(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2019226967
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】川村 勇介
(72)【発明者】
【氏名】鍛代 光智
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-050536(JP,U)
【文献】特開2004-114773(JP,A)
【文献】特開2009-179203(JP,A)
【文献】特開2019-031224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されるロアレールと、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対し摺動自在に設けられるアッパーレールと、
前記アッパーレールに対してその長手方向に沿って配設されるスクリューネジと、
前記ロアレールに固定されて前記スクリューネジの回転に応じて当該スクリューネジに対しその長手方向に相対的に移動するナット部材と、
を備えるシートレール装置であって、
前記アッパーレールに固定されて前記スクリューネジが一側外周面にて挿通する一側挿通穴が
真円状に開口するように形成される一側支持部材と、
前記一側挿通穴の内周面と前記一側外周面との間に介在する一側ベアリングと、
を備え、
前記一側ベアリングは、内輪が前記一側外周面に組み付けられる2つのワッシャによって挟持された状態で前記一側外周面に固定され、外輪が当該外輪の外周面に形成される段部によって位置決めされるようにして前記一側挿通穴の内周面に固定されることを特徴とするシートレール装置。
【請求項2】
前記アッパーレールに固定されて前記スクリューネジが他側外周面にて挿通する他側挿通穴が形成される他側支持部材と、
前記他側挿通穴の内周面と前記他側外周面との間に介在する他側ベアリングと、
を備え、
前記他側ベアリングは、内輪が前記他側外周面に固定され、外輪が前記他側挿通穴の内周面に固定されることを特徴とする請求項1に記載のシートレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの前後方向位置を調整するシートレール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートの前後方向位置を調整するシートレール装置として下記特許文献1に開示されるシートレール装置が知られている。このシートレール装置は、ロアレール及びアッパーレールと、アッパーレールに支持されるスクリューネジと、ロアレールに固定されてスクリューネジの回転に応じてスクリューネジをスライドさせるナット部材とを備えるように構成されている。スクリューネジは、その前側端部及び後側端部にて、アッパーレールの前側にブラケットを介して取り付けられたゴム製のダンパーとアッパーレールの後側にホルダーを介して取り付けられた樹脂製のカラーとを利用して回転可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようにスクリューネジを支持する構成では、ダンパー及びカラーとスクリューネジとのスラスト方向(軸方向)のガタをなくすために、ダンパー及びカラーに対してスラスト方向から接触するブッシュ等をスクリューネジに組み付ける必要がある。このような構成では、ダンパー等にはブッシュ等を介してスラスト荷重が作用するために、このスラスト荷重を受けたダンパー等が内周側に弾性変形することで、相対回転するスクリューネジとの間の摺動抵抗が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、スクリューネジに作用する摺動抵抗を低減し得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
車体に固定されるロアレール(20)と、
シートに固定されるとともに前記ロアレールに対し摺動自在に設けられるアッパーレール(30)と、
前記アッパーレールに対してその長手方向に沿って配設されるスクリューネジ(40)と、
前記ロアレールに固定されて前記スクリューネジの回転に応じて当該スクリューネジに対しその長手方向に相対的に移動するナット部材(60)と、
を備えるシートレール装置(10)であって、
前記アッパーレールに固定されて前記スクリューネジが一側外周面(41a,42a)にて挿通する一側挿通穴(72a,81a)が真円状に開口するように形成される一側支持部材(70,80)と、
前記一側挿通穴の内周面と前記一側外周面との間に介在する一側ベアリング(91,92)と、
を備え、
前記一側ベアリングは、内輪(91a,92a)が前記一側外周面に組み付けられる2つのワッシャによって挟持された状態で前記一側外周面に固定され、外輪(91b,92b)が当該外輪の外周面に形成される段部によって位置決めされるようにして前記一側挿通穴の内周面に固定されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、アッパーレールに固定されてスクリューネジが一側外周面にて挿通する一側挿通穴が形成される一側支持部材と、一側挿通穴の内周面と一側外周面との間に介在する一側ベアリングと、が設けられる。そして、一側ベアリングは、内輪が一側外周面に固定され、外輪が一側挿通穴の内周面に固定される。
【0008】
これにより、一側ベアリングとスクリューネジとのスラスト方向のガタをなくすために、一側ベアリングの内輪に対してスラスト方向から接触するブッシュ等をスクリューネジに組み付ける構成であっても、内輪に作用するスラスト荷重によって摺動抵抗に相当する転がり摩擦抵抗が大きくなることもない。したがって、スクリューネジに作用する摺動抵抗を低減できることから、摺動抵抗に起因するうねり音が抑制されるだけでなく、スムーズにスクリューネジが回転できるためにスライド作動が円滑になり、シートレール装置の商品性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明では、アッパーレールに固定されてスクリューネジが他側外周面にて挿通する他側挿通穴が形成される他側支持部材と、他側挿通穴の内周面と他側外周面との間に介在する他側ベアリングと、が設けられる。そして、他側ベアリングは、内輪が他側外周面に固定され、外輪が他側挿通穴の内周面に固定される。
【0010】
これにより、一側と他側との両端でスクリューネジに作用する摺動抵抗を低減できるので、摺動抵抗に起因するうねり音をより一層抑制でき、スライド作動の更なる円滑化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るシートレール装置の概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のシートレール装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3(A)は、スクリューネジの前側端部でのベアリングを用いた支持状態を説明する説明図であり、
図3(B)は、
図3(A)のベアリング近傍を拡大して示す説明図である。
【
図4】
図4(A)は、スクリューネジの後側端部でのベアリングを用いた支持状態を説明する説明図であり、
図4(B)は、
図4(A)のベアリング近傍を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る車両用のシートレール装置10の一実施形態について図を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、シートレール装置10は、車両フロアに固定されるロアレール20、図略の車両用シートに固定されるアッパーレール30、アッパーレール30に回動可能に支持されるスクリューネジ40、スクリューネジ40に回転を伝達するギヤボックス50、ロアレール20に固定されるナット部材60をそれぞれ一対と、両ギヤボックス50にシャフトを介して上記回転を発生させるためのモータと備えている(
図1及び
図2では一方のみを記載する)。
【0013】
シートレール装置10は、アッパーレール30に支持されるスクリューネジ40がギヤボックス50から伝達される回転力によって回転し、このスクリューネジ40に噛合するナット部材60がロアレール20に固定されることで、アッパーレール30がロアレール20に対して相対移動するように構成されている。
【0014】
アッパーレール30は、その断面が下向きに開口した逆U字状でその端部から両外側に向かって鍔部を有するように形成されている。ロアレール20は、その断面が上向きに開口し上記アッパーレール30の鍔部を巻き込むように形成されている。そして、アッパーレール30及びロアレール20は、図略のスチールボールやローラー等の転動部材の介在により車両前後方向に摺動自在に組み合わされている。
【0015】
スクリューネジ40は、アッパーレール30及びロアレール20の長手方向(摺動方向)に挿通するとともに、その先端部がアッパーレール30に取り付けられたギヤボックス50に連結されている。スクリューネジ40は、このギヤボックス50によりモータからの回転力が減速されて伝達されることで回転する。
【0016】
スクリューネジ40は、前側端部41及び後側端部42がアッパーレール30に固定された前側ブラケット70及び後側ブラケット80を利用して回動可能に支持された状態で、アッパーレール30に対してその長手方向に沿って配設されている。
【0017】
図2及び
図3(A)に示すように、前側ブラケット70は、鉄等の剛性が高い金属材料により、スクリューネジ40が挿通可能な2つの支持片(前側支持片72及び後側支持片73)が連結部71により連結されることで略コ字状に形成されている。前側支持片72には、真円状に開口する挿通穴72aが形成されている。後側支持片73は、下方が開口するように略U字状に形成されている。前側ブラケット70は、連結部71がアッパーレール30の上壁にリベットでかしめられることにより、当該アッパーレール30に固定される。
【0018】
図3(B)に示すように、前側支持片72における挿通穴72aの内周面とスクリューネジ40における前側端部41の外周面41aとの間には、ベアリング91が配置されている。このベアリング91は、ボールベアリングであって、内輪91aと外輪91bとが保持器によって保持された複数のボール等によって相対回転可能に連結されるように構成されている。ベアリング91は、内輪91aがスクリューネジ40の外周面41aに固定され、外輪91bが前側ブラケット70における挿通穴72aの内周面に固定されている。
【0019】
内輪91aは、スクリューネジ40の前側端部41に組み付けられる2つのワッシャ93a,93bによって挟持された状態で前側端部41に組み付けられるブッシュ94によってスラスト方向に押しつけられるようにして外周面41aに固定される。また、外輪91bは、外周面に形成される段部91cによって位置決めされるようにして挿通穴72aの内周面に固定される。なお、前側ブラケット70は、「一側支持部材」の一例に相当し、ベアリング91は、「一側ベアリング」の一例に相当し得る。また、外周面41aは、「一側外周面」の一例に相当し、挿通穴72aは、「一側挿通穴」の一例に相当し得る。
【0020】
図2及び
図4(A)に示すように、後側ブラケット80は、鉄等の剛性が高い金属材料により、スクリューネジ40が挿通可能な支持片81と、この支持片81に対して縁部からL字状に延出する延出片82とを有するように形成されている。支持片81には、真円状に開口する挿通穴81aが形成されている。後側ブラケット80は、延出片82がアッパーレール30の上壁にリベットでかしめられることにより、当該アッパーレール30に固定される。
【0021】
図4(B)に示すように、支持片81における挿通穴81aの内周面とスクリューネジ40における後側端部42の外周面42aとの間には、ベアリング92が配置されている。このベアリング92は、ボールベアリングであって、内輪92aと外輪92bとが保持器によって保持された複数のボール等によって相対回転可能に連結されるように構成されている。ベアリング92は、内輪92aがスクリューネジ40の外周面42aに固定され、外輪92bが後側ブラケット80における挿通穴81aの内周面に固定されている。
【0022】
内輪92aは、スクリューネジ40の後側端部42に組み付けられる2つのワッシャ95a,95bによって挟持された状態で後側端部42に組み付けられるナット96によってスラスト方向に押しつけられるようにして外周面42aに固定される。また、外輪92bは、外周面に形成される段部92cによって位置決めされるようにして挿通穴81aの内周面に固定される。なお、後側ブラケット80は、「他側支持部材」の一例に相当し、ベアリング92は、「他側ベアリング」の一例に相当し得る。また、外周面42aは、「他側外周面」の一例に相当し、挿通穴81aは、「他側挿通穴」の一例に相当し得る。
【0023】
スクリューネジ40の前側端部41と後側端部42との間には、ナット部材60が噛合(挿通螺合)されている。このナット部材60は、スクリューネジ40に螺合するナットと、ナットをロアレール20に固定するためのホルダーと、ナットをホルダーに対してボールフローティング支持するための複数のボール及びリテーナーとを備えるように構成されている。
【0024】
このようにスクリューネジ40に噛合しているナット部材60がロアレール20に固定されることで、ナット部材60は、回転するスクリューネジ40をその回転方向に応じてスライドさせるように機能する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るシートレール装置10では、アッパーレール30に固定されてスクリューネジ40が外周面41aにて挿通する挿通穴72aが形成される前側ブラケット70と、挿通穴72aの内周面と外周面41aとの間に介在するベアリング91と、が設けられる。また、アッパーレール30に固定されてスクリューネジ40が外周面42aにて挿通する挿通穴81aが形成される後側ブラケット80と、挿通穴81aの内周面と外周面42aとの間に介在するベアリング92と、が設けられる。そして、ベアリング91は、内輪91aが外周面41aに固定されるとともに外輪91bが挿通穴72aの内周面に固定され、ベアリング92は、内輪92aが外周面42aに固定されるとともに外輪92bが挿通穴81aの内周面に固定される。
【0026】
これにより、スクリューネジ40の前側端部41において、ベアリング91とスクリューネジ40とのスラスト方向のガタをなくすために、ベアリング91の内輪91aに対してスラスト方向から押し付けられるように接触するワッシャ93a,93bをスクリューネジ40に組み付ける構成であっても、内輪91aに作用するスラスト荷重によって摺動抵抗に相当する転がり摩擦抵抗が大きくなることもない。同様に、スクリューネジ40の後側端部42において、ベアリング92とスクリューネジ40とのスラスト方向のガタをなくすために、ベアリング92の内輪92aに対してスラスト方向から押し付けられるように接触するワッシャ95a,95bをスクリューネジ40に組み付ける構成であっても、内輪92aに作用するスラスト荷重によって摺動抵抗に相当する転がり摩擦抵抗が大きくなることもない。したがって、スクリューネジ40に作用する摺動抵抗を低減できることから、摺動抵抗に起因するうねり音が抑制されるだけでなく、スムーズにスクリューネジ40が回転できるためにスライド作動が円滑になり、シートレール装置10の商品性を向上させることができる。
【0027】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)ベアリングを用いてスクリューネジ40を支持する構成は、前側端部41及び後側端部42のそれぞれに採用されることに限らず、前側端部41のみに採用されてもよいし、後側端部42のみに採用されてもよい。後側端部42のみに採用される場合には、後側ブラケット80は、「一側支持部材」の一例に相当し、外周面42a及び挿通穴81aは、「一側外周面」及び「一側挿通穴」の一例に相当し、ベアリング92は、「一側ベアリング」の一例に相当し得る。
【0028】
(2)ベアリング91及びベアリング92として、ボールベアリングが採用されることに限らず、ローラベアリング等、他の種別のベアリングが採用されてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10…シートレール装置
20…ロアレール
30…アッパーレール
40…スクリューネジ
41…前側端部
41a…外周面(一側外周面)
42…後側端部
42a…外周面(他側外周面)
60…ナット部材
70…前側ブラケット(一側支持部材)
72a…挿通穴(一側挿通穴)
80…後側ブラケット(他側支持部材)
81a…挿通穴(他側挿通穴)
91…ベアリング(一側ベアリング)
91a…内輪
91b…外輪
92…ベアリング(他側ベアリング)
92a…内輪
92b…外輪