)重合体(A)の溶解性の観点から好ましいのは炭化水素油であり、さらに好ましくは鉱物油、ポリα-オレフィン系合成潤滑油である。
【0089】
基油(G)の40℃動粘度(mm2/s)は、燃費低減の観点から、12~25が好ましく、更に好ましくは15~22である。
基油(G)の100℃動粘度(mm2/s)は、燃費低減の観点から、3.0~5.5が好ましく、更に好ましくは3.5~5.0である。
潤滑油組成物中の基油(G)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、(共)重合体(A)の溶解性の観点から、5.0~15.0重量%が好ましく、更に好ましくは7.0~13.0重量%、特に好ましくは8.0~11.0重量%である。
【0090】
潤滑油組成物中の基油(GTL基油(B)又は(B)と基油(G)との混合物)の40℃動粘度(mm2/s)は、燃費低減の観点から、7.0~15.0が好ましく、更に好ましくは8.0~12.0である。
潤滑油組成物中の基油(GTL基油(B)又は(B)と基油(G)との混合物)の100℃動粘度(mm2/s)は、燃費低減の観点から、3.0~4.0が好ましく、更に好ましくは3.3~3.8である。
【0091】
潤滑油組成物中の基油(GTL基油(B)又は(B)と基油(G)との混合物)のSP値{(cal/cm3)1/2}は、(共)重合体(A)の溶解性の観点から、8.0~8.7が好ましく、更に好ましくは8.1~8.6であり、特に好ましくは8.2~8.5である。
基油を2種以上用いる場合は、それぞれの基油のSP値を計算し、重量分率に応じて相加平均した値が上記SP値を満たすことが好ましい。
【0092】
<添加剤>
本発明の潤滑油組成物は清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有する。
一般的に、潤滑油組成物をエンジン油等として用いる場合には本願発明の効果である低温での貯蔵弾性率以外の効果(例えば、酸化安定性等)の観点から、潤滑油組成物中に清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有することが必須であるところ、清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有しないもので150℃におけるHTHS粘度を一定範囲内に調整した場合における40~100℃における動粘度が本願発明における数値範囲内であったとしても、清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを添加すると40~100℃における動粘度が高くなってしまう。一方、本発明では、清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有した場合に、NOACK蒸発量を低い範囲に抑えつつ、150℃におけるHTHS粘度を一定範囲内に調整した場合における動粘度(80℃、60℃)は低く調整することで、低温(-20℃)での弾性を低くすることができ、燃費を低減することができるという効果を奏するものである。
清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とは、複数の添加剤が配合された潤滑油用パッケージ添加剤として潤滑油組成物中に含まれていてもよい。
潤滑油用パッケージ添加剤中には、清浄剤、分散剤及び酸化防止剤以外に、その他の添加剤(油性向上剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、腐食防止剤及び流動点降下剤からなる群より選ばれる少なくとも1種)が含まれていてもよい。
「清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含む」とは、清浄剤と酸化防止剤とを含むこと、分散剤と酸化防止剤とを含むこと、又は清浄剤と分散剤と酸化防止剤とを含むことを意味する。また、潤滑油用パッケージ添加剤としては、例えば、DI(Detergent Inhibitor)パッケージ等が挙げられる。
DIパッケージとしては、ルブリゾール(株)製{例えば、ガソリン車用としてLUBRIZOL PVシリーズ(製品名製品名PV1510等)等}、シェブロン(株)製{例えば、乗用車用モーターオイル用として製品名OLOA55501、OLOA55503等}、アフトンケミカル社製{例えば、エンジン油用としてHiTEC 9800シリーズ等}、インフィニアム(株)製{例えば、製品名「P5741」等}等が市販されており、入手可能である。
【0093】
添加剤の各成分としては、例えば下記のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(10)金属不活性剤
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール等)、窒素原子含有キレート化合物(N,N’-ジサリチデン-1,2-ジアミノプロパン等)、窒素・硫黄原子含有化合物(2-(n-ドデシルチオ)ベンズイミダゾール等)等;
(11)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0094】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、前記(共)重合体(A)と、前記エステル油(B)と、清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とを含有し、潤滑油組成物の150℃におけるHTHS(高温高せん断)粘度が2.25~2.54mPa・sであり、潤滑油組成物の80℃における動粘度が7.8~8.2mm2/sであり、潤滑油組成物の60℃における動粘度が11.8~12.4mm2/sであり、潤滑油組成物のNOACK蒸発量が15~25重量%である潤滑油組成物である。
潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度が2.25~2.54mPa・sであるとは、SAE規定の0W-16{「0W」は低温冷間時(エンジンスタート時)の粘度指数(Winter Grade)を意味し、「16」はエンジンが温まった状態のエンジンオイル粘度を示す}に合わせた粘度であることを意味する。
本発明においては、潤滑油組成物中に清浄剤及び/又は分散剤と酸化防止剤とのように粘度を高くする添加剤を含むものの、(共)重合体(A)と、GTL基油(B)とを組み合わせることにより、潤滑油組成物のNOACK蒸発量を15~25重量%と低く抑えつつ、80℃及び60℃における動粘度を上記範囲に調整することにより、低温(-20℃)での弾性を低くすることができ、燃費の低減に寄与する。
潤滑油組成物のNOACK蒸発量(ASTM D5800の方法で測定、250℃1時間で測定される値)は、15~25重量%であり、エンジン油の揮発残量減によるエンジンへのダメージの観点から、17~25重量%が好ましく、更に好ましくは19~24重量%である。なお、NOACK蒸発量は粘度が高い基油を多く用いれば小さくすることができ、粘度が低い基油を多く用いれば大きくすることができる。
【0095】
潤滑油組成物の150℃におけるHTHS粘度(ASTM D4683に準拠)は2.25~2.54mPa・sである。
150℃におけるHTHS粘度は、潤滑油組成物に150℃と高温で、金属間の狭い隙間でせん断をかけて(共)重合体(A)のポリマー鎖が流れの方向に配向して細長くなった状態の粘度であり、(共)重合体(A)の含有量、(共)重合体(A)の分子量、(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値、含まれる基油の粘度等によって調整することができる。例えば、(A)の含有量を少なくしたり、(A)の分子量を小さくしたり、(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を高くしたり、粘度の低い基油(炭素数が小さいもの等)を用いると、低くすることができ、(A)の含有量を多くしたり、(A)の分子量を大きくしたり、(共)重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を低くしたり、粘度の高い基油を用いると、高くすることができる。
【0096】
潤滑油組成物の80℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの、以下において同じ)は、7.8~8.2mm2/sであり、低温(-20℃)での弾性率の観点から、好ましくは7.85~8.20mm2/sである。80℃における動粘度が8.2mm2/sを超えると低温(-20℃)での弾性が高くなってしまい、7.8mm2/s未満とするとNOACK蒸発量が高くなってしまう。
潤滑油組成物の60℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの、以下において同じ)は、11.8~12.4mm2/sであり、低温(-20℃)での弾性率の観点から、好ましくは12.0~12.4mm2/sである。60℃における動粘度が12.4mm2/sを超えると低温(-20℃)での弾性が高くなってしまい、11.8mm2/s未満とするとNOACK蒸発量が高くなってしまう。
なお、本発明においては、150℃におけるHTHS粘度を上記範囲に調整した場合の、動粘度(80℃、60℃)は上記範囲のように低くなることが好ましい。このように調整する方法としては、例えば、潤滑油組成物中の(A)を150℃でせん断をかけた状態(HTHS粘度)では広がるものの、80℃以下の温度では急激に凝集しやすくするように調整する方法が挙げられる。このように調整する方法としては、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を前記範囲に調整する方法、重量比率(b/a)や重量比率(b/c)を前記範囲に調整する方法、(A)を構成する単量体(a)、(b)及び(c)の合計重量割合を前記範囲に調整する方法、(A)のMwを前記範囲に調整する方法、重量比率(A/B)を後述の範囲に調整する方法、並びにこれらの方法を併用すること等が挙げられる。
【0097】
潤滑油組成物の60℃における動粘度と80℃における動粘度との比率(60℃動粘度/80℃動粘度)は、燃費低減の観点から、1.3~1.7が好ましく、さらに好ましくは1.35~1.6である。
【0098】
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、燃費低減の観点から、好ましくは6.00~6.70mm2/s、更に好ましくは6.10~6.60mm2/sである。
100℃における動粘度は、150℃におけるHTHS粘度を上記範囲に調整した場合の、潤滑油組成物の100℃での粘度であり、基油の粘度が同じである場合、100℃における基油中での(共)重合体(A)の凝集又は広がりやすさを調整することにより調整することができる。例えば、前記範囲で(A)の構成単量体として極性の高い単量体(例えば単量体(b)や(d))を多く用いて(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を高くして凝集しやすくしたり、後述の範囲で(A)の重量分率に基づいて計算するSP値と基油のSP値との差を大きくして凝集しやすくしたりすることにより、低くすることができる。また、前記範囲で(A)の構成単量体として極性の低い単量体(例えば単量体(a)や(c))を多く用いて(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を低くして凝集しにくくしたり、後述の範囲で(A)の重量分率に基づいて計算するSP値と基油のSP値との差を小さくして凝集しにくくすることにより、高くすることができる。また、同じ(A)の重量分率に基づいて計算するSP値が同じである場合は、Mwを大きくすることで大きくすることができ、Mwを小さくすることで小さくすることができる。また、また、100℃動粘度の低い基油を多く用いることにより低くすることができ、100℃動粘度の高い基油を多く用いることにより高くすることができる。
【0099】
潤滑油組成物の40℃における動粘度は、低温での貯蔵弾性率の観点から、好ましくは21.0~22.5mm2/sが好ましく、更に好ましくは21.5~22.0mm2/sである。
40℃における動粘度は、150℃におけるHTHS粘度を上記範囲に調整した場合の、潤滑油組成物の40℃での粘度であり、基油の粘度が同じである場合、40℃における基油中での(共)重合体(A)の凝集又は広がりやすさを調整することによって調整することができる。例えば、(A)の構成単量体として極性の高い単量体を多く用いて凝集しやすくしたり、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値と基油のSP値との差を大きくして凝集しやすくしたりすることにより、低くすることができる。また、(A)の構成単量体として極性の低い単量体を多く用いて凝集しにくくしたり、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値と基油のSP値との差を小さくして凝集しにくくすることにより、高くすることができる。また、NOACK蒸発量を上記範囲内とすることができる量の範囲内で、40℃における動粘度が低い基油を多く用いることにより、低くすることができる。
なお、本発明においては、150℃におけるHTHS粘度を上記範囲に調整した場合の、100℃における動粘度を6.00mm2/s以上としつつ、40℃における動粘度を低く(好ましくは21.0~22.5mm2/s)調整することが好ましい。このように調整する方法としては、例えば、基油として100℃における動粘度は比較的高く、40℃における動粘度が比較的低いもの(粘度指数が高いもの)を用いる方法が挙げられる。
さらに、潤滑油組成物中の(A)を100℃では広がるものの、40℃では凝集するように調整する方法が挙げられる。このように調整する方法としては、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値を前記範囲に調整する方法、(A)の分子量を前記範囲に調整する方法、重量比率(b/a)を前記範囲に調整する方法、重量比率(b/c)を前記範囲に調整する方法、(A)を構成する単量体(a)、(b)及び(c)の合計重量割合を前記範囲に調整する方法を用いると、より(A)が100℃では広がるものの、40℃では凝集するという分子挙動が大きくなる傾向がある。
【0100】
潤滑油組成物の40℃における動粘度と100℃における動粘度との比率(40℃動粘度/100℃動粘度)は、燃費低減の観点から、3.0~4.0が好ましく、更に好ましくは3.1~3.7である。
潤滑油組成物の60℃における動粘度と100℃における動粘度との比率(60℃動粘度/100℃動粘度)は、燃費低減の観点から、1.8~2.1が好ましく、更に好ましくは1.8~2.0である。
前記比率は、例えば、潤滑油組成物中の(A)について、温度に対する分子挙動が大きくなる(例えば100℃では広がるものの、40℃では凝集する)ように調整すると、低くすることができる。
【0101】
潤滑油組成物の100℃におけるHTHS粘度(ASTM D4683に準拠)は、燃費低減の観点から、3.50~4.10mPa・sが好ましく、更に好ましくは3.60~4.00mPa・sである。
100℃におけるHTHS粘度は、150℃におけるHTHS粘度を上記範囲に調整した場合の、潤滑油組成物にせん断をかけた状態(オイルが金属間の狭い隙間でせん断を受け、(A)が流れの方向に配向して細長くなった状態)での100℃の粘度であり、100℃における基油中での(共)重合体(A)の凝集又は広がりやすさを調整することにより調整することができる。例えば、(A)の構成単量体として極性の高い単量体を多く用いて凝集しやすくしたり、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値と基油のSP値との差を大きくして凝集しやすくしたりすることにより、低くすることができ、(A)の構成単量体として極性の低い単量体を多く用いて凝集しにくくしたり、(A)の重量分率に基づいて計算するSP値と基油のSP値との差を小さくして凝集しにくくすることにより、高くすることができる。
なお、(共)重合体(A)の分子量を大きくすれば、(A)の添加量が少なくなりせん断をかけた状態の粘度であるHTHS粘度(100℃)は下がる傾向があるものの、動粘度(100℃)は添加量が少なくなったことによる粘度低下よりも分子量が大きくなったことによる増粘効果の影響の方が高く、動粘度は高くなる傾向がある。したがって、(A)の構成単量体が同じである場合、分子量を調整することで、動粘度(100℃)を高くしつつ、HTHS粘度(100℃)を下げることができる。
【0102】
潤滑油組成物の粘度指数は、燃費低減の観点から、250以上が好ましく、更に好ましくは250~290、特に好ましくは260~280である。
【0103】
潤滑油組成物の貯蔵弾性率G’(測定温度-20℃、測定条件は下記)は、燃費低減の観点から、125Pa以下が好ましく、更に好ましくは90~120Paである。
【0104】
潤滑油組成物中の(共)重合体(A)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、低温での貯蔵弾性率、粘度指数向上効果及びコストの観点から、0.1重量%以上~10重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上5重量%以下であり、更に好ましくは0.5重量%以上3重量%未満であり、特に好ましくは0.8重量%以上2.8重量%以下である。
潤滑油組成物中のGTL基油(B)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、燃費低減及びコストの観点から、70~94重量%が好ましく、更に好ましくは75~90重量%であり、特に好ましくは78~85重量%である。
潤滑油組成物中の基油(G)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、燃費低減及びコストの観点から、2~15重量%が好ましく、更に好ましくは5~13重量%であり、特に好ましくは8~12重量%である。
潤滑油組成物中の添加剤(清浄剤、分散剤、酸化防止剤及びその他の添加剤の合計)の含有量は、潤滑油組成物の重量を基準として、燃費低減及びコストの観点から、3~12重量%が好ましく、更に好ましくは4~12重量%であり、特に好ましくは5~12重量%である。
潤滑油組成物中のGTL基油(B)と(共)重合体(A)との重量比率(B/A)は、燃費低減及びコストの観点から、20~50が好ましく、更に好ましくは25~45であり、特に好ましくは28~40である。
潤滑油組成物中の(共)重合体(A)と基油(G)との重量比率(G/A)は、燃費低減及びコストの観点から、2.0~7.0が好ましく、更に好ましくは3.0~6.0であり、特に好ましくは3.5~5.0である。
潤滑油組成物中のGTL基油(B)と基油(G)との重量比率(B/G)は、燃費低減及びコストの観点から、6.0~12.0が好ましく、更に好ましくは7.0~11.0であり、特に好ましくは7.5~10.0である。
【0105】
本発明の潤滑油組成物は、特に内燃機関用の潤滑油組成物、特にハイブリッド車用の潤滑油組成物として好適に使用できる。
【実施例】
【0106】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0107】
炭化水素重合体の構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記の方法で上記数式(1)を用いて求め、イソブチレン基及び1,2-ブチレン基の合計比率は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記の方法で上記数式(2)を用いて求めた。
炭化水素重合体中の1,2-付加体/1,4-付加体のモル比(ブタジエン由来の構造におけるモル比)は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記数式(1)に使用した積分値Bの値及び積分値Cの値から、下記数式(3)により求めた。
1,2-付加体/1,4-付加体のモル比={100×積分値B×4/積分値C}/{100-(100×積分値B×4/積分値C)} (3)
【0108】
<製造例1>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン0.5重量部、1,3-ブタジエン90重量部、n-ブチルリチウム0.9重量部を仕込んだ後、重合温度を50℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部加え、50℃でさらに3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、0.027~0.040MPaの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して0.027~0.040MPaの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y1)を得た。
得られた(Y1)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=7,000、Mn=6,500、1,2-ブチレン基の比率=45モル%、モル比(1,2-付加体/1,4-付加体)=45/55であった。
【0109】
<製造例2>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン2重量部、1,3-ブタジエン90重量部、n-ブチルリチウム0.9重量部を仕込んだ後、重合温度をマイナス0℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部加え、50℃で3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、0.027~0.040MPaの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して0.027~0.040MPaの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y2)を得た。
得られた(Y2)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=7,000、Mn=6,500、1,2-ブチレン基の比率=65モル%、モル比(1,2-付加体/1,4-付加体)=65/35であった。
【0110】
<実施例1~13及び比較例1~8>
<共重合体(A-1)~(A-19)含有組成物の調製>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、下記記載の鉱物油1を400部、表2~3に記載の単量体配合物合計100重量部となる量、及び触媒として2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、t-ブチルペルオキシ-2-エチルへキシルモノカーボネートを表2~3に記載の量投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去し、共重合体(A)および鉱物油1を含有する組成物を得た。得られた共重合体(A)の重量分率に基づいて計算するSP値((A)のSP値)は上記の方法で計算し、Mwは上記の方法で測定した。
【0111】
<潤滑油組成物の調整>
上記調製で得た共重合体(A)含有組成物、その他の添加剤、および基油を表2~3に記載の量になるように配合して潤滑油組成物を得た。なお表中の共重合体(A)の含有量とは、潤滑油組成物全体の量を100重量%とした該潤滑油組成物に含まれる共重合体(A)の純分(重量%)である。得られた潤滑油組成物について、各種物性の評価を行った。結果を表2~3に示す。
【0112】
【0113】
【0114】
表2~3に記載の単量体(a)~(d)の組成は、以下に記載した通りである。
(a-1):製造例1で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(1,2-ブチレン比率=45モル%)(Y1)のメタクリル酸エステル化物[Mn:6,600、一般式(1)におけるp=0、-X1-=-O(CH2CH2O)1-]
(a-2):製造例2で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(1,2-ブチレン比率=65モル%)(Y2)のメタクリル酸エステル化物[Mn:6,600、一般式(1)におけるp=0、-X1-=-O(CH2CH2O)1-]
(a―3):CrayValley社(フランス国パリ)社製の片末端水酸基含有水素化ポリブタジエン[商品名;KrasolHLBH-5000M、1,2-ブチレン比率=65モル%、モル比(1,2-付加体/1,4-付加体)=65/35、結晶化温度-60℃以下]とメタクリル酸とのエステル化物[Mn:4,800、一般式(1)におけるp=0、-X1-=-O-]
(b-1):メタクリル酸n-ブチル
(b-2):メタクリル酸エチル
(c-1):Neodol23(シェルケミカルズ社製、炭素数12~13の直鎖又は分岐アルキルアルコール(重量比=直鎖C12:分岐C12:直鎖C13:分岐C13=40:10:40:10)の混合物)のメタクリル酸エステル化物
(c-2):Neodol45(シェルケミカルズ社製、炭素数14~15の直鎖又は分岐アルキルアルコール(重量比=直鎖C14:分岐C14:直鎖C15:分岐C15=40:10:40:10)の混合物)のメタクリル酸エステル化物
(d-1):エトキシエチルメタクリレート
(d-2):ブトキシエチルメタクリレート
【0115】
表2~3に記載の基油及びDIパッケージは以下の通りである。
鉱物油1:SKルブリカンツ社製、製品名「Yubase4」、GroupIII(SP値:8.3、100℃の動粘度:4.2mm2/s、40℃の動粘度:19.6mm2/s)
鉱物油2:SKルブリカンツ社製、製品名「Yubase3」、GroupIII(SP値:8.3、100℃の動粘度:3.1mm2/s、40℃の動粘度:12.3mm2/s)
GTL基油1:GroupIII(SP値:8.3、100℃の動粘度:4.1mm2/s、40℃の動粘度:18mm2/s)
GTL基油2:GroupIII(SP値:8.3、100℃の動粘度:2.7mm2/s、40℃の動粘度:9.9mm2/s)
P5741:インフィニアム(株)製、清浄剤、分散剤及び酸化防止剤等を含むパッケージ添加剤
PV1510:ルブリゾール(株)製DIパッケージ、清浄剤、分散剤及び酸化防止剤等を含むパッケージ添加剤
【0116】
各単量体に由来する構成単位(炭素-炭素二重結合が反応して単結合になった構造)のSP値は、下記数式に基づいて算出した。
(a-1)に由来する構成単位
【化5】
(1)の構造
ΣΔe
i=1125(CH
3)+1180(CH
2)+350(C)+4300(CO
2)=6955
Σv
i=33.5(CH
3)+16.1(CH
2)-19.2(C)+18.0(CO
2)=48.4
(2)の構造
ΣΔe
i=1180(CH
2)×2+800(O)=3160
Σv
i=16.1(CH
2)×2+3.8(O)=36
(3)の構造
ΣΔe
i=1180(CH
2)×2+1125(CH
3)+820(CH)=4305
Σv
i=16.1(CH
2)×2+33.5(CH
3)-1.0(CH)=64.7
(4)の構造
ΣΔe
i=1180(CH
2)×4=4720
Σv
i=16.1(CH
2)×4=64.4
ここで、1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数は下記である。
1,2-ブチレン基((3)の構造)及び1,4-ブチレン基((4)の構造)の合計個数=(6600-86((1)の構造)-44((2)の構造))/56=115.55
したがって、(a-1)に由来する構成単位のパラメータは下記である。
ΣΔe
i=6955+3160+4305×115.55×0.45+4720×115.55×0.55=533948.2
Σv
i=48.4+36+64.7×115.55×0.45+64.4×115.55×0.55=7541.6497
SP値=(ΣΔe
i/Σv
i)
1/2=(533948.2/7541.6497)
1/2=8.414
【0117】
(a-2)に由来する構成単位
【化6】
1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数=(6600-85-44)/56=115.55
ΣΔe
i=6955+3160+4305×115.55×0.65+4720×115.55×0.35=524357.3
Σv
i=48.4+36+64.7×115.55×0.65+64.4×115.55×0.35=7548.583
SP値=(ΣΔe
i/Σv
i)
1/2=(524357.3/7548.583)
1/2=8.335
【0118】
(a-3)に由来する構成単位
【化7】
1,2-ブチレン基及び1,4-ブチレン基の合計個数=(4800-85)/56=84.20
ΣΔe
i=6955+4305×84.20×0.65+4720×84.20×0.35=381650.2
Σv
i=48.4+64.7×84.20×0.65+64.4×84.20×0.35=5487.068
SP値=(ΣΔe
i/Σv
i)
1/2=(381650.2/5487.068)
1/2=8.340
【0119】
(b-1)に由来する構成単位
ΣΔei=6955+1180×3+1125=11620
Σvi=48.4+16.1×3+33.5=130.2
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(11620/130.2)1/2=9.447
(b-2)に由来する構成単位
ΣΔei=6955+1180+1125=9260
Σvi=48.4+16.1+33.5=98
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(9260/98)1/2=9.721
【0120】
(c-1)に由来する構成単位
直鎖C12
ΣΔei=6955+1180×11+1125=21060
Σvi=48.4+16.1×11+33.5=259
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(21060/259)1/2=9.017
分岐C12
ΣΔei=6955+1180×9+1125×2+820=20645
Σvi=48.4+16.1×9+33.5×2-1.0=259.3
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(20645/259.3)1/2=8.923
直鎖C13
ΣΔei=6955+1180×12+1125=22240
Σvi=48.4+16.1×12+33.5=275.1
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(22240/275.1)1/2=8.991
分岐C13
ΣΔei=6955+1180×10+1125×2+820=21825
Σvi=48.4+16.1×10+33.5×2-1.0=275.4
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(21825/275.4)1/2=8.902
(c-1)に由来する構成単位のSP値=(9.017×40+8.923×10+8.991×40+8.902×10)/100=8.986
【0121】
(c-2)に由来する構成単位
直鎖C14
ΣΔei=6955+1180×13+1125=23420
Σvi=48.4+16.1×13+33.5=291.2
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(23420/291.2)1/2=8.968
分岐C14
ΣΔei=6955+1180×11+1125×2+820=23005
Σvi=48.4+16.1×11+33.5×2-1.0=291.5
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(23005/291.5)1/2=8.884
直鎖C15
ΣΔei=6955+1180×14+1125=24600
Σvi=48.4+16.1×14+33.5=307.3
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(24600/307.3)1/2=8.947
分岐C15
ΣΔei=6955+1180×12+1125×2+820=24185
Σvi=48.4+16.1×12+33.5×2-1.0=307.6
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(24185/307.6)1/2=8.867
(c-2)に由来する構成単位のSP値=(8.968×40+8.884×10+8.947×40+8.867×10)/100=8.941
【0122】
(d-1)に由来する構成単位
ΣΔei=6955+3160+1180+1125=12420
Σvi=48.4+36+16.1+33.5=134
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(12420/134)1/2=9.627
(d-2)に由来する構成単位
ΣΔei=6955+3160+1180×3+1125=14780
Σvi=48.4+36+16.1×3+33.5=166.2
SP値=(ΣΔei/Σvi)1/2=(14780/166.2)1/2=9.430
【0123】
<潤滑油組成物のNOACK蒸発量の測定方法>
ASTM D 5800の方法(測定条件:250℃、1時間)に準じて測定した。
【0124】
<潤滑油組成物のHTHS粘度の測定方法>
ASTM D 4683の方法により、100℃及び150℃で測定した。
【0125】
<潤滑油組成物の動粘度の測定方法及び粘度指数の計算方法>
JIS-2283の方法で40℃、60℃、80℃及び100℃の動粘度を測定し、JIS-2283の方法で粘度指数を計算した。粘度指数の値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
【0126】
<潤滑油組成物の貯蔵弾性率(-20℃)の測定方法-レオメーター>
Anton paar社製レオメーター「Physica MCR302」を用いて以下の手順で測定した。まず、コーンプレート(直径50mm、傾斜角1°)に対象の試料油を挿入し-20℃で10分間保持した。なお、この際、挿入した溶液に歪みを与えないよう留意した。そして、-20℃で周波数1Hz、せん断ひずみ0.00996~100%、振動モードで、貯蔵弾性率G’を測定した。上記測定において、せん断歪み量が0.0096%における貯蔵弾性率G’(Pa)の値を表中に記載した。
【0127】
表2~3の結果から、本発明の潤滑油組成物は250℃での適切な蒸発性を維持したうえで、実効温度域(特に80℃、60℃)での動粘度を低減し、低温(-20℃)での粘弾が低く、優れていることが分かる。
一方、比較例1~8の実効温度域(特に80℃、60℃)での動粘度が高い潤滑油組成物は、実施例と比較して、低温(-20)での貯蔵弾性率が高く劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の潤滑油組成物は、低温(-20℃)での弾性に優れているので、燃費低減効果が期待されるため、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられ、特に内燃機関用の潤滑油組成物、特にハイブリッド車用の潤滑油組成物として好適に使用できる。