IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西安超碼科技有限公司の特許一覧

特許7513757網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法
<>
  • 特許-網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20240702BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20240702BHJP
【FI】
C04B38/00 304A
C01B32/05
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022571159
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 CN2021126258
(87)【国際公開番号】W WO2023019726
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】202110955080.6
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522452341
【氏名又は名称】西安超碼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】代 麗娜
(72)【発明者】
【氏名】谷 立民
(72)【発明者】
【氏名】趙 松
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】党 瑞萍
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4022875(US,A)
【文献】国際公開第98/02382(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空加熱保温を行うことにより前記ポリエチレンワックス粉末を溶解して重力の作用により前記前駆体ポリウレタンスポンジの孔隙に含浸させ、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得るステップ1と、
ステップ1で得られた素材を機械加工するステップ2と、
ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、加熱保温を行い、複数回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得るステップ3と、
ステップ3で得られた脱ワックスブランクを繰り返し洗浄した後に乾燥するステップ4と、
ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクを熱硬化性樹脂を含有するスラリーを使用してディップコーティングし、余分なスラリーを除去した後に陰乾しにし、次に高温硬化を行い、硬化体を得るステップ5と、
ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得るステップ6と、を含むことを特徴とする網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項2】
ステップ1では、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500であることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項3】
ステップ1では、前記真空加熱保温は、真空度が100Pa以下、温度が90℃~110℃、保温時間が1h~2hであることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項4】
ステップ2では、前記素材の機械加工中に、後続の焼結による寸法収縮を補うように10%~20%の仕上げ代が残されることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項5】
ステップ3では、前記混合溶液は質量比1:4~1:8のキシレンとノルマルヘプタンからなり、前記加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶であることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項6】
ステップ3では、前記加熱保温は、温度が90℃~110℃、時間が30min~60min、繰り返し回数が3~5回であることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項7】
ステップ4では、前記繰り返し洗浄に使用される試薬はエタノール、エチルエーテル又はクロロホルムであり、繰り返し洗浄の回数は2~4回であり、前記乾燥は温度が60℃、時間が1hであることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項8】
ステップ5では、前記ディップコーティングに使用されるスラリーはアミノフェノール樹脂/フルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液、又はアミノフェノール樹脂/フルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液とアスファルト粉末との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【請求項9】
ステップ6では、前記高温炭化は、温度が800℃~1000℃、昇温速度が1℃/minであることを特徴とする請求項1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多孔質炭素材料製造の技術分野に属し、具体的には、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
網目状ガラス状多孔質炭素は、ガラス状炭素の発泡体からなる三次元網目状微細孔材料であり、開孔率が90%~97%と高く、密度が小さく(0.03g/cm)、高い化学的安定性、比表面積及び導電率を有し、熱伝導率と熱膨張係数が全て非常に低く、構造的強度が大きく、流体に対する抵抗が小さく、生産コストが低いなどの利点があり、航空(例えば宇宙船の断熱層)、電気化学、生物医学、環境保護などの分野に広く利用されている。
【0003】
現在、海外では、網目状ガラス状多孔質炭素材料の研究・利用において大きな進展が得られている。Zimmer社が研究・開発した多孔質タンタル整形外科用インプラント材料の臨床利用での成功により、網目状ガラス状多孔質炭素ステントは医療分野で広く利用されている材料の一つとなった。A.Czerwinskiらは、網目状ガラス状多孔質炭素の表面にPbとPbOを電着して鉛蓄電池の正負極格子集電体として用いている。Czerwinskiらは、プラチナメッキされた網目状ガラス状多孔質炭素電極を用いた酸性溶液中のCOの吸着を検討している。T.Schoetzらは、導電性重合体の独特な特性を利用し、網目状ガラス状多孔質炭素を基板とし、エネルギー貯蔵材料として導電性重合体のナノ/微細孔薄膜を製造し、電極容量を向上させた。中国国内の網目状ガラス状多孔質炭素の研究は主に簡単な形状のものの製造と利用の段階にとどまっている。特許文献1は、三次元網目状黒鉛発泡体又は網目状ガラス炭素を用いて医療用多孔質タンタルを製造することを開示している。尉暁蔚らは自作の網目状ガラス炭素と犬の骨髄間質幹細胞を培養し、研究した結果、多孔質ガラス炭素ステントが体外では骨髄間質幹細胞の接着と増殖を促進し、体内では良好な骨誘導特性を持つことを示した。
【0004】
国外の研究に比べて、中国国内で製造された網目状ガラス状多孔質炭素材料は強度が低く、スラグが落ちやすく、加工の難度が高く、特に異形部品の製造に用いるのが困難であり、これにより、複雑な形状が要求された場合の当該材料の利用が制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第1907914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の従来技術の欠点に対して、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法を提供することである。該方法は、前駆体ポリウレタンスポンジの充填加工と硬化体の粉末埋込焼結とを組み合わせたプロセスを採用することにより、素材の加工性を改善し、ガラス状炭素を形成する過程で硬化体の体積が均一に収縮されることを確保し、産物である薄肉異形部品の寸法精度を向上させ、これにより、高寸法精度の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を順調に成形することを可能とし、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品が製造されにくいという問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本発明が採用する技術的解決手段は以下の通りである。
網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法であって、
前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空加熱保温を行い、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得るステップ1と、
ステップ1で得られた素材を機械加工するステップ2と、
ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、加熱保温を行い、複数回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得るステップ3と、
ステップ3で得られた脱ワックスブランクを繰り返し洗浄した後に乾燥するステップ4と、
ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクをディップコーティングし、余分なスラリーを除去した後に陰乾しにし、次に高温硬化を行い、硬化体を得るステップ5と、
ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得るステップ6と、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明は、ポリウレタンスポンジを用いて前駆体とし、その上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めた後、真空加熱保温を行い、加熱保温によりポリエチレンワックス粉末が溶解して重力の作用により前駆体ポリウレタンスポンジの孔隙に含浸し、真空条件により孔隙内の空気が効果的に除去され、ポリエチレンワックス粉末の充填効率が向上し、素材が得られ、機械加工を経てポリウレタンスポンジ薄肉異形部品が得られる。ポリエチレンワックス粉末の充填により前駆体ポリウレタンスポンジの強度を大幅に向上させ、素材の加工性を改善し、さらに素材を機械加工して得たポリウレタンスポンジ薄肉異形部品の寸法精度を確保する。機械加工後の素材を加熱して保温することで、孔隙内のポリエチレンワックス粉末を十分に除去し、繰り返し洗浄及び乾燥した後、ディップコーティングして陰乾し及び高温硬化を行い、ディップコーティングにより乾燥を経た脱ワックスブランクに樹脂炭化物を導入することにより、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品中の炭素含有量の向上に有利である。陰乾しによってスラリー中の溶媒を除去し、次に高温硬化して樹脂炭化物を化学的に変化させて、徐々に硬化成形させ、これにより、産物である薄肉異形部品の強度を向上させ、硬化体を得る。硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、硬化体中の樹脂炭化物と前駆体ポリウレタンスポンジは高温炭化中に小分子離脱、大分子鎖の熱分解破断及び脱水が発生してガラス状炭素に転化し、網目状ガラス状多孔質炭素構造を形成し、一方、固体炭素材料である黒鉛粉末で埋め立てることにより、黒鉛粉末中に埋没された硬化体を空間的に拘束し、高温炭化過程における硬化体の体積を均一に収縮させることを確保し、産物である薄肉異形部品の変形を回避し、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を順調に成形することを確保し、しかも、産物である薄肉異形部品の寸法精度を向上させる。
【0009】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ1では、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500であることを特徴とする。重合体の融点が分子量の低下に伴って低下し、後続の加熱保温によるポリエチレンワックス粉末の除去時の加熱温度の低下に有利であり、除去効果を改善することから、低分子量のポリエチレンワックス粉末を選択して充填するのが好ましい。
【0010】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ1では、前記真空加熱保温は、真空度が100Pa以下、温度が90℃~110℃、保温時間が1h~2hであることを特徴とする。この好ましい真空加熱保温のプロセスパラメータは、ポリウレタンスポンジの性能に影響を与えることなく、ポリエチレンワックス粉末が十分に溶解してポリウレタンスポンジの孔隙に充填されることが確保される。
【0011】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ2では、前記素材の機械加工中に、後続の焼結による寸法収縮を補うように10%~20%の仕上げ代が残されることを特徴とする。仕上げ代を残す措置を採用することにより、プロセスによる産物への悪影響に起因する誤差をなくし、異形部品を順調に成形することを確保し、産物である薄肉異形部品の寸法精度を向上させることに有利である。
【0012】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ3では、前記混合溶液は質量比1:4~1:8のキシレンとノルマルヘプタンからなり、前記加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶であることを特徴とする。この好ましい混合溶液の組成はポリエチレンワックスを十分に溶解することに有利であり、ポリエチレンワックスの除去効果を高める。また、キシレンとノルマルヘプタンはいずれも揮発しやすく、しかも毒性がある化学試薬であるので、還流凝縮装置を備えたガラス瓶を加熱保温設備として用いることにより、混合溶液が加熱されて揮発すると還流凝縮装置に入って冷却されて液化し、混合溶液に戻る。このように、揮発した有毒ガスが健康を脅かすことを防止するとともに、混合溶液の成分を動的平衡状態に保ち、すなわち、加熱保温の過程に凝縮還流の過程を伴う。
【0013】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ3では、前記加熱保温は、温度が90℃~110℃、時間が30min~60min、繰り返し回数が3~5回であることを特徴とする。低分子量、例えば分子量1500のポリエチレンワックス粉末は非極性結晶性高分子であり、上記の好ましい加熱保温の条件下で混合溶液に十分に溶解し、これにより、ポリエチレンワックス粉末が完全に除去されることを確保する。
【0014】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ4では、前記繰り返し洗浄に使用される試薬はエタノール、エチルエーテル又はクロロホルムであり、繰り返し洗浄の回数は2~4回であり、前記乾燥は温度が60℃、時間が1hであることを特徴とする。この好ましい試薬は全て脱ワックスブランクに残されたキシレンとノルマルヘプタンを効果的に除去することができ、より安全的なエタノールを採用することが好ましい。この好ましい乾燥温度は、試薬、特にエタノールの十分な揮発に有利であり、これにより、いかなる不純物による汚染がない脱ワックスブランクが得られる。
【0015】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ5では、前記ディップコーティングに使用されるスラリーはアミノフェノール樹脂/フルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液、又はアミノフェノール樹脂/フルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液とアスファルト粉末との混合物であることを特徴とする。この好ましいスラリー中に熱硬化性樹脂が含有されており、後続の陰乾し及び高温硬化プロセスにより、硬化体が一定の硬さを持つことを確保し、変形しにくく、しかも、産物の炭素含有量を向上させ、さらに産物の強度を向上させ、強度不足による崩壊を回避し、これにより、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の成形を確保する。
【0016】
上記の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法において、ステップ6では、前記高温炭化は、温度が800℃~1000℃、昇温速度が1℃/minであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記方法によって製造される網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品をさらに提供する。
【発明の効果】
【0018】
従来技術に比べて、本発明は以下の利点を有する。
1、本発明は、前駆体ポリウレタンスポンジにポリエチレンワックス粉末を充填して素材を製造した後、機械加工を行い、前駆体ポリウレタンスポンジの強度を向上させることにより素材の加工性を改善し、産物である薄肉異形部品の寸法精度を向上させ、硬化体の粉末埋込焼結プロセスと組み合わせることで、ガラス状炭素を形成する過程で硬化体の体積が均一に収縮されることを確保し、産物である薄肉異形部品の変形を回避し、これにより、高寸法精度の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を順調に成形することを可能とし、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品が製造されにくいという問題を解決する。
2、本発明は、低分子量のポリエチレンワックス粉末をポリウレタンスポンジ前駆体に充填することにより、低温で十分に充填して前駆体ポリウレタンスポンジの強度を向上させるのに有利でありながら、後続のワックス除去時の加熱温度を下げ、産物である薄肉異形部品への好ましくない残留を減少させる。
3、本発明は、ディップコーティングにより乾燥を経た脱ワックスブランクに樹脂炭化物を導入することにより、産物である網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品中の炭素含有量を向上させることに有利であり、さらに産物である薄肉異形部品の強度を高め、その形状の崩壊を回避する。
4、本発明は、コストが低く、操作性が高く、プロセスの安定性に優れるなどの利点があり、多孔質炭素材料薄肉異形部品の製造技術に広く利用されてもよい。
【0019】
以下、図面及び実施例を参照して本発明の技術的解決手段についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例3で製造された網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施例1
本実施例は以下のステップを含む。
【0022】
ステップ1、前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空度が100Pa以下となるまで真空吸引した後、90℃に昇温して1h保温し、真空加熱保温を行い、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得た。前記前駆体ポリウレタンスポンジは三次元網目状開孔構造を有するブロックであり、かつ、孔隙率が98%以上であり、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500である。
ステップ2、ステップ1で得られた素材を機械加工し、後続の焼結による寸法収縮を補うように10%の仕上げ代を残した。
ステップ3、ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、90℃に加熱して40min保温し、3回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得た。前記混合溶液は質量比1:8のキシレンとノルマルヘプタンからなり、加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶である。
ステップ4、ステップ3で得られた脱ワックスブランクをエタノールで2回繰り返し洗浄し、次に、60℃で1h乾燥した。
ステップ5、ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクをディップコーティングし、余分なスラリーを除去して陰乾しにし、次に150℃で高温硬化を行い、硬化体を得た。前記ディップコーティングに使用されるスラリーはフルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液であり、スラリー中のフルフラール樹脂とエタノールとの質量比は1:1であり、かつ、スラリー中には5wt%の1mol/Lリン酸溶液硬化剤が含有されている。
ステップ6、ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、1℃/minの昇温速度で800℃に加熱して高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得た。
【0023】
本実施例のステップ4では、繰り返し洗浄に使用される溶媒はエチルエーテル又はクロロホルムであってもよい。
【0024】
実施例2
本実施例は以下のステップを含む。
【0025】
ステップ1、前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空度が100Pa以下となるまで真空吸引した後、100℃に昇温して1.5h保温し、真空加熱保温を行い、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得た。前記前駆体ポリウレタンスポンジは三次元網目状開孔構造を有するブロックであり、かつ、孔隙率が98%以上であり、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500である。
ステップ2、ステップ1で得られた素材を機械加工し、後続の焼結による寸法収縮を補うように15%の仕上げ代を残した。
ステップ3、ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、110℃に加熱して60min保温し、4回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得た。前記混合溶液は質量比1:6のキシレンとノルマルヘプタンからなり、加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶である。
ステップ4、ステップ3で得られた脱ワックスブランクをエタノールで3回繰り返し洗浄し、次に、60℃で1h乾燥し、
ステップ5、ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクをディップコーティングし、余分なスラリーを除去して陰乾しにし、次に170℃で高温硬化を行い、硬化体を得た。前記ディップコーティングに使用されるスラリーはアミノフェノール樹脂のアルコール溶液であり、スラリー中のアミノフェノール樹脂とエタノールとの質量比は1:1である。
ステップ6、ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、1℃/minの昇温速度で900℃に加熱して高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得た。
【0026】
本実施例のステップ4では、繰り返し洗浄に使用される溶媒はエチルエーテル又はクロロホルムであってもよい。
【0027】
実施例3
本実施例は以下のステップを含む。
【0028】
ステップ1、前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空度が100Pa以下となるまで真空吸引した後、90℃に昇温して2h保温し、真空加熱保温を行い、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得た。前記前駆体ポリウレタンスポンジは三次元網目状開孔構造を有するブロックであり、かつ、孔隙率が98%以上であり、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500である。
ステップ2、ステップ1で得られた素材を機械加工し、後続の焼結による寸法収縮を補うように20%の仕上げ代を残した。
ステップ3、ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、90℃に加熱して30min保温し、5回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得た。前記混合溶液は質量比1:4のキシレンとノルマルヘプタンからなり、加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶である。
ステップ4、ステップ3で得られた脱ワックスブランクをエタノールで4回繰り返し洗浄し、次に、60℃で1h乾燥した。
ステップ5、ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクをディップコーティングし、余分なスラリーを除去して陰乾しにし、次に150℃で高温硬化を行い、硬化体を得た。前記ディップコーティングに使用されるスラリーはアミノフェノール樹脂のアルコール溶液であり、スラリー中のアミノフェノール樹脂とエタノールとの質量比は1:1であり、かつ、スラリー中に10wt%のアスファルト粉末が含有されている。
ステップ6、ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、1℃/minの昇温速度で900℃に加熱して高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得た。
【0029】
図1は本実施例で製造された網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の画像であり、図1から分かるように、該多孔質炭素薄肉異形部品は、半球状の中空多孔質炭素寛骨臼用ステントであり、肉厚が3mm、直径が50mm、開孔率が96%以上である。
【0030】
本実施例のステップ4では、繰り返し洗浄に使用される溶媒はエチルエーテル又はクロロホルムであってもよい。
【0031】
実施例4
本実施例は以下のステップを含む。
【0032】
ステップ1、前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空度が100Pa以下となるまで真空吸引した後、110℃に昇温して1h保温し、真空加熱保温を行い、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得た。前記前駆体ポリウレタンスポンジは三次元網目状開孔構造を有するブロックであり、かつ、孔隙率が98%以上であり、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500である。
ステップ2、ステップ1で得られた素材を機械加工し、後続の焼結による寸法収縮を補うように15%の仕上げ代を残した。
ステップ3、ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、100℃に加熱して50min保温し、4回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得た。前記混合溶液は質量比1:6のキシレンとノルマルヘプタンからなり、加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶である。
ステップ4、ステップ3で得られた脱ワックスブランクをエタノールで3回繰り返し洗浄し、次に、60℃で1h乾燥した。
ステップ5、ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクをディップコーティングし、余分なスラリーを除去して陰乾しにし、次に150℃で高温硬化を行い、硬化体を得た。前記ディップコーティングに使用されるスラリーはフルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液であり、スラリー中のフルフラール樹脂とエタノールとの質量比は1:1であり、かつ、スラリー中に5wt%の1mol/Lリン酸溶液と10wt%のアスファルト粉末が含有されている。
ステップ6、ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、1℃/minの昇温速度で1000℃に加熱して高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得た。
【0033】
本実施例のステップ4では、繰り返し洗浄に使用される溶媒はエチルエーテル又はクロロホルムであってもよい。
【0034】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。発明の技術的な趣旨に基づいて以上の実施例について行った任意の簡単な修正、変更や同等変化は、いずれも本発明の技術的解決手段の特許範囲内に含まれるものとする。
【0035】
(付記)
(付記1)
前駆体ポリウレタンスポンジを容器に入れた後、前駆体ポリウレタンスポンジの上にポリエチレンワックス粉末を敷き詰めて、真空オーブンに移し、真空加熱保温を行い、室温に降温して真空を解除した後、取り出して素材を得るステップ1と、
ステップ1で得られた素材を機械加工するステップ2と、
ステップ2における機械加工を経た素材を密閉された混合溶液に浸漬し、加熱保温を行い、複数回繰り返した後、取り出し、脱ワックスブランクを得るステップ3と、
ステップ3で得られた脱ワックスブランクを繰り返し洗浄した後に乾燥するステップ4と、
ステップ4における乾燥を経た脱ワックスブランクをディップコーティングし、余分なスラリーを除去した後に陰乾しにし、次に高温硬化を行い、硬化体を得るステップ5と、
ステップ5で得られた硬化体を黒鉛粉末中に埋没させて高温炭化を行い、網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品を得るステップ6と、を含むことを特徴とする網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0036】
(付記2)
ステップ1では、前記ポリエチレンワックス粉末の分子量が1500であることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0037】
(付記3)
ステップ1では、前記真空加熱保温は、真空度が100Pa以下、温度が90℃~110℃、保温時間が1h~2hであることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0038】
(付記4)
ステップ2では、前記素材の機械加工中に、後続の焼結による寸法収縮を補うように10%~20%の仕上げ代が残されることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0039】
(付記5)
ステップ3では、前記混合溶液は質量比1:4~1:8のキシレンとノルマルヘプタンからなり、前記加熱保温に使用される設備は還流凝縮装置を備えたガラス瓶であることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0040】
(付記6)
ステップ3では、前記加熱保温は、温度が90℃~110℃、時間が30min~60min、繰り返し回数が3~5回であることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0041】
(付記7)
ステップ4では、前記繰り返し洗浄に使用される試薬はエタノール、エチルエーテル又はクロロホルムであり、繰り返し洗浄の回数は2~4回であり、前記乾燥は温度が60℃、時間が1hであることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0042】
(付記8)
ステップ5では、前記ディップコーティングに使用されるスラリーはアミノフェノール樹脂/フルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液、又はアミノフェノール樹脂/フルフリルアルコール樹脂のアルコール溶液とアスファルト粉末との混合物であることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0043】
(付記9)
ステップ6では、前記高温炭化は、温度が800℃~1000℃、昇温速度が1℃/minであることを特徴とする付記1に記載の網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品の製造方法。
【0044】
(付記10)
付記1~付記9のいずれか1つに記載の方法によって製造される網目状ガラス状多孔質炭素薄肉異形部品。
図1