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特許7513856舗装材色相設計装置及びプログラム、並びに舗装材製造方法
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  • 特許-舗装材色相設計装置及びプログラム、並びに舗装材製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-01
(45)【発行日】2024-07-09
(54)【発明の名称】舗装材色相設計装置及びプログラム、並びに舗装材製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/30 20060101AFI20240702BHJP
   E01C 7/36 20060101ALI20240702BHJP
【FI】
E01C7/30
E01C7/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024039137
(22)【出願日】2024-03-13
【審査請求日】2024-03-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598047063
【氏名又は名称】日本乾溜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121371
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 和人
(72)【発明者】
【氏名】中原 悠貴
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-156972(JP,A)
【文献】特表2012-516280(JP,A)
【文献】特開2000-080603(JP,A)
【文献】特開平11-116771(JP,A)
【文献】特開2000-188762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実測により得られた各舗装材混合原料の色相値、並びに
実際に舗装材として利用可能な前記各舗装材混合原料の配合比の範囲内に於いて設定された配合比の標本点(以下「標本配合比」という。)に対し、前記各標本配合比により前記各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値を記憶する色相情報記憶手段と、
設計する舗装材の前記各舗装材混合原料の配合比を入力する配合比入力手段と、
前記色相情報記憶手段に記憶された前記各舗装材混合原料の色相値、並びに前記各舗装材混合原料の前記各標本配合比により作られる舗装材の色相値に基づき、前記各舗装材混合原料の任意の配合比により作られる舗装材の色相値を推定する色相推定式を生成する色相推定式生成手段と、
前記色相推定式に基づき、前記配合比入力手段により入力される前記各舗装材混合原料の配合比により作られる色相値を算出する色相値算出手段と、
前記色相値算出手段により算出される色相値を、表示装置に出力する色相出力手段と、
を備えたことを特徴とする舗装材色相設計装置。
【請求項2】
実測により得られた各舗装材混合原料B(i=1,…,N;Nは舗装材混合原料の種数)の色相値をc=(ci,1,ci,2,ci,3)、
舗装材を作る際の各舗装材混合原料の配合比をr=(r,…,rNb)(但し、rは舗装材混合原料Bの配合比;r+…+rNb=1)、
前記各標本配合比r=(r1,k,…,rNb,k)(k=1,…,N;Nは標本数)により前記各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値をcmix,k=(cmix,k,1,cmix,k,2,cmix,k,3
としたとき、
前記色相推定式生成手段は、
スカラー変数xの区間[0,1]で定義され、x=0,1に零点を有し且つ恒等的に0ではないスカラー関数であるN個の所定の基底函数ξ(x)(n=1,…,N)、及び、N×N個の近似パラメータai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)、又は、N×N個の近似パラメータ行列Ai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)を用いて、
各舗装材混合原料B(i=1,…,N)の配合比r=(r,…,rNb)から、該配合比rにより作られる舗装材の色相値の推定値cmix(r)=(cmix,1(r),cmix,2(r),cmix,3(r))を算出する色相推定式cmix(r)=f(r;c,…,cNb)を、
【数1】
又は
【数2】
として、
前記各標本配合比rにより前記各舗装材混合原料B,…,BNbを配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値cmix,kに基づき、
前記各近似パラメータai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)又は前記各近似パラメータ行列Ai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)を算出するものであること
を特徴とする請求項1記載の舗装材色相設計装置。
【請求項3】
設計する舗装材を適用する施工場所の景観写真又は景観モデルのデータ(以下「施工場所景観データ」という。)を記憶する景観モデル記憶手段と、
前記施工場所景観データ内に於いて、設計する舗装材を適用する適用領域を指定する適用領域指定手段と、
を備え、
前記色相出力手段は、
前記施工場所景観データに基づき表示装置に景観写真又は景観モデルを表示するとともに、前記適用領域指定手段により指定された適用領域を、前記色相値算出手段により算出される色相値により表示するものであること
を特徴とする請求項1記載の舗装材色相設計装置。
【請求項4】
設計する舗装材の色相値を入力する色相値入力手段と、
前記色相推定式に基づき、前記色相値入力手段により入力される設計する舗装材の色相値の色相を生じさせる前記各舗装材混合原料の配合比を逆算出する配合比算出手段と、
前記配合比算出手段により算出される前記各舗装材混合原料の配合比を、表示装置に出力する配合比出力手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の舗装材色相設計装置。
【請求項5】
表示装置及び入力装置を備えたコンピュータに読み込ませて実行することにより、前記コンピュータを請求項1乃至4のいずれか一記載の舗装材色相設計装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
複数種の砂、竹粉、粘土、及びセメントを舗装材混合原料とし、前記各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材を製造する舗装材製造方法であって、
製造する舗装材の各舗装材混合原料の色相値を測定する原料色相値測定工程と、
実際に舗装材として利用可能な前記各舗装材混合原料の配合比の範囲内に於いて、配合比の標本点を設定し、各配合比の標本点に於ける配合比(以下「標本配合比」という。)に基づき前記各舗装材混合原料を配合して標本舗装材を作り、作られた前記各標本舗装材の色相値を測定する舗装材色相値測定工程と、
測定された前記各舗装材混合原料の色相値、及び前記各標本舗装材の色相値を、請求項1又は4記載の舗装材色相設計装置の前記色相情報記憶手段に記憶させる実測色相値設定工程と、
前記舗装材色相設計装置により、製造する舗装材の色相値に対する前記各舗装材混合原料の配合比を算出する配合比算出工程と、
算出された前記各舗装材混合原料の配合比により、前記各舗装材混合原料を配合して舗装材を製造する舗装材製造工程と、
を備えたことを特徴とする舗装材製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各舗装材混合原料から所望の色相の舗装材を設計するための舗装材色相設計技術に関する。特に、施工現場の景観に合わせた舗装材の色相を設計する舗装材色相設計技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、景観面を重視して、天然素材の土,砂等とセメント系結合材とを混合した土系舗装材を使用した土系舗装が、広く用いられている。特に、土壌汚染の防止の観点から、土,砂等の天然素材骨材と、竹等の天然繊維補強材と、セメント系結合材とのみを用いて構成された土系舗装材も開発され、多くの現場で利用されている。このような舗装材としては、例えば、特許文献1~5に記載のものが公知である。
【0003】
特許文献1には、礫分と砂分との合計含有率が80質量%以上の粗土壌(真砂土、山砂もしくはこれらの混合物)と、シルト分と粘土分との合計含有率が25質量%以上の細土壌(黒墨土、畑土もしくはこれらの混合物)とを、質量比で80:20~30:70の範囲で含み、さらに土壌固化材(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ドロマイト焼成物、セメントもしくはこれらの混合物)を含み、さらに、天然繊維補強材(竹チップ、ウッドチップ、葦、藁、棕櫚、麻もしくはこれらの混合物)を土壌固化材1質量部に対して、0.1~1.0質量部の範囲の量にて含む土壌固化物製造用組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、竹を粉にした竹粉と、肥料成分を含有しない無機物の粉粒体である無肥性鉱物粉粒(シリカとアルミナを主成分とする)と、泥土と、硬化剤(セメント系、石灰系、酸化マグネシウム系、石膏系等から成る材料)と、を混合して成る土壌改良材が記載されている。
【0005】
特許文献3には、コンクリートに天然素材(輪切り断面形状が四角形であって、該四角形における一辺の長さが0.5~2.5mm、前記竹材の全長が20~60mmである竹材)が1.0~2.5容積%混入されて成る補強コンクリートが記載されている。
【0006】
特許文献4には、植物由来の破砕片(ウッドチップ)と接合用の固着材(酸化マグネシウム)を含む舗装材であって、破砕片と固着材を撹拌混合した舗装材を舗装場所に敷設し、固着材と化学反応し固化反応を生じる固着促進物質を溶解した固着促進材(リン酸二水素カリウムを溶解した溶解水)を敷設された舗装材に散布して舗装する、自然由来の破砕片の舗装材およびウッドチップ舗装が記載されている。
【0007】
特許文献5には、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-041679号公報
【文献】特開2004-067909号公報
【文献】特開2004-256317号公報
【文献】特開2022-028568号公報
【文献】特開2002-371504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような舗装材を用いて施工現場で舗装施工を行う場合、舗装工が施工現場周辺の景観に与える影響がなるべく少なくなるように、舗装材の色味を調整する必要がある。しかしながら、上述のような従来の土系舗装材は色味についての考慮はなされておらず、色味を調整する場合には、別途、舗装材に顔料を混合することにより色味調整が行われていた。しかし、顔料による色味調整では、施工後の長時間が経過すると、顔料の風化により色味が変化するという問題があった。また、顔料自体は天然素材でないケースが殆どであり、風化等により舗装材表面が粉末となって飛散すると、周辺環境に影響を与える場合があるという問題があった。
【0010】
また、顔料を使用せずに舗装材に用いられる舗装材混合原料の配合比の調製のみにより色味の調製を行う場合、最終的にどのような色味になるのかを現場で試行錯誤で調整する必要がある為、施工作業に多大な労力を要するという問題があった。また、出来あがった舗装材の色相が、実際に施工現場でどのような印象を醸し出すのかが、直感的に分かりにくく、結局、施工後に、最初に意図したようなものとなるのかが分からないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、舗装材に用いられる舗装材混合原料のみによる色味の調整を可能とする舗装材色相設計技術及び舗装材製造方法を提供することにある。また、施工現場で舗装材が実際に醸し出す色合いを施工者の意図する通りのものとすることが可能な舗装材色相設計技術及び舗装材製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る舗装材色相設計装置の第1の構成は、実測により得られた各舗装材混合原料の色相値、並びに
実際に舗装材として利用可能な前記各舗装材混合原料の配合比の範囲内に於いて設定された配合比の標本点(以下「標本配合比」という。)に対し、前記各標本配合比により前記各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値を記憶する色相情報記憶手段と、
設計する舗装材の前記各舗装材混合原料の配合比を入力する配合比入力手段と、
前記色相情報記憶手段に記憶された前記各舗装材混合原料の色相値、並びに前記各舗装材混合原料の前記各標本配合比により作られる舗装材の色相値に基づき、前記各舗装材混合原料の任意の配合比により作られる舗装材の色相値を推定する色相推定式を生成する色相推定式生成手段と、
前記色相推定式に基づき、前記配合比入力手段により入力される前記各舗装材混合原料の配合比により作られる色相値を算出する色相値算出手段と、
前記色相値算出手段により算出される色相値を、表示装置に出力する色相出力手段と、
を備えたことを特徴とする。

【0013】
この構成によれば、実測により得られた、各舗装材混合原料の色相値、並びに前記各舗装材混合原料の各配合比により作られる舗装材の色相値から色相推定式を生成し、この色相推定式から、実際に製造する舗装材の配合比による色相値の推定値が算出される。これにより、製造する舗装材がどのような色味になるのかを、製造前に推定できるため、効率的に舗装材の配合を行うことが出来る。
【0014】
本発明に係る舗装材色相設計装置の第2の構成は、前記第1の構成に於いて、実測により得られた各舗装材混合原料B(i=1,…,N;Nは舗装材混合原料の種数)の色相値をc=(ci,1,ci,2,ci,3)、
舗装材を作る際の各舗装材混合原料の配合比をr=(r,…,rNb)(但し、rは舗装材混合原料Bの配合比;r+…+rNb=1)、
前記各標本配合比r=(r1,k,…,rNb,k)(k=1,…,N;Nは標本数)により前記各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値をcmix,k=(cmix,k,1,cmix,k,2,cmix,k,3
としたとき、
前記色相推定式生成手段は、
スカラー変数xの区間[0,1]で定義され、x=0,1に零点を有し且つ恒等的に0ではないスカラー関数であるN個の所定の基底函数ξ(x)(n=1,…,N)、及び、N×N個の近似パラメータai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)、又は、N×N個の近似パラメータ行列Ai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)を用いて、
各舗装材混合原料B(i=1,…,N)の配合比r=(r,…,rNb)から、該配合比rにより作られる舗装材の色相値の推定値cmix(r)=(cmix,1(r),cmix,2(r),cmix,3(r))を算出する色相推定式cmix(r)=f(r;c,…,cNb)を、
【0015】
【数1】
又は
【0016】
【数2】
として、
前記各標本配合比rにより前記各舗装材混合原料B,…,BNbを配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値cmix,kに基づき、
前記各近似パラメータai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)又は前記各近似パラメータ行列Ai,n(i=1,…,N;n=1,…,N)を算出するものであることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る舗装材色相設計装置の第3の構成は、前記第1の構成に於いて、設計する舗装材を適用する施工場所の景観写真又は景観モデルのデータ(以下「施工場所景観データ」という。)を記憶する景観モデル記憶手段と、
前記施工場所景観データ内に於いて、設計する舗装材を適用する適用領域を指定する適用領域指定手段と、
を備え、
前記色相出力手段は、
前記施工場所景観データに基づき表示装置に景観写真又は景観モデルを表示するとともに、前記適用領域指定手段により指定された適用領域を、前記色相値算出手段により算出される色相値により表示するものであること
を特徴とする。
【0018】
この構成のよれば、色相出力手段によって、設計する舗装材を適用する施工場所の景観内に、適用領域が色相値算出手段により算出される色相値により表示された景観写真又は景観モデルが表示されるため、設計者はこの景観写真又は景観モデルを見ながら、舗装材の色相が実際の施工現場でどのような印象を醸し出すのかを直感的に認識できる。従って、景観に適合した色相の舗装材の設計を容易に行うことが可能となる。
【0019】
本発明に係る舗装材色相設計装置の第4の構成は、前記第1の構成に於いて、設計する舗装材の色相値を入力する色相値入力手段と、
前記色相推定式に基づき、前記色相値入力手段により入力される設計する舗装材の色相値の色相を生じさせる前記各舗装材混合原料の配合比を逆算出する配合比算出手段と、
前記配合比算出手段により算出される前記各舗装材混合原料の配合比を、表示装置に出力する配合比出力手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、配合比算出手段によって、施工者が意図する色相値から、その色相値を生じる舗装材の各舗装材混合原料の配合比が、予め実測された各標本配合比により作られる舗装材の色相値に基づいて逆算出されるため、施工者が意図する色相値の舗装材を容易に設計することが可能となる。
【0021】
本発明に係るプログラムは、表示装置及び入力装置を備えたコンピュータに読み込ませて実行することにより、前記コンピュータを前記第1乃至4のいずれか一の構成の舗装材色相設計装置として機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る舗装材製造方法は、複数種の砂、竹粉、粘土、及びセメントを舗装材混合原料とし、前記各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材を製造する舗装材製造方法であって、
製造する舗装材の各舗装材混合原料の色相値を測定する原料色相値測定工程と、
実際に舗装材として利用可能な前記各舗装材混合原料の配合比の範囲内に於いて、配合比の標本点を設定し、各配合比の標本点に於ける配合比(以下「標本配合比」という。)に基づき前記各舗装材混合原料を配合して標本舗装材を作り、作られた前記各標本舗装材の色相値を測定する舗装材色相値測定工程と、
測定された前記各舗装材混合原料の色相値、及び前記各標本舗装材の色相値を、先記φ4の構成の舗装材色相設計装置の色相情報記憶手段に記憶させる実測色相値設定工程と、
前記舗装材色相設計装置により、製造する舗装材の色相値に対する前記各舗装材混合原料の配合比を算出する配合比算出工程と、
算出された前記各舗装材混合原料の配合比により、前記各舗装材混合原料を配合して舗装材を製造する舗装材製造工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、顔料を使用せずに製造する舗装材の各舗装材混合原料の配合比により作られる舗装材の色相値を、実際の製造前に推定することが可能となり、施工作業に於ける配合比の調整作業の労力が大幅に軽減される。また、色相出力手段によって、設計する舗装材を適用する施工場所の景観内に適用領域が色相値算出手段により算出される色相値により表示された景観写真又は景観モデルを表示装置に表示されることで、設計者はこの景観写真又は景観モデルを見ながら、舗装材の色相が実際の施工現場でどのような印象を醸し出すのかを直感的に認識できる。従って、景観に適合した色相の舗装材の設計を容易且つ的確に行うことが可能となる。また、配合比算出手段によって、施工者が意図する色相値から、その色相値を生じる舗装材の各舗装材混合原料の配合比を、予め実測された各標本配合比により作られる舗装材の色相値に基づいて逆算出することで、施工者が意図する色相値の舗装材を簡単且つ的確に設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る舗装材色相設計装置の構成を表すブロック図である。
図2】本実施例の舗装材色相設計装置1による舗装材の設計方法の流れを表す図である。
図3】表示装置3に表示される表示画面の一例を示す図である。
図4】本発明の実施例2に係る舗装材製造方法の製造工程を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0026】
(1)舗装材色相設計装置の構成
図1は、本発明の実施例1に係る舗装材色相設計装置の構成を表すブロック図である。本発明に係る舗装材色相設計装置1は、ハードウェア構成としては、入力装置2及び表示装置3を備えたコンピュータにより構成されている。また、機能的構成としては、図1に示すように、舗装材色相設計装置1は、入力装置2、表示装置3、色相情報記憶手段4、景観モデル記憶手段5、推定パラメータ記憶手段6、色相情報設定手段7、適用領域指定手段8、配合比入力手段9、色相値入力手段10、基底選択手段11、推定式選択手段12、色相推定式生成手段13、色相値算出手段14、配合比算出手段15、画面出力手段16、色相出力手段17、及び配合比出力手段18を備えている。入力装置2及び表示装置3以外のこれらの各手段は、コンピュータに専用のプログラムを読み込ませて実行することにより、コンピュータ内に機能モジュールとして構成される。
【0027】
入力装置2は、キーボード,マウス,タッチパネル等の通常のコンピュータの入力装置である。表示装置3は、ディスプレイ等の通常のコンピュータの入力装置である。
【0028】
色相情報記憶手段4は、実測により得られた各舗装材混合原料単体の色相値、並びに実際に舗装材として利用可能な各舗装材混合原料の配合比の範囲内に於いて設定される配合比の標本点(以下「標本配合比」という。)に対し、各標本配合比により各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値を記憶する。
【0029】
ここで、「舗装材混合原料」とは、舗装材として配合する原料をいう。例えば、加工砂B,B,B,B,粘土・シルトB,山砂B,竹粉末B,及びセメントBを混合して舗装材が作られる場合、各材料B~Bが「舗装材混合原料」となる。「色相値」とは、色相を表す値をいい、通常は、各種の表色系で用いられる3次元又は4次元のベクトル値により表される。表色系としては、例えば、(L,a,b)色空間(JIS Z 8781-4参照)、(L,C,h)色空間、ハンターLab色空間などを使用することが出来る。本明細書では、通常用いられる表色系として、(L,a,b)色空間を用いて説明する。「配合比」とは、舗装材を作るに当たり、其々の舗装材原料を配合する割合をいう。N種の舗装材原料B,…,BNbを配合して舗装材が作られる場合、配合比はN次元のベクトルr=(r,…,rNb)として表される。ここで、r(i=1,…,N)は舗装材原料Bの配合比成分(以下では「舗装材原料Bの配合比」という。)を表し、r∈[0,1],r+…+rNb=1である。「標本」とは、あるものの集まりをより大きな集まりから選んだものを意味し、「標本配合比」とは、舗装材として利用可能な各舗装材混合原料の全ての配合比の中から、幾つかの代表的な配合比を選択したものをいう。選択する標本配合比の数(標本数)は任意であるが、舗装材の色相値の推定精度を上げるためには標本数はできるだけ多い方が好ましい。
【0030】
景観モデル記憶手段5は、設計する舗装材を適用する施工場所の景観写真又は景観モデルのデータ(施工場所景観データ)を記憶する。この施工場所景観データは、舗装材の色相の見本を、施工場所の景観内に適用して表示装置3に表示する際に用いられる。ここで、「景観写真」とは、施工場所の景観を撮影した写真をいう。「景観モデル」とは、施工場所の3次元モデルデータ(施工場所の3次元ポリゴンモデルの各オブジェクトに、テクスチャとして各オブジェクトの外観画像を貼り付けたもの)をいう。
【0031】
推定パラメータ記憶手段6は、各舗装材混合原料の任意の配合比により作られる舗装材の色相値を推定する色相推定式において使用される近似パラメータを記憶する。この近似パラメータに関しては後述する。
【0032】
色相情報設定手段7は、ユーザ(舗装材色相設計装置1の使用者をいう。以下同じ。)による入力装置2からの入力に従って、色相情報記憶手段4に、各舗装材原料B,…,BNbの単体の実測された色相値c,…,cNb、及び、各標本配合比r(k)=(r (k),…,rNb (k))(k=1,…,N;Nは標本数)により各舗装材混合原料を配合して作られる舗装材の、実測により得られた色相値cmix (k)を色相情報記憶手段4に保存する機能モジュールである。
【0033】
適用領域指定手段8は、ユーザによる入力装置2からの入力に従って、景観モデル記憶手段5に記憶された施工場所景観データ内に於いて、設計する舗装材を適用する適用領域を指定する機能モジュールである。配合比入力手段9は、ユーザによる入力装置2からの入力に従って、設計する舗装材の前記各舗装材混合原料の配合比の入力値を取得する機能モジュールである。色相値入力手段10は、ユーザによる入力装置2からの入力に従って、設計する舗装材の色相値の入力値を取得する機能モジュールである。
【0034】
基底選択手段11は、後述の色相推定式に用いられる基底関数を、予め定められた基底関数のセットの中から選択する機能モジュールである。推定式選択手段12は、後述の色相推定式を、予め定められた所定の色相推定式のセットの中から選択する機能モジュールである。
【0035】
色相推定式生成手段13は、色相情報記憶手段に記憶された各舗装材混合原料の実測色相値、並びに各舗装材混合原料の各標本配合比により作られる舗装材の実測色相値に基づき、各舗装材混合原料の任意の配合比により作られる舗装材の色相値を推定する色相推定式を生成する機能モジュールである。色相推定式生成手段13の機能の詳細については後述する。色相値算出手段14は、色相推定式生成手段13により生成された色相推定式に基づき、配合比入力手段9により入力される各舗装材混合原料の配合比により作られる色相値を算出する機能モジュールである。配合比算出手段15は、色相推定式生成手段13により生成された色相推定式に基づき、色相値入力手段10により入力される、設計する舗装材の色相値の色相を生じさせる各舗装材混合原料の配合比を逆算出する機能モジュールである。
【0036】
画面出力手段16は、表示装置3に、各種情報の表示画面を出力する機能モジュールである。色相出力手段17は、画面出力手段16により、景観モデル記憶手段5から読み出される施工場所景観データに基づいて景観写真又は景観モデルを表示するとともに、適用領域指定手段8により指定された適用領域を、色相値算出手段14により算出される色相値又は色相値入力手段10により入力される色相値によって色相見本を表示する機能モジュールである。配合比出力手段18は、画面出力手段16により、配合比算出手段15によって算出される各舗装材混合原料の配合比を、表示装置3に出力する機能モジュールである。
【0037】
(2)舗装材色相設計装置の動作
以上のように構成された本実施例1の舗装材色相設計装置1において、以下その動作を説明する。
【0038】
(2.1)事前準備
まず、事前準備として、ユーザは、舗装材の配合に使用する各舗装材混合原料B,…,BNbの単体の色相値(色相ベクトル)c,…,cNbを実測し、色相情報設定手段7により、色相情報記憶手段4に保存する。
【0039】
(例1) 舗装材混合原料として、4種の加工砂B,B,B,B、粘土・シルトB、山砂B、竹粉末B、及び土壌固化材(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ドロマイト焼成物、又はセメント若しくはこれらの混合物)Bを用いる場合、それぞれの舗装材混合原料B(i=1,…,8)について色相値(色相ベクトル)cを測定し、これらを色相情報記憶手段4に保存する。尚、土壌固化材Bに関しては、水を混合して硬化させた後の色相値を測定する。同様に、施工前後で化学反応などにより変化する舗装材混合原料に関しては、変化後の状態の色相値を測定する。
【0040】
次に、ユーザは、各舗装材混合原料B,…,BNbの各標本配合比r(1),…,r(Ns)(Nは標本数)により作られる舗装材の色相値cmix (1),…,cmix (Ns)を実測し、色相情報設定手段7により、色相情報記憶手段4に保存する。
【0041】
(例2) 上記(例1)の8種の舗装材混合原料{B,…,B}を配合して舗装材Pを作成する場合を考える。この場合、舗装材Pに於ける舗装材混合原料B(i=1,…,8)の配合比をrとし、全舗装材混合原料の配合比ベクトルをr=(r,…,r)とする。ここで、r+…+r=1である。舗装材Pとして利用可能な幾つかの配合比ベクトル(標本混合比)r(1),…,r(Ns)により舗装材(標本舗装材)P(1),…,P(Ns)を調製し、調製された舗装材のそれぞれに水を加えて硬化させて乾燥させ、硬化・乾燥後の舗装材P(1),…,P(Ns)の色相値(色相ベクトル)cmix (1),…,cmix (Ns)をそれぞれ実測する。標本混合比は、N次元の配合比ベクトル空間内の[0,1]Nb単位立方体内に於いて、なるべく一様に分布するように選択することが好ましい。こうして実測される各標本混合比r(1),…,r(Ns)に対する色相値(色相ベクトル)cmix (1),…,cmix (Ns)を、色相情報記憶手段4に保存する。
【0042】
(2.2)色相推定式
次に、色相推定式生成手段13は、色相情報記憶手段4に記憶された各舗装材混合原料の色相値(色相ベクトル){c;i=1,…,N}、並びに各舗装材混合原料の各標本配合比r(k)(k=1,…,N)により作られる舗装材の色相値cmix (k)に基づき、各舗装材混合原料の任意の配合比(配合比ベクトル)r=(r,…,rNb)により作られる舗装材Pの色相値(色相ベクトル)の推定値cmix,*を算出する色相推定式を生成する。一般に、色相推定式は次のように表される。
【0043】
【数3】
【0044】
ここで、aは、近似パラメータのベクトル(近似パラメータベクトル)又は行列(近似パラメータ行列)を表す。色相推定式fとしては、以下のような色相間非混合推定式又は色相間混合推定式が用いられる。また、函数fの拘束条件として、i=1,…,Nに対して、r=1,r=0(j≠i)のとき、f(r;c,…,cNb;a)=cが成り立たなければならない。この拘束条件を、以下、「fの拘束条件」と呼ぶ。
【0045】
(2.2.1)色相間非混合推定式
色相間非混合推定式は、色相ベクトルの各要素間の相関を考慮しない色相推定式であり、一般に次のように表される。
【0046】
【数4】
【0047】
ここで、ξ(x)(n=1,…,N)は「基底函数」と呼び、スカラー変数xの区間[0,1]で定義され、x=0,1に零点を有し且つ恒等的に0ではないスカラー関数である。nは基底函数の種類を示すインデックス(ここでは、便宜上1つの整数で表すが、2つ以上の整数組としてもよい。)、Nは、色相推定式で使用する基底函数の個数であり、1以上の整数である。aは要素がN×N個の近似パラメータベクトルである。この場合、色相推定式生成手段13は、この近似パラメータベクトルaを算出する。算出法については後述する。また、ξ(0)=ξ(1)=0より、上記式(4)は前述の「fの拘束条件」を満たしている。
【0048】
基底函数ξ(x)は必ずしも直交系を成すものでなくてもよい。基底函数ξ(x)としては、例えば、次のような函数を使用することができる。
【0049】
【数5】
【0050】
(2.2.2)色相間混合推定式
色相間非混合推定式は、色相ベクトルの各要素間の相関を考慮した色相推定式であり、一般に次のように表される。
【0051】
【数6】
【0052】
ここで、基底関数ξ(x)は式(4)と同様の函数である。An,i(i=1,…,N;n=1,…,N)はそれぞれ3×3次の近似パラメータ行列である。この場合、色相推定式生成手段13は、これらの近似パラメータ行列An,iを算出する。従って、この場合、算出される近似パラメータの総数は9N×N個となる。算出法については後述する。また、ξ(0)=ξ(1)=0より、上記式(6)は前述の「fの拘束条件」を満たしている。
【0053】
(2.3)近似パラメータの算出
近似パラメータベクトルaや近似パラメータ行列An,i(以下では、まとめて「近似パラメータa」と記す。)を求める計算はインバージョン解析(逆解析)であり、インバージョン解析の種々の手法を適用することが可能である。ここでは、一例として、標本点は近似パラメータaの要素数に対し十分多いと仮定し、シンプルな一般逆行列による計算を例示する。近似パラメータaを算出するには、まず、実測によって得られたN個の標本配合比r(k)(k=1,…,N)に於ける舗装材の色相値(色相ベクトル)cmix (k)を用いて、近似パラメータaに関する行列方程式を作成する。ここで、各色相値cmix (k)は、表色系色空間の3次元ベクトルであり、cmix (k)=(cmix,1 (k),cmix,2 (k),cmix,3 (k))である。(L,a,b)色空間を使用する場合、cmix,1 (k)がL、cmix,2 (k)がa、cmix,3 (k)がbに対応する(以下同様)。以下では、標本配合比r(k)とそれに対応する色相値cmix (k)の組(r(k),cmix (k))を、まとめて「標本値」と呼ぶ。
【0054】
(2.3.1)色相間非混合推定式の場合
色相推定式として式(4)を使用する場合、各標本値に対して次式が成り立つ。
【0055】
【数7】
【0056】
ここで、近似パラメータを縦に並べたN次元の縦ベクトルα(以下、「近似パラメータベクトル」と呼ぶ。)と、式(7)の左辺の値を縦に並べた3N次元の縦ベクトルqを次のようにおく。ベクトルqは、全要素が実測値から定まる定数ベクトルである。
【0057】
【数8】
【0058】
これにより、式(7)は次式(9)のような行列方程式で表される。ここで、行列Pは3N×N次元の行列である。
【0059】
【数9】
【0060】
行列Pは、全要素が実測値と基底関数から定まる定数行列である。行列Pを次式(10a)のように特異値分解(P=UΣV)し、行列Pのムーア・ペンローズ一般逆行列Pを次式(10b)のように計算することにより、近似パラメータベクトルαを次式(10c)により算出することができる。これにより、全ての近似パラメータai,nが求まるので、色相推定式(4)が確定する。
【0061】
【数10】
【0062】
(2.3.2)色相間混合推定式の場合
色相推定式として式(6)を使用する場合、各標本値に対して次式が成り立つ。
【0063】
【数11】
【0064】
ここで、式(11)の左辺の3次元縦ベクトルをq(k)とし、3×3次元の各近似パラメータ行列An,iを3つの3次元縦ベクトルan,i,1,an,i,2,an,i,3を横に並べたものとして、次のように表す。
【0065】
【数12】
【0066】
これを、式(11)に代入すれば、次のような行列方程式が得られる。
【0067】
【数13】
【0068】
ここで、qはN次元の縦ベクトルで、全要素が実測値から定まる定数ベクトル(3次元ベクトルのベクトル)である。αは3N次元の縦ベクトルで、全てのベクトルan,i,j(n=1,…,N;i=1,…,N;j=1,2,3)を縦に並べたベクトル(3次元ベクトルのベクトル。以下、「近似パラメータベクトル」と呼ぶ。)である。PはN×3N次元の行列(各3次元横ベクトルc (i=1,…,N)は3列に展開されるものとする。)であり、全要素が実測値と基底函数から定まる定数行列である。式(13a)は、式(10a)~(10c)と同様にして解くことが出来、これにより、全ての近似パラメータ行列Ai,nが求まるので、色相推定式(6)が確定する。
【0069】
(2.4)舗装材の各舗装材混合原料の配合比の設計
図2は、本実施例の舗装材色相設計装置1による舗装材の設計方法の流れを表す図である。
【0070】
ステップS1で、ユーザは、入力装置2を介して色相情報設定手段7により、舗装材に用いる舗装材混合原料{B;i=1,…,N}を入力し色相情報記憶手段4に保存するとともに、各舗装材混合原料Bの単体の色相値(色相ベクトル)の実測データc,…,cNbを入力し色相情報記憶手段4に保存する。また、入力装置2を介して色相情報設定手段7により、各舗装材混合原料{B;i=1,…,N}を標本混合比r(k)(k=1,…,N)により混合して得られた舗装材(標本舗装材)P(k)の色相値(色相ベクトル)の実測データcmix (k)を入力し色相情報記憶手段4に保存する。これは、上述の(2.1)で既に説明した通りである。
【0071】
次に、ステップS2で、基底選択手段11は、基底関数ξ(x)を1つ選択する。例えば、式(5a)~(5c)から1つ選択する。また、推定式選択手段12は、色相推定式f(式(4)又は式(6))を1つ選択するとともに、使用する基底関数の個数Nを設定する。
【0072】
次に、ステップS3で、色相推定式生成手段13は、設定された基底関数ξ(x)及び色相推定式fを用いて、色相情報記憶手段4に保存された、各舗装材混合原料Bの単体の色相値{c;i=1,…,N}及び各標本値{(r(k),cmix (k));k=1,…,N}に基づき、上述の(2.3)で説明した方法により、近似パラメータaを算出する。このとき、色相推定式生成手段13は、算出された近似パラメータaを用いて、式(3)により、各標本混合比r(k)(k=1,…,N)に於ける舗装材の推定色相値cmix,*(r(k))を算出し、それぞれの推定色相値cmix,*(r(k))と実測値cmix (k)との距離の2乗和(2乗誤差)Δ[f,ξ,N]を算出する。
【0073】
【数14】
【0074】
色相推定式生成手段13は、このステップS2,S3を、基底関数ξ(x)の選択、色相推定式fの選択、及び使用する基底関数の個数Nの選択を変化させながら繰り返し行い、2乗誤差Δ[f,ξ,N]が最小となるような基底関数ξ(x),色相推定式f,及び基底関数の個数Nを選択し、選択された色相推定式fに於ける近似パラメータaを決定する(ステップS4)。
【0075】
次に、ステップS5で、適用領域指定手段8は、ユーザによる入力装置2からの支持入力に従って、景観モデル記憶手段5に保存された施工場所景観データの中から1つを選択し、表示装置3に表示する。図3に、表示装置3に表示される表示画面の一例を示す。図3の例では、画面の中央乃至左側に景観データ表示領域30が設けられ、画面の右上側に舗装材情報表示領域31が、画面の右下側に原料情報表示領域32が設けられている。選択された施工場所景観データは、景観データ表示領域30に表示される。
【0076】
次いで、ステップS6で、適用領域指定手段8は、ユーザによる入力装置2からの支持入力に従って、表示装置3に表示された施工場所景観データ内に於いて、設計する舗装材を適用する適用領域を指定する。図3の例では、景観データ表示領域30内の施工場所景観データにおいて、ハッチングが付された部分が、ユーザにより指定された適用領域である。
【0077】
次に、ユーザが望む色相の舗装材の設計プロセスに移行するが、この設計プロセスでは、ユーザが原料配合比を指定するケースと、ユーザが舗装材の色相を指定するケースがあるので、其々のケースについて説明する。
【0078】
(2.4.1)ユーザが原料配合比を指定するケース
この場合、まず、ステップS11で、配合比入力手段9は、ユーザによる入力装置2からの支持入力に従って、設計する舗装材Pの各舗装材混合原料{B;i=1,…,N}の配合比r=(r,…,rNb)の入力を受け付ける。図3の例では、原料情報表示領域32に、舗装材混合原料の入出力欄がテーブルとして表示されており、この入出力テーブルは、舗装材混合原料の名称を表示する原料名称カラム32a,舗装材混合原料の色相値を入出力する色相値カラム32b,舗装材混合原料の色相値の色見本を表示する色見本カラム32c,舗装材混合原料の配合比を入出力する配合比カラム32dを備えている。ユーザは、入力装置2により、配合比カラム32dに、各舗装材混合原料の配合比を入力する。入力が終わると、ユーザは、原料情報表示領域32の右上の混合色相計算ボタン33を選択する。
【0079】
次に、ステップS12で、色相値算出手段14は、入力された配合比r=(r,…,rNb)に基づき、先に決定された色相推定式fにより、配合比rに対する舗装材の推定色相値cmix,*を算出する。
【0080】
次に、ステップS13で、色相出力手段17は、算出された推定色相値cmix,*を表示装置3に表示出力する。図3の例では、舗装材情報表示領域31に、舗装材(舗装材混合原料の混合硬化物)の色相値入出力ボックス31aが表示されており、この色相値入出力ボックス31aに、推定色相値cmix,*が表示出力される。また、舗装材情報表示領域31の色見本表示領域31bには、推定色相値cmix,*の色見本が表示出力される。
【0081】
最後に、ステップS14で、色相出力手段17は、表示装置3に表示された施工場所景観データ内の適用領域を、推定色相値cmix,*の色相で着色表示する。図3の例では、景観データ表示領域30に表示された施工場所景観データ内の適用領域を、推定色相値cmix,*の色見本により着色する。これにより、ユーザは、舗装材の施工場所に於いて、舗装材の色相が景観に与える影響を視覚的に確認することができる。そして、この舗装材の色相でよければ、設計プロセスを完了し、満足がいかなければ、再びステップS11に戻って、原料配合比の調整を続行する。
【0082】
(2.4.2)ユーザが舗装材の色相を指定するケース
この場合、まず、ステップS21で、色相値入力手段10は、ユーザによる入力装置2からの支持入力に従って、設計する舗装材Pの目標とする色相値cmixの入力を受け付ける。図3の例では、舗装材情報表示領域31の色相値入出力ボックス31aに、設計する舗装材Pの目標色相値cmixを入力する。目標色相値cmixが入力されると、ステップS22で、色相出力手段17は、表示装置3に表示された施工場所景観データ内の適用領域を、目標色相値cmixで着色表示する。図3の例では、景観データ表示領域30に表示された施工場所景観データ内の適用領域を、目標色相値cmixの色見本により着色する。また、同時に、舗装材情報表示領域31の色見本表示領域31bにも、目標色相値cmixの色見本が表示出力される。これにより、ユーザは、舗装材の施工場所に於いて、舗装材の色相が景観に与える影響を視覚的に確認することができる。そして、この舗装材の色相でよければ、ユーザは、舗装材情報表示領域31の右下の配合比計算ボタン34を選択する。
【0083】
次に、ステップS23で、配合比算出手段15は、先に決定された色相推定式fにより、推定色相値cmix,*が目標色相値cmixに最も近くなるような配合比r=(r,…,rNb)を算出する。これは、配合比rを変化させながら推定色相値cmix,*を計算し、目標色相値との誤差|cmix-cmix,*|が最小となるような配合比rを探索することにより行われる。探索アルゴリズムに関しては、全探索又は公知の各種高速アルゴリズムを用いて行うことが出来る。
【0084】
最後に、ステップS24で、配合比出力手段18は、配合比算出手段15により算出された各舗装材混合原料の最適配合比rを、表示装置3に出力する。図3の例では、原料情報表示領域32の配合比カラム32dに出力される。また、色相値算出手段14は、配合比算出手段15により算出された最適配合比rに基づき、色相推定式fにより推定色相値cmix,*を算出し、色相出力手段17は、算出された推定色相値cmix,* 及びその色見本を、ステップS13,S14と同様に、表示装置3に表示出力する。図3の例では、推定色相値cmix,* 及びその色見本は、舗装材情報表示領域31の色相値入出力ボックス31a及び色見本表示領域31b、並びに景観データ表示領域30の施工場所景観データ内の適用領域に表示出力される。
【実施例2】
【0085】
(舗装材製造方法)
【0086】
図4は、本発明の実施例2に係る舗装材製造方法の製造工程を表すブロック図である。この舗装材製造方法は、複数種の砂(加工砂、及び山砂又は川砂若しくは海砂)、竹粉、粘土、及びセメントを舗装材混合原料とし、これらの各舗装材混合原料を配合して作られる土系舗装材を製造する舗装材製造方法である。
【0087】
まず、ステップS101で、舗装材混合原料である,各種の砂、竹粉、粘土、及びセメントについて、それぞれ単体での色相値を測定する。セメントについては、水を添加して混練した後に凝結・硬化させて供試体を作成し、作成した供試体の色相値を測定する。以下では、実施例1と同様に、各舗装材混合原料をB,…,BNb(Nは舗装材混合原料の数)と記し、舗装材混合原料Bの単体で実測された色相値(色相ベクトル)をcと記す。
【0088】
次に、ステップS102で、舗装材として利用可能な各舗装材混合原料の配合比の範囲内に於いて、配合比の標本点(標本配合比)を設定する。以下では、実施例1と同様に、各舗装材混合原料の標本配合比をr(k)=(r (k),…,rNb (k))(k=1,…,N;Nは標本点の数)と記す。ここで、「舗装材として利用可能な」とは、舗装材の配合比としてあり得ないものを除くことを意味する。例えば、(竹粉99%,粘土1%,その他0%)のような配合比は、実際の舗装材としてはあり得ないので、このような配合比は除いて、実際の舗装材としてとり得る配合比の範囲内で標本点(標本配合比)を設定する。
【0089】
次に、ステップS103で、各標本配合比に基づき、各舗装材混合原料を配合して、水を添加して混練し、凝結・硬化させて標本舗装材の供試体を作成する。供試体は、1つの標本配合比につき複数作成するのが好ましい。また、供試体は、硬化後に乾燥させた状態とする。
【0090】
次に、ステップS104で、各標本舗装材の供試体の色相値を測定する。実施例1と同様に、標本配合比r(k)(k=1,…,N)の供試体に対して測定された色相値(色相ベクトル)をcmix (k)と記す。また、標本配合比r(k)とその供試体で実測された色相値cmix (k)との組(r(k),cmix (k))を、まとめて「標本値」と呼ぶ。
【0091】
次に、ステップS105で、測定された各舗装材混合原料単体の色相値{c}、及び各標本舗装材の標本値{(r(k),cmix (k))}を、実施例1の舗装材色相設計装置1の色相情報記憶手段4に保存する。
【0092】
次に、ステップS106で、実施例1の図3で説明したように、舗装材色相設計装置1により、ユーザの意図する色相の舗装材の色相値に対する各舗装材混合原料の配合比を算出する。
【0093】
最後に、ステップS107で、算出された各舗装材混合原料の配合比に従って、各舗装材混合原料を配合して舗装材を製造する。
【0094】
以上のようにして、景観に適合した色相の舗装材の製造を容易且つ的確に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1 舗装材色相設計装置
2 入力装置
3 表示装置
4 色相情報記憶手段
5 景観モデル記憶手段
6 推定パラメータ記憶手段
7 色相情報設定手段
8 適用領域指定手段
9 配合比入力手段
10 色相値入力手段
11 基底選択手段
12 推定式選択手段
13 色相推定式生成手段
14 色相値算出手段
15 配合比算出手段
16 画面出力手段
17 色相出力手段
18 配合比出力手段
【要約】
【課題】原料のみによる色味の調整を可能とする舗装材色相設計装置及び舗装材製造方法の提供。
【解決手段】実測された各原料の色相値、並びに各標本配合比により各原料を配合して作られる舗装材の実測された色相値を記憶する色相情報記憶手段と、設計する舗装材の各原料の配合比を入力する配合比入力手段と、色相情報記憶手段に記憶された各原料の色相値、並びに各原料の各標本配合比により作られる舗装材の色相値に基づき、各原料の任意の配合比により作られる舗装材の色相値を推定する色相推定式を生成する色相推定式生成手段と、色相推定式に基づき、配合比入力手段により入力される各原料の配合比により作られる色相値を算出する色相値算出手段と、色相算出手段により算出される色相値を、表示装置に出力する色相出力手段とを備えた。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4