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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】剃毛装置
(51)【国際特許分類】
   B26B 21/56 20060101AFI20240702BHJP
   B26B 21/58 20060101ALI20240702BHJP
   B26B 21/60 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
B26B21/56
B26B21/58
B26B21/60
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022560860
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2021059174
(87)【国際公開番号】W WO2021209308
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】20169937.8
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316015877
【氏名又は名称】ザ ジレット カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE GILLETTE COMPANY LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーター グルチェ
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ グレッツシェル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル メルテンス
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゲスター
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-524104(JP,A)
【文献】米国特許第03606682(US,A)
【文献】特表2014-528308(JP,A)
【文献】特表2005-509462(JP,A)
【文献】米国特許第02244053(US,A)
【文献】特表2005-528172(JP,A)
【文献】特表平11-512634(JP,A)
【文献】特表2017-524492(JP,A)
【文献】特開2001-025585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B21/00-21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面を剃毛するための剃毛装置(100)であって、
●皮膚接触面(250)を有するハウジング(200)と、
●前記ハウジング(200)内に装着された少なくとも1つの切断刃(1)であって、第1の面(2)、前記第1の面(2)に対向する第2の面(3)、並びに前記第1の面(2)及び前記第2の面(3)の交点の切断刃先(4)を有する非対称の断面形状を有する、少なくとも1つの切断刃(1)と、を備え、
○前記第1の面(2)が、第1の表面(9)と、一次ベベル(7)と、を備え、
■前記一次ベベル(7)が、前記切断刃先(4)から前記第1の表面(9)まで延在しており、
■第1の交線(12)が、前記一次ベベル(7)及び前記第1の表面(9)を接続しており、
■前記第1の表面の仮想延長部(9’)と前記一次ベベル(7)との間に第1の楔角θ1があり、
○前記第2の面(3)が、二次ベベル(5)を備え、
●前記二次ベベル(5)が、前記切断刃先(4)から後方へ延在しており、
●前記第1の表面(9)と前記二次ベベル(5)との間に第2の楔角θ2があり、
前記少なくとも1つの切断刃(1)が、前記ハウジング内に装着されており、
●前記皮膚接触面(250)と前記一次ベベル(7)又は前記二次ベベル(5)との間の逃げ角αが、≦11°であり、
●前記皮膚接触面(250)と前記第1の楔角θ1の二等分線(260)との間の有効切断角度εが、≧10°であり、
●θ1>θ2である、剃毛装置(100)。
【請求項2】
前記逃げ角αが、≦5°、好ましくは≦1°、より好ましくは≦0°、更により好ましくは-1°~-5°であり、及び/又は前記有効切断角度εが、≧15°、好ましくは≧20°であることを特徴とする、請求項1に記載の剃毛装置。
【請求項3】
前記第2の面(3)が、前記二次ベベル(5)から延在している三次ベベル(6)を備え、第2の交線(11)が、前記二次ベベル(5)及び前記三次ベベル(6)を接続しており、前記第1の表面(9)と前記三次ベベル(6)との間に第3の楔角θ3があり、θ2が、θ3よりも小さいことを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の剃毛装置。
【請求項4】
前記第1の楔角θ1が、5°~75°、好ましくは10°~60°、より好ましくは15°~46°、更により好ましくは20°~45°であり、及び/又は前記第2の楔角θ2が、-10°~40°、好ましくは0°~30°、より好ましくは、10°~25°の範囲であり、及び/又は前記第3の楔角θ3が、1°~60°、好ましくは10°~55°、より好ましくは19°~46°、更により好ましくは20~45°の範囲であることを特徴とする、請求項に記載の剃毛装置。
【請求項5】
前記一次ベベル(7)は、0.1~7μm、好ましくは0.5~5μm、より好ましくは1~3μmの、前記切断刃先(4)から前記第1の交線(12)まで測った前記第1の表面の前記仮想延長部(9’)の上へ突出した寸法である長さd1を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の剃毛装置。
【請求項6】
前記切断刃先(4)から前記第2の交線(11)まで測った前記第1の表面(9)及び/又は前記第1の表面の前記仮想延長部(9’)の上へ突出した寸法が、1~150μm、好ましくは5~100μm、より好ましくは10~75μm、及び特に15~50μmの範囲である長さd2を有する、請求項~5のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【請求項7】
前記切断刃(1)が、第1の材料(18)で構成される刃体(15)を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【請求項8】
前記切断刃(1)が、第1の材料(18)及び前記第1の材料(18)と接合された第2の材料(19)を備える刃体(15)を備えることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【請求項9】
前記第1の材料(18)が、
●金属、好ましくは、チタン、ニッケル、クロミウム、ニオブ、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、プラチナ、ゲルマニウム、鉄、及びそれらの合金、特に鋼、
●炭素、窒素、ホウ素、酸素、及びそれらの組み合わせ、好ましくは、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化タンタル、TiAlN、TiCN、及び/又はTiB2で構成される群から選択される少なくとも1種の要素を含むセラミック、
●ガラスセラミック、好ましくはアルミニウム含有ガラスセラミック、
●金属マトリックスのセラミック材料から作製された複合材料(サーメット)、
●硬質金属、好ましくは、コバルト若しくはニッケルと接合された炭化タングステン又はチタンカーバイドなどの、焼結炭化物の硬質金属、
●好ましくは、前記第2の面(2)と平行な結晶面、配向<100>、<110>、<111>、若しくは<211>を有するシリコン又はゲルマニウム、
●単結晶材料、
●ガラス又はサファイア、
●多結晶若しくはアモルファスのシリコン又はゲルマニウム、
●モノ又は多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、アダマンタン炭素、並びに
●それらの組み合わせ、で構成される群から選択される材料を備え
前記第2の材料(19)が、
●酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、好ましくは、窒化アルミニウム、窒化クロミウム、窒化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、立方晶窒化ホウ素、
●ホウ素アルミニウムマグネシウム
●炭素、好ましくは、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ナノ結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、並びに
●それらの組み合わせ、で構成される群から選択される材料を備えることを特徴とする、請求項8に記載の剃毛装置。
【請求項10】
前記第2の材料(19)が、以下の特性、すなわち、
●0.15~20μm、好ましくは、2~15μm、及びより好ましくは3~12の厚さ、
●1200GPa未満、好ましくは900GPa未満、より好ましくは750GPa未満、及び更により好ましくは500GPa未満の弾性係数、
●少なくとも1GPa、好ましくは少なくとも2.5GPa、より好ましくは少なくとも5GPaの横破断応力σ0、
●少なくとも20GPaの硬度、のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項8または9に記載の剃毛装置。
【請求項11】
前記第2の材料(19)が、ナノ結晶ダイヤモンドを備え、かつ以下の特性、すなわち、
●100nm未満、50nm未満、より好ましくは20nm未満の平均表面粗さRRMS、
●1~100nm、好ましくは5~90nm、より好ましくは7~30nm、及び更により好ましくは10~20nmのナノ結晶ダイヤモンドの平均粒径d50、のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【請求項12】
前記第1の材料(18)及び/又は前記第2の材料(19)が、好ましくは、フルオロポリマー材料、パリレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、及びそれらの組み合わせで構成される群から選択される低摩擦材料で、少なくとも領域がコーティングされていることを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【請求項13】
前記第1の交線(12)が、前記第2の材料(19)内に成形されることを特徴とする、請求項8~12のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【請求項14】
前記切断刃先(4)が、200nm未満、好ましくは100nm未満、及びより好ましくは50nm未満の先端半径を有することを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の剃毛装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚接触面を有するハウジングと、ハウジング内に装着された少なくとも1つの切断刃と、を備える、皮膚表面を剃毛するための剃毛装置に関するものであり、少なくとも1つの切断刃は、第1の面、第1の面に対向する第2の面、並びに第1の面及び第2の面の交点に切断刃先を有する非対称の断面形状を有する。
【0002】
本出願では、以下の定義が使用される。
●すくい面は、切断プロセスで除去される切断された毛がその上を摺動する、切断刃の表面である
●逃げ面は、皮膚の上を通過する切断用具の表面であり、逃げ面と皮膚との接触面との間の角度は、逃げ角αである
●切断刃の切断ベベルは、すくい面及び逃げ面によって囲まれ、ベベル角θで表される
●切断刃先は、すくい面及び逃げ面の交線である
●有効切削角εは、剃毛装置の皮膚接触面と切断ベベルの二等分線との間の角度、すなわち、ε=α+θ/2である
【背景技術】
【0003】
先行技術では、剃毛装置内の刃の構成は、多刃カミソリに焦点を当てている。
【0004】
米国特許第3,863,340号は、先行刃部材及び後続刃部材を有する複数刃先のカミソリを教示しており、これらの部材は、その上に非対称的な刃先を有し、また、切断刃先からの剃毛細片の除去を容易にするために、当該部材を通る通路を有する。
【0005】
米国特許第6,655,030号は、少なくとも、第1の切断部材と、第1の切断部材の後ろに配置されて、そこから離間された第2の切断部材と、を有する剃毛ヘッドを記載しており、皮膚接触面と第2の切断部材との間の切断角度は、第1の切断部材の皮膚接触面との間の切断角度以上である。
【0006】
米国特許第3,842,499号は、複数の切断要素の1つ以上の群を有するカミソリ刃の組立体に関するものであり、切断要素の群は、1つの刃がチゼル形状である少なくとも2つの刃を備えている。これは、タンデム刃の剃毛動作のための好ましい幾何学形状を可能にする。
【0007】
剃毛装置における剃毛刃先プロファイルの寸法及びそれらの構成は、相互依存しており、典型的には、毛を効率的に切断するように最適化されている。これは、以下の3つのパラメータを含む。
1.貫通を容易にするための切断刃先の小さい先端部の丸み、
2.低い切断力のための切断刃の小さい楔角θ、及び
3.毛が切断される前に回転又は摺動して離れることを回避して、効率的な毛の除去をもたらすための、剃毛装置、すなわちハウジング内の大きい有効切断角度ε。
【0008】
これらの定義及びパラメータは、本出願の図に例示されている。
【0009】
最初の2つのパラメータは、毛が切断されている間に毛を引っ張ることのない、快適な剃毛をもたらす。しかしながら、大きい刃の装着角度、すなわち逃げ角αとともに刃先の小さい先端の丸みは、皮膚表面への相当な圧力を生じさせ、この圧力は不快であり、皮膚の切断をもたらす場合さえある。有効切断角度εを低減させることは、剃毛中の安全性を向上させる。しかしながら、この場合、従来の対称形の楔形状の刃は、貫通して切断せずに毛に乗り上げる傾向がある。
【0010】
剃毛中に、すくい面は、毛と相互作用して、主に毛の切断性能に関する役割を果たし、一方で、逃げ面は、皮膚と相互作用して、主に皮膚の安全に関する役割を果たす。
【0011】
剃毛性能を最適化するために、切断刃の皮膚に面する側(逃げ面)が皮膚に対して平らに置かれるように(小さい逃げ角)、小さい刃の装着角、すなわち逃げ角αで刃を装着することによって剃毛刃の安全性を高めること、そして、この小さい逃げ角αによって毛の切断能率が損なわれないように刃先プロファイルを修正することが必要である。これは、皮膚の安全性を確実にするために、逃げ角αをできる限り小さくしなければならないこと、及び効率的に毛を切断するために、有効切断角度εをできる限り大きくしなければならないことを意味する。したがって、逃げ角αは、安全角度の役割を果たし、有効切断角度εは、効率角の役割を果たす。
【0012】
逃げ角α及び有効切断角度εは、次式に関連する。
ε=α+θ/2
【0013】
したがって、剃毛装置で成功裏に長期間使用されているような約22°の有効切断角度εを維持しながら逃げ角αを最小にすることは、切断ベベル角θの増加を必要とする。しかしながら、毛を切断するための力は、切断刃先付近の切断刃の厚さによって決定され、この厚さは、切断ベベルのベベル角θが大きくなったときに増加する。したがって、切断角度εを維持し、一方で、逃げ角αを小さくするようにベベル角θを大きくすることは、切断力を増加させて、毛を引っ張ることによる剃毛の快適さの低下といった新たな問題を生じさせ、したがって、ベベル角θは、快適角度に関する役割を果たす。
【0014】
全てのこれらの相互依存を克服して、小さい切断力(小さいθ)、高い切削能率(大きいε)を有し、かつ、皮膚とって安全(小さいα)である最先端のプロファイルを生じさせるための、少なくとも1つの追加的な切断ベベルを有する非対称の切断刃プロファイルが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第3,863,340号
【文献】米国特許第6,655,030号
【文献】米国特許第3,842,499号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、先行技術の前述の欠点に対処し、また、低い切断力及び高い切削能率を可能にし、かつ皮膚に対する十分な安全性を確保する最適化された幾何学的設定を有する剃毛装置を提供する。
【0017】
この問題は、請求項1に記載の特徴を有する剃毛刃によって解決される。更なる従属請求項は、そのような刃の好適な実施形態を定義する。
【0018】
特許請求の範囲及び本出願の説明における「備える」という用語は、更なる構成要素が除外されないという意味を有する。本発明の範囲内で、「で構成される」という用語は、「備える」という用語の好適な実施形態として理解されるべきである。ある群が少なくとも特定の数の構成要素を「備える」ことが定義されている場合、これもまた、好ましくはこれらの構成要素から「なる」群が開示されるように理解されるべきである。
【0019】
以下、断面という用語は、切断刃先の直線延長部に対して垂直な断面を指す。
【0020】
交線という用語は、(図1のような)斜視図に関する(図3の断面図による)異なるベベル間の交差点の直線延長部として理解されるべきである。一例として、直線状のベベルが直線状のベベルと隣接している場合、断面図の交点は、斜視図の交線まで延長される。
【0021】
本発明によれば、皮膚表面を剃毛するための剃毛装置が提供され、当該剃毛装置は、皮膚接触面を有するハウジングと、ハウジング内に装着された少なくとも1つの切断刃と、を備え、少なくとも1つの切断刃は、第1の面、第1の面に対向する第2の面、並びに第1の面及び第2の面の交点の切断刃先を有する非対称の断面形状を有し、
●第1の面は、第1の表面と、一次ベベルと、を備え、
■一次ベベルは、切断刃先から第1の表面まで延在しており、
■第1の交線は、一次ベベル及び第1の表面を接続しており、
■第1の表面の仮想延長部と一次ベベルとの間に第1の楔角θがあり、
●第2の面は、二次ベベルを備え、
■二次ベベルは、切断刃先から後方へ延在しており、
●第1の表面と二次ベベル(5)との間に第2の楔角θがある。
【0022】
本発明によれば、少なくとも1つの切断刃は、以下の条件が満たされるハウジング内に装着される。
●皮膚接触面と一次ベベルとの間の逃げ角αが、≦11°である、
●皮膚接触面と第1の楔角θの二等分線との間の有効切断角度εが、≧10°であり、
●θ>θである。
【0023】
驚くべきことに、上で定義したような条件を選択することによって、一方では、高い切断効率、及び他方では、快適かつ安全な切断、という相反する効果が同時に実現されることを見出した。
【0024】
少なくとも1つの切断刃は、非対称の断面形状を有する。非対称の断面形状は、(θ+θ)/2の角度を有し、切断刃先にアンカーされている、一次ベベルと二次ベベルとの間の二等分線である軸に関する対称性を指す。
【0025】
本発明による少なくとも1つの切断刃は、小さいθにより、低い切断力を有し、一方で、より大きい有効切断角度εによって実現される切削能率が高い。更に、剃毛装置は、小さい逃げ角αにより、剃毛プロセスの向上した安全性を有する。
【0026】
更に、一次主ベベルは、一次楔角が二次楔角よりも大きい場合に切断刃を強化するための追加的な機能を有し得、当該機能は、切断作業からの損傷に対する機械的安定化を可能にし、当該機械的安定化は、刃の切断性能に影響を及ぼすことなく、二次ベベルの領域における細い刃体を可能にする。
【0027】
したがって、第1の楔角θを有する一次ベベルは、切断刃先の角度を安定させる機能を有し、毛が切断されるときに、切断刃先が損傷することを防止する。すなわち、より大きい楔角θが、切断刃先の機械的安定性を高める。結論的には、楔角θを有する一次ベベルを使用することによって、第2の楔角θを小さくすることができる。
【0028】
更に、楔角θを有する一次ベベルは、切断刃先を切断される物体から持ち上げることを可能にし、これは、切断ステップをより安全なものにし、例えば、皮膚と切断刃先との間の距離を上昇させることによって、皮膚の切断を回避することができる。
【0029】
第2の楔角θは、切断されている物体を貫通する刃の貫通角度を表す。浸透性角度θが小さいほど、切断されている物体を貫通する力が低くなる。
【0030】
逃げエンジェル(angel)αは、≦5°、好ましくは≦1°、より好ましくは≦0°、更により好ましくは-1°~-5°であることが好ましく、及び/又は有効切断角度第1の楔角εは、≧15°、好ましくは≧20°であることが好ましい。
【0031】
好ましい実施形態によれば、第1の楔角θは、5°~75°、好ましくは10°~60°、より好ましくは15°~46°、更により好ましくは20°~45°であり、及び/又は第2の楔角θは、-5°~40°、好ましくは0°~30°、より好ましくは10°~25°の範囲である。
【0032】
本発明による切断刃は、好ましくは、二次楔角よりも大きい三次楔角を有する厚くて強い三次ベベルを加えることによって、及びこの三次ベベルを用いて、切断される物体を分離させることによって更に強化され、したがって、細い二次ベベル上に作用する力を低減させる。第3の楔角θは、好ましくは1°~60°、より好ましくは10°~55°、更により好ましくは19°~46°、特に20°~45°の範囲である。
【0033】
第3の楔角θは、分離角、すなわち、切断される物体を分離させるのに必要な角度を表す。この機能のために、第3の楔角θは、好ましくは、第2の楔角θよりも大きくなければならない。
【0034】
更に好適な実施形態によれば、一次ベベルは、0.1~7μm、好ましくは0.5~5μm、及びより好ましくは1~3μmの、切断刃先から第1の交線まで測った長さだけ第1の表面の上へ突出した寸法である、長さdを有する。長さd<0.1μmは、そのような長さの刃先があまりに脆弱で、切断刃の安定した使用を可能にしないので、実現することが困難である。驚くべきことに、一次ベベルが二次及び三次ベベルを有する刃体を安定させ、これが、小さい切断力を提供する、二次ベベルの領域における細い刃を可能にすることを見出した。その一方で、長さdが7μm未満であれば、一次ベベルは切断性能に影響を及ぼさない。
【0035】
好ましくは、切断刃先から第2の交線まで測った第1の表面及び/又は第1の表面の仮想延長部の上へ突出した(すなわち一次及び二次ベベルの突出)寸法である長さdは、1~100μm、より好ましくは5~75μm、及び更により好ましくは10~50μmの範囲である。長さdは、切断される物体における切断刃の貫通深さに対応する。一般に、dは、切断される物体の直径の少なくとも30%に、すなわち、物体が、典型的には約100μmの直径を有し、長さdが約30μmである人間の毛である場合に対応する。
【0036】
切断刃は、好ましくは、第1の材料及び第1の材料と接合された第2の材料を備えるか、又は、で構成される刃体によって画定される。第2の材料は、少なくとも第1の材料の領域のコーティングとして堆積させることができ、すなわち、第2の材料は、第1の材料の包囲コーティング、又は第1の面の第1の材料に堆積されるコーティングとすることができる。
【0037】
第1の材料の材料は、一般に、この材料をベベル加工することが可能であれば、任意の特定の材料に限定されない。
【0038】
しかしながら、代替の実施形態によれば、刃体は、第1の材料だけ、すなわち、無コーティング第1の材料で構成される。この場合、第1の材料は、好ましくは等方性構造を有する材料であり、すなわち、全方向において同じ特性値を有する。そのような等方性材料は、しばしば、成形技術にかかわらず、より良好な成形に適している。
【0039】
第1の材料は、
●金属、好ましくは、チタン、ニッケル、クロミウム、ニオブ、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、プラチナ、ゲルマニウム、鉄、及びそれらの合金、特に鋼、
●炭素、窒素、ホウ素、酸素、及びそれらの組み合わせ、好ましくは、炭化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化タンタル、TiAlN、TiCN、及び/又はTiBを含むセラミック、
●ガラスセラミック、好ましくはアルミニウム含有ガラスセラミック、
●金属マトリックスのセラミック材料から作製された複合材料(サーメット)、
●硬質金属、好ましくは、コバルト又はニッケルと接合された炭化タングステン又はチタンカーバイドなどの、焼結炭化物の硬質金属、
●好ましくは、第2の面と平行な結晶面、ウエハ配向<100>、<110>、<111>、又は<211>を有するシリコン又はゲルマニウム、
●単結晶材料、
●ガラス又はサファイア、
●多結晶又はアモルファスのシリコン又はゲルマニウム、
●モノ又は多結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(diamond like carbon、DLC)、アダマンタン炭素、並びに
●それらの組み合わせ、で構成される群から選択される材料を備えるか、又は、で構成される。
【0040】
第1の材料に使用される鋼は、好ましくは、1095、12C27、14C28N、154CM、3Cr13MoV、4034、40X10C2M、4116、420、440A、440B、440C、5160、5Cr15MoV、8Cr13MoV、95X18、9Cr18MoV、Acuto+、ATS-34、AUS-4、AUS-6(=6A)、AUS-8(=8A)、C75、CPM-10V、CPM-3V、CPM-D2、CPM-M4、CPM-S-30V、CPM-S-35VN、CPM-S-60V、CPM-154、Cronidur-30、CTS 204P、CTS 20cP、CTS 40cP、CTS B52、CTS B75P、CTS BD-1、CTS BD-30P、CTS XHP、D2、Elmax、GIN-1、H1、N690、N695、Niolox(1.4153)、Nitro-B、S70、SGPS、SK-5、Sleipner、T6MoV、VG-10、VG-2、X-15T.N.、X50CrMoV15、ZDP-189、で構成される群から選択される。
【0041】
第2の材料は、
●酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、好ましくは、窒化アルミニウム、窒化クロミウム、窒化チタン、炭窒化チタン、窒化チタンアルミニウム、立方晶窒化ホウ素、
●ホウ素アルミニウムマグネシウム
●炭素、好ましくは、ダイヤモンド、多結晶ダイヤモンド、ナノ結晶ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、並びに
●それらの組み合わせ、で構成される群から選択される材料を備えるか、又は当該材料で構成されることが好ましい。
【0042】
第2の材料は、好ましくは、TiB、AlTiN、TiAlN、TiAlSiN、TiSiN、CrAl、CrAlN、AlCrN、CrN、TiN TiCN、及びそれらの組み合わせ、で構成される群から選択され得る。
【0043】
更に、VDIガイドライン2840に列挙されている全ての材料を、第2の材料に選択することができる。
【0044】
第2の材料として、ナノ結晶ダイヤモンド、並びに/又はナノ結晶質及び多結晶ダイヤモンドの多層フィルムの第2の材料を使用することが特に好ましい。これに関して、驚くべきことに、ナノ結晶ダイヤモンド層の第2の材料を有する切断刃が、多結晶ダイヤモンドで知られているように剥離を抑制することを見出した。単結晶ダイヤモンドと関連して、ナノ結晶ダイヤモンドの製造は、単結晶ダイヤモンドの製造と比較して、実質的により容易に、かつ経済的に達成することができることが示されている。したがって、より長くより大きい面積の切断刃も提供することができる。更に、それらの粒径分布に関して、ナノ結晶ダイヤモンド層は、多結晶ダイヤモンド層より均質であり、材料はまた、固有の応力が少ないことを示す。その結果、切断刃先の巨視的な歪みが起こり難い。
【0045】
第2の材料は、0.15~20μm、好ましくは2~15μm、及びより好ましくは3~12μmの厚さを有することが好ましい。
【0046】
第2の材料は、1200GPa未満、好ましくは900未満、及びより好ましくは750GPa未満の弾性係数(ヤング率)を有することが好ましい。低い弾性係数のため、ハードコーティングは、より可撓性かつより弾性になり、また、切断される基材、物体、又は輪郭部により良好に適合され得る。ヤング率は、Markus Mohrらの「Youngs modulus,fracture strength,and Poisson’s ratio of nanocrystalline diamond films」、J.Appl.Phys.116,124308(2014)、特にパラグラフIII「B.Static measurement of Young’s modulus」に開示されているような方法に従って決定される。
【0047】
第2の材料は、好ましくは、少なくとも1GPa、より好ましくは少なくとも2.5GPa、及び更により好ましくは少なくとも5GPaの横破断応力σを有する。
【0048】
横破断応力σの定義に関しては、以下の参考文献を参照した。
●R.Morrellらによる、Int.Journal of Refractory Metals & Hard Materials,28(2010),p.508-515、
●R.Danzerらによる、J.Kriegesmann,HvB Press,Ellerau,ISBN 978-3-938595-00-8によって発行された「Technische keramische Werkstoffe」の6.2.3.1章「Der 4-Kugelversuch zur Ermittlung der biaxialen Biegefestigkeit sproder Werkstoffe」
【0049】
それにより、横破断応力σは、破断試験の統計的評価によって、例えば上記の文献の詳細に従うB3B負荷試験で決定される。それにより、63%の破断の可能性がある破断応力として定義される。
【0050】
第2の材料の極めて高い横破断応力のため、第2の材料からの、特に切断刃先からの個々の結晶子の剥離がほぼ完全に抑制される。したがって、長期間の使用を伴う場合であっても、切断刃は、その元の鋭さを保持する。
【0051】
第2の材料は、好ましくは、少なくとも20GPaの硬度を有する。硬度は、ナノインデンテーションによって決定される(Yeon-Gil Jung et.al.,J.Mater.Res.,Vol.19,No.10,p.3076)。
【0052】
第2の材料は、好ましくは、100nm未満、より好ましくは50nm未満、及び更により好ましくは20nm未満の表面粗さRRMSを有し、これは、次式で計算される。
【0053】
【数1】
A=評価領域
Z(x,y)=局所的粗さ分布
【0054】
表面粗さRRMSは、DIN EN ISO 25178に従って決定される。前述の表面粗さは、成長した第2の材料の追加的な機械的研磨を不要にする。
【0055】
好ましい実施形態では、第2の材料は、1~100nm、好ましくは5~90nm、及びより好ましくは7~30nm、及び更により好ましくは10~20nmのナノ結晶ダイヤモンドの平均粒径d50を有する。平均粒径d50は、X線回折又は透過電子顕微鏡法を使用して、粒子を計数することによって決定され得る。
【0056】
第1の材料及び/又は第2の材料は、好ましくは、フルオロポリマー材料(PTFEなど)、パリレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、及びそれらの組み合わせ、で構成される群から選択される低摩擦材料で、少なくとも領域がコーティングされることが好ましい。
【0057】
一次ベベル及び二次ベベルを接続する刃先は、好ましくは、第2の材料で成形される。
【0058】
二次及び三次ベベル間の刃先が、第1の材料及び第2の材料の境界面に配置されることが更に好ましく、これは、製造プロセスをより扱い易くし、したがってより経済にし、例えば、刃は、図9a~dのプロセスに従って製造することができる。
【0059】
切断刃先は、理想的には、刃の安定性を向上させる円形構成を有する。切断刃先は、例えば図10に例示される方法を使用して断面SEMによって決定され、好ましくは200nm未満、より好ましくは100nm未満、及び更により好ましくは50nm未満の先端半径を有する。
【0060】
切断刃先の先端半径rは、ハードコーティングの平均粒径d50と相関することが好ましい。その結果、切断刃先の第2の材料としてのナノ結晶ダイヤモンドの丸みのある半径rと、第2の材料としてのナノ結晶ダイヤモンドの平均粒径d50との間の比率r/d50は、0.03~20、好ましくは0.05~15、特に好ましくは0.5~10である場合に好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
本発明は、本発明による特定の実施形態を示す以下の図によって更に例示される。しかしながら、これらの特定の実施形態は、本明細書の一般的な部分の特許請求の範囲に記載された本発明に関して、いかなる限定的な様式にも解釈されるべきではない。
図1】本発明による剃毛装置の概略図である。
図2】線A-Aに沿った図1による剃毛装置の概略断面図である。
図3a】2つのベベルを有する、本発明による切断刃の斜視図である。
図3b】2つのベベルを有する、本発明による切断刃の断面図である。
図4a】3つのベベルを有する、本発明による切断刃の斜視図である。
図4b】3つのベベルを有する、本発明による切断刃の断面図である。
図5a】モノリシックである、本発明による更なる切断刃の断面図である。
図5b】第1及び第2の材料を備えている、本発明による更なる切断刃の断面図である。
図6a】第1の面が逃げ面で、逃げ角がα>0°である、本発明による剃毛装置の断面図である。
図6b】第2の面が逃げ面で、逃げ角がα>0°である、本発明による更なる剃毛装置の断面図である。
図7a】第1の面が逃げ面で、逃げ角がa=0°である、本発明による剃毛装置の断面図である。
図7b】第2の面が逃げ面で、逃げ角がa=0°である、本発明による更なる剃毛装置の断面図である。
図8】第2の面が逃げ面で、逃げ角α<0°である、本発明による更なる剃毛装置の断面図である。
図9a】切断刃を製造するためのプロセスのフローチャートである。
図9b】切断刃を製造するためのプロセスのフローチャートである。
図9c】切断刃を製造するためのプロセスのフローチャートである。
図9d】切断刃を製造するためのプロセスのフローチャートである。
図10】先端半径の決定を示す、円形先端部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本出願の図では、以下の参照符号が使用される。
【0063】
参照符号リスト
1 刃
2 第1の面
3 第2の面
4 切断刃先
5 二次ベベル
6 三次ベベル
7 一次ベベル
8 上面
9 第1の表面
9’ 第1の表面の仮想延長部
11 第2の交線
12 第1の交線
15 刃体
18 第1の材料
19 第2の材料
20 境界面
60 二等分線
61 垂線
62 円
65 構造点
66 構造点
67 構造点
100 カミソリ
150 グリップ
200 ハウジング
210 前方皮膚支持体
220 後方皮膚支持体
250 皮膚接触面
260 二等分線
300 毛
310 皮膚
【0064】
図1には、先行技術で通常使用されている剃毛装置100が示されている。剃毛装置100は、ハウジング200に取り付けられるグリップ150を有する。ハウジングは、前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、それらの間の少なくとも1つの刃1と、を備えている。
【0065】
図2は、ハウジング200と、その前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、を有する、剃毛装置100の断面図を示す。本図は、図1の断面A-Aの断面図を表す。支持体の間には、2つの刃1及び1’が配置されている。また、ハウジングには、2つ以上の刃、例えば木(tree)又は4つの刃が配置され得る。前方皮膚支持体210が剃毛する間、後方皮膚支持体220並びに刃1及び1’は、皮膚310と直接接触している。剃毛装置100は、皮膚310に直接、好ましくは平面接触している皮膚接触面250を有する。皮膚接触面250は、前方皮膚支持体210と後方皮膚支持体220との間の接続線である。
【0066】
図3aは、本発明による切断刃の斜視図である。この切断刃1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面と、を備える、刃体15を有する。第1の面2は、第1の表面9と、一次ベベル7と、を備え、一方で、第2の表面3は、二次ベベル5と、第1の表面9に平行な上面8と、を備えている。一次ベベル7及び二次ベベル5の交点には、切断刃先4が位置する。切断刃先4は、直線状又は実質的に直線状に成形されている。二次ベベル5は、交線11を介して上面8に接続され、一次ベベル5は、交線12を介して第1の表面9に接続されている。
【0067】
図3bには、図3aの切断刃の断面図が示されている。この切断刃1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3と、を備えている。第1の面2は、平面の第1の表面9と、第1の表面9と一次ベベル7との間に第1の楔角θを有する一次ベベル7と、を備えている。第2の面3は、第1の表面9と二次ベベル5との間にθよりも小さい第2の楔角θを有する二次ベベル5を備えている。更に、第2の面3は、上面8を備えている。一次ベベル7及び二次ベベル5の交点には、切断刃先4が位置する。一次ベベル7と二次ベベル5との間の二等分線260は、切断刃先4においてアンカーされる。二次ベベル5は、交線11を介して上面8に接続され、一次ベベル5は、交線12を介して第1の表面9に接続されている。一次ベベル7は、0.1~7μmの範囲である、第1の表面9の上へ突出した寸法である長さdを有する。二次ベベル6は、1~150μm、好ましくは5~100μmの範囲である、第1の表面9上へ突出した寸法である長さdを有する。
【0068】
図4aは、本発明による切断刃の斜視図である。この切断刃1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3と、を備える、刃体15を有する。第1の面2は、第1の表面9と、一次ベベル7と、を備え、一方で、第2の表面3は、二次ベベル5と、三次ベベル6と、を備えている。一次ベベル7は、第1の交線12を介して第1の面9と接続され、二次ベベル5は、第2の交線11を介して三次ベベル6と接続されている。一次ベベル7及び二次ベベル5の交点には、切断刃先4が位置する。切断刃先4は、直線状に成形されている。
【0069】
図4bには、図4aの切断刃の断面図が示されている。この切断刃1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3と、を備えている。第1の面2は、平面の第1の表面9と、第1の表面9と一次ベベル5との間に第1の楔角θを有する一次ベベル7と、を備えている。第2の面3は、第1の表面9と二次ベベル6との間にθよりも小さい第2の楔角θを有する二次ベベル5を備えている。三次ベベル6は、θよりも大きい第3の楔角θを有する。一次ベベル7及び二次ベベル5の交点には、切断刃先4が位置する。一次ベベル7は、0.1~7μmの範囲である、第1の表面9の上へ突出した寸法である長さdを有する。二次ベベル5は、1~150μm、好ましくは5~100μmの範囲である、第1の表面9上へ突出した寸法である長さdを有する。
【0070】
図5aには、刃体15がモノリシックである、本発明の切断刃の更なる断面図が示されている。切断刃1は、第1の面2と、第1の面2に対向する第2の面3と、を備えている。第1の面2は、平面の第1の表面9と、一次ベベル7と、を備え、第2の表面3は、二次ベベル5と、三次ベベル6と、を備えている。一次ベベル7は、第1の交線12を介して第1の面9と接続され、二次ベベル5は、第2の交線11を介して三次ベベル6と接続されている。一次ベベル7及び二次ベベル5の交点には、切断刃先4が位置する。
【0071】
図5bには、本発明の切断刃の更なる断面図が示されており、刃体15は、第1の面2に、第1の材料18上に第2の材料19、例えばダイヤモンド層を有する第1の材料18、例えばシリコンを備える。一次ベベル7及び二次ベベル5は、第2の材料19に位置し、一方で、三次ベベル6は、第1の材料18に位置する。第1の材料18及び第2の材料19は、境界面20に沿って接合されている。
【0072】
図6aでは、皮膚310から突出している毛300の切断プロセスを例示する、本発明の剃毛装置100が示されている。剃毛装置100は、前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、を有する、ハウジング200を備える。両方の支持体210、220の間には、刃1が配置されている。皮膚接触面250を有する剃毛装置100は、皮膚310と接触する。皮膚310から突出している毛300は、切断刃1の切断刃先と接触する。切断刃1は、第1の面2と、第2の面3と、を有する。この実施形態によれば、第1の面2は、逃げ面である。第1の面2は、平面の第1の表面9と、一次ベベル7と、を備え、一方で、第2の表面3は、二次ベベル6と、第1の表面9に平行である表面8と、を備えている。一次ベベル7と皮膚接触面250との間の逃げ角αは、0°よりも大きいが、11°以下であり、これは、高い皮膚安全性をもたらす。更に、切断刃1の非対称の断面形状のため、皮膚接触面250と第1の楔角θの二等分線260との間のより大きい有効切断角度α、すなわちe≧10°が実現され得、これは、毛が切断される効率を向上させる。
【0073】
図6bには、皮膚310から突出している毛300の切断プロセスを例示する、本発明の剃毛装置100が示されている。剃毛装置100は、前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、を有する、ハウジング200を備える。両方の支持体210、220の間には、刃1が配置されている。皮膚接触面250を有する剃毛装置100は、皮膚310と接触し、皮膚310から突出いている毛300は、切断刃1の切断刃先と接触する。この実施形態によれば、第2の面3は、逃げ面である。二次ベベル5と皮膚接触面250との間の逃げ角αは、0°よりも大きいが、11°以下であり、これは、高い皮膚安全性をもたらす。更に、切断刃1の非対称の断面形状のため、皮膚接触面250と第1の楔角θの二等分線260との間のより大きい有効切断角度α、すなわちe≧10°が実現され得、これは、毛が切断される効率を向上させる。
【0074】
図7aには、皮膚310から突出している毛300の切断プロセスを例示する、本発明の剃毛装置100が示されている。剃毛装置100は、前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、を有する、ハウジング200を備える。両方の支持体210、220の間には、刃1が配置されている。皮膚接触面250を有する剃毛装置100は、皮膚310と接触し、皮膚310から突出している毛300は、切断刃1の切断刃先4と接触する。この実施形態では、第1の面2は、逃げ面である。一次ベベル7と皮膚接触面250との間の逃げ角αは、0°であり、これは、高い皮膚安全性をもたらす。更に、切断刃1の非対称の断面形状のため、皮膚接触面250と第1の楔角θの二等分線260との間のより大きい有効切断角度ε、すなわちε≧10°が実現され得、これは、毛を切断する効率を向上させる。
【0075】
図7bには、皮膚310から突出している毛300の切断プロセスを例示する、本発明の剃毛装置100が示されている。剃毛装置100は、前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、を有する、ハウジング200を備える。両方の支持体210、220の間には、刃1が配置されている。皮膚接触面250を有する剃毛装置100は、皮膚310と接触し、皮膚310から突出している毛300は、切断刃1の切断刃先4と接触する。この実施形態では、第2の面2は、逃げ面である。切断刃1の二次ベベル5を有する第2の面2と皮膚接触面250との間の逃げ角αは、0°であり、これは、皮膚の安全性を向上させる。更に、切断刃1の非対称の断面形状のため、皮膚接触面250と第1の楔角θの二等分線260との間のより大きい有効切断角度ε、すなわちε≧10°を実現することができ、これは、毛を切断する効率を向上させる。
【0076】
図8には、皮膚310から突出している毛300の切断プロセスを例示する、本発明の剃毛装置100が示されている。剃毛装置100は、前方皮膚支持体210と、後方皮膚支持体220と、を有する、ハウジング200を備える。両方の支持体210、220の間には、刃1が配置されている。皮膚接触面250を有する剃毛装置100は、皮膚310と接触し、皮膚310から突出している毛300は、切断刃1の切断刃先4と接触する。この実施形態では、第2の面2は、逃げ面である。切断刃1の二次ベベル5を有する第2の面2と皮膚接触面250との間の逃げ角αは、0°未満であり、これは、皮膚の安全性を向上させる。更に、切断刃1の非対称の断面形状のため、皮膚接触面250と第1の楔角θの二等分線260との間のより大きい有効切断角度ε、すなわちε≧10°を実現することができ、これは、毛を切断する効率を向上させる。
【0077】
図9a~9dには、本発明のプロセスのフローチャートが示されている。第1のステップ1では、PE-CVD又は熱処理(低圧CVD)によって、シリコンウエハ101に、シリコンの保護層として窒化ケイ素(Si)層102がコーティングされる。層の厚さ及び堆積処理は、後続のエッチングステップに耐えるための十分な化学安定性を可能にするように、慎重に選択しなければならない。ステップ2では、フォトレジスト103が、Siをコーティングした基板の上へ堆積され、続いて、フォトリソグラフィによってパターン化される。次いで、マスクとしてパターン化されたフォトレジストを使用して、(Si)層が、例えばCF-プラズマ反応性イオンエッチング(reactive ion etching、RIE)によって構造化される。ステップ3では、パターニング後に、有機溶剤によってフォトレジスト103を剥離させる。残留しているパターン化されたSi層102は、例えばKOHの異方性のウェット化学エッチングによって、シリコンウエハ101の後続の事前構造化ステップ4のためのマスクとしての役割を果たす。エッチングプロセスは、第2の面3上の構造が所定の深さに到達し、連続したシリコンの第1の面2が残ったときに終了する。他のウェット及びドライ化学プロセス、例えばHF/HNO溶液中での等方性ウェット化学エッチング又はフッ素含有プラズマの適用が適し得る。後続のステップ5では、残留しているSiが、例えばフッ化水素酸(HF)又はフッ素プラズマ処理によって除去される。ステップ6では、事前構造化されたSi基板が、厚さ約10μmの薄いダイヤモンド層104、例えばナノ結晶ダイヤモンドでコーティングされる。ダイヤモンド層104は、Siウエハ101の事前構造化された第2の表面3及び連続した第1の表面2に(ステップ6に示す)、又はSiウエハの連続したフィスト(fist)の表面2の上だけに(図示せず)堆積させることができる。両面コーティングの場合、構造化された第2の表面3上のダイヤモンド層104は、更なるステップ7で、切断刃の後続の刃先形成ステップ9~11の前に除去されなければならない。ダイヤモンド層104の選択的除去は、例えばAr/Oプラズマ(例えば、RIE又はICPモード)を使用して行われ、これは、シリコン基板に向けた高い選択性を示す。ステップ8では、シリコンウエハ101が薄化され、それにより、ダイヤモンド層104が、基板材料を伴わずに自立し、残りの領域内の所望の基材厚さが達成される。このステップは、KOH若しくはHF/HNOエッチング液のウェット化学エッチングによって、又は好ましくは、RIE若しくはICPモードでCF、SF、若しくはCHF含有プラズマでのプラズマエッチングによって行うことができる。
【0078】
次のステップ9では、ダイヤモンド膜が、RIEシステムにおいてAr/Oプラズマによって異方的にエッチングされて、ダイヤモンド層104内に90°コーナー部を有するほぼ垂直のベベル5’を形成し、これは、ステップ10に示されるように、切断刃の第1の面2上に一次ベベル7を形成することが必要である。
【0079】
切断刃の第1の面2上に一次ベベル7を形成するために、この時点でSiウエハ101を回転させて、後続のエッチングステップ10(図9b)のために第1の面2を露出させる。Ar/Oプラズマにおいて物理的に濃縮された異方性RIEプロセスを利用することによって、90°コーナー部5’が面取りされて、一次ベベル7を形成する。プロセスの詳細は、例えばEP2727880に開示されている。
【0080】
最後に、ステップ11(図9c)では、図9dに示されるように、第2の面3上のSiウエハ101を処理して二次ベベル5を形成することによって、切断刃先の形成が完了される。プロセスパラメータを変化させることによって、複数のベベルを形成することができる。プロセスの詳細は、例えば、DE19859905A1に開示されている。
【0081】
図10には、先端半径が決定される方法が示されている。先端半径は、最初に、切断刃先1の第1のベベルの断面画像を半分に二分する線60を描くことによって決定される。線60が第1のベベルを二分する場所に、点65が描かれる。点65から110nmの距離において、線60に対して垂直な2の線61が描かれる。線61が第1のベベルを二分する場所に、2つの追加的な点66及び67が描かれる。次いで、点65、66、及び67から円62が構築される。円62の半径は、切断刃先4の先端半径である。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10