(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】サービス決定装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240703BHJP
【FI】
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2020160638
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 真
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/080250(WO,A1)
【文献】特開2014-104865(JP,A)
【文献】特開2016-199267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者に対して提案情報を出力する出力部と、
前記車両に搭載されたシート
の着座面に設けられ、該シートに着座した前記運転者とは異なる同乗者の
骨格の情報を検出する検出器と、
前記検出器により検出された前記同乗者
個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報と、複数の前記同乗者ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報と、を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された個人情報に基づいて、前記同乗者
個人を特定する
とともに、前記記憶部に記憶された共有情報に基づいて、前記検出器により検出された前記同乗者の骨格の情報に対応する嗜好の情報を特定する特定部と、
前記特定部により特定された
前記同乗者
の嗜好の情報に応じたサービス内容を決定する決定部と、を備え、
前記出力部は、前記決定部により決定されたサービス内容を出力することを特徴とするサービス決定装置。
【請求項2】
車両の運転者に対して提案情報を出力する出力部と、
前記車両に搭載されたシートの着座面に設けられ、該シートに着座した前記運転者とは異なる同乗者の骨格の情報を検出する検出器と、
前記同乗者個人の嗜好についての個人情報を取得する取得部と、
前記検出器により検出された前記同乗者個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報と、前記取得部により取得された前記同乗者個人の嗜好についての個人情報と、複数の前記同乗者ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報と、を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記同乗者個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報に基づいて、前記同乗者個人を特定する特定部と、
前記特定部により特定された前記同乗者に応じたサービス内容を決定する決定部と、を備え、
前記出力部は、前記決定部により決定されたサービス内容を出力し、
前記記憶部に記憶された前記同乗者個人の嗜好についての個人情報は、前記記憶部に記憶された共有情報に基づいて更新されることを特徴とするサービス決定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサービス決定装置において、
前記検出器は、前記車両の助手席に搭載された前記シートの着座面に設けられるセンサであることを特徴とするサービス決定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のサービス決定装置において、
前記決定部は、前記車両の外部のサーバに設けられ、
前記車両の乗員が携帯し、前記検出器により検出された前記同乗者の骨格の情報を前記サーバに送信するユーザ端末をさらに備えることを特徴とするサービス決定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のサービス決定装置において、
前記特定部は、前記サーバに設けられることを特徴とするサービス決定装置。
【請求項6】
請求項4に記載のサービス決定装置において、
前記特定部は、前記ユーザ端末に設けられることを特徴とするサービス決定装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のサービス決定装置において、
前記出力部は、前記車両の乗員が携帯するユーザ端末に設けられることを特徴とするサービス決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に提供するサービス内容を決定するサービス決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、従来、車両の乗員に対し、乗車状態に応じて各種情報を提供するようにした装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、車両に搭載されたカメラで乗員の顔を撮像するとともに、予め登録された顔画像と照合することで乗員を認識し、認識結果に応じて乗員に提供する情報の内容などを変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の装置では、乗員を認識するために乗員の顔がカメラで撮像されるため、乗員が不快に感じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるサービス決定装置は、車両の運転者に対して提案情報を出力する出力部と、車両に搭載されたシートの着座面に設けられ、そのシートに着座した運転者とは異なる同乗者の骨格の情報を検出する検出器と、検出器により検出された同乗者個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報と、複数の同乗者ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報と、を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された個人情報に基づいて、同乗者個人を特定するとともに、記憶部に記憶された共有情報に基づいて、検出器により検出された同乗者の骨格の情報に対応する嗜好の情報を特定する特定部と、特定部により特定された同乗者の嗜好の情報に応じたサービス内容を決定する決定部と、を備える。出力部は、決定部により決定されたサービス内容を出力する。
本発明の別の態様であるサービス決定装置は、車両の運転者に対して提案情報を出力する出力部と、車両に搭載されたシートの着座面に設けられ、そのシートに着座した運転者とは異なる同乗者の骨格の情報を検出する検出器と、同乗者個人の嗜好についての個人情報を取得する取得部と、検出器により検出された同乗者個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報と、取得部により取得された同乗者個人の嗜好についての個人情報と、複数の同乗者ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報と、を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された同乗者個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報に基づいて、同乗者個人を特定する特定部と、特定部により特定された同乗者に応じたサービス内容を決定する決定部と、を備える。出力部は、決定部により決定されたサービス内容を出力する。記憶部に記憶された同乗者個人の嗜好についての個人情報は、記憶部に記憶された共有情報に基づいて更新される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、不快感を与えずに乗員を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るサービス決定装置が適用される車両の車室内の構成を模式的に示す上面図。
【
図3】
図2のシートを構成するシートフレームの要部構成を概略的に示す斜視図。
【
図4A】
図2のシート内におけるエアセルの配置を概略的に示す要部断面図。
【
図4B】
図2のシート全体におけるエアセルの配置を示す斜視図。
【
図5A】
図2のシートバック内におけるエアセルの配置を概略的に示す断面図。
【
図6A】本発明の実施形態に係るサービス決定装置の全体構成を概略的に示すブロック図。
【
図7】
図6Aおよび
図6Bのサーバで管理される運転者ごとの個人情報について説明するための図。
【
図8】
図6Aおよび
図6Bの特定部により特定される同乗者の骨格タイプについて説明するための図。
【
図9】
図6Aおよび
図6Bのサーバで管理される共有情報について説明するための図。
【
図10】本発明の実施形態に係るサービス決定装置により実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図10を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態に係るサービス決定装置は、乗用車(以下、車両)の乗員に提供するサービス内容を決定する。
図1は、本発明の実施形態に係るサービス決定装置が適用される車両1の車室内の構成を模式的に示す上面図である。以下では、車両1の乗員(運転者P1および同乗者P2)を基準にして、図示のように前後方向、左右方向および上下方向を定義し、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0009】
図1に示すように、車両1の車室内には、運転者P1が着座する運転席および運転者P1以外の同乗者P2が着座する座席(図では助手席のみ示す)のそれぞれに、シート2が搭載される。各シート2には、乗員の着座の有無や姿勢などを検出する圧力センサなどのセンサ群3が設けられる。車室内前方のインストルメントパネルには、運転席付近に、スマートフォンやタブレット端末などのユーザ端末4を載置(保持)可能なクレイドル4aが設けられる。
【0010】
同乗者P2がいない場合、運転者P1は単に自身の好み(嗜好)に応じて車内で流すコンテンツやエアコンの設定、休憩のタイミングなどを決定すればよい。一方、同乗者P2がいる場合は、これらを乗員全体に対するサービスとして、同乗者P2の好みを考慮して決定することが好ましい。このため、運転者P1が同乗者P2を気遣うことで負担を感じることがある。そこで、本実施形態では、センサ群3からの信号に基づいて同乗者P2を特定し、同乗者P2に応じたサービス内容を決定するよう、以下のようにサービス決定装置を構成する。
【0011】
図2は、シート2の概略構成を示す斜視図である。
図2に示すように、シート2は、乗員の臀部を支持するシートクッション21と、乗員の腰部および背部を支持するシートバック22と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト23とを有する。
【0012】
シートクッション21は、前後方向および左右方向に延在し、上方から見ると全体が略矩形状を呈する。シートバック22は、上下方向および左右方向に延在し、前方から見ると全体が略矩形状を呈する。シート2は、内部にシートフレーム200(
図3)を有し、シートフレーム200を覆うようにウレタン樹脂製のパッド201とパッド201の表面の表皮202とを有する。シートクッション21の上面およびシートバック22の前面は、乗員が着座する着座面2aを構成し、着座面2aは、パッド201と表皮202とを介してシートフレーム200から支持される。
【0013】
シートバック22(
図3のサイドフレーム221,222)の下端部は、左右一対のリクライニング機構24を介してシートクッション21の後端部に、左右方向に延在する軸部24aを支点にして前後方向に傾動可能に支持される。
【0014】
図3は、シート2を構成するシートフレーム200の要部構成を概略的に示す斜視図である。
図3に示すように、シートフレーム200は、シートクッション21の骨格を構成するシートクッションフレーム210と、シートバック22の骨格を構成するシートバックフレーム220とを有する。シートクッションフレーム210は、前後方向に延在する左右一対のサイドフレーム211,212と、サイドフレーム211,212同士をそれぞれ連結する前後一対の連結フレーム213,214とを有する。
【0015】
シートバックフレーム220は、上下方向に延在する左右一対のサイドフレーム221,222と、サイドフレーム221,222同士を連結する上下一対の連結フレーム223,224とを有する。上側の連結フレーム223は、パイプ部材を略U字状に折り曲げて形成され、パイプ部材の両端部がサイドフレーム221,222の上端部を構成する。パイプ部材の両端部には、サイドフレーム221,222の一部である略板状のサイドフレーム(サイドプレート221a,222a)が接合される。サイドプレート221a,222aは、上下方向に細長にかつ前後方向に幅広に構成される。
【0016】
サイドフレーム221,222と連結フレーム223,224との間の空間には、略矩形状の支持プレート225が配置される。支持プレート225は、乗員の着座面2aからの自重を受け止める受圧板を構成する。支持プレート225は、シートバックフレーム220により支持される。例えば、図示のように支持プレート225の下端部が支持部226を介して連結フレーム224に支持されるとともに、上端部が左右一対のワイヤ状の支持部227を介して連結フレーム223から支持される。なお、支持プレート225は、左右のサイドフレーム221,222に支持されるようにしてもよい。
【0017】
支持プレート225の前面には、複数(図では4個)のエアセル30a(下から順番にエアセル31a~34a)が上下方向に並んで配置される。エアセル30aは、空気(圧縮空気)が封入された空気袋であり、正面視略矩形状に構成される。乗員がシート2に着座し、着座面2aからの押圧力が変化すると、エアセル30内の空気が圧縮されて圧力が変化する。
【0018】
図4Aは、シート2内におけるエアセル30a,30bの配置を概略的に示す要部断面図であり、
図4Bは、シート2全体におけるエアセル30a,30bの配置を示す斜視図である。なお、
図4Bにはエアセル30a(31a~34a)の配置を点線で示す。
【0019】
図4Aに示すように、エアセル30bは、エアセル30aに比べて小型に構成され、パッド201の前面に配置される。より詳しく、エアセル30bは、パッド201と、表皮202との間に介装される。このようにエアセル30bがパッド201の前側に配置されることで、乗員がシート2に着座したときの着座面2aからの押圧力の変化を、精度よく捉えることができる。
【0020】
図4Bに示すように、シートバック22内の複数のエアセル30bは、左右方向に分かれて高さ方向に列状に配置される。すなわち、複数のエアセル30bは、シートバック22の最下部に配置された左右一対のエアセル31bL,31bRと、エアセル31bL,31bRの上方に配置された左右一対のエアセル32bL,32bRと、エアセル32bL,32bRの上方に配置された左右一対のエアセル33bL,33bRと、エアセル33bL,33bRの上方に配置された左右一対のエアセル34bL,34bRとを有する。右側のエアセル31bR~34bRを右列エアセル30bR、左側のエアセル31bL~34bLを左列エアセル30bLと呼ぶことがある。
【0021】
前方から見ると、エアセル30bは、それぞれエアセル30aと重なるように配置される。すなわち、エアセル31bL,31bRはエアセル31aに、エアセル32bL,32bRはエアセル32aに、エアセル33bL,33bRはエアセル33aに、エアセル34bL,34bRはエアセル34aに、それぞれ重なるよう配置される。エアセル30bの配置や個数は上述したものに限らない。例えば、シートバック22の最上部のエアセル34aよりも上方に、左右一対のエアセル30bを配置してもよい。
【0022】
エアセル30bは、シートバック22だけでなく、シートクッション21にも配置される。例えばシートクッション21の表皮202の裏側(下側)に、左右に分かれて前後方向に列状に配置される。なお、シートクッション21の右側の複数のエアセル30bを右列エアセル35bR、左側の複数のエアセル30bを左列エアセル35bLと呼ぶことがある。
【0023】
以下では、エアセル30a(31a~34a),30b(30bL(31bL~35bL),30bR(31bR~35bR))をエアセル30と総称する。なお、エアセル31a,31bL,31bRを1番目エアセル31と、エアセル32a,32bL,32bRを2番目エアセル32と、エアセル33a,33bL,33bRを3番目エアセル33と、エアセル34a,34bL,34bRを4番目エアセル34と呼ぶことがある。また、エアセル31bL,31bRをエアセル31bと、エアセル32bL,32bRをエアセル32bと、エアセル33bL,33bRをエアセル33bと、エアセル34bL,34bRをエアセル34bと呼ぶことがある。
【0024】
図5Aは、シートバック22内におけるエアセル31~34の配置を概略的に示す断面図である。
図5Aに示すように、複数のエアセル31~34は、シート2に着座する乗員の骨格における複数の部位、例えば脊椎に沿った複数の部位に対応して配置される。より具体的には、1番目エアセル31は乗員の腰椎下部の位置に対応して配置され、2番目エアセル32は腰椎上部の位置に対応して配置され、3番目エアセル33は胸椎下部の位置に対応して配置され、4番目エアセル34は胸椎上部の位置に対応して配置される。
【0025】
複数のエアセル31~34のうち、エアセル31a~34aは、それぞれ支持プレート225と前面プレート228との間に配置され、エアセル31b~34bは、それぞれパッド201と表皮202との間に配置される。前面プレート228は、支持プレート225よりも剛性の低い可撓性を有する材質(例えば樹脂材)により構成される。乗員がシート2に着座すると、着座面2aから表皮202を介してエアセル31b~34bが後方に押圧され、エアセル31b~34b内の空気の圧力が変化する。エアセル31b~34bが後方に押圧されると、パッド201を介して前面プレート228が後方に押圧され、前面プレート228が変形し、側面視の形状、すなわち湾曲形状が変化し、エアセル31a~34a内の空気の圧力が変化する。
【0026】
エアセル30の個数や配置は、
図5Aのものに限らない。
図5Bは、
図5Aの変形例を示す図である。
図5Bの例では、上下方向に3つのエアセル31~33が並べて配置される。すなわち、1番目エアセル31が乗員の骨盤の位置に対応して配置され、2番目エアセル32が腰の位置に対応して配置され、3番目エアセル33が肩の位置に対応して配置される。なお、
図5A、
図5Bの前面プレート228を省略し、着座面2a側のパッド201の裏面(後面)により、エアセル30aが直接押圧されるようにしてもよい。
【0027】
各エアセル31~34には、内部の空気の圧力をそれぞれ検出する複数の圧力センサ31s~34sが設けられる。より具体的には、エアセル31a,31bL,31bR内の圧力p1a,p1bL,p1bRをそれぞれ検出する圧力センサ31sa,31sbL,31sbRと、エアセル32a,32bL,32bR内の圧力p2a,p2bL,p2bRをそれぞれ検出する圧力センサ32sa,32sbL,32sbRと、エアセル33a,33bL,33bR内の圧力p3a,p3bL,p3bRをそれぞれ検出する圧力センサ33sa,33sbL,33sbRと、エアセル34a,34bL,34bR内の圧力p4a,p4bL,p4bRをそれぞれ検出する圧力センサ34sa,34sbL,34sbRとが設けられる。圧力センサ31s~34sは、例えばエアセル31~34に接続してそれぞれ設けられ、あるいはエアセル31~34に連通する空気通路に接続してそれぞれ設けられる。
【0028】
圧力センサ31s~34sは、1番目エアセル31内の第1圧力p1、2番目エアセル32内の第2圧力p2、3番目エアセル33内の第3圧力p3、および4番目エアセル34内の第4圧力p4をそれぞれ検出する。例えば、圧力センサ31sa,31sbL,31sbRによりそれぞれ検出された圧力p1a,p1bL,p1bRの平均値を第1圧力p1、圧力センサ32sa,32sbL,32sbRによりそれぞれ検出された圧力p2a,p2bL,p2bRの平均値を第2圧力p2、圧力センサ33sa,33sbL,33sbRによりそれぞれ検出された圧力p3a,p3bL,p3bRの平均値を第3圧力p3、圧力センサ34sa,34sbL,34sbRによりそれぞれ検出された圧力p4a,p4bL,p4bRの平均値を第4圧力p4として検出する。
【0029】
なお、図示は省略するが、シート2には、大気圧測定用のセンサ(大気圧センサ)も設けられる。圧力センサ31s~34sにより検出される圧力は、大気圧センサにより検出された大気圧により補正される。すなわち、大気圧は、地上での気圧を1とすると、標高が高くなるにつれて下がる。したがって、大気圧センサにより検出される気圧が標準的な気圧の場合には圧力センサ31s~34sの検出値をそのまま用いるが、検出される気圧が所定範囲から外れると大気圧センサにより検出された気圧に応じて圧力センサ31s~34sの検出値を補正する。
【0030】
さらにシート2には、シートクッション21およびシートバック22の着座面2aに、乗員の着座の有無を検出する着座センサ36が配置される。圧力センサ31s~34s、大気圧センサ、および着座センサ36をセンサ群3と総称する。
【0031】
図6Aおよび
図6Bは、本発明の実施形態に係るサービス決定装置(以下、装置)10の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図6Aおよび
図6Bに示すように、装置10は、車両1に搭載されたシート2に設けられたセンサ群3と、車両1の乗員が携帯するユーザ端末4と、車両1の外部のサーバ5とを有する。
【0032】
センサ群3とユーザ端末4とは、USBなどのケーブルを介して有線で、あるいは無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を介して無線で接続される。
【0033】
ユーザ端末4とサーバ5とは、インターネット網や携帯電話網等に代表される公衆無線通信網を含むネットワーク6に接続され、ネットワーク6を介して互いに通信可能に構成される。ネットワーク6には、公衆無線通信網だけでなく、所定の管理地域ごとに設けられた閉鎖的な通信網、例えば無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等も含まれる。
【0034】
図6Aおよび
図6Bには1台の車両1のシート2に搭載されたセンサ群3を示すが、装置10は複数台の車両1のシート2に搭載されたセンサ群3を含んで構成してもよい。また、
図6Aおよび
図6Bには1つのユーザ端末4を示すが、装置10は複数のユーザ端末4を含んで構成してもよい。また、
図6Aおよび
図6Bには単一のサーバ5を示すが、サーバ5は機能を分散させた複数のサーバにより構成してもよい。
【0035】
ユーザ端末4は、例えば運転者P1が携帯するスマートフォンにより構成され、CPUなどの演算部41と、ROM,RAMなどの記憶部42と、タッチパネルディスプレイ、マイク、スピーカなどの入出力部43と、アンテナなどの通信部44とを有する。ユーザ端末4には、車両1の乗員に提供するサービス内容を提案するためのアプリケーションが予めインストールされ、アプリケーションのデータが、ユーザ端末4を所有する運転者P1の識別情報とともに、記憶部42に記憶される。アプリケーションのデータはサーバ5にも記憶され、各種の機能がアプリケーションプログラミングインタフェース(API)によりユーザ端末4側とサーバ5側とで提供される。
【0036】
運転者P1は、タッチパネルやマイクなどの入出力部43を介して各種の情報を入力することができる。例えば、運転者P1本人や同乗者P2の嗜好の情報を入力し、運転者P1ごとの個人情報として登録することができる。
【0037】
同乗者P2には、現在同乗している同乗者P2のほか、今後同乗する予定の同乗者P2、過去に同乗した同乗者P2が含まれる。現在同乗している同乗者P2の嗜好の情報を登録する場合は、同乗者P2の個人名(例えばニックネーム。図ではA~C)を指定して登録を行う。今後同乗する予定の同乗者P2や過去に同乗した同乗者P2の嗜好の情報を登録する場合は、同乗者P2の個人名とともに乗車期間を指定して登録を行う。登録済みの同乗者P2の嗜好の情報を変更する場合は、登録済みの同乗者P2の個人名を指定して変更を行う。
【0038】
入出力部43を介して入力された個人情報は、記憶部42に記憶された運転者P1の識別情報とともに、通信部44およびネットワーク6を介してサーバ5に送信され、管理される。
【0039】
図7は、サーバで5管理される運転者P1ごとの個人情報について説明するための図であり、嗜好の情報の一例を示す。
図7に示すように、運転者P1は、自分自身や自身が運転する車両1に乗車する同乗者P2について、車内で流すコンテンツやエアコンの設定、休憩のタイミングなどの好みに関する嗜好の情報を登録することができる。なお、運転者P1本人のコンテンツに関する嗜好の情報は、ユーザ端末4に登録されている楽曲のプレイリストなどの情報に基づいて自動的に登録されてもよい。
【0040】
このような嗜好の情報を登録しておくことで、同乗者P2がいないときは運転者P1本人の嗜好に応じて、同乗者P2がいるときは同乗者P2の嗜好に応じて、車内で流すコンテンツなどの車両1の乗員に提供するサービス内容の提案を受けることができる。なお、運転者P1が、同乗者P2がいないときは単に自身の嗜好に応じて決定すればよく、サービス内容の提案を不要と考える場合は、同乗者P2がいないときの嗜好の情報(運転者P1本人の嗜好の情報)を登録する必要はない。
【0041】
さらに運転者P1は、タッチパネルやマイクなどの入出力部43を介して、ユーザ端末4と同乗者P2のシート2に設けられたセンサ群3との無線接続を許可するための初期設定を行うことができる。初期設定後は、運転者P1が車両1に乗車してユーザ端末4がセンサ群3との無線接続圏内に入ると、ユーザ端末4が通信部44を介してセンサ群3に自動的に接続される。
【0042】
ユーザ端末4がセンサ群3に接続されると、センサ群3からの信号がユーザ端末4に入力されて一時的に記憶部42に記憶され、演算部41での処理により通信部44およびネットワーク6を介して所定周期でサーバ5に送信される。センサ群3からの信号も、運転者P1ごとの個人情報として、記憶部42に記憶された運転者P1の識別情報とともにサーバ5に送信される。
【0043】
サーバ5は、CPUなどの演算部51と、ROM,RAMなどの記憶部52と、I/Oインターフェース等の図示しないその他の周辺回路とを有するコンピュータを含んで構成される。演算部51は、機能的構成として、サーバ5の外部から各種の情報を取得する取得部53と、同乗者P2を特定する特定部54と、同乗者P2に応じたサービス内容を決定する決定部55とを有する。記憶部52は、機能的構成として、運転者P1ごとの個人情報を管理する個人データベース(以下、D/B)56と、複数の運転者P1の個人情報に基づく共有情報を管理する共有D/B57とを有する。
図6Bに示すように、特定部54は、ユーザ端末4の演算部41の機能的構成として設けられてもよい。
【0044】
取得部53は、ネットワーク6を介してユーザ端末4からサーバ5に送信された運転者P1ごとの個人情報を取得する。取得部53により取得された運転者P1ごとの個人情報は、記憶部52の個人D/B56に記憶され、運転者P1の識別情報に関連付けて管理される。
【0045】
特定部54は、取得部53により取得された運転者P1ごとの個人情報のうち、センサ群3からの信号に基づいて同乗者P2を特定する。より具体的には、着座センサ36からの信号に基づいて同乗者P2の有無を判定するとともに、同乗者P2がいると判定されると、圧力センサ31s~34sからの信号に基づいて同乗者P2の骨格タイプを特定する。
【0046】
図8は、特定部54により特定される同乗者P2の骨格タイプについて説明するための図であり、骨格タイプの一例を示す。
図8に示すように、特定部54は、第1圧力p1~第4圧力p4の大きさに応じて、同乗者P2を体重の軽重に応じた複数のタイプ(図では3つのタイプ1~3)に分類する。また、第1圧力p1~第4圧力p4のバランスに応じて、同乗者P2を姿勢が猫背か反腰かの傾向に応じた複数のタイプ(図では3つのタイプα~γ)に分類する。
【0047】
例えば、第1圧力p1や第2圧力p2よりも第3圧力p3や第4圧力p4の方が小さい場合、姿勢が猫背傾向(タイプα)であると判定する。反対に、第1圧力p1や第2圧力p2よりも第3圧力p3や第4圧力p4の方が大きい場合、姿勢が反腰傾向(タイプγ)であると判定する。一方、第1圧力p1~第4圧力p4の差異が小さい場合、姿勢が標準的なS字傾向(タイプβ)であると判定する。
【0048】
さらに特定部54は、第1圧力p1~第4圧力p4の大きさに応じたタイプ1~3および第1圧力p1~第4圧力p4のバランスに応じたタイプα~γの判定結果に基づいて、同乗者P2の骨格タイプ(図では9つの骨格タイプα1~γ3)を特定する。例えば、体重が標準より軽いタイプ1で姿勢が猫背傾向のタイプαであれば、骨格タイプα1として特定する。このような判定は、例えば、予め記憶部52に記憶された第1圧力p1~第4圧力p4と体重の軽重に応じたタイプ1~3および姿勢の傾向に応じたタイプα~γとの対応関係に基づいて行われる。
【0049】
特定部54による骨格タイプの特定は、同乗者P2が検出された時点の第1圧力p1~第4圧力p4だけでなく、同乗者P2が着座している期間(車両1のドライブサイクル)の第1圧力p1~第4圧力p4の時間経過に伴う変化パターンに基づいて行ってもよい。また、気温や時間帯による変化、年月の経過に伴う変化などを考慮して行ってもよい。
【0050】
運転者P1ごとの個人情報として新たな同乗者P2が登録されると、特定部54により特定された骨格タイプの情報が指定された同乗者P2の骨格タイプとして登録され、記憶部52の個人D/B56に記憶された運転者P1の個人情報(
図7)が更新される。
【0051】
特定部54は、記憶部52の個人D/B56に記憶された運転者P1の個人情報を参照し、登録済みの同乗者P2の中から、特定された骨格タイプに対応する同乗者P2を特定する。例えば、同乗者P2の骨格タイプが骨格タイプα1として特定された場合は、同乗者P2を「B」として同乗者P2個人を特定する(
図7)。一方、登録済みの同乗者P2の中に特定された骨格タイプに対応する同乗者P2がいない場合は、同乗者P2を特定された骨格タイプの新たな同乗者P2として特定する。
【0052】
決定部55は、特定部54により特定された同乗者P2に応じたサービス内容を決定する。例えば、同乗者P2がいないと判定された場合は、記憶部52の個人D/B56に記憶された運転者P1の個人情報を参照し、同乗者P2がいないときの嗜好の情報(運転者P1本人の嗜好の情報)に基づいてサービス内容を決定する。また、同乗者P2個人が特定された場合は、同乗者P2個人の嗜好の情報に基づいてサービス内容を決定する。また、同乗者P2個人が特定されなかった場合は、特定された骨格タイプの代表的な嗜好の情報に基づいてサービス内容を決定する。
【0053】
図9は、サーバで5管理される共有情報について説明するための図であり、複数の運転者P1の個人情報に基づく共有情報の一例を示す。記憶部52の個人D/B56では、
図7に示すような個人情報が複数の運転者P1について管理され、全体として、各運転者P1の同乗者P2として登録された多数の個人についての骨格タイプと嗜好の情報が蓄積されている。このような多数の個人についての骨格タイプと嗜好の情報を利用することで、例えば、骨格タイプごとに最も多い嗜好を代表的な嗜好として決定することができる。
【0054】
図9に示すように、記憶部52の共有D/B57には、
図7の個人D/B56に蓄積された多数の個人についての骨格タイプと嗜好の情報に基づいて決定された、骨格タイプごとの代表的な嗜好についての共有情報が記憶される。共有D/B57の共有情報は、個人D/B56の個人情報が追加、変更される度に更新される。すなわち、個人D/B56の個人情報として新たな運転者P1が登録された場合、登録済みの運転者P1について新たな同乗者P2が登録された場合、登録済みの同乗者P2の嗜好の情報が変更された場合などに、共有D/B57の共有情報が更新される。
【0055】
また、個人D/B56の個人情報(
図7)のうち同乗者P2ごとの嗜好の情報は、
図9の共有D/B57の共有情報(
図9)に基づいて更新することができる。例えば、
図7の例では、個人D/B56の個人情報において、登録済みの同乗者P2である「B」の「休憩時間」についての嗜好の情報が欠けている。このような場合は、
図9の共有D/B57の共有情報に基づいて、「B」の骨格タイプα1に対応する「休憩時間」についての代表的な嗜好「短」を個人D/B56の個人情報における「B」の嗜好の情報として補完する。また、同乗者P2を登録後、所定期間(例えば数年間)経過した場合は、嗜好の情報が変化している可能性が高いとして、登録されている同乗者P2個人の嗜好の情報を骨格タイプに対応する最新の代表的な嗜好に基づいて変更してもよい。
【0056】
決定部55は、記憶部52の個人D/B56および共有D/B57に記憶され、更新された最新の個人情報および共有情報に基づいて、同乗者P2に応じたサービス内容を決定する。決定部55により決定された同乗者P2に応じたサービス内容は、ユーザ端末4に送信され、ユーザ端末4のスピーカやディスプレイなどの入出力部43を介して、運転者P1に対する提案情報として出力される。これにより運転者P1は、自身と嗜好の異なる同乗者P2を載せて運転するときでも、提案情報を考慮して、同乗者P2の嗜好に応じた車内コンテンツやエアコンの温度設定、休憩のタイミングなどを決定することができる。
【0057】
図10は、装置10により実行される処理の一例を示すフローチャートであり、
図6Aのサーバ5の演算部51、あるいは、
図6Bのユーザ端末4の演算部およびサーバ5の演算部51で実行される処理の一例を示す。
図10の処理は、例えば運転者P1が車両1に乗車してシート2とユーザ端末4とが接続されると開始され、同乗者P2が乗車または降車して着座センサ36からの出力が変化する度に繰り返される。
【0058】
図10に示すように、先ずステップS1で、特定部54での処理により、着座センサ36からの信号に基づいて同乗者P2の有無を判定する。ステップS1で同乗者P2がいないと判定されると、ステップS2に進み、決定部55での処理により、運転者P1の個人D/B56を参照して運転者P1本人の嗜好に応じたサービス内容を決定し、ユーザ端末4に送信する。
【0059】
一方、ステップS1で同乗者P2がいると判定されると、ステップS3に進み、特定部54での処理により、圧力センサ31s~34sからの信号に基づいて同乗者P2の骨格タイプを特定する。次いでステップS4で、運転者P1の個人D/B56を参照し、ステップS3で特定された骨格タイプの同乗者P2が登録されているか否かを判定する。
【0060】
ステップS4で肯定されると、ステップS5に進み、決定部55での処理により、個人D/Bに登録された個人情報に基づいて、同乗者P2個人の嗜好に応じたサービス内容を決定し、ユーザ端末4に送信する。一方、ステップS4で否定されると、ステップS6に進み、決定部55での処理により、共有D/Bに登録された共有情報に基づいて、ステップS3で特定された骨格タイプの代表的な嗜好に応じたサービス内容を決定し、ユーザ端末4に送信する。
【0061】
このように、同乗者P2がいないときは運転者P1本人の嗜好に応じて、同乗者P2がいるときは同乗者P2の嗜好に応じて、車内で流すコンテンツやエアコンの設定、休憩のタイミングなどのサービス内容が提案される(ステップS2,S5,S6)。これにより、運転者P1が自身と嗜好の異なる同乗者P2を載せて運転するときの、気遣いによる負担を軽減することができる。また、運転者P1が嗜好の情報を登録していない同乗者P2についても、骨格タイプを特定し(ステップS3)、骨格タイプに応じた代表的な嗜好に基づく提案を行うことができる(ステップS6)。
【0062】
本発明の実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置10は、車両1の運転者P1に対して提案情報を出力する入出力部43と、車両1に搭載されたシート2に設けられ、そのシート2に着座した運転者P1とは異なる同乗者P2の生体情報を検出するセンサ群3(圧力センサ31s~34s、着座センサ36)と、センサ群3により検出された同乗者P2の生体情報に基づいて、同乗者P2を特定する特定部54と、特定部54により特定された同乗者P2に応じたサービス内容を決定する決定部55とを備える(
図1、
図3~
図6B)。入出力部43は、決定部55により決定されたサービス内容を出力する。
【0063】
シート2に設けられたセンサ群3を用いて同乗者P2が特定されるため、乗員に対して顔にカメラを向けられたときのような不快感を与えることなく、同乗者P2に応じたサービス内容を提案することができる。
【0064】
(2)センサ群3は、車両1の助手席に搭載されたシート2に設けられる(
図1)。助手席の同乗者P2を特定することで、運転者P1以外の同乗者P2の有無を判定し、車両1の乗車状態に応じたサービス内容を提案することができる。
【0065】
(3)決定部55は、車両1の外部のサーバ5に設けられる(
図6A、
図6B)。装置10は、車両1の乗員(運転者P1、同乗者P2)が携帯し、センサ群3により検出された同乗者P2の生体情報をサーバ5に送信するユーザ端末4をさらに備える(
図6A、
図6B)。すなわち、車両1の乗員が携帯するスマートフォンやタブレット端末などのユーザ端末4を、有線または無線により車内のセンサ群3に接続するとともに、ネットワーク6を介して車外のサーバ5に接続する。これにより、ユーザ端末4(通信部44)を介して、車内のセンサ群3の検出値を車外のサーバ5に送信することができる。
【0066】
(4)特定部54は、サーバ5に設けられる(
図6A)。この場合、サーバ5側での処理により、同乗者P2が特定される。
【0067】
(5)特定部54は、ユーザ端末4に設けられる(
図6B)。この場合、ユーザ端末4側での処理により、同乗者P2が特定される。
【0068】
(6)入出力部43は、車両1の乗員が携帯するユーザ端末4に設けられる(
図6A、
図6B)。すなわち、ユーザ端末4がネットワーク6を介して車外のサーバ5に接続され、ユーザ端末4のディスプレイやスピーカ(入出力部43)を介してサーバ5からの提案情報が出力される。このため、車両1に搭載されたディスプレイやスピーカを使用する必要がなく、サーバ5からの提案情報の出力にあたって車両1のナビゲーションシステムによるルート案内などを妨げることがない。
【0069】
(7)センサ群3は、シート2の着座面2aに設けられ、同乗者P2の骨格の情報を検出する(
図5A、
図5B、
図8)。例えば、脊椎の部位ごとの押圧力の大きさやバランスに基づいて、同乗者P2の体重の軽重を判定したり、猫背や反腰などの姿勢を判定したりすることで、同乗者P2を複数の骨格タイプに分類することができる。
【0070】
(8)装置10は、センサ群3により検出された同乗者P2個人の骨格の情報の時間経過に伴う変化についての個人情報を記憶する記憶部52をさらに備える(
図6A、
図6B)。特定部54は、記憶部52に記憶された個人情報に基づいて、同乗者P2個人を特定する。例えば、初回乗車時に検出された骨格の情報を同乗者P2の個人情報として登録しておくことで、次回乗車時に検出された骨格の情報に基づいて同乗者P2個人を特定することができる。
【0071】
(9)記憶部52は、複数の同乗者P2ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報を記憶する(
図9)。特定部54は、記憶部52に記憶された共有情報に基づいて、センサ群3により検出された同乗者P2の骨格の情報に対応する嗜好の情報を特定する。決定部55は、特定部54により特定された同乗者P2の嗜好の情報に応じたサービス内容を決定する。
【0072】
例えば、複数の運転者P1が登録した複数の同乗者P2ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報を蓄積することで、蓄積された共有情報に基づいて骨格タイプごとの代表的な嗜好の情報を決定することができる。この場合、嗜好の情報が登録されていない同乗者P2についても、乗車時に検出された骨格の情報に基づいて骨格タイプを特定し、その骨格タイプの代表的な嗜好の情報に応じたサービス内容を決定することができる。
【0073】
(10)装置10は、同乗者P2個人の嗜好についての個人情報を取得する取得部53をさらに備える(
図6A、
図6B、
図7)。記憶部52は、複数の同乗者P2ごとの骨格の情報と嗜好の情報とを対応付けた共有情報と、取得部53により取得された同乗者P2個人の嗜好についての個人情報とを記憶する(
図7、
図9)。記憶部52に記憶された同乗者P2個人の嗜好についての個人情報は、記憶部52に記憶された共有情報に基づいて更新される。例えば、登録された嗜好の情報が欠けている場合や、時間が経って変化したような場合には、同乗者P2の骨格タイプに対応する代表的な嗜好の情報に応じて個人情報を補完したり、変更したりすることができる。
【0074】
上記実施形態では、
図1において2人乗りの車両1を例示したが、車両は3人乗り以上のものでもよい。また、
図1などで車両1の助手席のシート2に着座した同乗者P2に応じたサービス内容を提案する例を説明したが、車両に搭載されたシートに着座した同乗者は助手席の同乗者に限らない。例えば後部座席など、助手席以外の座席の同乗者に応じたサービス内容を提案してもよい。また、複数の同乗者に応じたサービス内容を提案してもよい。
【0075】
上記実施形態では、
図3~
図5Bなどで、乗員の脊椎に沿った複数の部位に対応してシートバック22に圧力センサ31s~34sを配置し、第1圧力p1~第4圧力p4を検出する例を説明したが、検出器で検出する生体情報は、このようなものに限らない。例えば、シートバック22の左右側それぞれに圧力センサを配置し、左右側それぞれの押圧力を検出してもよい。この場合、左右側の押圧力のバランスに基づいて姿勢の傾向を分類することができる。シートクッション21やヘッドレスト23に圧力センサを配置して、脊椎以外の骨格における複数の部位の押圧力を検出してもよい。
【0076】
また、生体情報を検出する検出器は、圧力センサに限らず、骨格における複数の部位の曲率κ(曲率半径の逆数)を検出する光ファイバなどであってもよい。この場合、例えば、
図5Aおよび
図5Bの前面プレート228を、可撓性を有する光ファイバ樹脂(プラスチック光ファイバ)により構成するとともに、センサ群3として前面プレート228の各部の光の屈折率に応じた信号を検出する検出器を設ける。
【0077】
乗員がシート2に着座すると、着座面2aからパッド201を介して前面プレート228が押圧され、前面プレート228が変形して湾曲形状(曲率半径、曲率)が変化することで、前面プレート228の各部の光の屈折率が変化する。したがって、前面プレート228の各部の光の屈折率に基づいて、前面プレート228の各部の曲率を検出することができる。これにより、例えば、乗員の腰椎下部、腰椎上部、胸椎下部、および胸椎上部の位置に対応した前面プレート228の各部の曲率κ1~κ4が検出される。
【0078】
この場合、特定部54は、センサ群3からの信号に基づいて、前面プレート228の各部の曲率κ1~κ4の大きさやバランスに応じた同乗者P2の骨格タイプ(例えば、骨格診断のウェーブ、ストレート、ナチュラルなどの骨格タイプ)を特定することができる。
【0079】
また、生体情報を検出する検出器は、骨格における複数の部位の生体情報を検出するものに限らず、心拍を検出する心拍センサ、指紋を検出する指紋センサ、脳波を検出する脳波センサなどであってもよい。これらのセンサは、シート2の着座面2a(例えば、シートクッション21の前端部、あるいはアームレスト)に設けられ、乗員に直接接触して生体情報を検出する。この場合、例えば、着座センサ36により着座が検出されると、乗員に対し、安静にしてセンサに触れるようにアナウンスを行うことで、正確な生体情報を検出することができる。
【0080】
上記実施形態では、
図1などで運転者P1が携帯するユーザ端末4を介して提案情報を出力する例を説明したが、車両の運転者に対して提案情報を出力する出力部は、このようなものに限らない。運転者P1以外の乗員(同乗者P2)が携帯するユーザ端末4を介して提案情報を出力してもよい。また、車両1に搭載されたディスプレイやスピーカを介して提案情報を出力してもよい。
【0081】
上記実施形態では、
図6Aおよび
図6Bなどで、センサ群3からの信号がユーザ端末4を介してサーバ5に送信される例を説明したが、シート2側に通信部を設け、センサ群3からの信号を、シート2側の通信部を介してサーバ5に送信してもよい。例えば、
図2のシートクッション21の下方、内部、あるいは
図3の支持プレート225の裏面に、CPUなどの演算部、ROM,RAMなどの記憶部、アンテナなどの通信部を有するシートコントローラを設け、センサ群3と接続する。この場合、センサ群3からの信号は、シートコントローラに入力され、一時的に記憶部に記憶された後、演算部での処理により通信部およびネットワーク6を介して所定周期でサーバ5に送信される。
【0082】
上記実施形態では、提案されるサービス内容について、車内で流すコンテンツやエアコンの設定、休憩のタイミングなどを例示したが、同乗者に応じて決定され、車両の運転者に対する提案情報として出力されるサービス内容は、このようなものに限らない。例えば、休憩時に立ち寄る施設や乗車中の姿勢改善のための運動などであってもよい。
【0083】
上記実施形態では、
図8などで具体的な骨格タイプを例示したが、同乗者ごとの骨格の情報は、このようなものに限らない。すなわち、
図8に示すような体重の軽重と姿勢の傾向の2つのパラメータによる2次元の分類に限らず、その他のパラメータを加えた3次元以上の分類を行ってもよい。また、パラメータごとのタイプについても、
図8に示すような3つの分類に限らず、4つ以上に分類してもよい。
【0084】
上記実施形態では、
図7および
図9などで、嗜好の情報についての具体的な項目を例示したが、同乗者ごとの嗜好の情報は、このようなものに限らない。例えば、休憩時に立ち寄る施設のジャンルなどについての好みであってもよい。
【0085】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 車両、2 シート、2a 着座面、3 センサ群、4 ユーザ端末、5 サーバ、6 ネットワーク、10 装置(サービス決定装置)、21 シートクッション、22 シートバック、23 ヘッドレスト、30~34 エアセル、31s~34s 圧力センサ、36 着座センサ、41 演算部、42 記憶部、43 入出力部、44 通信部、51 演算部、52 記憶部、53 取得部、54 特定部、55 決定部、56 個人D/B、57 共有D/B、201 パッド、228 前面プレート