(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】手術用ロボティックアーム、可撓性アーム及び可撓性ジョイント
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20240702BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A61B34/30
B25J18/06
(21)【出願番号】P 2022580909
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 CN2021102887
(87)【国際公開番号】W WO2022001993
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】22020010222.0
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】HK
(73)【特許権者】
【識別番号】522501247
【氏名又は名称】普鋭醫療(香港)有限公司
【氏名又は名称原語表記】PRECISION ROBOTICS (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】Suite 611-612, Lakeside 2, HK Science Park, Shatin, N.T. Hong Kong
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロ ピン ライ ベニー
(72)【発明者】
【氏名】フー ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウー チェイ ラン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/025960(WO,A1)
【文献】特開2009-148557(JP,A)
【文献】特表2007-509698(JP,A)
【文献】特表2007-502198(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0138025(US,A1)
【文献】特表2014-512863(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069003(WO,A1)
【文献】特表2017-512659(JP,A)
【文献】特表2017-536967(JP,A)
【文献】特公昭49-044512(JP,B1)
【文献】特開昭56-119226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00-34/37
A61B 17/29
A61B 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性アーム(2)であって、
少なくとも2つの可撓性ジョイント(1)であって、2つの支持セクション(11)と、前記2つの支持セクション(11)の間
で前記2つの支持セクション(11)に接続された関節連結セクション(12)とを含み、前記関節連結セクション(12)は、接触補助部(122)を有する複数の第1ターン(121)を含み、
前記接触補助部(122)は、各第1ターン(121)の
中心を間に挟んで互いに対向
するように配置され、前記可撓性ジョイントが屈曲された状態である場合、隣接する第1ターン(121)の接触補助部(122)は互いに接触し、
前記関節連結セクション(12)の各第1ターン(121)に、駆動腱(6)が通過する
複数の腱貫通孔(5)が設けられ、
前記駆動腱(6)により前記第1ターン(121)が互いに連結されることにより可撓性を有する少なくとも2つの可撓性ジョイント(1)と、
2つの隣接する可撓性ジョイント(1)の間に配置され、前記2つの隣接する可撓性ジョイント(1)のそれぞれの支持セクション(11)に接続されたデカップリングセクション(21)と、を含み、
前記デカップリングセクション(21)上に腱ルート(22)が設けられ、前記駆動腱(6)が通過するために前記可撓性ジョイント(1)の支持セクション(11)に設けられた腱貫通孔(5)に延在し、
前記デカップリングセクション(21)の外面が平面内に展開されると、前記腱ルート(22)は、前記平面内でS字形の曲線を形成し、これにより前記S字形の曲線に沿って前記デカップリングセクションの曲率が変化する、
ことを特徴とする
可撓性アーム(2)。
【請求項2】
前記複数の第1ターン(121)は、互いに螺旋状に接続されて螺旋構造を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項3】
隣接する第1ターン(121)の前記接触補助部(122)は、互いに転がり接触するか、又は互いに噛み合う、ことを特徴とする請求項1に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項4】
前記接触補助部(122)のそれぞれは、隣接する接触補助部(122)に向かって滑らかな突起として形成され、前記突起の先端で隣接する接触補助部(122)と接線方向に接触する、ことを特徴とする請求項3に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項5】
前記接触補助部(122)は、円形又は楕円形の断面を有する、ことを特徴とする請求項4に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項6】
前記接触補助部(122)は、
特定の曲率を有するシリンダー又は
特定の曲率を有するコーンとして構成される、ことを特徴とする請求項5に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項7】
前記接触補助部(122)のそれぞれは、隣接する接触補助部(122)と噛み合う歯様構造として形成されるか、又は多角形の断面を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項8】
前記第1ターン(121)の径方向に沿って前記接触補助部(122)
の中心を通る軸方向中心線は、前記第1ターン(121)の
断面中心を通過する直線である周方向中心線と一致する、ことを特徴とする請求項1に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項9】
各腱貫通孔(5)のうちの少なくとも
2つは、前記第1ターン(121)の中心を間に挟んで対向配置されて1対の腱貫通孔(5)
をなし、前記1対の腱貫通孔(5)の各中心を結ぶ接続線は、
前記第1ターン(121)の径方向に沿って前記接触補助部(122)の
中心を通る軸方向中心線に垂直である、ことを特徴とする請求項1に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項10】
前記可撓性ジョイント(1)は、3Dプリンティングにより一体的に形成される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項11】
前記腱貫通孔(5)は、前記第1ターン(121)の
外周に開口するように設計される、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の
可撓性アーム(2)。
【請求項12】
前記腱ルート(22)は、前記デカップリングセクション(21)の表面に螺旋状に設けられる、ことを特徴とする請求項
11に記載の可撓性アーム(2)。
【請求項13】
前記腱ルート(22)は、前記デカップリングセクション(21)の外面に設けられた螺旋状のワイヤ溝を含む、ことを特徴とする請求項
11に記載の可撓性アーム(2)。
【請求項14】
前記デカップリングセクション(21)はシリンダーとして構成される、ことを特徴とする請求項
11に記載の可撓性アーム(2)。
【請求項15】
2つの隣接する可撓性ジョイント(1)の対応する腱貫通孔(5)は互いにオフセットされ
、ここで、対応する腱貫通孔(5)は、同じ駆動腱(6)が貫通する2つの隣接する可撓性ジョイント(1)内の腱貫通孔(5)をいう、ことを特徴とする請求項
11に記載の可撓性アーム(2)。
【請求項16】
前記2つの隣接する可撓性ジョイント(1)の前記支持セクション(11)の前記腱貫通孔(5)は、
前記腱貫通孔(5)を貫通する前記駆動腱(6)が前記2つの隣接する可撓性ジョイント(1)
を1つの平面内でS字形に屈曲
させる
ことができるように配置される、ことを特徴とする請求項
15に記載の可撓性アーム(2)。
【請求項17】
前記可撓性アーム(2)は、3Dプリンティングにより一体的に形成される、ことを特徴とする請求項12~
16のいずれか一項に記載の可撓性アーム(2)。
【請求項18】
手術用ロボティックアームであって、
請求項
1~
17のいずれか一項に記載の可撓性アーム(2)と、
外科手術を行うための端末マニピュレータ(4)と、
両端が前記可撓性アーム(2)及び前記端末マニピュレータ(4)にそれぞれ接続された手首ジョイント(3)と、を含み、
前記端末マニピュレータ(4)の制御ケーブルは、前記可撓性アーム(2)からアクセスされ、前記手首ジョイント(3)を通過し、前記端末マニピュレータ(4)に接続される、ことを特徴とする手術用ロボティックアーム。
【請求項19】
前記手首ジョイント(3)は、
前記端末マニピュレータ(4)と接続するための端子接続セクション(33)と、
可撓セクション(31)であって、複数のセグメントで設けられた第2ターン(311)を含み、前記第2ターン(311)の両端が前記端子接続セクション(33)及び前記可撓性アーム(2)にそれぞれ接続され、前記可撓セクション(31)の各第2ターン(311)には、駆動腱(6)が通過するための少なくとも2対の腱貫通孔(5)が対向して設けられる可撓セクション(31)と、
前記可撓セクション(31)の中心を通過する弾性を有する中央背骨(32)であって、前記中央背骨(32)の両端が前記端子接続セクション(33)及び前記可撓性アーム(2)にそれぞれ接続される中央背骨(32)と、を含むことを特徴とする請求項
18に記載の手術用ロボティックアーム。
【請求項20】
前記可撓性アーム(2)及び前記手首ジョイント(3)は
3Dプリンティングにより一体的に形成される、ことを特徴とする請求項
18又は
19に記載の手術用ロボティックアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療器具の技術分野に関し、特に、手術用ロボティックアーム、手術用ロボティックアームの可撓性アーム、及び可撓性アームの可撓性ジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
すべての器具及びカメラが比較的小さい単一切開を介して人体に入るシングルポートアクセス手術(SPAS)は、低侵襲又は非侵襲でさえあるという利点により、ますます人気が高まっている。
【0003】
従来技術において、手術用ロボティックアームは、シングルポートアクセス手術を支援するためによく使用されている。一般に、手術用ロボット器具は、ベース、位置決めアーム、及び手術用ロボットアームを含む。ベースは手術室に相対的に固定され、位置決めアームはベース上に配置される。手術用ロボティックアームは、位置決めアームを介して患者に対して所望の位置に保持することができる。外科用メス、ジョーなどの様々な端末マニピュレータを手術用ロボティックアームの端部に設けることができる。手術用ロボティックアームは、ポートから患者の体に入り、手術部位で手術を実施する。
【0004】
見たように、手術用ロボティックアームの設計は、シングルポートアクセス手術を実施するための鍵である。端末マニピュレータの人体へのスムーズな進入を容易にするために、手術用ロボティックアームは複数の屈曲自由度を持つ必要がある。 従来技術におけるそれらの手術用ロボティックアームは、可撓性ジョイントによってこれらの自由度を得る。このような可撓性ジョイントがこの機能を達成するための多くの実現可能な構造がある。例えば、複数の「ターン」を有する可撓性ジョイントを設計し、各ターンで関節連結を提供することが可能である。これらのターンは、螺旋ジョイント、関節連結ジョイント、ヒンジジョイント、ローリングジョイントなどの小規模な機械的ジョイントにすることができるが、機械的ジョイントは通常、非常に複雑で、小規模な材料の要件が高く、製造コストが高く、信頼性が低く、洗浄や消毒も困難である。
【0005】
先行技術の特許文献WO2017/009604A1では、機械的ジョイントに頼ることない手術用ロボティックアームの幾つかの技術的解決策が開示されている。それにもかかわらず、このような手術用ロボティックアームは、例えば、構造が複雑で、コストが高く、屈曲方向と程度を制御することが困難であるなどの欠点を依然として有している。
【0006】
先行技術の特許文献US2018/0242824A1によれば、直感的な手術用ダビンチSPシステム(Intuitive Surgical Davinci SP system)における器具アームは、ヒンジ付きジョイントを備えた別個の要素を使用して構築されている。先行技術の特許文献WO2017/203231A1によれば、精密ロボティクスマイクロigesシステム(Precision Robotics Micro-iges system)における器具アームも、ヒンジ付きジョイントを備えた別個の要素を使用して構築されている。しかしながら、これらのシステムにおける製造と組立プロセスは、非常に高価であり得る。
【発明の概要】
【0007】
上記の技術的問題を解決するため、又は少なくとも部分的に解決するために、本開示は、手術用ロボティックアーム、手術用ロボティックアームの可撓性アーム、及び可撓性アームの可撓性ジョイントを提供する。
【0008】
本開示の一態様によれば、可撓性ジョイントが提供される。この可撓性ジョイントは、2つの支持セクションと、2つの支持セクションの間に接続された関節連結セクションとを含む。関節連結セクションは、接触補助部を有する複数の第1ターンを含む。接触補助部は、各第1ターンの両側に対向して配置される。可撓性ジョイントが屈曲された状態である場合、隣接する第1ターンの接触補助部は互いに接触する。関節連結セクションの各第1ターンに、駆動腱が通過するための複数の腱貫通孔が設けられる。
【0009】
オプションで、複数の第1ターンは、互いに螺旋状に接続されて螺旋構造を形成する。
【0010】
オプションで、隣接する第1ターンの接触補助部は、互いに転がり接触するか、又は互いに噛み合う。
【0011】
オプションで、接触補助部のそれぞれは、隣接する接触補助部に向かって滑らかな突起として形成され、突起の先端で隣接する接触補助部と接線方向に接触する。
【0012】
オプションで、接触補助部は、円形又は楕円形の断面を有する。
【0013】
オプションで、接触補助部は、シリンダー又はコーンとして構成される。
【0014】
オプションで、接触補助部のそれぞれは、隣接する接触補助部と噛み合う歯様構造として形成されるか、又は多角形の断面を有する。
【0015】
オプションで、接触補助部の軸方向中心線は、第1ターンの周方向中心線と一致する。
【0016】
オプションで、複数の腱貫通孔のうちの少なくとも1対の腱貫通孔の間の接続線は、接触補助部の軸方向中心線に垂直である。
【0017】
オプションで、可撓性ジョイントは、3Dプリンティングにより一体的に形成される。
【0018】
オプションで、腱貫通孔は、第1ターンの周囲に開口するように設計される。
【0019】
本開示の別の態様によれば、可撓性アームが提供される。この可撓性アームは、上記のような少なくとも2つの可撓性ジョイントと、2つの隣接する可撓性ジョイントの間に配置され、前記2つの隣接する可撓性ジョイントのそれぞれの支持セクションに接続されたデカップリングセクションと、を含む。
【0020】
オプションで、デカップリングセクション上に腱ルートが設けられ、駆動腱が通過するために可撓性ジョイントの支持セクションに設けられた腱貫通孔に延在する。
【0021】
オプションで、腱ルートは、デカップリングセクションの表面上に螺旋状に設けられる。
【0022】
オプションで、腱ルートは、デカップリングセクションの外面に設けられた螺旋状のワイヤ溝を含む。
【0023】
オプションで、デカップリングセクションはシリンダーとして構成される。
【0024】
オプションで、2つの隣接する可撓性ジョイントの対応する腱貫通孔は互いにオフセットされる。
【0025】
オプションで、2つの隣接する可撓性ジョイントの支持セクションの腱貫通孔は、2つの隣接する可撓性ジョイントが1つの平面でS字形に屈曲するように配置される。
【0026】
オプションで、デカップリングセクションの外面が平面内に展開されると、腱ルートは、平面内でS字形の曲線を形成する。
【0027】
オプションで、可撓性アームは、3Dプリンティングにより一体的に形成される。
【0028】
本開示のまた別の態様によれば、手術用ロボティックアームが提供される。この手術用ロボティックアームは、上記のような可撓性アームと、外科手術を行うための端末マニピュレータと、両端が可撓性アーム及び端末マニピュレータにそれぞれ接続された手首ジョイントと、を含む。端末マニピュレータの制御ケーブルは、可撓性アームからアクセスされ、手首ジョイントを通過し、端末マニピュレータに接続される。
【0029】
オプションで、手首ジョイントは、端末マニピュレータと接続するための端子接続セクションと、可撓セクションであって、複数のセグメントで設けられた第2ターンを含み、第2ターンの両端が端子接続セクション及び可撓性アームにそれぞれ接続され、可撓セクションの各第2ターンには、駆動腱が通過するための少なくとも2対の腱貫通孔が対向して設けられる可撓セクションと、可撓セクションの中心を通過する弾性を有する中央背骨であって、中央背骨の両端が端子接続セクション及び可撓性アームにそれぞれ接続される中央背骨と、を含む。
【0030】
オプションで、可撓性アームと手首ジョイントは、3Dプリンティングにより一体的に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本開示の実施形態をより良好に説明するために、以下の関連する図面を簡単に紹介する。以下に説明する図面は、本開示の幾つかの実施形態を例示することのみを意図し、当業者は、これらの図面に従って、本明細書で言及されていない多くの他の技術的特徴及び接続関係を取得できることが理解される。
【
図1】ロボティック腹腔鏡手術を行うための手術ロボット器具の概略図である。
【
図2】端末マニピュレータの近くの手術用ロボティックアームの一部の概略構造図である。
【
図3】手術用ロボティックアームの可撓性ジョイントの動作原理の概略図である。
【
図4】別の手術用ロボティックアームの可撓性ジョイントの概略構造図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る可撓性ジョイントの伸張時の概略図である。
【
図6】
図5に示される可撓性ジョイントの屈曲時の概略図である。
【
図7】
図5に示される可撓性ジョイントの第1ターンの概略断面図である。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る可撓性ジョイントの伸張時の概略図である。
【
図9】本開示の第3実施形態に係る可撓性ジョイントの伸張時の概略図である。
【
図10】本開示の第4実施形態に係る可撓性ジョイントの接触補助部の概略平面図である。
【
図11】本開示による可撓性アームの伸張時の概略図である。
【
図12】
図11に示される可撓性アームのデカップリングセクションの外面の展開時の概略図である。
【
図13】本開示による別の可撓性アームの伸張時の概略図である。
【
図14】本開示による手術用ロボティックアームの伸張時の概略図である。
【
図15】
図14に示される手術用ロボティックアームの屈曲時の概略図である。
【
図16】
図14に示される手術用ロボティックアームの手首ジョイントでの部分拡大概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本開示を詳細に説明する。本開示の手術用ロボティックアームへの改善をより良好に示すために、手術用ロボティックアームの基本原理及び端末マニピュレータの実施原理をそれぞれ説明する。
【0033】
図1は、ロボティック腹腔鏡手術を行うための典型的な手術ロボット器具a100を概略的に示す。手術ロボット器具a100は、ベースa101、位置決めアームa102、及び位置決めアームa102を介してベースa101に接続された手術用ロボティックアームa103を含む。手術用ロボティックアームa103の一端に端末マニピュレータa104が設けられる。
図1では、1対のジグザグ形のジョーが端末マニピュレータ104として示される。手術用ロボティックアームa103は、端末マニピュレータa104が位置決めアームa102に対して移動することを可能にし、それによって、人体又は動物体内の外科手術を可能にする。
【0034】
図2は、手術用ロボティックアームの特定の実施の理解を容易にするために、端末マニピュレータの近くの手術用ロボティックアームの一部の概略的構造図を示す。示されるように、端末マニピュレータa104は、ピッチジョイントb201及び撓みジョイントb202によって手術用ロボティックアームの手首b206に対して移動する。ピッチジョイントb201は、端末マニピュレータa104がピッチ軸b203の周りに回転することを可能にし、撓みジョイントb202は、端末マニピュレータa104が撓み軸b204のまわりに回転することを可能にする。ピッチジョイントb201と撓みジョイントb202は両方とも腱によって駆動され、プーリb205は、駆動腱を管理しガイドするために使用され得る。
【0035】
図3は、手術用ロボティックアーム内の可撓性ジョイントの各ターンc305が同心リング又はディスクとして配置された設計を示す。この設計では、可撓性ジョイントの前端c301は、端末マニピュレータa104と接続するために使用され、左駆動腱c303と右駆動腱c304はそれぞれ可撓性ジョイントの後端c302を通過し、各ターンc305の対向する側を通過して、可撓性ジョイントの前端c301に達する。左駆動腱c303及び右駆動腱c304の緊張及び弛緩は、可撓性ジョイントに1自由度の移動を与える。駆動腱の数が4つに増加すると、可撓性ジョイントは2自由度を持つことになる。しかしながら、この場合、端末マニピュレータは、ターンc305の偶発的なズレにより、正確に制御することはできない。例えば、左駆動腱c303及び右駆動腱c304は、
図3に示すように同じ緊張度を有するが、可撓性ジョイントの前端c301及び後端c302は共線ではない。
【0036】
ズレの欠点を克服するために、3つの駆動腱を使用して可撓性ジョイントを拘束することができる。しかしながら、各可撓性ジョイントが追加の駆動腱を必要とする場合、結果として生じる過剰の駆動腱は、間違いなくシステムの複雑さ及び製造コストの著しい増加を招くことになる。また、
図4に示すように、ばねd401として、それぞれのターンからなる関節連結セクションを形成し、ばねd401の弾性特性によりズレを補正することも可能である。しかしながら、ばね構造の場合、ばねd401の弾性力が比較的大きく設定された場合、ジョイントを作動させるためにより多くの力を駆動腱に加える必要がある。ばねd401の弾性力が比較的小さく設定された場合はまた、 ズレを効果的に補正ことができない。
【0037】
上記に鑑みて、本開示は、改善された可撓性ジョイント、可撓性ジョイントを含む可撓性アーム、及び可撓性アームを含む手術用ロボティックアームを提供し、それらの特定構造及び操作方法は、
図5~16を参照して以下に説明される。
【0038】
[I. 可撓性ジョイント]
(第1実施形態)
【0039】
本開示の第1実施形態に係る可撓性ジョイントは、
図5~7に示される。
図5は、可撓性ジョイントの伸張時の概略図であり、
図6は、可撓性ジョイントの屈曲時の概略図であり、
図7は、可撓性ジョイントの第1ターンの概略断面図である。
【0040】
図5及び6に示すように、本開示の第1実施形態に係る可撓性ジョイント1は、2つの支持セクション11と、2つの支持セクション11の間に接続された関節連結セクション12とを含む。関節連結セクション12は、接触補助部122を有する複数の第1ターン121を含む。接触補助部122は、各第1ターン121の両側に対向して配置される。可撓性ジョイント1が
図6に示すその屈曲状態にある場合、2つの隣接する第1ターン121の接触補助部122は、互いに接触している。駆動腱6が通過する複数の腱貫通孔5はそれぞれ、関節連結セクション12の各第1ターン121に対向して設けられる。複数の腱貫通孔5は、第1ターン121の直径に沿って対に設けられた少なくとも1対の腱貫通孔5を含んでもよい。オプションで、これらの第1ターン121の対応する腱貫通孔5を通過する駆動腱6が締め付けられると、可撓性ジョイント1は腱貫通孔5が設けられた側に向かって屈曲するように、1つの腱貫通孔5は関節連結セクション12の各第1ターン121に設けられてもよい。
【0041】
本開示の実施形態に言及されている支持セクション11は、支持の役割を果たすために関節連結セクション12の両端に設けられた構成要素を指す。一般に、支持セクション11は、十分な支持を可能にするために一定の剛性を有してもよい。腱貫通孔5はまた、駆動腱6がより滑らかに通過できるように、支持セクション11の対応する位置に設けられてもよい。また、様々な腱又はケーブルの通過を容易にするように、支持セクション11の中心に中空の孔が設けられてもよい。
【0042】
支持セクション11が剛性である場合、剛性支持セクション11と可撓性ジョイント連結セクション12の組み合わせは、両グループのメリットを与える。即ち、剛性支持セクション11は、可撓性ジョイント連結セクション12の移動を所望の2D空間内に拘束し、高いペイロードで構造的剛性を有する。可撓性ジョイント連結セクション12は、剛性支持セクション11における非線形特性摩擦を消滅させることで、可撓性ジョイント1に対する駆動力は、各支持セクション11に均一に分散され、一定の曲率を有する屈曲形状を形成することができる。この新規な設計は、螺旋状の梁に沿ってより均一にねじり及び屈曲力を分散できるバネ状の構造を使用することで、コンプライアンスを実現する。
【0043】
関節連結セクション12に設けられた第1ターン121は、可撓性ジョイント1の屈曲動作を実現するキー特徴である。
図6に示すように、1対の駆動腱6が、支持セクション11の一側に設けられた腱貫通孔5、第1ターン121の各々、及び支持セクション11の他側に設けられた腱貫通孔5を通過した後、駆動腱6は、第1ターン121の各々に相対的に固定されて、関節連結セクション12の屈曲動作は、駆動腱6によって駆動することができる。具体的には、第1側(
図6の下側)の駆動腱6が締め付けられ、第2側(
図6の上側)の駆動腱6が緩められると、関節連結セクション12は、第1側の駆動腱6に向かって屈曲する。この動作により、可撓性ジョイント1には、駆動腱6の対によって規定された平面内での移動の自由が与えられる。機械的ジョイントを使用する先行技術と比較して、本開示で採用される第1ターン121は、装置の複雑さを著しく低減する。
【0044】
一実施形態では、可撓性ジョイント1の第1ターン121は、螺旋状のセクションであってもよく、つまり、複数の第1ターン121は、互いに螺旋状に接続されてバネ状の螺旋構造を形成する。この構造により、関節連結セクション12におけるズレの欠点は、さらに抑制することができる。さらに、第1ターン121が互いに接続されるため、可撓性ジョイント1は、構成要素が少なくなり、製造及び組み立てがより容易になる。また、螺旋状の関節連結セクション12の使用により、ねじり力及び屈曲力をより均一に第1ターン121の各々に分散することが可能になり、それによって、より良好な可撓性が得られる。オプションで、第1ターン121はまた、基本的に本開示の技術的目的を達成することができる、
図3に示すような同心リング又はディスク設計を採用してもよい。
【0045】
上記の可撓性ジョイント1において、要点の1つは接触補助部122の設計にある。
図5及び6に示すように、各接触補助部122は、各第1ターン121の両側に対向して配置された幾つかの接触補助ユニット1223を含む。典型的には、各接触補助部122には、別個の左右1対の接触補助ユニット1223が設けられてもよいが、より多い接触補助ユニット1223も実現可能である。可撓性ジョイント1が屈曲状態にある場合、隣接する第1ターン121の対向する接触補助ユニット1223は互いに接触し、それによって、関節連結セクション12の屈曲方向を効果的に拘束する。
【0046】
一実施形態では、腱貫通孔5は、第1ターン121の周囲に開口するように設計されてもよい。即ち、
図13の符号1に示すように、腱貫通孔5の周囲は、閉じておらず、開口している。このように、可撓性ジョイント1内に開口腱ガイドチャネルが形成されるので、腱を引っ張ると腱のトルクアームを増加させることができ、器具アームのペイロードを増大させることができる。従って、可撓性ジョイントを屈曲するために必要な力が少なくなり、器具アームのためのより大きなペイロードが提供される。
【0047】
図7は、
図5に示される可撓性ジョイント1の第1ターン121の概略断面図である。示されるように、第1ターン121は円形の断面を有する。第1ターン121の中心に円形の中心孔が形成される。接触補助部122は、孔の両側に径方向に設けられる。接触補助部122の軸方向中心線L1は、第1ターン121の周方向中心線L2、即ち、第1ターン121の断面中心を通過する直線と一致する。また、腱貫通孔5において、少なくとも1対の腱貫通孔5の間の接続線L3は、接触補助部122の軸方向中心線L1に垂直であってもよい。この場合、接触補助部122の力受け面は、関節連結セクション12の屈曲方向と一致するため、よりよい安定性が期待できる。
【0048】
接触補助部122を設けることにより、
図3に示すようなジョイントのズレを防止するのを助けることができることが理解される。さらに、接触補助部122は、接触のみを補助し、関節連結セクション12の移動抵抗を増加させないので、駆動腱6は、可撓性ジョイント1を作動させるために小さな力を必要としない。接触補助ユニット1223を設けることによって、第1ターン121は、より柔らかい螺旋状のセクションを採用することができ、駆動腱6の駆動力に対する要求をさらに低くする。関節連結セクション12の弾性復元力の限界により、可撓性ジョイント1の移動精度を向上させることができる。
【0049】
図3に示される可撓性ジョイントでは、第1ターン121は、同心リング又はディスクとして形成される。この場合、可撓性ジョイント1の移動精度を確保し、ズレを防止するために、通常3つ以上の駆動腱6が必要となる。本開示の実施形態では、接触補助部122は、関節連結セクション12の移動を1自由度内に拘束するように形成されるので、1対の駆動腱6はズレを防止するのに十分であり、それによって、可撓性ジョイント1の構造上の複雑さを低減する。
【0050】
可撓性ジョイント1は、従来のサブトラクティブ製造プロセス又は付加製造プロセスによって作り出すことができる。サブトラクティブ製造プロセスでは、管状構造に特定のパターンを作成し、屈曲可能にするために溝を入れるなどして、完全な材料から一部の部品を取り除く。付加製造プロセスでは、部品を1層ずつ追加することで可撓性ジョイントを構築する。また、既製のコイルばねを用いて可撓性ジョイントを構築することが可能である。
【0051】
オプションで、本開示の可撓性ジョイント1は、3Dプリンティングプロセスによって一体的に形成されてもよい。特に、バネ状の螺旋構造を採用した場合、可撓性ジョイント1全体が全体として接続されているため、一体成形方法によって可撓性ジョイント1を製造することは、多くの廃棄物を発生させることなく、従来の製造プロセスと比較して1つずつ部品を組み立てる必要がなくなるこれにより、低コストで高効率のメリットが得られる。先行技術の直感的な手術用ダビンチSPシステム(Intuitive Surgical Davinci SP system)及び精密ロボティクスマイクロigesシステム(Precision Robotics Micro-iges system)と比較して、本開示で使用される3Dプリンティングプロセスは、ジョイントをモノリシックに作り出することができ、したがって、製造及び組立コストを節約することができる。例えば、サブトラクティブ製造プロセスで作り出された可撓性ジョイントについては、通常、レーザ切断を使用して、管状構造体の外面に水平スロットを形成し、梁状材料の屈曲に基づくコンプライアンスを達成するため、スロット付き管状構造は、短い設計寿命を有する。対照的に、3Dプリンティングによって作り出された螺旋状梁を有する可撓性ジョイント1は、比較的長い疲労寿命を有する。3Dプリンティングでは、同じ又は異なる材料を使用して、支持セクション11、第1ターン121、及び接触補助部122などの可撓性ジョイント1の様々な部品を形成することができる。
【0052】
(第2実施形態)
可撓性ジョイント1の接触補助部122については、関節連結セクション12が屈曲したときに、隣接する第1ターン121の接触補助ユニット1223を互いに接触させ、関節連結セクション12の屈曲の自由度を拘束することができれば、本開示の技術的目的を達成することができる。従って、接触補助部122は、様々な実現可能な形状及びタイプで提供されてもよい。
【0053】
例えば、接触補助部122は、隣接する接触補助ユニット1223が互いに噛み合うことができる構造として構成されてもよく、第2実施形態に係る可撓性ジョイント1の伸張時の図を概略的に示す
図8に示すように、特に、互いに噛み合う歯様構造として構成されてもよい。噛み合い構成により、関節連結セクション12を屈曲させながら、関節連結セクション12の移動の自由を拘束することが可能である。そのうち、歯様構造は、個々の第1ターン121の変形をさらに防止することができる。オプションで、個々の接触補助ユニット1223の断面を、歯様構造の代わりに、4つ以上の辺を有する正多角形として設計することも可能である。接触補助部122の周方向に沿って相互噛み合いが得られる
図8に示される歯様構造に加えて、接触補助部122の軸方向に相互噛み合いが得られる構造が使用されてもよく、これにより、個々の第1ターン121が関節連結セクション12から抜け出すことをよりよく防止することができると理解される。
【0054】
(第3実施形態)
一実施形態では、隣接する第1ターン121の接触補助部122は、互いに転がり接触してもよい。歯様構造と比較して、転がり接触を伴う接触補助部122は、関節連結セクション12の屈曲曲線に対してほぼ線形の抵抗変化を有するので、関節連結セクション12の屈曲動作はより滑らかになり、駆動腱6の駆動出力パワーに対する要件を低減することができる。
【0055】
転がり接触を伴う接触補助部122が使用される場合、接触補助部122は様々な形態で実施され得る。例えば、各接触補助部122は、隣接する接触補助部122に向かって滑らかな突起として形成され、突起の先端で隣接する接触補助部122と接線方向に接触してもよい。この場合、接触補助部122は、
図5に示される円形の断面、又は
図9に示される楕円形の断面を有してもよく、
図9は、本開示の第3実施形態に係る可撓性ジョイントの伸張時の概略図である。
【0056】
図9に示されるような接触補助ユニット 1223の楕円形の断面は、可撓性ジョイント1の長手方向軸に平行な方向により小さいサイズ、長手方向軸に垂直な方向により大きいサイズを有する。この場合、可撓性ジョイント1の屈曲幅が比較的小さいため、可撓性ジョイント1に接続された端末マニピュレータ4の様々な動作をより正確に調整することができる。オプションで、接触補助ユニット1223は、可撓性ジョイント1の長手方向軸に平行な方向により大きいサイズ及び長手方向軸に垂直な方向により小さいサイズを有する楕円形の断面を含んでもよい。この場合、可撓性ジョイント1の屈曲幅は比較的大きいため、可撓性ジョイント1に接続された端末マニピュレータ4の操作範囲を拡大することができる。
【0057】
(第4実施形態)
図10は、本開示の第4実施形態に係る可撓性ジョイントの接触補助部の概略平面図である。接触補助部122は、
図5に示すような円形の断面を有するが、
図5に示されるシリンダーとは異なり、接触補助部122における接触補助ユニット1232の少なくとも一部は、コーンとして構成される。即ち、1つの接触補助部122の直径は、軸方向に沿って徐々に増加し、それに接触する隣接する接触補助部122の直径は、同じ方向に徐々に減少する。
【0058】
本開示で言及されるシリンダー、コーンなどの形状は、幾何学的な意味で厳密に定義されていない。当技術分野で知られているように、幾つかの近似形状は、これらの形状と呼ばれることが多い。本開示において、形状は、本出願の技術的目的を達成できる近似形状である限り、特許請求の範囲で定義される「シリンダー」又は「コーン」と見なすことができる。実際、可撓性ジョイント1の全体的な縁が滑らかであることを保証し、突出した縁が人体の内部を傷つけないようにするために、接触補助部122の外面は、特定の曲率を有するように設計されてもよい。 これにより、その端面は完全に平坦な面ではなくなるため、それは厳密にシリンダー又はコーンではなくなる。しかしながら、これらの詳細な変更は、本出願の特許請求の範囲の保護範囲から逸脱するものと見なされるべきではない。
【0059】
シリンダー状の接触補助ユニット1223が採用されると、関節連結セクション12の屈曲動作に対する接触補助部122の抵抗は、 関節連結セクション12の屈曲度が大きくなるにつれて実質的に変化しないため、駆動腱6の駆動動力をより容易に制御することができる。対照的に、コーン状の接触補助ユニット1223が採用されると、2つの隣接する接触補助ユニット1223の形状は互いに一致し、それにより、第1ターン121が滑ってコーンの軸方向にずれる可能性をよりよく防止し、可撓性ジョイント1の作業安定性を向上させる。
【0060】
図9に示すような楕円形の断面が採用されると、接触補助部122における接触補助ユニット1223の少なくとも一部は、必要に応じて、楕円形のシリンダー又は楕円形のコーンとして形成することができることが理解される。シリンダーと比較して、可撓性ジョイント1の接触補助ユニット1223が楕円形のシリンダーとして形成された場合、接触補助部122が様々な程度に屈曲したときに生じる関節連結セクション12に対する抵抗は、設計された曲率に従って正確に調整することができ、駆動腱6の駆動動力の出力特定によりよく適合させることができる。また、楕円形のコーンと楕円形のシリンダーとの間の差は、コーンとシリンダーとの間の差と同様であり、ここでは繰り返さない。
【0061】
[II. 可撓性アーム]
図11は、本開示による可撓性アームの伸張時の概略図である。
図12は、
図11に示される可撓性アームのデカップリングセクションの外面の展開時の概略図である。示されるように、可撓性アーム2は、可撓性ジョイント1及びデカップリングセクション21を含む。デカップリングセクション21は、2つの隣接する可撓性ジョイント1の間に配置され、2つの可撓性ジョイント1のそれぞれの支持セクション11に接続される。ここで、可撓性ジョイント1は、第1~第4実施形態で上述した可撓性ジョイントであってもよい。
【0062】
2つ以上の可撓性ジョイント1が互いに直列に接続された場合、遠位可撓性ジョイント1を制御するために、遠位可撓性ジョイント1を制御するための駆動腱6を近位可撓性ジョイント1に通過させる必要がある。即ち、近位可撓性ジョイント1と遠位可撓性ジョイント1との間にカップリング関係がある。したがって、遠位可撓性ジョイント1が駆動腱6によって制御される場合、駆動腱6に加えられる力も近位可撓性ジョイント1に作用して、それを強制的に変形させる。特に、可撓性アーム2自体がS字形の曲線を形成した場合、変形の方向は、近位可撓性ジョイント1の屈曲方向からずれ、悪影響を及ぼしやすい。
【0063】
このため、
図11に示すような可撓性アーム2は、デカップリングセクション21によって遠位可撓性ジョイント1と近位可撓性ジョイント1とをデカップルし、 近位可撓性ジョイント1に対する遠位可撓性ジョイント1での駆動腱6の影響を弱め、又は排除することさえできる。したがって、本開示の実施形態で提供される可撓性アーム2は、簡単な構造の利点を有するだけでなく、より容易に制御することもできる。
【0064】
図11に示される実施形態では、デカップリングセクション21に腱ルート22が設けられ、駆動腱6が貫通できるように、可撓性ジョイント1の支持セクション11に設けられた腱貫通孔5まで延在する。腱ルート22は、駆動腱6の配置及び位置をガイドするために利用することができるので、デカップリングセクション21のデカップリングにおいて重要な役割を果たす。オプションで、腱ルート22は、デカップリングセクション21の外面に螺旋状のワイヤ溝として構成されてもよい。また、1つ以上の円周方向に囲まれたパイプは、腱ルート22として機能するように、デカップリングセクション21に螺旋状に設けられてもよい。螺旋状のワイヤ溝及び円周方向に囲まれたパイプは、単独で又は組み合わせて使用することができる。螺旋状のワイヤ溝設計の場合、製造コストが低く、駆動腱6の取付け及びメンテナンスもより簡単でより便利である。
【0065】
遠位可撓性ジョイント1と近位可撓性ジョイント1との間のカップリング関係は、主に、駆動腱6によるこれらの2つの可撓性ジョイント1の間の力の伝達に起因する。デカップリングセクション21の外面に腱ルート22を螺旋状に構成することによって、この力をデカップリングセクション21自体に分散させ、それにより、これらの2つの可撓性ジョイント1をデカップリングすることができる。腱ルート22がデカップリングセクション21の外面に設けられた場合、デカップリングセクション21は、腱ルート22の配置をより容易にするように、シリンダーとして構成されてもよいことが理解される。
【0066】
デカップリングセクション21は、材料が支持セクション11と一致してもよい剛性セクションであってもよい。デカップリングセクション21は、支持セクション11と一体的に形成されてもよい。それにより、デカップリングセクション21は、可撓性アーム2がオンデマンドで屈曲するように、可撓性アーム2に良好な支持役割を果たすことができる。さらに、可撓性アーム2全体は、3Dプリンティングによって一体的に形成することができる。可撓性アーム2全体が一体的に製造される場合、可撓性ジョイント1とデカップリングセクション21を順次組み立てる必要がない。その結果、可撓性アーム2の複雑さが軽減され、その信頼性が向上し、可撓性アーム2全体は、より優れた機械的特性およびより長い耐用年数を有することができる。3Dプリンティングでは、同じ又は異なる材料を使用して、可撓性ジョイント1とデカップリングセクション21など、可撓性アーム2の様々な部品を形成してもよい。
【0067】
2つの隣接する可撓性ジョイント1の対応する腱貫通孔5は、互いにオフセットすることができる。「対応する腱貫通孔5」という用語は、同じ駆動腱6が貫通する2つの隣接する可撓性ジョイント1内の腱貫通孔5を指す。2つの腱貫通孔5が互いにオフセットされると、駆動腱6が螺旋状に配置されやすくなる。
図11に示される実施形態では、2つの隣接する可撓性ジョイント1の対応する腱貫通孔5は、互いに360度オフセットされている。即ち、一方の可撓性ジョイント16の腱貫通孔5に進入した駆動腱6は、デカップリングセクション21に一周巻き付いた後、他方の可撓性ジョイント1の腱貫通孔5を通って存在するので、2つの可撓性ジョイント1は依然として同じ直線上に配置されている。
図12に示すように、
図11に示されるデカップリングセクション21の表面が平面に展開されると、腱ルート22は、平面内でS字形の曲線を形成する。従来の螺旋腱ルート22は、展開されたときに平面内でほぼ直線である。腱ルート22が平面内でS字形の曲線を形成する場合、セクションの曲率はS字形の曲線に沿って変化するため、駆動腱6に対する腱ルート22の表面の抵抗が増加し、それによって、デカップリングセクション21の改善されたデカップリング能力につながる。
【0068】
図13に示される実施形態では、本開示による別の可撓性アームは、伸張された時に実質的にS字形の輪郭を有するものとして示される。ここで、2つの隣接する可撓性ジョイント1の支持セクション11における腱貫通孔5は、対応する腱貫通孔5のオフセット角度が約180度となるように配置される。即ち、一方の可撓性ジョイント1の腱貫通孔5に進入した駆動腱6は、デカップリングセクション21に半周巻き付いた後、他方の可撓性ジョイント1の腱貫通孔5を通って存在し、それによって、2つの可撓性ジョイント1が1つの平面にS字形に屈曲される。オプションで、2つの隣接する可撓性ジョイント1の支持セクション11における腱貫通孔5は、90度又は45度など、180度及び360度以外の角度だけオフセットされてもよい。この場合、遠位可撓性ジョイント1と近位可撓性ジョイント1は同一平面上にない。
【0069】
シングルポートアクセス手術に関しては、すべての手術器具が1つの単一の動作チャネルを介して人体に進入するため、狭い作業スペース内で協調動作を実現することが困難である。可撓性アーム2が1つの平面内でS字形に屈曲する場合、又は遠位可撓性ジョイント1と近位可撓性ジョイント1が同一平面上にない場合、狭い作業スペース内で、可撓性アーム2の遠位端に取り付けられた端末マニピュレータ4の様々な協調動作をより良好に可能にすることができる。
【0070】
[III. 手術用ロボティックアーム]
図14は、本開示による手術用ロボティックアームの伸張時の図を概略的に示す。
図15は、手術用ロボティックアームの屈曲時の概略図である。
図16は、手術用ロボティックアームの手首ジョイントでの部分拡大概略図である。図示のように、手術用ロボティックアームは、可撓性アーム2と、外科手術を行う、即ち、手術器具の主要な機能を提供する端末マニピュレータ4と、両端が可撓性アーム2及び端末マニピュレータ4にそれぞれ接続された手首ジョイント3と、を含む。端末マニピュレータ4の制御ケーブルは、可撓性アーム2からアクセスされ、手首ジョイント3を通過し、端末マニピュレータ4に接続される。そのうち、可撓性アーム2は上記の可撓性アームであってもよい。
【0071】
端末マニピュレータ4は、ジョー、レーザーメス、内視鏡などを含んでもよい。端末マニピュレータ4の可撓性を向上させるために、手首ジョイント3は、多方向に移動の自由を有してもよい。手首ジョイント3は手術用ロボティックアームの端部に位置するため、他のジョイントの駆動腱6の影響を受けにくい。端末マニピュレータ4及び可撓性アーム2の優れた制御性能により、本開示で開示される手術用ロボティックアームは、シングルポートアクセス手術における様々な動作を正確かつ効率的に行うことができる。
【0072】
図16に示される実施形態では、手首ジョイント3は、端末マニピュレータ4と接続するための端子接続セクション33と、複数のセグメントで設けられた第2ターン311を含む可撓セクション31であって、可撓セクション31の両端が可撓性アーム2及び端子接続セクション33にそれぞれ接続される可撓セクション31と、可撓セクション31の中心を通過する中央背骨32であって、中央背骨32の両端が端子接続セクション33及び可撓性アーム2にそれぞれ接続される中央背骨32と、を含む。
【0073】
支持セクション11と同様に、端子接続セクション33は、支持の役割を果たすために、一定の剛性を有してもよい。第2ターン311の形状、構造及び材料は、第1ターン121と同じであっても異なってもよい。 即ち、第2ターン311は、
図3に示すような同心リング又はディスク構造、又は複数のターンを互いに螺旋状に接続することで形成された螺旋構造、又は接触補助部122を有する
図5~10に示される構造を含んでもよい。可撓セクション31の各第2ターン311において、駆動腱6が通過するために、少なくとも2対の腱貫通孔5が対向して設けられる。可撓セクション31には、少なくとも2対の腱貫通孔5によって、2つの方向に移動の自由が与えられるので、端末マニピュレータ4は柔軟に移動し動作することができる。
【0074】
オプションで、可撓セクション31の中心を通過する中央背骨32は弾性を有してもよい。遠位端に近くの可撓セクション31に中央背骨32が設けられるため、駆動腱6の駆動力を高くする必要がない。弾性中央背骨32が組み込まれ、可撓セクション31の移動の自由が確保される場合、中央背骨32の弾性復元力を使用して、可撓セクション31のズレを防止することができ、手術用ロボティックアームの信頼性をさらに向上させることができる。
【0075】
一実施形態では、手術用ロボティックアームにおける可撓性アーム2及び手首ジョイント3(少なくとも部分的に、その端接続セクション33)は、3Dプリンティングによって一体的に形成することができる。実際の使用では、別個の端末マニピュレータ4及び駆動腱6の可動要素を、3Dプリンティングによって作る出された手術用ロボティックアームの主要部品に取り付けるだけでよく、その後、組み立てプロセスが完了する。従って、3Dプリンティングの使用は、製造効率を向上させ、耐用年数を延長し、コストを削減することができる。3Dプリンティングでは、同じ又は異なる材料を使用して、可撓性ジョイント1、デカップリングセクション2、可撓セクション31、中央背骨32、及び端子接続セクション33など、手術ロボットアームの様々な部品を形成することができる。
【0076】
最後に、本開示は限られた数の実施形態のみに関連して詳細に説明されたが、本開示はそのような開示された実施形態に限定されないことが容易に理解されるべきである。むしろ、本開示は、これまで説明されていないが、本開示の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、変更、置換、又は同等の配置を組み込むように修正することができる。さらに、本開示の様々な実施形態が説明されてきたが、本開示の態様は、説明された実施形態の幾つかのみを含み得ることが理解されるべきである。したがって、本開示は、前述の説明によって限定されると見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0077】
1: 可撓性ジョイント; 11: 支持セクション; 12: 関節連結セクション; 121: 第1ターン; 122: 接触補助部; 1223: 接触補助ユニット; 2: 可撓性アーム; 21: デカップリングセクション; 22: 腱ルート; 3: 手首ジョイント; 31: 可撓セクション; 311: 第2ターン; 32: 中央背骨; 33: 端子接続セクション; 4: 端末マニピュレータ; 5: 腱貫通孔; 6: 駆動腱; L1: 接触補助部の軸方向中心線; L2: 第1ターンの周方向中心線; L3: 一対の腱貫通孔間の接続線。