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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】摺動装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/02 20060101AFI20240703BHJP
   B05C 19/04 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B05C11/02
B05C19/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020080837
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2020182940
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019087139
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 崇之
(72)【発明者】
【氏名】西本 正弘
(72)【発明者】
【氏名】光島 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅樹
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-296368(JP,A)
【文献】特開2002-066467(JP,A)
【文献】特開2016-111345(JP,A)
【文献】特開2005-052741(JP,A)
【文献】特開2002-134388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B08B 1/00-3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な作用面を有する摺動体が複数設けられている摺動部、及び
摺動体を作用面に平行に規則的に摺動対象物としてのフィルムに対して移動させている間に、摺動部を、摺動体の作用面に平行に、かつ摺動体の移動方向とは異なる方向に規則的に摺動対象物に対して移動させる駆動機構を有し、
前記摺動部の摺動体を用いて摺動対象物の表面に摺動処理を行う櫂動装置。
【請求項2】
摺動体を作用面に平行に規則的に移動させる第1駆動機構、及び摺動部を作用面に平行に、且つ第1駆動機構による移動とは異なる方向に規則的に移動させる第2駆動機構を有する請求項1記載の摺動装置。
【請求項3】
摺動対象物を摺動体の作用面に対して平行に搬送する搬送手段を有する請求項1又は2記載の摺動装置。
【請求項4】
複数の摺動部が摺動対象物の搬送方向に並設されている請求項3記載の摺動装置。
【請求項5】
摺動体が、作用面を構成する表面材と表面材の内部に設けられた弾性材を備える請求項1~4のいずれかに記載の摺動装置。
【請求項6】
摺動対象物の表面における摺動体の作用面の動摩擦係数が25以下である請求項1~5のいずれかに記載の摺動装置。
【請求項7】
摺動処理の間に、摺動対象物内の所定の基準点上を摺動処理の間に通過した摺動体の作用面における該基準点の軌跡の長さの合計を1500mm~3200mmとすることができる請求項1~6のいずれかに記載の摺動装置。
【請求項8】
平坦な作用面を有する摺動体が複数設けられている摺動部、及び摺動体を作用面に平行に規則的に摺動対象物に対して移動させている間に、摺動部を、摺動体の作用面に平行に、かつ摺動体の移動方向とは異なる方向に規則的に摺動対象物に対して移動させる駆動機構を有し、
前記摺動部の摺動体を用いて摺動対象物の表面に摺動処理を行う摺動装置であって、摺動処理の前に摺動対象物の表面に摺動処理物を乾式で供給する摺動処理物投入手段を有する摺動装置。
【請求項9】
表面に凹部を有する摺動対象物の摺動処理を行なうための摺動装置であって、
平坦な作用面を有する摺動体が複数設けられている摺動部、及び摺動体を作用面に平行に規則的に摺動対象物に対して移動させている間に、摺動部を、摺動体の作用面に平行に、かつ摺動体の移動方向とは異なる方向に規則的に摺動対象物に対して移動させる駆動機構を有し、
前記摺動部の摺動体を用いて摺動対象物の表面に摺動処理を行う摺動装置。
【請求項10】
平坦な作用面を有する摺動体が複数設けられている摺動部、及び
摺動体を作用面に平行に規則的に摺動対象物に対して移動させている間に、摺動部を、摺動体の作用面に平行に、かつ摺動体の移動方向とは異なる方向に規則的に摺動対象物に対して移動させる駆動機構を有し、
各摺動体は、摺動体の中心軸の周りに回転するように構成され、前記摺動部は、摺動部の中心軸の周りに回転するように構成され、
前記摺動部の摺動体を用いて摺動対象物の表面に摺動処理を行う櫂動装置であって、
前記駆動装置は、摺動体を作用面に平行に規則的に移動させる第1駆動機構、及び摺動部を作用面に平行に、且つ第1駆動機構による移動とは異なる方向に規則的に移動させる第2駆動機構を有し、各摺動体は、前記第1駆動機構により摺動体の中心軸の周りに回転させられ、前記摺動部は、前記第2駆動機構により摺動部の中心軸の周りに回転させられる摺動装置
【請求項11】
摺動処理の前に、摺動処理物が供給された摺動対象物の表面に樹脂層が形成されるように構成されている請求項1~10のいずれかに記載の摺動装置。
【請求項12】
摺動処理の前に、摺動対象物の表面に供給された摺動処理物が前記樹脂層に移動するように樹脂層を剥離するように構成されている請求項11記載の摺動装置。
【請求項13】
摺動処理の前に摺動対象物の表面に摺動処理物が供給され、その摺動処理物がフィラーである請求項1~12のいずれかに記載の摺動装置。
【請求項14】
摺動対象物がフィルムである請求項8~13のいずれかに記載の摺動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動対象物の表面に対して摺動処理物の供給又は排除を行う摺動装置に関する。
【0002】
近年、フィルム表面の凹部に所定のフィラーを入れ込んだフィラー含有フィルムが様々な用途で求められている。例えば、フィルム基板に形成された所定パターンの凹部に電極用のペーストを供給し、過剰のペーストを拭い取り装置で除去することによりバイオセンサ用の電極が作製される(特許文献1)。この場合、凹部へのペーストの供給と、過剰のペーストの拭い取りには、それぞれブレードが使用される。
【0003】
一方、印刷装置ではインクをマスクプレートに展延するために一般にスキージが使用されており、印刷濃度が一様になるようにスキージを該スキージの長手方向と直交する方向(x方向)に往復運動させると共にスキージの長手方向(y方向)にも往復運動させ、これによりマスクプレートに対してスキージをジグザグに移動させることが提案されている(特許文献2)。
【0004】
このように、従来、基材表面の凹部又は孔部へフィラーを供給し、また過剰なフィラーを基材表面から除去するときには、ブレード又はスキージが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2002-506205号公報
【文献】特開平10―16183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表面に所定の凹部パターンが形成されているエンボス体にフィラーを供給するにあたり、供給が均一に行われるように特許文献2の記載に準じてスキージをジグザグに移動させることが考えられる。しかしながら、スキージをジグザグに移動させる場合、スキージの移動方向が変わるエンボス体表面の両側部では、フィラーが入った凹部の個数(N1)とエンボス体表面の凹部の個数(N0)との比率(%)(100×N1/N0)を十分に高めることが難しい。つまり、フィラーが不均一に供給された部分が発生してしまう。これに対しフィラーの投入量を多くすると無駄になるフィラーが増えるとともに、フィラー同士が過度に擦れ合うことで、フィラーの損傷や変形などが懸念される。
【0007】
このような従来技術の課題に対し、本発明は、エンボス体等のように表面に所定の凹部パターンが形成されているものを摺動対象物とし、該摺動対象物の表面の凹部にフィラー等の摺動処理物を供給する場合に、摺動対象物に摺動処理物の供給処理を行う領域(以下、摺動対象領域という)の凹部全体に一様に摺動処理物を供給すると共に、余分な摺動処理物を摺動対象物から排除できるようにし、かつ、摺動対象物に供給された摺動処理物のうち、最終的に摺動対象物から排除される余分な摺動処理物の量を低減させ、摺動処理物同士が過度にぶつかったり擦れ合ったりすることによる摺動処理物の損傷や変形を防止し、また、摺動対象物の表面が平坦な場合に該表面に摺動処理物を供給する場合には、摺動対象領域の表面全体に一様に摺動処理物を供給できるようにすることを課題とする。
【0008】
なお、本発明において摺動対象物の表面に摺動処理物を供給するとは、摺動対象物がエンボス体で、摺動処理物が粒状物である場合に、エンボス体の表面の凹部に一様に粒状物を入れることを含む。また、摺動処理物が液状物である場合に、摺動対象物の表面に該液状物の塗膜を均一な厚みで形成することも含む。また、本発明において摺動対象物の表面に対して摺動処理物を排除するとは、摺動対象物に粒状物が付着している場合に、摺動処理物として液状物を供給することで粒状物を排除することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、スキージが摺動対象物と線接触するのに対し、摺動対象物に対して平坦な作用面を有する摺動体を複数備えた摺動部を使用し、摺動体を第1方向に移動させつつ、摺動部を第2方向にも移動させると、摺動処理の間の摺動処理物の摺動対象物に対する相対的な移動量が増加し、摺動処理物が摺動対象物に一様に供給され、また余分な摺動処理物が摺動対象物から排除されること、摺動処理物を供給しない場合には摺動対象物の表面を清浄化できることに想到し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、平坦な作用面を有する摺動体が複数設けられている摺動部、及び
摺動体を作用面に平行に規則的に摺動対象物に対して移動させている間に、摺動部を、摺動体の作用面に平行に、かつ摺動体の移動方向とは異なる方向に規則的に摺動対象物に対して移動させる駆動機構を有し、
前記摺動部の摺動体を用いて摺動対象物の表面に摺動処理を行う摺動装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の摺動装置によれば、摺動対象物に対して摺動体を第1方向に移動させつつ、該摺動体が設けられている摺動部を第2方向へ移動させるので、摺動体をいずれか一方の方向だけに移動させる場合に比して、摺動体の作用面内の任意の点の摺動対象物に対する単位時間あたりの移動量が増え、摺動体によって摺動対象物上を移動する摺動処理物の移動量も増える。しかも、摺動体はスキージのように摺動対象物に線接触するのではなく、平坦面を摺動対象物に対する作用面とするので、この摺動装置に摺動処理物を供給すると、摺動処理物は摺動体の側面に押されて摺動対象物上を移動するだけでなく、摺動体の底面である作用面に捕獲されることによっても移動する。したがって、本発明の摺動装置によれば、摺動対象物上で摺動体によって移動する摺動処理物のそれ自体の量と移動量とが増加する。よって、摺動処理物を摺動対象領域に一様に供給し、余分な摺動処理物を摺動対象領域から排除することができ、摺動対象物を摺動処理物で処理するために必要とされる摺動処理物の供給量を低減させることができる。
【0012】
これにより、例えば、エンボス体を摺動対象物とし、フィラーを摺動処理物とした場合には、エンボス体の表面の凹部にフィラーを一様に入れることができ、凹部以外の部分に不用に付着しているフィラーを排除することができ、エンボス体の凹部にフィラーを一様に入れるために必要とされるフィラーのエンボス体への投入量を低減させることができる。
【0013】
また、例えば、摺動処理物として液状物を供給した場合には、液状物を用いた摺動対象物の拭き取りにより、摺動対象物における余分な付着物の除去を行うことが可能となる。摺動処理物を供給することなく摺動対象物を摺動処理した場合にも摺動対象物の表面を清浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る摺動装置を示す概略側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る摺動体の作用の説明図である。
図3】摺動体の概略拡大断面図である。
図4A】摺動対象物として使用するエンボス体の平面図である。
図4B図4Aに示したエンボス体の断面図である。
図5】エンボス体を摺動対象物とし、フィラーを摺動処理物とした場合の摺動体によるフィラーの供給作用の説明図である。
図6】エンボス体を摺動対象物とし、フィラーを摺動処理物とした場合の摺動体による余分なフィラーの排除作用の説明図である。
図7】摺動体の回転速度と摺動体の当たる長さとの関係図である。
図8A】摺動体の当たる長さとフィラーの充填率との関係図である。
図8B】摺動体の当たる長さと余剰率との関係図である。
図9】摺動体の回転速度と摺動体の当たる長さとの関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の摺動装置を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0016】
<摺動装置の概要>
図1は、本発明の一実施例の摺動装置1の概略側面図である。この摺動装置1は摺動部4を有しており、摺動部4は、表面に凹部を有するエンボス体Wを摺動対象物とし、フィラーFを摺動処理物とする。摺動部4は、必要に応じてエンボス体Wの搬送方向(矢印Z)に並設することが好ましい。
【0017】
摺動部4には、平坦な作用面6Aを有する複数の摺動体6が設けられており、作用面6Aとエンボス体Wの表面が当接するようにこれらの位置関係が調節される。
【0018】
摺動装置1は、摺動体6を第1方向に移動させつつ、摺動部4を、第1方向とは異なる第2方向にも移動させる駆動機構として、摺動体6を作用面6Aに平行に規則的に移動させる第1駆動機構20と、第1駆動機構20で摺動体6を移動させている間に、複数の摺動体6を含む摺動部4の全体を作用面6Aに平行に規則的に移動させる第2駆動機構30を有している。なお、第1駆動機構の駆動源と第2駆動機構の駆動源は共通でも別個でもよい。また、本発明の摺動装置では、上述のように摺動体及び摺動部を移動させる駆動機構として、一体の駆動機構を設けてもよい。
【0019】
摺動装置1は、エンボス体Wの表面W2の所定の部位にフィラーFを投入する処理物投入手段を有し、必要に応じて、エンボス体Wに投入されたフィラーFを摺動部4で展延する前にエンボス体W上にフィラーFをある程度広げておくスキージを有することができる。
【0020】
後述するように、この第1駆動機構20及び第2駆動機構30で動かされる摺動体6により、エンボス体WにはフィラーFが一様に供給され、エンボス体Wの凹部にフィラーが入り、余分なフィラーFがエンボス体Wの凹部を除く表面上から排除される。もしくは、供給されたフィラーFが高い割合でエンボス体の凹部W3に入り、排除されるフィラーFが生じないか、僅かとなる。したがって、本発明は、エンボス体の凹部にフィラーを充填する装置として有用である他、凹部以外の箇所に存在する余分なフィラーを排除する装置としても有用であり、排除したフィラーを回収して再利用する場合にも利用することができる。
【0021】
<摺動対象物>
本発明において、摺動対象物Wは摺動体6の作用面6Aと平行な面を有する各種プレート、フィルム、立体物等とすることができ、摺動装置1は、摺動対象物の種類、形態等に応じて摺動対象物Wの支持機構や搬送機構を適宜備えることができる。例えば、摺動対象物がプレートやフィルムなどの場合には、それを支持する台座や、搬送機構としての駆動装置、巻き取り装置などを備えることができる。
【0022】
図1、2に示した実施例の摺動装置1は、プレート状のエンボス体を摺動対象物Wとしている。エンボス体Wは、図4A図4Bに示すように、長尺のエンボス本体W1の表面W2に複数の凹部W3を有している。あるいは、エンボス体Wは、フィラーFが所定の位置で保持されるように表面凹凸が形成されたものでもよい。
【0023】
エンボス体Wは、可塑性又は硬化性を有する樹脂、金属等にて、その物性や機能を利用して形成することができる。エンボス体Wの厚み、幅及び長さは特に限定されない。例えば、エンボス体Wがプレー状であってもフィルム状であっても、エンボスWの幅(搬送方向に直交する方向の長さ)は、摺動処理後のエンボス体の用途に応じて10cm以上、30cm以上、又は50cm以上とすることができ、また、10m以下、5m以下、2m以下とすることができる。エンボス体Wがプレート状の場合、その長さ(搬送方向の長さ)は、例えば1m未満でもよく、1m以上でもよく、5m以上とすることもできる。エンボス体Wがフィルム状の場合には、長さは5m以上でもよく、100m以上でもよい。長さの上限に関しては、取り扱いの観点から、エンボス体を巻物(巻芯に巻いたもの)とする場合に、通常5000m以下、1000m以下、又は300m以下にすることができる。
【0024】
エンボス体Wの厚みは、搬送手段3でエンボス体Wを摺動部4に搬送し、エンボス体Wと摺動体6とを当接させるか又はこれらの距離を所定の大きさに維持して摺動処理を支障なく行える限り特に制限はない。
【0025】
エンボス体Wの材質は樹脂に限定されない。ガラスや金属の表面を加工したものであってもよく、種々の樹脂、ガラス又は金属から選択される複数種の材料の積層構造を有していてもよい。また、エンボス体Wを構成する個々の層又はエンボス体全体は、リジッドでも可撓性又は弾性を有していてもよく、常温(25℃±15℃)によって粘着性を発揮するものでもよい。したがって、エンボス体を形成する樹脂材料は、例えば、化学便覧(初版、応用編)の化学装置材料の有機材料、理化学便覧(第4版)、エンプラ技術連合会(http://enpla.jp/enpla/bunrui.html)に記載されている汎用プラスチック、エンジニアリングプラスチック、特殊エンジニアリングプラスチックの中から所望の物性等に応じた熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を適宜選択することができる。金属材料も同様に種々の汎用材料を使用することができる。一般に、エンボス体に摺動処理によってフィラーを充填するにあたり、エンボス体Wが可撓性や粘着性を有するとエンボス体の摺動対象領域の全体に一様にフィラーを充填することは困難になるが、本発明によれば、エンボス体Wが単層体であれ、積層体であれ、可撓性や粘着性を有していても摺動対象物とすることができる。
【0026】
エンボス体Wが複数種の層の積層構造を有する場合に、凹部W3等の表面凹凸を有する層とその下地になっている層の間には、粘着層やそれに類する樹脂層が介在してもよい。例えば、表面凹凸を有する層はリジッドな層としてもよく、弾性体又は可塑性体としてもよく、摺動処理時の温度が常温である場合に、常温で表面凹凸を保形することを可能とする高粘度の粘性体又は粘弾性体としてもよい。表面凹凸を有する層の下に位置する粘着層やそれに類する層は、表面凹凸を有する層と同等以上に高粘度とすることも、表面凹凸を有する層より低粘度とすることもでき、液状もしくはそれに近い粘性体とすることもできる。したがって、表面凹凸を有する層の下に位置する層の粘度は、一例として常温で0.1Pa・s~10Pa・sの範囲にある。この数値は、公知の振動粘度計、回転粘度計、粘弾性測定装置(例えば、TAインスツルメント製レオメータ)で計測される。本発明では、エンボス体Wがこのように種々の材質や物性を有する層の積層体であってもフィラーに変形や損傷を与えるような過度な負荷をかけることなく、フィラーを凹部に収容することができる。
【0027】
エンボスWの表面に凹部W3等の表面凹凸を形成するための加工方法はμm単位で寸法制御できるものであれば、特に限定はされない。エンボス体Wを構成する材料の種類に応じて切削加工、打ち抜き加工、エッチング、多孔層の積層、印刷などの手法を用いることができる。予め原盤に設けた凹凸を、エンボス体Wの表面をなす層に転写してもよい。例えば、エンボス体Wの表面が金属であれば切削加工により表面凹凸を形成することができる。また、エンボス体Wの表面凹凸を樹脂で形成する場合に、種々の印刷手法で表面凹凸を形成してもよく、表面凹凸又は孔を有する層を積層してもよい。
【0028】
エンボス本体W1に形成された凹部W3の開口面の形状及び深さは、エンボス体の用途、該凹部W3に入れるフィラーFの種類、大きさ等に応じて定められている。例えば、図5図6に示すように、一つの凹部W3の径及び深さが、球状のフィラーFの1個がちょうど入る大きさのものとすることができる。より具体的には、一つの凹部W3に、フィラーFを構成する1個の球状物が入るようにするには、摺動処理物Fの粒径は、下限については、可視光波長以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上であり、上限については、一例として200μm以下とすることができ、大きさのバラツキを少なくするために好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下とすることができ、この場合に、凹部W3の開口径を粒径の好ましくは1倍以上1.5倍以下、より好ましくは1倍以上1.2倍以下とすることができる。
【0029】
一つの凹部W3に1個の球状物が入るようにするために、凹部W3の開口形状と球状物の形状は、一致していてもよく、一致していなくともよい。凹部W3の開口形状と球状物の形状に相似性や類似点があることが好ましい。例えば、凹部W3の開口形状が1:1.2の比の辺からなる長方形であるとき、球状物の最大径が凹部W3の短辺である1と同じであれば適度な余裕を持って収容されることになる。また、エンボス本体W1の材質が樹脂などであり、変形を許容できるものである場合には、凹部W3の開口形状が球状物と一致し、大きさが等倍であっても収容できることになる。
【0030】
一方、凹部W3の開口径を1個のフィラーFの粒径よりも大きくし、1つの凹部W3に複数のフィラーを収容させてもよい。例えば、フィラーFの表面に微小なフィラーが予め付着している場合に、表面の微小なフィラーと共にフィラーFが凹部W3に入るようにする。この場合、微小なフィラーが付着したフィラーFの大きさと開口径に上述の関係が当てはまる。
【0031】
エンボス体Wの凹部W3の配列パターンは、特に限定されない。例えば、所定の繰り返しパターンを有する規則的配列とすることができる。より具体的には、例えば図4Aに示すように6方格子とすることができる。この他、正方格子、長方格子、斜方格子等の格子配列としてもよい。また、異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。フィラーが所定間隔で直線状に並んだフィラー列を所定の間隔で並列させてもよい。また、繰り返しパターンは連続して存在してもよく、繰り返しパターンが形成されている領域が間隔を空けて繰り返されていてもよい。一定の繰り返しパターンがあるとき、それと分かるマーキングや微小な変化(例えば、開口部の形状がフィラーの収容に影響しない程度に異なる、など)があると、製品管理の都合の上で、好ましくなる場合もある。
【0032】
なお、本発明において摺動対象物は、上述の表面凹凸を有するものに限られず、微細な表面、平坦面、傷付きやすい表面等を有するものであってもよい。
【0033】
<摺動処理物>
本発明において使用される摺動処理物は、摺動処理物を供給した摺動対象物の用途等に応じて、粉体、粒状体等のフィラー、溶剤等の液体等から適宜選択される。液体を摺動処理物とすることにより摺動対象物の表面を清浄化することができる。なお、フィラーを摺動処理物とする場合に、フィラーは液体と混合していてもよいが、ペースト状でないことが好ましい。
【0034】
図1に示した実施例の摺動装置1では、摺動処理物としてフィラーFが使用される。フィラーFを摺動処理物とする場合、フィラーには一又は複数種の粉状物、粒状物を含めることができる。個々の粉状物、粒状物は独立していてもよく、集合した凝集体であってもよい。また、フィラーFはその表面に、より小さいフィラーが付着したものでもよく、該表面がより小さいフィラーで被覆されているものでもよい。凝集体は摺動体6により解砕されるものでもよく、また凹部W3が凝集体を収容できる大きさであれば、凝集体のまま供給されてもよい。
【0035】
フィラーFの形成素材は、フィラーFを供給するエンボス体W又はフィラーFを供給するエンボス体Wから製造される物品の用途に応じて適宜選択することができ、例えば、無機系フィラー(金属、金属酸化物、金属窒化物など)、有機系フィラー(樹脂、ゴムなど)、又は有機系材料と無機系材料からなる有機無機コンポジット材料からなるコンポジットフィラーとすることができる。コンポジットフィラーにおいては、有機材料と無機材料が混在してもよく、有機材料の表面が無機材料で被覆されていてもよく、無機材料の表面が有機材料で被覆されていてもよい。有機材料と無機材料が複合的に存在していてもよい。また、必要に応じて、フィラーFとして2種以上のフィラーを併用することができる。なお、フィラーFの表面は平滑であってもよく、平滑でなくともよい。例えば、微小な隆起が形成されていてもよい。
【0036】
より具体的には、エンボス体Wを光学フィルムや艶消しフィルムとする場合には、フィラーFとしてシリカフィラー、酸化チタンフィラー、スチレンフィラー、アクリルフィラー、メラミンフィラーや種々のチタン酸塩等を使用することができる。エンボス体に遮光性や色味をつけるためにフィラーFが顔料と同様の材料であってもよい。
【0037】
エンボス体Wをコンデンサー用フィルムとする場合には、フィラーFとして酸化チタン、チタン酸マグネシウム、チタン酸亜鉛、チタン酸ビスマス、酸化ランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛及びこれらの混合物等を使用することができる。
【0038】
エンボス体Wを接着フィルムとする場合にはフィラーFとしてポリマー系のゴム、シリコーンゴム等を含有させることができる。この場合、例えば、フィラーFにスペーサーの働きをさせることができる。
【0039】
また、フィラーFは電気的絶縁材料(絶縁体)であってもよく、その反対に導電材料(導体)であってもよく、半導体の性質を示すものであってもよい。フィラーFとして異なる働きや相反する働きをする2種以上を併用することもできる。
【0040】
なお、本実施例の摺動装置においてフィラーFはエンボス体Wの表面凹凸により定まる所定の部位(例えば、凹部W3の開口部等)に乾式で収容される。この点でフィラーFは、スクリーン印刷用の塗料やハンダペーストのように、顔料又はハンダのような粒子と液状又はペースト状の樹脂バインダーとが混在したものと区別される。また、粉末を用いた摺動対象物の研磨装置に対し、本発明の摺動装置は、フィラーに対しても摺動対象物(エンボス体)Wに対してもダメージを負わさない点で異なる。したがって、本発明によれば、フィラー及び摺動対象物の少なくとも一方を再利用することができ、再利用したフィラーをエンボス体の凹部に供給することも可能となる。
【0041】
フィラーFを供給したエンボス体Wの用途は上述の例に限定されず、摺動装置1では種々の用途のエンボス体を取り扱うことができる。
【0042】
フィラーFの大きさは、フィラーFを供給するエンボス体Wの用途に応じて適宜定めることができる。例えばエンボス体Wの凹部W3にフィラーFが一様に入るようにするためには、エンボス体Wの1個の凹部W3に1個のフィラーが入る大きさとすることが好ましい。一方、必要に応じて、1個の凹部W3に複数個のフィラーが入る大きさとしてもよい。
【0043】
なお、フィラーの大きさは、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。粒度分布測定装置の一例として湿式フロー式粒径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。一方、フィラーをエンボス体Wの凹部W3に供給した後にフィラーの粒径を求める方法としては、金属顕微鏡等の光学顕微鏡又はSEMなどの電子顕微鏡により平面視又は断面視で観察して求めることができる。この場合、フィラーの粒径を測定するサンプル数を200以上とすることが望ましい。また、フィラーの形状が球形でない場合、最大長または球形に模した形状の直径をフィラーの粒径とすることができる。
【0044】
エンボス体Wの凹部W3等の表面凹凸により定まる所定の部位にフィラーが均等に入るようにする点からは、フィラーの粒径は、バラツキが小さい方が好ましく、特にフィラーの粒径のバラツキのCV値(標準偏差/平均)は、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0045】
フィラーの粒径のバラツキは上述の湿式フロー式粒径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。この場合、フィラー個数は1000個以上、好ましくは3000個以上、より好ましくは5000個以上を測定すれば正確にフィラー単体のバラツキを把握することができる。フィラーがエンボス体に配置されている場合は、上記平均粒径の測定と同様に平面画像又は断面画像により求めることができる。
【0046】
フィラーの形状は、エンボス体の用途に応じて、球形、楕円球、柱状、針状、それらの組み合わせ等から適宜選択することができる。エンボス体Wの凹部W3にフィラーが均等に精確に入るようにする点からは、フィラーは球形が好ましく、特に略真球であることが好ましい。
【0047】
ここで、略真球とは、次式で算出される真球度が70~100であることをいう。
真球度=〔1-(So-Si)/So〕×100
【0048】
上記式中、Soはフィラーの平面画像における該フィラーの外接円の面積であり、Siはフィラーの平面画像における該フィラーの内接円の面積である。
【0049】
この算出方法では、フィラーの画像をフィラーが入ったエンボス体の平面視および断面視で撮り、それぞれの画像において任意のフィラー100個以上(好ましくは200個以上)の外接円の面積と内接円の面積を計測し、外接円の面積の平均値と内接円の面積の平均値を求め、上述のSo、Siとすることが好ましい。また、平面視及び断面視のいずれにおいても、真球度が上記の範囲内であることが好ましい。平面視及び断面視の真球度の差は20以内であることが好ましく、より好ましくは10以内である。なお、フィラー単体の真球度は、湿式フロー式粒径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることもできる。
【0050】
<摺動対象物の搬送手段>
図1に示した実施例の摺動装置1は、摺動対象物とするエンボス体Wを支持する支持台2と、エンボス体Wの表面W2が摺動体6の作用面6Aに対して平行になるようにエンボス体Wを搬送する搬送手段3を有している。
【0051】
支持台2は、図示したようにエンボス体Wを載置する平坦な上面を備え、搬送中のエンボス体Wの表面を摺動体6の作用面6Aに当接させるか、又は所定の間隙をあけて対向させる。
【0052】
搬送手段3は、図1に示すように、支持台2に載置されたプレート状のエンボス体を、少なくともエンボス体WにフィラーFが供給される位置から摺動部4による処理が完了する位置まで、ローラーコンベアなどにより枚葉式に搬送する。この場合、プレート状のエンボス体が断続的に搬送されるようにしてもよい。一方、エンボス体が長尺のフィルム状で巻物になっている場合には、供給ロールと巻き取りロールを用いてロールツーロール方式でエンボス体を搬送してもよい。
【0053】
エンボス体W上の所定の部位にフィラーFを投入する処理物投入手段(図示せず)としては、エンボス体W上へフィラーFの単位時間当たりの投入量を調整できるものが好ましい。
【0054】
<スキージ>
本発明においてスキージは、摺動装置の用途、摺動処理物Fの形態、処理物投入手段による摺動処理物Fの投入態様等に応じて、必要により設けられる。例えば、フィラーが処理物投入手段によりエンボス体Wの全幅に投入されず、中央部に投入される場合には、スキージを投入位置と摺動部4との間に設けることができる。
【0055】
スキージの材質としては、例えば、ゴム、エンプラ、金属、繊維などを使用することができ、非金属材料の場合の硬度はショアA5~100とすることができる。また、エンボス体の搬送方向のスキージの長さを1~50mmとし、スキージの先端面の粗度をRa0.05~100とし、スキージにかける押圧を0.001~1kgf/cmとすることができる。
【0056】
一方、本発明の摺動装置を、摺動対象物に付着している不用な摺動処理物の排除や払拭のために使用する場合には、スキージは不要となる。
【0057】
<摺動部>
摺動部4は、平坦な作用面6Aを有する摺動体6を備えている。摺動体6は、一例として図3に示したように円柱状の外形を有することができる。同図の摺動体6は、その側面と底面である作用面6Aとを構成する表面材6Bと、表面材6Bの内部を占める弾性材6Cと、上面材6Dから形成されている。なお、本発明において摺動体6の作用面6Aの形状は円形に限らず、多角形であってもよい。フィラーにかかる負荷を均等にする点からは、作用面6Aとなる底面と側面との角6aが丸められ、摺動体6の周囲のフィラーが滑らかに作用面6Aに入り込めるようにすること等が好ましい。
【0058】
また、図1に示した摺動装置1では、摺動体6の作用面6Aがエンボス体Wの表面に当接するが、本発明において、作用面6Aと摺動対象物との距離は適宜調整することができる。
【0059】
表面材6Bは、フッ素樹脂等で形成されたフィルム又は繊維体により有底円筒形状に形成されたもので、その円形底面が平坦な作用面6Aとなっている。摺動対象物の表面における表面材6Bの動摩擦係数の好ましい範囲は、フィラーの材質、大きさ等の摺動処理物の性状と、エンボス体の材質、凹部の大きさ等の摺動対象物の性状との組み合わせの関係で摺動処理物の動きやすさが影響を受けるので、一例として好ましくは25以下、より好ましくは2以下であり、1以上が好ましい。なお、動摩擦係数は、新東科学株式会社製表面性測定機、TYPE:14(HEIDON)を使用し、荷重100g、移動速度1000mm/minで測定することができる。JIS K7125に準拠し、移動速度100mm/minで測定してもよい。
【0060】
図1に示した摺動装置1において摺動体6の弾性材6C(図3)としては、スポンジが使用されている。弾性材6Cが摺動体6の内部を占めることにより、作用面6Aとエンボス体Wとの間に挟持されたフィラーFに不用な力が加わり、フィラーFに変形、割れ、剥がれ、傷などの表面へのダメージ等が生じることを防止できる。なお、本発明では、弾性材6Cとして、表面材6Bをその作用面6A側に付勢するバネ材を設けても良い。
【0061】
一方、上面材6Dは第1駆動機構20と接続している。
【0062】
本発明の摺動装置において摺動部4は一つ設けても複数設けてもよいが、摺動対象物における摺動処理物の展延性を向上させる点から、摺動対象物の搬送方向に複数個の摺動部を並設することが好ましく、例えば、エンボス体Wの搬送方向に2つの摺動部4を並設することができる。この場合、隣接する摺動部4同士の距離は摺動対象物に摺動処理物を展延させるべき面積や処理速度等に応じて適宜調整することができる。
【0063】
また、個々の摺動部4に複数個の摺動体6を設けるにあたり、例えば、一つの摺動部4に3~6個の摺動体6を三角格子状、正方格子状、放射状等に設けることができる。この場合、隣接する摺動体6同士の距離はフィラーの材質によって調整すればよく、長ければフィラーにかかる負荷が連続的ではなくなるために好ましく、短ければ展延が連続的になるので展延性の向上が見込める。展延性の向上を重視するのであれば、隣接する摺動体6同士の距離は短い方がよく、例えば、それらの最近接距離を、好ましくは2~500mm、より好ましくは2~300mm、さらに好ましくは10~50mmとすることができる。
【0064】
本発明において第1駆動機構20による摺動体6の移動態様と第2駆動機構30による摺動部4の移動態様は、それぞれ移動方向を規則的に変える態様とし、特に滑らかにかつ規則的に変える態様が好ましい。例えば、円、楕円、レムニスケート、サイクロイド、正葉曲線等の種々の滑らかに閉じた曲線上の周回運動、又は円運動などとすることができる。これらの移動態様は、カム機構、ギア機構、回転機構等を用いて構成することができる。摺動体6及び摺動部4がいずれの移動態様をとる場合でも、図2に示すように、摺動体の作用面6A内の任意の点Pが、第1駆動機構20によって該作用面6A内の破線の軌跡を速度Vxで移動し、第2駆動機構30によって作用面6Aを含む平面内で2点鎖線の軌跡を速度Vyで移動することにより、この点Pの摺動対象物Wの表面における単位時間あたりの移動量は、第1駆動機構20及び第2駆動機構30のいずれか一方で点Pを移動させる場合に比して大きくなる。したがって、摺動対象物W上で摺動処理物Fを十分に展延させることが可能となる。特に、点Pが直線的な往復運動をする場合には移動方向が急激に屈曲する部分で摺動処理物の展延が行われず、フィラーFが、摺動対象領域からはじき出されて無駄に消費されたり、周囲の汚染の原因になったりする場合が生じるが、点Pの移動方向を滑らかに曲線的に変化させると展延性がさらに良好となり、フィラーFが摺動対象領域からはじき出されることを防止できる。また、搬送手段3により、上述の点Pは、摺動対象物Wに対する移動量がさらに大きくなる。したがって、摺動対象物Wにおける摺動処理物Fの展延性がさらに向上する。これに対し、この点Pの移動量が小さすぎると摺動対象物W上で摺動処理物Fを十分に展延させることができない。また、搬送手段3による移動速度が大きすぎる場合には、摺動処理時間を十分に確保することができず、これによっても展延性が低下する。したがって、搬送手段3による摺動対象物Wの移動速度は、摺動体6と摺動部4の移動速度に応じて適宜定めることが好ましい。
【0065】
上述のように、作用面6A内の任意の点Pは、第1駆動機構20及び第2駆動機構30の作用により単位時間あたりの移動量が大きくなるが、このことは摺動対象物W内の基準点に対応する作用面6A内の点の相対的な移動量が大きくなることを意味する。したがって、本発明によれば、摺動処理物Fを摺動対象物Wに一様に供給し、摺動対象物Wがエンボス体の場合には、その凹部に摺動処理物Fが入る割合が高くなり、また、余分な摺動処理物Fを摺動対象物Wから排除することが可能となる。
【0066】
<摺動装置の用途>
本発明の摺動装置は、エンボス体等の凹部を有する摺動対象物Wの該凹部へ乾式でフィラーを供給する装置、フィラーを供給したエンボス体から余分なフィラーを排除する装置、また、任意の摺動対象物Wが有する平坦面に溶剤等の液状物等を供給し、払拭する装置、摺動対象物Wの表面を清浄化する装置等として使用することができる。
【0067】
<摺動装置の使用方法>
本発明の摺動装置の使用方法としては、当該用途に応じて摺動対象物Wと摺動処理物Fを適宜選択し、摺動装置にセットする。また、第1駆動機構20及び第2駆動機構30の駆動速度を調整する。さらに、この摺動装置1を用いた摺動処理の間に摺動対象物Wが搬送手段3で搬送される場合には、その搬送速度も調整する。
【0068】
例えば、エンボス体Wを摺動対象物とし、フィラーFを摺動処理物とし、エンボス体Wの表面に規則的に配置されているエンボス体の凹部W3にフィラーFを一様に入れていく場合、まず、エンボス体Wを支持台2上に載置し、支持台2を搬送手段3にセットし、搬送手段3と、摺動部4の第1の駆動機構20と第2の駆動機構30をそれぞれ所定の速さで駆動する。エンボス体Wがフィルムの場合には、上述したように巻き取り機構等を用いることが好ましい。
【0069】
次に、フィラーFを所定の投入速度でエンボス体Wの特定の部位に供給する。供給量は、エンボス体Wの凹部W3の個数の何%にフィラーFを充填するか等の摺動処理の目的に応じて定めることができるが、通常、エンボス体の凹部の個数に対してフィラー投入個数が250%以下であることが好ましく、200%以下であることがより好ましく、150%以下であることがさらに好ましい。供給量の下限は100%を下回っていてもよい。摺動処理の目的によっては、凹部W3の個数よりもフィラー個数が少ない場合もあるためである。なお、エンボス体の凹部の個数は、後述する残存率における凹部の個数と同様に求めることができる。
【0070】
投入部位の下流に、必要に応じてスキージを設けた場合には、スキージを通過することにより、フィラーFはエンボス体W上である程度広げられる。
【0071】
次に、エンボス体W上のフィラーFが第1の摺動部4(上流側の摺動部)に達すると、第1駆動機構20及び第2駆動機構30により摺動体6が移動することで、図5に示すように摺動体6の側面に当接したフィラーFが、摺動体6の作用面6Aとエンボス体Wとの間に入り込み、該作用面6Aに捕獲されたフィラーFが摺動体6の移動方向に移動し、エンボス体Wの凹部W3に入り込む。フィラーFに最初に接した摺動体6によってフィラーFが凹部W3に入らなかった場合でも、その摺動体6に隣接した摺動体6がフィラーFに接し、再度フィラーFは凹部W3に誘導される。
【0072】
本発明によれば、第1の駆動装置と第2の駆動装置を使用することにより、摺動体6の作用面6A内の任意の点Pの単位時間あたりの移動量を長くすることができ、特に摺動部4に複数の摺動体6を設け、加えて、摺動装置に複数の摺動部4を並設することにより、エンボス体W上のフィラーFは摺動体6による摺動処理でエンボス体W上に一様に供給され、エンボス体の凹部W3に入る効率も向上する。したがって、本発明によれば、エンボス体Wの凹部W3の個数に対する、該凹部W3に充填されているフィラーFの個数の割合(充填率)を、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、特に99.5%以上とすることができる。充填率は後述するように残存率と同様の手法で求めることができる。なお、上述したように、本発明は必ずしも充填率を100%に近似させることに限定されるものではない。
【0073】
また、従来の印刷装置等のスキージの上流にはフィラーFの溜まりができるのに対し、本発明の摺動装置1の摺動体6を使用すると摺動体6の周囲にフィラーの溜まりはできにくく、フィラーの溜まりでフィラー同士が擦れ合ってフィラーが損傷することも防止できる。
【0074】
摺動体6による摺動処理において、図6に示すように、摺動体6によってフィラーFがエンボス体W上を移動した場合に、移動先の凹部W3に既にフィラーFが入っていたときには、フィラーFは凹部W3に押し込まれることなく、エンボス体Wの表面から排除される。この場合、摺動装置1は、余剰のフィラーの排除装置として機能することになる。なお、本発明においては、別工程として不要なフィラーの排除を行う他の装置を追加してもよい。
【0075】
これに関し、本発明の装置によれば、エンボス体Wの摺動対象領域の単位面積において、凹部W3に入ることなくエンボス体W上に残存しているフィラーの個数と、該単位面積における凹部W3の個数との割合(残存率)を好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下にすることができる。
【0076】
残存率は、エンボス体Wの摺動対象領域において1辺が200μm以上の矩形領域を5箇所以上、好ましくは20箇所以上抜き取り、その面積の合計を1mm2以上、好ましくは4mm2以上とし、この面積でエンボス体Wの凹部W3の個数と、凹部W3に入らずエンボス体W上に残存しているフィラーの個数を測定することで求めることが好ましい。なお、エンボス体Wの全面積が著しく大きい場合には、その面積の1%の領域を任意に10箇所以上抜き取り、抜き取った箇所で上述の残存率を測定することが好ましい。前述の充填率も同様の手法により、凹部W3の個数とフィラーが充填されている凹部の個数とを計測することで求めることができる。なお、予め凹部W3の個数を計測し、単位面積当たりの凹部W3の個数密度を求めておいてもよい。
【0077】
単位面積あたりの凹部W3の個数、フィラーが充填されている凹部W3の個数及び凹部W3に入らずにエンボス体上に残存しているフィラーの個数は、金属顕微鏡等の光学顕微鏡、SEMなどの電子顕微鏡、その他公知の観察手段により測定することができる。公知の画像解析ソフト(例えば、WinROOF(三谷商事株式会社)、A像くん(登録商標)(旭化成エンジニアリング株式会社)など)を用いて簡易的に求めてもよい。
【0078】
また、エンボス体Wの摺動対象領域の単位面積あたりに供給したフィラーFの個数と該単位面積あたりの凹部W3の個数との割合(供給率)と、該単位面積において凹部W3に入ったフィラーの個数と、該単位面積における凹部W3の個数との割合(充填率)との差を余剰率(余剰率=供給率-充填率)とした場合に、余剰率を、好ましくは160%以下、より好ましくは105%以下、更に好ましくは50%以下にすることができる。
【0079】
第1駆動機構20による摺動体6の移動速度、第2駆動機構30による摺動体6の移動速度、及び搬送手段3によるエンボス体Wの搬送速度は、当該エンボス体の凹部の大きさ、形状、分布密度や、フィラーFの最大径、性状などに応じて適宜選択する。
【0080】
<摺動処理の後処理>
フィラーをエンボス体の表面の凹部に供給した後に、フィラーの配置状態の保護等のために、フィラーを供給したエンボス体の表面に硬化性液状物を塗布し、硬化させるなどしてエンボス体の表面に樹脂層を設けることもできる。フィラーを供給したエンボス体の表面に樹脂フィルムを直接貼り合せることで樹脂層を設けてもよい。更に、フィラーを供給したエンボス体の表面に設けた樹脂層もしくは樹脂フィルムを剥離し、フィラーをエンボス体とは別体の樹脂層もしくは樹脂フィルム等に移動させることもできる。この硬化性液状物や樹脂フィルムとしては、公知の接着材や粘着材で用いられているものを使用することができる。硬化性液状物や樹脂フィルムには、予め、フィラーとは別のフィラーよりも小さい微小フィラーを含めておいてもよい。
【0081】
フィラーを供給した後にエンボス体の表面に設ける層、又はエンボス体の表面に供給したフィラーを別の材料に移動させる場合の移動先の材料には、樹脂以外の材料を含めることもできる。この樹脂以外の材料は、エンボス体を積層構造とする場合の各層の材料と同様に種々の材料から適宜選択することができる。
【0082】
フィラーをエンボス体に供給した後、摺動対象物として溶剤を吹き付ける摺動処理を行い、エンボス体の凹部以外に存在する余分なフィラーを除去してもよい。本発明によれば、このような摺動処理を、フィラーの配置状態が保持されるように行うことができる。
【0083】
なお、フィラーをエンボス体に供給した後の上述の処理は、エンボス体Wの表面凹凸の加工方法や表面材料によらず行うことができる。したがって、エンボス体の表面凹凸が、表面凹凸を有する層又は孔を有する層のいずれの積層により形成されている場合にも適用できる。また、表面凹凸を有する層又は孔を有する層が、エンボス体を積層構造とする場合の各層の材料と同様に種々の材料で形成されている場合に適用することができる。例えば、エンボス体Wの表面が孔の空いた金属層で形成されている場合に、その孔に入り込んだフィラーの配置状態の保護のため、またその孔に入り込んだフィラーを別の材料に移動させるために上述の処理を行うことができる。
【0084】
本発明は、本発明の摺動装置を備える限り、種々の周辺装置を備えることができる。例えば、摺動対象物Wがプレート状エンボス体である場合に、それらを連続的に摺動装置に送り出すコンベア式の搬送機構や固定機構、摺動処理後のプレート状エンボス体を所定の場所に回収する回収装置を備えることができ、また、摺動対象物Wがフィルム状エンボス体である場合、巻物にしたフィルム状エンボス体を摺動装置に送り出す機構や摺動処理後のフィルム状エンボス体を巻き取る巻き取り機構を備えることができる。
【0085】
フィラーを供給したエンボス体の表面に、フィラーの配置状態の保護等を担う上述の樹脂層又は樹脂フィルムを設ける機構等も設けることができる。また、摺動装置内にフィラーの充填状態、残存状態、又は展延したフィラーの存在状態を確認する検査機構(カメラやセンシング装置)が組み込まれている装置も本発明は包含する。
【実施例
【0086】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
(1)装置構成
摺動装置1として、摺動部4を2つ有し、それらを薄膜状のエンボス体Wの搬送方向(矢印Z)に並設した装置を作製した。この場合、各摺動体6の作用面6A及び表面材6Bをポリテトラフルオロエチレンの有底筒状成型体(厚さ20mm)から形成し、その中に弾性材6Cとしてスポンジを入れた。摺動体6の外形は円柱状で、作用面6Aの径は80mmとした。1つの摺動部4には摺動体6を5個設け(摺動体6間の最近接距離14mm、それらを摺動部4の中心軸の周りに放射状に配置し、第1駆動機構20で各摺動体6を中心軸の周りに回転させ、第2駆動機構30で摺動部4を、該摺動部4の中心軸の周りに回転させた。各摺動体6の中心軸と摺動部4の中心軸の距離を80mmとし、摺動対象領域の幅を一つの摺動部4の幅とした。また、摺動対象物Wの搬送方向に並べた2つの摺動部4の中心軸同士の距離は300mmとした。
【0087】
摺動対象物Wは、PETフィルム(厚さ50μm)上に、積層されたアクリレート樹脂(M208、東亞合成株式会社)100質量部、光重合開始剤(IRGACURE184、BASF)2質量部を含有する光硬化樹脂組成物を光硬化させることにより形成された厚さ30μmのフィルムに、開口径6μm、深さ7μmの円筒型の凹みが中心間距離10μmにて6方格子配列しているエンボス体とし、その巻物(長さ100m以上)を使用した。摺動対象物Wの幅(即ち、フィルム幅)は、摺動対象領域の幅よりも十分に広く、摺動対象領域のフィルム幅方向の中心がフィルム幅の中心になるように設置した。
【0088】
摺動処理物Fは、ポリメタクリル酸メチル系架橋物から形成された粒径5μmのフィラー(株式会社日本触媒製エポスターMA1006を分級したもの)とした。
【0089】
(2)摺動体の当たる長さと充填率及び余剰率
上述の摺動装置において、余剰率を低減させるベストモードの摺動処理条件を探るため、第1駆動機構20による摺動体6の回転速度を20~100rpm、第2駆動機構30による摺動部4の回転速度を20~100rpmの範囲で変化させ、搬送手段3によるラインスピードを1、2又は3m/minとした摺動試験を行った。
【0090】
各摺動試験において、摺動体6の当たる長さをシミュレーションにより算出した。ここで、「摺動体の当たる長さ」とは、摺動対象物W内の所定の基準点上を摺動処理の間に通過した摺動体6の作用面6Aにおける該基準点の軌跡の長さの合計をいい、複数の摺動体6の作用面6Aが基準点を通過した場合には、各作用面における基準点の軌跡の長さを合計した長さをいう。本実施例では、エンボス体の幅の中心線上の点を基準点とし、該基準点が、上流側の摺動部4に到達後、下流側の摺動部4から離れるまでの摺動処理の間に、基準点上を通過した作用面6Aにおける該基準点の軌跡の長さの合計である。
摺動体6の回転速度(rpm)と摺動体6の当たる長さとの関係を図7に示す。
【0091】
一方、エンボス体Wの摺動対象領域の単位面積当たりのフィラーFの供給個数を、該単位面積における凹部W3の個数の1.4倍以上1.5倍以下になるように投入した場合の各摺動試験におけるフィラーの充填率を測定した。
【0092】
ここで、充填率とは、エンボス体Wの摺動対象領域の単位面積における、エンボス体の凹部に入ったフィラーの個数N1と、エンボス体の凹部の個数N0との割合(%)(100×N1/N0)をいう。
【0093】
充填率としては、エンボス体Wを搬送方向に100m以上摺動処理した後の該エンボス体Wの摺動対象領域の中央部領域(摺動対象領域の幅方向中心部の60%)において1mm×1mmの任意の領域を10箇所抽出し、各領域で凹部W3に入っている粒子数を計測して算出した。また、同領域において凹部W3に入らずエンボス体W上に残存している粒子数を計測して残存率を算出した。
【0094】
摺動体の当たる長さとフィラーの充填率との関係を図8Aに示す。
図8Aから、この試験系では、摺動体の当たる長さが1000~3200mmの範囲にあると充填率が97%以上となり、向上していることがわかる。
残存率はいずれの計測箇所においても2%以下であった。
【0095】
図8Aで充填率が97%以上となったフィラー充填後エンボス体について、エンボス体の摺動処理開始点、該開始点から1.5m下流側の点、該開始点から10m下流の点、以降下流側に10mおきに開始点から100mまでの点(合計12点)において、充填率と残存率を計測したところ、いずれもの充填率は97%以上であり、残存率が2%以下であることを確認した。
【0096】
また、エンボス体Wの摺動対象領域の単位面積当たりのフィラーFの供給個数を、該単位面積におけるエンボス体Wの凹部W3の個数の1.4倍以上1.5倍以下になるように投入した場合の各摺動試験におけるフィラーの余剰率を測定した。ここで、余剰率とは、エンボス体Wの摺動対象領域の単位面積あたりに供給したフィラーFの個数と該単位面積あたりの凹部W3の個数との割合を供給率Ns(%)とし、該単位面積において凹部W3に入ったフィラーの個数N1と、該単位面積における凹部W3の個数N0との割合を充填率(%)(100×N1/N0)とした場合に、余剰率=供給率-充填率で算出される数値である。摺動体の当たる長さとフィラーの余剰率との関係を図8Bに示す。
【0097】
図8Bから、この試験系では、摺動体の当たる長さが1000mm以上では余剰率が42%以下に低減し、フィラーFの供給量を節減できることがわかる。
【0098】
さらに、上述の摺動試験において、第1駆動機構20における摺動体の回転速度と摺動体の当たる長さとの関係を、ラインスピードごとに図9に示した。図8A及び図8Bによれば、今回実施した摺動処理物と摺動対象物との関係においては、摺動体の当たる長さを概略1500mm~3200mm(グレーの塗り潰し領域)にすることが好ましいことがわかるので、充填率を100%に近づけ、余剰率を低減させるには、ラインスピードを摺動体の回転速度に応じて所定の範囲に設定するのが好ましいことがわかる。なお、摺動体の回転速度と摺動体の当たる長さとラインスピードのそれぞれの好ましい範囲は、摺動対象物と摺動処理物との組み合わせや摺動処理の目的によって異なり、本発明は本実施例の範囲に限定されない。
【0099】
参考のため、実施例1の装置構成において、2つの摺動部4に代えてスキージ(形成材料:ウレタン、長さ(摺動対象物Wの搬送方向と垂直な方向の長さ)120mm、厚み10mm)を、該スキージの下辺が摺動対象物Wに接するように設置し(設置角度70°)、ラインスピード2m/min、押圧0.1MPaとし、実施例1と同様にフィラーの充填率と余剰率を測定した。この場合、フィラーの供給量を徐々に増加させ、供給量ごとに充填率と余剰率を測定し、充填率が97%以上になる供給量を求めた。この供給量は、実施例1の同様のラインスピード(2m/min)の態様の供給量の約4倍であり、余剰率は約12倍であった。
【符号の説明】
【0100】
F 摺動処理物、フィラー
W 摺動対象物、エンボス体
W1 エンボス本体
W2 表面
W3 凹部
1 摺動装置
2 支持台
3 搬送手段
4 摺動部
6 摺動体
6a 角
6A 作用面
6B 表面材
6C 弾性材
6D 上面材
20 第1駆動機構
30 第2駆動機構
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9