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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】小型無人機搬送用懸架装置
(51)【国際特許分類】
   B64U 10/13 20230101AFI20240703BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20240703BHJP
   B64U 101/64 20230101ALN20240703BHJP
【FI】
B64U10/13
B64U20/80
B64U101:64
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023183597
(22)【出願日】2023-10-25
【審査請求日】2023-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】518279381
【氏名又は名称】株式会社DroneWorkSystem
(74)【代理人】
【識別番号】100177747
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】手島 朋広
(72)【発明者】
【氏名】中田 吉穂
(72)【発明者】
【氏名】亀屋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 幸源
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-29249(JP,A)
【文献】特開2021-1052(JP,A)
【文献】国際公開第2022/049639(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 10/13
B64U 20/80
B64U 101/64
B64D 1/10- 1/12, 1/22
B64C 39/00
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物を懸架するための懸架物連結機構を備え、外部連結機構により小型無人機と連結して使用する小型無人機搬送用懸架装置であり、
前記懸架物連結機構は、駆動部、上部ロックピン、下部ロックピン、受座部を有し、
前記駆動部は、いずれも棒状の前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンを平行かつ水平に保持しつつ、これらを対向させて交互に前進及び後進させ、
前記受座部は、前記駆動部の前方で鉛直方向に延び、前記上部ロックピンの先端が嵌合する上受座と、前記下部ロックピンの先端が嵌合する下受座を備え、
荷積み時には、送信機からの指示により、
前記駆動部が後進させる前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れ、前記駆動部と前記受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記駆動部が前進させる前記上部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記上受座まで達し、前記駆動部と前記受座部の間を施錠し、
荷降ろし時には、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が後進させる前記上部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記上受座から離れ、前記駆動部と前記受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記駆動部が前進させる前記下部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記下受座まで達し、前記駆動部と前記受座部の間を施錠し、
これに続けて、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が後進させる前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れ、前記駆動部と前記受座部の間を開錠することを特徴とする小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項2】
貨物を懸架するための懸架物連結機構を備え、外部連結機構により小型無人機と連結して使用する小型無人機搬送用懸架装置であり、
前記懸架物連結機構は、駆動部、クランク部、上部リンク部、下部リンク部、上部ロックピン、下部ロックピン、ピンガイド、受座部を有し、
前記駆動部は、正方向及び反方向に回転する軸を有し、
前記クランク部は、前記駆動部の前記軸に中央を接続し、上端及び下端が正方向及び反方向に回転し、
前記上部リンク部は、後端を前記クランク部の前記上端に可動的に接続し、前端を前記上部ロックピンの後端に可動的に接続し、
前記下部リンク部は、後端を前記クランク部の前記下端に可動的に接続し、前端を前記下部ロックピンの後端に可動的に接続し、
前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンはいずれも棒状で、
前記ピンガイドは、前記上部リンク部及び前記下部リンク部の前方で鉛直方向に延び、前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンを平行かつ水平に保持しつつ、これらが前後に通行可能な貫通孔を上下に備え、
前記受座部は、前記ピンガイドの前方でこれと平行に延び、前記上部ロックピンの先端が嵌合する上受座、前記下部ロックピンの先端が嵌合する下受座を備え、
荷積み時には、送信機からの指示により、
前記駆動部が前記クランク部を正方向に回転させ、前記下部リンク部を介して後進した前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れて前記ピンガイドに達し、前記ピンガイドと前記受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記上部リンク部を介して前進した前記上部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記上受座まで達し、前記ピンガイドと前記受座部の間を施錠し、
荷降ろし時には、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が前記クランク部を反方向に回転させ、前記上部リンク部を介して後進した前記上部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記上受座から離れて前記ピンガイドに達し、前記ピンガイドと前記受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記下部リンク部を介して前進した前記下部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記下受座に達し、前記受座部及び前記ピンガイドの間を施錠し、
これに続けて、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が前記クランク部を正方向に回転させ、前記下部リンク部を介して後進した前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れて前記ピンガイドに達し、前記ピンガイドと前記受座部の間を開錠することを特徴とする小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項3】
貨物を懸架するための懸架物連結機構、可動部連結手段を有する可動部と、
固定受座部、固定部連結手段を有する固定部とを連結し、外部連結機構により小型無人機と連結して使用する小型無人機搬送用懸架装置であり、
前記可動部は、貨物の荷重が付加されることで前記固定部に対して下降し、貨物の荷重が除去されることで前記固定部に対して上昇するように、前記可動部連結手段と前記固定部連結手段によって前記固定部と連結され、
前記懸架物連結機構は、駆動部、上部ロックピン、下部ロックピン、可動受座部を有し、
前記駆動部は、いずれも棒状の前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンを平行かつ水平に保持しつつ、これらを対向させて交互に前進及び後進させ、
前記上部ロックピンは、先端の近傍に下方突起を備え、
前記可動受座部は、前記駆動部の前方で鉛直方向に延び、前記上部ロックピンの前記先端が嵌合する上受座、前記下部ロックピンの先端が嵌合する下受座を備え、
前記固定受座部は、前記駆動部及び前記可動受座部の間で、これらと平行かつ鉛直方向に延び、前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンが前後に通行可能な縦長貫通孔を上下に備え、
荷積み時には、送信機からの指示により、
前記駆動部が後進させる前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れ、前記固定受座部と前記可動受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記駆動部が前進させる前記上部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記上受座まで達し、前記固定受座部と前記可動受座部の間を施錠し、
懸架の開始による貨物の荷重の付加により、前記可動部が前記固定部に対して下降し、前記下方突起が前記固定受座部の前記縦長貫通孔の下辺に嵌合することで、前記上部ロックピンは前記縦長貫通孔を通過できずに、前記固定受座部と前記可動受座部の間は開錠されず、
懸架の終了による貨物の荷重の除去により、前記可動部が前記固定部に対して上昇し、前記下方突起が前記固定受座部の前記縦長貫通孔の前記下辺から外れることで、前記上部ロックピンは前記縦長貫通孔を通過可能となり、
荷降ろし時には、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が後進させる前記上部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記上受座から離れ、前記固定受座部と前記可動受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記駆動部が前進させる前記下部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記下受座まで達し、前記固定受座部と前記可動受座部の間を施錠し、
これに続けて、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が後進させる前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れ、前記固定受座部と前記可動受座部の間を開錠することを特徴とする小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項4】
貨物を懸架するための懸架物連結機構、可動部連結手段を有する可動部と、
固定受座部、固定部連結手段を有する固定部とを連結し、外部連結機構により小型無人機と連結して使用する小型無人機搬送用懸架装置であり、
前記可動部は、貨物の荷重が付加されることで前記固定部に対して下降し、貨物の荷重が除去されることで前記固定部に対して上昇するように、前記可動部連結手段と前記固定部連結手段によって前記固定部と連結され、
前記懸架物連結機構は、駆動部、クランク部、上部リンク部、下部リンク部、上部ロックピン、下部ロックピン、ピンガイド、可動受座部を有し、
前記駆動部は、正方向及び反方向に回転する軸を有し、
前記クランク部は、前記駆動部の前記軸に中央を接続し、上端及び下端が正方向及び反方向に回転し、
前記上部リンク部は、後端を前記クランク部の前記上端に可動的に接続し、前端を前記上部ロックピンの後端に可動的に接続し、
前記下部リンク部は、後端を前記クランク部の前記下端に可動的に接続し、前端を前記下部ロックピンの後端に可動的に接続し、
前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンはいずれも棒状で、前記上部ロックピンは先端の近傍に下方突起を備え、
前記ピンガイドは、前記上部リンク部及び前記下部リンク部の前方で鉛直方向に延び、前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンを平行かつ水平に保持しつつ、これらが前後に通行可能な貫通孔を上下に備え、
前記可動受座部は、前記ピンガイドの前方でこれと平行に延び、前記上部ロックピンの前記先端が嵌合する上受座、前記下部ロックピンの先端が嵌合する下受座を備え、
前記固定受座部は、前記ピンガイド及び前記可動受座部の間で、これらと平行かつ鉛直方向に延び、前記上部ロックピン及び前記下部ロックピンが前後に通行可能な縦長貫通孔を上下に備え、
荷積み時には、送信機からの指示により、
前記駆動部が前記クランク部を正方向に回転させ、前記下部リンク部を介して後進した前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れ、前記固定受座部と前記可動受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記上部リンク部を介して前進した前記上部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記上受座まで達し、前記固定受座部と前記可動受座部の間を施錠し、
懸架の開始による貨物の荷重の付加により、前記可動部が前記固定部に対して下降し、前記下方突起が前記固定受座部の前記縦長貫通孔の下辺に嵌合することで、前記上部ロックピンは前記縦長貫通孔を通過できずに、前記固定受座部と前記可動受座部の間は開錠されず、
懸架の終了による貨物の荷重の除去により、前記可動部が前記固定部に対して上昇し、前記下方突起が前記固定受座部の前記縦長貫通孔の前記下辺から外れることで、前記上部ロックピンは前記縦長貫通孔を通過可能となり、
荷降ろし時には、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が前記クランク部を反方向に回転させ、前記上部リンク部を介して後進した前記上部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記上受座から離れ、前記固定受座部と前記可動受座部の間を開錠し、
これに併せて、前記下部リンク部を介して前進した前記下部ロックピンが貨物を懸架し、その前記先端が、嵌合する前記下受座に達し、前記固定受座部及び前記可動受座部の間を施錠し、
これに続けて、前記送信機からの指示により、
前記駆動部が前記クランク部を正方向に回転させ、前記下部リンク部を介して後進した前記下部ロックピンの前記先端が、嵌合した前記下受座から離れ、前記固定受座部と前記可動受座部の間を開錠することを特徴とする小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項5】
前記可動部が、貨物の荷重の付加による弾性体の圧縮のため、前記固定部に対して下降し、貨物の荷重の除去による前記弾性体の拡張のため、前記固定部に対して上昇するように、前記可動部連結手段と前記固定部連結手段により、前記固定部に連結されたことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項6】
前記駆動部がモータであり、
前記可動部が、貨物の荷重の負荷によるバネの圧縮のため、前記固定部に対して下降し、貨物の荷重の除去による前記バネの拡張のため、前記固定部に対して上昇するように前記可動部連結手段と前記固定部連結手段により、前記固定部に連結されたことを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項7】
前記下部ロックピンの長さを前記上部ロックピンの長さの88%から90%までの範囲内で短く調整したことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の小型無人機搬送用懸架装置。
【請求項8】
前記駆動部の前記軸を正方向又は反方向に回転させる操作信号を送信するための正方向及び反方向に反転操作可能な操作部を有する送信機と、これによって操作されることを特徴とする請求項2又は請求項4のいずれかに記載の小型無人機搬送用懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、社会に広く普及している小型無人機(以下、「ドローン」という。)を利用して行う搬送作業に関する技術である。本装置は貨物を懸架する装置であり、本発明は作業の安全性向上に関わる技術である。
【背景技術】
【0002】
ドローンが活躍する産業分野は非常に幅広い。その中でも、我々の身近において今後の更なる利活用と発展が期待される成長分野の1つが物流業務であり、ドローンによる搬送の実現とその普及である。
物流分野において、ドローンが飛行するエリアは様々である。比較的に安全と考えられる目視内飛行や無人地帯での目視外飛行から、これらよりも危険性が増さざるを得ない有人地帯での目視外飛行まで、ドローンによる搬送作業が展開される可能性があるエリアは多様であり、これを安全に実現するための法整備など、今後の社会で解決すべき課題も残されている。
物流分野に限らず、どのような分野においても、ドローンのハード及びソフトの両面における安全性の向上は、常に意識して優先されるべき重要な問題の一つであり、これは貨物を運びながら人々の頭上を飛行するドローン搬送の現場ではより重要な課題である。
将来的なドローン搬送の可能性を踏まえ、出願人は特許文献1のドローン用搬送投下ユニットや非特許文献1に記載した搬送用ドローンを開発して、農林業など様々な現場でこれまで多くの搬送作業を実施してきた。そして、その搬送用ドローンが備える利便性の高い機能の一部として、ドローンで貨物を懸架した状態で現場まで運び、必要な時にはこれを速やかに荷降ろしすることができる切り離しユニットを開発して使用してきた実績がある。そのような状況の中で、出願人は更なる作業の安全性向上を求めて研究開発を進め、今回の出願に係る小型無人機搬送用懸架装置(以下、「懸架装置」という。)の実現に至ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-29249号公報
【文献】特開2021-1052号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】株式会社DroneWorkSystem「物資運搬用ドローンEAGLE35」(切り離しユニット)https://d-w-s.co.jp/product-introduction-2/forestry/eagle35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明によって解決しようとする課題は、ドローンによる搬送作業時、そして、貨物の積み降ろしを行う場面等において、操作者の誤操作や装置自体の誤動作による意図せぬ貨物の落下事故を未然に防止することである。これにより、安全で効率的なドローンによる貨物の運搬業務を実現する。
また、この分野において常に重要視される小型化と軽量化を併せて実現して、現実的にドローンに搭載することが可能で、取り扱いも容易な懸架装置を実現する。
現在、出願人が開発して使用している非特許文献1の切り離しユニットに関しては、簡易な構成と単一の動作を備える使い易い装置であるが、操作者による誤操作や装置自体の誤動作に対する安全対策において、未だ完全なものではないと出願人は考えた。そのため、様々な試行錯誤を重ね、以下の手段によって、より安全で使い易い装置を実現できることに想到した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この懸架装置は、搬送する貨物とドローンの連結を媒介し、特に積み降ろし作業時、貨物の切り離しなどの安全性を保持するため、相互に連動する複数のロック機構を多重に備える装置である。ドローンの下部に装着される本装置は、ロープに繋がれた貨物を自己の懸架物連結機構で確実に保持した状態で搬送する。
その装置については複数の仕様を想定するが、その代表的な構成は次のとおりである。
本装置は、固定部連結手段と可動部連結手段(以下、この2つの連結手段の組み合わせを「内部連結機構」という。)によって、可動部が固定部に対して昇降可能な状態で連結されている懸架装置である。
その固定部は、ドローンと連結するための外部連結機構や固定部連結手段のほか、固定受座部を有している。可動部は、貨物を懸架するための懸架物連結機構と可動部連結手段を有している。また、懸架する貨物を繋ぎ止める可動部の懸架物連結機構は、次のような構成をなしている。
懸架物連結機構で最も始原的な動作を引き起こす駆動部は、動力によって正方向及び反方向の両方向に回転する軸を備えている。そして、その駆動部の回転軸に中央を接続して、その上下の両端が軸に連動して正方向及び反方向に回転するクランク部がある。更に、クランク部の上端に一端を可動的に接続した上部リンク部と、同じく、クランク部の下端に一端を可動的に接続した下部リンク部を有している。その上部リンク部のもう一端には、先端の近傍に下向きの下方突起を設けた棒状の上部ロックピンが接続され、同じく、下部リンク部のもう一端には、棒状の下部ロックピンが可動的に接続されている。
そして、駆動部からクランク部に回転運動が伝達され、上部リンク部と下部リンク部を介して、上部ロックピンと下部ロックピンが前進又は後進する直線運動に変換される。これら2本のピンが上下に平行に並びながら、横方向に交互に前進と後進を行う安定的な対向運動を可能とするため、各ピンの断面積に略等しい貫通孔を上下に2つ並べたピンガイドが鉛直方向に延びるように備わっている。また、各々のピンが前進する更に先には、上部ロックピンの先端が嵌合する上受座と、下部ロックピンの先端が嵌合する下受座を上下に2つ備えて、上下2つのロック機能を実現するための可動受座部が、ピンガイドと平行に配置されている。
もう一方の固定部には、下方突起を有する上部ロックピンと、真っ直ぐな形状をした下部ロックピンが、共に自在に通り抜けて前後進することができる縦長の貫通孔を上下に2つ設けた固定受座部が備わっている。この固定受座部は、ピンガイドと可動受座部との間に位置して、これらと平行に鉛直方向に延びるように配置される。
貨物を懸架して飛行する際には、ドローンを操縦するための送信機(以下、「プロポ」という。)から操作信号を受けて、駆動部の回転軸上に接続されたクランク部の上端は、正方向に回転する。その結果として、上部リンク部の運動を介して、上部ロックピンが前進する。そして、この上部ロックピンで貨物に繋がるロープを懸架し、その先端が上受座に達することで可動受座部と固定受座部の間が閉塞され、上部ロック機構が施錠される。これと同時に、クランク部の下端が正方向に回転するため、下部リンク部を介して、下部ロックピンが後進する。その先端が下受座から離れ、固定受座部に達することで、可動受座部と固定受座部との間が開放されて、下部ロック機構は解除される。
その後、ドローンが空中を飛行する状態では、貨物を懸架する上部ロックピンにその重量が掛かるため、内部連結機構が備えるコイルバネや板バネ等の弾性体が圧縮されて、可動部は固定部に対して下降する。この時、可動部の2つのピンも共に下降して、上部ロックピンの下方突起が固定受座部の上方にある縦長貫通孔の下辺に嵌合する。これにより、たとえ誤操作等のため上部ロックピンを後進させようとする力が生じた場合でも、上部ロックピンは固定受座部の貫通孔を通過することができず、上部ロック機構が解除されることはない。なお、この上部ロック機構を固定する仕組みを、本装置では荷重ロック機構と称する。
一方、搬送先でドローンが降下し、貨物が接地した時点において、上部ロックピンの荷重が除去されて、圧縮状態にあった弾性体は拡張する。そして、可動部は、固定部に対して上昇する。これにより、上部ロックピンの下方突起と固定受座部の嵌合が外れ、上部ロックピンの荷重ロック機構が解除される。その後、作業者が送信する操作信号によって、クランク部の上端が反方向に回転し、上部リンク部を介して、上部ロックピンを後進させる。その先端が上受座から離れて、ピンガイド側に移動することで、可動受座部と固定受座部の間が開放されて、上部ロック機構が開錠される。同時に、クランク部の下端が反方向に回転し、下部リンク部を介して、下部ロックピンを前進させるため、その先端が下受座に達し、固定受座部と可動受座部の間が閉塞されて下部ロックが施錠される。この下部ロック機構の施錠は、上部ロック機構の開錠と連動するため、貨物は即時に開放されず、貨物の意図せぬ落下を防止することができる。
作業者は、荷降ろしを完了させるため、更にプロポ操作を行って、クランク部の下端を正方向に回転させ、下部リンク部を介して、下部ロックピンを後進させる。これにより、その先端が下受座から離れて、固定受座部に達し、可動受座部と固定受座部の間における下部ロック機構が開錠される。これにより、作業者は安全に貨物を懸架装置から切り離すことができる。
また、上部ロックピン及び下部ロックピンの前進及び後進の動作は、通常のプロポ操作では行われないレバーやスイッチ等の連続する反転操作、即ち、操作部を逆方向に反転させる動作と連動する。そのため、この2段階のプロポ操作を必要とすることによって、人的な誤操作が誘発され難い装置になっている。
【発明の効果】
【0007】
出願人は、非特許文献1の搬送用ドローンとその切り離しユニットを自ら開発して、現に様々な現場で利用をしている。この切り離しユニットは貨物の懸架を行う際に、1つのサーボモータが1本のロックピンを駆動して施錠を行うものである。遠隔地からのロックピンの開放操作によって、貨物が即時に投下される点は、作業の迅速性という観点からの利点ではある。しかし、今後、搬送作業が様々なエリアで行われる際の安全性の維持に関しては、不充分な部分でもあると出願人は考えた。
これに対し、今回発明した懸架装置では、一つの駆動部によって連動する上下2本の水平なロックピンが相互に対向しながら前後進を行って、上下二重の連動したロック機能を持つ懸架物連結機構を備える懸架装置とした。装置の構成も簡素であり、小型化と計量化、そして、その取り扱いに関しても、従来の装置に劣る部分はない。
この懸架物連結機構の2本のロックピンの動作は、ドローンを操縦する際に用いるプロポの操作部の取り扱いと直感的に連動したものである。しかし、従来のドローンの操縦における一般的なプロポ操作では行われない、中立位置から正方向及び反方向に連続的にレバー等を反転させるツーアクションの操作が必要である。そのため、操作者が意図してそのような操作を行わない限り、誤操作による貨物の落下等を回避できるものである。同時に、直感に反する複雑なプロポ操作を要求するものでもなく、作業の効率性が低下するおそれもない。
この懸架物連結機構による貨物の保持は、そのようなプロポ操作に連動して、2本のロックピンが相互に対向しながら前後に移動し、常に上下いずれかのロックピンが貨物を確実に懸架するため、作業者は安全で効率的な搬送と積み降ろしを行うことができる。
更に、上部ロックピンに関し、搬送する貨物の重量で荷重ロックが機能するため、上部ロックピンの誤動作による貨物の落下を予め防止することができ、同時に、前述のように上下二重の施錠構造のいずれかが意図せぬ貨物の落下を防止するため、従来の切り離しユニットに比べて、極めて安全性が高い懸架装置になっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本装置の外観の一例を示す斜視図である。
図2】本装置の主要部の一例を示す斜視図である。
図3】本装置の主要な構成要素を示す側面図である。
図4】懸架物連結機構の一部を拡大して示す斜視図である。
図5】荷積み・荷降ろし時(上部閉塞、下部開放)の状態を示す参考図である。
図6】荷積み・荷降ろし時(上部開放、下部閉塞)の状態を示す参考図である。
図7】懸架時(上部閉塞、下部開放)の状態を示す参考図である。
図8】誤操作時の荷重ロックの状態を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を用いながら、本発明に係る装置、その中でも代表的な仕様を例にとって、この懸架装置1について説明を行う。
始めに、この懸架装置1を利用する搬送作業の状況、そして、本装置の構成の概要について説明する。
図1に懸架装置1の外観の一例を表している。本装置を斜め下方から見たものであり、ドローンと本装置とを連結するための外部連結機構4の一部となる大きな平板状の架台プレートを上方に一体化した状態で図示している。
この装置は、ドローンによる搬送作業に利用する懸架装置1である。但し、図1では、本装置の外部にあるドローンや貨物は省略して図示していない。図1の上方に本装置と一体化されるドローンが接続され、搬送される貨物は図1の下方、図2で図示したロープ20の下方に繋がれる。
【0010】
懸架装置1は、ドローンと貨物の間に介在して、これらを確実に繋ぎ止める機能を果たし、特に飛行中と貨物の積み降ろし時において、作業の安全性と効率性を大きく向上させる装置である。
本装置を利用する作業者は、貨物の落下事故が発生しないように、ドローンと貨物を確実に連結して運搬する。特に、有人地帯での搬送作業のほか、頭上で飛行するドローンの直下及びその近傍の作業者にとって、貨物の積み降ろし作業は大きなリスクを伴うが、本装置によって安全で効率的な搬送作業が実現される。
【0011】
このような装置であるため、搬送作業者は、ドローンの下側に懸架装置1を予め接続して、これらを一体化させた状態にしたうえで、この装置に貨物を連結して搬送を行い、搬送先においては、プロポの遠隔操作によって、ドローンから貨物を切り離す。
図2は、懸架装置1の主要部を表した斜視図である。図1の一部を拡大した図であるが、本装置の構成を分かり易く表示するため、ドローンや貨物の省略に加えて、図1に記載していた外部連結機構4の一部である架台プレートも省略し、その概要が分かり易いように斜め上方から見下ろした状態で図示している。
【0012】
ドローンによって搬送される貨物は、図2の中央付近から鉛直下方に垂下されているロープ20の下端側に繋がれている。その貨物の反対側であるロープ20の上端側は、ドローンと一体化される懸架装置1の懸架物連結機構2によって保持されている。なお、本装置において重要な役割を持つ懸架物連結機構2の詳細については、追って説明を行う。
この時に、ロープ20を懸架装置1に手早く確実に連結するため、その上端側を予め堅く結わえて環状の状態としておくか、若しくは、図2のように、上端側に連結作業を容易化するための補助的な環状のリング21を接続することがある。
このリング21を用いる作業者は、懸架装置1の懸架物連結機構2にリング21を速やかに連結して、貨物がドローンに確実に保持されて落下しない安全な状態であることを確認したうえで、貨物を懸架したドローンを飛行させる。
【0013】
図2の懸架装置1は、複数の構成要素が入り組んだ状態で図示されているが、説明の便宜上、その全体を大きく2つに区分し、それら2つが組み合わされた装置として理解することができる。1つはドローンに連結される固定部3であり、もう1つはその固定部3に連結される可動部7である。
図2では、内部連結機構、即ち、固定部連結手段5と可動部連結手段19の組み合わせによって、固定部3と可動部7が連結されている。内部連結機構がある位置を大まかな境界として、その下側が固定部3であり、上側が可動部7として表している。但し、この説明では、固定部3と可動部7としては、いずれも概ねそれらの本体的な部位を指し示しており、それらの各々に更に本装置の機能を実現するために必要となる各部材が配されている。なお、それらの詳細についても、後ほど説明を行うものである。
【0014】
また、本装置に関しては、複数の箇所において、それぞれ異なる対象間の連結関係を確認することができる。
まず始めに、懸架装置1とその外部にあるドローンとの連結がある。
そして、懸架装置1の内部においては、先に述べた固定部3と可動部7の内部連結機構による連結関係が存在する。
更に、懸架装置1とその外部にあって搬送作業の対象になる貨物との間における連結が必要となる。
【0015】
これらの各々の連結関係の区分が非常に紛らわしい状況であるため、本説明では、それぞれに個別の名称を付して分別している。
先にも触れた懸架装置1に貨物を繋ぎ止める際の仕組みについては、これを懸架物連結機構2としており、追って詳しい説明を行う。
また、懸架装置1と、その外部にあるドローンとの連結は、外部連結機構4による、それらの一体化であるとする。
そして、懸架装置1の内部における固定部3と可動部7の連結関係に関しては、固定部3と可動部7の各々に設けられる内部連結機構、即ち、相対する固定部連結手段5と可動部連結手段19によって、両者が可動的に組み合わされるものとして考えている。
【0016】
始めに、本装置の固定部3とドローンを結び付ける外部連結機構4としては、様々な方法を採用することが可能である。最も簡素なものとしては、接続用のベルト等を用いて一体化させるもの、又は、固定部3の上部に貫通孔を設けて、ドローンの下部にボルト等で連結する方法なども一般的である。
この説明では、図2で上方に延びる5本のスペーサを、また、図1でそれらが接続される架台プレートを確認することができ、両図では省略されて図示されていない上方のドローンと本装置を一体化する外部連結機構4として、これらが機能する。
この他にも、接続用のアタッチメントを固定部3とドローンの相対する部位に配して、これらを手早く確実に連結できる仕様としても良い。
また、この説明や図においては、固定部3を下方に、可動部7を上方に配した懸架装置1としているが、内部連結機構の仕様によっては、これらの位置関係を入れ替えることも可能である。
【0017】
一方で、懸架装置1の内部における、内部連結機構による固定部3と可動部7の連結については、これが搬送中に外れることがないように、両者が確実に一体化される必要がある。しかし、この内部連結機構に関しては、外部連結機構4のように不動的かつ固定的に一体化される仕様ではない。可動部7については、固定部3に対して、所定の範囲内で上下に移動することが可能な状態として連結されるものである。
後ほど再び説明するが、本装置に懸架する貨物の有無によって、可動部7は所定の範囲内で昇降運動を行うため、固定部3と可動部7の相対的な位置関係は上下に変動する。このような状況を考慮すると、懸架装置1における固定部3の役割としては、可動部7を可動的に支持する基部として理解することができ、その形状によっては、懸架装置1における外殻部となり、本装置の内部を風雨等から護る役割を与えることも考えられる。
【0018】
搬送に携わる作業者は、それぞれの役割に応じて、ドローンを操縦して貨物を安全に運搬し、搬送元や搬送先でドローンと貨物の連結や解除を行うなど、各自に求められる操作を確実に実施する必要がある。そして、荷積みや荷卸しの際には、上空を飛行するドローンや貨物の挙動などに常に細心の注意を払いつつ、リスクに曝されて作業を行っている現状がある。
搬送時はもとより、積み降ろし作業時には、たとえ小さな操作ミスや誤動作であっても、貨物の落下等が人身事故など重大な労働災害に直結する可能性がある。そのため、僅かでも危険性が予見される装置の誤操作や誤動作については、予めこれらを極力回避できるように万全の安全対策を施すことが、搬送作業に携わる人々において非常に重要な意味を持つ。
【0019】
この懸架装置1では、貨物を繋ぐロープ20の一端が懸架物連結機構2に結び付けられ、ドローンの上昇と共に貨物は空中に引き上げられる。そのため、この装置の懸架物連結機構2においては、ロープ20を確実に保持することができて、荷積みや荷卸しの際には、ロープ20との連結及び解除を安全かつ速やかに実行できる仕組みを多重的に採用しており、これが本発明の特徴点の一つとなっている。
従来の装置において予見された誤操作や誤動作による貨物の落下事故は、本装置の相互に連動する複数の安全装置によって、その発生が未然に防止される。
【0020】
また、プロポ操作と懸架物連結機構2の動作も相互に関連付けられており、これを操作する際には、通常のドローンの操縦では行われることがない正方向及び反方向に連続して反転操作する2アクションの操作が必要になる。これらの操作は、懸架物連結機構2内で連動する二重ロックの仕組みに対応した直感的なものである。
しかし、作業者があえて意図的にそのような操作を行わない限り、通常の場合に想定される単純な操作ミスによっては懸架物連結機構2の誤動作は発生せず、予期せぬ落下事故等を予め回避できるものとなっている。
【0021】
この二重ロックを更に具体的に説明すると、この懸架装置1では、正方向及び反方向に連続する2アクションで行うプロポ操作に連動する上下2つのロック機構として、懸架物連結機構2の貨物を保持する部位には、相互に連動する2つの施錠構造が備わっている。
これら2箇所の起動と解除は、各々が相互に連動しながらも、交互に施錠と開錠を行う構造であるため、誤操作や誤動作によって2箇所が同時に開放されることがない仕組みになっている。
なお、以下の説明においては、上下に縦に並ぶ2つのロック機構のうち、上方の施錠構造を上部ロック機構といい、下方の施錠構造を下部ロック機構と称している。そして、この上部ロック機構に対し、貨物の懸架によって作動する荷重ロック機構を付加することによって更に安全性が高めた仕様がある。
【0022】
このような懸架装置1の全体構成を踏まえたうえで、以下、これを構成する個別の構成要素について、より詳しい説明を行う。なお、便宜上、始めに可動部7について説明をし、その後に固定部3の説明を行う。また、以下の説明は、本装置の一態様について行うものであり、必ずしも本装置をこれのみに限定するものではない。
図3は、図1及び図2に図示した懸架装置1の一部を表した側面図である。説明のため、外部連結機構4やその他の付随的な要素、例えば、図1の下方に図示していたダンパ等は表示していない。また、必ずしも本装置の構成要素ではないロープ20も省略して図示していない。
【0023】
図3の上方に図示してある部位が、可動部7である。先に述べたように、内部連結機構である固定部連結手段5と可動部連結手段19の境界が、固定部3と可動部7を上下に分ける大凡の目安になる。この図3では、貨物の荷重によって、上方の可動部7が下方の固定部3側に下降するものとしているが、先に述べたように、これらの位置関係を逆にして、下方の可動部7が更に下降する仕様としても良い。
そして、この可動部7には、懸架物連結機構2が作動するために必要となる様々な構成要素が組み合わされている。
その主なものとしては、駆動部8、クランク部9、上部リンク部10、上部ロックピン11、下部リンク部13、下部ロックピン14、ピンガイド15及び可動受座部16である。これらの組み合わせと相互に関連する動作によって、懸架物連結機構2が機能して、上部ロック機構や下部ロック機構の施錠や解錠が行われる。
【0024】
駆動部8は、懸架物連結機構2の初動を発生させる起動装置である。プロポの送信信号を受けて作動する。
外部からの動力を受けて出力を行う軸部が備わっており、この出力軸は両方向に回る回転軸である。この軸に接続されるクランク部9を所定の角度内で時計回り又は反時計回りに回転させ、必要な位置で停止する。
なお、この説明においては、図3の時計回り方向を正方向とし、反時計回り方向を反方向として考えている。よって、駆動部8の軸も正方向及び反方向に回転運動を行うものである。
【0025】
この駆動部8の動力源は、懸架装置1自体、即ち、固定部3や可動部7に搭載しても構わないが、懸架装置1の外部から必要な動力が供給される状況も想定している。出願人が開発した既存の切り離しユニットにおいては、一般的な駆動部8として電力により稼働する電動モータ、例えば、サーボモータの利用を想定している。そして、本装置とドローンに搭載されるバッテリとが接続され、バッテリから供給される電力によって駆動部8が作動するものである。
この場合、プロポからドローンに送信される操作信号を懸架装置1が受信し、可動部7のサーボモータが必要な回転力をクランク部9に与え、正方向又は反方向に所定の角度まで回転させて停止する。
【0026】
クランク部9は、その中央を重心として、駆動部8の回転軸に確実かつバランス良く連結される。そして、駆動部8からの回転力に応じて、両方向へ必要な回転運動を行う。
クランク部9の形状は、図2以降の図に示したような横長で薄めの板状部材であることが多い。その大きさは、駆動部8の回転力を確実に受けとめて、滑らかに回転するように必要かつ十分で最小限の大きさに調整される。その中央で駆動部8の回転力を受け取り、その上端と下端が所定の範囲内で正反両方向に回転する。
この懸架装置1は、小型化と計量化が重要なドローン用の機材である。クランク部9を含め、可動部7や固定部3も、そして、これに組み合わされる他の各部材も、軽量かつ強靱な軽金属やカーボン等の素材を適宜に用いて、ドローンや貨物に対応する必要最小限の大きさで高い強度を備える装置として製造される。
【0027】
図3のように、クランク部9の上側の一端には上部リンク部10が連結されており、その反対側である下側の他端には下部リンク部13が連結されている。
また、クランク部9と連結された上部リンク部10の他端側には、細長い棒状の上部ロックピン11が連結されており、下部リンク部13の他端側も、同じく棒状である下部ロックピン14に連結されている。また、上部ロックピン11の先端近傍の下側には下方突起12が設けられている。但し、荷重ロックを備えない懸架装置1の場合には、上部ロックピン11に下方突起12を設けない仕様も想定されている。
上部リンク部10及び下部リンク部13の両端部にある計4箇所の連結箇所は、自在に回転しながら動くリンク構造である。そのため、クランク部9の回転運動に連動して、上部リンク部10と下部リンク部13は上下左右に所定の範囲内で移動し、これに伴って、上部ロックピン11と下部ロックピン14も対向しながら、図3の左右に往復運動を行うものとなる。
【0028】
以上の動作をまとめると、懸架装置1の懸架物連結機構2では、駆動部8の回転軸がクランク部9を正方向及び反方向に所定の範囲内で回転させる。そして、このクランク部9の回転運動は、これに連結された上部リンク部10と下部リンク部13の運動を惹起し、それらに連結された上部ロックピン11及び下部ロックピン14を交互に前後進させる直線運動に変換する。
また、図3のような構成とはせず、磁力等の作用によって、駆動部8が上部ロックピン11と下部ロックピン14を直接かつ交互に前後進させて、2本のピンに対向運動を行わせる仕様も考えられる。
なお、本装置の説明では、図3の右側を前方とし、本装置において各々のピンが前進する方向と考えている。また、これとは逆の左側が本装置の後方であり、ピンが後進する方向として考える。
【0029】
図2等の仕様とした懸架装置1では、クランク部9の正方向への回転によって上部ロックピン11が右側に押し出されて前進する場合、下部リンク部13は後方に引かれることになる。そのようにして、下部ロックピン14は、上部ロックピン11の動きに対向して、左側に後進する。
同様に、クランク部9の反方向への回転によって上部ロックピン11が後進する際には、下部ロックピン14は上部ロックピン11に対向するように前進することになる。
このように、本装置は1つの駆動部8が、上下2本のピンを同時に対向して連動させるものであり、少ない部品で安全性の高い懸架物連結機構2を実現できるため、懸架装置1の小型化と計量化にも寄与する利点がある。
【0030】
この時、上部ロックピン11と下部ロックピン14が相互に連動し、対向して前後進を行う際、上下2本のピンが平行を保ちながら、安定した対向運動が可能となるように、これらを支持するピンガイド15が図3の鉛直下方に延びるように備わっている。
また、側面図である図3のピンガイド15では確認できないが、懸架物連結機構2を拡大した斜視図である図4に図示したように、上部ロックピン11と下部ロックピン14に対応するピンガイド15の上下の位置には、各々が通過できる貫通孔が設けられている。なお、この貫通孔の形状や大きさは、両ピンがピンガイド15を通り抜けて自由に前後進でき、その動作に不必要な誤差が生じないように適宜に調整される。
そして、上部ロックピン11は、ピンガイド15の上方にある貫通孔を通過し、クランク部9と上部リンク部10の連動によって、横方向に前進又は後進する。その下にある下部ロックピン14も、上部ロックピン11と平行な位置関係を保ちながら、ピンガイド15の下方にある貫通孔を通過して、上部ロックピン11と対向するように後進又は前進する横方向の移動を行う。
【0031】
ピンガイド15の2つの貫通孔を通過して、交互に前進する上部ロックピン11と下部ロックピン14の先端は、ピンガイド15の更に前方にあり、これと平行に鉛直方向に設けられた可動受座部16に到達する。
図4では、上部ロックピン11は、その右方の可動受座部16上方にある貫通孔に達しており、固定受座部6と可動受座部16の間は上部ロックピン11によって仕切られて、その上方は閉塞されている。
このようにして、上部ロックピン11及び下部ロックピン14、そして、固定受座部6及び可動受座部16により、2つのロック機構が実現される。これらの構成と機能については基本的に錠前構造に類似する仕組みであるが、クランク部9の正方向及び反方向の動きに連動して交互かつ同時的に実行される一連のロック機能となっている。
【0032】
また、上下2本のピンと、平行に並ぶ2つの受座部による上部ロック機構及び下部ロック機構が円滑かつ確実に動作するように、本装置では予め上部ロックピン11と下部ロックピン14の長さについて調整を行うことがある。
これは、荷重ロック機構に係る下方突起12の影響も考慮して、両ピンの長さを変更するものであるが、試作品による実証から得た具体的な数値の例としては、89%を基準として、下部ロックピン14の長さを上部ロックピン11の長さの88%から90%の範囲内で短く設定する仕様を考えている。
なお、この調整に関する基本的な考え方は、次のようなものである。
【0033】
本装置では、2本のピンを上下かつ水平に保持しつつ、これらを円滑に対向運動させるため、中立的な位置にあるクランク部9は、固定受座部6・ピンガイド15・可動受座部16と平行で鉛直向きに配置されている。この時、ピンの長さが上下で異なることで、上受座17に確実に嵌合していた上部ロックピン11は、下部ロックピン14が下受座18に到達した後、上受座17からの離脱を開始する。このような連動のもと、下部ロックピン14が固定受座部6と可動受座部16の間を閉じるため、それまで上部ロックピン11で保持されていた貨物は、懸架物連結機構2から外れて落下するおそれはない。
また、下方突起12を有する上部ロックピン11の前進が、可動受座部16によって阻まれた状況でも、プロポ操作を受けて後進する下部ロックピン14は、固定受座部6と可動受座部16の間を確実に開放することができる。そのため、荷積みや荷降ろしの作業時において、リング21を懸架物連結機構2に速やかに接続し、又は、これから切り離すことができる。
【0034】
懸架物連結機構2を斜めから見た図4の可動受座部16では、上部ロックピン11の先端に対応する上受座17と、下部ロックピン14の先端に対応する下受座18の存在も確認することができた。この上受座17と下受座18は、このように、ピンガイド15に設けられた上下2つの貫通孔と同様のものとすることが想定されるが、必ずしもこれに限るものではない。
図4のような貫通孔とは異なり、可動受座部16に上下2つの凹部を設けるものとしても良い。上部ロックピン11や下部ロックピン14を角柱状とするのであれば、それに対応した形状の上受座17及び下受座18になる。
【0035】
そして、上部ロックピン11の先端が上受座17と嵌合することによって、固定受座部6と可動受座部16の隙間が閉じられて上部ロック機構が施錠される。同じようにして、下部ロックピン14の先端が下受座18に嵌合することによって、固定受座部6と可動受座部16の隙間が閉じられて下部ロック機構が施錠される。なお、図4の上受座17では、上部ロックピン11の先端が貫通孔の中程に達しており、上部ロック機構の施錠を確認することができる。
また、図4のように、この懸架物連結機構2には、可動部7に設けられるピンガイド15や可動受座部16の他にも、固定部3に設けられて荷重ロック機構の一部になる固定受座部6を設けることが想定されているが、これについては改めて説明する。
【0036】
このピンガイド15や可動受座部16は、図3図4のように、これらを可動部7と一体的に形成するか、又は、駆動部8やクランク部9等と同様に、可動部7に後付けで据え付けるものとし、それらが全体として可動部7を構成する場合が考えられる。
そして、この可動部7には、固定部3に対応する内部連結機構となり、両者を可動的な状態で連結するための可動部連結手段19が設けられる。
図2では、可動部連結手段19は、可動部7の下部四隅に設けられた固定部3との連結部として、更に、それらの間で左右に各2つ設けられた計4つの連結孔として確認することができる。そして、それらの4つの連結孔を、固定部3から上方に延びる4本の固定用ボルトが貫通して、これらが外れて抜け落ちないようにその先端側が処理されている。
【0037】
次に固定部3の個別の構成要素について説明する。
以下は、荷重ロック機構を備える懸架装置1の説明となる。
固定部3は、本装置の土台とも言えるものであり、これまで説明してきた可動部7を始め、固定部3に配される以下の各要素が据え付けられる基盤になるものである。
固定部3には、可動部7の可動部連結手段19に対応して、内部連結機構となる固定部連結手段5が設けられている。図2及び図3では、左右の各2箇所、即ち、固定部3が可動部7と相対する四隅に、この固定部連結手段5を確認することができる。また、可動部7の4つの連結孔を通して固定されている計4本の固定用ボルトと、各々の固定用ボルトに対応する4本のコイルバネも固定部連結手段5の一部になっている。
このように、可動部7は、下方の四隅と4本の固定用ボルトによって固定部3から分離しないように固く連結されているが、これまでも折に触れて述べてきたように、固定部3と可動部7は決して不動的な連結状態にあるものではない。可動部7は、固定部3に対して、所定の範囲内で昇降可能な状態で留め置かれているものであり、これを実現するものが内部連結機構である。
【0038】
図2図3で確認できるように、固定部3から延びる4本のボルトは、その固定部3と可動部7で挟まれた連結孔の下側でコイルバネが各々に装着されている。このコイルバネは、固定部3と可動部7との間で互いを遠ざけようとする力を生じさせる圧縮コイルバネであり、内部連結機構に設けられた弾性体の一例である。
そして、懸架装置1に対して、貨物の負荷が掛かっていない空荷の状態では、このコイルバネが生み出す反発力のため、可動部7は固定部3から最も離れて最上方の位置に持ち上げられた状態で保持されている。
これとは逆に、懸架装置1で貨物を空中に吊り上げることにより、可動部7の懸架物連結機構2にその荷重が掛かった場合には、可動部7はコイルバネを圧縮しながら固定部3側に向かって下方に沈み込む。
なお、固定部3の下方に可動部7を配する場合は、引張コイルバネが可動部7を上方に引き上げる力が常時作用するように内部連結機構を構成する。
【0039】
更に、図3等に図示した固定部3には、前述した二重ロックを更に補強する荷重ロック機構を実現するため、固定受座部6が設けられている。
図3において、固定部3の中央付近で逆L字型に鉛直上方に立ち上がる部位が固定受座部6である。この固定受座部6は、図4においても、可動部7に下向けに配されたピンガイド15と可動受座部16の間に挟まれるように、下から上に伸びている。この図3図4の例では、上端側の一部が可動部7に隠れて視認することはできないが、図5以降では、逆L字型の板状部材が固定部3の一部として図示されている。
この固定受座部6は、固定部3と一体的に形成しても良いが、図3のように後付けで取り外しが可能な仕様においては、本装置の保守管理や設計製造などの点において、有利な場面も存在すると思われる。
【0040】
図5から図8までは、本装置の懸架物連結機構2の動作を表した参考図である。
図3の側面図から、その主要部のみを抜き出して表しており、固定部3と可動部7、そして、固定受座部6、ピンガイド15、可動受座部16について、それぞれの位置関係が分かり易いように、これらの断面図として示している。また、下方突起12の位置関係を見易いように、リング21は表示していない。
既に説明をしたピンガイド15及び可動受座部16は、ドローンが吊り上げる貨物の重量によって、固定部3に対して、可動部7全体と共に上下に昇降する。搬送時は、貨物の荷重が上部ロックピン11を介して懸架物連結機構2に掛かるため、可動部7は全体として下降するし、その荷重が失われることで、可動部7は全体として上昇する。
この時、可動部7の一部であるクランク部9等も共に昇降するが、これは上部ロックピン11や下部ロックピン14も同様であり、2本のピンとピンガイド15及び可動受座部16との上下の相対的な位置関係は常に変わることはない。上下のピンはピンガイド15を通過して平行なままであり、その先端が可動受座部16の上受座17と下受座18に嵌合し得る状態に保たれて、可動部7は全体として上下に移動する。
【0041】
一方、固定部3に設けられて、ピンガイド15と可動受座部16の間に延びる固定受座部6は、固定部3と同じく、貨物の有無によって昇降運動を行う可動部7との相対的な位置関係が所定の範囲内で鉛直方向に変動する。
そのため、上部ロックピン11や下部ロックピン14との相対的な上下の位置関係も、所定の範囲内で変動するため、この固定受座部6には2本のピンが上下に昇降移動する範囲に対応して、縦長の貫通孔が上下に2つ並べて設けられている。これらについては、図4以降の各図においても確認することができる。
そして、その上側の縦長の貫通孔を上部ロックピン11が前進又は後進しながら通過し、下部ロックピン14が下側にある縦長の貫通孔を上部ロックピン11と対向して往復するように通過する。
【0042】
このようなことから、上下に平行に並ぶ2本のロックピンを含む可動部7の全体が、固定部3から最も離れて上昇した状態では、上部ロックピン11と下部ロックピン14は、固定受座部6にある縦長の貫通孔の最上位に位置することになる。その状態を表した図が図5図6である。
これとは逆に、可動部7が固定部3に接近して最も下降した場合の両ピンの位置は、図7図8のように、固定受座部6にある縦長の貫通孔の最下位にある。
この時、上部ロックピン11の先端近くにある下方突起12は、図8のように固定受座部6の上方にある縦長貫通孔の下辺に嵌合するため、上部ロックピン11は固定受座部6を通過して後進することができなくなる。これが、第3のロック機能として、貨物の意図せぬ落下を防ぐための荷重ロック機構である。
【0043】
搬送作業者は、プロポから懸架装置1の操作信号をドローンに対して送信する。懸架物連結機構2は、その操作信号に応じて作動する。
荷積みの前段階では、未だ貨物は懸架装置1の懸架物連結機構2に繋がれていない。下部ロックピン14は後進した状態にあり、懸架物連結機構2の下部ロック機構は開錠されている。一方、その上方にある上部ロックピン11は、クランク部9及び上部リンク部10によって押し出されて前進した位置にあり、上部ロック機構が閉塞された図5のような状態である。
荷積みを行う作業者は、貨物を繋いだロープ20の端部にあるリング21を、下部ロックピン14の先端と下受座18の間を通過させて、懸架物連結機構2に組み合わせる。プロポ操作を行うと、クランク部9が反方向に回転して下部リンク部13が下部ロックピン14を前方に押し出し、下部ロック機構を施錠する。その状態が図6である。
【0044】
この時、上部リンク部10は、上部ロックピン11を下部ロックピン14とは逆方向に後進させる。作業者は上部ロックピン11の先端と上受座17の間に生じた隙間を通して、リング21を更に上部ロックピン11の上方まで導き、懸架物連結機構2の最奥の位置まで移動させる。
そして、再びプロポ操作を行い、上部ロックピン11を前進させることで、図5の状態に戻り、上部ロック機構が施錠される。この時点におけるリング21は、上部ロックピン11に掛けられた状態になっており、貨物は懸架物連結機構2によって確実に保持されている。
【0045】
その状態のまま、貨物を懸架したドローンは、飛行状態に移行するため上昇して貨物を吊り上げる。
貨物の懸架前や飛行前のため、上部ロックピン11に貨物の荷重が掛かっていない懸架物連結機構2は図5のような状態であるが、飛行後の荷重ロック機構が作動した状態を表した参考図が図7である。
即ち、ドローンによって吊り上げられた貨物の重量は、上部ロックピン11に下向きの力となって働く。それまで空荷の状態で、コイルバネの反発力によって固定部3から最も離れて高い位置に上昇していた可動部7は、固定部3側に沈み込むように下降して、図5から図7の状態に推移する。
【0046】
この時、上部ロックピン11及び下部ロックピン14の鉛直方向の位置は、貨物の荷重がなく、固定受座部6の縦長の貫通孔の最上位にあった図5の状態から、図7のように、その貫通孔の最下位にまで下降している。
プロポの誤操作や本装置の誤動作によって、万が一にも上部ロック機構を開錠するようにクランク部9に回転力が働いた場合であっても、上部ロックピン11の前端傍の下側には下方突起12が存在している。そして、この下方突起12が、図8のように、固定受座部6の上側にある縦長貫通孔の下辺に組み合って嵌合する。そのため、上部ロックピン11は、固定受座部6の貫通孔を潜り抜けて更に後進することはできず、上部ロック機構が解除される事態は起こり得ない。貨物は安全に懸架された状態に留まるものであり、貨物の荷重によって機能するこの一連の構造が、本装置における荷重ロック機構である。
【0047】
上部ロック機構と荷重ロック機構が確実に機能した状態のまま、懸架装置1によって安全に保持された貨物は、ドローンの飛行によって搬送先まで吊り上げられた状態で運搬される。この飛行中に誤操作や誤動作が発生した場合であっても、荷重ロック機構により、上部ロック機構が解除されるおそれがない状態になっている。
その後、搬送先に到着したドローンは、荷降ろしのため下降する。そして、作業者は、貨物が接地したことを確認して、荷降ろしのための貨物の切り離し作業に着手する。なお、この時のドローンは、搬送作業を効率的に行うためにホバリングした状態で空中に留まっている状況が想定されている。
貨物が着地したことによって、上部ロックピン11に掛かっていた荷重が抜けて、可動部7はコイルバネの反発力のため、固定部3から離れるように再び上昇する。これにより、上部ロックピン11及び下部ロックピン14の鉛直方向の位置は、いずれも固定受座部6の上下の縦長貫通孔の最上位に移動し、上部ロックピン11の下方突起12と固定受座部6の嵌合による荷重ロック機構が解除される。即ち、図7から図5の状態に再び戻ったことになる。
【0048】
この時、作業者がプロポのレバー等の操作部を所定の方向に動かすと、上部ロックピン11の先端は可動受座部16から離脱し、更に固定受座部6の縦長の貫通孔を通過してピンガイド15側に後進する。この状態を表したものが図6である。上部ロックピン11で支えられていたリング21は、固定受座部6と可動受座部16の間に生じた隙間から下方に落下する。
しかし、上部ロックピン11の後進と同時に、これと対向して前進する下部ロックピン14の先端は既に可動受座部16の下受座18まで到達し、下部ロック機構が起動している状態にある。そのため、上部ロック機構が開錠されて、その下方に落下したリング21は、なおも下部ロック機構の下部ロックピン14によって保持された状態であり、未だ懸架装置1の懸架物連結機構2から抜け落ちることはない。
【0049】
ここで、作業者は先に行ったプロポ操作と反対の方向にレバー等を連続して反転させる操作を行うため、図5のように、下部ロックピン14によって閉塞されていた固定受座部6と可動受座部16との間が開放され、下部ロック機構が再び開錠されることになる。この段階で初めて、貨物が繋がれたリング21が下部ロックピン14から外れて、懸架物連結機構2から完全に開放されることになる。
このように、本装置の上部ロック機構、下部ロック機構、荷重ロック機構は、意図せぬ貨物の落下を防止するため、複合的に連動する多重のロック機構である。その動作は、プロポ操作と直感的に連動するものでありながらも、通常は行われることがないプロポの連続操作を必要とするものであるため、人的な誤操作や機械の誤動作による事故等を、予め二重三重の安全対策によって防止するものである。
この懸架装置1を用いることにより、これまで行われてきたドローンによる搬送作業の安全性はより一層高まるものであり、これに携わる作業者も安心して搬送作業を実施することができる。そして、本装置については、今後の普及が期待される有人地帯での目視外飛行等、ドローン搬送での幅広い利活用が期待できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 懸架装置
2 懸架物連結機構
3 固定部
4 外部連結機構
5 固定部連結手段
6 固定受座部
7 可動部
8 駆動部
9 クランク部
10 上部リンク部
11 上部ロックピン
12 下方突起
13 下部リンク部
14 下部ロックピン
15 ピンガイド
16 可動受座部
17 上受座
18 下受座
19 可動部連結手段
20 ロープ
21 リング
【要約】
【課題】小型無人機による貨物の搬送時に、誤操作や誤動作による意図せぬ落下事故等を防止することができる安全な小型無人機搬送用懸架装置を実現する。
【解決手段】この小型無人機搬送用懸架装置は、小型無人機と貨物の連結を媒介する装置であり、連動するロック機構を3重に備える。うち、上部ロック機構と下部ロック機構は、対向運動を行う上下2本のロックピンが連動して施錠と解錠を相互補完的に行うものである。それらの動作はプロポ操作と連動して、その操作も直感的なものであるが、通常の操作では行われない連続する反転操作によってロックの解除が完了する。そのため、操作者が意図しない誤操作や誤動作による落下事故は発生し難い。更に、小型無人機が吊り上げる貨物の重さで荷重ロック機構が起動して、上部ロック機構を固定化するため、更に安全に搬送作業を行うことが可能になる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8