(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電気接続箱のバスバー取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240702BHJP
H02G 3/14 20060101ALI20240702BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20240702BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
H02G3/16
H02G3/14
H05K7/06 C
B60R16/02 610A
(21)【出願番号】P 2022111184
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野倉 正人
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 龍
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎二
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 博人
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-5328(JP,A)
【文献】特開2011-239572(JP,A)
【文献】特開2012-191711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H02G 3/14
H05K 7/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品に電気的に接続される第1入出力端子を収容する第1端子収容部が形成された電気絶縁性のハウジング本体と、前記電気部品及び前記第1入出力端子を覆って前記ハウジング本体に装着される保護カバーとを有する電気接続箱と、
帯状の平型導体の外周面が絶縁被覆で覆われ、端末における導体表出部が前記第1入出力端子の導体接続部に電気的に接続されるバスバーと、
前記バスバーと前記保護カバーとの間隙を狭めて手指が前記第1端子収容部内に入ることを防止するように前記バスバーに形成された段差部と、
を備える電気接続箱のバスバー取付構造。
【請求項2】
前記保護カバーは、前記ハウジング本体に装着されるカバー本体と、前記第1入出力端子の導体接続部を覆うように前記カバー本体に開閉自在に設けられた第1カバーとを有する、
請求項1に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【請求項3】
前記ハウジング本体は、前記電気部品の端子に電気的に接続される第2入出力端子を収容する第2端子収容部を有し、
前記第2入出力端子の導体接続部には、端子付電線の接続端子が電気的に接続され、
前記保護カバーは、前記第1カバーと同形状に形成され、且つ、前記第2入出力端子の導体接続部を覆うように前記カバー本体に開閉自在に設けられた第2カバーを有する、
請求項2に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【請求項4】
前記段差部は、前記バスバーの端末における前記導体表出部の近傍が前記導体表出部より板厚方向の上方に位置するように、断面クランク状に曲げ加工される、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【請求項5】
前記段差部は、前記バスバーの端末における前記導体表出部の近傍が前記導体表出部より板厚方向の上方に位置するように、断面階段状に曲げ加工される、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【請求項6】
前記段差部は、前記バスバーの端末における前記導体表出部の近傍において、折り曲げ部が前記保護カバー側に向かうように断面Ω字状に曲げ加工される、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱のバスバー取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両に搭載される電気接続箱として、電気部品であるヒューズを格納するヒューズボックスが知られている(特許文献1参照)。この種のヒューズボックスは、樹脂製のボックス本体(ハウジング本体)と、ボックス本体の上側の開放部を覆う樹脂製のカバー(保護カバー)とを備えており、ヒューズを収容可能に構成されている。
【0003】
ボックス本体には、ヒューズを収容可能なヒューズ収容部(電気部品格納部)と、ヒューズの2つの端子にそれぞれヒューズ取付部が電気的に接続される第1バスバー及び第2バスバー(第1入出力端子及び第2入出力端子)を収容可能なバスバー収容部(端子収容部)とが、設けられている。そして、これら第1バスバー及び第2バスバーの外部部材取付部(導体接続部)には、外部部材(外部導体)が電気的に接続される。
カバー(保護カバー)は、ボックス本体の開放部のうち、中央部から閉鎖側を覆う第1カバー部(カバー本体)と、中央部から挿入側(外部部材の接続端が挿入される側)を覆う第2カバー部と、第1カバー部と第2カバー部とを接続する薄肉状の連結部と、を備えている。
【0004】
そして、外部部材の接続端が第1バスバー及び第2バスバーの外部部材取付部にそれぞれ接続される際には、第2カバー部だけを回動させてボックス本体の挿入側の上部を開放することができる。即ち、外部部材が接続された後、第2カバー部が閉じられることで、手指等が第1バスバー及び第2バスバーの導体接続部や、外部部材の接続端に触れられない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1バスバー及び第2バスバーの導体接続部に接続される外部部材としては、車両搭載時のヒューズボックスのレイアウトや仕様に応じて、帯状の平型導体の外周面が絶縁被覆で覆われたバスバー(平型配索材)や、電線端末に接続端子が接続された端子付電線等が用いられる。更に、外部部材の接続端は、第1バスバー及び第2バスバーの導体接続部にネジ締結されるのが一般的であるが、端子付電線の締結方向の高さ(電線径)やネジ締結部の高さは、バスバーの締結方向の高さ(板厚)に比べて高い。
【0007】
そこで、第1バスバー及び第2バスバーの導体接続部を覆うカバー(即ち、第2カバー部)は、端子付電線の締結方向の高さ又はネジ締結部の高さに対応して高さが設定されている。
そのため、バスバーの接続端が第1バスバー又は第2バスバーの導体接続部にネジ締結された場合には、バスバーとカバーとの間隙が広くなり、手指等が入り易くなる。そこで、ボックス本体及びカバーには、バスバーの接続端(端末)を覆う範囲を広げる必要が生じ、ヒューズボックスが大型化するという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電気接続箱内の電気部品に電気的に接続されるバスバーにおける触指防止機能を確実に確保しつつ、電気接続箱が大型化するのを抑制することができる電気接続箱のバスバー取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱のバスバー取付構造は、下記を特徴としている。
電気部品を格納する電気部品格納部と、前記電気部品の端子に電気的に接続される第1入出力端子を収容する第1端子収容部とが形成された電気絶縁性のハウジング本体と、前記電気部品の端子及び前記第1入出力端子を覆って前記ハウジング本体に装着される保護カバーとを有する電気接続箱と、
帯状の平型導体の外周面が絶縁被覆で覆われ、端末における導体表出部が前記第1入出力端子の導体接続部に電気的に接続されるバスバーと、
前記バスバーと前記保護カバーとの間隙を狭めて手指が前記第1端子収容部内に入ることを防止するように前記バスバーに形成された段差部と、
を備える電気接続箱のバスバー取付構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気接続箱のバスバー取付構造によれば、電気接続箱内の電気部品に電気的に接続されるバスバーにおける触指防止機能を確実に確保しつつ、電気接続箱が大型化するのを抑制することができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る電気接続箱のバスバー取付構造を備えた電気接続箱の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したハウジング本体に電気部品及び保護カバーが装着された電気接続箱の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した電気接続箱の第1端子収容部及び第2端子収容部に、外部導体をそれぞれ電気的に接続する手順を説明する斜視図である。
【
図5】
図5は、電気接続箱の第1端子収容部及び第2端子収容部に、外部導体がそれぞれ電気的に接続された状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した電気接続箱における第1端子収容部の縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示した電気接続箱における第2端子収容部の縦断面図である。
【
図8】
図8は、参考例に係るバスバーの要部斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した参考例に係るバスバーを収容した電気接続箱における第1端子収容部の縦断面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るバスバーの要部斜視図である。
【
図11】
図11は、他の変形例に係るバスバーの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電気接続箱1の分解斜視図である。
図2は、
図1に示したバスバー8の要部斜視図である。
図3は、
図1に示したハウジング本体5にヒューズ2及び保護カバー6が装着された電気接続箱1の斜視図である。
なお、本明細書中、電気接続箱1の前後方向、上下方向および左右方向は、
図1に示した矢印の方向に従うものとする。
【0014】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る電気接続箱1は、例えば車両に搭載されて、電気部品であるヒューズ2を格納するためのヒューズボックスである。ヒューズ2は、バッテリーから電気機器に至る電気配線のうち上流側に配置される。なお、ヒューズ2の端子22,23にそれぞれ電気的に接続される外部導体としては、バスバー(平型配索材)8と、端子付電線9とを用いた場合を例に説明する。
【0015】
電気接続箱1は、合成樹脂等の絶縁材料で形成された電気絶縁性のハウジング本体5と、保護カバー6を有する。
ヒューズ2は、左右方向に延びる円筒状のヒューズ本体21と、ヒューズ本体21の両端から突出する端子(ヒューズ端子)22,23とを有する。端子22,23は、それぞれ略正方形の板状を有し、中央にはボルト25が挿通される貫通孔22a,23aが設けられている。
【0016】
ハウジング本体5は、
図1に示すように、ヒューズ2を格納する電気部品格納部51と、ヒューズ2の一方の端子22に電気的に接続される第1入出力端子3を収容する第1端子収容部53と、ヒューズ2の他方の端子23に電気的に接続される第2入出力端子4を収容する第2端子収容部54と、図示しない支持部材に固定される固定ブラケット52と、を有する。
【0017】
電気部品格納部51は、ハウジング本体5における長手方向中央部(左右方向中央部)の前方に向けて開口する有底箱型に形成され、ヒューズ2のヒューズ本体21が収容される。第1端子収容部53は、ヒューズ2の一方の端子22に対応して電気部品格納部51の左側に形成され、第2端子収容部54は、ヒューズ2の他方の端子23に対応して電気部品格納部51の右側に形成されている。
【0018】
第1端子収容部53の前面には、第1入出力端子3と共にヒューズ2を固定するためのインサートナット55が設けられている。
第2端子収容部54の前面には、第2入出力端子4と共にヒューズ2を固定するためのインサートナット55が設けられている。
【0019】
第1入出力端子3は、電気部品格納部51から左方に突出したヒューズ2の端子22に電気的に接続される端子接続部311と、バスバー8の平型導体81に電気的に接続される導体接続部312と、を有するL字状に屈曲形成された導電性金属板である。端子接続部311には、ボルト25が挿通される長円形の貫通孔33が設けられている。導体接続部312には、上方に突出するスタッドボルト32が設けられている。
【0020】
第2入出力端子4は、電気部品格納部51から右方に突出したヒューズ2の端子23に電気的に接続される端子接続部411と、端子付電線9の接続端子93に電気的に接続される導体接続部412と、を有するL字状に屈曲形成された導電性金属板である。端子接続部411には、ボルト25が挿通される長円状の貫通孔43が設けられている。導体接続部412には、上方に突出するスタッドボルト42が設けられている。
【0021】
固定ブラケット52は、ハウジング本体5の長手方向(左右方向)の両端部から更に長手方向に延伸するように構成された部分である。固定ブラケット52には、ボルト等の固定具を用いて電気接続箱1を固定するための挿入孔が形成され、金属カラーが装着されている。
【0022】
保護カバー6は、ヒューズ2の端子22,23と、第1入出力端子3及び第2入出力端子4とを覆うようにハウジング本体5に上方から装着される絶縁カバーである。
保護カバー6は、上壁部61及び前壁部63,63が一体成形されたカバー本体60と、カバー本体60に開閉自在に設けられた一対のカバー7A,7Bとを有する。
【0023】
カバー本体60は、ハウジング本体5における第1端子収容部53及び第2端子収容部54の上方にそれぞれ開口部66を構成する平面視H形状の上壁部61と、上壁部61の前縁から下方に延びてハウジング本体5の第1端子収容部53及び第2端子収容部54の前方を覆う一対の前壁部63,63とを有する。
【0024】
更に、第1端子収容部53に対応する上壁部61の開口部66には、第1入出力端子3の導体接続部312を覆うように第1カバーとしてのカバー7Aが開閉自在に設けられる。また、第2端子収容部54に対応する上壁部61の開口部66には、第2入出力端子4の導体接続部412を覆うように第2カバーとしてのカバー7Bが開閉自在に設けられる。
【0025】
本実施形態において、第2カバーとしてのカバー7Bは、第1カバーとしてのカバー7Aと同形状に形成されている。カバー7A,7Bは、天壁71の長手方向一端部に設けられた一対の回動軸73が、上壁部61の開口部66に設けられた一対の軸受65に軸支されることにより、カバー本体60に回動自在に取付けられる。
天壁71の長手方向に沿う両側面には、被係止部である係止突起75が突設されており、上壁部61の開口部66に設けられた一対の係止部67に係止されることにより、カバー7A,7Bは開口部66を閉状態に保持することができる。
【0026】
そこで、
図3に示すように、保護カバー6は、カバー本体60をハウジング本体5に取り付けた状態を維持しつつ、カバー7A,7Bだけを回動させてハウジング本体5における第1端子収容部53及び第2端子収容部54の上方を開放することができる。これにより、ハウジング本体5内に配置されるヒューズ2、第1入出力端子3及び第2入出力端子4を取り付けた後に、保護カバー6を完全に取り外すことなく、外部導体であるバスバー8と端子付電線9とをハウジング本体5に取り付けることができる。
【0027】
バスバー8は、帯状の平型導体81の外周面が絶縁被覆83で覆われ、端末には絶縁被覆83を除去して平型導体81を表出させた導体表出部84が設けられている。そして、本実施形態に係るバスバー8は、第1端子収容部53から導出された導出部分87がハウジング本体5の後方に延びるように屈曲形成されている。
【0028】
図2に示したように、バスバー8の導体表出部84には、第1入出力端子3のスタッドボルト32が挿通される貫通孔82が形成されている。貫通孔82は、導体表出部84の延出方向に長い長円形に形成されている。
さらに、バスバー8の端末における導体表出部84の近傍には、バスバー8と保護カバー6との間隙を狭めて手指が第1端子収容部53内に入ることを防止するように段差部85が折り曲げ形成されている。
【0029】
本実施形態の段差部85は、バスバー8の端末における導体表出部84の近傍が導体表出部84より板厚方向の上方(保護カバー6側)に位置するように、断面クランク状に曲げ加工されている。
即ち、導体表出部84の近傍が保護カバー6側に向かって屈曲された段差部85がバスバー8の端末に設けられたことにより、手指自体やスパナ等の工具の入るバスバー8と保護カバー6との間隙が上下方向で分割される。これにより、上下各々の隙間ペースが手指の大きさより小さい隙間となることで、手指が入らない触指防止構造となる。
【0030】
端子付電線9は、被覆電線91の端末における絶縁被覆96を剥いで露出させた芯線92に、接続端子93が圧着接続されている。接続端子93には、第2入出力端子4のスタッドボルト42が挿通される貫通孔94が形成されている。接続端子93の圧着部は、絶縁テープ等の絶縁部材95により覆われて電気的に絶縁されている。
【0031】
次に、電気接続箱1の組み立て手順について説明する。
先ず、ハウジング本体5における第1端子収容部53及び第2端子収容部54には、第1入出力端子3及び第2入出力端子4がそれぞれ配置される。すると、第1入出力端子3は、導体接続部312が第1端子収容部53の上面に載置され、端子接続部311が第1端子収容部53の前面に設けられたインサートナット55に当接する。また、第2入出力端子4は、導体接続部412が第2端子収容部54の上面に載置され、端子接続部411が第2端子収容部54の前面に設けられたインサートナット55に当接する。
【0032】
次に、ヒューズ2のヒューズ本体21が電気部品格納部51に収容される。すると、電気部品格納部51から左方に突出したヒューズ2の端子22が第1入出力端子3の端子接続部311に重ね合わされ、電気部品格納部51から右方に突出したヒューズ2の端子23が第2入出力端子4の端子接続部411に重ね合わされる。
【0033】
さらに、端子22の貫通孔22a及び第1入出力端子3の貫通孔33を挿通したボルト25がインサートナット55に螺合され、端子23の貫通孔23a及び第2入出力端子4の貫通孔43を挿通したボルト25がインサートナット55に螺合される。すると、ヒューズ2と、第1入出力端子3及び第2入出力端子4とが、ハウジング本体5に締結固定される。
そして、
図3に示すように、カバー本体60にカバー7A,7Bが開閉自在に取付けられた保護カバー6がハウジング本体5に上方から装着され、電気接続箱1の組み立てが完了する。
【0034】
次に、電気接続箱1の第1入出力端子3及び第2入出力端子4にそれぞれ接続されるバスバー8及び端子付電線9の接続手順について
図3~
図7を参照しながら説明する。
先ず、
図3に示すように、電気接続箱1における保護カバー6のカバー7A,7Bをそれぞれ開けた状態として、ハウジング本体5における第1端子収容部53及び第2端子収容部54の上方を開放する。
【0035】
そして、第1端子収容部53にバスバー8の端末を載置し、
図4に示すように、第1入出力端子3のスタッドボルト32を導体表出部84の貫通孔82に挿通させる。この際、貫通孔82は、導体表出部84の延出方向に長い長円形に形成されており、スタッドボルト32に対するバスバー8の取付位置の寸法公差を吸収することができ、スタッドボルト32をスムーズに挿通することができる。その後、スタッドボルト32にナット97を螺合し、バスバー8の端末を第1端子収容部53に固定する。この際、段差部85が折り曲げ形成されている導体表出部84の近傍は、導体表出部84より板厚方向の上方(保護カバー6側)に位置することができる。
【0036】
また、第2端子収容部54に端子付電線9の接続端子93を載置し、
図4に示すように、第2入出力端子4のスタッドボルト42を貫通孔94に挿通させる。その後、スタッドボルト42にナット97を螺合し、端子付電線9の接続端子93を第2端子収容部54に固定する。
【0037】
そして、保護カバー6のカバー7A,7Bをそれぞれ閉じ方向へ回動させ、係止突起75を係止部67に係止させることにより、
図5に示すように、ハウジング本体5における第1端子収容部53及び第2端子収容部54の上方を閉状態とする。
これにより、電気接続箱1の第1入出力端子3及び第2入出力端子4に対するバスバー8及び端子付電線9の接続作業が完了する。
【0038】
次に、上記実施形態に係る電気接続箱のバスバー取付構造の作用について説明する。
本実施形態に係る電気接続箱1では、
図6に示すように、ハウジング本体5の第1端子収容部53に収容された第1入出力端子3(導体接続部312及びスタッドボルト32)並びにナット97は、保護カバー6のカバー7Aに覆われて手指等の接触が防止される。
【0039】
ここで、スタッドボルト32とナット97によるネジ締結部の高さは、バスバー8の締結方向の高さ(板厚)に比べて高い。そこで、第1入出力端子3を覆う保護カバー6のカバー7Aは、ネジ締結部の高さに対応して高さが設定されている。そのため、第1入出力端子3の導体接続部312にネジ締結されたバスバー8の導体表出部84と保護カバー6のカバー7Aとの間隙が広くなり、手指自体や手に持ったスパナ等の工具が入り易くなっている。
【0040】
しかしながら、本実施形態に係る電気接続箱のバスバー取付構造では、バスバー8の端末に設けられた段差部85が、バスバー8と保護カバー6との間隙を上下方向で分割するので、上下各々の隙間ペースが手指の大きさより小さい隙間となる。
そこで、バスバー8と保護カバー6のカバー7Aとの間隙が段差部85により狭められるので、
図6に示すように、手指を想定したテストフィンガ100を第1端子収容部53の外側からバスバー8と保護カバー6のカバー7Aとの間隙に挿し込んでも、第1入出力端子3(導体接続部312及びスタッドボルト32)、並びにナット97やバスバー8の導体表出部84にテストフィンガ100が達することはない。
【0041】
また、本実施形態に係る電気接続箱1では、
図7に示すように、ハウジング本体5の第2端子収容部54に収容された第2入出力端子4(導体接続部412及びスタッドボルト42)並びにナット97は、保護カバー6のカバー7Bに覆われて手指等の接触が防止される。
【0042】
ここで、スタッドボルト32とナット97によるネジ締結部の高さは、端子付電線9の接続端子93における圧着部の高さと略同じである。そのため、第2入出力端子4の導体接続部412にネジ締結された接続端子93の圧着部と保護カバー6のカバー7Bとの間隙が狭くなり、手指自体や手に持ったスパナ等の工具が入り難くなっている。
【0043】
そこで、
図7に示すように、手指を想定したテストフィンガ100を第2端子収容部54の外側から端子付電線9と保護カバー6との間隙に挿し込んでも、第2入出力端子4(導体接続部412及びスタッドボルト42)、並びにナット97や接続端子93にテストフィンガ100が達することはない。
【0044】
図8は、参考例に係るバスバー508の要部斜視図である。
図9は、
図8に示した参考例に係るバスバー508を収容した電気接続箱501における第1端子収容部553の縦断面図である。なお、上記実施形態の電気接続箱1と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図8に示すように、参考例に係るバスバー508は、段差部85が折り曲げ形成されておらず、バスバー8の端末における導体表出部84の近傍が導体表出部84と同一の平面上に位置している。
そこで、参考例に係る電気接続箱501では、
図9に示すように、第1入出力端子3の導体接続部312にネジ締結されたバスバー508の端末と保護カバー6のカバー7Aとの間隙が広くなっており、上記実施形態で説明したような段差部85により間隙が狭められていない。そのため、手指を想定したテストフィンガ100を第1端子収容部553の外側からバスバー508と保護カバー6のカバー7Aとの間隙に挿し込むと、第1入出力端子3(導体接続部312及びスタッドボルト32)、並びにナット97やバスバー508の導体表出部84にテストフィンガ100が達することがある。
【0046】
したがって、本実施形態に係る電気接続箱1のバスバー取付構造によれば、電気接続箱1内のヒューズ2に電気的に接続されるバスバー8における触指防止機能を確実に確保することができる。
また、ハウジング本体5及び保護カバー6は、バスバー8の導体表出部84(端末)を覆う範囲を広げる必要がなくなり、電気接続箱1が大型化するのを抑制することができる。
【0047】
更に、本実施形態に係る保護カバー6のカバー7Bは、第2入出力端子4の導体接続部412に接続される外部導体として端子付電線9を用いた場合でも、バスバー8が接続される第1入出力端子3の導体接続部312を覆うカバー7Aと同形状に形成することができる。そこで、部品を共用化して製造コストの低減を図ることができる。
【0048】
図10及び
図11は、変形例に係るバスバー8A及び他の変形例に係るバスバー8Bの要部斜視図である。なお、上記実施形態のバスバー8と同様の構成部材については、同符号を付して詳細な説明を省略する。
図10に示すように、変形例に係るバスバー8Aの端末における導体表出部84の近傍には、バスバー8Aと保護カバー6との間隙を狭めて手指が第1端子収容部53内に入ることを防止するように段差部85Aが折り曲げ形成されている。
【0049】
変形例の段差部85Aは、バスバー8Aの端末における導体表出部84の近傍が導体表出部84より板厚方向の上方(保護カバー6側)に位置するように、断面階段状に曲げ加工されている。
即ち、導体表出部84の近傍が保護カバー6側に向かって屈曲された段差部85Aがバスバー8Aの端末に設けられたことにより、手指自体やスパナ等の工具が入るバスバー8Aと保護カバー6のカバー7Aとの間隙が上下方向で分割される。これにより、上下各々の隙間ペースが手指の大きさより小さい隙間となることで、手指が入らない触指防止構造となる。
【0050】
図11に示すように、他の変形例に係るバスバー8Bの端末における導体表出部84の近傍には、バスバー8Bと保護カバー6との間隙を狭めて手指が第1端子収容部53内に入ることを防止するように段差部85Bが折り曲げ形成されている。
他の変形例の段差部85Bは、折り曲げ部が保護カバー6側に向かうように断面Ω字状に屈曲されて、バスバー8Bと保護カバー6のカバー7Aとの間隙に突出する。
【0051】
即ち、導体表出部84の近傍が保護カバー6側に向かって屈曲された段差部85Bがバスバー8Bの端末に設けられたことにより、バスバー8Bと保護カバー6のカバー7Aとの間隙が段差部85Bにより閉塞される。これにより、段差部85Bが手指自体やスパナ等の工具の挿入を阻止することで、手指が入らない触指防止構造となる。
【0052】
したがって、これらバスバー8A又はバスバー8Bを備えた電気接続箱1のバスバー取付構造によれば、電気接続箱1内のヒューズ2に電気的に接続されるバスバー8A又はバスバー8Bにおける触指防止機能を確実に確保することができる。
また、ハウジング本体5及び保護カバー6は、バスバー8A又はバスバー8Bの導体表出部84(端末)を覆う範囲を広げる必要がなくなり、電気接続箱1が大型化するのを抑制することができる。
【0053】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
上記実施形態では、電気接続箱1に収容された第1入出力端子3にバスバー8(8A,8B)が電気的に接続され、第2入出力端子4に端子付電線9が電気的に接続された例について説明したが、本発明に係る電気接続箱のバスバー取付構造は、第1入出力端子3及び第2入出力端子4にそれぞれバスバー8(8A,8B)を電気的に接続する場合に適用することもできる。
また、本発明のバスバーにおける段差部の折り曲げ形状は、上記実施形態の段差部85,85A,85Bの形状に限るものではなく、本発明の趣旨に基づいて保護カバー側に突出する種々の折り曲げ形状を採りうることは云うまでもない。
【0054】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱のバスバー取付構造の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[6]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電気部品(ヒューズ2)を格納する電気部品格納部(51)と、前記電気部品(ヒューズ2)の端子(22)に電気的に接続される第1入出力端子(3)を収容する第1端子収容部(53)とが形成された電気絶縁性のハウジング本体(5)と、前記電気部品(ヒューズ2)の端子(22)及び前記第1入出力端子(3)を覆って前記ハウジング本体(5)に装着される保護カバー(6)とを有する電気接続箱(1)と、
帯状の平型導体(81)の外周面が絶縁被覆(83)で覆われ、端末における導体表出部(84)が前記第1入出力端子(3)の導体接続部(312)に電気的に接続されるバスバー(8,8A,8B)と、
前記バスバー(8,8A,8B)と前記保護カバー(6)との間隙を狭めて手指が前記第1端子収容部(53)内に入ることを防止するように前記バスバー(8,8A,8B)に形成された段差部(85,85A,85B)と、
を備える電気接続箱のバスバー取付構造。
【0055】
上記[1]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、ハウジング本体(5)の第1端子収容部(53)に収容された第1入出力端子(3)は、保護カバー(6)に覆われて手指等の接触が防止される。
ここで、帯状の平型導体(81)により形成されたバスバー(8)の端末は、第1入出力端子(3)の導体接続部(312)にネジ締結されるのが一般的であるが、ネジ締結部の高さはバスバー(8)の締結方向の高さ(板厚)に比べて高い。そこで、第1入出力端子(3)を覆う保護カバー(6)は、ネジ締結部の高さに対応して高さが設定されている。そのため、バスバー(8)の端末が第1入出力端子(3)の導体接続部(312)にネジ締結された場合には、バスバー(8)と保護カバー(6)との間隙が広くなり、手指自体や手に持ったスパナ等の工具が入り易くなる。
しかしながら、上記[1]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、バスバー(8,8A,8B)に形成された段差部(85,85A,85B)が、バスバー(8,8A,8B)と保護カバー(6)との間隙を狭める。そこで、手指自体やスパナ等の工具は第1入出力端子(3)やバスバー(8,8A,8B)の導体表出部(84)に触れることが出来なくなる。
したがって、電気接続箱(1)内の電気部品(ヒューズ2)に電気的に接続されるバスバー(8,8A,8B)における触指防止機能を確実に確保することができる。また、ハウジング本体(5)及び保護カバー(6)は、バスバー(8,8A,8B)の導体表出部(84)(端末)を覆う範囲を広げる必要がなくなり、電気接続箱(1)が大型化するのを抑制することができる。
【0056】
[2] 前記保護カバー(6)は、前記ハウジング本体(5)に装着されるカバー本体(60)と、前記第1入出力端子(3)の導体接続部(312)を覆うように前記カバー本体(60)に開閉自在に設けられた第1カバー(カバー7A)とを有する、
上記[1]に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【0057】
上記[2]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、保護カバー(6)は、カバー本体(60)をハウジング本体(5)に取り付けた状態を維持しつつ、第1カバー(カバー7A)だけを回動させてハウジング本体(5)における第1端子収容部(53)の上方を開放することができる。これにより、ハウジング本体(5)内に配置される電気部品(ヒューズ2)及び第1入出力端子(3)を取り付けた後に、保護カバー(6)を完全に取り外すことなく、外部導体であるバスバー(8,8A,8B)をハウジング本体(5)に取り付けることができる。
【0058】
[3] 前記ハウジング本体(5)は、前記電気部品(ヒューズ2)の端子(23)に電気的に接続される第2入出力端子(4)を収容する第2端子収容部(54)を有し、
前記第2入出力端子(4)の導体接続部(412)には、端子付電線(9)の接続端子(93)が電気的に接続され、
前記保護カバー(6)は、前記第1カバー(カバー7A)と同形状に形成され、且つ、前記第2入出力端子(4)の導体接続部(412)を覆うように前記カバー本体(60)に開閉自在に設けられた第2カバー(カバー7B)を有する、
上記[2]に記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【0059】
上記[3]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、保護カバー(6)は、カバー本体(60)をハウジング本体(5)に取り付けた状態を維持しつつ、第2カバー(カバー7B)だけを回動させてハウジング本体(5)における第2端子収容部(54)の上方を開放することができる。これにより、ハウジング本体(5)内に配置される第2入出力端子(4)を取り付けた後に、保護カバー(6)を完全に取り外すことなく、外部導体である端子付電線(9)の接続端子(93)をハウジング本体(5)に取り付けることができる。
さらに、第2カバー(カバー7B)は、第2入出力端子(4)の導体接続部(412)に接続される外部導体として端子付電線(9)を用いた場合でも、バスバー(8)が接続される第1入出力端子(3)の導体接続部(312)を覆う第1カバー(カバー7A)と同形状に形成することができる。そこで、部品を共用化して製造コストの低減を図ることができる。
【0060】
[4] 前記段差部(85)は、前記バスバー(8)の端末における前記導体表出部(84)の近傍が前記導体表出部(84)より板厚方向の上方に位置するように、断面クランク状に曲げ加工されている、
上記[1]~[3]の何れか1つに記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【0061】
上記[4]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、バスバー(8)の端末を断面クランク状に曲げ加工することで、段差部(85)を容易に形成することができる。
【0062】
[5] 前記段差部(85A)は、前記バスバー(8A)の端末における前記導体表出部(84)の近傍が前記導体表出部(84)より板厚方向の上方に位置するように、断面階段状に曲げ加工されている、
上記[1]~[3]の何れか1つに記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【0063】
上記[5]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、バスバー(8A)の端末を断面階段状に曲げ加工することで、段差部(85A)を容易に形成することができる。
【0064】
[6]前記段差部(85B)は、前記バスバー(8B)の端末における前記導体表出部(84)の近傍において、折り曲げ部が保護カバー(6)側に向かうように断面Ω字状に曲げ加工されている、
上記[1]~[3]の何れか1つに記載の電気接続箱のバスバー取付構造。
【0065】
上記[6]の構成の電気接続箱のバスバー取付構造によれば、折り曲げ部が保護カバー(6)側に向かうようにバスバー(8B)の端末を断面Ω字状に曲げ加工することで、段差部(85B)を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…電気接続箱
2…ヒューズ(電気部品)
3…第1入出力端子
5…ハウジング本体
6…保護カバー
7A…カバー(第1カバー)
8…バスバー
51…電気部品格納部
22…端子
53…第1端子収容部
81…平型導体
83…絶縁被覆
85…段差部
312…導体接続部