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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20240703BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20240703BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20240703BHJP
【FI】
F24F3/14
F24F6/00 E
F24F11/80
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020142972
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038453
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】日野原 昌信
(72)【発明者】
【氏名】牧野 孝文
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 暢規
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-257016(JP,A)
【文献】特開昭59-129335(JP,A)
【文献】特開2019-184519(JP,A)
【文献】特開昭56-105228(JP,A)
【文献】特開2003-130399(JP,A)
【文献】特開平04-077645(JP,A)
【文献】国際公開第01/057449(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207850701(CN,U)
【文献】特開2019-174087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
F24F 6/00
F24F 11/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調整対象室の還気口から空気が導入される導入路と、前記導入路と接続された第1調整路と、前記第1調整路に配された除湿器と、前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記除湿器の下流に設けられた冷却器と、前記導入路と接続された第2調整路と、前記第2調整路に配された加熱器と、前記第2調整路に配され空気流れ方向において前記加熱器の下流に設けられた加湿器と、前記第1調整路及び前記第2調整路と接続され前記調整対象室の吹出口へ空気を送る送出路と、を備える空調システムにおいて、
前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記冷却器の下流に設けられ前記第1調整路内の空気の温度を検出する第1温度センサと、
前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記冷却器の下流に設けられ前記第1調整路内の空気の湿度を検出する第1湿度センサと、
前記送出路内の空気の温度を検出する送出温度センサと、
前記送出路内の空気の湿度を検出する送出湿度センサと、を備え、
前記第1温度センサにより検出された温度に基づいて前記冷却器の出力を調整し、前記第1湿度センサにより検出された湿度に基づいて前記除湿器の出力を調整する第1の調整動作を行った後に、前記送出温度センサにより検出された温度に基づいて前記加熱器の出力を調整し、前記送出湿度センサにより検出された湿度に基づいて前記加湿器の出力を調整する第2の調整動作を行うことを特徴とする空調システムにおいて、
前記第2調整路に配され空気流れ方向において前記加熱器の下流に設けられ前記第2調整路内の空気の温度を検出する第2温度センサと、
前記第2温度センサにより検出された温度に基づいて、前記第1調整路に分流される空気と前記第2調整路に分流される空気との分流比を調整可能な分流比調整機構と、備えることを特徴とする、空調システム。
【請求項2】
前記分流比調整機構は、前記第2調整路において、前記第2温度センサにより検出された温度が、少なくとも前記加湿器における霜付きの発生が回避できる霜付回避温度以上となるように、前記分流比を調整するように構成されている、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記第1の調整動作を行う際に、前記加熱器及び前記加湿器の運転を停止した状態で前記第2調整路に空気を流すことを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
調整対象室の還気口から空気が導入される導入路と、前記導入路と接続された第1調整路と、前記第1調整路に配された除湿器と、前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記除湿器の下流に設けられた冷却器と、前記導入路と接続された第2調整路と、前記第1調整路及び前記第2調整路と接続され前記調整対象室の吹出口へ空気を送る送出路と、を備える空調システムにおいて、
前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記冷却器の下流に設けられた単行用加熱器と、
前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記単行用加熱器の下流に設けられた単行用加湿器と、
前記送出路内の空気の温度を検出する送出温度センサと、
前記送出路内の空気の湿度を検出する送出湿度センサと、を備え、
前記送出湿度センサにより検出された温度に基づいて前記冷却器及び前記単行用加熱器の出力を調整し、前記送出湿度センサにより検出された湿度に基づいて前記除湿器及び前記単行用加湿器の出力を調整する調整動作を行うことを特徴とする空調システム。
【請求項5】
前記第2調整路に配された加熱器と、前記第2調整路に配され空気流れ方向において前記加熱器の下流に設けられた加湿器と、をさらに備え、
前記調整動作を行う際に、前記第2調整路に配された前記加熱器及び前記加湿器の運転を停止した状態で前記第2調整路に空気を流すことを特徴とする請求項4に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気Aの温度及び湿度を目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmに調整するには、一般的に図9に示すような空調システムが採用される。
【0003】
なお、図9において、調整対象室としての環境試験室1には、目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmに調整された空気Aが吹出口3から供給され、これにより、環境試験室1の室内が所要の温湿度状態に調整される。
【0004】
ところで、図9に示す空調システムにおいて、目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmが例えば(-10℃,80%)である場合に、除湿器11を使用せずに、吹出口3から室内に供給する空気Aを目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsm(-10℃,80%)に調整するには、環境試験室1の室内負荷が顕熱負荷のみである場合、図9において破線の矢印で示される通風形態を採用することが考えられる。
【0005】
図9において、符号i~vは、通風経路上における空気Aの各位置を示し、図10は、破線の矢印で示される通風形態が採用された場合の各位置i~vにおける空気Aの温度t,湿度hを示す湿り空気線図である。
【0006】
即ち、所要の温湿度状態に調整されている環境試験室1の室内空気A(i,ii)は、先ず、冷却器15において冷却される(ii→iii)。
【0007】
このとき、冷却器15の空気側伝熱面の温度tc(以下、冷却器温度tcと略称する)が空気A(ii)の温度(-10℃)より5℃だけ低温であるとすると、空気A(ii)は、冷却器温度tc(-15℃)近くまで冷却される。
【0008】
この冷却に続き、空気A(iii)は加熱器20において目標送出温度tsmまで加熱(iii→iv)され、この加熱(再熱)された空気A(iv,v)が吹出口3から環境試験室1に供給される。
【0009】
しかし、(-10℃,80%)の空気A(v)の露点温度tdは-12.8℃であるため、室内の潜熱負荷が無くてこの露点温度td(-12.8℃)に等しい露点温度の室内空気A(i,ii)が、冷却器15において冷却器温度tc(-15℃)まで冷却されると、空気A中の水蒸気が冷却器15の伝熱面上で凝縮(結露)して、その凝縮水が凍結することで、冷却器15に霜付きが発生する。
【0010】
この霜付きの発生は、空気Aの温度、湿度を調整する上で、その調整精度を著しく悪化させ、長時間の運転では冷却コイル閉塞の原因にもなり、また、この霜付きを解消するデフロスト運転を実施すると、そのデフロスト運転の間、空気Aの温度、湿度の調整が一時的にせよ不能になる問題がある。
【0011】
そこで、このような不都合を回避するため、図9の空調システムでは、(-10℃,80%)のような低温高湿の空気Aを調整する場合、図9において実線の矢印で示される通風形態が採用される。
【0012】
図11は、実線の矢印で示される通風形態が採用された場合の各位置i~vにおける空気Aの温度t,湿度hを示す湿り空気線図である。
【0013】
即ち、所要の温湿度状態に調整されている環境試験室1の室内空気A(i)は、先ず、除湿器11において除湿(i→ii)され、この除湿により空気A(ii)の露点温度tdは、冷却器温度tc(-15℃)より低い温度になる。
なお、室内空気A(i)を所要湿度まで除湿するために除湿器11の出力を調整するのに、ここでは、その調整形態の一例として、除湿器11に通過させる空気A(i)と除湿器11を迂回させる空気A(i)との分流比が調整される。
【0014】
その後、除湿器11において除湿された空気A(ii)は、冷却器15において冷却器温度tc(-15℃)まで冷却(ii→iii)され、この冷却に続き、空気A(iii)は、加熱器20において目標送出温度tsmまで加熱(iii→iv)される。
【0015】
そして、加熱器20において加熱(再熱)された空気A(iv)は、加湿器21において目標送出湿度hsmまで加湿(iv→v)され、この加湿された目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmの空気A(v)が吹出口3から環境試験室1に送給されることで、環境試験室1の室内が所要の温湿度状態に保たれる。
なお、ここでは、冷却器15において冷却した空気A(iii)を加熱器20において加熱(再熱)することで、空気A(iv)の温度を目標送出温度tsmに調整する例を示したが、これに代え、加熱器20での加熱(再熱)を省略して、冷却器15での冷却により空気A(iii,iv)の温度を目標送出温度tsmに調整する場合もある。
【0016】
つまり、図11に示す調整形態を採用することで、温度,湿度の調整精度の悪化原因や調整不能及び冷却コイル閉塞の原因となる冷却器15での霜付きの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
適当な特許文献が見当たらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、例えば、吹出口3から室内に供給する空気Aの湿度hsを、±10%の湿度許容範囲で目標送出湿度hsm(80%)に調整することが要求される場合、その空気Aの温度が20℃であれば、±10%の湿度許容範囲が、絶対湿度Xの許容範囲に換算すると、±1.5g/Kgの絶対湿度許容範囲に相当するのに対して、その空気Aの温度が-10℃では、±10%の湿度許容範囲が、絶対湿度Xの許容範囲に換算すると、±0.18g/Kgの絶対湿度許容範囲に相当する。
【0019】
この例からも分かるように、空気Aの温度tが-10℃のような低温の場合には、前記した図11に示す調整形態を採用して冷却器15での霜付きの発生を防止するにしても、空気Aの湿度を精度良く所要の湿度に調整することが未だ難しい問題がある。
【0020】
また、前記した図11に示す調整形態では、冷却器15での霜付きの発生を防止するために、調整対象の空気Aの全量又は一部を除湿器11で除湿するとともに加湿器21で加湿するため、それら相反する処理である除湿及び加湿の実施に大きなエネルギを要する問題もある。
【0021】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な調整形態を採ることで、冷却器及び加湿器での霜付きの発生を防止するとともに、空気の温度,湿度を一層精度良く目標の温度,湿度に調整することができ、また、除湿や加湿に要するエネルギを効果的に低減できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係る空調システムは、調整対象室の還気口から空気が導入される導入路と、前記導入路と接続された第1調整路と、前記第1調整路に配された除湿器と、前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記除湿器の下流に設けられた冷却器と、前記導入路と接続された第2調整路と、前記第2調整路に配された加熱器と、前記第2調整路に配され空気流れ方向において前記加熱器の下流に設けられた加湿器と、前記第1調整路及び前記第2調整路と接続され前記調整対象室の吹出口へ空気を送る送出路と、を備える空調システムにおいて、前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記冷却器の下流に設けられ前記第1調整路内の空気の温度を検出する第1温度センサと、前記第1調整路に配され空気流れ方向において前記冷却器の下流に設けられ前記第1調整路内の空気の湿度を検出する第1湿度センサと、前記送出路内の空気の温度を検出する送出温度センサと、前記送出路内の空気の湿度を検出する送出湿度センサと、を備え、前記第1温度センサにより検出された温度に基づいて前記冷却器の出力を調整し、前記第1湿度センサにより検出された湿度に基づいて前記除湿器の出力を調整する第1の調整動作を行った後に、前記送出温度センサにより検出された温度に基づいて前記加熱器の出力を調整し、前記送出湿度センサにより検出された湿度に基づいて前記加湿器の出力を調整する第2の調整動作を行うことを特徴とする空調システムにおいて、前記第2調整路に配され空気流れ方向において前記加熱器の下流に設けられ前記第2調整路内の空気の温度を検出する第2温度センサと、前記第2温度センサにより検出された温度に基づいて、前記第1調整路に分流される空気と前記第2調整路に分流される空気との分流比を調整可能な分流比調整機構と、備えることを特徴とする
【0023】
したがって、本発明によれば、冷却器及び加湿器での霜付き発生を防止するとともに、空気の温度,湿度(特に湿度)を一層精度良く目標の温度,湿度に調整することができ、また、除湿や加湿に要するエネルギを効果的に低減することができる。
また、低温の空気を調整する場合、加湿器において加湿用の水や水蒸気が凍結する問題もあるが、本発明であれば、加湿器において加湿用の水や水蒸気が凍結する問題も効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】空調システムのシステム構成図
図2】空調システムの運転制御形態を説明するフローチャート
図3】空調システムの分流比調整を説明するフローチャート
図4】併行調整運転における通風形態を示す説明図
図5】併行調整運転における各位置の空気の温度、湿度を示す湿り空気線図
図6】併行調整運転における各位置の空気の温度、湿度を示す湿り空気線図
図7】単行調整運転における通風形態を示す説明図
図8】単行調整運転における各位置の空気の温度、湿度を示す湿り空気線図
図9】従来の空調システムのシステム構成図
図10】従来の空調システムにおいて除湿器を使用しない場合の各位置の空気の温度、湿度を示す湿り空気線図
図11】従来の空調システムにおいて除湿器を使用する場合の各位置の空気の温度、湿度を示す湿り空気線図
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、環境試験室1(調整対象室)の室内温湿度条件を調整する空調システム2を示しており、環境試験室1には、吹出口3と還気口4と排気口5とが設けられている。
【0056】
吹出口3からは、目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmに調整された空気Aが所定の風量で環境試験室1の室内に吹き出され、このように温度及び湿度が調整された空気Aが吹出口3から環境試験室1に供給されることで、環境試験室1の室内が所要の温湿度状態に保たれる。
【0057】
吹出口3からの空気Aの吹き出しに併行して、環境試験室1の室内空気Aは、還気口4を通じて空調システム2に戻され、また、吹出口3からの空気Aの吹き出しに併行して、環境試験室1における室内空気Aの一部は、室内換気のために排気口5を通じて外部に排出される。
【0058】
排気口5には排気路6が接続され、また、排気路6には排気ファン7が装備されており、この排気ファン7の運転により、単位時間当たり所定風量の室内空気Aが排気口5及び排気路6を通じて環境試験室1から外部に排出される。
【0059】
空調システム2のシステム構成について説明すると、吹出口3には送出路8が接続され、一方、還気口4には導入路9が接続されている。
【0060】
空気Aの流れ方向において、導入路9の下流端と送出路8の上流端との間には、温湿度調整用の調整路として、第1調整路10Aと第2調整路10Bとが並列配置で介装されており、第1調整路10Aには、除湿器11が装備されるとともに、空気Aの流れ方向において除湿器11の下流側に第1空調機12が装備されている。
【0061】
また、第2調整路10Bには第2空調機13が装備されている。
【0062】
第1空調機12には、フィルタ14と送風機18と冷却器15と単行用加熱器16と単行用加湿器17とが、その順に、空気Aの流れ方向における上流側から並べて装備されている。
【0063】
また、第2空調機13には、フィルタ19と送風機22と加熱器20と加湿器21とが、その順に、空気Aの流れ方向における上流側から並べて装備されている。
【0064】
即ち、第1空調機12の送風機18と第2空調機13の送風機22との両方を運転すると、環境試験室1の室内空気Aが還気口4から導入路9に導入され、導入路9に導入された空気Aは、第1調整路10Aと第2調整路10Bとに分流される。
【0065】
第1調整路10Aに分流された空気Aは、除湿器11、フィルタ14、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17の夫々を、その順に通過し、この通過過程において空気Aの温度及び湿度が調整される。
【0066】
また、第2調整路10Bに分流された空気Aは、フィルタ19、加熱器20、加湿器21の夫々を、その順に通過し、この通過過程において空気Aの温度及び湿度が調整される。
【0067】
第1調整路10Aにおいて第1空調機12の上流側、及び、第2調整路10Bにおいて第2空調機13の上流側には、分流比調整ダンパ23A,23Bが介装されている。これら分流比調整ダンパ23A,23B夫々の開度を調整することで、及び/又は、第1空調機12の送風機18及び第2空調機13の送風機22夫々の出力を調整することで、第1調整路10Aの通過風量Q1と第2調整路10Bの通過風量Q2、並びに、第1調整路10Aに分流される空気と第2調整路10Bに分流される空気との比、すなわち分流比Q1/Q2を変更することができる。本例においては、送風機18,22及び分流比調整ダンパ23A,23Bは、後述する制御装置Cによって自動で制御可能に構成され、送風機18,22及び分流比調整ダンパ23A,23Bは分流比Q1/Q2を調整可能な分流比調整機構として機能し得る。
【0068】
なお、図1では、除湿器11として回転ロータ式の乾式除湿器を第1調整路10Aに装備した例を示しているが、第1調整路10Aに装備する除湿器11としては、回転ロータ式の乾式除湿器に限らず、種々の方式、形式の除湿器を採用することができる。
【0069】
図1では、冷却器15として、冷凍機Rの蒸発器として機能する直膨式冷却器を採用した例を示しているが、冷却器15としては、直膨式冷却器に限らず、冷水あるいはブラインを冷媒とする冷却器など、種々の方式、形式の冷却器を採用することができる。
【0070】
図1では、単行用加熱器16及び加熱器20の夫々に電気ヒータを採用した例を示しているが、単行用加熱器16及び加熱器20の夫々には、電気ヒータに限らず、温水あるいは蒸気を熱媒とする加熱器など、種々の方式、形式の加熱器を採用することができる。
【0071】
さらに図1では、単行用加湿器17及び加湿器21の夫々に蒸気噴霧式加湿器を採用した例を示しているが、これら単行用加湿器17及び加湿器21の夫々についても、蒸気噴霧式加湿器に限らず、超音波式加湿器など、種々の方式、形式の加湿器を採用することができる。
【0072】
空気Aの流れ方向における送出路8の上流端には、混合チャンバ24が装備され、第1調整路10Aの下流端及び第2調整路10Bの下流端は、混合チャンバ24に接続されている。
【0073】
即ち、第1調整路10Aの通過過程で温度及び湿度が調整された空気Aと、第2調整路10Bの通過過程で温度及び湿度が調整された空気Aとは、送出路8に導出される過程で混合チャンバ24で合流するとともに、この合流に伴い混合チャンバ24で均一に混合される。
【0074】
第1調整路10Aにおいて第1空調機12の下流側には、第1導出温度センサ25A及び第1導出湿度センサ26Aが装備されており、これら第1導出温度センサ25A及び第1導出湿度センサ26Aは、第1調整路10Aから混合チャンバ24に導出される空気Aの温度ta及び湿度ha(即ち、第1調整路10Aの出口空気温度及び出口空気湿度)を検出する。
【0075】
第2調整路10Bにおいて第2空調機13の下流側には、第2導出温度センサ25B及び第2導出湿度センサ26Bが装備されており、これら第2導出温度センサ25B及び第2導出湿度センサ26Bは、第2調整路10Bから混合チャンバ24に導出される空気の温度及び湿度(即ち、第2調整路10Bの出口空気温度及び出口空気湿度)を検出する。
【0076】
また、送出路8において混合チャンバ24の下流側には、送出温度センサ27及び送出湿度センサ28が装備されており、これら送出温度センサ27及び送出湿度センサ28は、送出路8を通じて吹出口3から環境試験室1の室内に送出される空気Aの温度ts及び湿度hs(即ち、送出路8の出口空気温度及び出口空気湿度)を検出する。
【0077】
空調システム2の運転制御を司る制御装置Cは、目標送出温度tsmの高低に応じて併行調整運転と単行調整運転とのいずれを実施するかを選択し、この制御装置Cは、併行調整運転では、第1調整路10Aでの空気Aの温度及び湿度の調整と、第2調整路10Bでの空気Aの温度及び湿度の調整と、の両方を用いて、送出路8から送出する空気A(即ち、吹出口3から吹き出す空気A)の温度ts及び湿度hsを、目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmに調整する。
【0078】
また、制御装置Cは、単行調整運転では、第1調整路10Aでの空気Aの温度及び湿度の調整だけで、送出路8から送出する空気A(即ち、吹出口3から吹き出す空気A)の温度ts及び湿度hsを、目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmに調整する。
【0079】
具体的には、制御装置Cは、これら併行調整運転及び単行調整運転の夫々を、次のように実施する(図2参照)。
【0080】
制御装置Cは、目標送出温度tsmが設定閾温度tzより低温のとき(tsm<tz)ときは併行調整運転を選択し、目標送出温度tsmが設定閾温度tzより高温のとき(tsm≧tz)ときは単行調整運転を選択する。(#1)
なお、設定閾温度tzは、冷却器15において霜付きが発生する可能性がある目標送出温度tsmと、冷却器15において霜付きが発生する可能性がない目標送出温度tsmとの境になる温度(例えばtz=5℃)として設定された温度である。
【0081】
また、本例では、併行調整運転及び単行調整運転の夫々において、制御装置Cは、例えば、送風機18,22夫々の出力や、分流比調整ダンパ23A,23B夫々の開度を適宜調整し、分流比Q1/Q2を、後述するように調整可能に構成されている。なお、当該分流比Q1/Q2の初期値は、事前に算出された値、例えば1/1、すなわち第1調整路10Aの通過風量Q1及び第2調整路10Bの通過風量Q2が同じとなるように設定されている。
【0082】
併行調整運転が選択された状態において、システムの起動や目標送出温度tsmの変更などでシステムが未だ立上り過程にあって、第1導出温度センサ25Aにより検出される温度ta又は第1導出湿度センサ26Aにより検出される湿度haが、目標基礎温度tam又は目標基礎湿度hamに未だ到達していない状況では、制御装置Cは遷移運転を実施する。
【0083】
ここで、目標基礎温度tamは、目標送出温度tsmより所定温度差Δtだけ低温の温度(tam=tsm-Δt)であり、目標基礎湿度hamは、目標送出湿度hsmより所定湿度差Δhだけ低湿の湿度(ham=hsm-Δh)である。
【0084】
遷移運転において制御装置Cは、第1調整路10Aについては、単行用加熱器16及び単行用加湿器17の運転は停止した状態で、
・第1導出湿度センサ26Aにより検出される湿度haと目標基礎湿度hamとの偏差Δhaに応じて、除湿器11の除湿出力(換言すれば、除湿器11での除湿量)を調整するとともに、
・第1導出温度センサ25Aにより検出される温度taと目標基礎温度tamとの偏差Δtaに応じて、冷却器15の冷却出力(換言すれば、冷却器15での冷却量)を調整する。(#2)
また、第2調整路10Bについては、加熱器20及び加湿器21の運転は停止した状態で、分流空気Aを通過させるだけの状態にする。
【0085】
第1導出温度センサ25Aにより検出される温度ta及び第1導出湿度センサ26Aにより検出される湿度haが、目標基礎温度tam及び目標基礎湿度hamに到達すると、制御装置Cは上記遷移運転から併行調整運転に移行する。
【0086】
そして、併行調整運転では制御装置Cは、第1調整路10Aについては、単行用加熱器16及び単行用加湿器17の運転は停止した状態で、
・第1導出湿度センサ26Aにより検出される湿度haと目標基礎湿度hamとの偏差Δhaに応じて、除湿器11の除湿出力を調整するとともに、
・第1導出温度センサ25Aにより検出される温度taと目標基礎温度tamとの偏差Δtaに応じて、冷却器15の冷却出力を調整する。(#3)
また、第2調整路10Bについては、
・送出温度センサ27により検出される温度tsと目標送出温度tsmとの偏差Δtsに応じて、加熱器20の加熱出力(換言すれば、加熱器20での加熱量)を調整するとともに、
・送出湿度センサ28により検出される湿度hsと目標送出湿度hsmとの偏差Δhsに応じて、加湿器21の加湿出力(換言すれば、加湿器21での加湿量)を調整する。(#3)
つまり、この併行調整運転では、第1調整路10Aの通過過程で除湿器11により除湿されるとともに冷却器15で冷却されて第1調整路10Aから送出路8に導出される相対的に低温低湿の空気Aと、第2調整路10Bの通過過程で加熱器20により加熱されるとともに加湿器21により加湿されて第2調整路10Bから送出路8に導出される相対的に高温高湿の空気Aとの合流により、送出路8から送出される空気Aの温度ts及び湿度hsが目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmになる状態に、第1調整路10Aにおける除湿器11及び冷却器15夫々の出力、並びに、第2調整路10Bにおける加熱器20及び加湿器21夫々の出力が、制御装置Cにより調整される。
【0087】
一方、単行調整運転では制御装置Cは、第2調整路10Bについては、加熱器20及び加湿器21の運転は停止した状態で、分流空気Aを通過させるだけの状態にする。
【0088】
また、第1調整路10Aについては、
・送出温度センサ27により検出される温度tsと目標送出温度tsmとの偏差Δtsに応じて、冷却器15の冷却出力及び単行用加熱器16の加熱出力を調整するとともに、
・送出湿度センサ28により検出される湿度hsと目標送出湿度hsmとの偏差Δhsに応じて、除湿器11の除湿出力及び単行用加湿器17の加湿出力を調整する。(#4)
つまり、この単行調整運転では、第1調整路10Aの通過過程で除湿器11により除湿されるとともに冷却器15で冷却され、更に単行用加熱器16で加熱(再熱)されるとともに単行用加湿器17で加湿されて第1調整路10Aから送出路8に導出される調整空気Aと、加熱器20及び加湿器21の運転停止状態で第2調整路10Bを通過して第2調整路10Bから送出路8に導出される無調整空気Aとの合流により、送出路8から送出される空気Aの温度ts及び湿度hsが目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmになる状態に、第1調整路10Aにおける除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力が、制御装置Cにより調整される。
【0089】
図4は、送出路8から環境試験室1に送出する空気Aを設定閾温度tzより低温の目標送出温度tsmで目標送出湿度hsm(ここでは-10℃,80%)の空気に調整する場合の併行調整運転の運転形態を模式的に示し、同図4において符号i~viiiは、通風経路上における空気Aの各位置を示す。
【0090】
また、図5は、それら各位置i~viiiにおける空気Aの温度t,湿度hを示す湿り空気線図である。
【0091】
即ち、この併行調整運転において所要の温湿度状態に調整されている環境試験室1の室内空気A(i)は、還気口4から導入路9に導入されて第1調整路10Aと第2調整路10Bとに、所要の分流比Q1/Q2(ここでは初期値の1/1)で分流される。
【0092】
第1調整路10Aに分流された空気Aは、先ず除湿器11において目標基礎湿度ham(=hsm-Δh)まで除湿(i→ii)され、この除湿により空気Aの露点温度tdは、冷却器温度tcより低い温度になる。
【0093】
除湿器11で除湿された空気A(ii)は、次に冷却器15において目標基礎温度tam(=tsm-Δt)まで冷却(ii→iii)され、これら除湿及び冷却により目標基礎温度tamで目標基礎湿度hamに調整された相対的に低温低湿の空気A(iii,iv,v)が、第1調整路10Aから送出路8に導出される。
【0094】
一方、第2調整路10Bに分流された空気Aは、加熱器20において加熱(i→vi)されるとともに加湿器21において加湿(vi→vii)される。このとき上記分流比調整により加熱器20に供給される通過風量Q2は、加熱器20によって、本実施形態においては、-4℃にまでしか加熱されないため、加湿器21において霜付きが発生する。
【0095】
このように、目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmによっては、上記分流比Q1/Q2(初期値の1/1)による併行調整運転では、加湿器21での霜付きが発生する。
【0096】
これを回避するため、制御装置Cは、送風機18,22夫々の出力や分流比調整ダンパ23A,23B夫々の開度を適宜調整し、分流比調整を実施して、分流比Q1/Q2を変更する(#5)。
【0097】
当該分流比調整は、図3に示すように、第2導出温度センサ25Bにより検出される温度tbが霜付回避温度tbm以上となるように実施される(#51~#53)。なお、本例においては、霜付回避温度tbmは、0℃より高い温度、例えば2℃である。
【0098】
制御装置Cは、温度tbが霜付回避温度tbmより低いとき(tb<tbm)ときは(#51)、分流比Q1/Q2を上げ、具体的には通過風量Q2を通過風量Q1に対して減らし(#52)、これにより温度tbが霜付回避温度tbm以上となり(tb≧tbm)となり(#53)、加湿器21における霜付きの発生が回避される。
【0099】
なお、分流比調整は、併行調整運転において所要の温湿度状態に調整されている環境試験室1の室内空気A(i)が、還気口4から導入路9に導入されて第1調整路10Aと第2調整路10Bとに分流比Q1/Q2(初期値の1/1)で分流される場合のみに実施されるのではない。加湿器21における霜付きは、環境試験室1の室内の目標送出温度tsmや目標送出湿度hsmの値を変更した際にも発生し得る。このような場合にも、制御装置Cは上記分流比調整を実施する。
【0100】
図6は、以上のように分流比が調整された後の、図4の各位置i~viiiにおける空気Aの温度t,湿度hを示す湿り空気線図である。
【0101】
即ち、この併行調整運転において所要の温湿度状態に調整されている環境試験室1の室内空気A(i)は、還気口4から導入路9に導入されて第1調整路10Aと第2調整路10Bとに、所要の分流比Q1/Q2(ここでは2/1)で分流される。
【0102】
第1調整路10Aに分流された空気Aは、先ず除湿器11において目標基礎湿度ham(=hsm-Δh)まで除湿(i→ii)され、この除湿により空気Aの露点温度tdは、冷却器温度tcより低い温度になる。
【0103】
除湿器11で除湿された空気A(ii)は、次に冷却器15において目標基礎温度tam(=tsm-Δt)まで冷却(ii→iii)され、これら除湿及び冷却により目標基礎温度tamで目標基礎湿度hamに調整された相対的に低温低湿の空気A(iii,iv,v)が、第1調整路10Aから送出路8に導出される。
【0104】
一方、第2調整路10Bに分流された空気Aは、加熱器20において加熱(i→vi)されるとともに加湿器21において加湿(vi→vii)される。このとき加熱器20に供給される空気は、上記分流比調整により適当に調整された結果、加熱器20によって、本実施形態においては、第2導出温度センサ25Bにより検出された温度が2℃となるにまで加熱されるため、加湿器21において霜付きが発生する虞はない。これら加熱及び加湿により相対的に高温高湿に調整された空気A(vii)が、第2調整路10Bから送出路8に導出されて、第1調整路10Aから送出路8に導出された目標基礎温度tamで目標基礎湿度hamの空気A(v)と合流する。
【0105】
この合流により生成された混合空気A(即ち、送出路8から送出される空気A)の温度ts及び湿度hsは、送出温度センサ27及び送出湿度センサ28により検出され、この検出温度tsと目標送出温度tsm(-10℃)との偏差Δtsに応じ加熱器20の出力が調整されるとともに、検出湿度hsと目標送出湿度hsm(80%)との偏差Δhsに応じ加湿器21の出力が調整されて、第2調整路10Bから送出路8に導出される相対的に高温高湿の空気A(vii)の温度及び湿度が調整され、この高温高湿の空気A(vii)の温度及び湿度が調整されることで、合流により生成される混合空気A(送出路8から送出される空気A)が目標送出温度tsm(-10℃)で目標送出湿度hsm(80%)の空気に調整される。
【0106】
そして、この目標送出温度tsm(-10℃)で目標送出湿度hsm(80%)の空気A(viii)が送出路8から吹出口3を通じて環境試験室1に供給されることで、環境試験室1の室内空気A(i)は、室内負荷の存在下において所要の温湿度状態に保たれる。
【0107】
図7は、送出路8から環境試験室1に送出する空気Aを設定閾温度tzより高温の目標送出温度tsmで目標送出湿度hsm(ここでは30℃,80%)の空気に調整する場合の単行調整運転の運転形態を模式的に示し、同図7において符号i~viiiは、同じく通風経路上における空気Aの各位置を示す。
【0108】
また、図8は、それら各位置i~viiiにおける空気Aの温度t,湿度hを示す湿り空気線図である。
【0109】
即ち、この単行調整運転において所要の温湿度状態に調整されている環境試験室1の室内空気A(i)は、併行調整運転の場合と同様、還気口4から導入路9に導入されて第1調整路10Aと第2調整路10Bとに、所要の分流比Q1/Q2で分流される。なお、図8においては、湿り空気線図においては分流比Q1/Q2が2/1であるときが示されているが、当該分流比Q1/Q2は例えば1/1であってもよい。
【0110】
第1調整路10Aに分流された空気Aは、除湿器11で除湿(i→ii)されるとともに、この除湿に続いて冷却器15で冷却(ii→iii)される。
【0111】
また、冷却器15で冷却された空気A(iii)は、続いて単行用加熱器16で加熱(iii→iv)されるとともに、この加熱に続いて単行用加湿器17で加湿(iv→v)され、これら除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17で順次に温湿度が調整された空気A(v)が、第1調整路10Aから送出路8に導出される。
【0112】
一方、第2調整路10Bに分流された空気Aは、加熱器20及び加湿器21の運転が停止された第2調整路10Bを無調整のままで通過し、この無調整の空気A(i,vi,vii)が、第2調整路10Bから送出路8に導出されて、第1調整路10Aから送出路8に導出された温湿度が調整された空気A(v)と合流する。
【0113】
この合流により生成された混合空気A(即ち、送出路8から送出される空気A)の温度ts及び湿度hsは、送出温度センサ27及び送出湿度センサ28により検出され、この検出温度tsと目標送出温度tsm(30℃)との偏差Δtsに応じ冷却器15及び加熱器20の出力が調整されるとともに、検出湿度hsと目標送出湿度hsm(80%)との偏差Δhsに応じ除湿器11及び加湿器21の出力が調整されて、第1調整路10Aから送出路8に導出される空気A(v)の温度及び湿度が調整され、この導出空気A(v)の温度及び湿度が調整されることで、合流により生成される混合空気A(送出路8から送出される空気A)が目標送出温度tsm(30℃)で目標送出湿度hsm(80%)の空気に調整される。
【0114】
そして、この目標送出温度tsm(30℃)で目標送出湿度hsm(80%)の空気A(viii)が送出路8から吹出口3を通じて環境試験室1に供給されることで、環境試験室1の室内空気A(i)は、室内負荷の存在下において所要の温湿度状態に保たれる。
【0115】
なお、図示は省略したが、導入路9、又は、第1調整路10Aにおける除湿器11の上流側、又は、第2調整路10Bにおける第2空調機13の上流側には、新鮮空気取入路が接続され、この新鮮空気取入路を通じて、排気口5からの空気Aの排出量に相当する風量の新鮮空気Aが取り入れられ、この取り入れられた新鮮空気Aが環境試験室1から導入路9に導入される室内空気Aに混合される。
【0116】
また、第1調整路10Aには、除湿器11に対するバイパス路29が設けられており、冷却器15における霜付きが回避できるのであれば、送風機18,22夫々の出力や分流比調整ダンパ23A,23B夫々の開度を適宜調整することで、導入路9から第1調整路10Aに分流された空気Aの一部又は全部を除湿器11に対して迂回させることができる。
【0117】
なお、分流比調整は、吹出口3から環境試験室1に供給される空気Aの条件(目標送出温度tsm,目標送出湿度hsm)が変更されたときにも以下のように実施される。すなわち、まず、除湿器11の除湿能力又は第1空調機12の冷却器15の冷却能力が、例えば定格能力の7割程度と制御性の高い範囲において、冷却器15が霜付きしないように第1空調機12の温度ta及び湿度haが設定される。次に、第1空調機12の温度ta,湿度ha及び目標送出温度tsm,目標送出湿度hsmと風量から算出された還気口4を通じて空調システム2に戻される環境試験室1の室内空気Aの温度及び湿度に基づき、第2空調機13の温度tb及び湿度hbが制御可能な範囲か判定する。そして、第2空調機13の温度tb及び湿度hbが制御可能な範囲外と判定された場合には、第1空調機12の温度ta及び湿度ha、又は、風量を変更し、再度上記判定を行う。送出温度センサ27により検出される温度ts及び送出湿度センサ28により検出される湿度hsの制御は第2空調機13の加熱器20及び加湿器21によって行う。
【0118】
〔別実施形態〕
次に本発明の別実施形態を列記する。
【0119】
上記の実施形態では、環境試験室1を調整対象室とする例を示したが、送出路8を通じて目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmの空気Aを供給する調整対象室は、環境試験室に限られるものではなく、各種分野におけるどのような用途の室であってもよい。
【0120】
前述の実施形態においては、送風機18,22及び分流比調整ダンパ23A,23Bは、制御装置Cによって自動で制御可能に構成されていたが、送風機18,22及び/又は分流比調整ダンパ23A,23Bは、作業員によって手動で制御可能に構成されていてもよい。また、分流比調整は、当初は制御装置Cによって自動で制御しながら、状況に応じて作業員が手動で制御するようにしてもよい。
【0121】
前述の実施形態においては、制御装置Cは、加湿器21の下流側に装備された第2導出温度センサ25Bにより検出された温度tbと霜付回避温度tbmとに基づいて分流比調整を実施する場合について説明したが、分流比調整はこれに限るものではない。
【0122】
例えば、制御装置Cは、第2空調機13の下流側、具体的には加湿器21の下流側に装備された第2導出温度センサ25Bによって検出された温度tbに基づいて、加熱器20から出て加湿器21に至る空気の温度を算出し、当該算出された温度が霜付回避温度tbm(0℃より高い温度、例えば2℃)以上となるように分流比調整をしてもよい。
【0123】
また、第2導出温度センサ25Bは、第2空調機13の内部、例えば加熱器20と加湿器21の間に装備されてもよく、当該第2導出温度センサ25Bによって、直接的に検出された加熱器20から加湿器21に至る空気の温度が霜付回避温度tbm(0℃より高い温度、例えば2℃)以上となるように分流比調整をしてもよい。また、第2導出温度センサ25Bは、第2空調機13の上流側、具体的には加熱器20の上流側に装備されてもよい。
【0124】
前述の実施形態においては、第2導出湿度センサ26Bが第2導出温度センサ25Bと同様に第2空調機13の下流側に装備されていたが、第2導出湿度センサ26が装備される位置はこれに限られるものではなく、第2空調機13の内部、例えば加熱器20と加湿器21の間に装備されてもよいし、第2空調機13の上流側に装備されてもよい。
【0125】
前述の実施形態における単行調整運転では、加熱器20及び加湿器21の運転を停止させた第2調整路10Bにも分流空気Aを通過させるが、これとは別の単行調整運転として、第2調整路10Bに対する空気Aの通過を遮断した状態で、第1調整路10Aにおける除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力を制御装置Cに調整させることで、第1調整路10Aから送出路8に導出する空気A(即ち、送出路8から送出する空気A)を目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmの空気に調整する運転を実施するようにしてもよい。
【0126】
前述の実施形態における併行調整運転では、送出路8に装備した送出温度センサ27及び送出湿度センサ28の検出温度ts及び検出湿度hsに基づいて、加熱器20及び加湿器21夫々の出力を制御装置Cに調整させることで、また、単行調整運転では、送出温度センサ27及び送出湿度センサ28の検出温度ts及び検出湿度hsに基づいて、除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力を制御装置Cに調整させることで、送出路8から送出する空気Aを目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmの空気に調整するようにした。
【0127】
これに代え、環境試験室1の室内温度tr及び室内湿度hrを検出する室内温度センサ及び室内湿度センサを装備し、そして、併行調整運転では、室内温度センサが検出した室内温度trと目標室内温度trmとの偏差Δtr、及び、室内湿度センサが検出した室内湿度hrと目標室内湿度hrmとの偏差Δhrに応じて、加熱器20及び加湿器21夫々の出力(あるいは、除湿器11、冷却器15、加熱器20、加湿器21夫々の出力)を制御装置Cに調整させることで、また、単行調整運転では、室内温度センサが検出した室内温度trと目標室内温度trmとの偏差Δtr、及び、室内湿度が検出した室内湿度hrと目標室内湿度hrmとの偏差Δhrに応じて、除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力を制御装置Cに調整させることで、環境試験室1の室内温度tr及び室内湿度hrを目標室内温度trm及び目標室内湿度hrmに調整するようにしてもよい。
【0128】
この場合、送出路8から送出する空気Aの温度ts及び湿度hsに関する目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmとは、環境試験室1の室内温度tr及び室内湿度hrが目標室内温度trm及び目標室内湿度hrmになる送出空気Aの温度ts及び湿度hsを意味する。
【0129】
さらに、環境試験室1における物品の表面温度to及び表面湿度hoを検出する表面温度センサ及び表面湿度センサを装備し、そして、併行調整運転では、表面温度センサが検出した表面温度toと目標表面温度tomとの偏差Δto、及び、表面湿度センサが検出した表面湿度hoと目標表面湿度homとの偏差Δhoに応じて、加熱器20及び加湿器21夫々の出力(あるいは、除湿器11、冷却器15、加熱器20、加湿器21夫々の出力)を制御装置Cに調整させることで、また、単行調整運転では、表面温度センサが検出した表面温度toと目標表面温度tomとの偏差Δto、及び、表面湿度センサが検出した表面湿度hoと目標表面湿度homとの偏差Δhoに応じて、除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力を制御装置Cに調整させることで、環境試験室1における物品の表面温度to及び表面湿度hoを目標表面温度tom及び目標表面湿度homに調整するようにしてもよい。
【0130】
この場合、送出路8から送出する空気Aの温度ts及び湿度hsに関する目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmとは、環境試験室1における物品の表面温度to及び表面湿度hoが目標表面温度tom及び目標表面湿度homになる送出空気Aの温度ts及び湿度hsを意味する。
【0131】
導入路9を通じて第1調整路10A及び第2調整路10Bに導入する空気Aは、環境試験室の室内空気Aに限られるものではなく、外気、又は、外気と室内空気との混合空気、あるいは、他のシステムから供給される空気であってもよい。
【0132】
送出路8から送出する目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmの空気Aは、室内温湿度の調整などを目的として種々の用途の環境試験室に吹き出す空気に限らず、物品の調整を目的として物品に吹き付ける空気などであってもよい。
【0133】
ここまでの説明では、目標送出温度tsmが設定閾温度tzより高いときに制御装置Cが実施する単行調整運転として、次の2種(a),(b)の単行調整運転を示した。
【0134】
(a)第1調整路10Aから送出路8に導出される空気Aと、加熱器20及び加湿器21の運転を停止した状態で第2調整路10Bから送出路8に導出される空気Aとの合流により、送出路8から送出される空気Aの温度ts及び湿度hsが目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmになる状態に、除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力を調整する単行調整運転。
【0135】
(b)第2調整路10Bに対する空気Aの通過を遮断した状態で、第1調整路10Aにおける除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17夫々の出力を調整することで、第1調整路10Aから送出路8に導出される空気A(即ち、送出路8から送出される空気A)を目標送出温度tsmで目標送出湿度hsmの空気に調整する単行調整運転。
【0136】
しかし、目標送出温度tsmが設定閾温度tzより高いとき、上記2種の単行調整運転のうちのいずれか一方のみを専用的に実施するのに限らず、これら2種の単行調整運転を、状況に応じて択一的に選択する形態で実施するようにしてもよい。
【0137】
さらにまた、目標送出温度tsmが設定閾温度tzより高いときに、調整範囲の拡大などを目的として、上記2種の単行調整運転に代え、次のオプション運転(c)を実施するようにしてもよい。
【0138】
(c)第1調整路10Aから送出路8に導出される空気Aと、加熱器20及び加湿器21夫々を運転した状態で第2調整路10Bから送出路8に導出される空気Aとの合流により、送出路8から送出される空気Aの温度ts及び湿度hsが目標送出温度tsm及び目標送出湿度hsmになる状態に、除湿器11、冷却器15、単行用加熱器16、単行用加湿器17、加熱器20、加湿器21夫々の出力を調整するオプション運転。
【0139】
また、目標送出温度tsmが設定閾温度tzより高いとき、上記のオプション運転のみを専用的に実施するのに限らず、前記2種の単行調整運転の少なくとも一方と、上記オプション運転とを、状況に応じて択一的に選択する形態で実施するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、各種分野において種々の目的で空気の温度及び湿度を調整する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0141】
A 空気
9 導入路
8 送出路
10A 第1調整路
10B 第2調整路
11 除湿器
15 冷却器
20 加熱器
21 加湿器
C 制御装置
tsm 目標送出温度
hsm 目標送出湿度
tam 目標基礎温度
ham 目標基礎湿度
tbm 霜付回避温度
16 単行用加熱器
17 単行用加湿器
tz 設定閾温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11