(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】電気接続箱、及び、製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240702BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 610Z
(21)【出願番号】P 2022111252
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】垣見 孝明
(72)【発明者】
【氏名】荘司 和輝
(72)【発明者】
【氏名】青野 憲悟
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-31475(JP,A)
【文献】特開2015-79652(JP,A)
【文献】特開2004-134278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
救援端子部を有する導通部材と、
前記導通部材を保持する保持部材と、
前記保持部材を収容する収容空間を有する樹脂体と、
前記保持部材に軸支され、前記救援端子部を覆うカバーと、
を備えた電気接続箱であって、
前記樹脂体は、
前記カバーの係止部が係止されることで、前記カバーにおける前記救援端子部を覆う閉位置から前記救援端子部を覆わない開位置への変位を抑止する、被係止部を有する
電気接続箱。
【請求項2】
救援端子部を有する導通部材と、
前記導通部材を保持する保持部材と、
前記保持部材を収容する収容空間を有する樹脂体と、
前記保持部材に軸支可能な第1カバーと、
を備えた電気接続箱の製造方法であって、
前記樹脂体は、
前記第1カバーの係止部が係止されて、前記第1カバーにおける前記救援端子部を覆う閉位置から前記救援端子部を覆わない開位置への変位を抑止する、被係止部を有し、
当該製造方法は、
前記保持部材に軸支可能に構成され、前記係止部を有さない第2カバーを更に備え、
前記電気接続箱が搭載される対象に合わせて、前記第1カバー又は前記第2カバーを前記保持部材に軸支させる工程を含む、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続箱、及び、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載され、ヒューズ、リレー、及び電子制御ユニット等の種々の電子部品を収容空間の内部に収容する電気接続箱が提案されている。例えば、従来電気接続箱の一つは、車両のバッテリ上がり時にブースターケーブルが接続される救援端子を備えている(例えば、特許文献1~2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-79652号公報
【文献】特開2015-80342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車種等の仕様によっては電気接続箱に救援端子を設ける必要がない場合がある。このため、従来は、仕様に合わせてバスバやバスバを保持するブロック等を製造することがあった。このように仕様に合わせて種々の形状のバスバやブロックを製造することで、電気接続箱の製造コストが増大してしまっていた。
【0005】
更に、従来電気接続箱の中には、救援端子がバスバに一体に設けられているものもあり、救援端子が不要な車種に搭載される場合でも救援端子が備わっていることがあった。このため、救援端子が使用されないように、フレームに救援端子を保護するための形状が設けられることがあった。これにより、フレームに複雑な形状が要求されるため、フレームを製造する金型が複雑化するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑制しつつ、救援端子を設ける必要がない場合には簡素な構造で救援端子部を保護可能な電気接続箱、及び、製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係る電気接続箱は、下記を特徴としている。
【0008】
救援端子部を有する導通部材と、
前記導通部材を保持する保持部材と、
前記保持部材を収容する収容空間を有する樹脂体と、
前記保持部材に軸支され、前記救援端子部を覆うカバーと、
を備えた電気接続箱であって、
前記樹脂体は、
前記カバーの係止部が係止されることで、前記カバーにおける前記救援端子部を覆う閉位置から前記救援端子部を覆わない開位置への変位を抑止する、被係止部を有する
電気接続箱であること。
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る製造方法は、下記を特徴としている。
救援端子部を有する導通部材と、
前記導通部材を保持する保持部材と、
前記保持部材を収容する収容空間を有する樹脂体と、
前記保持部材に軸支可能な第1カバーと、
を備えた電気接続箱の製造方法であって、
前記樹脂体は、
前記第1カバーの係止部が係止されて、前記第1カバーにおける前記救援端子部を覆う閉位置から前記救援端子部を覆わない開位置への変位を抑止する、被係止部を有し、
当該製造方法は、
前記保持部材に軸支可能に構成され、前記係止部を有さない第2カバーを更に備え、
前記電気接続箱が搭載される対象に合わせて、前記第1カバー又は前記第2カバーを前記保持部材に軸支させる工程を含む、
製造方法であること。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電気接続箱、及び、製造方法について以下に述べる。
本構成の電気接続箱、及び、製造方法によれば、カバー(第1カバー)の係止部が樹脂体の被係止部に係止されることで、カバー(第1カバー)における閉位置から開位置への変位が抑止される。これにより、救援端子を設ける必要がない電気接続箱に対して、上述したような簡素な構造で救援端子部を保護できる。一方、救援端子が必要な電気接続箱に対しては、係止部が設けられていないカバー(第2カバー)を用いればよい。また、このように簡素な構造とすることで、複雑な形状の金型を必要とせず製造コストを削減できる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電気接続箱の前方斜視図である(ただし、アッパカバー及びロアカバーの図示省略)。
【
図3】
図3は、
図1に示す電気接続箱の要部分解斜視図である。
【
図4】
図4は、フレーム、ブロック、及びバスバの分解斜視図である。
【
図9】
図9は、係止部を有さないカバーを示す前方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照しながら、
図1~
図3に示す本発明の実施形態に係る電気接続箱1について説明する。電気接続箱1は、典型的には、車両に搭載され、リレー等の電子部品やその他の部品である電子部品(図示省略)を収容する収容空間Sを有するリレーボックスである。
【0014】
以下、説明の便宜上、
図1~
図9に示すように、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」及び「下」を定義する。「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、互いに直交している。電気接続箱1の車両搭載時において、「前後方向」、「左右方向」及び「上下方向」は、それぞれ、車両の前後方向、左右方向及び上下方向に対応している。
【0015】
図1~
図3に示すように、電気接続箱1は、フレーム2(本発明の「樹脂体」に対応)と、ブロック3(本発明の「保持部材」に対応)と、バスバ(本発明の「導通部材」に対応)と、カバー5(本発明の「第1カバー」に対応)と、により構成される。更に、電気接続箱1は、フレーム2の上端開口を塞ぐようにフレーム2の上方に組み付けられるアッパカバー(図示省略)と、フレーム2の下端開口を塞ぐようにフレーム2の下方に組み付けられるロアカバー(図示省略)と、を備えて構成されている。
【0016】
フレーム2、ブロック3、バスバ4、カバー5、アッパカバー、及びロアカバーは、電気接続箱1である。以下、電気接続箱1を構成するフレーム2、ブロック3、バスバ4、及びカバー5について順に説明する。
【0017】
まず、フレーム2について説明する。
図4に示すように、フレーム2は、上下方向に延びる略矩形筒状の側壁部11を備える。側壁部11は、電気接続箱1の側面の外観の大部分を構成する。フレーム2は、側壁部11によって収容空間Sが画成され、収容空間Sは、ブロック3を収容する機能を有する。
【0018】
側壁部11の複数個所(本例では、4箇所)の内面には、それぞれ、ガイド部及び突起部から構成される係止部12が設けられている。係止部12は、収容空間S内にてブロック3をフレーム2に組み付ける機能を有する。
【0019】
フレーム2の収容空間Sには、後述するバスバ4の救援端子部19及びブロック3の救援端子保持部16が収容される救援端子収容部13が、左方の側壁部11と一体に設けられている。
【0020】
救援端子収容部13には、後述するカバー5の係止部25が係止される被係止部14が設けられている。被係止部14は、カバー5の係止部25が係止されることで(
図7~
図8参照)、カバー5における救援端子部19を覆う閉位置(
図1~
図2参照)から救援端子部19を覆わない開位置(図示省略)への変位(即ち、カバー5の回動)を抑止・規制する機能を有する。
【0021】
次いで、ブロック3について説明する。
図4に示すように、ブロック3は、複数の部品保持部(符号省略)を有する本体部15と、本体部15の左方に配置される救援端子保持部16と、が一体に構成されている。
【0022】
本体部15は、バスバ4の本体部18を保持する機能を有するとともに、電気接続箱1に搭載される電子部品(図示省略)を保持する機能を有する。また、救援端子保持部16は、バスバ4の救援端子部19を保持する機能を有するとともに、救援端子部19を覆うカバー5及び後述するカバー6を軸支する機能を有する。
【0023】
ブロック3の複数個所(本例では、4箇所)の外面には、それぞれ、フレーム2の係止部12に対応して、ガイド部及び突起部から構成される被係止部17が設けられている。
【0024】
次いで、バスバ4について説明する。
図4に示すように、バスバ4は、複数の部品接続部(符号省略)を有する本体部18と、本体部18の左方に配置される救援端子部19と、が一体に構成されている。救援端子部19は、電気接続箱1が搭載される車両のバッテリ上がり時に接続されるブースターケーブルとの接続部としての機能を有する。バスバ4は、ブロック3に組み付けられて保持された後、フレーム2の収容空間Sに収容される(
図1~
図3参照)。
【0025】
次いで、カバー5について説明する。
図5~
図6に示すように、カバー5は、略矩形柱状の本体部21を有している。本体部21の下端面には、上方に窪む溝部22が設けられている。カバー5が閉位置にあるとき、溝部22内に救援端子部19の上端部が配置される(
図7~
図8参照)。
【0026】
本体部21の後端部には、ブロック3における救援端子保持部16の軸受(図示省略)に軸支される軸部23が設けられている。なお、本実施形態に係るカバー5は、係止部25がフレーム2の被係止部14に係止されることで回動しないように構成されているが、ブロック3の軸受による軸部23の軸支は、一般的なものと同様に、回動自在な軸支である。
【0027】
本体部21の前端部には、ブロック3における救援端子保持部16の係止凹部(図示省略)に係止される係止凸部24が設けられている。係止凸部24は、カバー5が閉位置にあるとき、カバー5が容易に回動しないよう、即ち、開かないよう規制する機能を有する。
【0028】
本体部21の左端部の下端には、フレーム2の被係止部14に対応して、左方へ突出し前後方向に延びる係止部25が設けられている。係止部25は、フレーム2の被係止部14に係止されることで(
図7~
図8参照)、カバー5における閉位置から開位置への変位(即ち、カバー5の回動)を抑止・規制する機能を有する。
【0029】
以上、電気接続箱1を構成するフレーム2、ブロック3、バスバ4、及びカバー5について説明した。
図1~
図2に示す電気接続箱1を得るためには、バスバ4をブロック3に組み付けた後、バスバ4を保持したブロック3をフレーム2に組み付け、そして、カバー5をブロック3の救援端子保持部16に軸支させ且つカバー5の係止部25をフレーム2の被係止部14に係止させればよい。そして、フレーム2にアッパカバー及びロアカバーを組み付けることで、電気接続箱1が完成される。なお、電気接続箱1の製造工程の順番の前後はこれに限らない。また、フレーム2、ブロック3、及びバスバ4は、一体に構成されていてもよい。
【0030】
上述した電気接続箱1の製造方法は、車両に救援端子を設ける必要がない場合を例に説明した。一方、車両に救援端子を設ける必要がある場合、カバー5の代わりにカバー6(本発明の「第2カバー」に対応、
図9参照)を用いて、カバー6をブロック3の救援端子保持部16に軸支させればよい。なお、カバー5とカバー6との相違点は、カバー6には係止部25が設けられていない点のみである。
【0031】
このように、電気接続箱1が搭載される車両に救援端子を設ける必要がない場合には、カバー5が用いられ、救援端子を設ける必要がある場合には、カバー6が用いられる。換言すると、車両の仕様に合わせてカバー5又はカバー6を選択して、ブロック3の救援端子保持部16に軸支させればよい。
【0032】
<作用・効果>
本実施形態に係る電気接続箱1によれば、カバー5の係止部25がフレーム2の被係止部14に係止されることで、カバー5の回動が抑止される。これにより、救援端子を設ける必要がない電気接続箱1に対して、上述したような簡素な構造で救援端子部19を保護できる。一方、救援端子が必要な電気接続箱に対しては、係止部25が設けられていないカバー6を用いればよい。また、このように簡素な構造とすることで、複雑な形状の金型を必要とせず製造コストを削減できる。
【0033】
更に、本実施形態に係る電気接続箱1によれば、救援端子の要否に合わせた対応をカバー5,6の変更によって行えるため、フレーム2、ブロック3、及びバスバ4の標準化を図ることができ、従来電気接続箱に比べ、製造コストを削減できる。更に、救援端子を設ける必要がない場合における製造作業では、煩雑な作業を要求されることなく、カバー5の係止部25をフレーム2の被係止部14に単に係止させればよいため、従来電気接続箱に比べ、作業性に優れる。
【0034】
<他の形態>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0035】
ここで、上述した本発明に係る電気接続箱、及び、製造方法の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
救援端子部(19)を有する導通部材(バスバ4)と、
前記導通部材(バスバ4)を保持する保持部材(ブロック3)と、
前記保持部材(ブロック3)を収容する収容空間(S)を有する樹脂体(フレーム2)と、
前記保持部材(ブロック3)に軸支され、前記救援端子部(19)を覆うカバー(5)と、
を備えた電気接続箱(1)であって、
前記樹脂体(フレーム2)は、
前記カバー(5)の係止部(25)が係止されることで、前記カバー(5)における前記救援端子部(19)を覆う閉位置から前記救援端子部(19)を覆わない開位置への変位を抑止する、被係止部(14)を有する
電気接続箱(1)。
[2]
救援端子部(19)を有する導通部材(バスバ4)と、
前記導通部材(バスバ4)を保持する保持部材(ブロック3)と、
前記保持部材(ブロック3)を収容する収容空間(S)を有する樹脂体(フレーム2)と、
前記保持部材(ブロック3)に軸支可能な第1カバー(5)と、
を備えた電気接続箱(1)の製造方法であって、
前記樹脂体(フレーム2)は、
前記第1カバー(5)の係止部(25)が係止されて、前記第1カバー(5)における前記救援端子部(19)を覆う閉位置から前記救援端子部(19)を覆わない開位置への変位を抑止する、被係止部(14)を有し、
当該製造方法は、
前記保持部材(ブロック3)に軸支可能に構成され、前記係止部(25)を有さない第2カバー(6)を更に備え、
前記電気接続箱(1)が搭載される対象に合わせて、前記第1カバー(5)又は前記第2カバー(6)を前記保持部材(3)に軸支させる工程を含む、
製造方法。
【0036】
上記[1]の構成の電気接続箱によれば、カバーの係止部が樹脂体の被係止部に係止されることで、カバーにおける閉位置から開位置への変位が抑止される。これにより、救援端子を設ける必要がない電気接続箱に対して、上述したような簡素な構造で救援端子部を保護できる。また、このように簡素な構造とすることで、複雑な形状の金型を必要とせず製造コストを削減できる。
【0037】
上記[2]の構成の製造方法によれば、第1カバーの係止部が樹脂体の被係止部に係止されることで、第1カバーにおける閉位置から開位置への変位が抑止される。これにより、救援端子を設ける必要がない電気接続箱に対して、上述したような簡素な構造で救援端子部を保護できる。一方、救援端子が必要な電気接続箱に対しては、係止部が設けられていない第2カバーを用いればよい。また、このように簡素な構造とすることで、複雑な形状の金型を必要とせず製造コストを削減できる。
【符号の説明】
【0038】
1 電気接続箱
2 フレーム(樹脂体)
3 ブロック(保持部材)
4 バスバ(導通部材)
5 カバー(第1カバー)
6 カバー(第2カバー)
11 側壁部
12 係止部
13 救援端子収容部
14 被係止部
15 本体部
16 救援端子保持部
17 被係止部
18 本体部
19 救援端子部
21 本体部
22 溝部
23 軸部
24 係止凸部
25 係止部
S 収容空間