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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】商品包装箱
(51)【国際特許分類】
   A45C 11/00 20060101AFI20240702BHJP
   B65D 25/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
A45C11/00 U
B65D25/02 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023169992
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2023-10-02
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-09
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509350446
【氏名又は名称】田中 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳子
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】西 秀隆
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-313996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0157105(US,A1)
【文献】登録実用新案第3136971(JP,U)
【文献】実開昭54-100896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C11/16
A47F7/02
A47G1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下箱体と、
前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、上面に窪みを区画する上箱体と、
通気を遮断する材質で形成されて、前記窪みの輪郭に合わせこまれて前記窪み内に着脱自在に固定され、裏面に、香気成分を含有する紙片を受け止める平面を規定する板材と、
前記板材の裏面に結合されて、前記平面の両側で平行に線形に延びる1対のレールと、
前記レールに案内されて、前記平面に倣って前記紙片を保持する第1位置、および、前記平面から離脱する第2位置の間で変位するスライダーとを備え、
前記窪みは、前記板材の外周に隣接し前記板材の上面を含む水平面で開口する空間を区画し、前記スライダーは、前記空間に、前記平面に接する前記紙片の収容空間を接続する通路を区画することを特徴とする商品包装箱。
【請求項2】
請求項1に記載の商品包装箱において、前記板材に取り付けられて、前記板材の表面または裏面に規定される受け平面に倣ってインスタントフィルムを保持する保持体をさらに備えることを特徴とする商品包装箱。
【請求項3】
請求項2に記載の商品包装箱において、前記板材は、前記裏面に前記平面および前記受け平面を規定し、少なくとも前記インスタントフィルムの画像を覆う透明域を有する樹脂板であることを特徴とする商品包装箱。
【請求項4】
請求項3に記載の商品包装箱において、前記板材は透明体で構成され、前記板材の前記表面には、少なくとも前記インスタントフィルムの縁を覆い隠す不透明膜が形成されることを特徴とする商品包装箱。
【請求項5】
請求項4に記載の商品包装箱において、前記保持体は、前記受け平面の両側で平行に延びる1対のレールに案内されて、前記受け平面に倣って前記インスタントフィルムを保持する第1位置、および、前記受け平面から離脱する第2位置の間で変位するスライダーであることを特徴とする商品包装箱。
【請求項6】
請求項5に記載の商品包装箱において、前記通路は、前記スライダーに形成されて一端で前記紙片に向き合う貫通口であって、前記板材の裏面には、前記窪み内の水平面および前記スライダーの間に前記空間に前記貫通口を接続する間隔を形成する磁石が固定され、前記上箱体には、前記水平面で前記磁石の引力を受ける磁性体が固定されることを特徴とする商品包装箱。
【請求項7】
下箱体と、
前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、上面に窪みを区画する上箱体と、
通気を遮断する材質で形成されて、前記窪みの輪郭に合わせこまれて前記窪み内に着脱自在に固定され、裏面に、香気成分を含有する紙片を受け止める平面を規定する板材と、
前記板材の裏面に結合されて、前記平面の両側で平行に線形に延びる1対のレールと、
前記レールに案内されて、前記平面に倣って前記紙片を保持する第1位置、および、前記平面から離脱する第2位置の間で変位するスライダーとを備え、
前記板材は、前記平面に接する前記紙片の収容空間に接続されて前記板材の表面で開口する貫通口を区画することを特徴とする商品包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下箱体と、下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、下箱体に重なると商品を収容する上箱体とを備える商品包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
仲のよい男女の間ではしばしば男性から女性にジュエリーはプレゼントされる。男性はジュエリーの購入にあたって女性とともにジュエリーショップを訪れる。例えば特許文献1に示されるように、ジュエリーショップはジュエリーの引き渡しにあたって専用に用意された包装箱でジュエリーを梱包する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-195405号公報
【文献】実用新案登録第3050705号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
香りはひとの記憶に強く残る。ひとは香りから特定の場面を思い出すことができる。ジュエリーの購入の場面が香りに紐付けられれば、香りをかぐたびに女性はその場の喜びをまざまざと感じることができる。例えばジュエリーショップの店内の香りが包装箱に紐付けられれば、女性は、自宅で包装箱に近づくたびに、プレゼントを受け取った際の喜びを思い出すに違いない。しかしながら、これまでのところ、梱包に利用される包装箱でありながら、香りの放出源が組み込まれたものは見受けられない。したがって、香りの記憶は、プレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけとして利用されていない。
【0005】
特に、ジュエリーのブランドは香水の販売も手がける。ジュエリーの包装箱から香水が薫れば、女性は、香水をつけるたびに、プレゼントを受け取った際の喜びを思い出すに違いない。香水の利用は促進されることができる。しかも、包装箱の香水は時間の経過とともに発散してしまうので、包装箱の香りの維持にあたって香水は補充される。香水の販売はさらに促進されることができる。
【0006】
本発明は、プレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけを作り出すことができる商品包装箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1形態によれば、下箱体と、前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、上面に窪みを区画する上箱体と、前記窪みの輪郭に合わせこまれて前記窪み内に着脱自在に固定され、裏面に、香気成分を含有する紙片を受け止める平面を規定する板材と、前記板材の裏面に結合されて、前記平面の両側で平行に線形に延びる1対のレールと、前記レールに案内されて、前記平面に倣って前記紙片を保持する第1位置、および、前記平面から離脱する第2位置の間で変位するスライダーとを備え、前記窪みは、前記板材の外周に隣接し前記板材の上面を含む水平面で開口する空間を区画し、前記スライダーは、前記空間に、前記平面に接する前記紙片の収容空間を接続する通路を区画する商品包装箱は提供される。
【0008】
紙片の香気成分は通路から窪み内で隣接する空間(以下「通気空間」という)に漏れ出る。漏れ出た香気成分は通気空間から上箱体の上方に向かって放散される。こうして商品包装箱の周囲には香りが漂う。商品包装箱は例えばプレゼントの梱包に利用されることができる。プレゼントの受け手は商品包装箱を取り出すたびに香りを楽しむことができる。こうした商品包装箱はプレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけを作り出すことができる。贈り主の印象は受け手に強く植え付けられることができる。その他、商品包装箱は香りの放出源として室内に飾られることができる。プレゼントの受け手は室内で頻繁に商品包装箱を目にすることができる。こうして頻繁にプレゼントの受け手はプレゼントを受け取った際の喜びを思い出すことができる。贈り主の印象は強く受け手に刷り込まれることができる。
【0009】
板材は窪みから取り外されることができる。スライダーの変位に応じて紙片は板材から単体で引き離されることができる。紙片は香気成分の吸収体そのものなので、香気成分は紙片に染み込めば済む。例えば香水のように香気成分は紙片に吹き付けられれば済む。香気成分は短時間に手間いらずで補充されることができる。そして、紙片単体の交換に応じて香りは他の香りに簡単に切り替えられることができる。香水のように違った香気成分は新しい紙片に吹き付けられれば済む。
【0010】
商品包装箱は、前記板材に取り付けられて、前記板材の表面または裏面に規定される受け平面に倣ってインスタントフィルムを保持する保持体をさらに備えてもよい。インスタントフィルムには商品の購入の場面がその場で現像されることができる。板材は窪み内にインスタントフィルムを保持する役割を果たす。こうしてインスタントフィルムは簡単に商品包装箱に取り付けられることができる。観察者は香りとともにインスタントフィルムの画像を楽しむことができる。画像は、プレゼントを受け取った際の感情をさらに強める役割を果たすことができる。
【0011】
前記板材は、前記裏面に前記平面および前記受け平面を規定し、少なくとも前記インスタントフィルムの画像を覆う透明域を有する樹脂板であればよい。観察者は透明域からインスタントフィルムの画像を観察することができる。板材は画像の視認性を確保しながらインスタントフィルムの画像を保護することができる。ここでは、スライダーの取り外しにあたって保持体は板材上に維持されることができる。紙片の交換時にインスタントフィルムはそのまま板材上に保持され続けることができる。紙片の交換時にインスタントフィルムの位置ずれは回避されることができる。
【0012】
前記板材は透明体で構成されればよく、前記板材の前記表面には、少なくとも前記インスタントフィルムの縁を覆い隠す不透明膜が形成されればよい。板材は単一の透明材料から成形されることができる。板材は単純な工程で成形されることができる。安価な成形は実現されることができる。その一方で、インスタントフィルムの縁は不透明膜で隠されることから、画像は良好に強調されることができる。
【0013】
前記保持体は、前記受け平面の両側で平行に延びる1対のレールに案内されて、前記受け平面に倣って前記インスタントフィルムを保持する第1位置、および、前記受け平面から離脱する第2位置の間で変位するスライダーであればよい。レールは板材の裏面に配置されることから、板材の表面は平滑面に維持されることができる。画像の視認性は良好に維持されることができる。保持体の変位に応じてインスタントフィルムは板材から取り外されることができる。ここでは、保持体には、レールに面一の外向き面が形成されることができる。こうして板材では裏面の形状は整えられることができる。
【0014】
前記通路は、前記スライダーに形成されて一端で前記紙片に向き合う貫通口であればよく、前記板材の裏面には、前記窪み内の水平面および前記スライダーの間に前記空間に前記貫通口を接続する間隔を形成する磁石が固定されればよく、前記上箱体には、前記水平面で前記磁石の引力を受ける磁性体が固定されればよい。磁石の働きで板材は上箱体の窪み内に固定されることができる。板材および支持板は上箱体の開閉に拘わらず窪み内に良好に保持されることができる。紙片の香気成分は貫通口から水平面およびスライダーの間隔に流出し通気空間に漏れ出る。漏れ出た香気成分は通気空間から上箱体の上方に向かって放散される。
【0015】
本発明の第2形態によれば、下箱体と、前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、上面に窪みを区画する上箱体と、前記窪みの輪郭に合わせこまれて前記窪み内に着脱自在に固定され、裏面に、香気成分を含有する紙片を受け止める平面を規定する板材と、前記板材の裏面に結合されて、前記平面の両側で平行に線形に延びる1対のレールと、前記レールに案内されて、前記平面に倣って前記紙片を保持する第1位置、および、前記平面から離脱する第2位置の間で変位するスライダーとを備え、前記板材は、前記平面に接する前記紙片の収容空間に接続されて前記板材の表面で開口する貫通口を区画する商品包装箱は提供される。
【0016】
紙片の香気成分は貫通口から板材の上方に向かって放散されることができる。商品包装箱の周囲には香りが漂う。商品包装箱は例えばプレゼントの梱包に利用されることができる。プレゼントの受け手は商品包装箱を取り出すたびに香りを楽しむことができる。こうした商品包装箱はプレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけを作り出すことができる。贈り主の印象は受け手に強く植え付けられることができる。その他、商品包装箱は香りの放出源として室内に飾られることができる。プレゼントの受け手は室内で頻繁に商品包装箱を目にすることができる。こうして頻繁にプレゼントの受け手はプレゼントを受け取った際の喜びを思い出すことができる。贈り主の印象は強く受け手に刷り込まれることができる。
【0017】
板材は窪みから取り外されることができる。スライダーの変位に応じて紙片は板材から単体で引き離されることができる。紙片は香気成分の吸収体そのものなので、香気成分は紙片に染み込めば済む。例えば香水のように香気成分は紙片に吹き付けられれば済む。香気成分は短時間に手間いらずで補充されることができる。そして、紙片単体の交換に応じて香りは他の香りに簡単に切り替えられることができる。香水のように違った香気成分は新しい紙片に吹き付けられれば済む。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、プレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけを作り出すことができる商品包装箱は提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る商品包装ユニットの外観を概略的に示す斜視図である。
図2】下外箱に収容された内箱を概略的に示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る内箱の外観を示す斜視図である。
図4】内箱の平面図である。
図5図4の5-5線に沿ったフレグランスユニットの概略断面図である
図6図4の5-5線に沿った内箱の拡大部分断面図である。
図7図5に対応し、変形例に係るフレグランスユニットの概略断面図である。
図8】上箱体が開放された際に内箱の構造を概略的に示す斜視図である。
図9】ヒンジの構成を概略的に示す拡大斜視図である。
図10図3の10-10線に沿った垂直断面図である。
図11図8の11-11線に沿った垂直断面図である。
図12】第1具体例に係る光照射回路の回路図である。
図13】音声再生ユニットの構成を概略的に示すブロック図である。
図14図11に対応し、録音スイッチおよび防護体の関係を示す図である。
図15図4の15-15線に沿った拡大部分垂直断面図であって、香気成分の通路を概略的に示す図である。
図16図15に対応し、他の具体例に係るフレグランスユニットの拡大垂直断面図である。
図17図4の15-15線に沿った拡大部分垂直断面図に相当し、さらに他の具体例に係るフレグランスユニットを示す図である。
図18】第2具体例に係る光照射回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係る商品包装ユニットを概略的に示す。商品包装ユニット101は外箱102を備える。外箱102は、下外箱103と、上方から下外箱103に被さる上外箱104とで形成される。図2に示されるように、下外箱103は、四角い輪郭の底板103a、および、底板103aの4辺から垂直に立ち上がる4つの側板103bから構成される。下外箱103の内側には直方体の収容空間が区画される。収容空間には内箱(商品包装箱)11が収容される。底板103aおよび側板103bは個々に平たい紙板で形成される。底板103aおよび側板103b並びに側板103b同士は稜線で相互に結合される。下外箱103は稜線で継ぎ目なく連続する外観を有する。
【0022】
上外箱104は、四角い輪郭の天板104a、および、天板104aの4辺から垂直に下降する4つの側板104bから構成される。天板104aは下外箱103の側板103bの上端に支えられて側板103bで囲まれる下外箱103の開口105を塞ぐ。上外箱104の側板104bは下外箱103の側板103bを取り囲む。天板104aおよび側板104bは個々に平たい紙板で形成される。天板104aおよび側板104b並びに側板104b同士は稜線で相互に結合される。上外箱104の上面には例えば販売者や製造者のロゴがプリントされることができる。上外箱104は稜線で継ぎ目なく連続する外観を有する。上外箱104は全体に不透明である。その他、天板104aには透明な樹脂材が用いられてもよい。
【0023】
図3に示されるように、内箱11は、下箱体12と、下箱体12に重なって下箱体12とともに直方体を形成する上箱体13とを備える。下箱体12は、四角い輪郭の底板14a、および、底板14aの4辺から垂直に立ち上がる4つの側壁14bを有する硬質の樹脂成形体と、樹脂成形体の外面に貼り付けられて、樹脂成形体に装飾を施す貼り紙15とを有する。上箱体13は、四角い輪郭の窪み61でフレグランスユニット62を受け入れる天板16a、および、天板16aの4辺から下降し下端で下箱体12の側壁14bの上端に合わさって内箱11の側壁を形成する側壁16bを有する硬質の樹脂成形体と、樹脂成形体の外面に貼り付けられて、樹脂成形体に装飾を施す貼り紙17とを有する。貼り紙15、17には例えばスエード調や布模様の樹脂シートが用いられればよい。貼り紙17は窪み61の内面に覆い被さる。窪み61の内面は貼り紙17でキレイに整えられる。上箱体13は、少なくとも窪み61を仕切る範囲で、通気を遮断する材質(非通気性の材質)で形成される。
【0024】
フレグランスユニット62は、窪み61の輪郭に合わせこまれて窪み61内に固定される板材62aを備える。板材62aは窪み61にはめ込まれる。はめ込みにあたって板材62aは例えば平面視の上縁および下縁で窪み61の内壁面に接触する。平面視の上縁および下縁(あるいはいずれか一方)は平面視の上下方向に板材62aを位置決めする。板材62aは例えば透明な硬質のアクリル板から構成されることができる。板材62aは通気を遮断する材質(非通気性の材質)で形成される。板材62aの表面は平坦面63を区画する。平坦面63上の空間は囲み64で囲まれる。囲み64は、窪み61の輪郭に合わせて平坦面63を含む水平面から起立する壁面64aを有する。輪郭の辺ごとに壁面64aは1鉛直面内で窪み61の内壁面から連続する。壁面64aは鉛直方向に板材62aの下降を案内することができる。こうして板材62aおよび囲み64は上箱体13の上面に協働でトレイを形成する。板材62aはトレイの底板全体を構成する。ここでは、窪み61は、板材62aの外周に隣接し平坦面63を含む水平面で開口する空間65を区画する。空間65は平面視の左縁および右縁の外側に配置される。空間65は左縁または右縁のいずれかに配置されてもよい。空間65は、トレイとして利用される際に想定される小物の落下を防ぐ寸法で開口する。
【0025】
図4に示されるように、板材62aは、窪み61内に配置されるインスタントフィルム66に覆い被さる。板材62aの下面はインスタントフィルム66の上面に重ねられる。平面視でインスタントフィルム66の全体は板材62a下に配置される。ここでは、板材62aの表面に、少なくともインスタントフィルム66の縁を覆い隠す不透明膜67が形成される。不透明膜67は、例えば、インスタントフィルム66の画像を披露する窓68を囲みながら、全周にわたって板材62aの外縁まで広がる。したがって、板材62aは、窓68に対応して、少なくともインスタントフィルム66の画像を覆う透明域を形成する。観察者は透明域からインスタントフィルム66の画像を観察することができる。不透明膜67は例えば着色された塗装膜で構成されることができる。
【0026】
図5に示されるように、板材62aは、裏面に、インスタントフィルム66を受け止める第1平面(受け平面)71と、紙片72を受け止める第2平面(平面)73とを規定する。第2平面73は第1平面71に重ならずに配置される。第2平面73は第1平面71から分離される。
【0027】
フレグランスユニット62は、板材62aに取り付けられて、第1平面71に倣ってインスタントフィルム66を保持する第1保持体74を備える。第1保持体74は、第1平面71の両側で平行に延びる1対の第1レール76に案内されて、第1平面71に倣ってインスタントフィルム66を保持する第1位置、および、第1平面71から離脱する第2位置の間で変位するスライダーである。したがって、第1保持体74は板材62aに着脱自在に取り付けられる。
【0028】
第1レール76は壁面64aに平行に線形に延びる。第1レール76同士の間で板材62aの裏面には第1平滑面77が規定される。第1レール76は第1平滑面77に接する案内路を区画する。案内路の区画にあたって第1レール76は第1平滑面77との間に第1保持体74を受け入れる規制縁76aを形成する。規制縁76aは案内路に沿って第1保持体74の水平移動を許容しつつ水平移動以外で第1平面71から第1保持体74の離脱を規制する。ここでは、第1平面71は、第1平滑面77に穿たれる窪み78の内面に規定される。窪み78は、第1位置で第1平滑面77に重なる第1保持体74に塞がれ、第1保持体74と第1平面71との間にインスタントフィルム66を収容する写真室を区画する。窪み78の輪郭はインスタントフィルム66の輪郭に合わせ込まれればよい。
【0029】
第1保持体(スライダー)74は第1位置で案内路全体を塞ぐ平板に形成される。平板の上縁は上側の第1レール76の規制縁76aに係り合う。平板の下縁は下側の第1レール76の規制縁76aに係り合う。第1保持体(スライダー)74は例えば硬質なアクリル樹脂で成型されることができる。第1保持体74は通気を遮断する材質(非通気性の材質)で形成される。
【0030】
フレグランスユニット62は、板材62aに取り付けられて、第2平面73に倣って紙片72を保持する第2保持体75を備える。第2保持体75は、第2平面73の両側で平行に延びる1対の第2レール79に案内されて、第2平面73に倣って紙片72を保持する第1位置、および、第2平面73から離脱する第2位置の間で変位するスライダーである。したがって、第2保持体75は板材62aに着脱自在に取り付けられる。
【0031】
第2レール79は壁面64aに平行に線形に延びる。第2レール79同士の間で板材62aの裏面には第2平滑面81が規定される。第2レール79は第2平滑面81に接する案内路を区画する。案内路の区画にあたって第2レール79は第2平滑面81との間に第2保持体75を受け入れる規制縁79aを形成する。規制縁79aは案内路に沿って第2保持体75の水平移動を許容しつつ水平移動以外で第2平面73から第2保持体75の離脱を規制する。ここでは、第2平面73は、第2平滑面81に穿たれる窪み82の内面に規定される。窪み82は、第1位置で第2平滑面81に重なる第2保持体75に塞がれ、第2保持体75と第2平面73との間に紙片72を収容する紙片室を区画する。
【0032】
第2保持体(スライダー)75は第1位置で案内路全体を塞ぐ平板に形成される。平板の上縁は上側の第2レール79の規制縁79aに係り合う。平板の下縁は下側の第2レール79の規制縁79aに係り合う。第2保持体(スライダー)75は例えば硬質なアクリル樹脂で成型されることができる。第2保持体75は通気を遮断する材質(非通気性の材質)で形成される。
【0033】
紙片72は香気成分を含有する。紙片72は壁面64aに並列に長尺に形成される。窪み82の輪郭は紙片72の輪郭に合わせて設定されればよい。紙片72は香気成分の溶媒を保持する吸収力を有する。紙片72には例えば香水が染み込むことができる。紙片72には例えば香気成分の吸収に応じて変色する紙材料が用いられてもよい。例えばリトマス紙は香気成分の吸収に応じて変化するpHに応じて変色することができる。
【0034】
図6に示されるように、板材62aの裏面には、第1レール76や第2レール79で区画される案内路からずれた位置で磁石83が固定される。フレグランスユニット62が窪み61内の水平面84に受け止められる際に磁石83は水平面84に面接触する。ここでは、水平面84の確立にあたって上箱体13には磁性体85が組み込まれる。磁性体85は例えば窪み61の底面を形成する薄板で構成される。薄板は例えばステンレス鋼板であればよい。磁性体85は水平面84で磁石83の引力を受ける。こうして磁石83の磁力は磁性体85にフレグランスユニット62を結合する。磁石83は決められた高さで板材62aの裏面を含む1平面から突出する。磁石83は第2保持体75と水平面84との間に間隔Hsを形成する。間隔Hsは板材62aの外周で空間65に接続される。
【0035】
第2保持体75は、空間65に紙片室を接続する通路を区画する。通路の区画にあたって、第2保持体75には、一端で紙片72に向き合って他端で第2保持体75および水平面84の間隔Hsに開口する貫通口86が形成される。紙片72の香気成分は貫通口86から間隔Hsに流出することができる。香気成分は間隔Hsから空間65に漏れ出る。香気成分は空間65から大気に放散される。
【0036】
その他、図7に示されるように、第1平面71および第2平面73は板材62aの裏面に面一に形成されてもよい。ここでは、第1平滑面77内に第1平面71は含まれる。第1平面71に重なる位置で第1保持体74には窪み78が穿たれる。第1保持体74の第1位置で第1平滑面77(第1平面71)は窪み78を塞ぐ。こうして第1保持体74と第1平面71との間にインスタントフィルム66を収容する写真室が区画される。同様に、第2平滑面81内に第2平面73は含まれる。第2平面73に重なる位置で第2保持体75には窪み82が穿たれる。第2保持体75の第1位置で第2平滑面81(第2平面73)は窪み82を塞ぐ。こうして第2保持体75と第2平面73との間に紙片72を収容する紙片室が区画される。同様に、第2保持体75は、外空間に紙片室を接続する貫通口86を有する。紙片72の香気成分は貫通口86から外空間に放散されることができる。第2保持体75および水平面84の間隔Hsは大気に貫通口86を接続する。
【0037】
図8に示されるように、下箱体12には側壁14bで囲まれた直方体の空間に緩衝材18が嵌め込まれる。緩衝材18は、例えば、スポンジと、スポンジを包み込む布材18aとで形成される。緩衝材18にはスリット19が形成される。スリット19には例えば指輪(ジュエリー)21が差し込まれる。緩衝材18の弾性力の働きで指輪21はスリット19内に保持される。
【0038】
指輪21は、例えば指の太さに応じた径を有するプラチナ製の環部材22と、環部材22の台座に固定されるダイヤモンド粒23とを備える。ダイヤモンド粒23は1つであっても複数であってもよい。ダイヤモンド粒23はストロング以上の青色蛍光性(ストロングブルーまたはベリーストロングブルー)を有する。ダイヤモンド粒23は、可視光(例えば自然光や電灯の光)の下で透明な輝きを放つ一方で、紫外線の下では青色に輝く。こうしてダイヤモンド粒23は下箱体12に支持される。複数のダイヤモンド粒23が配置される場合には、全ての(あるいはデザイン上でまとまりある群ごとに)ダイヤモンド粒23の青色蛍光性はストロングブルーまたはベリーストロングブルーに統一されるとよい。
【0039】
上箱体13には側壁16bで囲まれた直方体の空間内に内張材24が嵌め込まれる。内張材24は、内箱11の天井面を形成する四角い輪郭の化粧天板24aと、化粧天板24aの4辺からそれぞれ連続して、4つの側壁16bに内側から重ねられる4枚の内張板24bとを備える。ここでは、4枚の内張板24bは側壁16bの内面に接着されず、内張材24は上箱体13に対して着脱自在に収容される。
【0040】
図9に示されるように、上箱体13は下箱体12にヒンジ26で開閉自在に連結される。ヒンジ26は、上箱体13の1側壁16bに内側から重ねられて固定され、複数の管体27aを有する第1羽根27と、下箱体12の側壁14bに内側から重ねられて固定され、第1羽根27の管体27aに互い違いに直列に配置される複数の管体28aを有する第2羽根28と、第1羽根27の管体27aおよび第2羽根28の管体28aに共通に挿入される1本のヒンジピン29とを備える。第1羽根27および第2羽根28はヒンジピン29回りで相対回転する。ヒンジピン29の中心軸は開閉時に上箱体13の回転軸線に相当する。
【0041】
ヒンジ26には板ばね31が接続される。図10に示されるように、板ばね31は、ヒンジピン29の軸心に平行に母線を維持する湾曲体に形成される。板ばね31の両端はヒンジピン29から離れた位置で第1羽根27および第2羽根28にそれぞれ結合される。上箱体13の下端が下箱体12の上端に合わさる閉じ位置では、第1羽根27および第2羽根28は1つの面に沿って並んで配置され、板ばね31の中間域はヒンジピン29から内側に最も遠ざかる。上箱体13が閉じ位置から開き位置にヒンジピン29回りで変位するにつれて、第1羽根27および第2羽根28の間で外側の角度は狭まっていき、板ばね31の中間域はヒンジピン29に接近する。図11に示されるように、板ばね31の中間域がヒンジピン29に接触すると、下箱体12に対してヒンジピン29回りに上箱体13の変位は規制され、上箱体13の開き位置が規定される。ヒンジピン29回りで規定の中間開度よりも開度が小さいと、板ばね31は閉じ位置に向かって上箱体13に駆動力を作用する。開度が規定の中間開度より大きいと、板ばね31は開き位置に向かって上箱体13に駆動力を作用する。ヒンジ26および板ばね31はヒンジカバー32で覆われる。ヒンジカバー32は例えば緩衝材18の布材18aと同等な素材から形成される。
【0042】
上箱体13の化粧天板24aには予め決められた指向性Dvに則って紫外線を放出するLEDランプ(光源)33が埋め込まれる。LEDランプ33は、例えば長波長UV-A(最適には395nm~405nmの波長)の光線を放出する。望ましくは、LEDランプ33は可視光線以外の光線のみを放出する。望ましくは、LEDランプ33は狭い指向性Dvを有する。LEDランプ33は、照射域全域で下箱体12によって遮られる指向性Dvを有する。
【0043】
LEDランプ33には電池35が接続される。電池35は、樹脂成形体の天板16aと化粧天板24aとの間に区画される電池室34に収容される。電池35には例えば薄型のボタン電池が用いられればよい。ここでは、例えば複数のボタン電池が直列に接続される。LEDランプ33には電池35から電流が供給される。
【0044】
ヒンジ26および板ばね31には、LEDランプ33に対して電流の供給および切断を制御するスイッチ36が組み込まれる。板ばね31の中間域には、板ばね31から電気的に絶縁されながら第1接点37が固着される。ヒンジ26は、第1接点37と協働してスイッチ36を構成する第2接点として機能する。したがって、ヒンジ26は導電材から形成される。第1接点37は例えば銅といった導電材から形成される。第1接点37および板ばね31の間には例えば絶縁体が挟まれる。第1接点37は、板ばね31でヒンジピン29に向き合う面に配置される。第1接点37は、上箱体13の開き位置でヒンジ26に接触し、開き位置以外ではヒンジ26から離隔する。
【0045】
図12に示されるように、内箱11では、LEDランプ33、電池35およびスイッチ36を含む第1具体例に係る光照射回路38が構築される。光照射回路38では電池35に直列にLEDランプ33のLED素子が接続される。LEDランプ33には直列にタイマー限時ノーマリーオープン接点(以下「タイマー接点」)39が接続される。LEDランプ33およびタイマー接点39には並列にスイッチ36およびタイマー41が接続される。スイッチ36が導通すると、タイマー41が動作し、予め決められた時間(以下「第1時間」という)の経過後にタイマー接点39が閉じる。その結果、LEDランプ33は通電する。スイッチ36が開くと、タイマー41は復帰し、タイマー接点39が開放される。その結果、LEDランプ33は消える。
【0046】
図13に示されるように、内箱11には録音された音声を再生する音声再生ユニット45が組み込まれる。音声再生ユニット45は、マイクロホン46から音声信号を取得し、スピーカー47に音声信号を供給する音声回路48を備える。音声回路48には電池35が接続される。音声回路48は電池35の電圧を受けて動作する。
【0047】
マイクロホン46は音声に基づく空気の振動を検出し音声信号(電気信号)に変換する。生成された音声信号は例えばメモリー49に記録される。メモリー49には例えばEEPROMが用いられることができる。メモリー49は、一度だけ音声信号の書き込みを許容するメモリーであるとよい。マイクロホン46は上箱体13または下箱体12に支持される。ここでは、例えば天板16aと化粧天板24aとの間に区画される空間にマイクロホン46は収容される。天板16aや化粧天板24aには、マイクロホン46の位置に対応して配置されマイクロホン46に外気を接続する通孔が形成されてもよい。
【0048】
スピーカー47は音声信号に基づき空気の振動を生成し対応する音声を再生する。再生された音声は観察者の聴覚を刺激する。こうして観察者は音声を聞き取ることができる。スピーカー47は上箱体13または下箱体12に支持される。ここでは、例えば天板16aと化粧天板24aとの間に区画される空間にスピーカー47は収容される。天板16aや化粧天板24aには、スピーカー47の位置に対応して配置されスピーカー47に外気を接続する通孔が形成されてもよい。
【0049】
音声再生ユニット45には、紫外線の照射の開始から予め決められた時間(以下「第2時間」という)が経過するまで音声の再生を保留する保留回路51が接続される。保留回路51は音声回路48にスイッチ36を接続する。音声回路48と光照射回路38とで電池35およびスイッチ36は共通化される。保留回路51はスイッチ36の導通から(第1時間+第2時間)を計時する。ここでは、紫外線の照射が開始されてから予め決められた第2時間が経過すると、音声回路48は音声信号をメモリー49から取り出しスピーカー47に供給する。
【0050】
音声回路48には録音スイッチ52が接続される。録音スイッチ52が導通すると、音声回路48はマイクロホン46から音声信号を取得しメモリー49にその音声信号を格納する。図14に示されるように、録音スイッチ52のボタンは上箱体13の内壁面に設置されることができる。ここでは、ボタンが押され続ける限り、録音スイッチ52は導通する。ボタンが押し操作から解放されると、録音スイッチ52は切断される。ボタンが上箱体13の内側に配置されることで、上箱体13が閉じ位置に位置するだけで録音スイッチ52は誤操作から保護されることができる。上箱体13は、内箱11の構成体以外の物体から録音スイッチ52を保護する防護体として機能する。こうして、意図しない音声の録音(上書きに基づく音声の消去)は防止されることができる。その他、録音スイッチ52はスイッチ36の導通と連動してもよい。その結果、上箱体13が開き位置に達した状態で録音スイッチ52が操作されると、音声はメモリー49に録音されることができる。
【0051】
LEDランプ33、タイマー接点39、タイマー41、音声回路48、メモリー49および保留回路51は例えば共通のプリント基板上に実装されてもよい。スイッチ36の第1接点37やヒンジ26の第1羽根27または第2羽根28、電池35、マイクロホン46、スピーカー47などは例えばビニル被膜線といった電線でプリント基板上の配線パターンに電気的に接続されればよい。プリント基板は例えば電池室34に収容されればよい。
【0052】
次に内箱11の作用を説明する。図3に示されるように、上箱体13が閉じ位置に位置すると、上箱体13の下縁は下箱体12の上縁に合わさる。上箱体13は指輪21に覆い被さってダイヤモンド粒23を隠す。内箱11の観察者は閉じた内箱11の外観を視認する。ダイヤモンド粒23は観察者の視界から外れる。
【0053】
このとき、図10に示されるように、板ばね31の中間域はヒンジピン29から最も遠ざかる。したがって、スイッチ36の第1接点37はヒンジ26すなわち第2接点から離れる。スイッチ36は切断される。LEDランプ33は消灯状態に維持される。音声回路48の動作は停止状態に維持される。
【0054】
観察者が板ばね31の弾性力に抗してヒンジピン29回りで開き位置に向かって上箱体13を動かすと、上箱体13の下端は下箱体12の上端から離れていく。上箱体13および下箱体12の隙間からダイヤモンド粒23に向かって可視光線は差し込む。ダイヤモンド粒23は徐々に露出していく。ダイヤモンド粒23は可視光線の照射に曝される。したがって、ダイヤモンド粒23は透明な輝きを放つ。
【0055】
上箱体13の開度が規定の中間開度よりも増大すると、板ばね31は開き位置に向かって上箱体13を駆動する。その結果、上箱体13は最大開度の開き位置に到達する。板ばね31の弾性力に応じて上箱体13は最大開度の開き位置に保持される。上箱体13の平坦面63は回転軸線から遠ざかるほど高い位置に位置する。図8に示されるように、上箱体13に遮られずに観察者はダイヤモンド粒23を視認することができる。ダイヤモンド粒23は可視光(自然光や電灯の光)の下で透明な輝きを放つ。
【0056】
上箱体13が開き位置に到達すると、図11に示されるように、板ばね31の弾性力を受けて板ばね31の中間域はヒンジピン29に押し当てられる。こうして第1接点37はヒンジ26すなわち第2接点に接触する。スイッチ36は導通する。スイッチ36の導通(オン動作)から第1時間が経過すると、LEDランプ33は点灯する。LEDランプ33はダイヤモンド粒23に紫外線を照射し始める。ダイヤモンド粒23は青色に輝く。
【0057】
上箱体13の開放後しばし透明に輝くダイヤモンド粒23が観察された後に、ダイヤモンド粒23は透明から青色に変色する。こうして上箱体13の開放動作に応じて光の演出効果は作り出される。板ばね31は、開き位置に上箱体13を位置させる駆動力を発揮するので、閉じ位置および開き位置の中間位置でダイヤモンド粒23が変色し始めることは防止され、観察者は確実にダイヤモンド粒23の変色を目撃することができる。
【0058】
紫外線の照射開始から第2時間が経過すると、音声回路48は録音された音声を再生する。例えばプレゼントであれば、観察者には贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)が届けられることができる。音声の再生はダイヤモンド粒23の視覚効果から遅延することから、ダイヤモンド粒23の視覚効果および音声の演出効果は順番に観察者に作用する。観察者はダイヤモンド粒23の視覚効果を意識した後に音声の聴覚効果(言語処理を含む)を意識することができる。音声の演出効果は視覚効果に上積みされる。本発明者の気づきによれば、ひとは同時に複数の感覚を意識することができないことから、音声の演出効果が視覚効果と同時に進行する場合に比べて、音声の再生が視覚効果からずれることで視覚および音声の相乗効果は強められることができる。この演出効果で内箱11の観察者は他では味わえない感動を体験することができる。
【0059】
スイッチ36が切断されると、LEDランプ33は消える。音声回路48は音声信号の供給を終了する。音声の再生は終了する。
【0060】
プレゼントに先立って贈り主の音声は予め内箱11に録音される。録音にあたって上箱体13は開き位置に位置づけられる。贈り主は録音スイッチ52を押しながらマイクロホン46に向かって音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)を発する。録音スイッチ52の導通に応じて音声回路48は動作する。音声はマイクロホン46で音声信号に変換される。音声信号はメモリー49に格納される。録音スイッチ52のボタンから指が離れると、音声の録音は終了する。
【0061】
ここでは、緩衝材18の布材18aは黒色や濃紺色といった色に着色されるとよい。こうした着色によれば、LEDランプ33の光線に紫外線域に隣接する可視光線が微妙に混入しても布材18aに照らされる可視光線は目立たない。LEDランプ33の光線は観察者の視覚から除外されることができる。
【0062】
例えば男性と女性とがジュエリーの購入にあたってジュエリーショップを訪れる場面を想定する。ジュエリーショップの店内はそのジュエリーショップやブランドに固有の香りで満たされる。内箱11の紙片72には店内の香りを感じさせる香気成分が浸透する。こうしてジュエリーショップの店内の香りは内箱11に関連づけられる。ジュエリーショップで指輪21が購入されると、購入の場面は香りに紐付けられることができる。香りは男性および女性の記憶に強く残る。
【0063】
内箱11が外箱102から取り出されると、内箱11の周囲にはジュエリーショップの香りが漂う。図15に示されるように、紙片72の香気成分は貫通口86から第2保持体75および水平面84の間隔Hsに流出し間隔Hsから空間65に漏れ出る。漏れ出た香気成分は空間65から上箱体13の上方に向かって放散される。女性は内箱11を取り出すたびに香りを楽しむことができる。女性がプレゼントとして指輪21を受け取ったのであれば、女性は、自宅で内箱11に近づくたびに、プレゼントを受け取った際の喜びを思い出す。内箱11はプレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけを作り出すことができる。男性の印象は女性に強く植え付けられることができる。
【0064】
内箱11は香りの放出源として室内に飾られることができる。女性は室内で頻繁に内箱11を目にすることができる。こうして頻繁に女性はプレゼントを受け取った際の喜びを思い出すことができる。男性の印象は強く女性に刷り込まれることができる。
【0065】
囲み64の働きで上箱体13の上面にはトレイが形成されることができる。板材62a上に指輪21やキーホルダーなどの小物は置かれることができる。囲み64の働きで小物は板材62a上に保持されることができる。こうしたトレイは日常的に利用されることから、女性は頻繁に内箱11を目にすることができる。プレゼントを受け取った際の感情は女性の記憶に強く刷り込まれることができる。内箱11の観察者には指輪21やブランド、購入時のジュエリーショップの印象が強く植え付けられることができる。
【0066】
磁石83の磁力で板材62aは磁性体85に固着される。空間65から板材62aの外周にアクセスは許容されることができる。板材62aの外周に外力を作用させることで板材62aは簡単に窪み61から引き上げられることができる。フレグランスユニット62は簡単に上箱体13から取り外されることができる。前述のように、紙片72はフレグランスユニット62から取り出されることができるので、紙片72には香気成分が補充されることができる。あるいは、紙片72は十分に香気成分を含有するものに交換されてもよい。こうして女性はいつまでも内箱11から香りを楽しむことができる。空間65は板材62aの左縁や右縁に沿って細く延びて例えば指輪21の差し込みを受け入れる大きさに形成されることができる。この場合には、フレグランスユニット62の取り外しにあたって空間65には硬質体の工具が差し込まれればよい。空間65は指先が水平面84に届く大きさに形成されてもよい。
【0067】
例えばジュエリーショップでは購入の場面がインスタントカメラで撮像されることができる。インスタントフィルム66には購入の場面がその場で現像されることができる。板材62aは窪み61内にインスタントフィルム66を保持する役割を果たす。こうして写真は簡単に内箱11に取り付けられることができる。観察者は透明な板材62aを透かしてインスタントフィルム66の画像を楽しむことができる。画像は、プレゼントを受け取った際の感情をさらに強める役割を果たすことができる。
【0068】
本実施形態に係る内箱11は、透明から青色蛍光にダイヤモンド粒23の変色を演出する。指輪21の所有者はダイヤモンド粒23の変色を楽しむ際に内箱11を利用する。こうして内箱11は指輪21といっしょに所有され続ける。内箱11が取り出される機会は増加する。インスタントフィルム66の画像を目にする機会は増加する。一般の商品では、その商品が利用され始めるとしばしば包装箱は捨てられてしまう。
【0069】
同様に、本実施形態に係る内箱11は、録音された音声を再生する。こうして音声の演出効果は実現されることから、指輪21の所有者は内箱11を捨てずに保持し音声の演出効果を楽しむ。こうして内箱11は指輪21といっしょに所有され続ける。内箱11が取り出される機会はさらに増加する。インスタントフィルム66の画像を目にする機会はさらに増加する。
【0070】
図16に示されるように、フレグランスユニット62の組み込みにあたって、板材62aには、紙片室から延びて板材62aの表面に開口する貫通口87が形成されてもよい。貫通口87の下端は紙片72の輪郭よりも内側で紙片72に重なる。紙片72の香気成分は貫通口87から板材62aの上方に向かって放散されることができる。内箱11の周囲には香りが漂う。ここでは、磁石83は板材62aの裏面に埋め込まれることができる。板材62aの裏面は面一に整えられることができる。
【0071】
図17に示されるように、フレグランスユニット62は、前述の板材62aに代えて、窪み61の輪郭に合わせこまれて窪み61内に固定される板材62bを備えてもよい。板材62bは、表面に、インスタントフィルム66を受け止める第1平面(受け面)89を規定し、裏面に、紙片72を受け止める第2平面(平面)91を規定する。第2平面91は第1平面89に重ならずに配置される。第2平面91は第1平面89から分離される。板材62bは例えば全体として透明体で構成されることができる。透明体は例えば硬質なアクリル樹脂で成型されることができる。その他、板材62bは不透明材から形成されてもよい。板材62bは通気を遮断する材質(非通気性の材質)で形成される。
【0072】
フレグランスユニット62は、板材62bに取り付けられて、第1平面89に倣ってインスタントフィルム66を保持する第1保持体92と、板材62bに取り付けられて、第2平面91に倣って紙片72を保持する第2保持体93とを備える。第1保持体92は板材62bの表面に重ねられて板材62bとの間にインスタントフィルム66を挟み保持する。第1保持体92は例えば全体として透明体で構成されることができる。透明体は例えば硬質なアクリル樹脂で成型されることができる。観察者は第1保持体92ごしにインスタントフィルム66の画像を鑑賞することができる。第2保持体93は、前述の第2保持体75と同様に、第2平面91の両側で平行に延びる1対の第2レール79に案内されて、第2平面91に倣って紙片72を保持する第1位置、および、第2平面91から離脱する第2位置の間で変位するスライダーである。第2保持体93は通気を遮断する材質(非通気性の材質)で形成される。
【0073】
第1保持体92の取り付けにあたって板材62bの表面には第1平面89(インスタントフィルム66)からずれた位置で磁性体(図示されず)が固定される。第1保持体92の裏面には個々に磁性体に作用する磁力を発揮する磁石(図示されず)が固定される。磁石は第1保持体92の裏面に埋め込まれる。第1保持体92が板材62bの表面に受け止められる際に磁性体は磁石に面接触する。磁性体は、第1保持体92が板材62bに重ねられる際に磁石に重なる輪郭を有すればよい。磁力の働きで板材62bに第1保持体92は着脱自在に固定される。重ねられる板材62bおよび第1保持体92の間にインスタントフィルム66は挟み込まれる。磁性体および磁石は透明な材質で形成されてもよい。磁性体は板材62bの表面に埋め込まれてもよい。
【0074】
ここでは、紙片72は、板材62bの表面に直交する方向に板材62bの裏面に投影されるインスタントフィルム66の輪郭の内側に配置される。紙片72はインスタントフィルム66の背後に配置されるので、表側から紙片72はインスタントフィルム66で隠されることができる。インスタントフィルム66の画像は良好に際立つことができる。ここでは、第1保持体92の輪郭は板材62bの輪郭に重ねられる。したがって、第1保持体92および板材62bは1つの直方体として認識されることができる。
【0075】
図18は第2具体例に係る光照射回路の構成を概略的に示す。光照射回路43は、電池35に接続されるNPNトランジスターTR1を備える。電池35のプラス端子とNPNトランジスターTR1のコレクターCとの間にLEDランプ33のLED素子は接続される。電池35のプラス端子とNPNトランジスターTR1のベースBとの間にはスイッチ36および第1抵抗R1が直列に接続される。NPNトランジスターTR1のベースBと電池35のマイナス端子との間にはキャパシターC1が接続される。第1抵抗R1およびキャパシターC1と並列に第2抵抗R2は接続される。NPNトランジスターTR1のエミッターEは電池35のマイナス端子に接続される。この光照射回路43では、スイッチ36が導通すると、時定数回路R1、C1の働きでNPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧は徐々に上昇する。電圧の上昇中にNPNトランジスターTR1のベースBで電圧が規定値に達すると、コレクターCに電流は流入する。その後、規定の時間が経過すると、NPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧は一定に維持される。スイッチ36が切断されると、キャパシターC1の電荷は第2抵抗R2を通じて放電される。
【0076】
音声再生ユニット45の保留回路51は、紫外線が最大光量に達した後に予め決められた時間(以下「第3時間」という)が経過するまで音声の再生を保留する。音声回路48と光照射回路43とで電池35およびスイッチ36は共通化される。保留回路51は、スイッチ36の導通から紫外線が最大光量に達する時間(以下「漸増時間」という)、および、第3時間を計時する。漸増時間は光照射回路43の電圧特性で特定されることができる。漸増時間は、スイッチ36の導通から、NPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧が最大値で維持され始める時間に相当する。ここでは、紫外線が最大光量に達した時点から予め決められた第3時間が経過すると、音声回路48は音声信号をメモリー49から取り出しスピーカー47に供給する。
【0077】
LEDランプ33、NPNトランジスターTR1、キャパシターC1、第1および第2抵抗R1、R2、音声回路48、メモリー49および保留回路51は例えば共通のプリント基板上に実装されてもよい。スイッチ36の第1接点37やヒンジ26の第1羽根27または第2羽根28、電池35、マイクロホン46、スピーカー47などは例えばビニル被膜線といった電線でプリント基板上の配線パターンに電気的に接続されればよい。プリント基板は例えば電池室34に収容されればよい。
【0078】
第2具体例に係る光照射回路43では、上箱体13が開き位置に到達してスイッチ36が導通してから、スイッチ36の導通(オン動作)後、第1時間の経過を待って電池35からNPNトランジスターTR1のベースBに規定値の電圧が印加される。NPNトランジスターTR1のコレクターCに電流が流入し、LEDランプ33は点灯し始める。したがって、内箱11の観察者は、上箱体13の開放後しばし透明に輝くダイヤモンド粒23を観察することができる。
【0079】
時定数回路R1、C1の働きでNPNトランジスターTR1のベースBに印加される電圧は徐々に上昇する。LEDランプ33に流通する電流量は徐々に増加していく。LEDランプ33からダイヤモンド粒23に照射される紫外線の光量は増加していく。ダイヤモンド粒23は徐々に透明から青色に変色していく。こうして上箱体13の開放動作に応じて光の演出効果は作り出される。板ばね31は、開き位置に上箱体13を位置させる駆動力を発揮するので、閉じ位置および開き位置の中間位置でダイヤモンド粒23が変色し始めることは防止され、観察者は確実にダイヤモンド粒23の変色を目撃することができる。
【0080】
紫外線の照射開始から第2時間が経過すると、すなわち、ダイヤモンド粒23が最大限に青く輝き始めてから第3時間が経過すると、音声回路48は録音された音声を再生する。例えばプレゼントであれば、観察者には贈り主の音声(例えば「結婚してください」とか「これからいっしょにいよう」とか)が届けられることができる。音声の再生はダイヤモンド粒23の視覚効果から遅延することから、ダイヤモンド粒23の視覚効果および音声の演出効果は順番に観察者に作用する。観察者はダイヤモンド粒23の視覚効果を意識した後に音声の聴覚効果(言語処理を含む)を意識することができる。音声の演出効果は視覚効果に上積みされる。本発明者の気づきによれば、ひとは同時に複数の感覚を意識することができないことから、音声の演出効果が視覚効果と同時に進行する場合に比べて、音声の再生が視覚効果からずれることで視覚および音声の相乗効果は強められることができる。この演出効果で内箱11の観察者は他では味わえない感動を体験することができる。
【0081】
スイッチ36が切断されると、LEDランプ33は消える。音声回路48は音声信号の供給を終了する。音声の再生は終了する。キャパシターC1の電荷は第2抵抗R2を通じて放電される。
【0082】
なお、LEDランプ33は上箱体13に代わって下箱体12に支持されてもよい。その他、ダイヤモンド粒23は、ネックレスのチェーンを形成する複数の台座に搭載されてもよい。台座は例えばプラチナや金といった金属材から成形される。個々の台座には1個のダイヤモンド粒23が固定されてもよく複数のダイヤモンド粒23が固定されてもよい。その他、ダイヤモンド粒23は、ペンダントやブレスレット、ピアス、リング、アンクレット上にあしらわれてもよい。ダイヤモンド粒は均一な大きさでもよく大小混ぜ込まれてもよい。
【0083】
前述の内箱11では、スイッチ36に、上箱体13が開き位置に達すると上箱体13によって押し下げられるプランジャーを有するタクトスイッチが用いられてもよい。第1具体例に係る光照射回路38や第2具体例に係る光照射回路43は前述と同様な機能を実現する限り他の構成の電子回路に置き換えられてもよい。また、スイッチ36の動作は、前述のように開き位置に位置する上箱体13に連動するだけでなく、閉じ位置に位置する上箱体13に連動してもよい。その他、光照射回路38、43や音声回路48、保留回路51の機能はマイクロプロセッサー(MPU)で実行されるソフトウェアで実現されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
11…商品包装箱(内箱)、12…下箱体、13…上箱体、26…ヒンジ、61…窪み、62a…板材、62b…板材、65…(板材の外周に隣接する)空間、66…インスタントフィルム、67…不透明膜、71…受け平面(第1平面)、72…紙片、73…平面(第2平面)、74…保持体(第1保持体)、75…スライダー(第2保持体)、76…(保持体の)レール(第1レール)、79…レール(第2レール)、83…磁石、84…水平面、85…磁性体、86…通路(貫通口)、87…貫通口、89…受け平面(第1平面)、91…平面(第2平面)、92…保持体(第1保持体)、93…スライダー(第2保持体)、Hs…間隔。
【要約】
【課題】プレゼントを受け取った際の喜びを思い出すきっかけを作り出すことができる商品包装箱を提供する。
【解決手段】商品包装箱は、窪み61内に着脱自在に固定され、裏面に、香気成分を含有する紙片72を受け止める平面73を規定する板材62aと、板材62aの裏面に結合されて、平面73の両側で平行に線形に延びる1対のレール79と、レール79に案内されて、平面73に倣って紙片72を保持する第1位置、および、平面73から離脱する第2位置の間で変位するスライダー75とを備える。窪み61は、板材62aの外周に隣接し板材62aの上面を含む水平面で開口する空間65を区画する。スライダー75は通路86を区画する。通路86は、空間65に、平面73に接する紙片72の収容空間を接続する。
【選択図】図6
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