(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】印刷装置、コンピュータプログラム、印刷実行部の制御方法、および、印刷システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240703BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
B41J2/01 213
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/525
(21)【出願番号】P 2020110981
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001058
【氏名又は名称】鳳国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒金 覚
(72)【発明者】
【氏名】三本 匡雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-140700(JP,A)
【文献】特開2010-017941(JP,A)
【文献】特開2015-229274(JP,A)
【文献】特開2019-093678(JP,A)
【文献】米国特許第06069709(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御装置は、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行する場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1部分印刷に対応するデータと、前記第2部分印刷に対応するデータと、の少なくとも一方を用いて、前記第2部分印刷の前記主走査の方向を、前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向と同一方向とのいずれかに決定し、
前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向に決定される場合に、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを第1補正レベルに決定し、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向と同一方向に決定される場合に、前記補正レベルを前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定し、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行
する、印刷装置。
【請求項2】
印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御装置は、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行する場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記制御装置は、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを決定し、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行し、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含み、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含まない、印刷装置。
【請求項3】
印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御装置は、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行する場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記制御装置は、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、
前記第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを決定し、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行し、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第1部分印刷は、特定の前記第1領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の上流側に位置する前記第2領域である上流側第2領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の下流側に位置する前記第2領域である下流側第2領域と、に前記特定色のドットを形成し、
前記制御装置は、前記上流側第2領域に対する前記補正レベルと、前記下流側第2領域に対する前記補正レベルと、を異なるレベルに決定する、印刷装置。
【請求項4】
印刷実行部を制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
対象画像データを取得することと、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成することと、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させることと、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理が実行されて、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータが生成され、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理が実行され、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータが生成され、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行すると仮定した場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1部分印刷に対応するデータと、前記第2部分印刷に対応するデータと、の少なくとも一方を用いて、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が、前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向と同一方向とのいずれかに決定され、
前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向に決定される場合に、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルが第1補正レベルに決定され、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向と同一方向に決定される場合に、前記補正レベルが前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理が実行さ
れる、コンピュータプログラム。
【請求項5】
印刷実行部を制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
対象画像データを取得することと、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成することと、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させることと、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理が実行されて、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータが生成され、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理が実行され、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータが生成され、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行すると仮定した場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記ドットデータの生成では、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルが決定され、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理が実行され、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含み、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含まない、コンピュータプログラム。
【請求項6】
印刷実行部を制御するためのコンピュータプログラムであって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、
対象画像データを取得することと、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成することと、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させることと、
をコンピュータに実現させ、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理が実行されて、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータが生成され、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理が実行され、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータが生成され、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行すると仮定した場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記ドットデータの生成では、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルが決定され、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理が実行され、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第1部分印刷は、特定の前記第1領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の上流側に位置する前記第2領域である上流側第2領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の下流側に位置する前記第2領域である下流側第2領域と、に前記特定色のドットを形成し、
前記上流側第2領域に対する前記補正レベルと、前記下流側第2領域に対する前記補正レベルと、は異なるレベルに決定される、コンピュータプログラム。
【請求項7】
印刷実行部の制御方法であって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御方法では、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させ、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理が実行され、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータが生成され、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理が実行されて、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータが生成され、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行すると仮定した場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記第2部分ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1部分印刷に対応するデータと、前記第2部分印刷に対応するデータと、の少なくとも一方を用いて、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が、前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向と同一方向とのいずれかに決定され、
前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向に決定される場合に、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルが第1補正レベルに決定され、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向と同一方向に決定される場合に、前記補正レベルが前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理が実行さ
れる、制御方法。
【請求項8】
印刷実行部の制御方法であって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御方法では、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させ、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理が実行され、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータが生成され、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理が実行されて、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータが生成され、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行すると仮定した場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記第2部分ドットデータの生成では、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルが決定され、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理が実行され、
を含み、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含み、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含まない、制御方法。
【請求項9】
印刷実行部の制御方法であって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御方法では、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させ、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記ドットデータの生成では、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理が実行され、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータが生成され、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理が実行されて、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータが生成され、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行すると仮定した場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記第2部分ドットデータの生成では、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルが決定され、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理が実行され、
を含み、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第1部分印刷は、特定の前記第1領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の上流側に位置する前記第2領域である上流側第2領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の下流側に位置する前記第2領域である下流側第2領域と、に前記特定色のドットを形成し、
前記上流側第2領域に対する前記補正レベルと、前記下流側第2領域に対する前記補正レベルと、は異なるレベルに決定される、制御方法。
【請求項10】
印刷実行部と制御装置とを含む印刷システムであって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御装置は、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行す
る場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1部分印刷に対応するデータと、前記第2部分印刷に対応するデータと、の少なくとも一方を用いて、前記第2部分印刷の前記主走査の方向を、前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向と同一方向とのいずれかに決定し、
前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向に決定される場合に、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを第1補正レベルに決定し、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向と同一方向に決定される場合に、前記補正レベルを前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定し、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行
する、印刷システム。
【請求項11】
印刷実行部と制御装置とを含む印刷システムであって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御装置は、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行す
る場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記制御装置は、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを決定し、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行し、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含み、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含まない、印刷システム。
【請求項12】
印刷実行部と制御装置とを含む印刷システムであって、
前記印刷実行部は、
特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、
前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方
向に相対的に移動させる
副走査を実行する副走査部と、
前記印刷媒体に対して前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部と、
を備え、
前記制御装置は、
対象画像データを取得し、
前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、
前記ドットデータを用いて、
前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインク
を吐出
させる部分印刷と
、前記
副走査と
、を
、前記印刷実行部に
複数回に亘って実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、
前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、
前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、
前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
1回の前記部分印刷にて各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、
前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、
第1部分印刷と第2部分印刷とを含む2回以上の前記部分印刷にて各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、
前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、
前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行す
る場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、
前記制御装置は、
前記第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記
第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを決定し、
前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行し、
前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定され
、
前記第1部分印刷は、特定の前記第1領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の上流側に位置する前記第2領域である上流側第2領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の下流側に位置する前記第2領域である下流側第2領域と、に前記特定色のドットを形成し、
前記制御装置は、前記上流側第2領域に対する前記補正レベルと、前記下流側第2領域に対する前記補正レベルと、を異なるレベルに決定する、印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置、コンピュータプログラム、印刷実行部の制御方法、および、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置の一例として、特許文献1に開示されたプリンタは、複数回のパスで印刷を行う際に、バンドの境界付近の一部の領域を2回のパスで印刷し、他の領域を1回のパスで印刷する。2回のパスで印刷されるつなぎ目領域のラスタラインを構成する複数個のドットは2個のノズルを用いて形成される。1回のパスで印刷される通常領域のラスタラインを構成する複数個のドットは1個のノズルを用いて形成される。つなぎ目領域の色変換処理に用いるルックアップテーブルには、通常領域の色変換処理に用いるルックアップテーブルとは異なるテーブルが用いられる。これによって通常領域とつなぎ目領域との間に発生する色ムラを軽減できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、色ムラが発生する度合いは、印刷媒体の材質や温度、湿度によって異なるとされている。しかしながら、これらの要因を考慮するだけでは、色ムラが十分に軽減されない可能性があった。
【0005】
本明細書は、領域間に発生する色ムラを効果的に抑制できる新たな技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示された技術は、以下の適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]印刷実行部と制御装置とを備える印刷装置であって、前記印刷実行部は、特定色のインクを吐出する複数個のノズルであって第1方向に沿って並ぶ前記複数個のノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドに前記特定色のインクを吐出させて印刷媒体に前記特定色のドットを形成するヘッド駆動部と、前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方向と前記第1方向と交差する第2方向とのいずれかの方向に相対的に移動させる移動部と、を備え、前記制御装置は、対象画像データを取得し、前記対象画像データを用いて、画素ごとに前記特定色のドットの形成状態を示すドットデータを生成し、前記ドットデータを用いて、前記特定色のインクの吐出と前記印刷媒体の移動とを前記印刷実行部に実行させることによって、印刷画像を印刷させるように構成され、前記印刷画像は、それぞれが前記第2方向に沿って並ぶ複数個の前記特定色のドットを含む複数本のラスタラインを含み、前記複数本のラスタラインは、前記印刷画像の第1領域に含まれる複数本の第1ラスタラインと、前記印刷画像の第2領域であって2個の前記第1領域の間に位置する前記第2領域に含まれる複数本の第2ラスタラインと、を含み、前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、各第1ラスタラインに対応する1個のノズルを用いて形成され、前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、各第2ラスタラインに対応する2以上のノズルを用いて形成され、前記制御装置は、前記対象画像データのうち、前記第1領域に対応する第1部分画像データに対して、第1領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第1領域に対応する第1部分ドットデータを生成し、前記対象画像データのうち、前記第2領域に対応する第2部分画像データに対して、第2領域処理を実行して、前記ドットデータのうち、前記第2領域に対応する第2部分ドットデータを生成し、前記第2領域処理は、前記第2部分画像データに対して前記第1領域処理を実行する場合に印刷される前記第2領域の画像の濃度以下の濃度で前記第2領域の画像を印刷するように、前記第2部分ドットデータを生成する処理であり、前記制御装置は、各第2ラスタラインに対応する前記2以上のノズルのうちの第1ノズルを用いる前記特定色のドットの形成時期と、前記2以上のノズルのうちの第2ノズルを用いる前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔であるドット形成間隔に基づいて、前記第2領域処理にて前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度である補正レベルを決定し、前記補正レベルに基づいて前記第2領域処理を実行し、前記補正レベルは、前記ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、前記ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、前記第1補正レベルよりも前記第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定される、印刷装置。
【0008】
ラスタライン上の複数個の特定色のドットが2以上のノズルで形成される第2領域では、第1ノズルを用いて形成されるドットが印刷媒体上で広がった後に、そのドットに重なるように第2ノズルを用いてドットが形成される。このために、第2領域における特定色のドットの総面積は、第1領域における特定色のドットの総面積よりも大きくなりやすい。このために、同じ画像データを用いて印刷される画像であっても、第2領域に印刷される画像の濃度は、第1領域に印刷される画像の濃度よりも高くなりやすい。ここで、第2領域において濃度が高くなる程度は、ドット形成間隔が長いほど大きい。上記構成によれば、補正レベルは、ドット形成間隔が第1間隔である場合には、第1補正レベルに決定され、ドット形成間隔が前記第1間隔よりも長い第2間隔である場合には、第1補正レベルよりも第2領域の画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベルに決定される。この結果、印刷装置は、第2領域の画像を、ドット形成間隔に応じた適切な濃度で印刷することができる。したがって、印刷装置は、ドット形成間隔に応じて、第1領域と第2領域との間に発生する色ムラを効果的に抑制できる。
[適用例2]
適用例1に記載の印刷装置であって、
前記印刷実行部は、さらに、
前記印刷媒体に対して前記第2方向に沿って前記印刷ヘッドを移動させる主走査を実行する主走査部を備え、
前記移動部は、前記印刷ヘッドに対して前記印刷媒体を前記第1方向に相対的に移動させる副走査を実行する副走査部であり、
前記制御装置は、前記ドットデータを用いて、前記主走査を行いつつ前記印刷ヘッドから前記特定色のインクを吐出させる部分印刷と、前記副走査と、を、前記印刷実行部に複数回に亘って実行させることによって、前記印刷画像を印刷させ、
前記第1領域の前記複数本の第1ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、1回の前記部分印刷にて形成され、
前記第2領域の前記複数本の第2ラスタラインのそれぞれを構成する前記複数個の特定色のドットは、2回以上の前記部分印刷にて形成され、
前記ドット形成間隔は、前記2回以上の部分印刷のうちの第1部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、前記2回以上の部分印刷のうちの第2部分印刷における前記特定色のドットの形成時期と、の間の間隔である、印刷装置。
[適用例3]
適用例2に記載の印刷装置であって、
前記第1間隔は、前記第1部分印刷の前記主走査の方向と前記第2部分印刷の前記主走査の方向とが反対方向である場合における前記ドット形成間隔であり、
前記第2間隔は、前記第1部分印刷の前記主走査の方向と前記第2部分印刷の前記主走査の方向とが同一方向である場合における前記ドット形成間隔である、印刷装置。
[適用例4]
適用例2~3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、前記対象画像データのうち、前記第1部分印刷に対応するデータと、前記第2部分印刷に対応するデータと、の少なくとも一方を用いて予測される前記ドット形成間隔に基づいて、前記補正レベルを決定する、印刷装置。
[適用例5]
適用例4に記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、
前記対象画像データのうち、前記第1部分印刷に対応するデータと、前記第2部分印刷に対応するデータと、の少なくとも一方を用いて、前記第2部分印刷の前記主走査の方向を、前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向と同一方向とのいずれかに決定し、
前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向に決定される場合に、前記補正レベルを前記第1補正レベルに決定し、前記第2部分印刷の前記主走査の方向が前記第1部分印刷の前記主走査の方向と同一方向に決定される場合に、前記補正レベルを前記第2補正レベルに決定する、印刷装置。
[適用例6]
適用例2に記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、前記ドット形成間隔の少なくとも一部を含む所定期間の実測値に基づいて、前記補正レベルを決定する、印刷装置。
[適用例7]
適用例6に記載の印刷装置であって、
前記所定期間は、前記第1部分印刷の主走査に関する所定のタイミングから、前記第2部分印刷の主走査が開始可能な状態になるまでの期間である、印刷装置。
[適用例8]
適用例6または7に記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記補正レベルを予め定められてレベルに決定し、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記補正レベルを前記実測値に基づくレベルに決定する、印刷装置。
[適用例9]
適用例2~8のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記補正レベルと、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記補正レベルと、を異なるレベルに決定する、印刷装置。
[適用例10]
適用例9に記載の印刷装置であって、
前記第2領域のうち、前記第1部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含み、前記第2領域のうち、前記第2部分印刷にて印刷される部分に対する前記第2領域処理は、濃度を低下させる処理を含まない、印刷装置。
[適用例11]
適用例2~10のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記第1部分印刷は、特定の前記第1領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の上流側に位置する前記第2領域である上流側第2領域と、前記特定の第1領域よりも前記第1方向の下流側に位置する前記第2領域である下流側第2領域と、に前記特定色のドットを形成し、
前記制御装置は、前記上流側第2領域に対する前記補正レベルと、前記下流側第2領域に対する前記補正レベルと、を異なるレベルに決定する、印刷装置。
[適用例12]
適用例2~11のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記制御装置は、前記第2領域のうちの第1部分に対する前記補正レベルと、前記第2領域のうちの前記第1部分とは前記第2方向の位置が異なる第2部分に対する前記補正レベルと、を異なるレベルに決定する、印刷装置。
[適用例13]
適用例12に記載の印刷装置であって、
前記第2部分印刷は、前記第1部分印刷の後に実行され、
前記第2部分印刷の前記主走査の方向は、前記第1部分印刷の前記主走査の方向の反対方向であり、
前記第1部分は、前記第2部分よりも前記第1部分印刷の前記主走査の方向の上流側に位置し、
前記制御装置は、前記第1部分に対する前記補正レベルを、前記第2部分に対する前記補正レベルよりも画像の濃度を低下させる程度が大きなレベルに決定する、印刷装置。
【0009】
なお、本明細書に開示された技術は、種々の形態で実現可能であり、例えば、印刷装置、印刷装置の制御方法、画像処理方法、これらの装置および方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】用紙Mに印刷される印刷画像PIの一例を示す図。
【
図6】第1実施例の印刷データ出力処理のフローチャート。
【
図8】RGB画像RIのうち、重複領域SA1の近傍の拡大図。
【
図9】第1実施例の重複領域用ドットデータ生成処理のフローチャート。
【
図10】分配パターンデータPDと、ヘッド位置P2~P4での部分印刷の記録率と、を示す図。
【
図11】第2実施例の印刷データ出力処理のフローチャート。
【
図12】第2実施例の重複領域用ドットデータ生成処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
A.第1実施例:
A-1:プリンタ200の構成
次に、実施の形態を実施例に基づき説明する。
図1は、実施例のプリンタ200の構成を示すブロック図である。
【0012】
プリンタ200は、例えば、印刷実行部としての印刷機構100と、印刷機構100のための制御装置としてのCPU210と、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置220と、ハードディスクやフラッシュメモリなどの揮発性記憶装置230と、ユーザによる操作を取得するためのボタンやタッチパネルなどの操作部260と、液晶ディスプレイなどの表示部270と、通信部280と、を備えている。プリンタ200は、通信部280を介して、外部装置、例えば、ユーザの端末装置(図示省略)と通信可能に接続される。
【0013】
揮発性記憶装置230は、CPU210が処理を行う際に生成される種々の中間データを一時的に格納するバッファ領域231を提供する。不揮発性記憶装置220には、コンピュータプログラムCPと色評価情報CIとが格納されている。コンピュータプログラムCPは、本実施例では、プリンタ200を制御するための制御プログラムである。色評価情報CIは、コンピュータプログラムCPとともに提供される情報であり、後述する制御判定処理において用いられる。コンピュータプログラムCPと色評価情報CIとは、プリンタ200の出荷時に不揮発性記憶装置220に格納されて提供され得る。これに代えて、コンピュータプログラムCPと色評価情報CIは、サーバからダウンロードされる形態で提供されても良いし、DVD-ROMなどに格納される形態で提供されてもよい。CPU210は、コンピュータプログラムCPを実行することにより、例えば、印刷機構100を制御して後述する印刷処理を実行する。色評価情報CIについては後述する。
【0014】
印刷機構100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、ブラック(K)の各インク(液滴)を吐出して印刷を行う。印刷機構100は、印刷ヘッド110とヘッド駆動部120と主走査部130と搬送部140とを備えている。
【0015】
図2は、印刷機構100の概略構成を示す図である。
図2(A)に示すように、主走査部130は、印刷ヘッド110を搭載するキャリッジ133と、キャリッジ133を主走査方向(
図2のX軸方向)に沿って往復動可能に保持する摺動軸134と、を備えている。主走査部130は、図示しない主走査モータの動力を用いて、キャリッジ133を摺動軸134に沿って往復動させる。これによって、用紙Mに対して主走査方向に沿って印刷ヘッド110を往復動させる主走査が実現される。
【0016】
搬送部140は、用紙Mを保持しつつ、主走査方向と交差する搬送方向AR(
図2の+Y方向)に用紙Mを搬送する。
図2(A)に示すように、用紙台145と、上流ローラ対142と、下流ローラ対141と、を備えている。以下では、搬送方向ARの上流側(-Y側)を、単に、上流側とも呼び、搬送方向ARの下流側(+Y側)を単に下流側とも呼ぶ。
【0017】
上流ローラ対142は、印刷ヘッド110よりも上流側(-Y側)で用紙Mを保持し、下流ローラ対141は、印刷ヘッド110よりも下流側(+Y側)で用紙Mを保持する。用紙台145は、上流ローラ対142と、下流ローラ対141と、の間の位置であって、かつ、印刷ヘッド110のノズル形成面111と対向する位置に配置されている。図示しない搬送モータによって下流ローラ対141と上流ローラ対142とが駆動されることによって、用紙Mが搬送される。
【0018】
ヘッド駆動部120(
図1)は、主走査部130が印刷ヘッド110の主走査を行っている最中に、印刷ヘッド110に駆動信号を供給して、印刷ヘッド110を駆動する。印刷ヘッド110は、駆動信号に従って、搬送部140によって搬送される用紙上にインクを吐出してドットを形成する。
【0019】
図2(B)は、-Z側(
図2における下側)から見た印刷ヘッド110の構成が図示されている。
図2(B)に示すように、印刷ヘッド110のノズル形成面111には、複数のノズルからなる複数のノズル列、すなわち、上述したC、M、Y、Kの各インクを吐出するノズル列NC、NM、NY、NKが形成されている。各ノズル列は、搬送方向ARに沿って並ぶ複数個のノズルNZを含んでいる。複数個のノズルNZは、搬送方向AR(+Y方向)の位置が互いに異なり、搬送方向ARに沿って所定のノズル間隔NTで並ぶ。ノズル間隔NTは、複数のノズルNZの中で搬送方向ARに隣り合う2個のノズルNZ間の搬送方向ARの長さである。これらのノズル列を構成するノズルのうち、最も上流側(-Y側)に位置するノズルNZを、最上流ノズルNZuとも呼ぶ。また、これらのノズルのうち、最も下流側(+Y側)に位置するノズルNZを、最下流ノズルNZdと呼ぶ。最上流ノズルNZuから最下流ノズルNZdまでの搬送方向ARの長さに、さらに、ノズル間隔NTを加えた長さを、ノズル長Dとも呼ぶ。
【0020】
ノズル列NC、NM、NY、NKの主走査方向(
図2(B)のX方向)の位置は、互いに異なり、搬送方向AR(
図2(B)のY方向)の位置は、互いに重複している。例えば、
図2(B)の例では、Yインクを吐出するノズル列NYの+X方向に、ノズル列NMが配置されている。
【0021】
A-2.印刷処理
プリンタ200のCPU210(
図1)は、ユーザからの印刷指示に基づいて、印刷処理を実行する。印刷指示には、印刷すべき画像を示す画像データの指定が含まれる。
図3は、印刷処理のフローチャートである。S110では、CPU210は、印刷指示によって指定される画像データを不揮発性記憶装置220から取得する。取得される画像データは、例えば、JPEG圧縮された画像データや、ページ記述言語で記述された画像データなどの各種のフォーマットを有する画像データである。
【0022】
S120では、CPU210は、取得された画像データに対して、ラスタライズ処理を実行して、RGB画像データを生成する。これによって、本実施例の対象画像データとしてのRGB画像データが取得される。RGB画像データは、RGB値を画素ごとに含むビットマップデータである。RGB値は、例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)との3個の成分値を含むRGB表色系の色値である。
【0023】
S130では、CPU210は、RGB画像データを用いて、印刷データ出力処理を実行する。印刷データ出力処理は、後述する1回の部分印刷SPごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。制御データには、部分印刷SPの印刷方向を指定するデータや、部分印刷SP後に実行すべきシート搬送Tの搬送量を指定するデータが含まれる。印刷データ出力処理では、部分印刷データが、実行すべき部分印刷SPの回数分だけ出力される。印刷データ出力処理の詳細については、後述する。
【0024】
これによって、CPU210は、印刷機構100に印刷画像PIを印刷させることができる。具体的には、CPU210は、ヘッド駆動部120と、主走査部130と、搬送部140と、を制御して、部分印刷SPとシート搬送Tとを、交互に繰り返し複数回に亘って実行させることによって印刷を行う。1回の部分印刷SPでは、用紙Mを用紙台145上に停止した状態で、1回の主走査を行いつつ、印刷ヘッド110のノズルNZから用紙M上にインクを吐出することによって、印刷すべき画像の一部分が用紙Mに印刷される。1回のシート搬送Tは、所定の搬送量だけ用紙Mを搬送方向ARに移動させる搬送である。本実施例では、CPU210は、m回(mは、2以上の整数)の部分印刷SPを印刷機構100に実行させる。
【0025】
図4は、用紙Mに印刷される印刷画像PIの一例を示す図である。印刷画像PIは、
図4のX方向(印刷時の主走査方向)に延び、Y方向の位置が互い異なる複数本のラスタラインRL(例えば、
図4のRL1~RL3)を含んでいる。各ラスタラインRLは、複数個のドットが形成され得るラインである。印刷画像PIの各ラスタラインは、後述するRGB画像RIの各ラスタラインと一対一で対応している。
【0026】
図4の例では、印刷画像PIは、5回の部分印刷SPで印刷される(m=5)。さらに、
図4には、ヘッド位置P、すなわち、用紙Mに対する印刷ヘッド110の搬送方向の相対的な位置が、部分印刷SPごと(すなわち、主走査ごと)に図示されている。複数回の部分印刷SPに対して、実行順に、パス番号k(kは、1以上m以下の整数)を付し、k回目の部分印刷SPを、部分印刷SPkとも呼ぶ。そして、部分印刷SPkを行う際のヘッド位置Pを、ヘッド位置Pkと呼ぶ。そして、k回目の部分印刷SPkと、(k+1)回目の部分印刷SP(k+1)と、の間に行われるシート搬送Tを、k回目のシート搬送Tkとも呼ぶ。
図4には、1~5回目の部分印刷SP1~SP5に対応するヘッド位置P1~P5と、シート搬送T1~T4と、が図示されている。
【0027】
なお、
図4において、用紙M上に形成される印刷画像PIは、複数個の非重複領域NA(例えば、
図4のハッチングされていない領域NA1~NA5)と、複数個の重複領域SA(例えば、
図4のハッチングされた領域SA1~SA4)と、を含む。
【0028】
非重複領域NAは、それぞれ、領域内の各ラスタラインRLが1回の部分印刷のみで印刷される領域である。例えば、
図4の非重複領域NAkの各ラスタラインRLには、k回目の部分印刷SPk、すなわち、ヘッド位置Pkで行われる部分印刷SPkのみでドットが形成される。非重複領域NAkの各ラスタラインRLには、(k+1)回目の部分印刷SP(k+1)や(k-1)回目の部分印刷SP(k-1)ではドットが形成されない。したがって、非重複領域NAkの各ラスタラインRLの特定色のドット、例えば、Cのドットは、ノズル列NCのうち、該ラスタラインRLに対応する1個のノズルを用いて形成される。
【0029】
重複領域SAは、領域内のラスタラインRLが2回の部分印刷で印刷される領域である。例えば、
図4の重複領域SAkの各ラスタラインRLには、k回目の部分印刷SPkと(k+1)回目の部分印刷SP(k+1)とでドットが形成される。すなわち、重複領域SAkの各ラスタラインRLには、ヘッド位置Pkで行われる部分印刷SPkと、ヘッド位置P(k+1)で行われる部分印刷SP(k+1)と、でドットが形成される。したがって、重複領域SAkの各ラスタラインRLの特定色のドット、例えば、Cのドットは、ノズル列NCのうち、該ラスタラインRLに対応する2個のノズルを用いて形成される。重複領域SAkのラスタラインRLに対応する2個のノズルは、部分印刷SPkにおいて該ラスタラインRLに対応するノズルと、部分印刷SP(k+1)において該ラスタラインRLに対応するノズルである。
【0030】
重複領域SAkは、非重複領域NAkと非重複領域NA(k+1)との間に位置する。重複領域SAの搬送方向の長さHaは、例えば、数本~数10本程度のラスタラインRL分の長さである。
【0031】
なお、
図4に示すように、1回目の部分印刷SP1で印刷可能な部分領域RA1は、部分領域RA1の上流端を含む重複領域SA1と、重複領域SA1よりも下流側の非重複領域NA1と、を含む。2回目から4回目の部分印刷SP2~SP4で印刷可能な部分領域RA2~RA4は、それぞれ、部分領域RAkの上流端を含む重複領域SAkと、部分領域RAkの下流端を含む重複領域SA(k-1)と、重複領域SAkよりも下流側で重複領域SA(k-1)よりも上流側の非重複領域NAkと、を含む(kは、2~4のいずれか)。最後の部分印刷SP5で印刷可能な部分領域RA5は、部分領域RA5の下流端を含む重複領域SA4と、重複領域SA4よりも上流側の非重複領域NA5と、を含む。
【0032】
重複領域SAを設ける理由を説明する。仮に、重複領域SAを設けずに、非重複領域に印刷される画像だけで印刷画像が構成されているとする。この場合には、用紙Mの搬送量のばらつき等に起因して、互いに搬送方向ARに隣り合う2個の非重複領域の境界に、白スジや黒スジが現れるいわゆるバンディングと呼ばれる不具合が発生し得る。バンディングは、印刷画像PIの画質を低下させる。2個の非重複領域NAの間に重複領域SAを設けて、該領域内に画像を印刷することで、上述したバンディングと呼ばれる不具合を抑制できる。重複領域SAでは、1個のラスタラインRL上のドットが2回の部分印刷にて形成されるので、1個のラスタラインRL上の全ドットが、他のラスタライン上の全ドットに対して、同じようにずれることを抑制できるためである。
【0033】
各部分印刷SPにおける主走査の方向(印刷方向とも呼ぶ)は、往路方向と復路方向とのいずれかである。すなわち、部分印刷SPは、往路方向(
図4の+X方向)の主走査を行いつつドットを形成する往路印刷と、復路方向(
図4の-X方向)の主走査を行いつつドットを形成する復路印刷と、のいずれかである。
図4にて部分領域RA内には、+X方向または-X方向の実線の矢印が付されている。+X方向の実線の矢印が付された部分領域RA1、RA2、RA3、RA5の画像は、往路印刷で印刷される。-X方向の実線の矢印が付された部分領域RA4の画像は、復路印刷で印刷される。
【0034】
ここで、
図2(B)に示すように、印刷ヘッド110に示すように、CMYKのノズル列NC、NM、NY、NKは、主走査方向の位置が互いに異なっている。このために、用紙M上の同じ位置にCMYKの各ドットを形成する場合に、往路印刷と復路印刷との間で、ドットの形成順序が異なる。例えば、
図2(B)の例では、往路印刷では、K、Y、M、Cの順番でドットが形成され、復路印刷では、逆に、C、M、Y、Kの順番でドットが形成される。この結果、複数色のドットが重なり合う領域では、往路印刷で印刷される画像と復路印刷で印刷される画像との間でドットが重なる順序が異なる。このために、往路印刷で印刷される画像と復路印刷で印刷される画像との間では、互いに同じドットデータを用いて印刷したとしても、印刷される色味が互いに異なる場合がある。このような往路印刷で印刷される画像と復路印刷で印刷される画像との間で生じる色の相違を往復間色差とも呼ぶ。
【0035】
往復間色差の程度は、印刷すべき色によって異なる。上述した色評価情報CI(
図1)は、RGB値のそれぞれについて、往復間色差に応じた重みを規定した情報である。
【0036】
図5は、色評価情報CIの説明図である。
図5(A)には、RGB色空間CCが示されている。RGB色空間CCの8つの頂点のそれぞれに、色を示す符号(具体的には、黒頂点Vk(0,0,0)、赤頂点Vr(255,0,0)、緑頂点Vg(0,255,0)、青頂点Vb(0,0,255)、シアン頂点Vc(0,255,255)、マゼンタ頂点Vm(255,0,255)、イエロ頂点Vy(255,255,0)、白頂点Vw(255,255,255))が付されている。括弧内の数字は、(R、G、B)の各色成分の値を示している。各グリッドGDのRの値は、Rの範囲(ここでは、ゼロから255)をQ等分して得られるQ+1個の値のうちのいずれかである。各グリッドGDの緑Gと青Bとのそれぞれの値も同様である。本実施例では、Q=9であるので、RGB色空間CC内には、9の3乗個(729個)のグリッドGDが設定される。
【0037】
図5(B)には、色評価情報CIの一例が示されている。色評価情報CIには、729個のグリッドGDに対応するRGB値のそれぞれに、重みWtが対応付けられている。例えば、評価者は、特定のグリッドGDのRGB値を色変換して得られるCMYK値に基づいて、該RGB値の色を示すカラーパッチを、往路印刷と復路印刷との両方で印刷する。評価者は、2個のカラーパッチを測色して測色値(例えば、CIELAB色空間の色値(Lab値とも呼ぶ)を取得する。評価者は、取得される2個の測色値の色差を、特定のグリッドGDに対応する往復間色差dMとして算出する。評価者は、往復間色差dMが大きいほど大きな重みWtを、特定のグリッドGDに対応づける重みWtとして決定する。このようにして、729個のグリッドGDに対応付ける重みWtが決定されて、色評価情報CIが作成される。例えば、2種類のインクを用いて表現される色は、1種類のインクを用いて表現される色と比較して、往復間色差が大きくなるので、2種類のインクを用いて表現される色に対応するグリッドGDには、1種類のインクを用いて表現される色に対応するグリッドGDよりも大きな重みWtが対応付けられる。
【0038】
本実施例では、各部分印刷SPの印刷方向は、色評価情報CIを用いて決定される。部分印刷SPの印刷方向の決定の詳細については、後述する。
【0039】
A-3.印刷データ出力処理
次に、
図3のS130の印刷データ出力処理について説明する。印刷データ出力処理は、上述したように、RGB画像データを用いて、部分印刷SPごとに部分印刷データを生成し、該部分印刷データに各種の制御データを付加して印刷機構100に出力する処理である。
図6は、第1実施例の印刷データ出力処理のフローチャートである。
【0040】
印刷データ出力処理の対象となるRGB画像データによって示されるRGB画像RIは、
図4の印刷画像PIと対応している。このために、
図4は、RGB画像RIを示す図とも言うことができる。RGB画像RIは、
図4のX方向(印刷時の主走査方向に対応する方向)に延び、Y方向の位置が互い異なる複数本のラスタラインRL(例えば、
図4のRL1)を含んでいる。各ラスタラインRLは、
図4のX方向に延びるラインであり、複数個の画素によって構成される。ドットが形成される印刷画像PIの各ラスタラインRLと、画素で構成されるRGB画像RIの各ラスタラインRLと、は、上述のように一対一で対応している。このために、本明細書および図面では、印刷画像PIのラスタラインとRGB画像RIのラスタラインには、同じ符号が付されている。また、RGB画像RIにおいて、印刷画像PIの上述した重複領域SA、非重複領域NA、部分領域RAに対応する領域を、RGB画像RIの重複領域SA、非重複領域NA、部分領域RAと呼ぶ。RGB画像RIにおいて、印刷画像PIの搬送方向ARに対応する方向を、RGB画像RIにおける搬送方向ARと呼ぶ。
【0041】
S200では、CPU210は、例えば、RGB画像RIの複数本のラスタラインRLの中から1本の注目ラスタラインを、印刷時の搬送方向ARの下流側(
図4の+Y側)から順次に選択する。例えば、最初の注目ラスタラインは、
図4のラスタラインRL1である。
【0042】
ここで、注目ラスタラインを印刷する部分印刷SPを注目部分印刷とも呼ぶ。ただし、注目ラスタラインが2回の部分印刷SPで印刷される場合、すなわち、注目ラスタラインが、重複領域SA内に位置する場合には、2回の部分印刷のうち、先に行われる部分印刷を注目部分印刷とする。例えば、
図4のラスタラインRL1~RL3が、注目ラスタラインである場合には、注目部分印刷は、ヘッド位置P1(
図4)で行われる部分印刷SP1である。
【0043】
S210では、CPU210は、注目ラスタラインが、重複領域SA内に位置するか否かを判断する。例えば、
図4のラスタラインRL2、RL3が、注目ラスタラインである場合には、注目ラスタラインが重複領域SA内に位置すると判断される。
【0044】
注目ラスタラインが重複領域SA内に位置しない場合には(S210:NO)、すなわち、注目ラスタラインが非重複領域NA内に位置する場合には、S222、S224にて、CPU210は、非重複領域用ドットデータ生成処理を実行する。
【0045】
S222では、CPU210は、RGB画像データのうち、注目ラスタラインに対応するデータに対して、色変換処理を実行する。色変換処理は、注目ラスタラインを構成する複数個の画素のRGB値をCMYK値に変換する処理である。CMYK値は、印刷に用いられるインクに対応する成分値(本実施例では、C、M、Y、Kの成分値)を含むCMYK表色系の色値である。色変換処理は、例えば、RGB値とCMYK値との対応関係を規定する公知のルックアップテーブルを参照して実行される。
【0046】
S224では、CPU210は、色変換処理済みの注目ラスタラインに対応するデータに対して、ハーフトーン処理を実行する。これによって、注目ラスタラインに対応するデータ分のドットデータが生成される。ドットデータは、CMYKのそれぞれの色成分について、ドット形成状態を画素ごとに表すデータである。ドットデータの各画素の値は、例えば、「ドット無し」と「ドット有り」の2階調、あるいは、「ドット無し」「小」「中」「大」の4階調のドットの形成状態を示す。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法などの公知の手法を用いて実行される。
【0047】
注目ラスタラインが重複領域SA内に位置しない場合には、注目ラスタラインに含まれる複数個の画素に対応するドットは、全て注目部分印刷にて形成されるべきである。このために、S225では、CPU210は、生成済みの注目ラスタライン分のドットデータを、出力バッファに格納する。
【0048】
注目ラスタラインが重複領域SA内に位置する場合には(S210:YES)に、S211にて、CPU210は、注目ラスタラインは、重複領域SAの先頭のラスタラインであるか否かを判断する。重複領域SAの先頭のラスタラインは、重複領域SAに含まれる複数本のラスタラインのうち、搬送方向ARの下流端(
図4の上端)に位置するラスタラインである。例えば、
図4のラスタラインRL2は、重複領域SA1の先頭のラスタラインである。
【0049】
注目ラスタラインが重複領域SAの先頭のラスタラインである場合には(S211:YES)、S212にて、CPU210は、制御判定処理を実行する。制御判定処理は、注目部分印刷の次の部分印刷の印刷方向を往路方向(
図4の+X方向)と復路方向(
図4の-X方向)とのいずれかに決定するとともに、注目ラスタラインが先頭に位置する重複領域SAに対する濃度補正量を決定する処理である。この処理で決定される濃度補正量は、後述する重複領域用ドットデータ生成処理において、重複領域SAの画像の濃度を低下させる補正のために用いられる。注目ラスタラインが重複領域SAの先頭のラスタラインでない場合には(S211:NO)、S212の制御判定処理は、スキップされる。
【0050】
図7は、制御判定処理のフローチャートである。S300では、CPU210は、注目ラスタラインが先頭に位置する部分領域RA、すなわち、注目部分印刷の次の部分印刷で印刷可能な部分領域RAに、複数個のブロックBLsを設定する。
図8は、RGB画像RIのうち、重複領域SA1の近傍の拡大図である。注目ラスタラインが重複領域SA1および部分領域RA2の先頭に位置しているラスタラインRL2(
図4、
図8)である場合には、注目部分印刷で印刷可能な部分領域RAは、部分領域RA1であり、次の部分印刷で印刷可能な部分領域RAは、部分領域RA2である。このために、この場合には、
図8に示すように、部分領域RA2に複数個のブロックBLsが設定される。例えば、
図8の例では、主走査方向(X方向)に並ぶ10個のブロックBLsが複数行に亘って部分領域RA2内に設定されている。ブロックBLsの搬送方向の高さBHおよび主走査方向の幅BWは、予め決められている。
【0051】
S305では、CPU210は、RGB画像RIのうち、各ブロックBLsの画像の評価値EVをブロックごとに算出する。具体的には、注目するブロックBLs内の複数個の画素のそれぞれに対応する重みWtが決定される。重みWtは、上述した色評価情報CI(
図5)を参照して決定される。すなわち、各画素のRGB値に近接する複数個のグリッドGDに対応する複数個の重みWtに基づく補間演算によって、各画素に対応するWtが算出される。複数個の画素に対応する複数個の重みWtの平均値が、注目するブロックBLsの評価値EVとして算出される。注目するブロックBLsの評価値EVが大きいことは、注目するブロックBLsの画像の往復間色差が大きいことを意味している。
【0052】
S310では、CPU210は、評価値EVが所定の閾値TH1以上であるブロックBLsの個数Qをカウントする。S315では、CPU210は、個数Qが閾値TH2以上であるか否かを判断する。
【0053】
個数Qが閾値TH2以上である場合には(S315:YES)、S320にて、CPU210は、次の部分印刷の印刷方向を往路方向に決定する。この場合には、次の部分印刷を復路方向で印刷すると、次の部分印刷で印刷された画像と、往路方向で印刷された画像と、の往復間色差が大きくなり、画質が低下し得る。
【0054】
個数Qが閾値TH2未満である場合には(S315:NO)、S325にて、CPU210は、次の部分印刷の印刷方向を、注目部分印刷の印刷方向とは反対方向に決定する。この場合には、次の部分印刷を復路方向で印刷したとしても、次の部分印刷で印刷された画像と、往路方向で印刷された画像と、の往復間色差が大きくならず、画質が低下し難い。このために、この場合には、印刷速度の低下を抑制することを優先すべきであるためである。
【0055】
S330では、CPU210は、注目部分印刷の印刷方向と次の部分印刷の印刷方向とが、反対方向であるか同一方向であるかを判断する。注目部分印刷の印刷方向と次の部分印刷の印刷方向とが反対方向である場合には(S330:YES)、S335にて、CPU210は、濃度補正量をΔV1に決定する。注目部分印刷の印刷方向と次の部分印刷の印刷方向とが同一方向である場合には(S330:NO)、S340にて、CPU210は、濃度補正量をΔV1より大きなΔV2に決定する。決定される濃度補正量ΔV1、ΔV2は、後述する重複領域用ドットデータ生成処理において、重複領域SAの画像の濃度を低下させる際に用いられる。濃度補正量ΔV1、ΔV2は、例えば、0より大きく1未満の値であり、例えば、濃度を減少させる割合を示す値である。補正量が大きいほど画像の濃度を低下させる程度が大きい。濃度補正量が決定されると、制御判定処理は終了される。
【0056】
図6のS215では、CPU210は、重複領域用ドットデータ生成処理を実行する。
図9は、第1実施例の重複領域用ドットデータ生成処理のフローチャートである。
【0057】
図9のS400では、CPU210は、RGB画像データのうち、注目ラスタラインに対応するデータに対して、色変換処理を実行する。これによって、注目ラスタラインを構成する複数個の画素の値は、RGB値からCMYK値に変換される。
【0058】
S415では、CPU210は、注目ラスタラインに対応する分配パターンデータPDを取得する。
図10は、分配パターンデータPDと、ヘッド位置P2~P4での部分印刷の記録率と、を示す図である。
図10(A)に示すように、分配パターンデータPDは、注目ラスタラインの各画素に対応する値を有する二値データである。分配パターンデータPDの値「0」は、その画素に対応するドットが、注目部分印刷にて形成されるべきであることを示している。分配パターンデータPDの値「1」は、その画素に対応するドットが、注目部分印刷の次の部分印刷にて形成されるべきであることを示している。
【0059】
ここで、
図10(B)の記録率R2、R3、R4は、それぞれ、ヘッド位置P2、P3、P4での部分印刷SP2、SP3、SP4における記録率である。
図10(B)では、搬送方向ARの位置に対する各記録率R2、R3、R4が示されている。非重複領域NA2(
図4)に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R2は、100%である。同様に、非重複領域NA3、NA4(
図4)に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R3、R4は、100%である。
【0060】
重複領域SA2(
図4)に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R2は、搬送方向ARの上流側(
図10(B)の下側)に向かうに連れて、直線的に減少する。重複領域SA2に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R3は、搬送方向ARの下流側(
図10(B)の上側)に向かうに連れて、直線的に減少する。重複領域SA2(
図4)に対応する搬送方向ARの範囲では、記録率R2と記録率R3との和は、100%である。重複領域SA3(
図4)に対応する搬送方向ARの範囲における記録率R3、R4についても同様である。
【0061】
なお、
図10(B)では、ヘッド位置P2~P4での部分印刷についてのみ記録率を示したが、他のヘッド位置P1、P5においても、同様の記録率となっている。これによって、非重複領域NA1~NA5、重複領域SA1~SA4のそれぞれにて、100%の記録率で印刷が可能である。
【0062】
分配パターンデータPDは、重複領域SAにおける搬送方向ARの位置に応じて、上述した記録率が実現されるように、生成される。
【0063】
S420では、CPU210は、注目ラスタラインを構成する複数個の画素のうち、注目部分印刷に分配される各画素のCMYK値に対して、濃度を低下させる補正を実行する。具体的には、C、M、Y、Kの各成分値に対して係数αを乗じて得られる値が、補正済み各成分値とされる。係数αは、上述した制御判定処理において決定された濃度補正量ΔV(ΔV1またはΔV2)に基づく係数であり、本実施例では、α=(1-ΔV)である。上述のように、注目部分印刷に分配される画素は、分配パターンデータPDの値「0」に対応する画素であるので、分配パターンデータPDを参照して特定される。なお、本実施例では、次の注目部分印刷に分配される画素(分配パターンデータPDの値「1」に対応する画素)には、濃度を低下させる補正は実行されない。
【0064】
S430では、CPU210は、注目ラスタラインを構成する複数個の画素のCMYK値に対して、ハーフトーン処理を実行する。これによって、注目ラスタライン分のドットデータが生成される。注目ラスタライン分のドットデータが生成されると、重複領域用ドットデータ生成処理は終了される。
【0065】
図6のS220では、CPU210は、分配パターンデータPDに従って、注目ラスタライン分のドットデータを、出力バッファと、一時保存バッファとに分配して格納する。すなわち、注目ラスタライン分のドットデータのうち、注目部分印刷にて形成すべきドットを示すデータは、出力バッファに格納され、注目部分印刷の次の部分印刷にて形成すべきドットを示すデータは、一時保存バッファに格納される。
【0066】
S230では、CPU210は、注目部分印刷分のラスタラインが、注目ラスタラインとして全て処理されたか否かを判断する。例えば、
図4のヘッド位置P1にて行われる部分印刷SP1が、注目部分印刷である場合において、ヘッド位置P1に対応する複数本のラスタラインRLのうち、搬送方向ARの最上流に位置するラスタラインRL3が、注目ラスタラインである場合には、注目部分印刷分のラスタラインを全て処理したと判断される。
【0067】
注目部分印刷分のラスタラインが全て処理された場合には(S230:YES)、この時点で、出力バッファに、注目部分印刷分のドットデータが格納されている。したがって、この場合には、S235にて、CPU210は、注目部分印刷分のドットデータを、部分印刷データとして印刷機構100に出力する。その際に、出力される部分印刷データには、注目部分印刷の印刷方向と、注目部分印刷の後に行うべきシート搬送Tの搬送量と、を示す制御データが付加される。例えば、注目部分印刷が最初の部分印刷SP1であるとする。この場合には、部分印刷SP1で印刷される部分領域RA1の上流側の重複領域SA1の搬送方向ARの長さはHaである(
図4)。したがって、注目部分印刷の後に行うべきシート搬送Tの搬送量は、ノズル長DからHaを減じた値(D-Ha)とされる。
【0068】
S240では、CPU210は、出力済みの部分印刷データを出力バッファから消去して、一時保存バッファに格納されたデータを、出力バッファにコピーする。例えば、
図4のヘッド位置P1に対応する最後のラスタラインが処理された時点で、ヘッド位置P2に対応する複数本のラスタラインのうち、重複領域SA1内のラスタラインは、既に処理済みである。そして、これらの処理済みのラスタラインに対応するラスタデータのうち、ヘッド位置P2にて行われる部分印刷SP2にて用いられるデータは、一時保存バッファに格納済みである。本ステップでは、これらのデータが出力バッファにコピーされる。
【0069】
注目部分印刷分の未処理のラスタラインがある場合には(S230:NO)、CPU210は、S235とS240をスキップする。
【0070】
S245では、CPU210は、RGB画像RI内の全てのラスタラインを注目ラスタラインとして処理したか否かを判断する。未処理のラスタラインがある場合には(S245:NO)、CPU210は、S200に戻って、未処理のラスタラインを注目ラスタラインとして選択する。全てのラスタラインが処理された場合には(S245:YES)、CPU210は、印刷データ出力処理を終了する。
【0071】
以上説明した印刷処理では、
図7の制御判定処理にて、部分領域RAの画像の往復間色差が基準以上であると判断される場合、具体的には、評価値EVが閾値TH1以上であるブロックBLsの個数Qが閾値TH2以上である場合には(S315:YES)、部分領域RAの画像は、常に往路方向で印刷される(S320)。そして、部分領域RAの画像の往復間色差が基準未満であると判断される場合、具体的には、上述の個数Qが閾値TH2未満である場合には(S315:NO)、部分領域RAの画像は、直前の部分印刷の印刷方向とは反対の印刷方向で印刷される(S325)。
【0072】
例えば、
図4の例では、部分領域RA2、RA3の画像は、往復間色差が基準以上であると判断される画像であり、残りの部分領域RA1、RA4、RA5の画像は、往復間色差が基準未満であると判断される画像であるとする。
図4に示すように、部分領域RA2、RA3の画像を印刷する部分印刷は、直前の部分印刷と同じ印刷方向で行われる。この場合には、
図4に破線の矢印で示すように、その部分印刷と直前の部分印刷との間に、ドットを形成することなく主走査が行われる。このように、ドットを形成することなく行われる主走査を、無印刷主走査とも呼ぶ。
【0073】
無印刷主走査が行われることで、無印刷主走査が行われない場合と比較して、印刷に要する印刷時間が長くなるが、上述した往復間色差が目立つことを抑制して、印刷画像の画質の低下を抑制できる。
【0074】
一方で、往復間色差が基準未満であると判断される部分領域RA4、RA5の画像では往復間色差が目立たないので、これらの画像を印刷する部分印刷は、無印刷主走査を行う必要がないように、直前の部分印刷とは反対方向を印刷方向として行われる。この結果、無印刷主走査を行わない分だけ、印刷速度を向上できる。
【0075】
さらに、本実施例によれば、CPU210は、対象画像データとしてのRGB画像データを取得し(
図3のS110)、該RGB画像データを用いてドットデータを生成する(
図6のS222、S224、S215)。CPU210は、ドットデータを用いて、インクの吐出と用紙Mの搬送とを印刷機構100に実行させることによって印刷画像PIを印刷させる(
図6のS235)。
図4を参照して説明したように、印刷画像PIの非重複領域NAに含まれる複数本のラスタラインRLのそれぞれを構成する特定色のドット(例えば、Cのドット)は、該ラスタラインRLに対応する1個のノズルを用いて形成される。印刷画像PIの重複領域SAに含まれる複数本のラスタラインRLのそれぞれを構成する複数個の特定色のドットは、該ラスタラインRLに対応する2以上のノズルを用いて形成される。
【0076】
CPU210は、RGB画像データのうち、非重複領域NAに対応する部分画像データに対して、非重複領域用ドットデータ生成処理(
図6のS222、S224)を実行して、印刷画像PIを示すドットデータのうち、非重複領域NAに対応するドットデータを生成する。CPU210は、RGB画像データのうち、重複領域SAに対応する部分画像データに対して、重複領域用ドットデータ生成処理(
図6のS215、
図9)を実行して、印刷画像PIを示すドットデータのうち、重複領域SAに対応するドットデータを生成する。重複領域用ドットデータ生成処理では、
図9のS420の濃度を低下させる補正が実行される。したがって、重複領域用ドットデータ生成処理は、重複領域SAに対応する部分画像データに対して非重複領域用ドットデータ生成処理を実行すると仮定した場合に印刷される重複領域SAの画像の濃度以下の濃度で重複領域SAの画像を印刷するように、重複領域SAに対応するドットデータを生成する処理である、と言うことができる。
【0077】
ここで、重複領域用ドットデータ生成処理(
図9)において、重複領域SAの画像の濃度を低下させる補正(
図9のS420)が実行される理由を説明する。1本のラスタラインRL上の複数個の特定色のドット(例えば、Cのドット)が2以上のノズルで形成される重複領域SAでは、2以上のノズルのうちの第1ノズルでドットが形成されてから第2ノズルでドットが形成されるまでの間にタイムラグがある。このために、第1ノズルで形成されたドットが用紙M上で広がった後に、そのドットに重なるように第2ノズルでドットが形成される。このために、重複領域SAにおけるドットの総面積は、非重複領域NAにおけるドットの総面積よりも大きくなりやすい。このために、同じ画像データを用いて印刷される画像であっても、重複領域SAに印刷される画像の濃度は、非重複領域NAに印刷される画像の濃度よりも高くなりやすい。これに起因して、印刷画像PIにおいて重複領域SAと非重複領域NAとの間に色ムラが発生し得る。このために、RGB画像RIにおいて、重複領域SAの画像の濃度を低下させる補正(
図9のS420)を実行することで、印刷画像PIにおいて、重複領域SAと非重複領域NAとの間に濃度差が発生することを抑制して、重複領域SAと非重複領域NAとの間に色ムラが発生することを抑制できる。
【0078】
ここで、上述したタイムラグ、すなわち、重複領域SA内のラスタラインにおける第1ノズルを用いる特定色のドットの形成時期と、第2ノズルを用いる特定色のドットの形成時期と、の間の間隔を、ドット形成間隔と呼ぶ。重複領域SAに印刷される画像の濃度が高くなる程度は、ドット形成間隔が長いほど大きくなる。このために、印刷画像PIにおいて重複領域SAと非重複領域NAとの間に色ムラが発生することを適切に抑制するためには、ドット形成間隔が長いほど、RGB画像RIにおいて、重複領域SAの画像の濃度を低下させる程度を大きくすることが好ましい。
【0079】
上述した本実施例によれば、CPU210は、ドット形成間隔に基づいて、重複領域用ドットデータ生成処理にて重複領域SAの画像の濃度を低下させる程度である補正レベル(具体的には、濃度補正量ΔV1、ΔV2)を決定している(
図7のS300~S340)。この結果、プリンタ200は、重複領域SAの画像を、ドット形成間隔に応じた適切な濃度で印刷することができる。したがって、ドット形成間隔に応じて、重複領域SAと非重複領域NAとの間に発生する色ムラを効果的に抑制できる。
【0080】
例えば、本実施例によれば、CPU210は、対象画像データ(RGB画像データ)のうち、注目部分印刷の次の部分印刷に対応するデータ(例えば、
図7の部分領域RA2の画像を示すデータ)を用いて予測されるドット形成間隔に基づいて、補正レベルを決定している(
図7のS300~S340)。したがって、対象画像データを用いて予測されるドット形成間隔に応じて、重複領域SAと非重複領域NAとの間に発生する色ムラを効果的に抑制できる。
【0081】
より具体的には、CPU210は、対象画像データのうち、次の部分印刷に対応するデータを用いて、次の部分印刷の印刷方向を、注目部分印刷の反対方向と同一方向とのいずれかに決定する(
図7のS300~S325)。次の部分印刷の印刷方向に基づいて、注目部分印刷と次の部分印刷との間のドット形成間隔が予測できる。すなわち、注目部分印刷と次の部分印刷とが同じ印刷方向で行われる場合には、上述のように注目部分印刷と次の部分印刷との間に無印刷主走査が行われるので、注目部分印刷と次の部分印刷とが互いに反対方向で行われる場合と比較して、ドット形成間隔が長くなる。このために、CPU210は、次の部分印刷の印刷方向が注目部分印刷の印刷方向の反対方向に決定される場合に(
図7のS330にてYES)、補正レベルを第1補正レベル(濃度補正量ΔV1)に決定し(
図7のS335)、次の部分印刷の印刷方向が注目部分印刷の印刷方向と同一方向に決定される場合に(
図7のS330にてNO)、補正レベルを第1補正レベルよりも画像の濃度を低下させる程度が大きな第2補正レベル(濃度補正量ΔV2)に決定する(
図7のS340)。この結果、次の部分印刷の印刷方向が注目部分印刷の印刷方向の反対方向である場合も同一方向である場合も、重複領域SAと非重複領域NAとの間に発生する色ムラを効果的に抑制できる。
【0082】
さらに、本実施例によれば、CPU210は、上述したように、
図9のS420にて、注目部分印刷に分配される画素に対して、濃度を低下させる補正を実行するが、次の部分印刷に分配される画素に対しては、濃度を低下させる補正を実行しない。すなわち、重複領域SAのうち、先の部分印刷にて印刷される部分に対する重複領域用ドットデータ生成処理は、濃度を低下させる処理を含むが、後の部分印刷にて印刷される部分に対する重複領域用ドットデータ生成処理は、濃度を低下させる処理を含まない。上述したように、先に行われる部分印刷にて印刷される部分のドットが広がりやすいことに起因して印刷画像PIにおいて重複領域SAの濃度が高くなる。これを考慮して、先の部分印刷にて印刷される部分に対してのみ濃度を低下させる補正処理を行うことで、印刷画像PIにおいて重複領域SAの濃度をより適切に調整できる。
【0083】
さらに、
図4のRGB画像RIおよび印刷画像PIは、特定の非重複領域NA(例えば、
図4のNA3)よりも搬送方向ARの上流側(
図4の下側)に位置する重複領域SAである上流側重複領域(例えば、
図4のSA3)と、特定の非重複領域NA(例えば、
図4のNA3)よりも搬送方向ARの下流側(
図4の上側)に位置する重複領域SAである下流側重複領域(例えば、
図4のSA2)と、を含む。
図4の例では、
図4の重複領域SA2の画像は、同一の印刷方向で行われる2回の部分印刷SP2、SP3で印刷されるので、重複領域SA2の画像に対する濃度補正は、濃度補正量ΔV2を用いて行われる。これに対して重複領域SA3の画像は、互いに反対の印刷方向で行われる2回の部分印刷SP3、SP4で印刷されるので、重複領域SA3の画像に対する濃度補正は、濃度補正量ΔV1を用いて行われる。これから解るように、特定の非重複領域NAから見た上流側重複領域に対する補正レベルと、下流側重複領域に対する補正レベルと、は異なるレベルに決定され得る。この結果、画像ごとに柔軟に重複領域SAの画像の濃度を調整できる。したがって、非重複領域NAと重複領域SAとの間に発生する色ムラをより効果的に抑制できる。
【0084】
以上の説明から解るように、第1実施例における非重複領域NAは、第1領域の例であり、重複領域SAは、第2領域の例である。RGB画像データのうち、非重複領域NAに対応する部分画像データは、第1部分画像データの例であり、重複領域SAに対応する部分画像データは、第2部分画像データの例である。また、
図6のS222、S224の非重複領域用ドットデータ生成処理は、第1領域処理の例であり、
図6のS215、
図9の重複領域用ドットデータ生成処理は、第2領域処理の例である。
【0085】
B.第2実施例
第2実施例では、
図3の印刷処理のうち、S130の印刷データ出力処理の内容が、第1実施例とは異なる。
図3の印刷処理の他の構成は、第1実施例と同一である。
図11は、第2実施例の印刷データ出力処理のフローチャートである。第1実施例の印刷データ出力処理では、RGB画像RIのうちの重複領域SAに対応するドットデータの生成が開始される前に、予測されるドット形成間隔に基づいて該重複領域SAのための補正レベルが決定される(
図7)。これに対して、第2実施例の印刷データ出力処理では、重複領域SAを印刷する先の部分印刷と後の部分印刷との間のドット形成間隔を実測し、該実測値に基づいて補正レベルが決定される。
【0086】
S500では、CPU210は、
図6のS200と同様に、RGB画像RIの複数本のラスタラインRLの中から1本の注目ラスタラインを選択する。S505では、
図6のS210と同様に、CPU210は、注目ラスタラインが、重複領域SA内に位置するか否かを判断する。
【0087】
注目ラスタラインが重複領域SA内に位置しない場合には(S505:NO)、すなわち、注目ラスタラインが非重複領域NA内に位置する場合には、S525、S530にて、CPU210は、非重複領域用ドットデータ生成処理を実行し、S535にて、生成済みの注目ラスタライン分のドットデータを、出力バッファに格納する。非重複領域用ドットデータ生成処理は、
図6のS222、S224と同一である。
【0088】
注目ラスタラインが重複領域SA内に位置する場合には(S505:YES)に、S510にて、CPU210は、重複領域用ドットデータ生成処理を実行する。
図12は、第2実施例の重複領域用ドットデータ生成処理のフローチャートである。
【0089】
図12のS600では、CPU210は、
図9のS400と同様に、RGB画像データのうち、注目ラスタラインに対応するデータに対して、色変換処理を実行する。これによって、注目ラスタラインを構成する複数個の画素の値は、RGB値からCMYK値に変換される。
【0090】
S610では、CPU210は、濃度補正を実行するか否かを判断する。注目ラスタラインが位置する重複領域SAについて、後述する
図11のS555の補正判定処理にて濃度補正を実行すると決定されている場合には濃度補正を実行すると判断され、濃度補正を実行しないと決定されている場合には濃度補正を実行しないと判断される。なお、注目ラスタラインが位置する重複領域SAについて、S555の補正判定処理が実行されていない場合には、デフォルトの判断として、濃度補正を実行しないと判断される。
【0091】
濃度補正を実行すると判断される場合には(S610:YES)、S620にて、CPU210は、注目ラスタラインを構成する複数個の画素のCMYK値に対して、濃度を低下させる補正を実行する。具体的には、C、M、Y、Kの各成分値に対して所定の係数αを乗じて得られる値が、補正済み各成分値とされる。係数αは、0より大きく1より小さな値であり、例えば、0.9である。濃度補正を実行しないと判断される場合には(S610:NO)、S620はスキップされる。
【0092】
S630では、CPU210は、注目ラスタラインを構成する複数個の画素のCMYK値に対して、ハーフトーン処理を実行する。これによって、注目ラスタライン分のドットデータが生成される。
【0093】
重複領域用ドットデータ生成処理が終了されると、
図11のS515では、CPU210は、
図9のS415と同様に、注目ラスタラインに対応する分配パターンデータPD(
図10(A))を取得する。
【0094】
S520では、CPU210は、分配パターンデータPDに従って、注目ラスタライン分のドットデータを、出力バッファと、一時保存バッファとに分配して格納する。すなわち、注目ラスタライン分のドットデータのうち、注目部分印刷にて形成すべきドットを示すデータは、出力バッファに格納され、注目部分印刷の次の部分印刷にて形成すべきドットを示すデータは、一時保存バッファに格納される。
【0095】
S540では、CPU210は、
図6のS230と同様に、注目部分印刷分のラスタラインが、注目ラスタラインとして全て処理されたか否かを判断する。注目部分印刷分のラスタラインが全て処理された場合には(S540:YES)、S545にて、CPU210は、
図6のS235と同様に、注目部分印刷分のドットデータを、部分印刷データとして印刷機構100に出力する。なお、注目部分印刷の印刷方向は、どのように決定されても良いが、本実施例では一例として、常に往路方向に設定されるものとする。このために、出力される部分印刷データには、印刷方向として往路方向を示す制御データが付加される。印刷機構100は、注目部分印刷分の部分印刷データを受信すると、印刷機構100は、注目部分印刷を開始する。注目部分印刷分の未処理のラスタラインがある場合には(S540:NO)、CPU210は、S500に戻って、次のラスタラインRLを注目ラスタラインとして選択する。
【0096】
S550では、CPU210は、RGB画像RI内の全てのラスタラインを注目ラスタラインとして処理したか否かを判断する。全てのラスタラインが処理された場合には(S550:YES)、CPU210は、印刷データ出力処理を終了する。未処理のラスタラインがある場合には(S550:NO)、S550にて、CPU210は、補正判定処理を実行する。補正判定処理は、注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAに対して濃度補正を実行するか否かを決定する処理である。
【0097】
図13は、補正判定処理のフローチャートである。S700では、CPU210は、注目部分印刷の終了から、次の部分印刷の開始可能状態に遷移するまでの期間ΔTを測定する。上述のように、S545にて部分印刷データが印刷機構100に出力されると、印刷機構100は注目部分印刷を開始するので、CPU210は、印刷機構100の状態を監視して、注目部分印刷の終了時期(タイミング)を検出し、注目部分印刷の終了時期の時刻を特定する。CPU210は、印刷機構100の状態の監視を継続し、次の部分印刷が開始可能な状態に遷移した時期を検出し、該遷移時期の時刻を特定する。CPU210は、特定されたこれらの時刻に基づいて期間ΔTを算出する。次の部分印刷が開始可能な状態は、次の部分印刷のための部分印刷データを受信すれば、直ちに、次の部分印刷の主走査を開始できる状態であり、例えば、注目部分印刷の終了後に、用紙Mの搬送が行われ、かつ、印刷ヘッド110が部分印刷を行うための所定の初期位置に移動した状態である。
【0098】
本実施例では、通常の動作では、期間ΔTは概ね一定であるが、イレギュラーな動作が行われた場合には、期間ΔTが通常よりも長くなる場合がある。イレギュラーな動作としては、例えば、注目部分印刷と次の部分印刷との間にいわゆるフラッシングが行われる場合が想定される。フラッシングは、ノズルNZの詰まりを抑制するために、印刷ヘッドを用紙M上とは異なる所定のフラッシング位置に移動させたうえで、複数個のノズルNZのそれぞれからインクを吐出する処理である。フラッシングは、例えば、前回のフラッシングの後のインクの吐出量が所定の基準値を超えた場合に、印刷機構100によって実行される。
【0099】
S710では、CPU210は、測定された期間ΔTが閾値THt以上であるか否かを判断する。閾値THtは、例えば、通常の動作で想定される期間ΔTよりも所定量だけ長い期間に設定される。期間ΔTが閾値THt未満である場合(S710:NO)、S720にて、CPU210は、濃注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAに対して濃度補正を実行しないことを決定する。期間ΔTが閾値THt以上である場合(S710:YES)、S730にて、CPU210は、注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAに対して濃度補正を実行することを決定する。
【0100】
補正判定処理後の
図11のS560では、補正判定処理にて濃度補正を実行すると判定されたか否かが判断される。注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAに対して濃度補正を実行する場合には(S560:YES)、この時点で、既に注目部分印刷は終了しているので、重複領域SAのうち、次の部分印刷で印刷される部分に対して濃度補正が適用されることになる。このために、次の部分印刷とで印刷される重複領域SA分のドットデータを生成し直す必要がある。したがって、この場合には、S570にて、CPU210は、次の注目ラスタラインを、注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAの先頭のラスタラインに戻すように設定する。これによって、次のS500では、重複領域SAの先頭のラスタラインが次の注目ラスタラインとして選択される。例えば、現在の注目ラスタラインが
図4の重複領域SA1の最上流のラスタラインRL3である場合には、次の注目ラスタラインは、重複領域SA1の最下流のラスタラインRL2に戻される。
【0101】
注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAに対して濃度補正を実行しない場合には(S560:NO)、次の部分印刷で印刷される重複領域SA分のドットデータを生成し直す必要はない。このために、この場合には、S565にて、CPU210は、一時保存バッファに格納済みのドットデータを出力バッファにコピーする。この場合には、次のS500では、重複領域SAの上流側の非重複領域NAの先頭のラスタラインが次の注目ラスタラインとして選択される。例えば、現在の注目ラスタラインが
図4の重複領域SA1の最上流のラスタラインRL3である場合には、次の注目ラスタラインは、非重複領域NA2の先頭のラスタラインである。
【0102】
以上説明した第2実施例によれば、CPU210は、ドット形成間隔の一部を含む期間ΔTの実測値に基づいて、補正レベル(具体的には、濃度補正を実行するか否かの2段階のレベルのいずれか)を決定する(
図13のS710~S730)。上記構成によれば、期間ΔTの実測値に基づいて、補正レベルを決定するので、補正レベルを精度良く決定できる。例えば、フラッシング等のイレギュラーな動作が発生した場合であっても、ドット形成間隔に応じて重複領域SAと非重複領域NAとの間に発生する色ムラを効果的に抑制できる。
【0103】
上記第2実施例において、期間ΔTは、注目部分印刷の主走査に関する所定のタイミング(具体的には、注目部分印刷の終了時期)から、前記第2部分印刷の主走査が開始可能な状態になるまでの期間である。この場合には、期間ΔTを実測し、補正レベルを決定した後に、次の部分印刷のドットデータを生成することができる。したがって、注目部分印刷と次の部分印刷とで印刷される重複領域SAの画像の濃度を適切に調整できる。
【0104】
さらに、第2実施例では、CPU210は、重複領域SAのうち、注目部分印刷にて印刷される部分に対する補正レベルを予め定められたレベル(具体的には、濃度補正を実行しないレベル)に決定し、重複領域SAのうち、次の部分印刷にて印刷される部分に対する補正レベルを期間ΔTの実測値に基づくレベル(具体的には、濃度補正を実行するか否かの2段階のレベルのいずれか)に決定する。この結果、期間ΔTの実測の後に、重複領域SAの画像の濃度を適切に低下させることができる。
【0105】
C.変形例
(1)上記第1実施例では、CPU210は、1個の重複領域SAに対して1個の補正レベル(濃度補正量ΔV1、ΔV2のいずれか)を決定している。これに代えて、CPU210は、1個の重複領域SAに対して、部分ごとに複数個の補正レベルを決定しても良い。
【0106】
図14は、変形例の濃度補正量の説明図である。
図14には、RGB画像RIのうち、重複領域SA1の近傍の拡大図が示されている。重複領域SA1は、部分領域RA1を印刷する先の部分印刷と、部分領域RA2を印刷する後の部分印刷と、の両方で印刷される。
図14の例では、部分領域RA1、RA2に矢印で示すように、先の部分印刷は往路方向で行われ、後の部分印刷は復路方向で行われる。このために、重複領域SA1におけるドット形成間隔は、主走査方向(
図14のX方向)の位置に応じて異なる。すなわち、領域SA1において、先の部分印刷の印刷方向(
図14の+X方向)の上流側(
図14の左側)ほどドット形成間隔は長くなり、下流側(
図14の右側)ほどドット形成間隔は短くなる。
【0107】
このために、本変形例では、重複領域SA1の主走査方向の位置に応じて、重複領域SA1の複数個の部分に対して、部分ごとに異なる補正レベルが決定される。すなわち、重複領域SA1のうちの第1部分に対する補正レベルと、重複領域SA1のうちの第1部分とは主走査方向の位置が異なる第2部分に対する補正レベルと、が異なるレベルに決定される。この結果、柔軟に重複領域SA1の画像の濃度を調整できる。
【0108】
より具体的には、CPU210は、重複領域SA1を、主走査方向の位置が異なる複数個の部分PTに分割する。CPU210は、先の部分印刷の印刷方向(
図14の+X方向)の上流側(
図14の左側)ほど濃度補正量が大きくなり、下流側(
図14の右側)ほど濃度補正量が小さくなるように、部分PTごとに濃度補正量を決定する。この結果、先の部分印刷の印刷方向と後の部分印刷の印刷方向とが互いに反対方向である場合に、ドット形成間隔に応じた適切な補正レベルが決定されるので、重複領域SAと非重複領域NAとの間に発生する色ムラをより効果的に抑制できる。
【0109】
なお、
図14の例では、複数個の画素を含む矩形の部分PTごとに濃度補正量が決定されているが、濃度補正量が決定されるための部分は、1個の画素で構成されても良い。すなわち、濃度補正量は、主走査方向の位置が異なる画素ごとに異なる値に決定されても良い。
【0110】
(2)上記各実施例では、プリンタ200は、主走査部130を備えるシリアルプリンタである。これに代えて、プリンタは、主走査部を備えない、いわゆるラインプリンタであっても良い。
図15は、変形例のラインプリンタの説明図である。
図15のY方向は、用紙Mの搬送方向ARdである。
図15の印刷ヘッド110dは、Kインクを用いてモノクロ画像を印刷するための印刷ヘッドである。ラインプリンタの印刷ヘッド110dは、搬送方向ARdと交差するX方向に沿って用紙MのX方向の幅とおおよそ同じ長さに亘って並ぶ複数個のノズルNZdを備えている。
【0111】
印刷ヘッド110dは、3個のヘッドユニットHU1~HU3を備えている。ヘッドユニットHU1~HU3は、X方向の位置が違いに異なり、X方向の上流側から末尾の数字(1~3)の順に並んでいる。2個のヘッドユニットHU1、HU3は、Y方向の位置が同じである。2個のヘッドユニットHU1、HU3と1個のヘッドユニットHU2との間では、Y方向の位置がずれている。ヘッドユニットHU1のX方向の下流端を含む一部は、ヘッドユニットHU2のX方向の上流端を含む一部と、X方向の位置が重複している。ヘッドユニットHU2のX方向の下流端を含む一部は、ヘッドユニットHU3のX方向の上流端を含む一部と、X方向の位置が重複している。ヘッドユニットHU1~HU3には、それぞれ、KインクのノズルNZdから成るノズル列が形成されている。
【0112】
図15には、用紙Mに印刷される印刷画像PIdの一例が示されている。ラインプリンタは、搬送方向ARdに搬送される用紙M上に、印刷ヘッド110dからインクを吐出することによって、用紙M上にドットを形成する。これによって、印刷画像PIdが印刷される。印刷画像PIdは、
図15のY方向(印刷時の搬送方向ARd)に延び、X方向の位置が互い異なる複数本のラスタラインRLd(例えば、
図15のRLd1、RLd2)を含んでいる。各ラスタラインRLdは、複数個のドットが形成され得るラインである。
【0113】
印刷画像PIdは、複数個の非重複領域NAd(例えば、
図15のハッチングされていない領域NAd1~NAd3)と、複数個の重複領域SAd(例えば、
図15のハッチングされた領域SAd1、SAd2)と、を含む。
【0114】
非重複領域NAdの各ラスタラインRLd(例えば、
図15のRLd1)は1個のノズルNZdと対応している。すなわち、非重複領域NAdの各ラスタラインRLdのKインクのドットは、1個のノズルNZdを用いて形成される。
【0115】
重複領域SAdの各ラスタラインRLd(例えば、
図15のRLd2)は2個のノズルNZdと対応している。すなわち、すなわち、重複領域SAdの各ラスタラインRLdのKインクのドットは、2個のノズルNZdを用いて形成される。
【0116】
このように、ラインプリンタの印刷ヘッド110dにおいて、2個の非重複領域NAdの間に、重複領域SAdを設けることで、印刷画像PIdにおいてヘッドユニットのつなぎ目の部分に白スジや黒スジが現れることを抑制することができる。
【0117】
ラインプリンタにおいて、重複領域SAdでは、一のノズルでドットが形成されるタイミングと、他のノズルでドットが形成されるタイミングと、の間にライムラグがある。このために、印刷画像PIdにおいて、重複領域SAdの画像の濃度は、非重複領域NAdの画像の濃度よりも高くなりやすい。ラインプリンタにおいても重複領域SAdに対応するドットデータを生成する際には、第1実施例と同様の重複領域用ドットデータ生成処理(
図9)が実行され、非重複領域NAdに対応するドットデータを生成する際には、第1実施例と同様の非重複領域用ドットデータ生成処理(
図6のS222、S224)が実行されてもよい。この場合には、上記各実施例と同様に、重複領域用ドットデータ生成処理における補正レベルは、上述したタイムラグが大きいほど、濃度を低下させる程度が大きくなるように設定される。上述したタイムラグは、用紙Mの搬送速度が速いほど小さくなり、搬送速度が遅いほど大きくなる。例えば、用紙Mの搬送速度が比較的遅い低速高画質モードでは、用紙Mの搬送速度が比較的速い高速低画質モードよりも、タイムラグが大きくなる分、重複領域SAdと非重複領域NAdとの間の色ムラが目立ちやすい。このために、例えば、低速高画質モードでは、高速低画質モードよりも濃度を低下させる程度が大きくなるように補正レベルが設定される。これによって、ラインプリンタにおいても、重複領域SAdと非重複領域NAdとの間の色ムラが目立つことを抑制することができる。
【0118】
(3)上記第2実施例の補正判定処理(
図13)では、補正レベルは、画像の濃度を低下させるレベルと、画像の濃度を低下させないレベルと、の2段階のいずれかに決定される(S720、S730)。これに代えて、第2実施例の補正判定処理において、補正レベルは、第1実施例と同様に、濃度補正量ΔV1、ΔV2のいずれかに決定されても良い。また、第1実施例の制御判定処理(
図7)において、第2実施例と同様に、補正レベルは、画像の濃度を低下させるレベルと、画像の濃度を低下させないレベルと、の2段階のいずれかに決定されても良い。
【0119】
(4)上記第1実施例では、重複領域SAのうち、先の部分印刷で印刷される部分に対してのみ、濃度を低下させる補正が実行される(
図9のS420)。これに代えて、重複領域SAの全ての画素、すなわち、先の部分印刷で印刷される部分と後の部分印刷で印刷される部分との両方に対して、濃度を低下させる補正が実行されても良い。
【0120】
(5)上記第1実施例では、1つの印刷画像PIを印刷する際に、複数個の濃度補正量ΔV1、ΔV2が用いられている。これに代えて、例えば、印刷モードごとに、濃度補正量ΔV1、ΔV2が使い分けられても良い。例えば、常に、往路方向の部分印刷で印刷される片方向印刷モード(例えば、低速高画質モード)では、往路方向の部分印刷と復路方向の部分印刷とが交互に行われる双方向印刷モード(例えば、高速低画質モード)と比較して、ドット形成間隔が長くなる。このために、双方向印刷モードでは、常に、濃度補正量は、ΔV1に決定され、片方向印刷モードでは、常に、濃度補正量は、ΔV1よりも濃度を低下させる程度が大きなΔV2に決定されても良い。
【0121】
(6)上記第1実施例の制御判定処理では、注目部分印刷の次の部分印刷で印刷される部分領域(例えば、
図8の部分領域RA2)の全体に複数個のブロックBLsを設定し、ブロックBLsごとに評価値EVが算出されている。これに代えて、例えば、画素ごとに評価値EVが算出され、これらの値に基づいて補正レベルが決定されても良い。また、制御判定処理には、次の部分印刷で印刷される部分領域(例えば、
図8の部分領域RA2)の全体が用いられる必要はなく、該部分領域の一部だけが用いられても良い。また、制御判定処理には、次の部分印刷で印刷される部分領域に加えて、注目部分印刷で印刷される部分領域(例えば、
図8の部分領域RA1)の少なくとも一部が用いられても良い。あるいは、制御判定処理には、次の部分印刷で印刷される部分領域に代えて、注目部分印刷で印刷される部分領域だけが用いられても良い。
【0122】
(7)上記各実施例の重複領域用ドットデータ生成処理では、色変換処理後のCMYK画像データに対して補正処理(
図9のS420)が実行されている。これに代えて、色変換処理前のRGB画像データに対して濃度を低下させる補正処理が実行されても良い。また、例えば、重複領域用ドットデータ生成処理の色変換処理において、通常のルックアップテーブルよりも濃度が低いCMYK値に変換するように調整された重複領域用のルックアップテーブルを用いることによって、色変換処理において濃度を低下させる補正が行われても良い。もしくは、重複領域用ドットデータ生成処理のハーフトーン処理において、例えば、誤差拡散に用いられるドットの相対濃度値として、通常よりも高い濃度を示す値を用いることによって、ハーフトーン処理において濃度を低下させる補正が行われても良い。
【0123】
(8)上記各実施例では、1個の非重複領域NAの全てのラスタラインは、1回の部分印刷SPにて印刷される。これに代えて、1個の非重複領域NAのうち、互いに隣接する複数本のラスタラインは、複数回の部分印刷に分けて印刷されても良い(いわゆるインタレース印刷)。例えば、非重複領域NAのうち、奇数番目のラスタラインは1回目の部分印刷で印刷され、偶数番目のラスタラインは2回目の部分印刷で印刷されても良い。この場合でも非重複領域NAの各ラスタラインに形成される複数個のドットは、1個のノズルNZを用いて1回の部分印刷にて印刷される。1個の非重複領域NAが2回の部分印刷で印刷される場合には、1個の重複領域SAは4回の部分印刷で印刷される。例えば、重複領域SAのうち、奇数番目のラスタラインに形成される複数個のドットは、2個のノズルNZを用いて2回の部分印刷にて印刷され、偶数番目のラスタラインに形成される複数個のドットは、2個のノズルNZを用いて別の2回の部分印刷にて印刷される。
【0124】
(9)上記各実施例の非重複領域用ドットデータ生成処理(
図6のS222、S224)では、非重複領域NAに対しては、濃度を低下させる補正を実行していない。これに代えて、非重複領域用ドットデータ生成処理にて、非重複領域NAのうち、重複領域SAと接する上流端や下流端の近傍に対して該補正を実行しても良い。すなわち、重複領域SAと、非重複領域NAのうち、重複領域SAと接する端部と、に対して濃度を低下させる補正が実行されても良い。この場合には、例えば、非重複領域NAの補正量(濃度を低下させる程度)は、重複領域SAよりも小さくても良い。本変形例によれば、重複領域SAと非重複領域NAとの境界に色差が生じることを抑制できるので、例えば、重複領域SAと非重複領域NAとの境界にスジが生じることを抑制することができる。
【0125】
(10)印刷媒体として、用紙Mに代えて、他の媒体、例えば、OHP用のフィルム、CD-ROM、DVD-ROMが採用されても良い。
【0126】
(11)上記実施例の印刷機構100では、搬送部140が用紙Mを搬送することによって、印刷ヘッド110に対して用紙Mを搬送方向に相対的に移動させている。これに代えて、固定された用紙Mに対して、印刷ヘッド110を搬送方向ARと反対方向に移動させることによって、印刷ヘッド110に対して用紙Mを搬送方向ARに相対的に移動させても良い。
【0127】
(12)上記各実施例では、
図3の印刷処理を実行する装置は、プリンタ200である。これに代えて、プリンタ200と接続されるパーソナルコンピュータなどの端末装置が、
図3の印刷処理を実行しても良い。この場合には、端末装置のCPUは、例えば、プリンタドライバプログラムを実行することのよって、
図3の印刷処理を実行する。この場合には、端末装置のCPUは、
図6のS235では、部分印刷データをプリンタ200に送信することによって印刷実行部としてのプリンタ200に印刷を実行させる。
【0128】
さらには、
図3の印刷処理を実行する装置は、例えば、プリンタや端末装置から画像データを取得して該画像データを用いて印刷ジョブを生成するサーバであっても良い。このようなサーバは、ネットワークを介して互いに通信可能な複数個の計算機であっても良い。
【0129】
(13)上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、
図3の印刷処理がプリンタ200において実行される場合に、ハーフトーン処理や色変換処理は、例えば、プリンタ200のCPU210の指示に従って動作する専用のハードウェア回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0130】
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0131】
100…印刷機構,110,110d…印刷ヘッド,111…ノズル形成面,120…ヘッド駆動部,130…主走査部,133…キャリッジ,134…摺動軸,140…搬送部,141…下流ローラ対,142…上流ローラ対,145…用紙台,200…プリンタ,210…CPU,220…不揮発性記憶装置,230…揮発性記憶装置,231…バッファ領域,260…操作部,270…表示部,280…通信部,AR,ARd…搬送方向,CI…色評価情報,CP…コンピュータプログラム,M…用紙,NC,NM,NY,NK…ノズル列,NZ,NZd…ノズル,PI,PId…印刷画像