(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/22 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
F16K1/22 R
(21)【出願番号】P 2022181950
(22)【出願日】2022-11-14
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2021192372
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 武則
(72)【発明者】
【氏名】横山 弘明
(72)【発明者】
【氏名】浅野 佑太
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171784(JP,A)
【文献】特開平11-193710(JP,A)
【文献】特開平8-189328(JP,A)
【文献】特開2010-133345(JP,A)
【文献】特開2015-59624(JP,A)
【文献】実開昭62-179467(JP,U)
【文献】特開昭62-2074(JP,A)
【文献】特表2018-534467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる配管に配置される弁装置であって、
回転軸と、
弁体であって、当該弁体による前記配管の閉塞度合が相対的に大きい閉位置と、前記閉塞度合が相対的に小さい開位置と、の間で、前記回転軸を中心として回転変位可能に構成された弁体と、
前記弁体が前記閉位置に向かうように前記弁体を付勢する付勢部と、
を備え、
前記弁体は、当該弁体が前記閉位置にある場合に前記回転軸よりも前記流体の流れ方向の上流側となる位置に配置された上流壁を有しており、
また前記弁体における前記回転軸から離れた端部であって、前記弁体が前記閉位置から前記開位置に変位したときに前記流体の流れ方向の下流側に移動する端部を回動端部としたとき、前記弁体は、前記弁体が前記閉位置にある場合に前記回動端部が上流側に向かって突出している形状であ
り、
前記回動端部は、前記弁体が前記閉位置にある場合、前記配管の内部に位置する、弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載された弁装置において、
前記弁体における前記回動端部は、前記上流壁に位置しており、
前記上流壁における前記回動端部とは反対側の端部の側の部分は、前記弁体が前記閉位置にある場合に上流側を向く面が平面状に形成されている、弁装置。
【請求項3】
請求項2に記載された弁装置において、
前記回転軸は、前記配管の中心軸から径方向に間隔を空けた位置に配置されており、
前記上流壁は、前記弁体が閉位置にあるとき、前記中心軸を基準として前記回動端部と前記回転軸とが反対側に位置する、弁装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載された弁装置において、
前記回転軸は、前記配管に直接的または間接的に回転不能に固定されており、
前記付勢部は、弾性力により前記弁体を付勢するバネ部品であり、前記配管の内部に配置されており、一端が前記回転軸に対して連結され、かつ、他端が前記弁体に対して連結される、弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体が流れる配管に設置される弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気ガスの配管に設置される弁装置が知られている。一例として、特許文献1に開示された弁装置は、車両のエンジンからの排気ガスが流下する配管を開閉する弁体が、配管を貫通するように設けられる回転軸と一体に構成されている。そして、該回転軸における配管の外部に露出した部分には、リンクアームが設けられており、弁体は、リンクアームに接続されたバネにより、閉位置に向かって回転するように付勢される。ここでいう閉位置とは、弁装置の開度が最も小さくなる弁体の回転位置である。また別の一例として、特許文献2に開示された弁装置は、弁体の軸よりも下流側または上流側において通路を閉じるように構成されている。この弁装置は、外部の駆動源により弁体の回転角度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-79807号公報
【文献】特開2017-133665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のように、バネ等を用いて弁体を閉位置に向かって付勢する構成では、排気ガス流量が大きいほど弁装置の開度を大きくする目的で、弁体が閉位置に近いほど付勢力が小さくなるように構成される。そして、弁体が開位置に近づいて開度が大きくなるにつれてバネの変形が大きくなり、バネの付勢力が大きくなる。
【0005】
弁体が閉位置にある場合のように、排気ガスの流れ方向に対して弁体が直角に近い角度であれば、弁体は排気ガスから効率よく力を受けることができる。しかしながら、弁体が回転して流れ方向に対する傾斜角度が小さくなると、排気ガスから力を受けにくくなる。つまり、弁体が大きく傾斜して開度が大きくなると、バネによる付勢力は強く、排気ガスから受ける力の効率は小さくなるため、排気ガス流量による弁装置の開度の制御が難しいという問題がある。
【0006】
本開示の一態様においては、弁装置の開度が大きいときに流体から効率よく力を受けることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、流体が流れる配管に配置される弁装置であって、回転軸と、弁体と、付勢部と、を備える。弁体は、当該弁体による配管の閉塞度合が相対的に大きい閉位置と、閉塞度合が相対的に小さい開位置と、の間で、回転軸を中心として回転変位可能に構成される。付勢部は、弁体が閉位置に向かうように弁体を付勢する。弁体は、当該弁体が閉位置にある場合に回転軸よりも流体の流れ方向の上流側となる位置に配置された上流壁を有している。また弁体における回転軸から離れた端部であって、閉位置から開位置に変位したときに流体の流れ方向の下流側に移動する端部を回動端部としたとき、弁体は、当該弁体が閉位置にある場合に回動端部が上流側に向かって突出している形状である。
【0008】
このような構成であれば、弁体が閉位置にあるときは流体から受ける回転力が小さくなり、弁体が閉位置から開位置に向かって変位したときには、流体から効率よく力を受けることができ、開位置へ向かう回転力が大きくなる。よって、弁装置の開度が大きい状態を維持しやすくなり、流体の流量を良好に制御することができるようになる。
【0009】
上述した弁装置において、前記弁体における前記回動端部は、前記上流壁に位置していてもよい。また、上流壁における回動端部とは反対側の端部の側の部分は、弁体が閉位置にある場合に上流側を向く面が平面状に形成されていてもよい。このような構成では、弁体が閉位置にあるときに、流体から受ける、弁体を閉位置に向かって移動させる方向の回転力(すなわち、弁体を閉位置に維持しようとする回転力)を受けやすくすることができる。そのため、弁体が閉位置にあるときに、小さな流体の流量で弁体が開位置へ向かって回転変位してしまうことを抑制できる。
【0010】
また上述した弁装置において、回転軸は、配管の中心軸から径方向に間隔を空けた位置に配置されていてもよい。上流壁は、弁体が閉位置にあるとき、配管の中心軸を基準として回動端部と回転軸とが反対側に位置してもよい。このような構成であれば、上流壁が流体に押圧されたときに開位置に向かう力となる範囲が広くなる。そのため、上流壁が流体に押圧されたときに、閉位置から開位置へ向かう回転力を好適に生じさせることができる。
【0011】
また上述した弁装置において、回転軸は、配管に直接的または間接的に回転不能に固定されていてもよい。また、付勢部は、弾性力により弁体を付勢するバネ部品であり、配管の内部に配置されており、一端が回転軸に対して連結され、かつ、他端が弁体に対して連結されてもよい。このような構成であれば、付勢部を配管の内部に配置することができ、配管外部に付勢部を設置するためのスペースを設ける必要がなくなる。また、付勢部が回転軸と弁体とに連結されているため、弁体の近傍に付勢部が位置することとなり、配管内部においても小型化が可能となる。また、弁体の内部に付勢部を配置することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図2A-2Dは第1実施形態の弁装置の断面図であって、
図2Aは閉位置であり、
図2Bは30°回転した状態であり、
図2Cは60°回転した状態であり、
図2Dは開位置である。また
図2E-2Hは、第1実施形態の弁装置を上流側から見た図であり、
図2E-2Hがそれぞれ
図2A-2Dに対応する図である。
【
図3】
図3A及び
図3Bが、回動端部が上流側に沿っていることによる効果を説明する側面図である。
【
図4】
図4A-4Dが弁装置を上流側から見た図であり、
図4Aが比較例の弁装置において弁体の傾斜角が30°の場合であり、
図4Bが比較例の弁装置において弁体の傾斜角が60°の場合であり、
図4Cが第1実施形態の弁装置において弁体の傾斜角が30°の場合であり、
図4Dが第1実施形態の弁装置において弁体の傾斜角が60°の場合である。
【
図5】
図5A及び
図5Bが、上流壁が回転軸から上流側にオフセットしていることによる効果を説明する側面図である。
【
図8】
図8Aが第3実施形態の弁装置を示す斜視図であり、
図8Bが第3実施形態の弁装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0014】
[1.第1実施形態]
[1-1.全体構成]
第1実施形態の弁装置1は、
図1及び
図2A-2Hに示されるように、流体が流れる配管3に配置される弁装置である。本実施形態では、配管3は、車両のエンジンからの排気ガスが流れる排気管として用いられる。以下、流体の一例として排気ガスを用いて説明する。弁装置1は、排気管のどの位置に設けられてもよいが、例えば、車両の排気ガスの流路に搭載されたマフラの内側パイプに設けてもよい。配管3は、一例として、略直線状に延びる円筒状の部材である。以後、配管3における排気ガスの流れ方向に直交する平面による断面の略中心を通過する線を、中心軸3aと記載する。弁装置1は、配管3により構成される流路の開度を調整するように構成されており、回転軸11、上流壁13、支持体15、及び付勢部17を有する。また、上流壁13及び支持体15によって、弁体19が構成される。
【0015】
回転軸11は、配管3に固定される棒状の部材であり、弁体19の回転中心となる。回転軸11は、弁体19が回転軸11を中心として回転変位可能に構成されていれば、その具体的な構成は特に限定されない。回転軸11は、例えば
図2Hに示されるように、配管3の内部に配置され、配管3の壁面を貫通するように配置される。また、回転軸11は、
図1に示されるように、配管3の中心軸3aから径方向に間隔を空けた位置に配置されている。
【0016】
上流壁13は、配管3内部の流路の開度を調整する部材であり、
図2E-2Hに示されるように、略円板状の部材である。上流壁13は、弁体19において排気ガスが流れる方向の上流側の面をなす壁部材である。上流壁13は、回転軸11を中心として回転可能に設けられる。上流壁13の回転動作を
図2A-2Hを用いて説明する。
図2A-2Dは、配管3の中心軸3aを通過し、かつ回転軸11と直交する平面による断面図である。
図2E-2Hは、弁装置1を配管3の上流側から見た図である。
【0017】
図2Aは、弁体19が閉位置である場合を示す。閉位置とは、弁体19による配管3の閉塞度合が相対的に大きい位置である。ここでいう閉塞度合とは、排気ガスの流れにくさを示す程度である。本実施形態における閉位置は、弁体19が回転変位可能な範囲で最も排気ガスが流れにくい位置である。弁体19が
図2Aに示す閉位置のとき、
図2Eに示されるように、流路は上流壁13によりほぼ塞がれている。
【0018】
図2Bは、弁体19が回転して30°傾斜した位置にある場合を示す。ここでいう傾斜の角度は、回転軸11と直交する平面に弁体19を投影したときに(すなわち
図2Bに示される視点でみたときに)、排気ガスの流れ方向に直交する平面と、上流壁13の主たる面と、が為す角度Θである。ここでいう上流壁13の主たる面とは、後述する回動端部13aに突出(反り)が無いと仮定した場合の平面であってもよい。また、上流壁13を略平坦面とみなした場合のその面であってもよい。なお傾斜角度は、弁体19のおおよその傾斜状態を示唆する値である。
【0019】
弁体19が傾斜した状態では、
図2Fに示されるように、流路における排気ガスが移動可能な空間5が徐々に大きくなり、閉位置よりも排気ガスが流れやすくなる。なお、
図2Aの閉位置においては、傾斜角度は0°である。
【0020】
図2Cは、弁体19が回転して60°傾斜した位置にある場合を示す。このように傾斜した状態では、
図2Gに示されるように、空間5がより大きく、排気ガスがより良好に流れる。
【0021】
図2Dは、弁体19が開位置である場合を示す。開位置とは、上述した閉塞度合が相対的に小さい位置である。弁体19が開位置のとき、弁体19は90°傾斜している。このように傾斜した状態では、
図2Hに示されるように、空間5は最も大きくなり、すなわち開度が最も大きくなり、排気ガスが最もスムーズに弁装置1を通過する。
【0022】
弁体19は、閉位置と開位置との間で回転変位可能である。また、弁体19は、図示しないストッパにより、閉位置と開位置の間以外には変位しないように構成されている。
上流壁13は、
図1及び
図2Aに示されるように、弁体19が上述した閉位置にある場合に、回転軸11よりも流体の流れ方向の上流側となる位置に配置されている。より厳密には、上流壁13は回転軸11の回転中心よりも上流側に配置されている。以下、このように上流壁13が回転軸11よりも上流側に配置されることを、以下では、オフセットとも記載する。
【0023】
上流壁13における回転軸11から離れた端部であって、弁体19が閉位置から開位置に変位したときに流れ方向の下流側に移動する端部を回動端部13aとする。また回動端部13aは、弁体19のうち、排気ガスの流れ方向から見て、回転軸11を基準に2つの領域に分けたときに回転軸11から端部までの長さが長い方の領域の端部である。このとき、上流壁13は、弁体19が閉位置にある場合に、回動端部13aが上流側に向かって反った形状である。より詳細には、上流壁13における中心軸3aよりも回動端部13a側の部分は、回動端部13aに向かって緩やかに上流側に曲がっており、回動端部13aが最も上流側に位置する。また、回転軸11における回動端部13a側とは反対側の部分13bは、平板状である。すなわち、当該部分13bでは、弁体19が閉位置にある場合において上流側を向く面が平面状に形成されている。
【0024】
また上流壁13は、弁体19が閉位置にあるとき、中心軸3aを基準として回動端部13aと回転軸11とが反対側に位置するように構成される。
なお以下の説明において、弁体19が開位置から閉位置へ向かう回転方向を閉方向と記載し、閉位置から開位置へ向かう回転方向を開方向と記載する。閉位置へ向かうほど、弁装置1の開度は減少し、閉塞度合が上昇する。また以下の説明において、上流及び下流とは、排気ガスの流れ方向に関する上流及び下流である。
【0025】
支持体15は、閉位置において上流壁13の下流側となる面に固定される容器型の部材である。支持体15には回転軸11が固定されている。この支持体15を介して上流壁13は回転軸11に取り付けられる。
【0026】
付勢部17は、弁体19が閉位置に向かうように弁体19を付勢する。付勢部17は、弾性力により弁体19を付勢するバネ部品である。付勢部17は配管3の外部に配置されており、一端が配管3の側面等の固定部に連結され、他端が回転軸11に連結されている。付勢部17は弁体19が閉位置に向かうように回転軸11に回転力を加えている。
【0027】
[1-2.弁体の回転]
付勢部17は、弁体19の回転角度に関わらず自然長よりも引っ張られた状態となっており、当該バネ部品を縮小させる復元力を生じている。弁体19が閉位置に位置する際は、付勢部17の伸びが最小であり、復元力が最小となる。また、弁体19が開位置に近づくに従い、付勢部17の伸びが大きくなり、復元力が増加する。そのため、付勢部17の復元力は、弁体19を閉位置に向けて(換言すれば、閉方向に)回転させるトルクを生じさせる。また弁体19は、配管3を流れる排気ガスにより開方向に回転する。
【0028】
上述したように、回転軸11は中心軸3aから径方向に離れた位置に配置されている。そのため、配管3の中心軸3aを法線とする平面に上流壁13を投影すると、回動端部13a側の面積が大きくなる。その結果、排気ガスからの回転力を回動端部13a側が大きく受けることとなり、弁体19全体としては、回動端部13aが後方に向かうように回転力を受ける。その回転力が付勢部17の閉方向に向かう力よりも大きいときに、弁体19が開方向に開く。
【0029】
[1-3.弁体の形状による回転力の相違]
上流壁13は、閉位置において回転軸11よりも上流側にオフセットしており、また、回動端部13aが上流側に向かって突出している。言い換えると、回動端部13aが上流側に向かって反っている。この構成による回転力の差異を説明する。
【0030】
図3A、3Bでは、まず、回動端部13aの反りによる差異を説明する。ここでは、比較対象として、反りを無くして平面状にした比較例の上流壁31を併せて示す。
図3Aに示されるように、閉位置においては、上流壁13の方が上流壁31よりも配管3の流路を閉塞する割合が小さい。よって、閉位置においては、上流壁13の方が排気ガスから受ける力が小さい。
【0031】
一方、
図3Bに示されるように、開方向に向かって回転をすると、回動端部13aは上流壁31の端部よりも配管3の壁面に近い位置となり、上流壁13の方が上流壁31よりも流路を閉塞する割合が大きくなる。よって、開方向に移動すると、上流壁13の方が排気ガスから受ける力が大きくなる。
図4A-4Dに示すように、傾斜角が30°の場合、及び、60°の場合のいずれも、上流壁13による流路の閉塞割合が上流壁31よりも大きい。
【0032】
なお、上流壁13における排気ガスが当接する面が流れ方向(中心軸3a方向)に対して垂直に近いほど、排気ガスの押圧力が効率的に回転力となる。
図3Aでは上流壁13の方が上流壁31よりも排気ガスから受ける力が小さく、
図3Bでは上流壁13の方が上流壁31よりも排気ガスから受ける力が大きい。このことからも、閉位置においては上流壁13の方が排気ガスから受ける力が小さく、回転することで上流壁13の方が排気ガスから受ける力が大きくなる。
【0033】
次に、
図5A、5Bでは、上流壁13のオフセットによる効果を説明する。ここでは、比較対象として、形状は上流壁13と同じであるが、回転軸11からオフセットしていない比較例の上流壁41を併せて示す。
図5Aと
図5Bを参照すると、回転軸11から上流壁の同じ位置(図中の上流壁に示す矢印の位置)までの距離を比較すると、上流壁13がオフセットしていることにより、上流壁13に係る距離L1の方が、上流壁41に係る距離L2よりも大きくなる。つまり、排気ガスから押圧力が加わった場合には、上流壁13の方が、力点から支点(回転軸11)までの距離が大きくなることから、排気ガスから力を受けて弁体に大きなトルクを与えることができる。その結果、弁体19が開方向に回転しやすくなる。
【0034】
また、各上流壁のうち、回転軸11を基準として回動端部13aの反対側に位置する領域を第1領域51とし、回動端部13a側に位置する領域を第2領域53とする。
図5Aに示されるように、閉状態にあるときは、第1領域51と第2領域53との比率は、上流壁13と上流壁41との間で差はない。しかし、
図5Bに示されるように、開方向に向かって回転した状態では、上流壁13における第1領域51は縮小して第2領域53は大きくなる。ここで、第1領域51は排気ガスによって閉方向への回転力を生じさせる部分であり、第2領域53は開方向への回転力を生じさせる部分である。そのため、上流壁13では、開方向に変位したときに、より広い範囲において、排気ガスから受ける力を開方向への回転力とすることができる。
【0035】
なお、
図5A、5Bを用いて説明した、上流壁が受ける回転力の差異は、上流壁41が上流壁31のように平板状であっても同様に発生する。
以上説明した理由によって、上流壁13は、閉位置においては排気ガスから受ける回転力が小さくなり、開方向に向けて回転変位した状態では、排気ガスから受ける回転力が大きくなる。
【0036】
[1-4.効果]
(1a)第1実施形態の弁装置1における上流壁13は、弁体19が閉位置にある場合に、回転軸11による回転中心よりも上流側となる位置に配置されており、かつ、回動端部13aが上流側に向かって突出している形状である。そのため、弁体19が閉位置にあるときは排気ガスから受ける回転力が小さくなり、弁体19が閉位置から開位置に向かって変位したときには、排気ガスから効率よく力を受けることができる。よって、弁装置1の開度が大きい状態を維持しやすくなり、排気ガス流量を良好に制御することができるようになる。
【0037】
(1b)弁装置1では、上流壁13における回動端部13aとは反対側の端部の側の部分13bは、上流側を向く面が平面状に形成されている。そのため、弁体19が閉位置にあるときに、上述した部分が中心軸3aと直交することになるため、排気ガスによる圧力を効率よく受けることができる。その結果、弁体19が閉位置にあるときに、小さな排気ガス流量で弁体19が開位置へ向かって回転変位してしまうことを抑制できる。
【0038】
(1c)弁装置1では、回転軸11が配管3の中心軸3aから径方向に間隔を空けた位置に配置されている。さらに上流壁13は、弁体19が閉位置にあるとき、回動端部13aが中心軸3aを基準として回転軸11と反対側の位置に配置される。そのため、排気ガスによる力を確実に開方向への回転力とすることができる。
【0039】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0040】
第1実施形態では、配管3の内部に弁装置1が設けられる構成を例示した。一方、第2実施形態では、
図6に示されるように、弁装置101が、配管3の内部における配管3の端部3bの近傍に配置されている。
【0041】
弁装置101では、上流壁13は、弁体19が閉位置にあるときは上流壁13の全体が配管3の内部に位置するが、開位置にあるときは上流壁13の一部が配管3の端部3bよりも外部に位置する。このような構成であれば、配管3の端部3bにおいて弁装置101の開度を調整し、排気ガス流量を制御することができる。
【0042】
[3.第3実施形態]
[3-1.弁装置の構成]
第1実施形態では、配管3の内部に弁装置1が設けられる構成を例示した。第3実施形態では、配管3の端部全体を塞ぐように配置される弁装置201を説明する。
【0043】
図7A,7B及び
図8A,8Bに示されるように、弁装置201は、弁座211、弁体213、回転軸217、バネ219などを備える。弁座211は、配管3に取り付けられ、排気ガスが通過する開口を有する。弁体213は、一方の端部に回転軸217が連結されている。弁体213は、回転軸217を中心に回転変位可能であり、弁座211に接近したときに上述した弁座211の開口を閉塞する。
【0044】
弁体213は、弁体213による配管3の閉塞度合が相対的に大きい閉位置(
図7A参照)と、上記閉塞度合が相対的に小さい開位置(
図7B,
図8A参照)と、の間で、回転軸217を中心として回転変位可能に構成されている。
【0045】
弁体213は、弁座211の開口を閉塞する部分である上流壁221と、回転軸217が設けられる位置とは逆の端部に配置されるガス受け223と、を備える。上流壁221は、弁体213が閉位置にある場合に、回転軸217よりも流体の流れ方向の上流側となる位置に配置された部分である。ガス受け223は、弁体213における回転軸217とは反対の側に設けられる。このガス受け223は、弁体213が閉位置にある場合に、回転軸217とは反対の側の端部が上流側に向かって反った形状である。ガス受け223が設けられる端部は、弁体213が閉位置から開位置に変位したときに流体の流れ方向の下流側に移動する回動端部である。
バネ219は回転軸217に巻きつけるように配置されており、弁体213を弁座211の開口を閉じる位置(即ち、閉位置)に向かうように付勢する。
【0046】
[3-2.効果]
このような弁装置201では、弁体213が閉位置にある場合に上流壁221が回転軸217による回転中心よりも上流側となる位置に配置されている。また、ガス受け223の回動端部が上流側に向かって突出している。よって、上述した弁装置1と同様に、弁体213が閉位置から開位置に向かって変位したときに、排気ガスから効率よく力を受けることができる。よって、弁装置201の開度が大きい状態を維持しやすくなり、より排圧を低減することができる。
【0047】
また、
図8Bに矢印で示されるように、配管3から排出される排気ガスの大部分は、ガス受け223側に向かって流れる。そのため、ガス受け223にて排気ガスの圧力を強く受けることができ、弁体213が排気ガスから受ける開方向への回転力を大きくすることができる。
【0048】
[4.他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0049】
(4a)本開示の弁体は、少なくとも、回転軸からオフセットした上流壁と、上流側に突出した(反った)回動端部と、を有していれば、その具体的な形状は特に限定されない。例えば、弁体は内部が中空の形状であってもよい。その場合、
図9に示される弁装置301のように、弁体311が一部品として形成されてもよい。この構成において、弁体311が閉位置にあるときに上流側に位置する上流壁321における回動端部321aは上流側に向かって沿った形状であってもよい。この弁体311は、弁装置1の弁体19と同様の機能を奏することができる。
【0050】
(4b)第1実施形態では、付勢部17が配管3の外部に配置される構成を例示した。しかし、付勢部は配管3の内部に配置されていてもよい。また
図10に示される弁装置401のように、付勢部417が中空の弁体413の内部に配置されてもよい。弁体413は、上流壁415と、回動端部415aと、を有する。弁装置401において、付勢部417は、コイルバネである。また付勢部417は、一端が回転軸411に対して連結され、他端が弁体413に連結される。このような付勢部417は、弁体413の回動に伴って回転変位する。なお、弁装置401では、回転軸411は配管3に対して回転不能に固定されている。回転軸411は、配管3に対して直接的に固定されていてもよいし、1つ以上の部品を介して間接的に固定されていてもよい。
【0051】
(4c)上流壁は、回転軸11による回転中心よりも流体の流れ方向の上流側に配置されていれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、第1実施形態では、上流壁13における回動端部13aとは反対側の端部の側の部分13bの上流面が平面状である構成を例示したが、曲面状であってもよい。
【0052】
(4d)上記第1から第3実施形態では、排気流路の中心軸3aから間隔を開けた位置に回転軸が配置される構成を例示したが、回転軸は中心軸3aと交差するように配置されていてもよい。その場合、排気ガスが流れたときに、閉位置にある弁体に開方向に向かうトルクが生じるように、弁体の形状や空間5の設定などを調整するとよい。
【0053】
(4e)上記第1実施形態及び第2実施形態では、回動端部13aは上流壁において滑らかに上流側に向かって反っている構成を例示した。しかしながら、回動端部は弁体が閉位置のときに上流側に向かって突出していれば、具体的な形状は特に限定されない。例えば、
図11に示される弁装置501の弁体511のように、上流壁513の一部分が屈曲することで、回動端部513aが上流側に反っている構成であってもよい。
【0054】
(4f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,101,201,301,401,501…弁装置、3…配管、3a…中心軸、3b…端部、5…空間、11,217,411…回転軸、13,31,41,221,321,415,513…上流壁、13a,321a,415a,513a…回動端部、15…支持体、17,417…付勢部、19,213,311,413,511…弁体、51…第1領域、53…第2領域、211…弁座、219…バネ、223…ガス受け。