IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スズキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図1
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図2
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図3
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図4
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図5
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図6
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図7
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図8
  • 特許-報知制御装置及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】報知制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G08G1/09 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020146800
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041543
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】古田 敏之
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-516076(JP,A)
【文献】特開平11-061703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0000987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における報知を制御する報知制御装置であって、
前記車両の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記車両の操舵輪の舵角を取得する舵角取得手段と、
前記位置情報取得手段で取得した前記位置情報に基づいて、前記車両が踏切にいるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で前記車両が踏切にいると判定された場合に、踏切を渡るための通路に平行な直線である踏切基線とレールとがなす角度であるレール角と、前記舵角取得手段で取得した前記操舵輪の舵角とに応じて報知を実行するように制御する制御手段とを備え
前記制御手段は、前記レール角と、前記操舵輪の舵角とを用いて、前記操舵輪と前記レールとがなす角度に応じた指標を算出し、前記指標と所定の閾値とを比較した結果に基づいて報知を実行することを特徴とする報知制御装置。
【請求項2】
前記位置情報取得手段は、GPS信号に基づく情報と、地図データとに基づいて、前記位置情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の報知制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記踏切基線と前記車両の中心線とがなす角度である対踏切車両角をさらに用いて前記指標を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の報知制御装置。
【請求項4】
前記対踏切車両角を固定値とすることを特徴とする請求項に記載の報知制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記レール角が所定の範囲にある場合のみ報知を実行することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の報知制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記操舵輪の舵角が、報知を実行する第1の舵角に達していないときでも、前記第1の舵角よりも小さい第2の舵角以上で、所定の時間又は所定の走行距離だけ継続されたことに応じて報知を実行することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の報知制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、報知を実行した後、前記操舵輪の舵角が所定の角度だけ戻る方向に変化することにより、報知を停止することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の報知制御装置。
【請求項8】
前記車両は、一人乗り用の小型電動車両であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の報知制御装置。
【請求項9】
車両における報知を制御するためのプログラムであって、
前記車両の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記車両の操舵輪の舵角を取得する舵角取得手段と、
前記位置情報取得手段で取得した前記位置情報に基づいて、前記車両が踏切にいるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で前記車両が踏切にいると判定された場合に、踏切を渡るための通路に平行な直線である踏切基線とレールとがなす角度であるレール角と、前記舵角取得手段で取得した前記操舵輪の舵角に応じて報知を実行するように制御する制御手段としてコンピュータを機能させ
前記制御手段は、前記レール角と、前記操舵輪の舵角とを用いて、前記操舵輪と前記レールとがなす角度に応じた指標を算出し、前記指標と所定の閾値とを比較した結果に基づいて報知を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における報知を制御する報知制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シニアカーや電動車椅子等と呼ばれる、高齢者等が移動するのに利用される一人乗り用の小型電動車両が普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4054899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の車両において、より安全な走行を実現するために、運転をサポートする技術が求められている。例えば、踏切は、通路を横切るようにレールが敷設され、レールに沿って通路とレールとの間に隙間ができるという路面状態になっている。このような路面状態にある踏切を車両で渡るときに、その操舵に対して注意を促す報知を行うことができれば、より安全な走行を実現することができる。
なお、踏切での走行に関連するものとして、特許文献1には、GPS車両位置データと列車平面踏切データを用いる列車衝突回避システムが開示されている。
【0005】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、車両で踏切を渡るときの運転をサポートできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の報知制御装置は、車両における報知を制御する報知制御装置であって、前記車両の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記車両の操舵輪の舵角を取得する舵角取得手段と、前記位置情報取得手段で取得した前記位置情報に基づいて、前記車両が踏切にいるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で前記車両が踏切にいると判定された場合に、踏切を渡るための通路に平行な直線である踏切基線とレールとがなす角度であるレール角と、前記舵角取得手段で取得した前記操舵輪の舵角とに応じて報知を実行するように制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記レール角と、前記操舵輪の舵角とを用いて、前記操舵輪と前記レールとがなす角度に応じた指標を算出し、前記指標と所定の閾値とを比較した結果に基づいて報知を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両で踏切を渡るときの運転をサポートして、より安全な走行を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】小型電動車両を示す斜視図である。
図2】報知制御装置及びその周辺機器の構成を示す図である。
図3】報知制御装置による報知制御処理の例を示すフローチャートである。
図4】踏切の概要を説明するための平面図である。
図5】踏切及び車両の概要を説明するための平面図である。
図6】対踏切車両角θvehを説明するための図である。
図7】踏切及び車両の概要を説明するための平面図である。
図8】報知を実行するための舵角と時間との関係を示す特性図である。
図9】報知を実行するための舵角と走行距離との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る報知制御装置は、車両における報知を制御する報知制御装置であって、前記車両の位置に関する位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記車両の操舵輪の舵角を取得する舵角取得手段と、前記位置情報取得手段で取得した前記位置情報に基づいて、前記車両が踏切にいるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で前記車両が踏切にいると判定された場合に、前記舵角取得手段で取得した前記操舵輪の舵角に応じて報知を実行するように制御する制御手段とを備える。これにより、車両で踏切を渡るときに、その操舵に対して注意を促す報知を行うことで運転をサポートすることでき、より安全な走行を実現することができる。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について説明する。
図1は、本発明を適用可能な車両の一例を示す図であり、本実施例では一人乗り用の小型電動車両(以下では、単に車両という)1を示す。車両1は、車体の骨組みとなる不図示の車体フレームを備え、車体フレームによって、操舵輪である左右の前輪2と、駆動輪である左右の後輪3とが支持される。車体フレームは、樹脂製カバー4によって上方から覆われる。樹脂製カバー4は、前側車体カバー5、ステップフロア6、後側車体カバー7により構成される。
【0011】
後側車体カバー7は、左右の後輪3の上方を前側から覆う一方、車体後部では略ボックス状に構成されて上方に突設される。後側車体カバー7の内側には、左右の後輪3を駆動する構成部品、例えば走行電動モータ、電動モータに給電するバッテリ、モータ出力を後輪軸に伝達するギアユニット等が収容される。
また、後側車体カバー7の上側には、車体フレームから立ち上がる支持ブラケットを介してシート8が設けられる。シート8は、シートクッション9と、シートクッション9の後方から立ち上がるバックレスト10と、バックレスト10の立上がり部途中から前方に延びる左右のアームレスト11とを備える。
【0012】
前側車体カバー5は、左右の前輪2の上方を覆うフロントフェンダ部を備え、前方にヘッドライト12が取り付けられる。また、前側車体カバー5の車体前部の車両幅方向中央部からハンドルポスト13が斜め後上方に立ち上がるように立設される。
ハンドルポスト13には、前輪2を操舵するステアリングシャフトが軸支され、このステアリングシャフトの上端にハンドルユニット14が回転可能に取り付けられる。ハンドルユニット14は、ボックス状の操作ボックス15と、操作ボックス15の左右両側部から外側方に突出するハンドルレバー16及びアクセルレバー17とを備える。ハンドルレバー16はU字状又はコ字状に構成され、ハンドルレバー16は乗員によって操舵操作される。乗員は、ハンドルレバー16を操作してステアリングシャフトを回動させ、リンク等を介してステアリングシャフトに連結された前輪2の向きを変える。また、ハンドルレバー16のグリップ部を把握してアクセルレバー17を操作することにより、電動モータが駆動力を発生して車両が走行するようになっている。
【0013】
このようにした車両1において、図2に示すように、報知装置200が搭載されている。報知装置200は、本実施例では警報音を発する警報音発生装置とするが、例えば表示装置や発光装置等により構成されてもよい。
【0014】
また、車両1において、図2に示すように、報知装置200を用いた報知を制御する報知制御装置100と、GPS(Global Positioning System)信号検出装置300と、舵角センサ400と、記憶装置500とが搭載されている。
【0015】
GPS信号検出装置300は、GPS信号を受信し、車両1の位置を表す緯度・経度等の情報(以下、GPS信号に基づく情報と呼ぶ)を報知制御装置100に出力する。
【0016】
また、舵角センサ400は、前輪2の舵角αを検出して、報知制御装置100に出力する。前輪2の舵角αは、図5に示すように、車両1に対する前輪2の角度であって、平面視で車両1の前後方向に沿った線Cと前輪2の回動方向とがなす角度である。前輪2の舵角αは、例えば、車両1の前後方向を基準に「右に10°」、「左に10°」といった情報である。
【0017】
また、報知制御装置100には、記憶装置500が接続する。記憶装置500は、地図データを記憶する。なお、記憶装置500を外部記憶装置のように図示するが、報知制御装置100の内部の記憶装置としてもよい。
【0018】
報知制御装置100は、位置情報取得部101と、舵角取得部102と、判定部103と、制御部104とを備える。
【0019】
位置情報取得部101は、GPS信号検出装置300から出力されるGPS信号に基づく情報と、記憶装置500に記憶された地図データとに基づいて、車両1の位置に関する位置情報を取得する。この位置情報により、車両1の現在位置や進行方向が把握可能になる。
【0020】
舵角取得部102は、舵角センサ400から出力される前輪2の舵角αを取得する。なお、舵角センサ400を用いる例としたが、ハンドルユニット14の切れ角を検出するセンサを用い、その切れ角に基づいて前輪2の舵角αを取得するようにしてもよく、車両1に対する前輪2の角度を推定/算出できる値を検出する各種センサを用いることができる。
【0021】
判定部103は、位置情報取得部101で取得した位置情報に基づいて、車両1が踏切にいるか否かを判定する。
【0022】
制御部104は、判定部103で車両1が踏切にいると判定された場合に、舵角取得部102で取得した前輪2の舵角αに応じて報知を実行するように制御する。以下に詳述するが、制御部104は、前輪2とレールとがなす角度に応じた指標βを算出する指標算出部104aと、指標算出部104aで算出した指標βと所定の閾値βthとを比較する比較部104bとを備える。
【0023】
このようにした報知制御装置100は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により構成され、CPUが例えばROMに記憶された所定のプログラムを実行することにより、各部101~104の機能が実現される。例えば車両1に搭載されるコントロールユニットの一部の機能として報知制御装置100が実現されるようにすればよい。
【0024】
以下、図3乃至図7を参照して、報知制御装置100による報知制御処理を詳述する。
まず、図4乃至図7を参照して、報知制御装置100による報知制御処理の概要を説明する。
図4は、踏切600の概要を説明するための平面図である。図4に示される踏切600は、紙面の上下方向に延びる通路(道路)に対して、左右方向に鉄道のレールが横切っている。踏切600は、鉄道と道路が平面交差する箇所に設けられる設備である。道路に接続し、歩行者や車両が通行して踏切600を渡るための通路601があり、通路601を横切るように一対のレール602が敷設される。車両の通行を可能とするために、レール602は通路601の溝内に配置されている。このため、通路601のレール602が通る部分では、レール602と通路601(通路601の溝の内面)との間にレール602に沿って隙間603が形成される。隙間603は、列車の車輪のフランジが踏切(通路601)を通過するために設けられたものであり、一般的に70mm程度の幅を有する。
【0025】
ここで、図5に示すように、通路601に対してレール602が斜めに横切るように配置された踏切600がある。図5に示される踏切600は、紙面の上下方向に延びる通路(道路)に対して、斜め左右方向に鉄道のレールが横切っている。図5の例では、車両1の進行方向に対して、レール602が左手前から右奥に延びる。
通路601の延びる方向(踏切600の横断方向)に平行な直線を踏切基線604と呼ぶ。踏切基線604は、踏切600を渡るときの基準になる直線といえる。
【0026】
また、踏切基線604とレール602とがなす角度をレール角θrailと呼ぶ。レール角θrailは、例えば「右側で60°」、「左側で120°」といった情報である。レール角θrailは、記憶装置500に記憶された地図データを用いて取得することができる。法規上、レール角θrailは45°以上になるように定められており、車両1が踏切基線604に沿って通路601をまっすぐ進むときに、前輪2や後輪3は隙間603を容易に通過して、前輪2や後輪3が隙間603に嵌まるような問題が生じることはない。しかしながら、例えば歩行者や障害物を避けるために、前輪2を操舵すると、その向きによっては、前輪2がレール602と平行な状態(隙間603が延びる方向と平行な状態)に近づく。図5の例では、前輪2を右向きに操舵すると、前輪2がレール602と平行な状態に近づき、車両1の位置等によっては前輪2が隙間603に嵌まる可能性がある。
【0027】
ここで、車両1の向きを正確に検出できればよいが、検出が難しい場合では車両1の向きとして踏切基線604を用いることが考えられる。しかし、車両1で踏切600を渡るときに、実際には、車両1が踏切基線604と正確に平行に走行することはまずない。つまり、乗員が通路601に沿って真直ぐに踏切を通過(踏切基線604と平行な向きに走行)しようとしても、路面の凹凸やレール602、隙間603の影響を受け、車両1の向きは踏切基線604から外れる。そして、踏切基線604の方向からの逸脱に対して、乗員はハンドルレバー16を操作して前輪2の向きを変えて、車両1の向きを修正する。
このような乗員が意図しないで発生してしまう踏切基線604の方向からの逸脱であり、図6に示すように、踏切基線604と車両1の前後方向に沿った線Cとがなす角度を対踏切車両角θvehと呼ぶ。対踏切車両角θvehは、例えば「左右に5°」であり「右に5°」、「左に5°」といった情報である。対踏切車両角θvehは、例えば踏切600を渡るときに通常発生すると想定される走行ブレ角のように扱い、固定値として、例えば記憶装置500に格納しておけばよい。また、GPS信号に基づく情報から車両1の走行軌跡を判別し、ある程度の精度で走行ブレ角が求められる場合は、それを対踏切車両角θvehとしてもよい。
【0028】
図7は、図5と同様、通路601に対してレール602が斜めに横切るように配置された踏切600を示し、角度の関係を分かりやすくするために、踏切600と車両1とを重ねて示す。
レール角θrailと、前輪2の舵角αと、対踏切車両角θvehとを用いて、式(1)のように指標βを算出する。
β=θrail-θveh-α ・・・(1)
【0029】
指標βは、前輪2とレール602とがなす角度を表し、0°に近づくほど、前輪2がレール602と平行な状態に近づくことを意味する。そこで、指標βと所定の閾値βthとを比較して、その結果、指標βが所定の閾値βthよりも小さくなったとき、報知装置200を用いた報知(例えば警報音の発生)を実行する。これにより、前輪2がレール602と平行な状態に近づいていることを乗員に知らせて、操舵に対して注意を促すことができる。なお、閾値βthは、前輪2のサイズ(外径寸法、幅寸法、接地面形状等)や路面の条件を考慮し、実験により決定することができる。
【0030】
対踏切車両角θvehを固定値とする場合、走行ブレ角の調査による最大値を採用すれば、報知を早めに実行する側に設定することができる。また、左右の対踏切車両角θvehを設定しておき、前輪2を右向きに操舵するときは右方向の対踏切車両角θvehを用い、前輪2を左向きに操舵するときは左側の対踏切車両角θvehを用いるようにすれば、報知を早めに実行する側に設定することができる。
【0031】
図4に示すように、レール角θrailが90°の場合、前輪2の舵角αが通常想定されるよりも大きい値にならない限り(すなわち、通常想定されるよりも過大な操舵を行わない限り)、前輪2がレール602と平行になることはない。また、図5の例では、レール角θrailが例えば「左側で120°」であり、前輪2を左向きに操舵するときは、前輪2の舵角αが通常想定されるよりも大きい値にならない限り(すなわち、通常想定されるよりも過大な操舵を行わない限り)、前輪2がレール602と平行になることはない。したがって、このような状況では、不要な処理を省く目的で報知機能を使わないようにし、レール角θrailが所定の範囲、例えば45°(法規上定められている角度)<θrail<80°の範囲にある場合のみ報知を実行するようにしてもよい。
【0032】
なお、図5の例とは逆に、車両1の進行方向に対して、レール602が右手前から左奥に延びる場合も同様の考え方であり、ここではその説明を省略する。
【0033】
図3は、報知制御装置100による報知制御処理の例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、例えばメインキーのオンによる車両運行開始後に実行される。
ステップS1で、位置情報取得部101は、GPS信号検出装置300から出力されるGPS信号に基づく情報と、記憶装置500に記憶された地図データとに基づいて、車両1の位置に関する位置情報を取得する。この位置情報により、車両1の現在位置や進行方向が把握可能になる。
【0034】
ステップS2で、判定部103は、ステップS1において取得した位置情報に基づいて、車両1が踏切600にいるか否かを判定する。車両1が踏切600にいるか否かを判定する例として、例えば踏切600の手前から本機能を働かせる時間的配慮から、車両1が、通路601に接続する道路を含むエリアにいるか否かを判定するようにするのが好ましい。車両1が踏切600にいる場合、ステップS3に進む。車両1が踏切600にいない場合、ステップS10に進む。ステップS10で、制御部104は、報知装置200がオンになっていれば報知をオフ(停止)にして、ステップS1に戻る。
【0035】
ステップS3で、制御部104は、記憶装置500に記憶された地図データを用いて、車両1で渡ろうとしている踏切600のレール角θrailを取得する。なお、いったん取得したレール角θrailは記憶装置500に格納しておけばよい。
【0036】
ステップS4で、舵角取得部102は、舵角センサ400から出力される前輪2の舵角αを取得する。
【0037】
ステップS5で、制御部104の指標算出部104aは、ステップS3において取得したレール角θrailと、ステップS4において取得した前輪2の舵角αと、対踏切車両角θvehとを用いて、式(1)のように、前輪2とレール602とがなす角度に応じた指標βを算出する。
【0038】
ステップS6で、制御部104の比較部104bは、ステップS5において算出した指標βと所定の閾値βthとを比較する。指標βが所定の閾値βthよりも小さい場合、ステップS7に進む。指標βが所定の閾値βthよりも小さくない場合、ステップS11に進む。ステップS11で、制御部104は、報知装置200がオンになっていれば報知をオフ(停止)にして、ステップS1に戻る。
【0039】
ステップS7で、制御部104は、報知をオンにして、前輪2がレール602と平行な状態に近づいていることを乗員に知らせて、操舵に対して注意を促す。乗員は、報知を受けることにより、これ以上の操舵を止めたり、ハンドルユニット14を戻したりすることができる。
【0040】
ステップS8で、報知制御装置100は、例えばメインキーのオフによる車両運行終了になったか否かを判定する。車両運行終了である場合、ステップS9に進む。車両運行終了でない場合、ステップS1に戻る。
【0041】
ステップS9で、制御部104は、報知装置200がオンになっていれば報知をオフ(停止)にして、本フローチャートの処理を終了する。
【0042】
なお、図3では、説明の簡易化のため、ステップS6で指標βと所定の閾値βthとを比較すると説明したが、ヒステリシスを持たせるようにするのがよい。つまり、指標βの変化が閾値βthを通過して閾値よりも小さくなる方向にあるときと、指標βが閾値βthよりも小さくなった後で閾値βthを通過して閾値よりも大きくなる方向にあるときとで、閾値βthを相違させる。図5の例でいえば、前輪2を右向きに操舵すべくハンドルユニット14を右に切っているときは、指標βが閾値βth1よりも小さくなったとき、ステップS7に進んで、報知装置200をオンにして乗員に報知する。一方、ハンドルユニット14を右に切っているときに報知があったため、ハンドルユニット14を戻したとき(左に切ったとき)は、指標βが閾値βth2(>βth1)よりも大きくなったとき、換言すれば前輪2の舵角αが所定の角度だけ戻る方向に変化することにより、ステップS11に進んで、報知を停止するようにする。これにより、チャタリングを防ぐとともに、ハンドルユニット14を戻したときには、早めに報知を停止するようにすることができる。なお、運転者がハンドルユニット14を戻し操作したことを検知したときには、報知を即時停止するようにしてもよいし、所定の角度以上の戻し操作や所定の角度以上の前輪2の角度変化を条件に、報知を停止するようにしてもよい。
【0043】
以上述べたように、車両1で踏切600を渡るときに、前輪2が隙間603に嵌まるのを避けるように、操舵に対して注意を促す報知を行うことができ、運転をサポートしてより安全な走行を実現することができる。
また、指標βを算出する際に、車両1の実際の向きを検出することはせずに、踏切毎の固定値であるレール角θrailと、検出値である前輪2の舵角αと、固定値である対踏切車両角θvehとを用いるようにしたので、報知制御処理を容易なものにすることができる。
【0044】
以下、変形例を説明する。
実施例では、車両1が踏切600にいると判定された場合に、前輪2の舵角αに応じて報知を実行するようにしたが、それ以前に、車両1が踏切600に入った時点で、前輪2の舵角αによらずに報知を実行するようにしてもよい。例えばハンドルユニット14に左右の発光装置を設置し、車両1が踏切600に入った時点で、前輪2がレール602と平行な状態に近づきうる方向(図5の例では右方向)の発光装置を点灯又は点滅させる等すればよい。これにより、踏切600に入ったことを乗員に報知して、操舵に対して注意を促すことができる。また、車両1が踏切600に入った時点で音を発するようにすれば、踏切600内の人の注意を惹き、周囲の人に、車両1と衝突するのを回避するような行動を促すことができる。周囲の人が車両1との衝突を回避するように行動することにより、車両1側では人との衝突を避けるための急操舵や過大な操舵を行う機会が少なくなる。
そして、実施例で述べたように、指標βが所定の閾値βthよりも小さくなったとき、報知を実行し、前輪2がレール602と平行な状態に近づいていることを乗員に知らせる。このときに実行する報知は、車両1が踏切600に入った時点での報知とは別の種別とすればよい。例えば車両1が踏切600に入った時点で音を発するようにした場合、指標βが所定の閾値βthよりも小さくなったときの警報音は、音量や音種を変更する。
【0045】
また、実施例では、前輪2の舵角αが舵角α´を超えたときに(β<βthの関係より、α>α´(=θrail-θveh-βth))、報知を実行し、前輪2がレール602と平行な状態に近づいていることを乗員に知らせるようになっているが、前輪2の舵角αが比較的小さく、舵角α´に達していないときにも、次に述べるように一定の条件を満たしたときには、報知を実行するようにしてもよい。
前輪2の舵角αが比較的小さく、舵角α´に達していないときでも、その舵角αのまま車両1が走行すると、車両1そのものの向きが変わる。図5の例でいえば、前輪2を右向きに操舵した場合に、前輪2の舵角αが舵角α´に達していないときでも、その舵角αのまま車両1が走行すると、車両1そのものが右向きになり、左右の前輪2さらには左右の後輪3が隙間603に嵌まる可能性がある。
そこで、図8に示す特性のように、前輪2の舵角αが舵角α´に達していないときでも、前輪2の舵角αが、所定の角度α1(<α´)以上で、所定の時間だけ継続されたことに応じて報知を実行する。例えば前輪2の舵角αが舵角α1のまま、所定の時間t1だけ継続されたときには報知を実行する。これにより、車両1そのものの向きが変わることにより、前輪2や後輪3が隙間603に嵌まる可能性があることを乗員に知らせて、注意を促すことができる。図8に示すように、前輪2の舵角αが大きいほど、所定の時間が短時間となるような特性とするのが好適である。前輪2の舵角αが大きいほど、短時間で車両1そのものの向きが変わるからである。
なお、図9に示す特性のように、時間tでなく、車両1の走行距離lを計測し、前輪2の舵角αが舵角α´に達していないときでも、前輪2の舵角αが、所定の角度α2(<α´)以上で、所定の走行距離だけ継続されたことに応じて報知を実行するようにしてもよい。この場合も継続時間tと同様に、車両1の向きの変化を考慮し、前輪2や後輪3が隙間603に嵌まる可能性があることを乗員に知らせて、注意を促すことができる。
【0046】
また、実施例では、GPS信号に基づく情報と、地図データとに基づいて位置情報を取得して、車両1が踏切にいるか否かを判定するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば車両1にカメラを搭載し、カメラで撮像した画像に基づいて位置情報を取得して、車両1が踏切にいるか否かを判定するようにしてもよい。また、レール角θrailを地図データを用いて取得するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば車両1にカメラを搭載し、カメラで撮像した画像に基づいてレール角θrailを取得するようにしてもよい。さらには、例えば車両1にカメラを搭載し、カメラで撮像した画像に基づいて現在の車両1とレール602との角度や位置関係を直接監視して、乗員に注意を促すことができる。
【0047】
なお、踏切600の通路601に、複数組のレール602が並んで敷設されている場合、車両1の位置でのレール角θrailを取得するようにしてもよいし、複数組のレール602におけるレール角θrailの最小値を採用するようにしてもよい。同様に、通路601の道幅が広く、位置によってレール角θrailが相違する場合、車両1の位置でのレール角θrailを取得するようにしてもよいし、レール角θrailの最小値を採用するようにしてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明したが、各実施例は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、各実施例に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
上記実施例では、本発明を適用可能な車両として、一人乗り用の四輪の小型電動車両を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば三輪の車両でもよいし、複数人が乗車できる車両でもよい。
また、本発明は、ソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0049】
100:報知制御装置、101:位置情報取得部、102:舵角取得部、103:判定部、104:制御部、104a:指標算出部、104b:比較部、200:報知装置、300:GPS信号検出装置、400:舵角センサ、500:記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9