(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 24/54 20110101AFI20240703BHJP
H01R 12/91 20110101ALI20240703BHJP
H01R 24/50 20110101ALI20240703BHJP
H01R 13/631 20060101ALI20240703BHJP
【FI】
H01R24/54
H01R12/91
H01R24/50
H01R13/631
(21)【出願番号】P 2020133701
(22)【出願日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0118899(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103337740(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103367979(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102437477(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102946033(CN,A)
【文献】米国特許第6497579(US,B1)
【文献】特開2017-152196(JP,A)
【文献】特開平9-199240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 24/54
H01R 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コネクタと、
前記第1コネクタと対向するように設けられた第2コネクタと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続するアダプターと、
前記第1コネクタに形成され、前記アダプターを前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持可能な形状保持力を有し、かつ弾性変形が可能である弾性保持部と、
前記弾性保持部を弾性変形させつつ前記アダプターを前記第1コネクタに対して傾けることによって、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの位置ずれを吸収するガイド部とを備え、
前記アダプターを構成する可動側外導体が前記弾性保持部に対して弾性的に当接することによって、前記アダプターが前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持され、
前記可動側外導体には、
前記弾性保持部に当接する保持用当接部と、
前記第1コネクタと前記第2コネクタの対向方向において前記保持用当接部から離隔し、前記第1コネクタを構成する第1外導体に対して弾性的に当接する接点部とが形成されており、
前記保持用当接部が、前記可動側外導体の内周面を凹ませた形態であり、
前記弾性保持部の外面には、前記保持用当接部に当接する突起部が形成されているコネクタ装置。
【請求項2】
一対の前記弾性保持部が上下に離隔して配置され、
前記アダプターが、一対の前記突起部を支点として水平方向に揺動可能である請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
第1コネクタと、
前記第1コネクタと対向するように設けられた第2コネクタと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続するアダプターと、
前記第1コネクタに形成され、前記アダプターを前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持可能な形状保持力を有し、かつ弾性変形が可能である弾性保持部と、
前記弾性保持部を弾性変形させつつ前記アダプターを前記第1コネクタに対して傾けることによって、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの位置ずれを吸収するガイド部とを備え、
前記アダプターを構成する可動側誘電体の外周には、前記弾性保持部を収容する収容凹部が形成されているコネクタ装置。
【請求項4】
前記弾性保持部が、前記第1コネクタを構成する第1誘電体に一体に形成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記アダプターを構成する可動側外導体が前記弾性保持部に対して弾性的に当接することによって、前記アダプターが前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持されている請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記可動側外導体には、
前記弾性保持部に当接する保持用当接部と、
前記第1コネクタと前記第2コネクタの対向方向において前記保持用当接部から離隔し、前記第1コネクタを構成する第1外導体に対して弾性的に当接する接点部とが形成されている
請求項5に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに対向する第1コネクタと第2コネクタを、アダプターを介して接続する構造が開示されている。アダプターは、第1コネクタに支持され、両コネクタの対向方向に対して傾くように揺動することができる。第1コネクタと第2コネクタを嵌合する過程では、アダプターが揺動することによって、第1コネクタと第2コネクタの位置ずれを吸収することができる。第2コネクタには、フレア状に拡がったガイド部が形成されている。両コネクタの位置ずれを吸収する際には、アダプターの先端部が、ガイド部に摺接することによって第2コネクタと嵌合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2012/0295478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1コネクタ、第2コネクタ及びアダプターが、軸線を水平に向けた姿勢で配置される場合、アダプターが自重によって斜め下向きになることが懸念される。この対策としては、第2コネクタに設けたガイド部の間口を大きく拡げることが考えられるが、このようにすると、コネクタ装置が全体として大型化する。
【0005】
本開示のコネクタ装置は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタ装置は、
第1コネクタと、
前記第1コネクタと対向するように設けられた第2コネクタと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続するアダプターと、
前記第1コネクタに形成され、前記アダプターを前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持可能な形状保持力を有し、かつ弾性変形が可能である弾性保持部と、
前記弾性保持部を弾性変形させつつ前記アダプターを前記第1コネクタに対して傾けることによって、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの位置ずれを吸収するガイド部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例1のコネクタ装置を構成する第1コネクタの側断面図である。
【
図6】
図6は、アダプターの可動側誘電体の斜視図である。
【
図7】
図7は、アダプターの可動側外導体
の斜視図である。
【
図8】
図8は、アダプターが第1コネクタに保持された状態をあらわす側断面図である。
【
図9】
図9は、アダプターが第1コネクタに保持された状態をあらわす平断面図である。
【
図12】
図12は、第1コネクタと第2コネクタが上下方向に位置ずれし、アダプターが第2コネクタのガイド部に当接した状態をあらわす側断面図である。
【
図13】
図13は、第1コネクタと第2コネクタが上下方向に位置ずれし、アダプターが第2コネクタと接続した状態をあらわす側断面図である。
【
図14】
図14は、第1コネクタと第2コネクタが水平方向に位置ずれし、アダプターが第2コネクタのガイド部に当接した状態をあらわす平断面図である。
【
図15】
図15は、第1コネクタと第2コネクタが水平方向に位置ずれし、アダプターが第2コネクタと接続した状態をあらわす平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)第1コネクタと、前記第1コネクタと対向するように設けられた第2コネクタと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとを接続するアダプターと、前記第1コネクタに形成され、前記アダプターを前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持可能な形状保持力を有し、かつ弾性変形が可能である弾性保持部と、前記弾性保持部を弾性変形させつつ前記アダプターを前記第1コネクタに対して傾けることによって、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの位置ずれを吸収するガイド部とを備えている。本開示の構成によれば、弾性保持部の形状保持力によってアダプターを一定の姿勢に保持することができるので、ガイド部によるガイドエリアの設定に際しては、第1コネクタに対するアダプターの傾きを勘案する必要がない。ガイド部のガイドエリアは、第1コネクタと第2コネクタの位置ずれの吸収に必要な最小寸法に抑えれば済むので、小型化を図ることができる。
【0010】
(2)前記弾性保持部が、第1コネクタを構成する第1誘電体に一体に形成されていることが好ましい。この構成によれば、弾性保持部が第1誘電体とは別体の専用部品に形成されている場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0011】
(3)前記アダプターを構成する可動側外導体が前記弾性保持部に対して弾性的に当接することによって、前記アダプターが前記第1コネクタに対して一定の姿勢に保持されていることが好ましい。この構成によれば、可動側外導体を利用してアダプターの姿勢を保持することかできるので、可動側外導体とは別体の専用部品を弾性保持部に当接させる場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0012】
(4)(3)において、前記可動側外導体には、前記弾性保持部に当接する保持用当接部と、前記第1コネクタと前記第2コネクタの対向方向において前記保持用当接部から離隔し、前記第1コネクタを構成する第1外導体に対して弾性的に当接する接点部とが形成されていることが好ましい。この構成によれば、第1コネクタと第2コネクタの対向方向に間隔を空けた2箇所において、可動側外導体の保持用当接部と接点部が第1コネクタに当接するので、アダプターを一定の姿勢に確実に保持することができる。
【0013】
(5)(4)において、前記保持用当接部が、前記可動側外導体の内周面を凹ませた形態であり、前記弾性保持部の外面には、前記保持用当接部に当接する突起部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、突起部と保持用当接部が、アダプターを第1コネクタに対して抜止め状態に保持する機能を兼ね備えているので、突起部と保持用当接部とは別に専用の抜止機能部を形成する場合に比べると、弾性保持部と可動側外導体の形状を簡素化することができる。
【0014】
(6)(5)において、一対の前記弾性保持部が上下に離隔して配置され、前記アダプターが、一対の前記突起部を支点として水平方向に揺動可能であってもよい。この構成によれば、第1コネクタと第2コネクタが水平方向に位置ずれしている場合でも、アダプターが、弾性保持部の突起部を支点として水平方向に傾くことによって、第1コネクタと第2コネクタの水平方向への位置ずれを吸収することができる。
【0015】
(7)前記アダプターを構成する可動側誘電体の外周には、前記弾性保持部を収容する収容凹部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、アダプターの外径寸法を大きくせずに済む。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタ装置を具体化した実施例1を、
図1~
図15を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1のコネクタ装置は、第1コネクタ10とアダプター20と第2コネクタ40とを備えて構成されている。本実施例1において、第1コネクタ10及びアダプター20の前後の方向については、
図1,2,4,5,8,9,12~15における右方を前方と定義する。第2コネクタ40の前後の方向については、
図11~15における左方を前方と定義する。
【0017】
<第1コネクタ10>
図1,2に示すように、第1コネクタ10は、ハウジングH内に収容された状態で、例えば車載カメラ(図示省略)に接続されている。第1コネクタ10は、軸線を前後方向に向けた第1内導体11と、軸線を前後方向に向けた筒状の第1誘電体12と、軸線を前後方向に向けた円筒状の第1外導体16とを有する。
【0018】
第1誘電体12は、第1内導体11を同軸状に保持する誘電体本体部13と、誘電体本体部13の前端面から前方へ片持ち状に延出した上下一対の弾性保持部14とを有する単一部品である。弾性保持部14は、アダプター20の姿勢を一定に保つことを可能にする形状保持性(剛性)を有しているとともに、弾性変形することができるようにもなっている。
図13に示すように、弾性保持部14は、弾性保持部14の後端部(誘電体本体部13に連なる部位)を支点として、側面視姿勢が斜め上向き又は斜め下向きとなるように揺動する形態で弾性変形することができる。上側の弾性保持部14の前端部には、上方(弾性保持部14の外面側)へ突出する突起部15が形成されている。下側の弾性保持部14の前端部には、下方(弾性保持部14の外面側)へ突出する突起部15が形成されている。
【0019】
第1外導体16は、誘電体本体部13の外周に嵌合された円筒形の誘電体保持部17と、誘電体保持部17の前端から前方へ突出した円筒形の拡径部18とを有する単一部品である。拡径部18は、前方に向かって段階的に拡径した形状をなしている。第1外導体16は、誘電体保持部17を第1誘電体12の外周に同軸状に嵌合させた状態で、第1誘電体12に取り付けられている。拡径部18は、一対の弾性保持部14を上下方向の隙間を空けた状態で包囲している。
【0020】
<アダプター20>
図4,5に示すように、アダプター20は、筒状をなす可動側誘電体21と、細長く延びた可動側内導体24と、可動側外導体27とを有する。可動側誘電体21には、可動側誘電体21を軸線方向に貫通した形態の内導体収容室22が形成されている。内導体収容室22の内径寸法は、上下一対の弾性保持部14の内面間の間隔よりも小さい寸法である。
図4,6に示すように、可動側誘電体21には、軸線方向に延びた上下一対の収容凹部23が形成されている。収容凹部23は、可動側誘電体21の外周面において幅広に開口しているとともに、可動側誘電体21の後端面にも開口している。収容凹部23は、収容凹部23の幅寸法よりも幅狭の連通孔26によって内導体収容室22と連通している。収容凹部23の周方向の幅寸法は、弾性保持部14の周方向に幅寸法よりも大きい。
【0021】
可動側内導体24は、可動側誘電体21の前端から前方へ突出したタブ25を有する。可動側内導体24は、可動側内導体24のうちタブ25よりも後方の全領域を内導体収容室22内に収容した状態で、可動側誘電体21に取り付けられている。タブ25は、可動側誘電体21の前端から前方へ突出している。
【0022】
図4,5,7に示すように、可動側外導体27は、円筒形の外導体本体部28と、周方向に間隔を空けた複数の弾性接触片33とを有する単一部品である。外導体本体部28は、小径部29と大径部30と被ガイド部31とを有する。小径部29は外導体本体部28の後端部に形成されている。小径部29には、上下一対の保持用当接部32が形成されている。保持用当接部32は、小径部29の一部を径方向外方(上方又は下方)へ部分的に膨らませ、可動側外導体27の内周面の一部を凹ませた形態である。
【0023】
大径部30は、小径部29よりも直径寸法が大きく、小径部29の前端から前方へ突出している。大径部30は、可動側誘電体21の前端よりも前方に位置し、可動側内導体24のタブ25を包囲している。被ガイド部31は、大径部30の前端部に形成され、可動側外導体27の前端部に位置している。被ガイド部31は、前方に向かって拡径するようなテーパ状の円筒形をなしている。
【0024】
複数の弾性接触片33は、周方向に等角度ピッチで配置され、小径部29の後端縁から後方へ片持ち状に延出している。弾性接触片33は、可動側外導体27の軸線と平行に後方へ延びた基部34と、基部34の後端に連なる接点部35とを有している。接点部35は、弾性接触片33の後端部(延出端部)に配置されている。接点部35は、基部34よりも径方向外方へ突出している。可動側外導体27は、可動側誘電体21に対し小径部29と弾性接触片33で包囲した形態で同軸状に取り付けられている。
【0025】
図8,9に示すように、アダプター20は、可動側内導体24を第1内導体11に接続し、一対の収容凹部23に一対の弾性保持部14を個別に収容し、小径部29と弾性接触片33で弾性保持部14の外面を覆った状態で、第1コネクタ10に取り付けられている。アダプター20を第1コネクタ10に取り付けた状態では、弾性保持部14の突起部15が可動側外導体27の保持用当接部32の内周の凹んだ部分に嵌入されるので、アダプター20は第1コネクタ10に対して軸線方向への相対変位を規制されている。
【0026】
アダプター20を第1コネクタ10に取り付けた状態では、複数の弾性接触片33の接点部35が、第1外導体16の拡径部18の内周面に対し、径方向内側から外向きに弾性的に当接する。アダプター20の後端部は、弾性接触片33の弾力により、第1コネクタ10に対して同心状に保持される。第1コネクタ10の上下一対の突起部15が、可動側外導体27の上下一対の保持用当接部32に対し、径方向内側から径方向外方へ弾性的に当接する。アダプター20の軸線方向中央部は、弾性保持部14の剛性(形状保持力)により、第1コネクタ10に対して同心状に保持される。突起部15と保持用当接部32との当接位置は、接点部35と第1外導体16との弾性当接位置に対して、軸線方向(第1コネクタ10の前方)へ離隔した位置関係となっているので、アダプター20の全体が第1コネクタ10に対して一定の姿勢、つまり同軸状に保持される。
【0027】
第1外導体16の拡径部18の内周面のうち接点部35との接触部位よりも前方の領域と、アダプター20の外周面との間には、全周に亘って径方向のクリアランス36が確保されている。
図8に示すように、一対の弾性保持部14の間隔は、内導体収容室22の内径寸法よりも大きいので、弾性保持部14の内面と可動側内導体24との間には、径方向(上下方向)の変位空間37が確保されている。
図9に示すように、収容凹部23の幅寸法は、弾性保持部14の幅寸法よりも大きいので、収容凹部23内には、弾性保持部14の周方向への揺動を可能にする揺動空間38が確保されている。
【0028】
<第2コネクタ40>
図11に示すように、第2コネクタ40は、回路基板Pの実装面Mに対し、軸線を直角に向けた状態、つまり、軸線を第1コネクタ10と平行に向けた状態で固定して取り付けられている。第2コネクタ40は、軸線を前後方向に向けた円筒形の第2誘電体41と、第2誘電体41内に同軸状に取り付けられた第2内導体43と、第2誘電体41の外周に同軸状に取り付けられた第2外導体44とを備えている。第2誘電体41の前端部(先端部)には、第2誘電体41と同軸状の円錐台形をなす第1ガイド部42が形成されている。第1ガイド部42の直径寸法は、第1ガイド部42の前端において最小であり、第1ガイド部42の後端において最大である。
【0029】
第2外導体44は、第2誘電体41のうち第1ガイド部42よりも後方(回路基板P側)の領域を包囲している。第2外導体44は、実装面Mに固着された円筒形の実装部45と、実装部45の前端縁から前方へ片持ち状に延出した複数の弾性片46とを有する。複数の弾性片46は、周方向に一定ピッチで配置されている。弾性片46の前端部には第2ガイド部47が形成されいる。第2ガイド部47は、第1ガイド部42よりも外周側において、第1ガイド部42の斜め後方に配置されている。
【0030】
<実施例1の作用及び効果>
第2コネクタ40が第1コネクタ10に対して相対的に上方へ位置ずれしている状態で、第1コネクタ10と第2コネクタ40を接続する工程を説明する。第1コネクタ10と第2コネクタ40を軸線を平行に向けて対向させた状態で接近させると、
図12に示すように、被ガイド部31の前端上端部が、第1ガイド部42の上端部に当接する。このとき、アダプター20は第1コネクタ10と同軸状に保持されている。
【0031】
この状態から更に、第1コネクタ10と第2コネクタ40を接近させると、被ガイド部31が第1ガイド部42に摺接し、第1ガイド部42の傾斜によって、アダプター20が第1コネクタ10に対して軸線を傾けるように斜め上向きに変位する。このとき、可動側外導体27の下側の保持用当接部32が下側の弾性保持部14の突起部15を押すので、下側の弾性保持部14が上方へ傾くように弾性変形する。弾性接触片33の接点部35は、第1外導体16に接触した状態を保つ。
【0032】
第1コネクタ10と第2コネクタ40が更に接近すると、被ガイド部31は、第1ガイド部42の外周縁から第2ガイド部47へ乗り移り、アダプター20が、第2ガイド部47の傾斜によって更に姿勢を傾ける。可動側外導体27の小径部29と第1外導体16の拡径部18との間には、径方向のクリアランス36が確保されているので、可動側外導体27が第1外導体16と干渉することがなく、アダプター20が姿勢を傾ける動作に支障を来すことはない。
【0033】
被ガイド部31が第2ガイド部47を通過した後は、アダプター20の大径部30が弾性片46に摺接した状態で、第1コネクタ10と第2コネクタ40の嵌合が更に進む。この間、第2内導体43と可動側内導体24のタブ25が接続され、第1コネクタ10と第2コネクタ40が接続される。
図13に示すように、アダプター20が側面視において斜め上向きに変位することによって、第1コネクタ10と第2コネクタ40の上下方向の位置ずれが吸収され、第1コネクタ10と第2コネクタ40が正規の接続状態となる。
【0034】
次に、第2コネクタ40が第1コネクタ10に対して相対的に左右方向(水平方向)へ位置ずれしている状態で、第1コネクタ10と第2コネクタ40を接続する工程を説明する。第1コネクタ10と第2コネクタ40を軸線を平行に向けて対向させた状態で接近させると、
図14に示すように、被ガイド部31の前端側縁部が、第1ガイド部42の側面部に当接する。このとき、アダプター20は第1コネクタ10と同軸状に保持されている。
【0035】
この状態から更に、第1コネクタ10と第2コネクタ40を接近させると、被ガイド部31が第1ガイド部42に摺接し、第1ガイド部42の傾斜によって、アダプター20が第1コネクタ10に対して軸線を傾けるように斜め横向きに変位する。このときのアダプター20の傾きの支点は、上下両弾性保持部14の突起部15である。したがって、弾性保持部14は弾性変形しない。
【0036】
第1コネクタ10と第2コネクタ40が更に接近すると、被ガイド部31は、第1ガイド部42の外周縁から第2ガイド部47へ乗り移り、アダプター20が、第2ガイド部47の傾斜によって更に姿勢を傾ける。可動側外導体27の小径部29と第1外導体16の拡径部18との間には、径方向のクリアランス36が確保されているので、アダプター20が姿勢を傾ける動作に支障を来すことはない。
【0037】
被ガイド部31が第2ガイド部47を通過した後は、アダプター20の大径部30が弾性片46に摺接した状態で、第1コネクタ10と第2コネクタ40の嵌合が更に進む。この間、第2内導体43と可動側内導体24が接続され、第1コネクタ10と第2コネクタ40が接続される。
図15に示すように、アダプター20が平面視において斜め横向きに変位することによって、第1コネクタ10と第2コネクタ40の水平方向の位置ずれが吸収され、第1コネクタ10と第2コネクタ40が正規の接続状態となる。
【0038】
第1コネクタ10と第2コネクタ40が上下方向及び水平方向の両方向に位置ずれしている場合には、アダプター20が、弾性保持部14を弾性変形させながら姿勢を上下方向に傾ける動きと、突起部15を支点として姿勢を水平方向に傾ける動きとが複合的に行われる。この複合的なアダプター20の動きによって、第1ガイド部42と第2ガイド部47との位置ずれが吸収されるので、第1コネクタ10と第2コネクタ40が正規の接続状態となる。
【0039】
本実施例1のコネクタ装置は、第1コネクタ10と、第1コネクタ10と対向するように設けられた第2コネクタ40と、第1コネクタ10と第2コネクタ40とを接続するアダプター20とを備えている。第1コネクタ10には、アダプター20を第1コネクタ10に対して一定の姿勢(同軸状の姿勢)に保持可能な形状保持力を有し、かつ弾性変形が可能な弾性保持部14が形成されている。第2コネクタ40には、第1ガイド部42と第2ガイド部47が設けられている。第1ガイド部42と第2ガイド部47は、弾性保持部14を弾性変形させつつアダプター20を第1コネクタ10に対して傾けることによって、第1コネクタ10と第2コネクタ40の位置ずれを吸収する。
【0040】
本実施例1のコネクタ装置によれば、弾性保持部14の形状保持力によってアダプター20を一定の姿勢に保持することができるので、第1ガイド部42及び第2ガイド部47によるガイドエリアの設定に際しては、第1コネクタ10に対するアダプター20の傾きを勘案する必要がない。第1ガイド部42及び第2ガイド部47のガイドエリアは、第1コネクタ10と第2コネクタ40の位置ずれの吸収に必要な最小寸法に抑えれば済む。したがって、本実施例1のコネクタ装置は小型化を図ることができる。
【0041】
弾性保持部14が、第1コネクタ10を構成する第1誘電体12に一体に形成されている。この構成によれば、弾性保持部14が第1誘電体12とは別体の専用部品に形成されている場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0042】
アダプター20を構成する可動側外導体27の保持用当接部32が、弾性保持部14の突起部15に対して弾性的に当接することによって、アダプター20が第1コネクタ10に対して一定(同軸状)の姿勢に保持されている。この構成によれば、可動側外導体27を利用してアダプター20の姿勢を保持することかできるので、可動側外導体27とは別体の専用部品を弾性保持部14に当接させる場合に比べると、部品点数が少なくて済む。
【0043】
可動側外導体27には、弾性保持部14の突起部15に当接する保持用当接部32と、第1外導体16に対して弾性的に当接する接点部35とが形成されている。保持用当接部32と接点部35は、第1コネクタ10と第2コネクタ40の対向方向(両コネクタ10,40の軸線方向)において離隔した位置関係にある。第1コネクタ10と第2コネクタ40の対向方向に間隔を空けた2箇所において、可動側外導体27の保持用当接部32と接点部35が第1コネクタ10に当接するので、アダプター20を一定(同軸状)の姿勢に確実に保持することができる。
【0044】
保持用当接部32は、可動側外導体27の内周面を凹ませた形態である。弾性保持部14の外面には、保持用当接部32に当接する突起部15が形成されている。突起部15と保持用当接部32は、アダプター20を第1コネクタ10に対して抜止め状態に保持する機能を兼ね備えている。したがって、突起部15と保持用当接部32とは別に専用の抜止機能部を形成する場合に比べると、弾性保持部14と可動側外導体27の形状を簡素化することができる。
【0045】
一対の弾性保持部14は上下方向に離隔して配置されている。アダプター20は、一対の突起部15を支点として水平方向に揺動可能である。この構成によれば、第1コネクタ10と第2コネクタ40が水平方向に位置ずれしている場合でも、アダプター20が、弾性保持部14の突起部15を支点として水平方向に傾くことによって、第1コネクタ10と第2コネクタ40の水平方向への位置ずれを吸収することができる。
【0046】
アダプター20を構成する可動側誘電体21の外周には、弾性保持部14を収容する収容凹部23が形成されている。この構成によれば、アダプター20の外径寸法を大きくせずに済む。
【0047】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例1では、弾性保持部を第1誘電体に一体に形成したが、弾性保持部は、第1誘電体とは別体の専用部品に一体形成してもよい。
上記実施例1では、弾性保持部の外周面に対し、可動側外導体の内周面を当接させたが、可動側外導体の外周面を弾性保持部に当接させてもよい。
上記実施例1では、アダプターの可動側外導体を弾性保持部に当接させることによってアダプターの姿勢を保持するようにしたが、アダプターの可動側誘電体を弾性保持部に当接させてもよく、可動側外導体及び可動側誘電体とは別体の専用部品を弾性保持部に当接させてもよい。
上記実施例1では、弾性保持部が可動側誘電体の収容凹部に収容したが、弾性保持部は、可動側誘電体の外部に配置されていてもよい。
上記実施例1では、弾性保持部が可動側外導体の内部に配置されているが、弾性保持部は可動側外導体の外部に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
H…ハウジング
M…実装面
P…回路基板
10…第1コネクタ
11…第1内導体
12…第1誘電体
13…誘電体本体部
14…弾性保持部
15…突起部
16…第1外導体
17…誘電体保持部
18…拡径部
20…アダプター
21…可動側誘電体
22…内導体収容室
23…収容凹部
24…可動側内導体
25…タブ
26…連通孔
27…可動側外導体
28…外導体本体部
29…小径部
30…大径部
31…被ガイド部
32…保持用当接部
33…弾性接触片
34…基部
35…接点部
36…クリアランス
37…変位空間
38…揺動空間
40…第2コネクタ
41…第2誘電体
42…第1ガイド部
43…第2内導体
44…第2外導体
45…実装部
46…弾性片
47…第2ガイド部