(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】実火災訓練装置
(51)【国際特許分類】
G09B 9/00 20060101AFI20240702BHJP
F23M 11/02 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
G09B9/00 M
F23M11/02
(21)【出願番号】P 2024024375
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500561931
【氏名又は名称】JFEプロジェクトワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博志
(72)【発明者】
【氏名】西本 奏
(72)【発明者】
【氏名】関根 孝夫
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-034024(JP,A)
【文献】特開昭63-199076(JP,A)
【文献】国際公開第2013/076838(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0233289(US,A1)
【文献】特開2006-298327(JP,A)
【文献】特開2022-072725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B 17/00-19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿った第1の方向で延伸する箱状の本体部の内部において、燃焼を生じさせることにより発煙をする燃焼部と、訓練対象者を収容する空間である訓練室とが、前記第1の方向と交差する板状の構成を具備する煙区画板によって前記本体部の内部における上側では前記第1の方向で仕切られ、かつ前記本体部の内部における下側で前記第1の方向で連通するように構成された実火災訓練装置であって、
前記煙区画板は、
前記板状の構成を具備し、前記本体部の内面に対して溶接された煙区画板本体と、
前記煙区画板本体の面内方向であり前記第1の方向と交差する第2の方向で延伸し、前記煙区画板本体に接合された補強部材と、
を具備し、
前記補強部材は、前記第2の方向に垂直な断面がL字形状である山形鋼で構成され、前記L字形状の頂点が前記煙区画板本体の表面から離間した状態で、前記L字形状を構成する2つの辺の端部に対応して前記第2の方向に延伸する2つの端辺が、前記煙区画板本体の前記訓練室側の表面に溶接されることによって前記煙区画板本体に接合されたことを特徴とする実火災訓練装置。
【請求項2】
前記煙区画板本体の端辺は前記本体部の内面に対して連続すみ肉溶接により接合され、
前記補強部材の端辺は前記煙区画板本体の表面に対して断続すみ肉溶接により接合されたことを特徴とする請求項1に記載の実火災訓練装置。
【請求項3】
前記燃焼部における前記本体部の前記第1の方向と平行な内面には耐火板が固定され、
前記煙区画板本体の端辺は前記耐火板に対して連続すみ肉溶接により接合され、
前記補強部材の端辺は前記煙区画板本体の表面に対して断続すみ肉溶接により接合されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の実火災訓練装置。
【請求項4】
前記耐火板は前記第1の方向において前記煙区画板本体よりも前記訓練室側に突出しないことを特徴とする請求項3に記載の実火災訓練装置。
【請求項5】
前記補強部材の端辺と前記煙区画板本体の表面の間における前記断続すみ肉溶接のピッチは300mm以下、単一の接合部分の幅は50mm以上とされたことを特徴とする請求項
2に記載の実火災訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性が高く安価な実火災訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
実際の火災と同様に木材等を燃焼させて濃煙を発生させた環境下で訓練を行わせるための実火災訓練装置が用いられている。こうした実火災訓練装置の構造は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された実火災訓練装置8の構造を簡略化して示す透視斜視図である。この実火災訓練装置8においては、図中水平方向を長手方向(x方向)とする略矩形体形状の内部空間を有する本体部10が用いられる。本体部10の図中右側(x方向正側)の端部付近には、燃焼台21が設置され、この上で可燃対象物Aが着火されて燃焼する。この領域の左側には、板状の煙調整フラッパー(煙区画板)92が本体部10の上側の領域のみを仕切るように本体部10の内側に設置される。訓練対象者Hは、本体部10の図中左側に連結された前室30から本体部10の図中左側の端面に形成された扉23を通ってこの本体部10内に侵入することができる。
【0004】
図7の構造において、訓練対象者Hは右側の煙調整フラッパー92と左側の扉23の間に位置し、所望の訓練作業をすることができる。この際、燃焼が発生しているのは煙調整フラッパー92よりも右側となるため、本体部10の内部の空間は、煙調整フラッパー92を境界として、その右側(x方向正側)が燃焼部10A、左側(x方向負側)が訓練室10Bとなる。
図7において、本体部10における扉23付近の天井には排気口24が設けられ、濃煙Sは排気口24から排煙処理部40に吸引されて無害化処理される。この構造により、濃煙Sは煙調整フラッパー92の下側を通って燃焼部10Aから訓練室10Bの天井側を図中左側に向けて流れる。
【0005】
また、煙調整フラッパー92を越流した高温の濃煙Sは、排気口24から排気される前の間は訓練室10Bの上層に滞留する。このため、濃煙Sによって視界が遮られる高温層と、視界がクリアである下側の低温層の圧力が釣り合って中性帯が保持される。このため、燃焼部10A内の温度は燃焼に伴って極めて高くなるのに対して、訓練室10B内の下層は訓練対象者Hが活動できる程度の温度に維持される。ただし、訓練対象者Hは煙調整フラッパー92の下側から越流する濃煙Sを目視することができるため、例えば高温により濃煙Sに含まれる可燃性ガスが自燃する現象(フラッシュオーバー:急激な爆発的燃焼)の前兆現象であるロールオーバーの発生を確認することができる。このため、安全かつより実践的な訓練を行わせることができる。
【0006】
濃煙Sを排気して無害化する排煙処理部40は、前記のように本体部10に形成された排気口24に連結され、濃煙Sは排煙処理部40において例えば燃焼等の処理によって無害化されて外気に排出される。
【0007】
ここで、煙調整フラッパー92は特に燃焼部10A側における燃焼時の高温に直接曝されるため、熱的、機械的に強い材料で構成され、例えば4.5mm厚の鋼板で構成され、これが本体部10内部の天井面、側面に溶接されて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のように煙調整フラッパー92は、訓練室10B内への濃煙Sの流入の度合いの制御と、訓練対象者Hの熱に対する保護という観点から重要である。一方、煙調整フラッパー92は燃焼部10Aと近接して設置されるため、熱に起因して劣化が発生しやすくなった。
【0010】
特に、この実火災訓練装置8が繰り返し使用された場合には、この煙調整フラッパー92は使用時の高温と非使用時の常温との間を繰り返す冷熱サイクルに曝される。これによって熱膨張・収縮が繰り返されることや、訓練時の放水が煙調整フラッパー92に当たることによって急冷されることにより、煙調整フラッパー92に亀裂が発生することがあった。この場合、訓練室10Bにおける前記のような上側の高温層と下側の低温層のつり合いが崩れ、所望の訓練活動に支障をきたす場合があった。
【0011】
あるいは、煙調整フラッパー92が本体部10内部の天井面、側面との間で強固に溶接された場合、煙調整フラッパー92には亀裂が入らずに、代わりに本体部10側に亀裂が発生する場合もあった。この場合、燃焼部10A内にこの亀裂から外気が侵入したことに起因して、燃焼部10A内の燃焼が不安定となり、訓練を適切に行うことができない場合があった。更には、発生した亀裂から燃焼部10Aにおける濃煙S中の未燃焼ガスに酸素が供給されることにより、フラッシュオーバーが発生するおそれもあった。
【0012】
このような燃焼部10Aの熱に起因する煙調整フラッパー92や本体部10の劣化(亀裂の発生等)を防止するためには、例えば燃焼部10Aの内部を、熱を遮蔽するために耐火構造とすることが有効である。このような耐火構造として、例えば、燃焼部10Aの上面、両側面及び奥側の面を耐火板で覆い、耐火板とこれらの面との間に断熱材を挟んだ構造とすることができる。また、
図7における訓練室10B側でも、例えば煙調整フラッパー92から500mm,程度の範囲における上面、両側面にも同様の耐火構造を形成することもできる。しかしながら、この場合には、本体部10内の構造が複雑となったため、この実火災訓練装置が高価となった。
【0013】
一方、冷熱サイクルに伴う熱膨張・収縮により発生する煙調整フラッパー92や本体部10の歪が本体部10における亀裂の発生の原因とも考えられる。この場合には、煙調整フラッパー92を前記のような単純な薄い板状とはせずに、歪が発生しないような機械的強度の高い形状・構造とする(補強する)ことが有効である。しかしながら、前記のように煙調整フラッパーには、その下端側で濃煙Sを円滑に流すという機能も要求される。これに対して、このような補強によって、このような濃煙Sの円滑な流れが妨害された。すなわち、この場合には、耐久性は高くなるものの、前記のような実火災訓練装置としての機能自身が阻害されることがあった。
【0014】
このため、耐久性が高く安価な実火災訓練装置が望まれた。
【0015】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の実火災訓練装置は、水平方向に沿った第1の方向で延伸する箱状の本体部の内部において、燃焼を生じさせることにより発煙をする燃焼部と、訓練対象者を収容する空間である訓練室とが、前記第1の方向と交差する板状の構成を具備する煙区画板によって前記本体部の内部における上側では前記第1の方向で仕切られ、かつ前記本体部の内部における下側で前記第1の方向で連通するように構成された実火災訓練装置であって、前記煙区画板は、前記板状の構成を具備し、前記本体部の内面に対して溶接された煙区画板本体と、前記煙区画板本体の面内方向であり前記第1の方向と交差する第2の方向で延伸し、前記煙区画板本体に接合された補強部材と、を具備し、前記補強部材は、前記第2の方向に垂直な断面がL字形状である山形鋼で構成され、前記L字形状の頂点が前記煙区画板本体の表面から離間した状態で、前記L字形状を構成する2つの辺の端部に対応して前記第2の方向に延伸する2つの端辺が、前記煙区画板本体の前記訓練室側の表面に溶接されることによって前記煙区画板本体に接合されている。
前記煙区画板本体の端辺は前記本体部の内面に対して連続すみ肉溶接により接合され、前記補強部材の端辺は前記煙区画板本体の表面に対して断続すみ肉溶接により接合されていてもよい。
前記燃焼部における前記本体部の前記第1の方向と平行な内面には耐火板が固定され、前記煙区画板本体の端辺は前記耐火板に対して連続すみ肉溶接により接合され、前記補強部材の端辺は前記煙区画板本体の表面に対して断続すみ肉溶接により接合されていてもよい。
前記耐火板は前記第1の方向において前記煙区画板本体よりも前記訓練室側に突出しなくともよい。
前記補強部材の端辺と前記煙区画板本体の表面の間における前記断続すみ肉溶接のピッチは300mm以下、単一の接合部分の幅は50mm以上とされていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上のように構成されているので、耐久性が高く安価な実火災訓練装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置の構造を示す透視斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置における煙区画板周辺の構造を拡大して示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置において用いられる煙区画板の斜視図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置の変形例の構造を示す透視斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置の変形例における燃焼部の構造を示す断面図である。
【
図6】従来の実火災訓練装置の一例(その2)の構造を示す透視斜視図である。
【
図7】従来の実火災訓練装置の一例(その1)の構造を示す透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る実火災訓練装置1の構造を示す透視斜視図である。ここで、
図7における燃焼台21等と訓練対象者Hは同様であるが、その記載は省略されている。この実火災訓練装置1においては、使用される煙調整フラッパー(煙区画板)50の構成が前記の実火災訓練装置8における煙調整フラッパー92と異なる。煙調整フラッパー以外の構成については前記の実火災訓練装置8と同様である。以下では、
図1に示されたようにx軸(図中左右方向)、y軸(図中紙面と交差する方向:手前が負側)、z軸(図中上下方向)をとった場合について説明する。前記の実火災訓練装置8と同様に、本体部10の内部は、x方向(第1の方向)において、煙調整フラッパー50によって燃焼部10A、訓練室10Bに区分される。なお、本体部10は例えばISO規格品等のコンテナを基にして形成されるため、実際にはその内面(表面)は波型鋼板等で構成され、平面ではないが、ここではこれらは平面として記載されている。
【0020】
ここで、この煙調整フラッパー(煙区画板)50は、従来の実火災訓練装置8における煙調整フラッパー92と同様の平板状のフラッパー本体(煙区画板本体)51と補強部材52を具備する。
図2は、
図1における煙調整フラッパー50周囲の構成を拡大して示す斜視図である。
図3(a)は、更に煙調整フラッパー50の構造を拡大した斜視図、
図3(b)はそのx方向負側からみた正面図、
図3(c)は、その補強部材52周囲をy方向負側からみた側面図である。
図3(c)においては、特に補強部材52の周囲のみが拡大されて示されている。
【0021】
フラッパー本体51は前記の煙調整フラッパー92と同様に、例えば4.5mm厚の鋼板で構成される。補強部材52はフラッパー本体51におけるx方向負側(訓練室10B側)の表面においてフラッパー本体51に接合される。補強部材52は、延伸方向に垂直な断面形状がL字形状とされた等辺の山形鋼(アングル)であり、その延伸方向は
図1におけるy方向(第2の方向:フラッパー本体51の面内方向かつ水平方向)とされる。このような補強部材52としては、市販の安価な山形鋼を用いることができる。
【0022】
また、
図3(a)(c)に示されるように、補強部材52における、このL字形状を構成する2つの辺の端部に対応してy方向に延伸する2つの端辺がフラッパー本体51の表面に溶接され、このL字形状の頂部がフラッパー本体51の表面から離間するような形態で、補強部材52はフラッパー本体51に固定される。
【0023】
また、フラッパー本体51の端辺は本体部10の内面に対して溶接されるが、この際には、連続すみ肉溶接が用いられる。このため、
図2に示されるように、フラッパー本体51の端辺(図中の上端、左端)に沿って連続的に溶接部100が形成され、図示は省略されているが、右端においても溶接部100は同様に形成されている。なお、後述するように補強部材52の周囲にも溶接部100は形成されているが、その記載は
図2では省略されている。
【0024】
これによって、フラッパー本体(煙調整フラッパー)51は本体部10の内部において強固に固定される。また、このように溶接部100が連続的に形成されるため、本体部10内の上側においては、燃焼部10Aと訓練室10Bの間はフラッパー本体51がある箇所では封止されるため、
図1における濃煙Sは煙調整フラッパー50の下側のみを通過して燃焼部10Aから訓練室10B内に流れる。
【0025】
このように煙調整フラッパー50は左右の端辺、上辺で本体部10に対して固定されるため、補強部材52は、フラッパー本体51におけるこのように固定されていない部分である下辺近くに設けることが特に好ましい。この場合、
図2等においては補強部材52は一つのみが設けられているが、これを上下(z方向)において平行に複数設けてもよい。
【0026】
山形鋼である補強部材52はフラッパー本体51に対して溶接されるが、
図3(a)(b)に示されるように、補強部材52はフラッパー本体51に対して延伸方向(y方向)において断続的に溶接部100を設けるように、タップ溶接(断続すみ肉溶接)される。なお、補強部材52は本体部10の内面に対しては直接溶接されない。
【0027】
補強部材52を上記のように訓練室10B側に設け、かつその側面の構造を
図3(c)に示されるようにした場合には、補強部材52はフラッパー本体51の表面で局所的に突出するものの、この表面に沿って濃煙Sを円滑に流すことができる。このため、これによる訓練室10B内における気流(濃煙Sの流れ)に与える影響は小さい。前記のとおり、補強部材52はフラッパー本体51における下側に固定することが好ましい。この場合には、補強部材52が濃煙Sの流れに与える影響が大きくなるところ、補強部材52をこのような形状とすることによって、この影響を低減することができる。
【0028】
また、このように補強部材52が溶接された煙調整フラッパー50は、
図7における煙調整フラッパー92と比べて機械的に補強されることは明らかであり、かつ、この構成を安価かつ容易に実現することができる。
【0029】
逆に、このように煙調整フラッパー50側の剛性が高まると、前記のように、煙調整フラッパー50が溶接された本体部10に亀裂が発生する場合がある。これに対して、上記の構造においては、フラッパー本体51が本体部10の内面に対して隙間なく連続すみ肉溶接されているのに対し、補強部材52は、フラッパー本体51に対してタップ溶接される。このため、煙調整フラッパー50の剛性が過度に高まることが抑制され、本体部10に亀裂が入ることが抑制される。
【0030】
このような煙調整フラッパー50の補強部材52による補強の効果は、タップ溶接の条件で調整することができる。具体的には、
図3(b)におけるy方向に沿った溶接部100のピッチをP、単一の溶接部(接合部分)100の長さをWとした場合に、Wの長さは1カ所の溶接部100における強度を維持するために適宜設定され、例えば50mm以上とされる。この場合、ピッチPは100mm以上300mm以下とされるが、ピッチPが300mmより長い場合には、フラッパー本体51の補強効果が小さくなり、フラッパー本体51に変形が生じやすい。このため、ピッチPを200mm以下としたタップ溶接が特に好ましい。
【0031】
上記の煙調整フラッパー50を本体部10に設ける際に、本体部10の内面側に設置された耐火板と組み合わせることができる。
図4は、このような構造の実火災訓練装置2の透視斜視図であり、ここでは
図1における燃焼部10A付近の構造が拡大して示されている。また、
図5は、
図4における燃焼部10A内の構造をより詳細に示す、x方向負側から正側をみた断面図である。
【0032】
図4においては、
図2と同様に、y方向負側における構造は記載が省略されている。ここでは、訓練対象者Hからみた奥側(x方向正側)の内面、天井面、左側(y方向正側)の内面に沿って、耐熱性の高い鋼製の耐火板61A、61B、61Cがそれぞれ設置されている。図示は省略されているが、右側(y方向負側)の内面においても耐火板61Cと同様に耐火板が設置されている。また、ここでは燃焼台21も記載されている。燃焼台21は、図示されるようにその上面(z方向正側の表面)が燃焼部10Aの底面とほぼ等しい矩形形状とされており、グレーティング構造が設けられているため、この上で可燃対象物を燃焼させることができる。燃焼台21は鋼材で構成される。
【0033】
図5においては、
図4で記載されなかったy方向負側(図中右側)の耐火板61Dも記載され、耐火板61Aのみについては平面図が示されている。ここで示されるように、耐火板61A、61C、61Dの下辺は燃焼台21に固定されて一体化され、かつ、これらの耐火板における直交して当接するz方向に沿った辺同士は連続すみ肉溶接で固定される。耐火板61Bのy方向正側、x方向正側、y方向負側の各辺は、耐火板61Cの上辺、耐火板61Aの上辺、耐火板61Dの上辺とそれぞれ当接して固定され、連続すみ肉溶接が用いられる。
【0034】
図5において、耐火板61B、61C、61Dとこれらに対向する本体部10の内面との間には、断熱材62が挟持されている。図示はされていないが、x方向正側の耐火板61Aの側においても同様である。耐火板61A~61Dには、断熱材62を固定するための構造を適宜設けることができる。
【0035】
この構造においては、各耐火板を設けることによって、燃焼部10Aからの熱によって本体部10が受ける損傷が低減される。この際、前記の煙調整フラッパー50を本体部10に直接固定せず、
図5の構造における耐火板61B、61C、61Dに固定することができる。この際の固定にも、連続すみ肉溶接を用いることができる。この場合、
図5における煙調整フラッパー50のy方向正側、z方向正側、y方向負側の各辺と本体部10との間が鋼製の平板によって密封される構成とすることもできる。
【0036】
このように燃焼台21、耐火板61A~61D、断熱材62を組み合わせた構造を、
図5に示されるように、本体部10の内部に挿入して固定することができる。この際、
図5に示された耐火板61B~61Dとこれらと対向する本体部10の内面の間を固定用の部材を用いて連続すみ肉溶接で固定することができる。なお、前記のように、実際には本体部10は波型鋼板等で構成されるため、本体部10の内面には凹凸が形成されている。このため、このような固定用の部材は、この凹凸に応じて適宜設定される。
【0037】
上記のような耐火板を用いた構造は、従来の煙調整フラッパー92が用いられた
図7の構造においても適用することができる。
図6は、このような実火災訓練装置9の
図4に対応した透視斜視図である。従来の煙調整フラッパー92を用いた場合においては、煙調整フラッパー92の歪が本体部10における亀裂の発生の原因ともなる。この場合には、煙調整フラッパー92をそのままの形態で用いた場合には、代わりに本体部10における燃焼による加熱や放水による急冷を緩和することが有効である。このため、
図6においては、前記の耐火板61A~61Cに代わり用いられる耐火板161A~161Cにおいて、x方向に延伸する耐火板161B、161Cは、煙調整フラッパー92を超えてx方向負側に500mm程度の範囲で延長して形成される。図示されないy方向負側の耐火板(耐火板61Dに対応)においても同様である。すなわち、この実火災訓練装置9においては、このように耐火構造を広い範囲で設けることによって、本体部10の耐久性を高めることができる。
【0038】
この場合、構造が複雑になり、この実火災訓練装置9は高価となる。また、前記のように、訓練室10B側では訓練対象者Hが活動するため、訓練室10B内部の構造は単純化することが好ましいところ、この点からもこのような構造は好ましくない。これに対して、上記の煙調整フラッパー50を用いた場合には、煙調整フラッパー50自身の歪が低減されるため、このような本体部10側の耐火構造、特に訓練室10B側には耐火板は不要となる。このため、従来の実火災訓練装置9と比べると、同等の耐久性であれば、この実火災訓練装置1を安価とすることができる。
【0039】
すなわち、使用に際しての耐熱性、耐久性の高い上記の煙調整フラッパー(煙区画板)50を煙調整フラッパー92の代わりに用いることによって、耐久性を同等とした場合に、実火災訓練装置の構造を単純化することができる。また、この煙調整フラッパー50はフラッパー本体51に単純な構造の補強部材52をタップ溶接して容易に得ることができる。このため、この実火災訓練装置1を安価とすることができ、本体部10の耐久性向上も図れる。
【0040】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0041】
1、2、8、9 実火災訓練装置
10 本体部
10A 燃焼部
10B 訓練室
21 燃焼台
23 扉
24 排気口
30 前室
40 排煙処理部
50、92 煙調整フラッパー(煙区画板)
51 フラッパー本体(煙区画板本体)
52 補強部材
61A~61D、161A~161C 耐火板
62 断熱材
100 溶接部(接合部分)
A 可燃対象物
F 炎
H 訓練対象者
S 濃煙
【要約】
【課題】耐久性が高く安価な実火災訓練装置を得る。
【解決手段】本体部10の内部は、x方向において、煙調整フラッパー50によって燃焼部10A、訓練室10Bに区分される。この煙調整フラッパー(煙区画板)50は、従来の実火災訓練装置における煙調整フラッパーと同様の平板状のフラッパー本体51と補強部材52を具備する。補強部材52は等辺の山形鋼であり、その延伸方向はy方向とされる。補強部材52もフラッパー本体51に対して溶接されるが、補強部材52はフラッパー本体51に対して延伸方向において断続的に溶接部100を設けるように、タップ溶接される。
【選択図】
図1