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  • 特許-収縮低減剤及びセメント組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】収縮低減剤及びセメント組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20240702BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240702BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20240702BHJP
   C04B 103/60 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C04B24/26 D
C04B28/02
C08F220/56
C04B103:60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022580685
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005398
(87)【国際公開番号】W WO2022173003
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】P 2021021447
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 優弥
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/209057(WO,A1)
【文献】特開2020-200214(JP,A)
【文献】特許第7248509(JP,B2)
【文献】特開2014-091636(JP,A)
【文献】特開平04-346833(JP,A)
【文献】特開平09-002854(JP,A)
【文献】特開2010-143815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
C04B 103/60
C08F 220/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン性非架橋性単量体40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなり、前記単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が59.95モル%以下である架橋重合体を含み、
pH12.9の水溶液(ここで、pH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液)に25℃で2時間浸漬した場合の前記架橋重合体の吸水倍率が25g/g未満である、収縮低減剤。
【請求項2】
自己収縮低減剤である、請求項1の収縮低減剤。
【請求項3】
前記単量体混合物中、前記アニオン性単量体の含有量が20モル%以下である、請求項1または2に記載の収縮低減剤。
【請求項4】
前記単量体混合物中、前記アニオン性単量体の含有量が20モル%を超え59.95モル%以下であり、前記ノニオン性架橋性単量体の含有量が0.5モル%以上である、請求項1または2に記載の収縮低減剤。
【請求項5】
前記ノニオン性架橋性単量体の含有量が3モル%以下である、請求項4に記載の収縮低減剤。
【請求項6】
前記ノニオン性非架橋性単量体が(メタ)アクリルアミド系単量体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の収縮低減剤。
【請求項7】
ノニオン性非架橋性単量体40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなり、前記単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が59.95モル%以下であり、かつ、pH12.9の水溶液(ここで、pH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液)に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率が25g/g未満である架橋重合体を用いた、セメントおよび水を含む組成物を成形してなる成形体の収縮低減方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の収縮低減剤、セメント、及び水を含むことを特徴とするセメント組成物。
【請求項9】
セメントを分散させるためのセメント分散剤をさらに含むことを特徴とする請求項に記載のセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収縮低減剤及びセメントの収縮低減方法に関する。より詳しくは、本発明は、ノニオン性架橋重合体を含有する収縮低減剤、ノニオン性架橋重合体を用いたセメントの収縮低減方法、収縮低減剤を含むセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建築構造物等を構築するために用いられるセメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物には、セメントの他に、セメント組成物の流動性を高めるためにセメント分散剤が加えられ、さらに水が加えられている。
【0003】
セメント分散剤として、炭素数4のアルケニル基を有する不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系モノマー由来の構成単位と、不飽和モノカルボン酸系モノマー由来の構成単位とを含む共重合体を必須とするセメント分散剤(特許文献1参照)等が開発され、分散性の発揮とともに、セメント組成物の硬化遅延の改善や、早期強度の発現を実現している。
【0004】
また、液体吸収剤をセメントに配合することは従来から検討されており、セメント硬化物の亀裂発生抑制に効果があることは知られている(特許文献2参照)。
【0005】
一方、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4には、吸水性樹脂製品をセメント物中に添加してセメント配合物の自己収縮特性を評価した結果が紹介されている。
【0006】
さらには、関連する文献として特許文献3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-121055号公報
【文献】特開平4-346833号公報
【文献】国際公開第2020/209057号
【非特許文献】
【0008】
【文献】“Effect of internal curing by using superabsorbent polymer(SAP)on autogenous shrinkage and other properties of a high-performance fine-grained concrete: result of a RILEM round-robin test”, Materials and Structures (2014) 47:541-562
【文献】“Mitigating autogenous shrinkage in HPC by internal curing using superabsorbent polymers”, International RILEM Conference on Volume Changes of Hardening Concrete: Testing and Mitigation 20-23 August 2006
【文献】“The influence of superabsorbent polymers on the autogenous shrinkage properties of cement pastes with supplementary cementitious materials”, Cement and Concrete Research 74(2015) 59-67
【文献】”The use of superabsorbent polymers in high performance concrete to mitigate autogenous shrinkage in a large-scale demonstrator”, Sustainability 2020,12(11),4741
【発明の概要】
【0009】
セメント組成物においては、セメントの水和自身によって内部が乾燥する自己収縮という現象が存在する。セメント組成物の内部で水の分布が偏っていると、水が偏在している部位が大きく自己収縮し、水が偏在していない部位は自己収縮を生じない(もしくは収縮量が小さい)ため、コンクリートのひび割れが生じたりコンクリートの強度が低下したりすることがある。特許文献1に記載のセメント分散剤用の共重合体は、セメントを水中に分散させるために用いられるものであり、セメント組成物中で水を均一に分散させる作用を有するものではない。また、上述した水の偏在による自己収縮の偏りの問題は、特許文献1に記載されたようなセメント分散剤を使用した場合にも生じる問題であった。
【0010】
自己収縮については、日本コンクリート工学協会・自己収縮研究委員会において「セメント系材料において、セメントの水和により凝結開始以後に巨視的に生じる体積減少」と定義している。その中に「物質の侵入や逸散、温度変化、外力や外部拘束に起因する体積変化は含まれない」としている。すなわち、自己収縮とは応力伝達できるようになる凝結始発以降の硬化体の現象であること、空隙なども含めた巨視的な体積減少のこと、水分蒸発によって生実乾燥収縮や温度が降下する際に生じる温度収縮などを除く収縮のことを指している。
【0011】
特許文献2には、N-ビニルアセトアミド架橋化物によるセメント及びモルタル組成物のブリージングの抑制、湿潤養生効果による硬化物の亀裂発生防止、強度の上昇、および寸法変化率の向上については報告されているが、セメント組成物の自己収縮低減効果については検討されていない。
【0012】
非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4には、吸水性樹脂製品をセメント物中に添加してセメント配合物の自己収縮特性を評価した結果が紹介されている。しかし、これらの吸水性樹脂をセメントの乾燥収縮や自己収縮の低減目的で添加する場合、実施行においては十分な性能を発揮し得ない問題がある。
【0013】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、収縮低減性能を発揮させることのできる収縮低減剤、及び、このような収縮低減剤を含むセメント組成物を提供することを目的とする。
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定のノニオン性単量体を含む架橋重合体が、収縮低減性能を有することを見出して、本発明に想到した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、自己収縮ひずみを測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、特定の架橋重合体を含有することを特徴とする収縮低減剤である。本発明はそして、上記収縮低減剤による、セメント及び水を含むセメント組成物の収縮低減方法であり、上記収縮低減剤、セメント及び水を含むセメント組成物でもある。
【0017】
本発明のノニオン性架橋重合体は、乾燥収縮低減や自己収縮低減の収縮低減の性能を有する。
【0018】
以下に本発明を詳述する。なお、以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態であり、本明細書に開示されているとみなされる(つまり、補正の適法な根拠となる)。
【0019】
以下、収縮低減剤、架橋重合体、セメント組成物について詳細に説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。更に、「重量」と「質量」、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」はそれぞれ同義語として扱う。
【0020】
〔収縮低減剤〕
本発明の収縮低減剤は、ノニオン性非架橋性単量体40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなり、単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が59.95モル%以下である架橋重合体を含有する。また、架橋重合体を、pH12.9の水溶液(ここで、pH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液)に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率が25g/g未満である。上記架橋重合体を「本発明の架橋重合体」とも称する。
【0021】
本発明の収縮低減剤を用いることで、成形体の収縮、特に自己収縮が顕著に低減する。収縮低減には、自己収縮と乾燥収縮とがある。ここで、自己収縮とは、水セメント比が低く、またはごく初期の材齢において、水分逸散が少ない環境下で水和反応によって構造物が盛んに収縮する現象を指す。自己収縮は遅くとも7日後程度でその現象が収束するため、ごく初期にみられる収縮であると言える。収縮低減の効果、特に自己収縮低減の効果は、本発明の架橋重合体が、架橋構造に起因して水添加直後(2時間程度まで)は高い吸水性能を発現しないので、水添加直後の水セメント比は高く維持されるために、初期の収縮である自己収縮が抑制されると考えられる。したがって、本発明の好ましい態様は、自己収縮低減剤である。さらには、例えば、自己収縮の収束地点である7日間経過後においては、アルカリ存在下での架橋構造の分解に起因して架橋重合体の吸水性能が初期(2時間程度)の吸水性能よりも高いものとなっている(後述の実施例参照)。これは架橋集合体が緩やかに保水するようになっていることを意味し、徐々に吸水し、その後水を徐放することで、セメントの水和反応を緩やかに進行させることで、収縮を抑制することが可能となる。本構成とすることでの、収縮低減、特には自己収縮低減の特性は、上記文献のいずれにも記載されておらず、すなわち、収縮低減剤としての用途は知られていない。
【0022】
架橋重合体は、pH12.9の水溶液に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率が25g/g未満である。架橋重合体がこのような特性を有することで、収縮低減効果が発揮される。架橋重合体の、pH12.9の水溶液に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率は、長期で徐放する水が多い方がコンクリート中の相対湿度を維持できセメントの水和反応を緩やかに進行させることができるため、5g/g以上であることが好ましく、10g/g以上であることがより好ましく、12g/g以上であることがさらにより好ましい。なお、上記25℃は、室内温度が25℃であるとの意である。
【0023】
本明細書においてpH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液である。pH12.9の水溶液は、セメントを含む場合に強アルカリになることを模したセメント模擬液である。このため、当該水溶液によって、セメント組成物に水を添加した際の架橋重合体の挙動を模倣することができる。
【0024】
また、pH12.9の水溶液に25℃で7日間浸漬した場合の架橋重合体の吸水倍率は、例えば、10g/g以上であり、16g/g以上であり、20g/g以上であることが好ましく、30g/g以上であることがより好ましく、35g/g以上であることが特に好ましい。初期(2時間)の吸水倍率は低いが長期経過後に一定程度の吸水性能を有することで、収縮低減に効果があると考えられる。なお、pH12.9の水溶液に25℃で7日間浸漬した場合の吸水倍率は、高ければ高いほど好ましく、その上限は特に限定されるものではないが、通常50g/g以下であり、45g/g以下であることが好ましい。
【0025】
架橋重合体は粉末であることが好ましく、粉末の形状としては、球状やその凝集物でも、含水ゲル又は乾燥重合体に対して粉砕工程を経て得られた不定形(破砕状)でもよいが、不定形(破砕状)であることが好ましい。
【0026】
架橋重合体(粉末)の平均粒子径(D50)は、10~1000μmであることが好ましく、100~850μmの範囲であることがより好ましく、250~850μmの範囲、更に250~700μmの範囲、更に250~600μmの範囲であることがさらにより好ましい。架橋重合体(粉末)の平均粒子径が大きくなることで、水の徐放性が高まり、長期強度が一層向上するものと考えられる。また、架橋重合体(粉末)の平均粒子径が上記上限以下であることで、耐凍結融解抵抗性の点から好ましい。
【0027】
収縮低減剤は、架橋重合体を主成分とする。ここで、主成分とは、収縮低減剤の80質量%以上であることを指し、好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは98質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である(上限は100質量%、すなわち、架橋重合体のみからなる収縮低減剤)。
【0028】
収縮低減剤には、架橋重合体の他、架橋重合体の安定化などを目的として、界面活性剤、着色防止剤、還元剤等を、それぞれ0~10質量%、好ましくは0.1~1質量%含有してもよい。
【0029】
〔架橋重合体〕
本発明の架橋重合体は、ノニオン性非架橋性単量体40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなる。換言すれば、架橋重合体は、ノニオン性非架橋性単量体由来の構成単位40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体由来の構成単位0.05モル%以上を有する。
【0030】
単量体混合物は、架橋重合体の主成分である重合体を形成する重合性単量体全体を指すものであり、重合体を形成する単量体合計が100モル%となる。そして、単量体混合物は、少なくとも、ノニオン性非架橋性単量体と、ノニオン性架橋性単量体とを含む。また、ノニオン性非架橋性単量体およびノニオン性架橋性単量体の双方が重合性の単量体(不飽和二重結合を有する単量体)である。ノニオン性架橋性単量体は、例えば不飽和二重結合を2以上有し、主鎖同士を架橋する役割を果たす単量体である。
【0031】
一実施態様において、単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が59.95モル%以下である(下限0モル%)。つまり、単量体混合物がアニオン性単量体を含んでも、含まなくてもよい。
【0032】
また、一実施態様において、単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が20モル%以下(下限0モル%)である。さらに、好適な一実施態様において、架橋重合体は、ノニオン性非架橋性単量体由来の構成単位50モル%以上およびノニオン性架橋性単量体由来の構成単位0.1モル%以上を有し、かつ、アニオン性単量体由来の構成単位が20モル%以下(下限0モル%)である。以下、単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が20モル%以下である態様を態様1とも称する。
【0033】
また、他の一実施態様において、単量体混合物中、前記アニオン性単量体の含有量が20モル%を超え59.95モル%以下であり、ノニオン性架橋性単量体の含有量が0.5モル%以上である。以下、単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が20モル%を超え59.95モル%以下であり、ノニオン性架橋性単量体の含有量が0.5モル%以上である態様を態様2とも称する。
【0034】
なお、ノニオン性非架橋性単量体由来の構成単位、ノニオン性架橋性単量体由来の構成単位、アニオン性単量体由来の構成単位は、各単量体の製造仕込み時のモル比と一致するものと考えてよい。すなわち、他の形態は、架橋重合体を含む、収縮低減剤であって、架橋重合体が、ノニオン性非架橋性単量体由来の構成単位40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体由来の構成単位0.05モル%以上を有し、かつ、アニオン性単量体由来の構成単位が59.95モル%以下である、収縮低減剤である。
【0035】
(ノニオン性非架橋性単量体)
ノニオン性非架橋性単量体は、架橋重合体を構成する単量体成分の主成分である。ノニオン性非架橋性単量体は、単量体中、不飽和二重結合を一つ有するものを指す。
【0036】
ノニオン性非架橋性単量体は、本発明の効果を一層発揮することができるので、水溶性であることが好ましい。以下、水溶性のノニオン性非架橋性単量体を水溶性ノニオン性非架橋性単量体とも称する。ここで、水溶性ノニオン性非架橋性単量体における「水溶性」とは、25℃で水100gに対して5g以上溶解することを指す。水溶性ノニオン性非架橋性単量体は、水100gに対して、10g以上溶解することが好ましく、50g以上溶解することがより好ましく、100g以上溶解することがさらに好ましい。
【0037】
ノニオン性非架橋性単量体としては、単量体中、不飽和二重結合を一つ有するものであれば、特に限定されるものではない。ノニオン性非架橋性単量体は、好適にはN-ビニルアシルアミドを除く。ノニオン性非架橋性単量体としては、具体的には、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-ビニルピロリドン等のN-ビニルラクタム系単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル等のヒドロキシ(メタ)アクリレート;N-(2-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の不飽和アミン;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;下記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体;
【0038】
【化1】
【0039】
(一般式(1)中、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、ROは、同一または異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、nは、ROで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、nは1~500の数であり、xは0~2の整数であり、yは0または1である。)等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
上記一般式(1)において、Rは水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。ここで、炭素原子数1~30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1~30のアルケニル基、炭素原子数1~30のアルキニル基、炭素原子数6~30の芳香族基などが挙げられる。本発明の効果を一層発現させ得る点で、Rは、好ましくは、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であり、より好ましくは、水素原子または炭素原子数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基であり、特に好ましくは、水素原子または炭素原子数1~6のアルキル基である。上記一般式(1)において、nは1~500の数であるが、好ましくは10~300であり、より好ましくは、10~100である。ROは、同一または異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表し、好ましくは炭素原子数2~8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2~4のオキシアルキレン基である。ROの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基が必須成分として含まれることが好ましく、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、オキシアルキレン基全体の90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、オキシアルキレン基全体の100モル%がオキシエチレン基であることが特に好ましい。上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体は、従来公知の方法によって製造することができる。
【0041】
また、初期には吸水性能が抑制されることから、ノニオン性非架橋性単量体が、pH12.9の水溶液に25℃で2時間浸漬した場合に加水分解しないことが好ましい。ここで、加水分解しないとは、加水分解した割合(加水分解率)が5質量%以下であることを指す。2時間で加水分解を起こさないことで、ノニオン性非架橋性単量体が構造を維持しているので、初期に吸水性を発現しにくくなる。このような初期に加水分解しないノニオン性非架橋性単量体としては、アクリルアミド、N,N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0042】
また、収縮低減効果に一層優れることから、ノニオン性非架橋性単量体が、(メタ)アクリルアミド系単量体、ヒドロキシ(メタ)アクリレート、および上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、(メタ)アクリルアミド系単量体を含むことがより好ましく、(メタ)アクリルアミドを含むことがさらにより好ましく、アクリルアミドを含むことが特に好ましい。さらに、ノニオン性非架橋性単量体が(メタ)アクリルアミドのみであってもよいし、アクリルアミドのみであってもよい。また、他の好適な形態は、ノニオン性非架橋性単量体が、(メタ)アクリルアミド系単量体および上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールアルケニルエーテル系単量体を組み合わせて用いる形態である。
【0043】
単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量は40モル%以上である。ノニオン性非架橋性単量体の含有量が、40モル%以上であることで、添加によっても初期のセメント組成物の粘性/流動性が変化しにくい。単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量は、初期には吸水性能が抑制されることから、好ましい順に、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、93モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、98モル%以上、99モル%以上である。単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量の上限は、吸水性能を確保する観点から、99.95モル%以下であることが好ましい。また、ノニオン性非架橋性単量体の含有量は、99.85モル%以下であってもよい。なお、単量体混合物中の各単量体の含有量は小数点第2位まで求めた値を採用する。
【0044】
(ノニオン性架橋性単量体)
ノニオン性架橋性単量体は、2個以上の重合性不飽和基を有する単量体である。ノニオン性架橋性単量体によって架橋構造(架橋体)が形成され、吸水性能が向上する。
【0045】
ノニオン性架橋性単量体は、本発明の効果を一層発揮することができるので、水溶性であることが好ましい。以下、水溶性のノニオン性架橋性単量体を水溶性ノニオン性架橋性単量体とも称する。ここで、水溶性ノニオン性架橋性単量体における「水溶性」とは、水100gに対して5g以上溶解する単量体を指す。水溶性ノニオン性架橋性単量体は、水100gに対して10g以上溶解することが好ましく、50g以上溶解することがより好ましく、100g以上溶解することがさらに好ましい。
【0046】
ノニオン性架橋性単量体としては、特に限定されるものではないが、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物であることが好ましく、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド系単量体;ジエチレングリコールジアクリレートなどの(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどのシアヌール酸又はイソシアヌール酸のアリルエステル;等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して用いることができる。
【0047】
これらの中でも、ノニオン性架橋性単量体としては、(メタ)アクリルアミド系単量体、シアヌール酸又はイソシアヌール酸のアリルエステルおよび多官能(メタ)アクリレートであることが好ましく、好適なノニオン性非架橋性単量体が(メタ)アクリルアミド系単量体であり、また収縮抑制も一層向上することから、ノニオン性架橋性単量体についても(メタ)アクリルアミド系単量体を含むことが好ましく、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドを含むことがより好ましく、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを含むことがさらにより好ましい。さらに、ノニオン性架橋性単量体が(メタ)アクリルアミド系単量体のみであってもよいし、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドのみであってもよいし、N,N’-メチレンビスアクリルアミドのみであってもよい。
【0048】
ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、0.05モル%以上である。ノニオン性架橋性単量体の含有量が0.05モル%以上であることで、本発明の効果が発現する。収縮抑制に優れるという本発明の効果が一層奏されることから、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、好ましい順に、0.1モル%以上、0.15モル%以上、0.2モル%以上、0.5モル%以上である。添加初期のセメント組成物の粘性が低いという観点からは、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、0.8モル%以上であってもよく、1.0モル%以上であってもよい。高密度な架橋構造を有することで、架橋重合体が保持した水をセメント組成物に徐々に放出することができ、収縮が向上すると考えられる。また、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、吸水性能の観点から、8.0モル%以下であることが好ましく、5.0モル%以下であることがより好ましく、3.0モル%以下であることがさらに好ましい。
【0049】
尚、ノニオン性架橋性単量体は、重合工程前の調製後のノニオン性非架橋性単量体水溶液に全量添加してもよく、一部を重合開始後に添加してもよい。
【0050】
(アニオン性単量体)
アニオン性単量体とは、単量体中にアニオン性官能基またはその塩の基を有する単量体を指す。アニオン性官能基とは、カウンターイオンが解離してアニオンとなる(アニオン化する)官能基を意味する。
【0051】
アニオン性官能基またはその塩の基としては、例えば、スルホン酸(塩)基、硫酸(塩)基、リン酸(塩)基、ホスホン酸(塩)基、カルボン酸(塩)基(カルボキシル基またはその塩の基)等が挙げられる。
【0052】
アニオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-スルホエチルメタクリル酸Na、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、リン酸モノ(2-ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2-ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、ポリアルキレレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等のアニオン性不飽和単量体およびこれらの塩が挙げられる。
【0053】
本実施形態においては、単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体40モル%以上およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上であるので、アニオン性単量体の単量体混合物中の含有量は、59.95モル%以下となる。アニオン性単量体の単量体混合物中の含有量が59.95モル%以下であることで、架橋重合体による初期の吸水が抑制され、収縮抑制が発揮される。
【0054】
本実施形態においては、ノニオン性単量体、アニオン性単量体の他、カチオン性単量体を含んでいてもよい。カチオン性単量体とは、単量体中にカチオン性官能基またはその塩の基を有する単量体を指す。カチオン性官能基とは、カウンターイオンが解離してカチオンとなる(カチオン化する)官能基を意味する。
【0055】
カチオン性単量体としては、第四級化N-ビニルイミダゾール、第四級化N-アリルイミダゾール、第四級化4-ビニルピリジン、第四級化1-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]-1H-イミダゾール、1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-1H-イミダゾールおよびこれらの塩が挙げられる。
【0056】
本実施形態においては、カチオン性単量体の単量体混合物中の含有量は、20モル%以下であることが好ましく、好ましい順に10モル%未満、5モル%以下、4モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下であり、0モル%である(すなわち、カチオン性単量体を含まない)ことが最も好ましい。
【0057】
本発明の好適な形態は、架橋重合体が、イオン性単量体(アニオン性単量体およびカチオン性単量体)を含まない、すなわち、架橋重合体がノニオン性非架橋性単量体およびノニオン性架橋性単量体を重合してなる形態である。
【0058】
(態様1:単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が20モル%以下である)
単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量は40モル%以上である。単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量は、初期には吸水性能が抑制されることから、好ましい順に、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、93モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、98モル%以上、99モル%以上である。単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量の上限は、吸水性能を確保する観点から、99.95モル%以下であることが好ましく、99.85モル%以下であることがより好ましい。なお、単量体混合物中の各単量体の含有量は小数点第2位まで求めた値を採用する。
【0059】
収縮低減(特に自己収縮低減)という本発明の効果が一層されることから、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、好ましい順に、0.05モル%以上、0.1モル%以上、0.15モル%以上である。高密度な架橋構造を有することで、初期の吸水性能が抑制されるとともに、時間経過後に架橋重合体が保持した水をセメント組成物に徐々に放出することができ、収縮が一層低減されると考えられる。また、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、吸水性能の観点から、好ましい順に、10モル%以下、8モル%以下で、5モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1.5%以下、1モル%以下である。
【0060】
収縮低減の観点から、アニオン性単量体の単量体混合物中の含有量は、好ましい順に15モル%以下、10モル%以下、10モル%未満、5モル%以下、4モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、1モル%以下であり、0モル%である(すなわち、アニオン性単量体を含まない)ことが最も好ましい。
【0061】
(態様2:単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が20モル%を超え59.95モル%以下であり、ノニオン性架橋性単量体の含有量が0.5モル%以上である)
本態様は、構成される単量体の中でアニオン性単量体の含有量が高い領域である。アニオン性単量体が多い領域では、初期の吸水性能を抑制する目的で、ノニオン性架橋性単量体の含有量が0.5モル%以上であることが好ましい。
【0062】
態様2において、単量体混合物中、ノニオン性非架橋性単量体の含有量は、40~75モル%であることが好ましく、40~70モル%であることがより好ましく、40~65モル%であることがさらにより好ましい。
【0063】
収縮低減(特に自己収縮低減)という本発明の効果が一層されることから、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、好ましい順に、0.05モル%以上、0.1モル%以上、0.15モル%以上、0.2モル%以上、0.5モル%以上である。高密度な架橋構造を有することで、初期の吸水性能が抑制されるとともに、時間経過後に架橋重合体が保持した水をセメント組成物に徐々に放出することができ、収縮が一層低減すると考えられる。また、ノニオン性架橋性単量体の単量体混合物中の含有量は、吸水性能の観点から、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、1.5モル%以下であることがさらにより好ましい。
【0064】
(架橋重合体の製造方法)
架橋重合体の製造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法により製造することができる。架橋重合体を得るための重合方法として、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈殿重合、水溶液重合又は逆相懸濁重合等を挙げることができるが、ここでは、一例として、水溶液重合を用いた製造方法を挙げる。
【0065】
(1)単量体混合物水溶液の調製工程
本工程は、重合体を構成する各単量体を溶媒である水に溶解させて単量体混合物水溶液を調製する工程である。
【0066】
各単量体は、一括で添加しても、順番に添加してもよい。ここで、水溶液とは、水分散液も含む概念である。単量体混合物水溶液には、必要により微量成分(キレート剤、界面活性剤、分散剤等)等のセメント用添加剤を構成する成分を含んでいてもよい。
【0067】
単量体混合物水溶液における「水溶液」とは、溶媒の100質量%が水に限定されず、水溶性有機溶剤(例えば、アルコール等)を0~30質量%、好ましくは0~5質量%を併用してもよく、本発明ではこれらを水溶液として扱う。
【0068】
(2)水溶液重合工程
水溶液重合は、分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許第4625001号、同第4873299号、同第4286082号、同第4973632号、同第4985518号、同第5124416号、同第5250640号、同第5264495号、同第5145906号、同第5380808号、欧州特許第0811636号、同第0955086号、同第0922717号等に開示されている。
【0069】
上記重合時における単量体水溶液の濃度については、特に制限がないが、20質量%~飽和濃度以下が好ましく、25~80質量%がより好ましく、30~70質量%が更に好ましい。該濃度が20質量%以上であることで、生産性の低下を抑制できる。尚、単量体のスラリー(水分散液)での重合は物性の低下が見られるため、飽和濃度以下で重合を行うことが好ましい。
【0070】
重合工程においては、上記で得られた単量体混合物水溶液に重合開始剤が添加される。
【0071】
使用される重合開始剤は、重合形態によって適宜決定され、特に限定されないが、例えば、光分解型重合開始剤、熱分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。これらの重合開始剤によって、重合が開始される。
【0072】
上記光分解型重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物等が挙げられる。具体的にはベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、アントラキノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトン、ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、p-クロロベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド、α-クロルメチルナフタレン、アントラセン、ヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン、ミヒラーズケトン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等がある。かかる光分解型重合開始剤は市販品でもよく、チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(登録商標)184(ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン)、イルガキュア(登録商標)2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)などが例示できる。
【0073】
また、上記熱分解型重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0074】
更に、上記レドックス系重合開始剤としては、例えば、上記過硫酸塩や過酸化物にL-アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウム等の還元性化合物を併用した系が挙げられる。
【0075】
また、上記光分解型重合開始剤と熱分解型重合開始剤とを併用してもよい。更に、紫外線、電子線、γ線等の活性エネルギー線を単独で、あるいは上記重合開始剤と併用しても良い。
【0076】
上記重合開始剤の使用量は、上記単量体に対して、0.0001~1モル%が好ましく、0.0005~0.5モル%がより好ましい。
【0077】
重合工程は、常圧、減圧、加圧のいずれでも行うことができるが、好ましくは常圧(又はその近傍、通常±10mmHg)で行われる。また、重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15~130℃が好ましく、20~120℃がより好ましい。
【0078】
このようにしてゲル状架橋重合体が得られる。
【0079】
(3)ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程等(特に水溶液重合)を経て得られる、ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)をゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る任意の工程である。
【0080】
使用できるゲル粉砕機は、特に限定されないが、例えば、バッチ式又は連続式の双腕型ニーダー等、複数の回転撹拌翼を備えたゲル粉砕機、1軸押出機、2軸押出機、ミートチョッパー等が挙げられる。中でも、先端に多孔板を有するスクリュー型押出機が好ましく、例えば、特開2000-063527号公報に開示されたスクリュー型押出機が挙げられる。
【0081】
(4)乾燥工程
本工程は、上記重合工程等を経て得られる含水ゲルを乾燥して乾燥重合体を得る工程である。尚、上記重合工程が水溶液重合である場合、含水ゲルの乾燥前及び/又は乾燥後に、ゲル粉砕(細粒化)が行われる。また、乾燥工程で得られる乾燥重合体(凝集物)はそのまま粉砕工程に供給されてもよい。
【0082】
乾燥方法としては、特に限定されず、種々の方法を採用することができる。具体的には、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒での共沸脱水乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等が挙げられ、これらの1種又は2種を併用することもできる。乾燥温度は100~300℃が好ましく、120~250℃がより好ましい。また、乾燥時間としては、含水ゲルの表面積や含水率、乾燥機の種類等に依存するが、例えば、1分間~5時間が好ましい。
【0083】
(5)粉砕・分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を、粉砕及び/又は分級して、好ましくは特定粒度の吸水性樹脂を得る工程である。尚、上記(3)ゲル粉砕工程とは、粉砕対象物が乾燥工程を経ている点で異なる。
【0084】
粒度の制御は、重合工程、ゲル粉砕工程、又は乾燥工程の粉砕・分級工程で行うことができるが、特に乾燥後の分級工程で行うことが好ましい。
【0085】
〔セメント組成物〕
本発明のセメント組成物は、本発明の収縮低減剤、セメント、及び、水を含むことを特徴とする。
【0086】
セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形);各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント);白色ポルトランドセメント;アルミナセメント;超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント);グラウト用セメント;油井セメント;低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント);超高強度セメント;セメント系固化材;エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)等の他、これらに高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加したもの等が挙げられる。
【0087】
セメント組成物は骨材を含んでいてもよい。骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0088】
上記セメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100~185kg/m、使用セメント量250~800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1~0.7であることが好ましい。より好ましくは、単位水量100~175kg/m、使用セメント量250~800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1~0.65である。このように本発明のセメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.10~0.5(好ましくは0.15~0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。さらに、本発明のセメント組成物は、超高強度コンクリートの領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.10~0.30(好ましくは0.15~0.25)といった水/セメント比の極端に低い領域においても、流動性に悪影響を与えず良好に使用することができる。
【0089】
また本発明のセメント組成物は、高減水率領域においても優れた諸性能を高性能で発揮でき、優れた作業性を有することから、例えば、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品(プレキャストコンクリート)用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等にも有効に適用できるものである。また、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmの範囲のコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmの範囲のコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0090】
上記セメント組成物において、本発明の収縮低減剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分である収縮低減剤(複数含む場合はその合計量)が、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01~1質量%となるように設定することが好ましい。より好ましくは、0.1~0.8質量%、さらに好ましくは0.2~0.5質量%、特に好ましくは0.25~0.4質量%である。本発明のセメント分散剤と収縮低減剤との配合割合としては、例えばセメント分散剤に対して、0.001~100%となるように設定することが好ましい。より好ましくは、0.01~80%、より好ましくは2~50%、さらに好ましくは2.5~40%である。
【0091】
(セメント分散剤)
本発明のセメント組成物は、本発明の収縮低減剤とは別に、通常使用されるセメント分散剤を更に含むことが望ましい。セメント分散剤は複数種類を併用することも可能である。セメント分散剤としては、従来公知のセメント分散剤を用いることができる。セメント分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤;特公昭59-18338号公報、特開平7-223852号公報に記載されるようなポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10-236858号公報、特開2001-220417号公報、特開2002-121055号公報、特開2002-121056号公報、特開2018-111622号公報に記載のような不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体または(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤;特開2006-52381号公報に記載のような(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤、特表2008-517080号公報に記載のリン酸系分散剤などが挙げられる。中でも、セメント分散剤としては、本発明の効果が一層奏されることから、ポリカルボン酸系分散剤を用いることが好ましい。セメント分散剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0092】
上記例示のセメント分散剤のうち、ポリカルボン酸系セメント分散剤が、減水性能に優れており、スランプ保持性能が良好であるので、特に好ましい。これにより、流動性に優れ、かつ強度および凍結融解に対する抵抗性等に優れたセメント組成物が得られる。
【0093】
上記ポリカルボン酸系セメント分散剤は、不飽和カルボン酸(塩)を含む単量体成分を重合してなる重合体である。上記ポリカルボン酸系セメント分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノアリルエーテルとマレイン酸(塩)との共重合体;ポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと、不飽和スルホン酸塩と、(メタ)アクリル酸塩とからなる単量体成分を共重合してなる共重合体;(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体;スルホネート基を有する(メタ)アクリルアミドと、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸(塩)とからなる単量体成分を共重合してなる共重合体;ポリアルキレングリコールビニルエーテルまたはポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸(塩)との共重合体;不飽和カルボン酸(塩)とポリアルキレングリコール鎖を有する単量体とを必須成分として含む単量体成分を重合してなる共重合体等が挙げられる。
【0094】
上記例示のうちでも、不飽和カルボン酸(塩)とポリアルキレングリコール鎖を有する単量体とを必須成分として含む単量体成分を重合してなる共重合体が好ましい。上記の不飽和カルボン酸(塩)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等、およびこれらの中和物や部分中和物が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、ポリアルキレングリコール鎖を有する単量体の例としては、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;エチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル;エチレングリコールモノクロチルエーテル等のポリアルキレングリコールモノクロチルエーテル;メトキシポリエチレングリコールモノクロチルエーテル等のアルコキシポリアルキレングリコールモノクロチルエーテル等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、これらポリカルボン酸系セメント分散剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0095】
上記セメント組成物において、セメント分散剤の配合割合としては、例えば、固形分換算で、セメント質量の全量100質量%に対して、0.01~10質量%となるように設定することが好ましい。0.01質量%未満では性能的に充分とはならないおそれがあり、逆に10質量%を超えると、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02~5質量%であり、更に好ましくは0.05~3質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
【0096】
(固形分測定方法)
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
【0097】
(セメント組成物中に含まれるその他の材料)
本発明のセメント組成物には、例えば、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ等の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0098】
これらの材料の配合割合は、特に限定されるものではないが、セメント分散剤の固形分100質量%に対し、10質量%以下となるように設定することが好適である。
【0099】
なお、本発明のセメント組成物を製造する場合、収縮低減剤、セメント、水を一度に混合してもよいし、セメントと水を混合した後に収縮低減剤を加えてもよい。また、セメント分散剤を収縮低減剤、セメント、水と一緒に加えてもよいし、別々に加えてもよい。セメント組成物中に含まれるその他の材料も、収縮低減剤、セメント、水と一緒に加えてもよいし、別々に加えてもよい。
【0100】
本発明の収縮低減剤は、特定の組成を有する架橋重合体を含有するため、高吸水性作用を有しながらセメント組成物の流動性を低減させないため、水を吸水した収縮低減剤がセメント組成物中に偏在せずに均一に分散することによって、水をセメント組成物中に均一に分散させることができる。
【0101】
その結果、セメントと水の水和がセメント組成物内で均一に生じるため、自己収縮がセメント組成物内で均一に生じ、コンクリートのひび割れや強度の低下が防止される。
【0102】
また、水がセメント組成物中に均一に分散することによって、水が蒸発した後にコンクリート中に残る気孔の分布が均一となるため、コンクリートの強度が特定の部位で弱くなることがなくなるという効果も発揮され得る。添加した際のセメント組成物の粘度上昇を抑えることができているため、他の架橋重合体とはことなり配合の問題も生じない。
【0103】
したがって、本発明の収縮低減剤を含むセメント組成物は、土木・建築分野等で好適に使用される。
【0104】
また、ノニオン性非架橋性単量体40モル以上%およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなる架橋重合体を含み、架橋重合体を、pH12.9の水溶液(ここで、pH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液)に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率が20g/g未満である、との構成、およびその他の好適な態様は、強度向上剤、耐久性向上剤(たとえば、塩害防止剤、中性化防止剤、凍結防止剤、アルカリ骨材反応防止剤、化学コンクリート腐食防止剤、塩化物浸透抵抗性向上剤等)、ひび割れ防止剤(または、ひび割れ低減剤、ひび割れ補修剤等)、自己治癒剤、空気量安定化剤、ワーカビリティ調整剤(または、増粘剤、コンシステンシー調整剤、粘度調整剤、水分調整剤)、ブリージング抑制剤(または、分離水低減剤)、土壌造粒用添加剤(または、土壌固化剤、粒状化処理剤、生コンクリート凝集剤、汚泥固化剤、残土改良剤)、グラウト材用添加剤、グラフト保水材用添加剤、空隙充填材用添加剤、保水材用添加剤、透水コンクリート用添加剤、透水性向上剤、ポーラスコンクリート用添加剤、結露防止剤、地盤掘削注入材用添加剤、地盤掘削材用添加剤、地盤充填材用添加剤、地盤強化材用添加剤、土壌改良材用添加剤、再生骨材用添加剤、左官用モルタル向け添加剤、コテ仕上げ剤、たれ防止剤、吹き付け材用添加剤、水中不分離材用添加剤、放射性遮蔽用基材用添加剤、コンクリート補修材用添加剤として、使用が可能である。
【0105】
本発明の他の実施形態は、ノニオン性非架橋性単量体40モル以上%およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなり、前記単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が59.95モル%以下であり、かつ、pH12.9の水溶液(ここで、pH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液)に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率が20g/g未満である架橋重合体の、セメントおよび水を含む組成物の収縮低減剤としての使用である。
【0106】
さらに、本発明の他の実施形態は、ノニオン性非架橋性単量体40モル以上%およびノニオン性架橋性単量体0.05モル%以上含む単量体混合物を重合してなり、前記単量体混合物中、アニオン性単量体の含有量が20モル%以下であり、かつ、pH12.9の水溶液(ここで、pH12.9の水溶液は、CaSO・2HO1.72g、NaSO6.96g、KSO4.76g、KOH7.12gおよび脱イオン水979.4gを混合した水溶液)に25℃で2時間浸漬した場合の吸水倍率が20g/g未満である架橋重合体を用いた、セメントおよび水を含む組成物を成形してなる成形体の収縮低減方法である。成形体の形成は、特に制限なく、従来公知の方法により行われる。成形方法としては、例えば、セメント組成物を型枠に流し込み、型枠ごと、養生を行い、その後脱型する方法や、セメント組成物を型枠に流し込んだ後、型枠から脱型した成形体に対して養生を行う方法などが挙げられる。養生の方法は特に限定されず、水中養生、封緘養生、気中養生のいずれであってもよい。また、養生剤を塗って養生しても良い。
【0107】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は、収率を除いて「質量%」を意味するものとする。
【0108】
(a)架橋重合体の質量平均粒子径(D50)
質量平均粒子径(D50)は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter(D50) and Logarithmic Standard Deviation(σζ) of Particle Diameter Distribution」に記載の方法に従って測定した。
【0109】
(b)無加圧下吸水倍率(CRC)(NWSP 241.0.R2(15))
無加圧下吸水倍率(CRC)は、NWSP 241.0.R2(15)に準じて測定した。即ち、架橋重合体0.200g(質量W0(g))を秤量し、不織布製の袋(60×85mm)に均一に入れヒートシールした後、23±2℃に調温した0.90質量%塩化ナトリウム水溶液500mL中に浸漬した。30分経過後、袋を引上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製遠心機:形式H-122)を用いて、250G、3分間の条件で水切りを行った。その後、袋の質量(W1(g))を測定した。同様の操作を、吸水性樹脂を入れずに行い、そのときの袋の質量(W2(g))を測定した。得られたW0(g)、W1(g)、W2(g)から下記(式1)にしたがって、無加圧下吸水倍率(CRC)を算出した。
【0110】
【数1】
【0111】
なお、 「NWSP」は「Non-Woven Standard Procedures-Edition 2015」を表し、EDANA(European Disposables And Nonwovens Association、欧州不織布工業会)とINDA(Association of the Nonwoven Fabrics Industry、北米不織布工業会)が、不織布及びその製品の評価法を米国および欧州で統一して共同で発行したものであり、吸水性樹脂の標準的な測定法を示すものである。
【0112】
架橋重合体のCRCは、吸液性能の点で、5g/g以上であることが好ましく、10g/g以上であることがより好ましく、11g/g以上であることがさらにより好ましい。また、架橋重合体のCRCは、コンクリート流動性の点で、40g/g以下であることが好ましく、35g/g以下であることがより好ましい。
【0113】
(c)セメント模擬液の吸収倍率
CaSO・2HOを1.72g、NaSOを6.96g、KSOを4.76g、KOHを7.12g、脱イオン水を979.4g混合し、吸水試験用の溶液を調製した(pH12.9)。粉末状架橋重合体約0.2gを正確に秤量し(質量W1(g))、4cm×5cmの不織布製のティーバッグの中に入れ、ヒートシールにより封入した。このティーバッグを、ガラス製で規定容量が50mLのスクリュー管に入れ、吸水試験用の溶液50mL中に室温(25℃)、常圧で所定の時間(2時間、または7日間)まで浸漬した。次いで、ティーバッグの端をピンセットでつかんでティーバッグを引き上げ、ティーバッグの一面を下にしてキムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)の上に乗せて5秒間静置した。次いで、反対の面を下にしてキムタオルの上に乗せて5秒間静置することにより液切りを行った後、上記ティーバッグの質量(W2(g))を測定した。別途、同様の操作を架橋重合体を用いないで行い、そのときのティーバッグの質量(W3(g))をブランクとして求めた。次式に従って算出した吸水倍率を吸液能力とした。
吸水倍率(g/g)=(W2-W3)/W1(g)

(d)架橋重合体の含水率 架橋重合体の含水率を、NWSP 230.0.R2(15)に準拠して測定した。なお、測定に際し、試料の質量を1.0gに、乾燥温度を180℃にそれぞれ変更し、3時間乾燥した際の乾燥減量から、架橋重合体の含水率及び固形分率を算出した。
【0114】
架橋重合体の含水率は、粉砕効率や吸液性能の点で、2質量%以上であることが好ましい。また、架橋重合体の含水率は、粉砕効率や吸液性能の点で、15質量%以下であることが好ましい。
【0115】
(e)吸湿ブロッキング率(B.R.;Blocking Ratio)
架橋重合体2gを、直径52mmのアルミカップに均一に散布した後、温度25℃、相対湿度90±5%RH下の恒温恒湿機(PLATINOUSLUCIFERPL-2G;タバイエスペック社製)中で1時間静置した。1時間経過後、上記アルミカップに入った架橋重合体を、目開き2000μm(JIS8.6メッシュ)のJIS標準篩(TheIIDATESTINGSIEVE:内径80mm)の上に静かに移し、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製ES-65型ふるい振盪機;回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、室温(20~25℃)、相対湿度50%RHの条件下で5秒間分級した。上記JIS標準篩上に残存した架橋重合体の重量(W1[g])および該JIS標準篩を通過した架橋重合体の重量(W2[g])を測定し、次式にしたがって、吸湿流動性(吸湿ブロッキング率)を算出した。なお、ブロッキング率の値が低いほど、吸湿流動性に優れている。
【0116】
吸湿流動性(B.R.)[重量%]={W1/(W1+W2)}×100。
【0117】
[製造例1]粒子状架橋重合体1
1000mlの円筒型セパラブルフラスコにアクリルアミド59.34g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.647gおよび水191.51gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.49モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.51モル%である。フラスコ内を窒素置換したのち、湯浴上で45℃に加熱し、1%過硫酸ナトリウム水溶液24.89gおよび0.1%L-アスコルビン酸水溶液23.86gを添加し、攪拌を停止して重合させた。重合開始後発熱し、10分後に80℃まで上昇した。液温の上昇が停止した時点で浴温を80℃まで昇温させ、熟成30分後に、含水ゲル状架橋重合体を取り出した。この含水ゲル状架橋重合体は、約1~5mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物とした。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体1を得た。粒子状架橋重合体1の質量平均粒子径(D50)は400μm、CRCが15g/g、含水率が5質量%であった。
【0118】
[製造例2]粒子状架橋重合体2
1000mlの円筒型セパラブルフラスコにアクリルアミド58.73g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド1.276gおよび水191.96gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.00モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド1.00モル%である。フラスコ内を窒素置換したのち、湯浴上で45℃に加熱し、1%過硫酸ナトリウム水溶液24.66gおよび0.1%L-アスコルビン酸水溶液23.64gを添加し、攪拌を停止して重合させた。重合開始後発熱し、10分後に80℃まで上昇した。液温の上昇が停止した時点で浴温を80℃まで昇温させ、30分間熟成を行ない、架橋重合体を得た。この含水ゲル状架橋重合体は、約1~5mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物とした。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体2を得た。粒子状架橋重合体2の質量平均粒子径(D50)は405μm、CRCが15g/g、含水率が5質量%であった。
【0119】
[製造例3]粒子状架橋重合体3
1000mlの円筒型セパラブルフラスコにアクリルアミド49.36g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.72gおよび水198.54gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.33モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.67モル%である。フラスコ内を窒素置換したのち、湯浴上で45℃に加熱し、1%過硫酸ナトリウム水溶液21.27gおよび0.1%L-アスコルビン酸水溶液20.40gを添加し、攪拌を停止して重合させた。重合開始後発熱し、10分後に80℃まで上昇した。液温の上昇が停止した時点で浴温を80℃まで昇温させ、30分間熟成を行ない、架橋重合体を得た。この含水ゲル状架橋重合体は、約1~5mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物とした。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体3を得た。粒子状架橋重合体3の質量平均粒子径(D50)は394μm、CRCが13g/g、含水率が5質量%であった。
【0120】
[製造例4]粒子状架橋重合体4
1000mlの円筒型セパラブルフラスコにアクリルアミド29.9g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.0974gおよび水45.6gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.85モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.15モル%である。フラスコ内を窒素置換したのち、湯浴上で45℃に加熱し、2%過硫酸ナトリウム水溶液12.53gおよび0.1%L-アスコルビン酸水溶液12.01gを添加し、攪拌を停止して重合させた。重合開始後発熱し、10分後に80℃まで上昇した。液温の上昇が停止した時点で浴温を80℃まで昇温させ、30分間熟成を行なった。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体4を得た。粒子状架橋重合体4の質量平均粒子径(D50)は413μm、CRCが14g/g、含水率が5質量%であった。
【0121】
[製造例5]粒子状架橋重合体5
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド594.3g、アクリル酸ナトリウム786.3g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド19.3g、および水2555.4gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド43.10モル%、アクリル酸ナトリウム56.25モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.65モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液20.2gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液24.2gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体5を得た。粒子状架橋重合体5の質量平均粒子径(D50)は443μm、CRCが20.9g/g、含水率が5質量%であった。
【0122】
[製造例6]粒子状架橋重合体6
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド586.2g、アクリル酸ナトリウム775.2g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド38.2g、および水2555.8gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド42.83モル%、アクリル酸ナトリウム55.89モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド1.28モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液20.2gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液24.2gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体6を得た。粒子状架橋重合体6の質量平均粒子径(D50)は451μm、CRCが15.3g/g、含水率が5質量%であった。
【0123】
[製造例7]粒子状架橋重合体7
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド560.8g、アクリル酸ナトリウム741.9g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド97.3g、を仕込み、および水2555.4g均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド41.93モル%、アクリル酸ナトリウム54.72モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド3.35モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液20.2gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液24.2gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体7を得た。粒子状架橋重合体7の質量平均粒子径(D50)は443μm、CRCが9.5g/g、含水率が5質量%であった。
【0124】
[製造例8]粒子状架橋重合体8
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド854.4g、アクリル酸ナトリウム484.4g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド21.2g、および水2594.4gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド63.66モル%、アクリル酸ナトリウム35.61モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.37モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液20.8gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液24.9gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体8を得た。粒子状架橋重合体8の質量平均粒子径(D50)は423μm、CRCが18.9g/g、含水率が5質量%であった。
【0125】
[製造例9]粒子状架橋重合体9
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド842.9g、アクリル酸ナトリウム477.9g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド39.2g、および水2594.1gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド63.26モル%、アクリル酸ナトリウム35.38モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド1.36モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液20.8gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液24.9gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体9を得た。粒子状架橋重合体9の質量平均粒子径(D50)は463μm、CRCが14.4g/g、含水率が5質量%であった。
【0126】
[製造例10]粒子状架橋重合体10
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド808.7g、アクリル酸ナトリウム458.6g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド92.7g、および水2593.9gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド62.03モル%、アクリル酸ナトリウム34.69モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド3.28モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液20.8gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液24.9gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体10を得た。粒子状架橋重合体10の質量平均粒子径(D50)は432μm、CRCが8.8g/g、含水率が5質量%であった。
【0127】
[製造例11]粒子状架橋重合体11
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド1146.4g、アクリル酸ナトリウム168.4g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド5.0g、および水2632.3gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド87.20モル%、アクリル酸ナトリウム12.63モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.17モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液21.4gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液25.7gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体11を得た。粒子状架橋重合体11の質量平均粒子径(D50)は420μm、CRCが22.1g/g、含水率が5質量%であった。
【0128】
[製造例12]粒子状架橋重合体12
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド1138.9g、アクリル酸ナトリウム167.4g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド13.7g、および水2633.4gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド86.91モル%、アクリル酸ナトリウム12.63モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.48モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液21.4gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液25.7gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体12を得た。粒子状架橋重合体12の質量平均粒子径(D50)は415μm、CRCが16.9g/g、含水率が5質量%であった。
【0129】
[製造例13]粒子状架橋重合体13
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド1104.4g、アクリル酸ナトリウム53.2g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド53.2g、および水2633.1gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミド、アクリル酸ナトリウムおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド85.67モル%、アクリル酸ナトリウム12.42モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド1.9モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液21.4gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液25.7gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体13を得た。粒子状架橋重合体13の質量平均粒子径(D50)は451μm、CRCが10.7g/g、含水率が5質量%であった。
【0130】
[製造例14]粒子状架橋重合体14
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド1233.2g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド6.7g、および水2714.2gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.75モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.25モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液21.4gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液25.7gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体14を得た。粒子状架橋重合体14の質量平均粒子径(D50)は447μm、CRCが17.6g/g、含水率が5質量%であった。
【0131】
[製造例15]粒子状架橋重合体15
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド1215.6g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド2.7g、および水2681.4gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.90モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.10モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液21.4gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液25.7gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体15を得た。粒子状架橋重合体15の質量平均粒子径(D50)は465μm、CRCが21.2g/g、含水率が3質量%であった。
【0132】
[製造例16]粒子状架橋重合体16
10Lのニーダー型重合装置に、アクリルアミド1238.4g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド1.3g、および水2713.6gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリルアミドおよびN,N’-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリルアミド99.95モル%、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.05モル%である。ニーダー型重合装置内を窒素置換したのちに、ジャケット温度を30℃に加熱し、25%過硫酸ナトリウム水溶液21.4gおよび2%L-アスコルビン酸水溶液25.7gを添加し、重合させた。重合開始後発熱し、10分後に100℃まで上昇した。重合発熱開始を確認した後に浴温を昇温し、浴温が60℃に達した時点から30分間熟成を行った。得られた重合物を細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、粉砕したのち篩分し、乾燥物を得た。次いで、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き500μmと250μmのJIS標準篩で分級した。500μm以上の粒子は、全量が500μmの金網を通過するまで繰り返しロールミルで粉砕して、粒子状架橋重合体16を得た。粒子状架橋重合体16の質量平均粒子径(D50)は466μm、CRCが20.5g/g、含水率が4質量%であった。
【0133】
[比較製造例1]比較架橋重合体1
1000mlの円筒型セパラブルフラスコにアクリルアミド21.28g、アクリル酸31.39g、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.15gおよび水75.90gを仕込み、均一に溶解させた。ここで、アクリル酸、アクリルアミドおよびN,N-メチレンビスアクリルアミドからなる単量体混合物中、アクリル酸31.00モル%、アクリルアミド68.85モル%、N,N-メチレンビスアクリルアミド0.15モル%である。フラスコ内を窒素置換したのち、湯浴上で45℃に加熱し、1%過硫酸ナトリウム水溶液14.76gおよび0.2%L-アスコルビン酸水溶液6.58gを添加し、攪拌を停止して重合させた。重合開始後発熱し、10分後に80℃まで上昇した。液温の上昇が停止した時点で浴温を80℃まで昇温させ、30分間熟成を行なった。得られたゲル状重合体をカッターを用いて細分化したのち、130℃で3時間熱風乾燥し、ミキサーで粉砕したのち分級を行った。分級は、特開2015-048386号公報の[0117]~[0119]と同様の操作で実施し、粉末状の比較架橋重合体1を得た。比較架橋重合体1の平均粒子径は50μm、600μm未満で150μm以上の粒子は0質量%、CRCは50g/g、含水率は5重量%であった。なお、比較架橋重合体1は非常に微細な粒子のため、平均粒子径は以下のようにして測定した;レーザー回析式粒度分布装置HORIBA社製LA-920を使用し、分布形態:標準、粒子径基準:体積、グラフ形態:棒グラフ、に設定した後、試料バスにメタノールを入れて空気抜き及び光軸調整を行った。次にサンプルを試料バスに入れ、サンプルを投入したと同時に、超音波を2分かけた後、透過率が81~88%になるようサンプル濃度を調整した。測定は、サンプル濃度調整後、再度超音波処理を2分行った後に実施した。また、比較架橋重合体1は非常に微細な粒子でそのままではCRCを測定できないので、CRCは粉砕途中の、質量平均質量平均粒子径(D50)が300~400μmであるときに測定した。
【0134】
〔参考製造例1〕:分散剤1としての重合体の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水80.0部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個)133.4部、メタクリル酸26.6部、メルカプトプロピオン酸1.53
部およびイオン交換水106.7部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.19部とイオン交換水50.6部の混合溶液を5時間かけて滴下した
。滴下完了後1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量100000の分散剤1の水溶液を得た。
【0135】
〔参考製造例2〕:分散剤2としての重合体の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN-50と称す)(80%水溶液)198.2部、アクリル酸0.32部、過酸化水素水(2%水溶液)12.47部、イオン交換水44.75部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら58℃まで加温した。次に、アクリル酸27.12部、イオン交換水108.5部からなる混合溶液を3時間かけ滴下し、それと同時にL-アスコルビン酸0.74部、3-メルカプトプロピオン酸1.61部、イオン交換水86.31部からなる混合溶液を3時間30分かけて滴下した。滴下完了後1時間、58℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量140000の分散剤2の水溶液を得た。
【0136】
製造例1~16で調製した粒子状架橋重合体1~16及び比較架橋重合体1についてコンクリート試験を行った。
【0137】
(1)コンクリート調製方法
製造例1~16で調製した架橋重合体1~16及び比較架橋重合体1を収縮低減剤として加えたモルタル、及び、架橋重合体を加えないモルタルを調製した。
【0138】
架橋重合体1~16を加えた例を実施例1~16(実施例1~4、実施例9~20は、下記セメント組成物の配合1、実施例5~8は、下記セメント組成物の配合2)、比較架橋重合体1を加えた例を比較例3及び6とし、架橋重合体を加えない例を比較例1、2、4、5とした。
【0139】
架橋重合体を加えた配合及び架橋重合体を加えない配合は以下の表1のようにした。
【0140】
(コンクリート配合)
セメント組成物を表1のように調整した。
【0141】
なお、セメント組成物の温度が20℃の測定温度になるように、測定に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類を上記の測定温度雰囲気下で調温し、混練および各測定は上記の測定温度雰囲気下で行った。また、セメント組成物中の気泡がセメント組成物の流動性に及ぼす影響を避けるために、必要に応じてオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が2.0%以下となるように調整した。
【0142】
【表1】
【0143】
セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)もしくはシリカフュームセメント(宇部三菱社製)
水 :イオン交換水
砂 :大井川砂
石 :青海産砕石
分散剤:すべての試験において、セメントに対して表2~表4に記載の配合量の分散剤(分散剤1または分散剤2)を添加した。上記の水量は、本分散剤込みの重量である。
消泡剤:オキシアルキレン系消泡剤
膨張材:ハイパーエクスパン(太平洋マテリアル社製)
(コンクリート混錬方法)
混錬は室温20±3℃、湿度60±5%環境下で実施した。強制練りミキサーを用いて混練時間90秒間でコンクリートを製造し、フロー値と空気量を測定した。なお、フロー値と空気量の測定は、日本工業規格(JISA-1101、1128)に準拠して行った。また、セメント分散剤の添加量は、フロー値が520mm~620mmになる添加量とした。
【0144】
(自己収縮ひずみ測定方法)
フロー値と空気量を測定した後、自由ひずみ試験用試料を作成し、以下の条件にて、自由ひずみを測定した。
【0145】
自己収縮ひずみは、ひずみゲージ(型式:PMFL-60T(株式会社東京測器研究)
)およびデータロガー(型式:KMC-70-120-H3(共和電業))を使用して測定した。
【0146】
図1は、自己収縮ひずみを測定する方法を示す模式図である。コンクリート供試体型枠に詰めた直後を収縮ひずみ量測定の起点とした。
【0147】
ひずみ測定の手順は以下の通りとした。
(1)調整したコンクリートのフロー値および空気量が所定の値であることを確認した。(2)図1のとおりひずみゲージを取り付けたポリプロピレン製の容器(φ100×200mm)に底から約100mmまで2回に分けてコンクリートを充填した。各充填ごとに鋼製の突き棒(φ9×300mm)を用いて15回突いた後、容器の周囲を木槌で数回軽くたたき、コンクリートを均一に充填させた。
(3)モルタル充填後、ポリ塩化ビニリデンシートでふたをし、20±2℃で1日保管、30分間隔でひずみ値を、約1日後に型枠から脱型しアルミ蒸着されたジップ袋に封入し、7日後または28日後のひずみ値を測定した。
【0148】
(収縮ひずみ量の計算)
収縮ひずみ量は、各測定時間および起点のひずみ値を用いて、以下の式により実施した。
【0149】
[収縮ひずみ量(×10―6)]=[各測定時間のひずみ値]-[起点のひずみ値]
コンクリート試験結果と収縮ひずみ量の結果を表2、表3、表4に示した。なお、表2において、ひずみの左欄は7日後、右欄は28日後に測定したひずみ値を指す。表3,4においては7日後ひずみを表す。
【0150】
表2、表3、表4中、セメント分散剤および架橋重合体の添加量は、セメント質量の全量100質量%に対する架橋重合体の添加量(質量%)を示す(wt%/C)。また、モルタル中の空気量は全ての例において2%未満であった。また、表3、4中、吸水倍率(2h)とあるのは、セメント模擬液に2時間浸漬後の架橋重合体の吸水倍率を、吸水倍率(1w)とあるのは、セメント模擬液に1週間(7日間)浸漬後の架橋重合体の吸水倍率を示す。
【0151】
【表2】
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
架橋重合体1~16を添加した実施例1~20では、いずれの場合も7日後の収縮ひずみが比較例1、比較例4と比べて小さくなっており、本発明の収縮低減剤は自己収縮低減に効果があることが判明した。また、既存技術である膨張材を配合した比較例2、比較例5と比べて、少量の添加量で顕著に自己収縮低減に効果があることも判明した。さらに、架橋重合体1を添加した実施例1~2では、28日後の収縮ひずみにおいても比較例1、比較体4と比べて小さくなっており、本発明の収縮低減剤は長期的な収縮低減効果があることも判明した。
【0155】
さらに、比較架橋体1を用いた比較例3では、セメント組成物中での吸水能が高いため、同一コンクリートフローにするためにセメント質量の全量100質量%に対して、セメント分散剤を2.32質量%も添加する必要があった。その上、比較例1以上の大きな自己収縮性が発現し、コンクリート供試体が大きくひずんでいることを確認した。比較架橋重合体1を用いた比較例6では、比較架橋重合体1の高い吸水性能のためコンクリート組成物中の僅かな水をも吸水してしまうため、セメント質量の全量100質量%に対して、セメント分散剤を5.00質量%添加しても流動性が発現せず、自己収縮低減性を評価できなかった。
【0156】
本出願は、2021年2月15日に出願された、日本特許出願 特願2021-021447号に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。
図1