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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】ロボット制御システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/02 20060101AFI20240702BHJP
   B25J 13/06 20060101ALI20240702BHJP
   B25J 9/22 20060101ALI20240702BHJP
   G05B 19/409 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B25J13/02
B25J13/06
B25J9/22 A
G05B19/409 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022537999
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2021026955
(87)【国際公開番号】W WO2022019263
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020125422
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 尚
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 豪
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-173849(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190193(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットを制御するロボット制御装置と、
該ロボット制御装置に接続され前記ロボットを手動操作するための第1操作装置と、
前記ロボット制御装置に接続され前記ロボットを手動操作するための第2操作装置とを備え、
前記第1操作装置および前記第2操作装置の各々が、前記ロボットの操作権を要求する要求状態と前記操作権を要求しない非要求状態との間で切り替え可能である要求スイッチを有し、該要求スイッチは、操作者の操作によって前記要求状態と前記非要求状態との間で切り替えられ、
前記ロボット制御装置は、
前記第1操作装置および前記第2操作装置の一方の前記要求スイッチが前記要求状態であり他方の前記要求スイッチが前記非要求状態である状態となったときにのみ前記操作権の前記一方への付与を開始し、
前記一方に前記操作権を付与している間、前記一方による前記ロボットの操作を許可するとともに前記他方による前記ロボットの操作を禁止し、
前記一方の前記要求スイッチが前記非要求状態に切り替えられるまで前記操作権を前記一方に付与するロボット制御システム。
【請求項2】
前記ロボット制御装置が、工作機械を制御する工作機械制御装置と通信可能に接続され、
前記第1操作装置が、前記ロボットのみを操作可能であるロボット操作盤であり、
前記第2操作装置が、前記ロボットおよび前記工作機械を操作可能である回転ダイヤル式操作装置である請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記第1操作装置が、該第1操作装置に前記操作権が付与されているか否かを操作者に通知する通知部を備える請求項1または請求項2に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記第2操作装置が、該第2操作装置に前記操作権が付与されているか否かを操作者に通知する通知部を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のロボット制御システム。
【請求項5】
前記通知部が、ランプまたは操作画面である請求項3または請求項4に記載のロボット制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械またはロボット等の産業機械の制御装置に接続され、産業機械を手動操作する操作装置が知られている(例えば、特許文献1~4参照。)。特許文献1,2には、工作機械用の回転ダイヤル式の操作装置が記載され、特許文献3,4には、ロボット用のティーチングペンダントが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/190193号
【文献】特開2014-038540号公報
【文献】特開2013-202732号公報
【文献】特開2007-152541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ロボット制御装置は、ティーチングペンダントを備える。ロボット制御装置に他の操作装置、例えば回転ダイヤル式の操作装置を追加した場合、二人の操作者が操作装置をそれぞれ使用してロボットを同時に操作する状況が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、ロボットを制御するロボット制御装置と、該ロボット制御装置に接続され前記ロボットを手動操作するための第1操作装置と、前記ロボット制御装置に接続され前記ロボットを手動操作するための第2操作装置とを備え、前記第1操作装置および前記第2操作装置の各々が、前記ロボットの操作権を要求する要求状態と前記操作権を要求しない非要求状態との間で切り替え可能である要求スイッチを有し、該要求スイッチは、操作者の操作によって前記要求状態と前記非要求状態との間で切り替えられ、前記ロボット制御装置は、前記第1操作装置および前記第2操作装置の一方の前記要求スイッチが前記要求状態であり他方の前記要求スイッチが前記非要求状態である状態となったときにのみ前記操作権の前記一方への付与を開始し、前記一方に前記操作権を付与している間、前記一方による前記ロボットの操作を許可するとともに前記他方による前記ロボットの操作を禁止し、前記一方の前記要求スイッチが前記非要求状態に切り替えられるまで前記操作権を前記一方に付与するロボット制御システムである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ロボット、工作機械、工作機械制御装置およびロボット制御システムを備えるシステムの全体構成図である。
図2】一使用例におけるシステムのブロック図である。
図3】ロボット操作盤の正面図である。
図4】回転ダイヤル式操作装置の正面図である。
図5】回転ダイヤル式操作装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、一実施形態に係るロボット制御システムについて図面を参照して説明する。
図1および図2に示されるように、ロボット制御システム1は、相互に協調して動作するロボット2および工作機械3を制御する制御システムの一部である。制御システムは、工作機械3を制御する工作機械制御装置4と、ロボット制御システム1とを備える。ロボット制御システム1は、ロボット2を制御するロボット制御装置5と、ロボット2または工作機械3を手動操作するための2つの操作装置6,7とを備える。
【0008】
ロボット2は、工作機械3の外部に配置され、駆動部2aの作動によって作業する任意の種類の産業用ロボットである。例えば、ロボット2は垂直多関節ロボットであり、駆動部2aは各関節に設けられたサーボモータである。例えば、ロボット2は、工作機械3にワークを供給し工作機械3からワークを取り出す。工作機械3は、駆動部3aの作動によってワークを加工する。駆動部3aは、例えば、工具を回転させる回転モータおよび工具とワークとを相対移動させる送りモータである。
2つの制御装置4,5は、Ethernet(登録商標)のような通信ネットワークによって相互に通信可能に接続され、FL-netのような通信プロトコルを使用して信号を相互に送受信する。
【0009】
第1操作装置6は、ロボット2のみを操作可能である可搬式のロボット操作盤であり、ロボット制御装置5に接続される。
第2操作装置7は、ロボット2および工作機械3を操作可能である可搬式の回転ダイヤル式操作装置である。制御装置4,5は、回転ダイヤル式操作装置7用のコネクタ4a,5aをそれぞれ有し、回転ダイヤル式操作装置7は、2つの制御装置4,5のいずれか一方に接続される。すなわち、回転ダイヤル式操作装置7は、ロボット制御装置5に直接接続されるか、または、工作機械制御装置4および通信ネットワークを経由してロボット制御装置5に間接的に接続される。
【0010】
制御システムは、回転ダイヤル式操作装置7の操作対象を設定する操作対象設定部8,9をさらに備える。操作対象設定部8,9は、操作者によって操作され、操作者の操作に従って操作対象をロボット2および工作機械3に択一的に設定する。
操作対象設定部8,9の例は、制御装置4,5の操作盤の設定画面に表示されたタッチボタン、または、操作盤に設けられたハードウェアキーである。操作対象設定部8は、ロボット操作盤6に設けられていてもよい。操作対象設定部8,9の他の例は、制御装置4,5に接続された外部装置、例えばシーケンサ(PLC:programmable logic controller)または切替スイッチであり、設定されている操作対象を示す信号が外部装置から制御装置4,5に外部入力されてもよい。
【0011】
操作対象は、2つの操作対象設定部8,9のいずれか一方によって設定される。例えば、回転ダイヤル式操作装置7がロボット制御装置5に接続されているときには、ロボット制御装置5側の操作対象設定部8のみが機能し、回転ダイヤル式操作装置7が工作機械制御装置4に接続されているときには、工作機械制御装置4側の操作対象設定部9のみが機能するようになっている。
【0012】
図3に示されるように、ロボット操作盤6は、操作者の手に把持される筐体6aと、筐体6aに設けられた要求スイッチ6bとを備える。要求スイッチ6bは、ロボット2の操作権を要求する要求状態と操作権を要求しない非要求状態との間で切り替え可能である。例えば、要求スイッチ6bは、ONのときに要求状態であり、OFFのときに非要求状態である。筐体6aには、操作画面6c、複数の操作キー6d、複数の数字キー6e、非常停止スイッチ6fおよびイネーブルスイッチ(図示略)等も設けられている。イネーブルスイッチが押下されているときのみ、ロボット操作盤6による操作対象の操作が有効になる。ロボット操作盤6は、スイッチ6b,6fの状態およびキー6d,6eの操作等を示す操作信号を発生し、操作信号をロボット制御装置5に入力する。
【0013】
図4および図5に示されるように、回転ダイヤル式操作装置7は、操作者の手に把持される筐体7aと、筐体7aに設けられたパルスハンドル7bおよび複数のスイッチ7c,7d,7e,7fとを備える。
パルスハンドル7bは、両方向に回転可能であり操作者によって回転操作される回転ダイヤルである。回転ダイヤル式操作装置7は、手動パルス発生装置であり、パルスハンドル7bの回転量および回転方向に応じたパルスを筐体7a内のパルス発生部(図示略)によって発生する。回転量が大きい程、発生するパルスの数が多くなる。ロボット2または工作機械3の所定の操作部位の動作はパルスに応じて制御され、パルスハンドル7bの回転量、回転速度および回転方向によって操作部位の動作量、動作速度および動作方向がそれぞれ指定される。工作機械3の操作部位は、例えば、ツールの先端であり、ロボット2の操作部位は、例えば、アームの先端に接続されたツールの先端である。
【0014】
軸選択スイッチ7cは、操作部位を動作させる軸を複数の軸の間で切り替えるものである。一例において、軸は、相互に直交する3つの直動軸および3つの回転軸の合計6個の軸の間で切り替え可能である。操作部位は、選択されている直動軸に沿う方向に移動し、または、選択されている回転軸回りに回転する。
【0015】
倍率選択スイッチ7dは、1パルス当たりの操作部位の動作量の倍率を切り替えるスイッチである。一例において、倍率は、OFF(すなわち、0倍)、1倍、10倍、100倍および1000倍の間で切り替えることができる。パルスハンドル7bの回転によって発生したパルスは、倍率選択スイッチ7dによって設定されている倍率で増倍される。したがって、倍率が大きい程、パルスハンドル7bの単位回転量当たりの操作部位の動作量は大きくなる。倍率がOFFに設定されているとき、パルスハンドル7bの回転操作に関わらず操作対象を操作することができない。
【0016】
倍率選択スイッチ7dは、操作権を要求する要求状態と操作権を要求しない非要求状態との間で切り替え可能である要求スイッチでもある。すなわち、倍率選択スイッチ7dは、倍率がOFFのときに非要求状態であり、倍率がOFF以外のときに要求状態である。
【0017】
イネーブルスイッチ7eは、回転ダイヤル式操作装置7による操作対象の操作の有効と無効とを切り替えるためのものである。イネーブルスイッチ7eは、3ポジションスイッチのような押しボタン式スイッチであり、筐体7aを把持する手によって押下される位置に設けられている。イネーブルスイッチ7eが押下されているときのみ、回転ダイヤル式操作装置7による操作対象の操作が有効になる。
非常停止スイッチ7fは、操作対象を停止させるための非常停止信号を発生する。
【0018】
回転ダイヤル式操作装置7は、パルスハンドル7bの回転によって発生したパルスと、スイッチ7c,7d,7e,7fの状態を示す信号とを含む操作信号を発生し、操作信号を回転ダイヤル式操作装置7が接続されている制御装置4または5に入力する。
【0019】
図2に示されるように、ロボット制御装置5は、受信部51a,51bと、信号処理部52と、操作権設定部53と、目標位置算出部54と、駆動指令変換部55と、送信部56とを備える。ロボット制御装置5は、プロセッサおよびメモリを備え、信号処理部52、操作権設定部53、目標位置算出部54および駆動指令変換部55は、プロセッサによって実現される。
【0020】
信号処理部52は、回転ダイヤル式操作装置7からコネクタ5aおよび受信部51aを経由して操作信号を受信し、操作対象設定部8から設定されている操作対象の情報を受信し、操作信号を設定されている操作対象に応じて操作権設定部53および送信部56のいずれかへ転送する。具体的には、信号処理部52は、操作対象がロボット2に設定されているときには操作信号を操作権設定部53に転送し、操作対象が工作機械3に設定されているときには操作信号を送信部56に転送する。送信部56は、転送された操作信号を、通信ネットワークを経由して一定周期毎に工作機械制御装置4の受信部41へ送信する。
また、信号処理部52は、工作機械制御装置4から受信部51aを経由して操作信号を受信し、操作信号を操作権設定部53に転送する。
【0021】
操作権設定部53は、ロボット操作盤6から受信部51bを経由して操作信号を受信し、回転ダイヤル式操作装置7の操作信号を信号処理部52から受信する。各操作信号には、要求スイッチ6bまたは7dの状態を示す信号も含まれる。操作権設定部53は、2つの要求スイッチ6b,7dの状態に基づいてロボット2の操作権をロボット操作盤6および回転ダイヤル式操作装置7のいずれか一方へ付与し、要求スイッチ6b,7dの状態の変化に応じて操作権をロボット操作盤6と回転ダイヤル式操作装置7との間で切り替える。
【0022】
具体的には、操作権設定部53は、要求スイッチ6bが要求状態であり要求スイッチ7dが非要求状態である状態となったときにのみ、操作権のロボット操作盤6への付与を開始する。また、操作権設定部53は、要求スイッチ6bが非要求状態であり要求スイッチ7dが要求状態である状態となったときにのみ、操作権の回転ダイヤル式操作装置7への付与を開始する。
【0023】
操作権設定部53は、ロボット操作盤6および回転ダイヤル式操作装置7の一方に操作権を付与している間、一方によるロボット2の操作を許可するとともに他方によるロボット2の操作を禁止する。例えば、操作権設定部53は、ロボット操作盤6および回転ダイヤル式操作装置7の内、操作権が付与されている一方のみから操作信号を受け付け、受け付けた操作信号を目標位置算出部54に送信する。
【0024】
操作権設定部53は、操作装置6,7の一方に操作権を一度付与すると、操作装置6,7の他方の要求スイッチの状態の変化に関わらず、操作装置6,7の一方の要求スイッチが非要求状態に切り替えられるまで操作権を一方に付与し続ける。すなわち、ロボット操作盤6に操作権が付与されている期間中に要求スイッチ7dが要求状態に切り替えられたとしても、操作権は回転ダイヤル式操作装置7に移ることなくロボット操作盤6に付与し続けられ、ロボット操作盤6によるロボット2の操作が許可され続ける。同様に、回転ダイヤル式操作装置7に操作権が付与されている期間中に要求スイッチ6bが要求状態に切り替えられたとしても、操作権はロボット操作盤6に移ることなく回転ダイヤル式操作装置7に付与し続けられ、回転ダイヤル式操作装置7によるロボット2の操作が許可され続ける。
【0025】
目標位置算出部54は、操作信号に基づき、ロボット2の操作部位の目標位置を算出する。具体的には、ロボット2の操作部位の1パルス当たりの動作量が軸毎に予め設定されている。目標位置算出部54は、パルス発生部が発生させたパルスの数を所定時間間隔でサンプリングし、サンプリングされたパルスの数に倍率選択スイッチ7dによって設定されている倍率を乗算することによって、パルス数を算出する。目標位置算出部54は、軸選択スイッチ7cによって選択されている直動軸に沿ってまたは回転軸回りに、算出されたパルス数に対応する動作量だけ操作部位を現在位置から動作させた場合の目標位置を算出する。
【0026】
駆動指令変換部55は、目標位置算出部54によって算出された目標位置に基づき、操作部位を駆動部2aによって目標位置へ動作させるための駆動指令信号を算出し、駆動指令信号を駆動部2aへ送信する。駆動部2aが駆動指令信号に従って動作することによって、操作部位は、選択されている直動軸に沿ってまたは回転軸回りに、パルスハンドル7bの回転量および回転方向に従って、目標位置へ動作する。
【0027】
図2に示されるように、工作機械制御装置4は、受信部41と、信号処理部42と、目標位置算出部43と、駆動指令変換部44と、送信部45とを備える。工作機械制御装置4は、プロセッサおよび記憶装置を備え、信号処理部42、目標位置算出部43および駆動指令変換部44は、プロセッサによって実現される。
【0028】
信号処理部42は、コネクタ4aおよび受信部41を経由して回転ダイヤル式操作装置7から受信した操作信号を、操作対象設定部9によって設定されている操作対象に応じて目標位置算出部43および送信部45のいずれかへ転送する。具体的には、信号処理部42は、操作対象が工作機械3に設定されているときには操作信号を目標位置算出部43に転送し、操作対象がロボット2に設定されているときには操作信号を送信部45に転送する。送信部45は、通信ネットワークによってロボット制御装置5の受信部51aと接続されており、転送された操作信号を一定周期毎に受信部51aへ送信する。
また、信号処理部42は、受信部41を経由してロボット制御装置5から受信した操作信号を目標位置算出部43に転送する。
【0029】
目標位置算出部43は、操作信号に基づき、工作機械3の操作部位の目標位置を算出する。具体的には、工作機械3の操作部位の1パルス当たりの動作量が軸毎に予め設定されている。目標位置算出部43は、パルス発生部が発生させたパルスの数を所定時間間隔でサンプリングし、サンプリングされたパルスの数に倍率選択スイッチ7dによって設定されている倍率を乗算することによって、パルス数を算出する。目標位置算出部43は、軸選択スイッチ7cによって選択されている直動軸に沿ってまたは回転軸回りに、算出されたパルス数に対応する動作量だけ操作部位を現在位置から動作させた場合の目標位置を算出する。
【0030】
駆動指令変換部44は、目標位置算出部43によって算出された目標位置に基づき、操作部位を駆動部3aによって目標位置へ動作させるための駆動指令信号を算出し、駆動指令信号を駆動部3aへ送信する。駆動部3aが駆動指令信号に従って作動することによって、操作部位は、選択されている直動軸に沿ってまたは回転軸回りに、パルスハンドル7bの回転量および回転方向に従って、目標位置へ動作する。
【0031】
次に、ロボット制御システム1および制御システムの作用について説明する。
ロボット制御装置5に接続されている回転ダイヤル式操作装置7を使用してロボット2をジョグ操作したいとき、操作者は、ロボット操作盤6の要求スイッチ6bを非要求状態に切り替え、回転ダイヤル式操作装置7の要求スイッチ7dを要求状態であるOFF以外の位置に切り替える。ロボット操作盤6および回転ダイヤル式操作装置7からロボット制御装置5に要求スイッチ6b,7dの状態を示す操作信号が送信され、操作権設定部53によって回転ダイヤル式操作装置7に操作権が付与される。
【0032】
次に、操作者は、操作対象設定部8を操作することによって操作対象をロボット2に設定し、スイッチ7c,7dの操作によって所望の軸および所望の倍率を選択し、筐体7aを把持する手でイネーブルスイッチ7eを押下する。選択された操作対象、倍率および軸とイネーブルスイッチ7eの押下とを示す操作信号が、回転ダイヤル式操作装置7からロボット制御装置5へ送信される。
次に、操作者は、パルスハンドル7bを所望の方向に所望の回転量だけ回転させる。パルスハンドル7bの回転によって発生したパルスを含む操作信号が、回転ダイヤル式操作装置7からロボット制御装置5へ送信される。
【0033】
ロボット制御装置5において、受信部51aから信号処理部52に操作信号が入力される。操作対象がロボット2に設定され操作権が回転ダイヤル式操作装置7に付与されているので、操作信号は信号処理部52から操作権設定部53へ転送され、さらに目標位置算出部54へ転送される。そして、目標位置算出部54において、操作信号に基づいてロボット2の操作部位の目標位置が算出され、駆動指令変換部55において、ロボット2の操作部位を目標位置へ動作させるための駆動指令信号が算出される。駆動指令信号は、ロボット制御装置5からロボット2の駆動部2aに送信される。駆動部2aが駆動指令信号に従って作動することによって、ロボット2の操作部位は、選択されている直動軸に沿う方向に目標位置まで移動するか、または、選択されている回転軸回りに目標位置まで回転する。
【0034】
ここで、もし、ロボット操作盤6が操作されロボット操作盤6からロボット制御装置5に操作信号が入力されたとしても、ロボット操作盤6によるロボット2の操作が操作権設定部53によって禁止されているので、ロボット2がロボット操作盤6の操作に従って動作することはない。
他の操作者がロボット操作盤6を使用してロボット2を操作したいとき、他の操作者は、要求スイッチ6bを要求状態に切り替え、要求スイッチ7dが非要求状態に切り替えられるのを待つ。要求スイッチ7dが非要求状態に切り替えられたとき、操作権が回転ダイヤル式操作装置7からロボット操作盤6へ移行し、ロボット操作盤6によるロボット2の操作が可能となる。
【0035】
工作機械3を手動でジョグ操作したいとき、操作者は、操作対象設定部8を操作することによって操作対象を工作機械3に設定し、続いて、ロボット2のジョグ操作のときと同様に、スイッチ7c,7dの操作によって所望の軸および所望の倍率を選択し、筐体7aを把持する手でイネーブルスイッチ7eを押下し、パルスハンドル7bを所望の方向に所望の回転量だけ回転させる。これにより、操作信号が回転ダイヤル式操作装置7からロボット制御装置5へ送信される。
【0036】
ロボット制御装置5において、受信部51aから信号処理部52に操作信号が入力される。操作対象が工作機械3に設定されているので、操作信号は信号処理部52から送信部56へ転送され、送信部56から工作機械制御装置4へ送信される。工作機械制御装置4において、操作信号は、受信部41から信号処理部42を経由して目標位置算出部43へ転送される。そして、目標位置算出部43において、操作信号に基づいて工作機械3の操作部位の目標位置が算出され、駆動指令変換部44において、工作機械3の操作部位を目標位置へ動作させるための駆動指令信号が算出される。駆動指令信号は、工作機械制御装置4から工作機械3の駆動部3aへ送信される。駆動部3aが駆動指令信号に従って作動することによって、工作機械3の操作部位は、選択されている直動軸に沿う方向に目標位置まで移動するか、または、選択されている回転軸回りに目標位置まで回転する。
【0037】
ロボット操作盤6を使用してロボット2をジョグ操作したいとき、操作者は、回転ダイヤル式操作装置7の要求スイッチ7dを非要求状態であるOFFに切り替え、ロボット操作盤6の要求スイッチ6bを要求状態に切り替える。ロボット操作盤6および回転ダイヤル式操作装置7からロボット制御装置5に要求スイッチ6b,7dの状態を示す操作信号が送信され、操作権設定部53によって、操作権が回転ダイヤル式操作装置7からロボット操作盤6に切り替えられる。
次に、操作者は、イネーブルスイッチを押下しながら操作キー6dまたは数字キー6eを押下することによって、ロボット2をジョグ操作したり制御パラメータを設定したりすることができる。
【0038】
ここで、もし、回転ダイヤル式操作装置7が操作され回転ダイヤル式操作装置7からロボット制御装置5に操作信号が入力されたとしても、回転ダイヤル式操作装置7によるロボット2の操作が操作権設定部53によって禁止されているので、ロボット2が回転ダイヤル式操作装置7の操作に従って動作することはない。
他の操作者が回転ダイヤル式操作装置7を使用してロボット2を操作したいとき、他の操作者は、要求スイッチ7dを要求状態に切り替え、要求スイッチ6bが非要求状態に切り替えられるのを待つ。要求スイッチ6bが非要求状態に切り替えられたとき、操作権がロボット操作盤6から回転ダイヤル式操作装置7へ移行し、回転ダイヤル式操作装置7によるロボット2の操作が可能となる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、操作権が回転ダイヤル式操作装置7に一度付与されると、要求スイッチ7dが非要求状態に切り替えられるまで回転ダイヤル式操作装置7は操作権を保有し続ける。回転ダイヤル式操作装置7が操作権を保有している間、ロボット操作盤6によるロボット2の操作はロボット制御装置5によって禁止される。また、要求スイッチ6bが要求状態に切り替えられたりロボット操作盤6のイネーブルスイッチが押下されたりしたとしても、回転ダイヤル式操作装置7は、操作権をロボット操作盤6に奪われたりロボット2の操作が不能になったりすることはない。したがって、操作者は、要求スイッチ7dを非要求状態に切り替えるまで、回転ダイヤル式操作装置7を使用してロボット2を独占的に操作し続けることができる。
【0040】
同様に、操作権がロボット操作盤6に一度付与されると、要求スイッチ6bが非要求状態に切り替えられるまでロボット操作盤6は操作権を保有し続ける。ロボット操作盤6が操作権を保有している間、回転ダイヤル式操作装置7によるロボット2の操作はロボット制御装置5によって禁止される。また、要求スイッチ7dが要求状態に切り替えられたり回転ダイヤル式操作装置7のイネーブルスイッチ7eが押下されたりしたとしても、ロボット操作盤6は、操作権を回転ダイヤル式操作装置7に奪われたりロボット2の操作が不能になったりすることはない。したがって、操作者は、要求スイッチ6bを非要求状態に切り替えるまで、ロボット操作盤6を使用してロボット2を独占的に操作し続けることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、2つの操作装置6,7を使用してロボット2が同時に操作されることが防止される。さらに、操作者が操作装置6,7の一方を使用してロボット2を操作している最中に、例えば他の操作者による操作装置6,7の他方の操作によって、操作権が他方に奪われてしまうことが防止される。
仮に、操作者が回転ダイヤル式操作装置7を使用してロボット2を操作している最中に、他の操作者がロボット操作盤6を使用してロボット2を操作可能である場合、回転ダイヤル式操作装置7の操作者にとって、意図している動作とは異なる予想外の動作をロボット2が行うことになる。本実施形態によれば、このような状況が発生することを防ぐことができる。
【0042】
また、ロボット2および工作機械3兼用の操作装置7ではなく工作機械3専用の操作装置が設けられている場合、操作者は、ロボット2専用の操作装置6と工作機械3専用の操作装置の両方の使い方を学ぶ必要がある。特に、それまでロボット2を扱ってきた操作者にとって、工作機械3の操作方法を新たに学ぶことは大きな負担であり、同様に、それまで工作機械3を扱ってきた操作者にとって、ロボット2の操作方法を新たに学ぶことは大きな負担である。本実施形態によれば、操作者は、操作装置7の使い方を学ぶことによって、ロボット2および工作機械3の両方のジョグ操作の方法を容易に習得することができる。
【0043】
本実施形態において、ロボット操作盤6が、ロボット操作盤6に操作権が付与されているか否かを操作者に通知する通知部を備えていてもよい。同様に、回転ダイヤル式操作装置7が、回転ダイヤル式操作装置7に操作権が付与されているか否かを操作者に通知する通知部を備えていてもよい。
【0044】
この場合、操作権設定部53は、回転ダイヤル式操作装置7に操作権が付与されているとき、または付与されていないとき、回転ダイヤル式操作装置7と接続された送信部(図示略)を経由して回転ダイヤル式操作装置7に信号を送信する。回転ダイヤル式操作装置7の通知部は、信号に応答して操作者に通知する。
また、操作権設定部53は、ロボット操作盤6に操作権が付与されているとき、または付与されていないとき、ロボット操作盤6と接続された送信部(図示略)を経由して信号をロボット操作盤6に送信する。ロボット操作盤6の通知部は、信号に応答して操作者に通知する。
【0045】
ロボット操作盤6の通知部の一例は、操作権の有無を表示する操作画面6cである。ロボット操作盤6の通知部の他の例は、例えば点灯または点滅することによって、ロボット操作盤6に操作権が付与されていることを通知するLEDランプである。
回転ダイヤル式操作装置7の通知部の一例は、例えば点灯または点滅することによって、回転ダイヤル式操作装置7に操作権が付与されていることを通知するLEDランプ7gである。
【0046】
本実施形態において、倍率選択スイッチ7dが要求スイッチとしても機能することとしたが、これに代えて、倍率選択スイッチ7dとは別体の任意の形態の要求スイッチが回転ダイヤル式操作装置7に設けられていてもよい。
本実施形態において、第2操作装置7が、工作機械制御装置4およびロボット制御装置5に接続可能であることとしたが、これに代えて、工作機械制御装置4およびロボット制御装置5のいずれか一方のみに接続可能であってもよい。すなわち、工作機械制御装置4がコネクタ4aを有していなくてもよく、または、ロボット制御装置5がコネクタ5aを有していなくてもよい。
【0047】
本実施形態において、回転ダイヤル式操作装置7が、ロボット2および工作機械3を操作可能であることとしたが、これに代えて、ロボット2のみを操作可能であってもよい。
本実施形態において、ロボット制御システム1が、工作機械制御装置4を含む制御システムの一部であることとしたが、これに代えて、ロボット制御システム1単体で実施されてもよい。
本実施形態において、第1操作装置6がロボット操作盤であり、第2操作装置7が回転ダイヤル式操作装置であることとしたが、各操作装置6,7の具体的な形態はこれに限定されるものではなく、ロボット2の手動操作が可能な任意の形態の手動操作装置であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ロボット制御システム
2 ロボット
3 工作機械
4 工作機械制御装置
5 ロボット制御装置
6 第1操作装置、ロボット操作盤
7 第2操作装置、回転ダイヤル式操作装置
6b,7d 要求スイッチ
6c 通知部、操作画面
7g 通知部、LEDランプ
図1
図2
図3
図4
図5