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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】自動変速制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20240703BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20240703BHJP
   B60K 6/36 20071001ALI20240703BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240703BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20240703BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20240703BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20240703BHJP
   F16H 59/14 20060101ALI20240703BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20240703BHJP
   F16H 63/46 20060101ALI20240703BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20240703BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20240703BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240703BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240703BHJP
   B60W 10/04 20060101ALI20240703BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60W10/02 900
B60K6/36 ZHV
B60K6/48
B60K6/547
B60W10/10 900
B60W20/15
F16H59/14
F16H61/02
F16H63/46
F16H63/50
F16D48/02 640A
B60L50/16
B60L15/20 K
B60W10/00 102
F02D29/00 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020159790
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053146
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤川 真也
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274718(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112849121(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0125022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60W 10/02
B60K 6/36
B60K 6/48
B60K 6/547
B60W 10/10
B60W 20/15
F16H 59/14
F16H 61/02
F16H 63/46
F16H 63/50
F16D 48/02
B60L 50/16
B60L 15/20
F02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、前記エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、前記エンジンと前記駆動軸との間の動力伝達を開放または接続するクラッチと、を備えるハイブリッド車両に搭載され、
前記自動変速機及び前記クラッチを制御して、前記自動変速機の変速段の切替を制御する制御部を備える自動変速制御装置であって、
前記制御部は、前記自動変速機の変速期間中において、前記自動変速機に出力されるクラッチトルクの変化が許容される所定の許容期間では前記クラッチの操作速度を速くし、前記クラッチトルクの変化に応じて前記モータからアシストトルクを出力させ
前記クラッチトルクと前記アシストトルクを合算した前記駆動軸に伝わるトータルトルクの減少速度及び増加速度が、前記許容期間と前記許容期間外とで変化しないように前記アシストトルクを出力させる自動変速制御装置。
【請求項2】
前記許容期間は、前記自動変速機の変速時のクラッチ開放過程及びクラッチ接続過程における、前記駆動軸に伝わるトータルトルクまたは前記クラッチトルクがモータ出力可能トルクより所定量大きなトルク以下の期間である請求項1に記載の自動変速制御装置。
【請求項3】
前記許容期間は、前記自動変速機の変速時のクラッチ開放過程及びクラッチ接続過程の少なくとも一方に設けられる請求項1または請求項2に記載の自動変速制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ギアシフトフェーズ中に車輌の乗員に感じられる車輌の減速度を最小化することと、同時に、電気モータのエネルギ消耗を削減することを目的として、ギアシフトフェーズの開始の直前に、電気モータによって伝達され得る最大トルクの値が、熱機関によって車輪に伝達されている初期トルク値よりも低い場合に、熱機関によって車輪に伝達されているトルクが電気モータによって伝達され得る最大トルクの値と同等の減少トルク値になるまでの期間は、摩擦クラッチが徐々に切り離され、熱機関によって車輪に伝達されているトルクが減少トルク値から初期トルク値になるまでの期間は、摩擦クラッチが徐々に締結され、それぞれの期間では電気モータがトルクを伝達しないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-55771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、ギアシフトフェーズの開始の直前に、電気モータによって伝達され得る最大トルクの値が、熱機関によって車輪に伝達されている初期トルク値よりも低い場合には、電気モータがトルクを伝達しない期間がある。その期間では、電気モータがトルクを伝達している期間よりも摩擦クラッチが緩やかに切り離されたり、締結されたりするため、変速完了までに時間がかかり、運転者に変速中の間延び感を感じさせるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、運転者に変速中の間延び感を感じさせることを抑えることができる自動変速制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、エンジンと、モータと、前記エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、前記エンジンと前記駆動軸との間の動力伝達を開放または接続するクラッチと、を備えるハイブリッド車両に搭載され、前記自動変速機及び前記クラッチを制御して、前記自動変速機の変速段の切替を制御する制御部を備える自動変速制御装置であって、前記制御部は、前記自動変速機の変速期間中において、前記自動変速機に出力されるクラッチトルクの変化が許容される所定の許容期間では前記クラッチの操作速度を速くし、前記クラッチトルクの変化に応じて前記モータからアシストトルクを出力させ、前記クラッチトルクと前記アシストトルクを合算した前記駆動軸に伝わるトータルトルクの減少速度及び増加速度が、前記許容期間と前記許容期間外とで変化しないように前記アシストトルクを出力させるものである。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明によれば、運転者に変速中の間延び感を感じさせることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る自動変速制御装置の変速時アシスト制御処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の一実施例に係る自動変速制御装置の変速時アシスト制御処理によるトルクの変化と、クラッチトルクがモータ出力可能トルク以下の期間にクラッチの操作速度を速くする場合のトルクの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る自動変速制御装置は、エンジンと、モータと、エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、エンジンと駆動軸との間の動力伝達を開放または接続するクラッチと、を備えるハイブリッド車両に搭載され、自動変速機及びクラッチを制御して、自動変速機の変速段の切替を制御する制御部を備える自動変速制御装置であって、制御部は、自動変速機の変速期間中において、自動変速機に出力されるクラッチトルクの変化が許容される所定の許容期間ではクラッチの操作速度を速くし、クラッチトルクの変化に応じてモータからアシストトルクを出力させるよう構成されている。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係る自動変速制御装置は、運転者に変速中の間延び感を感じさせることを抑えることができる。
【実施例
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る自動変速制御装置を搭載したハイブリッド車両について詳細に説明する。
【0012】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、自動変速機としての変速機3と、モータ4と、インバータ5と、バッテリとしての高電圧バッテリ6と、低電圧バッテリ7と、制御部8とを含んで構成される。
【0013】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0014】
エンジン2には、始動装置21が連結されている。始動装置21は、図示しないベルトを介してエンジン2のクランクシャフトに連結されている。始動装置21は、電力が供給されることにより回転することでクランクシャフトを回転させて、エンジン2に始動時の回転力を与える。
【0015】
始動装置21は、スタータやISG(Integrated Starter Generator)により構成される。始動装置21として、スタータとISGの両方を備えるようにしてもよい。
【0016】
変速機3は、エンジン2から出力された回転を変速し、駆動軸11を介して駆動輪10を駆動する。変速機3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の図示しない変速機構と、図示しないアクチュエータとを備えている。
【0017】
エンジン2と変速機3の間には、乾式単板式のクラッチ31が設けられており、クラッチ31は、エンジン2と変速機3との間の動力伝達を接続または切断する。
【0018】
変速機3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、図示しないアクチュエータにより変速機構における変速段の切替えとクラッチ31の断接が行なわれる。
【0019】
変速機3と駆動輪10の間にはディファレンシャル機構32が設けられている。ディファレンシャル機構32と駆動輪10は駆動軸11により連結されている。
【0020】
モータ4は、ディファレンシャル機構32に対して、チェーン等の図示しない減速機を介して連結されている。モータ4は、電動機として機能する。モータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行なう。
【0021】
モータ4には、モータ4の温度を検出する温度センサ41が設けられている。温度センサ41は、制御部8に接続されている。
【0022】
インバータ5は、制御部8の制御により、高電圧バッテリ6などから供給された直流の電力を、三相の交流電力に変換してモータ4に供給する。
【0023】
インバータ5は、制御部8の制御により、モータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、高電圧バッテリ6を充電する。
【0024】
高電圧バッテリ6は、例えばリチウムイオン蓄電池で構成されている。高電圧バッテリ6は、インバータ5に電力を供給する。
【0025】
高電圧バッテリ6には、バッテリ状態センサ61が設けられている。バッテリ状態センサ61は、高電圧バッテリ6の充放電電流、電圧及びバッテリ温度を検出する。バッテリ状態センサ61は、制御部8に接続されている。制御部8は、バッテリ状態センサ61の出力により高電圧バッテリ6の充電量を検知できるようになっている。
【0026】
低電圧バッテリ7は、例えば鉛電池で構成されている。低電圧バッテリ7は、始動装置21などのハイブリッド車両1の電気負荷に電力を供給する。
【0027】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
【0028】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
このコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部8として機能させるためのプログラムが格納されている。
【0030】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例における制御部8として機能する。
【0031】
制御部8の入力ポートには、上述の温度センサ41、バッテリ状態センサ61に加え、アクセル開度センサ81、クラッチストロークセンサ82を含む各種センサ類が接続されている。
【0032】
アクセル開度センサ81は、図示しないアクセルペダルの操作量をアクセル開度として検出する。クラッチストロークセンサ82は、クラッチ31の係合度を検出する。
【0033】
一方、制御部8の出力ポートには、上述の始動装置21、変速機3のアクチュエータ、インバータ5に加え、図示しないインジェクタを含む各種制御対象類が接続されている。
【0034】
本実施例において、制御部8は、アクセル開度などに基づいて、ドライバの要求するドライバ要求トルクを算出する。制御部8は、ドライバ要求トルクが駆動輪10に出力されるようエンジン2、変速機3、クラッチ31、モータ4を制御する。
【0035】
また、制御部8は、例えば、アクセル開度と車速により変速機3の変速段を決定する変速マップに基づいて、隣接する変速段の境界線である変速線をアクセル開度と車速による点が跨いだとき、変速機3の変速段を変更するように変速機3とクラッチ31を制御する。
【0036】
制御部8は、変速時のクラッチ31が開放されている間、モータ4から駆動輪10に対してアシストトルクを出力する変速時アシスト制御を実行するようになっている。「クラッチ31が開放されている間」とは、クラッチ31の完全係合が解除されている期間(以下、この期間を「非完全係合期間」という)であり、当該非完全係合期間には、いわゆる半クラッチ状態が含まれる。半クラッチ状態とは、クラッチ31の摩擦材同士がスリップした状態で係合して動力を伝達する状態をいう。
【0037】
変速機構とエンジンとの間の動力伝達経路にクラッチが設けられた車両においては、変速時のクラッチの非完全係合期間中、エンジンからのトルクが駆動輪に伝達されないため、加減速感が喪失する、いわゆるトルク抜けが生じ、このトルク抜けによって空走感が生じてしまう。
【0038】
変速時アシスト制御は、変速時のクラッチ31の非完全係合期間中にモータ4から駆動輪10に対してアシストトルクを出力することで、トルク抜けによる空走感の発生を回避するものである。
【0039】
制御部8は、変速時のクラッチ31の非完全係合期間中において、クラッチトルクの変化が許容される所定の許容期間では、クラッチ31の操作速度を速くし、クラッチ31の操作によるクラッチトルクの変化に応じてモータ4からアシストトルクを出力させる。クラッチ31の操作速度とは、クラッチ31の開放速度または接続速度のことである。
【0040】
クラッチトルクとは、変速機3の出力軸のトルクであり、ディファレンシャル機構32に出力されるトルクである。
【0041】
許容期間は、変速時のクラッチ開放過程またはクラッチ接続過程における、クラッチトルクが、変速開始時のモータ4の出力可能な最大トルクであるモータ出力可能トルクより所定量大きなトルク以下の期間である。許容期間は、変速時のクラッチ開放過程またはクラッチ接続過程の少なくとも一方に設けられる。
【0042】
クラッチ開放過程とは、クラッチ31の完全係合が解除され始めてから、クラッチ31が完全に開放されるまでの期間をいう。
【0043】
クラッチ接続過程とは、変速機3の変速機構の変速段切替後に、クラッチ31の係合が開始してから、クラッチ31が完全に係合されるまでの期間をいう。
【0044】
すなわち、クラッチ開放過程での許容期間は、トータルトルクまたはクラッチトルクがモータ出力可能トルクより所定量大きなトルク以下となってからクラッチ31が完全に開放されるまでの期間である。また、クラッチ接続過程での許容期間は、クラッチ31の係合が開始してからトータルトルクまたはクラッチトルクがモータ出力可能トルクより所定量大きなトルクと等しくなるまでの期間である。
【0045】
制御部8は、高電圧バッテリ6の充電量、またはモータ4の発熱状態に基づいてモータ出力可能トルクを算出する。制御部8は、変速機3の変速処理中は、モータ出力可能トルクをアシストトルクとして駆動輪10に出力させる。
【0046】
制御部8は、変速時のクラッチ開放過程またはクラッチ接続過程における、許容期間でのクラッチ31の操作速度を、許容期間ではない期間でのクラッチ31の操作速度より速くする。
【0047】
制御部8は、変速時のクラッチ開放過程とクラッチ接続過程で、クラッチ31の操作速度を変えてもよい。制御部8は、例えば、変速時のクラッチ開放過程の許容期間外でのクラッチの操作速度を第1速度とし、許容期間でのクラッチ操作速度を第2速度とすると、第2速度を第1速度より速くする。また、変速時のクラッチ接続過程の許容期間でのクラッチ操作速度を第2速度とし、許容期間外でのクラッチの操作速度を第1速度とする。また、クラッチ開放過程とクラッチ接続過程で第1速度及び第2速度を変えてもよい。
【0048】
制御部8は、例えば、変速時のクラッチ開放過程またはクラッチ接続過程の、クラッチトルクが、モータ出力可能トルクより所定量αだけ大きなトルク以下である期間を許容期間とする。変速時のクラッチ開放過程とクラッチ接続過程で、αの値を変え、許容期間の長さを変えてもよい。また、モータ出力可能トルクより所定量αだけ大きなトルクは、適合値でもよいし、その都度制御部8で算出される値を用いてもよい。
【0049】
制御部8は、例えば、所定の周期でモータ出力可能トルクを算出し、クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなった時点でクラッチ31の開放速度を速めるようにしてもよい。
【0050】
制御部8は、許容期間では、モータ4からアシストトルクを出力させる。制御部8は、例えば、クラッチ開放過程において、クラッチ31が完全開放されて許容期間が終わるときに、モータ4によるアシストトルクがモータ出力可能トルクとなるように、モータ4にアシストトルクを出力させる。
【0051】
制御部8は、例えば、クラッチ接続過程において、クラッチトルクがモータ出力可能トルクより所定量大きなトルクと等しくなって許容期間が終わるときに、モータ4によるアシストトルクがゼロとなるように、モータ4にアシストトルクを出力させる。
【0052】
制御部8は、例えば、クラッチトルクとモータトルクを合算した、駆動軸11に伝わるトータルトルクの減少速度または増加速度が、許容期間と許容期間外とで変化しないように、モータ4からアシストトルクを出力させるとよい。
【0053】
以上のように構成された本実施例に係る自動変速制御装置による変速時アシスト制御処理について、図2を参照して説明する。なお、以下に説明する変速時アシスト制御処理は、制御部8が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0054】
ステップS1において、制御部8は、高電圧バッテリ6の充電量を検出する。ステップS1の処理を実行した後、制御部8は、ステップS2の処理を実行する。
【0055】
ステップS2において、制御部8は、変速を実行するか否かを判定する。制御部8は、例えば、車速やエンジン回転数などに基づいて変速を実行するか否かを判定する。
【0056】
変速を実行すると判定した場合には、制御部8は、ステップS3の処理を実行する。変速を実行しないと判定した場合には、制御部8は、変速時アシスト制御処理を終了する。
【0057】
ステップS3において、制御部8は、高電圧バッテリ6の充電量からモータ出力可能トルクを算出する。ステップS3の処理を実行した後、制御部8は、ステップS4の処理を実行する。
【0058】
ステップS4において、制御部8は、第1速度でクラッチ31の開放を開始する。ステップS4の処理を実行した後、制御部8は、ステップS5の処理を実行する。
【0059】
ステップS5において、制御部8は、クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなったか否かを判定する。
【0060】
クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなったと判定した場合には、制御部8は、ステップS6の処理を実行する。クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなっていないと判定した場合には、制御部8は、ステップS5の処理を繰り返す。
【0061】
ステップS6において、制御部8は、第2速度でクラッチ31の開放を開始し、モータ4にアシストトルクを出力させる。ステップS6の処理を実行した後、制御部8は、ステップS7の処理を実行する。
【0062】
ステップS7において、制御部8は、変速段の切替が完了したか否かを判定する。変速段の切替が完了したと判定した場合には、制御部8は、ステップS8の処理を実行する。変速段の切替が完了していないと判定した場合には、制御部8は、ステップS7の処理を繰り返す。
【0063】
ステップS8において、制御部8は、第2速度でクラッチ31の係合を開始する。ステップS8の処理を実行した後、制御部8は、ステップS9の処理を実行する。
【0064】
ステップS9において、制御部8は、クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなったか否かを判定する。
【0065】
クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなったと判定した場合には、制御部8は、ステップS10の処理を実行する。クラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなっていないと判定した場合には、制御部8は、ステップS9の処理を繰り返す。
【0066】
ステップS10において、制御部8は、モータ4によるアシストトルクの出力を終了させ、第1速度でクラッチ31の係合を開始する。ステップS10の処理を実行した後、制御部8は、変速時アシスト制御処理を終了する。
【0067】
このような変速時アシスト制御処理による動作について図3を参照して説明する。図3の下段のタイムチャートが本実施例のタイムチャートである。図3の上段のタイムチャートは、クラッチトルクがモータ出力可能トルク以下の期間(図中、t11からt12までの期間、及びt13からt14までの期間)にクラッチ31の操作速度を速くする場合を示している。
【0068】
図3において、時刻t1から時刻t2までの期間、及び時刻t3から時刻t4までの期間が許容期間となる。
【0069】
変速処理が開始された時刻を時刻0とし、時刻0からクラッチ31の完全係合の解除が開始されると、時刻0から時刻t1にかけて第1速度でクラッチ31が開放され、クラッチトルクが低下し、駆動軸11に伝わるトータルトルク(クラッチトルクとモータトルクを合算したトルク)も低下していく。このとき、トータルトルクは、モータ出力可能トルク+αより大きいため、トータルトルクは、クラッチトルクのみで満たされモータ4によるアシストトルクの出力は行なわれない。
【0070】
時刻t1において、トータルトルクまたはクラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなると、クラッチ31の開放速度が第1速度より速い第2速度に速められる。また、トータルトルクの減少速度が変わらないように、モータ4によりアシストトルクが出力される。
【0071】
時刻t2において、クラッチ31が完全に開放されると、変速機3の変速機構の変速段の切替が開始され、その間は、モータ4によるモータ出力可能トルクでのモータアシストが行なわれる。
【0072】
時刻t3において、変速機3の変速機構の変速段の切替が完了すると、クラッチ31の係合が、第2速度で開始され、モータ4によるアシストトルクは、トータルトルクの増加速度が、クラッチ31が完全に係合するまで一定となるように減らされる。
【0073】
時刻t4において、トータルトルクまたはクラッチトルクがモータ出力可能トルク+αと等しくなると、モータ4によるアシストトルクは無くなる。そして、時刻t5において、クラッチ31が完全係合して、変速処理が終了する。
【0074】
このようにすることで、クラッチ開放過程では、クラッチ31の開放速度を上昇させるタイミングが図3の上段に示したタイミングチャートと比較して早いため、クラッチ開放にかかる時間を短縮することができる。これによって、変速期間を短縮することができる。
【0075】
また、クラッチ接続過程では、クラッチ31の接続速度を低下させるタイミングが図3の上段に示したタイミングチャートと比較して遅いため、クラッチ接続にかかる時間を短縮することができる。これによって、変速期間を短縮することができる。
【0076】
また、図3の上段に示した場合では、ギアシフトの期間の前後に渡ってトータルトルクが一定となり、変速中の間延び感を感じさせる期間となっているが、本実施例では、ギアシフトの期間中のみトータルトルクが一定となるため、間延び感を感じる期間を短くすることができる。
【0077】
このように、本実施例では、制御部8は、変速時のクラッチ31の非完全係合期間中において、クラッチトルクの変化が許容される所定の許容期間では、クラッチ31の操作速度を速くし、クラッチトルクの変化に応じてモータ4からアシストトルクを出力させる。
これにより、変速中に運転者に感じさせる間延び感を抑制させることができる。
【0078】
また、許容期間は、変速時のクラッチ開放過程及びクラッチ接続過程における、クラッチトルクがモータ出力可能トルクより所定量大きなトルク以下の期間である。
【0079】
これにより、クラッチ開放過程及びクラッチ接続過程にかかる時間が短縮され、変速に要する時間が短くなる。このため、変速中に運転者に感じさせる間延び感を抑制させることができる。
【0080】
また、許容期間は、クラッチ開放過程及びクラッチ接続過程の少なくとも一方に設けられる。
【0081】
クラッチ開放過程に設けられた場合、クラッチ開放にかかる時間を短縮することができる。
【0082】
クラッチ接続過程に設けられた場合、クラッチ接続にかかる時間を短縮することができる。
【0083】
本実施例では、各種センサ情報に基づき制御部8が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0084】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0085】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
3 変速機(自動変速機)
4 モータ
6 高電圧バッテリ(バッテリ)
8 制御部
11 駆動軸
31 クラッチ
41 温度センサ
61 バッテリ状態センサ
81 アクセル開度センサ
82 クラッチストロークセンサ
図1
図2
図3