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特許7513786サケ類に含まれる色素を発色させる方法及び、発色したサケ類食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】サケ類に含まれる色素を発色させる方法及び、発色したサケ類食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A22C 25/00 20060101AFI20240702BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240702BHJP
   A23L 5/41 20160101ALI20240702BHJP
【FI】
A22C25/00 Z
A23L17/00 A
A23L5/41
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023042405
(22)【出願日】2023-03-16
【審査請求日】2023-12-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇根 雄太
(72)【発明者】
【氏名】北村 美聖
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-206042(JP,A)
【文献】国際公開第2011/001143(WO,A2)
【文献】特開平05-284902(JP,A)
【文献】特開2002-360223(JP,A)
【文献】特開2022-106062(JP,A)
【文献】特開平07-213253(JP,A)
【文献】特開昭60-130368(JP,A)
【文献】特開昭56-015671(JP,A)
【文献】特開2012-217439(JP,A)
【文献】特開平06-007075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 25/00
A23L 17/00
A23L 5/41
A23B 4/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加熱状態のサケ類を、食塩1.0質量%以上5.0質量%未満、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液(ただし、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムと、フェルラ酸とを含有するものを除く。)と接触させる、サケ類に含まれる色素を発色させる方法。
【請求項2】
水溶液のpHが8.5以上11.0以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
未加熱状態のサケ類を前記水溶液と5分~30分接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記サケ類と前記水溶液とを接触させた後に、水で洗浄せずに、もしくは、流水または溜め水で30秒以下の時間で洗浄し、次いで冷凍する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記のサケ類が加熱用である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
未加熱状態のサケ類を、食塩1.0質量%以上5.0質量%未満、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液(ただし、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムと、フェルラ酸とを含有するものを除く。)と接触させる、発色したサケ類食品の製造方法。
【請求項7】
サケ類に含まれる色素を発色させるための浸漬剤であって、食塩1.0質量%以上5.0質量%未満、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液(ただし、アスコルビン酸又はアスコルビン酸ナトリウムと、フェルラ酸とを含有するものを除く。)である、浸漬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サケ類に含まれる色素を発色させる方法及び、発色したサケ類食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サケ類は、魚介類の中でも、各種の料理に広く用いられ、消費量の多い魚である。サケ類の身はカロチノイド系色素を含有しており、通常はオレンジないし赤みがかった色をしている。未加熱状態においても、加熱した状態においても、サケ類は、赤色系の色味が鮮やかであることが、需要者に対する大きなアピールポイントとなっている。
【0003】
特許文献1には、カロチノイド系色素を有する魚介類をアルカリ水溶液中に浸漬させて赤色に発色させる技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、30分間の流水により水洗して発色剤を除去して喫食している(段落〔0016〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-007075号公報
【発明の概要】
【0005】
近年のコスト低減や工数の低減の観点から、魚介類に係る浸漬処理等の所定の処理液と接触させた後の水洗処理は、食品安全上の基準値を満たすレベルとすることを前提に、省略或いは短時間化する要求がある。この点に関し、本発明者が検討したところ、特許文献1で用いた発色用浸漬液は、短い処理時間であっても、処理後の洗浄を行わないか又は洗浄時間が短い場合には、不自然な風味や苦味を感じてしまうという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の課題は、短時間でサケ類の色素を発色させるだけでなく、アルカリ溶液とサケ類との接触処理後に洗浄しない、或いは洗浄時間がごく短時間であっても異味や苦味が抑制される、サケ類に含まれる色素を発色させる方法及び、発色したサケ類食品の製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明者は、上記課題を鋭意検討した結果、驚くべきことに、所定のアルカリ剤とともに、食塩と重曹を組み合わせて用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
本発明は上記知見に基づくものであり、未加熱状態のサケ類を、食塩1.0~10.0質量%、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液と接触させる、サケ類に含まれる色素を発色させる方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は未加熱状態のサケ類を、食塩1.0~10.0質量%、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液と接触させる、発色したサケ類食品の製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、サケ類に含まれる色素を発色させるための浸漬剤であって、食塩1.0~10.0質量%、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液である、浸漬剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短時間でサケ類の色素を発色させるだけでなく、アルカリ溶液とサケ類との接触処理後に洗浄しない、或いはごく短時間の洗浄であっても異味や苦味がない、サケ類の発色方法及び、発色したサケ類食品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の発色方法は、未加熱状態のサケ類を所定の水溶液と接触させることで、サケ類に含まれる色素を発色させて、未加熱状態において接触前よりも赤色とし、且つ焼成後も発色状態を維持するものである。本発明において、発色は、上記水溶液による処理により、無処理の物に比して目視にて赤色が増した状態であればよい。またサケ類食品は、発色したサケ類を含有していればよい。
【0013】
本発明において、サケ類とは、サケ類とは、サケ科太平洋サケ属(Oncorhynchus属)あるいはサケ科大西洋サケ属(Salmo属)に属する魚類のことである。太平洋サケ属に属するサケとしては、例えばニジマス(Oncorhynchus mykiss)、ギンザケ(Oncorhynchus kisutch)、キングサーモン(Oncorhynchus tshawytscha)、ベニザケ(Oncorhynchus nerka)、カラフトマス(Oncorhynchus gorbuscha)、シロサケ(Oncorhynchus keta)、サクラマス(Oncorhynchus masou masou)及びサツキマス(Oncorhynchus masou macrostomus)が例示され、大西洋サケ属に属するサケとしては、例えばアトランティックサーモン(Salmo salar)及びブラウンマス(Salmo trutta)が例示される。中でもアトランティックサーモン、シロサケ、ギンザケ及びキングサーモンが本発明におけるサケ類の好適な例として挙げられる。
【0014】
本発明では、未加熱状態のサケ類を、食塩1.0~10.0質量%、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液と接触させる。ここで、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウムを用いることで、効果的な発色を行うことができる。炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムは一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。好ましくは炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムのうち炭酸ナトリウムを用いることがアルカリ特有の苦みが感じにくい点で好ましい。
【0015】
炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムの量は、合計で、上記水溶液中、0.1質量%以上であることで、サケ類の発色を効果的に行うことができる。また、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムの量は、合計で、上記水溶液中、4質量%以下であることで、アルカリ溶液とサケ類との接触処理後に洗浄しない、或いは洗浄がごく短時間である場合も、異味や苦味が低減される効果が得られる。これらの点から、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムの量は、合計で、上記水溶液中、0.2質量%以上3.5質量%以下が好ましく、0.25質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。食味を一層良好なものとする点から、炭酸カリウムの量は、1.2質量%以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明で用いる上記水溶液は、魚の食味維持、食感の維持等の点から、食塩を含有することが好ましく、その場合の食塩の量としては、10.0質量%以下であることで、好適な食味及び食感の維持の効果が得られる。また、食塩の量は、上記水溶液中、1.0質量%以上であることで、上記食塩を含有する効果が得られる。この点から、食塩の量は、上記水溶液中、1.0質量%以上10.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上5.0質量%以下がより好ましい。
【0017】
本発明では上記特定のアルカリ剤、食塩とともに、重曹を所定量用いることで、発色効果と無洗浄又は短時間洗浄における食味とを両立させることができる。重曹の含有量は上記水溶液中、1.0質量%以上であることで色調改善の効果が得られる。また重曹の含有量は上記水溶液中、5.0質量%以下であることで、pHの低減による苦み軽減の効果が得られる。これらの観点から、重曹の量は、上記水溶液中、1.0質量%以上3.5質量%以下が好ましく、1.5質量%以上2.8質量%以下がより好ましい。
【0018】
本発明において、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムの合計量と重曹の量は、固形分として、質量比が100:3~30であることが、発色効果と、無洗浄又は短時間洗浄における食味とのバランスが良い点から好ましく、100:5~25であることがより好ましく、100:10~20であることが最も好ましい。
【0019】
本発明で用いる上記水溶液は、本発明の効果を阻害しない量にて水、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、食塩及び重曹以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう。)を含有していてもよいが、その他の成分を非含有であってもよい。上記水溶液におけるその他の成分の量は、上記水溶液中、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下が更に好ましく、2.0質量%以下が特に好ましく、0質量%であってもよい。
【0020】
上記水溶液は21~23℃のpHが8.8以上11.0以下が好適であり、8.9以上10.5以下がより好適であり、9.0以上10.0未満であることがより好適である。pHが8.8以上、特に8.9以上、とりわけ9.0以上であることで発色効果が良好となる。またpHが11.0以下、更に10.5以下、特に10.0未満であることで無洗浄又は短時間洗浄後の食味を良好としやすい。pHは9.7以下であってもよい。ここでいう上記水溶液のpHは上記水溶液の温度が21~23℃の時のpHとする。pHは21~23℃の何れかの温度にて該当すればよい。
【0021】
本発明においてサケ類としては、天然物であっても養殖物であってもよい。漁獲後に冷凍及び解凍を経たサケ類を用いてもよい。サケ類としては、未加熱状態のサケ類を投入する。未加熱状態とは例えば60℃以上の加熱処理が施されていないことを指し、50℃以上の加熱処理が施されていないことを指すことが特に好ましい。
【0022】
サケ類としては、事前に塩漬け処理がなされたものであっても塩漬け処理がなされていないものであってもよい。塩漬け処理とは、定塩処理ともいい、通常、3.0~10.0質量%の食塩含有水にサケ類を浸漬させるか、或いは、サケ類の身の表面に食塩をまぶしておく処理が挙げられる。ただし、ここでいう塩漬け処理に、本発明における重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液を用いる処理は含まれない。塩漬け処理がなされたサケ類を、「塩サケ」或いは「塩サケ類」といい、塩漬け処理がなされていないサケ類を、「生サケ」或いは「生サケ類」という場合がある。本発明に供するサケ類は、特に塩漬け処理がなされていないものであることが、本発明の処理による発色の程度が大きい点で好ましい。但し、後述する実施例で示す通り、本発明では、塩サケ類に対しても優れた発色効果を奏するものである。
【0023】
食塩1.0~10.0質量%、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液を、サケ類と接触させる処理としては、サケ類の表面が水溶液と接触する処理であればよく、浸漬処理であっても、噴霧処理であっても、インジェクション処理であってもよい。特に浸漬処理であることが、サケ類表面全体を均一に触れさせられる点から好ましい。
【0024】
上記水溶液の使用量は、サケ類100質量部に対し、50~150質量部であることが、本発明の効果が高く且つ経済性がある点で好ましく、60~120質量部であることがより好ましく、70~110質量部であることが更に一層好ましい。
【0025】
サケ類に接触させる上記水溶液の温度は、5.0~25.0℃であることが、食品上の安全性の点及び本発明の効果に優れる点で好ましく、7.0~20.0℃であることがより好ましい。
【0026】
上記水溶液とサケ類とを接触させる時間は、通常60秒以上であり、発色効果に優れる点から、5分以上であることが好ましく、とりわけ、6分以上であることがより好ましく、7分以上であることが特に好ましい。また、水溶液と接触させる時間は、無洗浄又は短時間洗浄後の食味の点や製造時間短縮の点、微生物増殖抑制の点から30分以下であることが好適であり、20分以下がより好ましく、15分以下であることが特に好ましい。
【0027】
上記接触処理後に、液切り等を行う。上記水溶液と接触処理後のサケ類は洗浄する必要はないが、洗浄処理を行ってもよい。この場合の洗浄処理としては、例えば流水での洗浄や貯水での洗浄が挙げられる。製造時間の短縮の点から、水での洗浄は例えば30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましく、10秒以下が特に好ましい。洗浄を行う場合には、洗浄の時間が3秒以上であることが好ましく、5秒以上が特に好ましい。
【0028】
本発明では、洗浄を仮に行う場合、洗浄に用いる水の量は、サケ類100g当たり、100g以上であることが好適であり、200g以上であることがより好適である。
【0029】
上記水溶液に浸漬後の未加熱状態のサケ類は、そのまま冷凍又はチルドしてもよく、或いは調理後に冷凍してもよい。特に上記水溶液と接触させた後のサケ類を直ちに冷凍させることが微生物増殖抑制の点で好ましい。冷凍速度としては、冷凍が-2.5℃/分~-0.5℃/分の速度で行われることが好ましい。また冷凍温度は-45~-10℃となることが好ましい。
【0030】
未加熱状態のサケ類はそのまま、又は解凍後に調理に供してもよい。調理方法としては、油調する、煮る、蒸す、焼く等の各種の調理に使用できる。
本発明の処理により得られるサケ類は、生食用してもよく、加熱用としてもよいが、好ましくは加熱用とすることが、本発明の加熱後の発色促進効果を発揮する点で好ましい。
【0031】
未加熱状態のサケ類及び加熱済みのサケ類を冷凍又はチルドするタイミングは、上記水溶液との接触後であれば、いずれのタイミングであってもよい。
【0032】
例えば未加熱状態のサケ類は、上記水溶液との接触後にそのまま冷凍状態で保存できる。また未加熱状態のサケ類を加熱して加熱済みのサケ類を得る際には、冷凍、チルド等のいずれの状態のものを各種の加熱調理(油調、煮る、蒸す、焼く等)に供してもよく、サケ類を加熱調理後、そのまま冷凍又はチルド状態で保存してもよい。冷凍状態とは、通常10℃未満の温度範囲での保存をさし、冷凍は通常-3℃より低く-45℃より高い温度で行われる。本発明で得られたサケ類は、未加熱状態であっても加熱済みの状態であっても従来よりも優れた赤色の発色を示す。
【0033】
本発明において、接触処理を行っていないサケ類に比してL*a*b*色空間でのa*の増加が確認できることは発色確認方法の一例として挙げることができるが、必要要件ではない。サケ類に含まれる色素を発色させるとは、目視により前記水溶液との接触前よりも赤みが増加していればよい。なお発明者の経験上、L*は接触処理を行っていないサケ類に比して低下している方が、赤みが強く感じられる場合がある。
【実施例
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。下記表の配合の単位は質量部である。
【0035】
(実施例1~4、比較例1)
表1に記載の成分を混合し、浸漬液を調製した。浸漬液のpHは21~23℃で測定した。測定したpHを表1に示す。チリ産のサケ類(未加熱、品種ギンザケ、養殖)の定塩処理を行ったフィレを4枚、定塩処理を行っていない無塩のフィレ4枚を使用し、それぞれ約1.5cm幅にカットして切り身を得た。定塩処理をした切り身、及び、定塩処理を行っていない切り身について、それぞれ、下記表1の試験区ごとに調製した浸漬液(20.0℃)に10分間浸漬させた。浸漬液は、サケ類100質量部に対し100質量部とした。
【0036】
【表1】
【0037】
浸漬後、サケ類を液切り後、洗浄せずに-30℃の冷凍庫に投入した。冷凍速度は、-1.0℃/分であった。
14日間冷凍したサケ類を包装越しに流水をかけることにより解凍し、下記の発色評価に供した。発色評価は4人のパネラーによる評価点の平均値とし、下記基準で評価させ評価の平均点が1.5点未満であるとD、1.5点以上2.5点未満であるとC、2.5点以上3.5点未満であるとB、3.5点以上であるとAという基準で評価した。結果を表2に示す。
【0038】
(発色評価の基準:改善度)
1点:浸漬処理を行わないものに比して色味の改善が見られない。
2点:浸漬処理を行わないものに比して若干赤味が増し、色味の改善がみられる。
3点:浸漬処理を行わないものに比して赤味が増し、色味の改善がみられる。
4点:浸漬処理を行わないものに比して著しく赤味が増し、色味改善がみられる。
【0039】
また、焼成前のサケ類について、ビジュアルアナライザーIRIS(Alpha MOS社)を利用したL*a*b*色空間における、L*、a*及びb*それぞれを測定した。照明条件を均一化し、画像の色を4096色に割り当てそれぞれの色の面積比率をデータ化した。解析対象面積の2%以上を占める色を抽出して、抽出した色に基づき、L*、a*及びb*を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
上記発色評価後のサケ類を220℃にて10分間焼成し、更に下記基準にて発色評価に供したほか、官能評価にも供した。発色評価及び官能評価は4人のパネラーによる評価点の平均値とした。下記基準で評価させ評価の平均点が1.5点未満であるとD、1.5点以上2.5点未満であるとC、2.5点以上3.5点未満であるとB、3.5点以上であるとAという基準で評価した。
【0041】
(発色評価の基準:改善度)
1点:浸漬処理を行わないものに比して色味の改善が見られない。
2点:浸漬処理を行わないものに比して若干赤味が増し、色味の改善がみられる。
3点:浸漬処理を行わないものに比して明確に赤味が増し、色味の改善がみられる。
4点:浸漬処理を行わないものに比して著しく赤味が増し、色味改善がみられる。
【0042】
(官能評価の基準)
1点:苦味又は異味を感じ、且つ風味が不自然である。
2点:苦味又は異味を感じるが許容範囲である。
3点:僅かに苦み又は異味を感じるが概ね自然な風味である。
4点:苦み又は異味を感じず、自然な風味である。
【0043】
また焼成後のサケ類について、焼成前のサケ類と同様に、ビジュアルアナライザーIRIS(Alpha MOS社)を利用したL*a*b*色空間における、L*、a*及びb*それぞれを測定した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2の通り、各実施例の方法では焼成前及び焼成後において発色の改善度に優れ、発色効果に優れる。色味の改善は、目視により確認できる。更に、各実施例では、上記水溶液との接触処理後、洗浄せずとも食味が良好である。一方、特許文献1に相当する比較例1では、食味に劣る結果となった。
【要約】
【課題】洗浄しない、又は洗浄時間が短くても、喫食したときに良好な食味であり、且つサケ類の身を効果的に赤く発色させる発色方法を提供する。
【解決手段】本発明は、未加熱状態のサケ類を、食塩1.0~10.0質量%、重曹1.0~5.0質量%、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムから選ばれる少なくとも一種を合計で0.1~4.0質量%含有する水溶液と接触させる、サケ類に含まれる色素を発色させる方法である。水溶液のpHが8.5以上11.0以下であることが好ましい。未加熱状態のサケ類を前記水溶液と5分~30分接触させることも好ましい。サケ類が加熱用であることが好ましい。
【選択図】なし