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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物およびタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240703BHJP
   C08L 61/14 20060101ALI20240703BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240703BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L61/14
C08K3/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023050321
(22)【出願日】2023-03-27
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】土方 健介
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200978(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110539540(CN,A)
【文献】特開2009-51975(JP,A)
【文献】特表2002-526592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,B60C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに窒素吸着比表面積(NSA)が100~500m/gのカーボンブラックを50~200質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムは、スチレン量が35質量%未満のスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにガラス転移温度(Tg)が-40℃以上の液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを含むことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、ドライグリップ性能を向上させ、優れた操縦安定性および耐摩耗性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤに求められる性能は多岐にわたっているが、その中で、グリップ性能、操縦安定性および耐摩耗性を高い水準で維持することが要求されている。
この要求は、サーキット走行向けの競技用タイヤにも存在する。従来技術において、高比表面積のフィラーや高い軟化点を有する樹脂(高軟化点樹脂)を多量配合する技術が知られているが、高比表面積のフィラーを多量配合すると破断強度の低下に伴う耐摩耗性の悪化が問題となり、高軟化点樹脂の多量配合では硬度が低下することにより操縦安定性の悪化が問題となる。
【0003】
なお、下記特許文献1には、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N2SA)が100~500m/gのカーボンブラックを50~200質量部、および酸価が30mgKOH/g以上かつ水酸基価が5mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を5~50質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかし、下記で説明する酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂については開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6791277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的はドライグリップ性能を向上させ、優れた操縦安定性および耐摩耗性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに対し、特定範囲の酸価を有するロジン変性フェノール樹脂を特定量で配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は、ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合してなることを特徴としているので、ドライグリップ性能を向上させ、優れた操縦安定性および耐摩耗性を有するタイヤ用ゴム組成物およびそれを用いたタイヤを提供することができる。
【0009】
本発明に使用されるロジン変性フェノール樹脂は、ジエン系ゴムとの相溶性に優れ、また、酸価が低いためゴム組成物中のアルカリ性成分(例えば加硫促進剤)の機能を十分に発揮させることができ、ドライグリップ性能、操縦安定性および耐摩耗性を良化させるものと推察される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、通常のゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのジエン系ゴムの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはSBRが好ましい。SBRの配合量は、例えば競技用途である場合、好ましくは80質量部以上、さらに好ましくは100質量部であることができる。
【0012】
またSBRは、スチレン量が35質量%未満であることにより、本発明の効果、とくにドライグリップ性能をさらに高めることができる。該スチレン量は、30~10質量%がさらに好ましい。
【0013】
(ロジン変性フェノール樹脂)
本発明で使用されるロジン変性フェノール樹脂は、ロジン系樹脂、フェノール類、ホルムアルデヒドおよびポリオールの反応生成物であることができる。
ロジン系樹脂としては、例えばガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等の未変性ロジン;未変性ロジンから誘導される重合ロジン;未変性ロジンや重合ロジンの不均化物または水素化物;未変性ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸を反応させることにより得られる不飽和カルボン酸変性ロジン等が挙げられる。
フェノール類としては、例えばフェノール;メチルフェノール(クレゾール)、ブチルフェノール、ペンチルクレゾール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキシルデシルフェノール等のアルキルフェノール等が挙げられる。
ホルムアルデヒドとしては、例えばホルマリン、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。
ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン等のトリオール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジトリメチロールエタン等のテトラオール等が挙げられる。
【0014】
ロジン系樹脂、ホルムアルデヒド、フェノール類及びポリオールの使用量は特に限定されず、例えば、所望の分子量や軟化点等を勘案して適宜決定すればよい。また、反応方法としては、例えば、ロジン系樹脂、フェノール類/ホルムアルデヒド(縮合物)、ポリオールを一括で仕込み、反応させる方法等があり、反応温度は通常100~300℃程度、反応時間は通常1~24時間程度である。
【0015】
本発明で使用されるロジン変性フェノール樹脂は、酸価を30mgKOH/g未満に調整する必要がある。
酸価を30mgKOH/g未満に調整する方法としては、とくに制限されないが、好適な形態として、例えば上記のように調製したロジン変性フェノール樹脂または市販のロジン変性フェノール樹脂(通常は酸価は30mgKOH/g以上である)をエステル化して酸価を30mgKOH/g未満に低下させる方法がある。上記エステル化は、常法により行えばよく、アルコールとして多価アルコールを用い、150~300℃の反応温度で行うことができる。エチレングリコールのような二価のアルコールを使用すると軟化点が低い樹脂となるため、好ましくは三価以上のアルコールを使用する。アルコールの仕込み量により、酸価を調整することができる。上記好適な形態により調製されたロジン変性フェノール樹脂は、その内部にエステル結合を含有することによって、ジエン系ゴムとの相溶性が高まり、ロジン変性フェノール樹脂により奏される効果をさらに高めることができる。
本発明で使用されるロジン変性フェノール樹脂の酸価は、5~25mgKOH/gが好ましく、10~20mgKOH/gがさらに好ましい。
【0016】
本発明で使用されるロジン変性フェノール樹脂は、本発明の効果がさらに高まるという観点から、重量平均分子量が2000~5000が好ましく、2500~4500がさらに好ましい。また軟化点は、100~160℃が好ましく、110~150℃がさらに好ましい。なお、本発明で言う重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。また上記軟化点は、JIS K6220-1に準拠して測定したものとする。
【0017】
(配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合してなることを特徴とする。
上記ロジン変性フェノール樹脂の配合量が1質量部未満では、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に100質量部を超えると、硬度および破断強度が低下し、操縦安定性および耐摩耗性を向上することができない。
上記ロジン変性フェノール樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~85質量部が好ましく、10~70質量部がさらに好ましい。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、本発明の効果がさらに向上するという観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が100~500m/gであるカーボンブラックを配合するのが好ましい。
該窒素吸着比表面積(NSA)は、125~450m/gであるのがさらに好ましい。
また、カーボンブラックの配合量は、前記(A)ジエン系ゴム100質量部に対し50~200質量部が好ましく、80~170質量部であるのがさらに好ましい。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K6217-2に準拠して求めた値である。
【0019】
(液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴム)
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度(Tg)が-40℃以上の液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを配合するのが好ましい。このような液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを配合することにより、ゴム組成物のガラス転移温度(Tg)が上昇し、ドライグリップ性能を高めることができる。また該液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムは、ジエン系ゴムとなじみやすく、かつ本発明で使用されるロジン変性フェノール樹脂の分散性を高め、本発明の効果を高めることができる。
液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムとしては、液状スチレン-ブタジエン共重合体(液状SBR)が好ましい。液状SBRは、重量平均分子量が2000~40000であり、好ましくは3000~20000のものを使用することができる。また液状SBRのガラス転移温度は前記のように-40℃以上であり、-20℃~-5℃がさらに好ましい。液状SBRは、市販されているものを利用することができ、例えばCray Valley社製 RICON 100、クラレ(株)製L-SBR 820等が挙げられる。なお、本発明で言うTgは、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
なお、本発明で使用される液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムは、23℃で液体である。したがって、この温度では固体である前記ジエン系ゴムとは区別される。
また、液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムの配合量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し5~50質量部が好ましく、10~45質量部であるのがさらに好ましい。
【0020】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛;クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
なお、ロジン変性フェノール樹脂以外の、その他の樹脂も必要に応じて配合することができる。例えば、フェノール系樹脂(例えば、フェノール樹脂、フェノール・アセチレン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂)、クマロン系樹脂(例えば、クマロン樹脂、クマロン・インデン樹脂、クマロン・インデン・スチレン樹脂)、テルペン系樹脂(例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂(芳香族変性テルペン樹脂等)、テルペンフェノール樹脂)、スチレン樹脂、アクリル樹脂、石油樹脂(例えば、ジシクロペンタジン樹脂等のC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、C5/C9共重合系石油樹脂)、キシレン系樹脂(例えば、キシレン樹脂、キシレン・アセチレン樹脂、キシレン・ホルムアルデヒド樹脂)、α-ピネン樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。これらのその他の樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、例えば10~150質量部である。
【0022】
本発明のゴム組成物は、ドライグリップ性能を向上させ、優れた操縦安定性および耐摩耗性を有することから、タイヤのトレッド、とくにキャップトレッド、好ましくは競技用タイヤのトレッド、とくにキャップトレッドに好適に用いられ得る。また本発明のタイヤは、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【実施例
【0023】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0024】
標準例1~2、実施例1~10および比較例1~7
サンプルの調製
表1または2に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0025】
ドライグリップ性能:JIS K6394に基づき、株式会社東洋精機製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪=10%、振幅=±2%、周波数=20Hzの条件下でtanδ(100℃)を測定し、この値をもってドライグリップ性能を評価した。結果は、標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど、ドライグリップ性能が良好であることを示す。
硬度(100℃):JIS K6253に準拠して100℃にて測定した。結果は、標準例1または2の値を100として指数表示した。指数が大きいほど硬度が高く操縦安定性に優れることを示す。
破断強度:JIS K6251に準拠して、上記加硫ゴム試験片から3号ダンベル状のサンプル片を打ち抜き、500mm/分の引張速度にて引張試験を行い、破断伸び(%)を測定した。結果は標準例1または2の値を100として指数表示した。この指数が大きいほど破断強度に優れ、耐摩耗性に優れることを示す。
結果を表1および2に併せて示す。なお、標準例1は実施例1~6および比較例1~3と比較され、標準例2は実施例7~10および比較例4~7と比較される。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
*1:SBR1(ZEON社製 Nipol 1739 (スチレン量=40質量%))
*2:SBR2(ZEON社製 Nipol 1723 (スチレン量=23.5質量%))
*3:カーボンブラック1(キャボットジャパン社製ショウブラックN339、NSA=94m/g)
*4:カーボンブラック2(東海カーボン株式会社製シースト9、NSA=142m/g)
*5:樹脂1(ヤスハラケミカル株式会社製YSポリスターS145、フェノール変性テルペン樹脂、酸価=0mgKOH/g)
*6:樹脂2(荒川化学工業株式会社製タマノル803L、ロジンフェノール樹脂、酸価=52mg KOH/g)
*7:樹脂3(荒川化学工業株式会社製マルキードNo.5、マレイン酸変性ロジン樹脂、酸価=19mg KOH/g)
*8:樹脂4(荒川化学工業株式会社製ペンセルKK、ロジンエステル樹脂、酸価=19mg KOH/g)
*9:樹脂5(ロジン変性フェノール樹脂:ロジン、フェノール類、ホルムアルデヒド及びポリオールの反応生成物。酸価=15mg KOH/g)
*10:樹脂6(ロジン変性フェノール樹脂:ロジン、フェノール類、ホルムアルデヒド及びポリオールの反応生成物。酸価=17mg KOH/g)
*11: 樹脂7(ENEOS製ネオポリマー140)
*12:液状SBR(Cray Valley社製 RICON 100、重量平均分子量=6400、Tg=-15℃)
*13:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*14:ステアリン酸(日油株式会社製ビーズステアリン酸YR)
*15:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*16:老化防止剤(フレキシス社製6PPD)
*17:加硫促進剤(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーCZ-G)
*18:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
【0028】
表1および2の結果から、実施例のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合したので、標準例1または2に比べて、ドライグリップ性能、操縦安定性および耐摩耗性が同時に向上していることが分かる。
これに対し、比較例1はロジン変性フェノール樹脂の酸価が本発明で規定する上限を超えているので、ドライグリップ性能および硬度が悪化した。
比較例2はマレイン酸変性ロジン樹脂を使用した例であるのでドライグリップ性能が悪化した。
比較例3はロジンエステル樹脂を使用した例であるのでドライグリップ性能が悪化した。
比較例4はロジン変性フェノール樹脂の酸価が本発明で規定する上限を超えているので、ドライグリップ性能および硬度が悪化した。
比較例5はマレイン酸変性ロジン樹脂を使用した例であるのでドライグリップ性能が悪化した。
比較例6はロジンエステル樹脂を使用した例であるのでドライグリップ性能が悪化した。
比較例7はロジン変性フェノール樹脂の配合量が本発明で規定する上限を超えているので硬度および破断強度が悪化した。
【0029】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]:ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
発明[2]:前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに窒素吸着比表面積(NSA)が100~500m/gのカーボンブラックを50~200質量部配合してなることを特徴とする発明1に記載のゴム組成物。
発明[3]:前記ジエン系ゴムは、スチレン量が35質量%未満のスチレン-ブタジエン共重合体ゴムを含むことを特徴とする発明1または2に記載のゴム組成物。
発明[4]:前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらにガラス転移温度(Tg)が-40℃以上の液状芳香族ビニル-共役ジエン系ゴムを含むことを特徴とする発明1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
発明[5]:発明1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をキャップトレッドに用いたタイヤ。
【要約】
【課題】一般に、タイヤに求められる性能は多岐にわたっているが、その中で、優れたグリップ性能、操縦安定性および耐摩耗性が要求されている。この要求は、サーキット走行向けの競技用タイヤにも存在する。従来技術において、高比表面積のフィラーや高軟化点樹脂を多量配合する技術が知られているが、上記要求を満たすことはできない。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対し、酸価が30mgKOH/g未満のロジン変性フェノール樹脂を1~100質量部配合してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし