(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】水切り機構
(51)【国際特許分類】
B23H 7/10 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
B23H7/10 F
(21)【出願番号】P 2023500714
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004350
(87)【国際公開番号】W WO2022176639
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021023102
(32)【優先日】2021-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】宋 世瑾
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0024331(KR,A)
【文献】国際公開第1999/032252(WO,A1)
【文献】特開2006-224215(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125259(WO,A1)
【文献】特開平05-092322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ電極が挿通され、前記ワイヤ電極の送出を案内するチューブの内部を流れる液体を前記ワイヤ電極から除去する水切り機構であって、
重力方向に対して交差する方向に沿って貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔の一端部に前記チューブの排出側端部が配置されるブロックと、
前記チューブの排出側端部と、前記貫通孔の他端部との間に設けられ、前記貫通孔の一端部側から前記貫通孔の他端部側に前記ワイヤ電極を案内するガイド孔が形成される第1ガイド部と、
前記第1ガイド部と間隔をあけて前記貫通孔の他端部に設けられ、前記ガイド孔が形成される第2ガイド部と、
を備え、
前記ブロックは、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間で前記貫通孔と繋がり、外部から供給される圧縮ガスを前記貫通孔に導くガス流路と、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間で前記貫通孔と繋がり、前記重力方向に沿って延びて前記ブロックの外部と繋がる排出孔と、
を含
み、
前記チューブの排出側端部の前記重力方向の壁部には、前記液体を抜くための切り欠きが設けられ、
前記ブロックは、前記切り欠きから流出する前記液体を前記重力方向に沿って前記ブロックの外部に導く水抜き流路を含む、水切り機構。
【請求項2】
請求項1に記載の水切り機構であって、
前記ガス流路の流出口は、前記貫通孔の一端部側から前記貫通孔の他端部側に案内される前記ワイヤ電極の進路より前記重力方向とは逆の方向に配置される、水切り機構。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の水切り機構であって、
前記第1ガイド部および前記第2ガイド部と間隔をあけて、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間の前記貫通孔に設けられ、前記ガイド孔が形成される第3ガイド部を備え、
前記ガス流路は、前記第1ガイド部と前記第3ガイド部との間および前記第2ガイド部と前記第3ガイド部との間で前記貫通孔と繋がる、水切り機構。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の水切り機構であって、
前記ガイド孔は、前記貫通孔の
他端部に向かうほど小さくなるように形成される先細り部を有する、水切り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ電極が挿通されるチューブの内部を流れる液体をワイヤ電極から除去する水切り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平05-092322号公報では、案内パイプと、水切り部とを備えたワイヤ放電加工機が開示されている。案内パイプは、水およびワイヤ電極を案内するためのパイプである。水切り部は、案内パイプの排出側端部に設けられる。水切り部には、外部の吸引器に接続される吸水部が設けられる。案内パイプを流れる流水は、水切り部の吸水部から吸引器により吸引される。
【発明の概要】
【0003】
しかし、吸引器を用いることなく、チューブの内部を流れる液体をワイヤ電極から除去する水切り機構の要請がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【0005】
本発明の態様は、
ワイヤ電極が挿通され、前記ワイヤ電極の送出を案内するチューブの内部を流れる液体を前記ワイヤ電極から除去する水切り機構であって、
重力方向に対して交差する方向に沿って貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔の一端部に前記チューブの排出側端部が配置されるブロックと、
前記チューブの排出側端部と、前記貫通孔の他端部との間に設けられ、前記貫通孔の一端部側から前記貫通孔の他端部側に前記ワイヤ電極を案内するガイド孔が形成される第1ガイド部と、
前記第1ガイド部と間隔をあけて前記貫通孔の他端部に設けられ、前記ガイド孔が形成される第2ガイド部と、
を備え、
前記ブロックは、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間で前記貫通孔と繋がり、外部から供給される圧縮ガスを前記貫通孔に導くガス流路と、
前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間で前記貫通孔と繋がり、前記重力方向に沿って延びて前記ブロックの外部と繋がる排出孔と、
を含む。
【0006】
本発明の態様によれば、吸引器を用いることなくワイヤ電極から加工液を除去することができる。すなわち、本発明の態様では、第1ガイド部から流出する加工液は自重により排出孔を介して排出される。また、ワイヤ電極に付着する加工液は第1ガイド部と第2ガイド部との間の貫通孔に導かれた圧縮ガスによって吹き飛ばされる。こうして、吸引器を用いることなくワイヤ電極から加工液を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態によるワイヤ放電加工機の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態による水切り機構の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、水切り機構の内部に着目して実施形態による水切り機構を示す図である。
【
図4】
図4は、水切り機構での加工液の流動の様子を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例1による水切り機構の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
図1は、実施形態によるワイヤ放電加工機10の構成を示す概略図である。
図1では、ワイヤ放電加工機10が有する軸が延びるX方向、Y方向およびZ方向が示される。なお、X方向およびY方向は面内で互いに直交し、Z方向はX方向およびY方向の各々に対して直交する。なお、-Z方向は、重力が働く方向(重力方向)である。
【0009】
ワイヤ放電加工機10は、液体中に浸漬する加工対象物とワイヤ電極12との間(極間)に電圧を印加することで極間に発生する放電により加工対象物を加工する。ワイヤ放電加工機10は、加工機本体14と、加工液処理装置16と、加工機本体14および加工液処理装置16を制御する制御装置18と、を備える。
【0010】
ワイヤ電極12の材質は、例えば、タングステン系、銅合金系、黄銅系等の金属材料である。一方、加工対象物の材質は、例えば、鉄系材料、超硬材料等の金属材料である。
【0011】
加工機本体14は、加工対象物(ワーク)に向けてワイヤ電極12を供給する供給系統20と、加工対象物を通過したワイヤ電極12を回収する回収系統22とを備える。
【0012】
供給系統20は、ワイヤボビン24と、トルクモータ26と、ブレーキシュー28と、ブレーキモータ30と、張力検出部32と、上ダイスガイド34とを備える。ワイヤボビン24には、未使用のワイヤ電極12が巻かれる。トルクモータ26は、ワイヤボビン24に対してトルクを付与する。ブレーキシュー28は、ワイヤ電極12に対して摩擦による制動力を付与する。ブレーキモータ30は、ブレーキシュー28に対してブレーキトルクを付与する。張力検出部32は、ワイヤ電極12の張力の大きさを検出する。上ダイスガイド34は、ワイヤ電極12をガイドする部材であり、加工対象物の上方に配置される。
【0013】
回収系統22は、下ダイスガイド36と、ピンチローラ38およびフィードローラ40と、トルクモータ42と、回収箱44とを備える。下ダイスガイド36は、ワイヤ電極12をガイドする部材であり、加工対象物の下方に配置される。ピンチローラ38およびフィードローラ40は、ワイヤ電極12を挟持する。トルクモータ42は、フィードローラ40に対してトルクを付与する。回収箱44は、ピンチローラ38およびフィードローラ40により搬送されたワイヤ電極12を回収する。
【0014】
上ダイスガイド34は、ワイヤ電極12を支持する支持部34aを有し、下ダイスガイド36は、ワイヤ電極12を支持する支持部36aを有する。また、下ダイスガイド36は、ワイヤ電極12の向きを変えてピンチローラ38およびフィードローラ40に案内するガイドローラ36bを備える。
【0015】
なお、上ダイスガイド34は、スラッジ(加工屑)を含まない清潔な加工液を、ワイヤ電極12と加工対象物との極間に向けて噴出する。これにより、加工に適した清潔な液体で極間を満たすことができ、加工に応じて生じたスラッジにより加工精度が低下することを防止することができる。下ダイスガイド36は、上ダイスガイド34と同様に、スラッジ(加工屑)を含まない清潔な加工液をワイヤ電極12と加工対象物との極間に向けて噴出してもよい。
【0016】
加工機本体14は、加工液を貯留可能な加工槽46を備える。加工液は、加工時に用いられる液体である。加工液として、例えば、脱イオン水等が挙げられる。加工槽46は、ベース部47上に載置されている。
【0017】
加工槽46の槽内には上ダイスガイド34および下ダイスガイド36が配置され、上ダイスガイド34と下ダイスガイド36との間に加工対象物が設けられる。上ダイスガイド34、下ダイスガイド36、および、加工対象物は、加工槽46に貯められた加工液に浸漬している。
【0018】
加工槽46の側壁には、ワイヤ電極12の送出を案内するチューブ48が取り付けられる。チューブ48は、加工槽46と連通する。チューブ48の内部には、ガイドローラ36bを介して送られるワイヤ電極12が挿通され、加工槽46の槽内の加工液が流入する。チューブ48の内部に挿通されたワイヤ電極12は、チューブ48の排出側端部に向かって送り出される。チューブ48の内部に流入した加工液は、チューブ48の排出側端部に向かって流れる。チューブ48の排出側端部には水切り機構50が設けられる。水切り機構50は、チューブ48の内部を流れる加工液をワイヤ電極12から除去する。水切り機構50から送り出されるワイヤ電極12は、ピンチローラ38およびフィードローラ40を介して回収箱44に回収される。
【0019】
加工液処理装置16は、加工槽46に発生したスラッジを除去する。また、加工液処理装置16は、電気抵抗率、温度等を調整することで加工液の液質を管理する。加工液処理装置16によって液質が管理された加工液は、加工槽46に再び戻されるとともに、少なくとも上ダイスガイド34から噴出される。
【0020】
図2は、実施形態による水切り機構50の構成を示す断面図である。
図3は、水切り機構50の内部に着目して実施形態による水切り機構50を示す図である。水切り機構50は、ブロック52と、第1ガイド部54と、第2ガイド部56と、第3ガイド部58と、を備える。
【0021】
ブロック52は、水切り機構50の基礎となる部材である。ブロック52は、例えば、加工機本体14の筐体壁に固定される(
図1参照)。ブロック52には、重力方向に対して交差する方向に沿って貫通する貫通孔52Hが形成される。本実施形態の場合、貫通孔52Hは、重力方向(-Z方向)に対して直交する方向に沿って貫通している。
【0022】
貫通孔52Hの一端部は、ワイヤ電極12が挿入される側の端部であり、貫通孔52Hの他端部は、ワイヤ電極12が引き出される側の端部である。以下、貫通孔52Hの一端部は入力端部と称し、貫通孔52Hの他端部は出力端部と称する。
【0023】
貫通孔52Hの入力端部には、チューブ48の排出側端部が配置される。チューブ48の排出側端部は、固定部材59によりブロック52に固定される。ブロック52に固定されるチューブ48の排出側端部の仮想中心線は、貫通孔52Hの仮想中心線VLと概ね一致する。なお、仮想中心線VLは、貫通孔52Hの断面中心を通る仮想の線である。また、チューブ48の仮想中心線は、チューブの断面中心を通る仮想の線である。
【0024】
チューブ48の排出側端部には、チューブ48の排出側端部から流出する加工液を抜くための切り欠き60が設けられる。切り欠き60は、重力方向(-Z方向)に設けられる。切り欠き60が設けられることで、チューブ48の排出側端部の内部がブロック52の貫通孔52Hに露出する。
【0025】
ブロック52には、切り欠き60から流出する加工液を重力方向(-Z方向)に沿ってブロック52の外部に導く水抜き流路62が設けられる。水抜き流路62は、重力方向に沿って延び、切り欠き60と、ブロック52の外部とを通過する。
【0026】
第1ガイド部54は、チューブ48の排出側端部と、貫通孔52Hの出力端部側との間に設けられる。第1ガイド部54には、ワイヤ電極12を貫通孔52Hの入力端部側から出力端部側に案内するガイド孔64が形成される。ガイド孔64は、先細り部64Aと、延伸部64Bとを有する。ガイド孔64の断面中心を通る仮想中心線は、貫通孔52Hの仮想中心線VLと概ね一致する。
【0027】
先細り部64Aは、貫通孔52Hの入力端部側から出力端部側に向かうほど孔が小さくなるように形成される。先細り部64Aは、ワイヤ電極12の先端を延伸部64Bに案内する。延伸部64Bは、先細り部64Aの先端の孔の大きさと同程度の大きさのまま、貫通孔52Hの出力端部側に延伸する。延伸部64Bは、貫通孔52Hが貫通する方向に沿って形成される。延伸部64Bは、ワイヤ電極12の位置を概ね一定の位置に保持しながら、当該ワイヤ電極12の送出を案内する。
【0028】
第2ガイド部56は、貫通孔52Hの出力端部に設けられる。第2ガイド部56は、第1ガイド部54と離間している。第2ガイド部56の一部は、貫通孔52Hの出力端部からブロック52の外部に延びていてもよい。第2ガイド部56には、ガイド孔64が形成される。
【0029】
第2ガイド部56におけるガイド孔64の延伸部64Bは、第1ガイド部54におけるガイド孔64の延伸部64Bより長くてもよい。第2ガイド部56の延伸部64Bが第1ガイド部54の延伸部64Bより長い場合、第2ガイド部56の延伸部64Bが第1ガイド部54の延伸部64Bと同じである場合に比べて、第2ガイド部56は、ワイヤ電極12の送出を安定して案内し得る。
【0030】
第3ガイド部58は、第1ガイド部54と第2ガイド部56との間の貫通孔52Hに設けられる。第3ガイド部58は、第1ガイド部54および第2ガイド部56と離間している。第3ガイド部58には、ガイド孔64が形成される。
【0031】
第3ガイド部58と第1ガイド部54との間の貫通孔52Hには、ブロック52のガス流路66の流出口が開口する。また、第3ガイド部58と第2ガイド部56との間の貫通孔52Hには、ブロック52のガス流路66の流出口が開口する。ガス流路66は、2つの流出口の各々に対して独立した流入口を有する2つの流路で構成されてもよいし、2つの流出口に対して共通の流入口を有する1つの流路で構成されてもよい。本実施形態では、ガス流路66は、2つの流路で構成される。なお、ガス流路66を構成する2つの流路の一方は第1ガス流路66Aと称し、ガス流路66を構成する2つの流路の他方は第2ガス流路66Bと称する。
【0032】
第1ガス流路66Aは、第3ガイド部58と第1ガイド部54との間で貫通孔52Hと繋がる流出口と、ブロック52の外部と繋がる流入口とを有する。第2ガス流路66Bは、第3ガイド部58と第2ガイド部56との間で貫通孔52Hと繋がる流出口と、ブロック52の外部と繋がる流入口とを有する。
【0033】
第1ガス流路66Aおよび第2ガス流路66Bの各々の流入口には、継手部材68が設けられる。継手部材68は、ガス流路66(第1ガス流路66Aまたは第2ガス流路66B)とガスチューブ70とを繋げる部材である。ガスチューブ70の一端は継手部材68に取り付けられ、ガスチューブ70の他端はコンプレッサーに取り付けられる。コンプレッサーは、水切り機構50専用であってもよいし、水切り機構50専用ではなくてもよい。なお、水切り機構50専用でないコンプレッサーとして、例えば、ワイヤ電極12を切断する場合に冷却するための圧縮ガスを供給するコンプレッサーが挙げられる。また、例えば、ワイヤ電極12を送る加工液の水流を制御するシリンダーバルブを駆動するための圧縮ガスを供給するコンプレッサーが挙げられる。
【0034】
第1ガス流路66Aおよび第2ガス流路66Bの各々の流出口は、貫通孔52Hの入力端部側から出力端部側に案内されるワイヤ電極12の進路より重力方向(-Z方向)とは逆の方向(+Z方向)に配置される。また、第1ガス流路66Aおよび第2ガス流路66Bの各々の流出口は、ワイヤ電極12の進路に向けて開口している。
【0035】
第3ガイド部58と第1ガイド部54との間、および、第3ガイド部58と第2ガイド部56との間の各々の貫通孔52Hには、ブロック52の排出孔72の入口が開口する。排出孔72は、2つの入口の各々に対して独立した出口を有する2つの通路で構成されてもよいし、2つの入口に対して共通の出口を有する1つの通路で構成されてもよいし、共通の入口と出口を有する1つの通路で構成されてもよい。本実施形態では、排出孔72は、共通の入口と出口を有する1つの通路で構成される。
【0036】
排出孔72は、重力方向に沿って延びている。排出孔72の入口は、第3ガイド部58と第1ガイド部54との間から第3ガイド部58と第2ガイド部56との間までにわたって、貫通孔52Hと繋がっている。排出孔72の出口は、ブロック52の外部と繋がっている。
【0037】
図4は、水切り機構50での加工液の流動の様子を示す図である。チューブ48の排出側端部から送り出されるワイヤ電極12は、第1ガイド部54、第3ガイド部58、第2ガイド部56に順次案内される。第2ガイド部56に案内されるワイヤ電極12は、水切り機構50の外部に送り出される。
【0038】
一方、ガスチューブ70を介してコンプレッサーから水切り機構50に供給される圧縮ガスは、第1ガス流路66Aを介して、第1ガイド部54から第3ガイド部58に送られるワイヤ電極12に吹き付けられる。また、ガスチューブ70を介してコンプレッサーから水切り機構50に供給される圧縮ガスは、第2ガス流路66Bを介して、第3ガイド部58から第2ガイド部56に送られるワイヤ電極12に吹き付けられる。なお、圧縮ガスに用いられるガスの具体例として空気等が挙げられる。
【0039】
他方、チューブ48の内部を流れる加工液の大部分は、チューブ48の排出側端部に設けられる切り欠き60から水抜き流路62を介して落下する。チューブ48の内部を流れる加工液のごく一部は、第1ガイド部54のガイド孔64に飛散する。或いは、チューブ48の内部を流れる加工液のごく一部は、第1ガイド部54から貫通孔52Hの出力端部側に流出する。或いは、チューブ48の内部を流れる加工液のごく一部は、ワイヤ電極12に付着する。
【0040】
第1ガイド部54のガイド孔64に飛散した加工液は、貫通孔52Hの出力端部側から入力端部側に向かって低くなるように傾斜する第1ガイド部54の内壁面を伝わり、水抜き流路62を介して落下する。
【0041】
第1ガイド部54から貫通孔52Hの出力端部側に流出する加工液は、自重により排出孔72を介して落下する。
【0042】
ワイヤ電極12に付着する加工液は、ガス流路66を通じて吹き付けられる圧縮ガスにより飛び散る。飛び散った加工液は、ブロック52の内壁面、第3ガイド部58の内壁面または第2ガイド部56の内壁面に付着する。第3ガイド部58の内壁面または第2ガイド部56の内壁面は、貫通孔52Hの出力端部側から入力端部側に向かって低くなるように傾斜する。内壁面に付着した加工液は、自重により内壁面を伝わり、排出孔72を介して落下する。
【0043】
このように、本実施形態による水切り機構50のブロック52は、第1ガイド部54と第2ガイド部56との間の貫通孔52Hに圧縮ガスを導くガス流路66を含む。また、ブロック52は、第1ガイド部54と第2ガイド部56との間で貫通孔52Hと繋がり、重力方向に沿って延びてブロック52の外部と繋がる排出孔72を含む。
【0044】
これにより、本実施形態による水切り機構50は、第1ガイド部54から第1ガイド部54と第2ガイド部56との間に流出した加工液を自重により排出孔72を介して排出することができる。また、水切り機構50は、貫通孔52Hに導かれる圧縮ガスによって貫通孔52Hを通るワイヤ電極12に付着する加工液を吹き飛ばすことができる。この結果、水切り機構50によれば、吸引器を用いることなくワイヤ電極12から加工液を除去することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ガス流路66の流出口は、貫通孔52Hの入力端部側から出力端部側に案内されるワイヤ電極12の進路より重力方向とは逆の方向に配置される。これにより、ワイヤ電極12に圧縮ガスを吹き付けて、当該ワイヤ電極12に付着する加工液を排出孔72に導くことができる。したがって、ガス流路66の流出口がワイヤ電極12の進路より重力方向とは逆の方向に配置されていない場合に比べて、効率よく加工液を除去することができる。
【0046】
また、本実施形態では、チューブ48の排出側端部の重力方向の壁部に切り欠き60が設けられる。水切り機構50のブロック52には、当該切り欠き60から流出する加工液を、重力方向に沿ってブロック52の外部に導く水抜き流路62が形成される。これにより、水切り機構50は、第1ガイド部54にチューブ48を接触させたとしても、水抜き流路62を介して、チューブ48の内部を流れる加工液の大部分を排出することができる。この結果、水切り機構50は、貫通孔52Hが貫通する方向のブロック52の長さを短縮し得る。さらに、水切り機構50は、チューブ48の排出側端部から流出する加工液の大部分を第1ガイド部54に流入させることなくブロック52の外部に排出することができる。
【0047】
また、本実施形態では、第1ガイド部54および第2ガイド部56と間隔をあけて、第1ガイド部54と第2ガイド部56との間の貫通孔52Hに第3ガイド部58が備えられる。これに加えて水切り機構50のガス流路66は、第1ガイド部54と第3ガイド部58との間および第2ガイド部56と第3ガイド部58との間で貫通孔52Hと繋がっている。これにより、第3ガイド部58が備えられていない場合に比べて、ワイヤ電極12から加工液を除去する確実性を高めることができる。
【0048】
また、本実施形態では、ガイド孔64は、先細り部64Aを有する。先細り部64Aは、貫通孔52Hの入力端部側から出力端部側に向かうほど孔が小さくなるように形成される。これにより、ガイド部(第1ガイド部54、第2ガイド部56および第3ガイド部58)の内壁面は、貫通孔52Hの出力端部側から入力端部側に向かって低くなるように傾斜する。したがって、先細り部64Aに飛び散った加工液を、水抜き流路62または排出孔72を通じて排出することができる。
【0049】
[変形例]
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。
【0050】
(変形例1)
図5は、変形例1による水切り機構50の構成を示す断面図である。
図5では、上述した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、上述の説明と重複する説明は割愛する。
【0051】
本変形例では、チューブ48の排出側端部の切り欠き60(
図2)はなく、第1ガイド部54は、チューブ48の排出側端部と間隔をあけて設けられる。これにより、上記の実施形態と同様に、水抜き流路62を介して、チューブ48の内部を流れる加工液の大部分を排出することができる。
【0052】
(変形例2)
第1ガス流路66Aおよび第2ガス流路66Bの少なくとも一方の流出口は、ワイヤ電極12の進路から重力方向と逆の方向に配置される場合に限定されない。例えば、第1ガス流路66Aおよび第2ガス流路66Bの少なくとも一方の流出口は、ワイヤ電極12の進路から重力方向に位置するブロック52の内壁面に配置されてもよい。或いは、第1ガス流路66Aおよび第2ガス流路66Bの少なくとも一方の流出口は、ワイヤ電極12の進路をX方向に通る面と交わるブロック52の内壁面に配置されてもよい。
【0053】
(変形例3)
第1ガス流路66Aは、第1ガイド部54と第3ガイド部58との間で貫通孔52Hと繋がる流出口を2つ以上有していてもよい。また、第2ガス流路66Bは、第2ガイド部56と第3ガイド部58との間で貫通孔52Hと繋がる流出口を2つ以上有していてもよい。これらの場合、第1ガス流路66Aまたは第2ガス流路66Bの流出口が1つである場合に比べて、ワイヤ電極12に付着する加工液を吹き飛ばす量を高めることができる。
【0054】
(変形例4)
第3ガイド部58は設けられなくてもよい。また、第1ガイド部54と、第2ガイド部56との間の貫通孔52Hに2つ以上の第3ガイド部58が設けられてもよい。2つ以上の第3ガイド部58が設けられる場合、互いに隣り合う第3ガイド部58の間には間隔が設けられる。また、ガス流路66は、互いに隣り合う第3ガイド部58の間で貫通孔52Hと繋がる流出口を有する。2つ以上の第3ガイド部58が設けられる場合、第3ガイド部58が1つである場合に比べて、ワイヤ電極12から加工液を除去する量を高めることができる。
【0055】
以下に、上記の実施形態および変形例から把握しうる発明について記載する。
【0056】
本発明は、ワイヤ電極(12)が挿通され、前記ワイヤ電極の送出を案内するチューブ(48)の内部を流れる液体を前記ワイヤ電極から除去する水切り機構(50)であって、重力方向に対して交差する方向に沿って貫通する貫通孔(52H)が形成され、前記貫通孔の一端部に前記チューブの排出側端部が配置されるブロック(52)と、前記チューブの排出側端部と、前記貫通孔の他端部との間に設けられ、前記貫通孔の一端部側から前記貫通孔の他端部側に前記ワイヤ電極を案内するガイド孔(64)が形成される第1ガイド部(54)と、前記第1ガイド部と間隔をあけて前記貫通孔の他端部に設けられ、前記ガイド孔が形成される第2ガイド部(56)と、を備え、前記ブロックは、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間で前記貫通孔と繋がり、外部から供給される圧縮ガスを前記貫通孔に導くガス流路(66)と、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間で前記貫通孔と繋がり、前記重力方向に沿って延びて前記ブロックの外部と繋がる排出孔(72)と、を含む。
【0057】
これにより、第1ガイド部から貫通孔の出力端部側に流出する加工液を自重により排出孔を介して排出し、貫通孔に導かれる圧縮ガスによりワイヤ電極に付着する加工液を吹き飛ばすことができる。この結果、吸引器を用いることなくワイヤ電極から加工液を除去することができる。
【0058】
前記ガス流路の流出口は、前記貫通孔の一端部側から前記貫通孔の他端部側に案内される前記ワイヤ電極の進路より前記重力方向とは逆の方向に配置されてもよい。これにより、ワイヤ電極に圧縮ガスを吹き付けて、当該ワイヤ電極に付着する加工液を排出孔に導くことができる。したがって、ガス流路の流出口がワイヤ電極の進路より重力方向とは逆の方向に配置されていない場合に比べて効率よく加工液を除去することができる。
【0059】
前記チューブの排出側端部の前記重力方向の壁部には、前記液体を抜くための切り欠き(60)が設けられ、前記ブロックは、前記切り欠きから流出する前記液体を前記重力方向に沿って前記ブロックの外部に導く水抜き流路(62)を含んでもよい。これにより、第1ガイド部にチューブを接触させたとしても、水抜き流路を通じて、チューブの内部を流れる加工液の大部分を排出することができる。この結果、貫通孔が貫通する方向のブロックの長さを短縮し得る。さらに、チューブの排出側端部から流出する加工液の大部分を第1ガイド部に流入させることなくブロックの外部に排出することができる。
【0060】
前記第1ガイド部は、前記チューブの排出側端部と間隔をあけて設けられ、前記ブロックは、前記チューブの排出側端部から流出する前記液体を前記重力方向に沿って前記ブロックの外部に導く水抜き流路を含んでもよい。これにより、水抜き流路を通じて、チューブの内部を流れる加工液の大部分を排出することができる。
【0061】
水切り機構は、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部と間隔をあけて、前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間の前記貫通孔に設けられ、前記ガイド孔が形成される第3ガイド部(58)を備え、前記ガス流路は、前記第1ガイド部と前記第3ガイド部との間および前記第2ガイド部と前記第3ガイド部との間で前記貫通孔と繋がってもよい。これにより、第3ガイド部が備えられていない場合に比べて、ワイヤ電極から加工液を除去する量を高めることができる。
【0062】
前記ガイド孔は、前記貫通孔の他端部に向かうほど小さくなるように形成される先細り部(64A)を有してもよい。これにより、ガイド部の内壁面は、貫通孔の出力端部側から入力端部側に向かって低くなるように傾斜する。したがって、先細り部に飛び散った加工液を、水抜き流路または排出孔を介して排出することができる。