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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
F04B39/00 106B
F04B39/00 104Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021037632
(22)【出願日】2021-03-09
(65)【公開番号】P2022137909
(43)【公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 駿平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228717(JP,A)
【文献】特開2000-294344(JP,A)
【文献】特開2009-106049(JP,A)
【文献】特開2014-026761(JP,A)
【文献】特開2013-206590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04C 29/00
H02K 5/22
H02K 7/00
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動するモータ機構と、
前記モータ機構を駆動制御するインバータと、
前記圧縮機構、前記モータ機構及び前記インバータを内部に収容するとともに開口を有するハウジングと、
前記インバータと電気的に接続されるインバータ側コネクタと、外部電源と電気的に接続される電源側コネクタと、前記インバータ側コネクタと前記電源側コネクタとを電気的に接続する可撓性のケーブルとを有するハーネスとを備え、
前記インバータ側コネクタは前記開口に設けられている電動圧縮機において、
前記インバータ側コネクタは、
前記ケーブルが挿通される挿通孔が形成されるとともに、前記開口内における前記ケーブルの位置を規定するように前記開口に設けられる蓋体と、
前記開口と前記蓋体との間に設けられる外側シール部材と、
前記挿通孔と前記ケーブルとの間に設けられる内側シール部材とを有し、
前記挿通孔は、前記ケーブルの移動を規制する規制部と、前記規制部よりも前記インバータ側にあって前記内側シール部材が嵌合される嵌合部とを有し、
前記挿通孔は、前記規制部において前記嵌合部に対して絞られ
前記ハウジングは、前記インバータとは反対側に位置する前部ケースを含んで前記インバータを収容するインバータボックスと、前記インバータとは反対側で前記前部ケースと固定されるハーメチックケースとを有し、
前記前部ケースと前記ハーメチックケースとの間には第1グロメットが設けられ、
前記ケーブルと前記ハーメチックケースとの間には第2グロメットが設けられ、
前記蓋体は、中心部分から前記インバータとは反対側に突出する前筒部と、外周部分から前記インバータ側に突出する後筒部と、外周部分よりも内側から前記インバータ側に突出する前記嵌合部とを有し、
前記外側シール部材は前記後筒部と前記ハーメチックケースとの間に設けられ、
前記内側シール部材は前記嵌合部と前記ケーブルとの間に設けられ、
前記外側シール部材と前記内側シール部材とは径方向においてオーバーラップしていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記規制部は、前記内側シール部材を支持する挿入方向での当接面を有する請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記ハウジングに固定されたブラケットと、
前記ブラケットに設けられたクランプとを備え、
前記ケーブルは、前記ブラケット及び前記クランプによって保持されている請求項1又は2記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機が開示されている。この電動圧縮機は、圧縮機構と、モータ機構と、インバータと、ハウジングと、ハーネスとを備えている。圧縮機構は冷媒を圧縮する。モータ機構は圧縮機構を駆動する。インバータはモータ機構を駆動制御する。ハウジングは、圧縮機構、モータ機構及びインバータを内部に収容する。ハーネスは、一端に設けられてインバータと電気的に接続されるインバータ側コネクタと、他端に設けられて外部電源と電気的に接続される電源側コネクタと、インバータ側コネクタと電源側コネクタとを電気的に接続するケーブルとを有する。
【0003】
より詳細には、ハウジングは、圧縮機ハウジングと、モータハウジングと、インバータボックスとを有している。圧縮機ハウジング内に圧縮機構が収容され、モータハウジング内にモータ機構が収容され、インバータボックス内にインバータが収容されている。圧縮機ハウジング、モータハウジング及びインバータボックスは一体に組付けられている。インバータ側コネクタはインバータボックスに固定されている。
【0004】
インバータ側コネクタは、筐体であるジャンクションボックスと、蓋体と、内側シール部材であるグロメットとを有している。ジャンクションボックスは、インバータと電気的に接続される導電端子を内部に保持している。蓋体は、ケーブルを挿通しており、ジャンクションボックスに組付けられる。グロメットは蓋体とケーブルとの間を封止している。
【0005】
この電動圧縮機では、外部電源からケーブルを介してインバータに電力が供給されると、インバータがモータ機構を駆動制御する。これにより圧縮機構が作動し、車両等の空調装置が作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-163231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の電動圧縮機では、インバータ側コネクタの内部の気密性が懸念される。特に、この電動圧縮機では、組立時や整備時にハーネスのケーブルに外力が加わった場合、グロメットが変形し、インバータ側コネクタの内部の気密が損なわれるおそれがある。その場合、インバータに外部の異物が接触し、電動圧縮機の耐久性等に悪影響が生じる。特に、可撓性を有するケーブルについては、ケーブルの屈曲変形がグロメット周りで生じるため、この問題は顕著である。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ケーブルに外力が作用してもインバータの気密を維持できる電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動圧縮機は、冷媒を圧縮する圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動するモータ機構と、
前記モータ機構を駆動制御するインバータと、
前記圧縮機構、前記モータ機構及び前記インバータを内部に収容するとともに開口を有するハウジングと、
前記インバータと電気的に接続されるインバータ側コネクタと、外部電源と電気的に接続される電源側コネクタと、前記インバータ側コネクタと前記電源側コネクタとを電気的に接続する可撓性のケーブルとを有するハーネスとを備え、
前記インバータ側コネクタは前記開口に設けられている電動圧縮機において、
前記インバータ側コネクタは、
前記ケーブルが挿通される挿通孔が形成されるとともに、前記開口内における前記ケーブルの位置を規定するように前記開口に設けられる蓋体と、
前記開口と前記蓋体との間に設けられる外側シール部材と、
前記挿通孔と前記ケーブルとの間に設けられる内側シール部材とを有し、
前記挿通孔は、前記ケーブルの移動を規制する規制部と、前記規制部よりも前記インバータ側にあって前記内側シール部材が嵌合される嵌合部とを有し、
前記挿通孔は、前記規制部において前記嵌合部に対して絞られ
前記ハウジングは、前記インバータとは反対側に位置する前部ケースを含んで前記インバータを収容するインバータボックスと、前記インバータとは反対側で前記前部ケースと固定されるハーメチックケースとを有し、
前記前部ケースと前記ハーメチックケースとの間には第1グロメットが設けられ、
前記ケーブルと前記ハーメチックケースとの間には第2グロメットが設けられ、
前記蓋体は、中心部分から前記インバータとは反対側に突出する前筒部と、外周部分から前記インバータ側に突出する後筒部と、外周部分よりも内側から前記インバータ側に突出する前記嵌合部とを有し、
前記外側シール部材は前記後筒部と前記ハーメチックケースとの間に設けられ、
前記内側シール部材は前記嵌合部と前記ケーブルとの間に設けられ、
前記外側シール部材と前記内側シール部材とは径方向においてオーバーラップしていることを特徴とする。
【0010】
本発明の電動圧縮機は、インバータ側コネクタが蓋体、内側シール部材及び外側シール部材を有し、インバータ側コネクタの内部が気密となっている。また、蓋体には、ケーブルを挿通する挿通孔が形成され、挿通孔は規制部と嵌合部とを有している。挿通孔は、規制部において嵌合部に対して絞られている。このため、組立時や整備時にハーネスのケーブルに外力が加わった場合、挿通孔において、ケーブルとの距離が近い規制部がケーブルの移動を当接規制し、内側シール部材の変形を規制することが可能となる。特に、可撓性を有するケーブルに対して、内側シール部材付近でのケーブルの屈曲変形を規制部は効果的に抑制できる。このため、ケーブルに外力が作用してもインバータの気密を維持できる。
【0011】
したがって、本発明の電動圧縮機では、ケーブルに外力が作用してもインバータの気密を維持できる。
【0012】
規制部は、内側シール部材を支持する挿入方向での当接面を有することが好ましい。この場合には、内側シール部材の組付けが容易になり、生産性が向上する。
【0013】
本発明の電動圧縮機は、ハウジングに固定されたブラケットと、ブラケットに設けられたクランプとを備え得る。ケーブルは、ブラケット及びクランプによって保持され得る。この場合、ケーブルに対して外力が作用することによる過度な屈曲変形をブラケット及びクランプは抑制できる。ブラケット及びクランプがケーブルを保持することにより、ケーブルがインバータ側コネクタの外部で急激に屈曲されても、内側シール部材付近でのケーブルの屈曲変形を規制部は効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電動圧縮機は、ケーブルに外力が作用してもインバータの気密を維持できる。このため、外部の異物がインバータに接触し難く、高い耐久性等を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施例の電動圧縮機の側面図である。
図2図2は、実施例の電動圧縮機の正面図である。
図3図3は、実施例の電動圧縮機の要部拡大正面図である。
図4図4は、実施例の電動圧縮機に係り、インバータ側コネクタ等の分解斜視図である。
図5図5は、実施例の電動圧縮機の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例の電動圧縮機は、車両の空調装置を構成している。
【0017】
以下の説明では、図1の紙面右側を電動圧縮機の前側とし、図1の紙面左側を電動圧縮機の後側とする。また、図1の紙面上側を電動圧縮機の上側とし、図1の紙面下側を電動圧縮機の下側とする。そして、図2以降では、図1に対応させて前後方向及び上下方向を表示する。なお、実施例における前後方向及び上下方向は一例である。実施例の電動圧縮機は、搭載される車両に対応して、その取付姿勢が適宜変更される。
【0018】
実施例の電動圧縮機は、図1及び図2に示すように、圧縮機構1と、モータ機構3と、インバータ5と、ハウジング7と、給電用ハーネス9とを備えている。
【0019】
圧縮機構1は、スクロール型圧縮機構であり、図示しない吸入口から吸入した冷媒を圧縮し、図示しない吐出口から高圧の冷媒を吐出する。モータ機構3は圧縮機構1を駆動する。インバータ5はモータ機構3を駆動制御する。
【0020】
ハウジング7は、圧縮機ハウジング11と、モータハウジング13と、インバータボックス15と、ハーメチックケース31とを有している。圧縮機ハウジング11、モータハウジング13、インバータボックス15及びハーメチックケース31はアルミニウム合金製である。圧縮機ハウジング11内に圧縮機構1が収容され、モータハウジング13内にモータ機構3が収容されている。インバータボックス15内にインバータ5が収容されている。圧縮機ハウジング11、モータハウジング13及びインバータボックス15は一体に組付けられている。モータハウジング13に前記吸入口が形成され、圧縮機ハウジング11に前記吐出口が形成されている。ハーメチックケース31には開口32が形成されている。
【0021】
インバータボックス15は、モータハウジング13側に位置する前部ケース17と、後方側に位置する後部ケース19とからなる。図5に示すように、前部ケース17と後部ケース19とは両者間にガスケット21を介して図示しないボルトによって接合され、内部にインバータ室15aを形成している。インバータ室15a内にインバータ5が設けられている。
【0022】
図1及び図2に示すように、給電用ハーネス9が本発明のハーネスに相当する。給電用ハーネス9は、インバータ側コネクタ23と、電源側コネクタ25と、ケーブル27とを有している。ケーブル27はインバータ側コネクタ23と電源側コネクタ25とを電気的に接続している。ケーブル27は、図3に示すように、プラス極の電流を通電するプラス側ケーブル27aと、マイナス極の電流を通電するマイナス側ケーブル27bとからなる。
【0023】
インバータ側コネクタ23は、図4に示すように、キャップ33と、外側グロメット35と、内側グロメット37とを有している。キャップ33が蓋体に相当し、外側グロメット35が外側シール部材に相当し、内側グロメット37が内側シール部材に相当する。キャップ33は、ハウジングの一部であるハーメチックケース31に取り付けられる。
【0024】
ハーメチックケース31には、図5に示すように、外周部分から前方に円筒状に突出する前筒部31aが形成されている。開口32は前筒部31aの内面に開口している。図4に示すように、前筒部31aの外面には2個のボス31b、31cが一体に形成され、各ボス31b、31cには前後に延びるボルト穴31d、31eが形成されている。また、ハーメチックケース31には、図5に示すように、外周部分から後方に円筒状に突出する後筒部31fも形成されている。
【0025】
ハーメチックケース31は、後筒部31fをインバータボックス15の前部ケース17の開口に嵌合し、図示しないボルトによって前部ケース17に固定される。後筒部31fと前部ケース17との間には環状のグロメット40が設けられている。グロメット40もゴム製である。
【0026】
ハーメチックケース31内には、図4に示すように、左右に長い四角柱状の収納室31gが前方から凹設されている。収納室31gは、図5に示すように、前筒部31a内及び後筒部31f内に連通している。収納室31g内には、後方側から順にグロメット41と、第1~3プレート43~45とが設けられている。グロメット41は、ゴム製であり、収納室31gの内壁面と当接している。グロメット41には左右で2個の第3、4挿嵌孔41a、41bが貫設されている。
【0027】
第1~3プレート43~45は、金属製であり、収納室31gの内壁面に圧入されている。第1プレート43及び第3プレート45には下方に開く切欠きが形成され、第2プレート44には上方に開く切欠きが形成され、第1~3プレート43~45が組み合わされることによって左右で2個の第1、2挟持孔44a、44bが貫設されることとなる。
【0028】
また、ハーメチックケース31の後端には樹脂製のクラスタブロック47が固定具48を介してボルト49によって固定されている。クラスタブロック47内には、中央の壁によって左右に第1、2端子室47a、47bが形成されている。クラスタブロック47には、第1端子室47aから後方に第1導電端子51aを突出させる第1通孔47cと、第2端子室47bから後方に第2導電端子51bを突出させる第2通孔47dとが形成されている。
【0029】
キャップ33は樹脂製である。キャップ33には、中心部分から後方に左右に長い楕円形の筒状に突出する部位の内部に形成された嵌合部33aと、外周部分から後方に円筒状に突出する後筒部33bとが形成されている。さらに、キャップ33には、中心部分から前方に左右に長い楕円状に突出する前筒部33cが形成されている。前筒部33cには左右で2個の第1、2規制孔33d、33eが貫設され、第1、2規制孔33d、33eは嵌合部33a内に連通している。第1、2規制孔33d、33eは、本発明の規制部に相当し、キャップ33に形成される挿通孔34の一部である。嵌合部33aは、キャップ33に貫通形成されるとともにプラス側ケーブル27aとマイナス側ケーブル27bとが挿通される挿通孔34の一部である。第1、2規制孔33d、33eの前方はやや拡径されるように傾斜している。なお、図3に示すように、前筒部33cの下部には下方に突出する2個の凸部33f、33gが左右に形成されている。また、キャップ33の前面下部には前方に短く突出する凸部33h、33iも左右に形成されている。
【0030】
図5に示すように、嵌合部33a内には内側グロメット37が設けられている。より詳しくは、内側グロメット37は嵌合部33aに挿嵌されている。挿通孔34において、嵌合部33aは、第1、2規制孔33d、33eよりもインバータ5側にある。内側グロメット37はゴム製である。内側グロメット37には左右で2個の第1、2挿嵌孔37a、37bが貫設されている。内側グロメット37の外周面と、第1、2挿嵌孔37a、37bの内周面とには環状に延びる凹凸が形成されている。内側グロメット37の第1挿嵌孔37aとキャップ33の第1規制孔33dとは同心であり、内側グロメット37の第2挿嵌孔37bとキャップ33の第2規制孔33eとは同心である。キャップ33は嵌合部33a内に内側グロメット37と当接する当接面34bを有し、当接面34bにより内側グロメット37は支持される。挿通孔34は、第1、2規制孔33d、33eにおいて嵌合部33aに対して絞られている。言い換えれば、第1、2規制孔33d、33eの開口面積は、嵌合部33aの開口面積より小さい。
【0031】
後筒部33bとハーメチックケース31の開口32との間には外側グロメット35が設けられている。外側グロメット35もゴム製である。外側グロメット35は、外周面に環状に延びる凹凸を有する円筒状をなしている。外側グロメット35は開口32と後筒部33bとの間、ひいてはハーメチックケース31とキャップ33との間を封止している。
【0032】
キャップ33の前方にはブラケット53が設けられている。ブラケット53は薄い金属板である。ブラケット53は、図4に示すように、キャップ33の前面に当接するブラケット本体53aを有し、ブラケット本体53aにはキャップ33の前筒部33cを露出させる切欠き53bが形成されている。切欠き53bは、図3に示すブラケット53が正しく組付けられれば、キャップ33の凸部33f、33g及び凸部33h、33iを露出し、誤組付けを防止する。
【0033】
ブラケット53は、ブラケット本体53aから前方に延びるアーム53cを有している。アーム53cにはクランプ55が保持されている。クランプ55は、プラス側ケーブル27aとマイナス側ケーブル27bとをともに保持できるようになっている。また、ブラケット本体53aには、ハーメチックケース31のボルト穴31d、31eと整合するボルト穴53d、53eが貫設されている。図4に示すように、ブラケット本体53aとアーム53cとの間には、切欠き53fが形成されている。切欠き53fは、車両の衝突事故時にアーム53cを容易に変形させ、プラス側ケーブル27aやマイナス側ケーブル27bからの漏電を防止する弱体部をなしている。
【0034】
ブラケット53のボルト穴53dにはボルト57が挿通され、ボルト57はハーメチックケース31のボルト穴31dに螺合されている。また、ブラケット53のボルト穴53eにはボルト59が挿通され、ボルト59はハーメチックケース31のボルト穴31eに螺合されている。
【0035】
図5に示すように、プラス側ケーブル27aは、複数の導線が撚られた第1導体27cと、第1導体27cを同軸に覆う第1絶縁体27dと、第1絶縁体27dを同軸に覆う第1シース27eとからなる。マイナス側ケーブル27bは、複数の導線が撚られた第2導体27fと、第2導体27fを同軸に覆う第2絶縁体27gと、第2絶縁体27gを同軸に覆う第2シース27hとからなる。
【0036】
プラス側ケーブル27aの第1導体27cは、クラスタブロック47の第1端子室47a内で第1導電端子51aとはんだ付けされている。第1絶縁体27dは、グロメット41の第3挿嵌孔41aを挿通している。第1シース27eは、第1~3プレート43~45の第1挟持孔44a、内側グロメット37の第1挿嵌孔37a及びキャップ33の第1規制孔33dを挿通している。マイナス側ケーブル27bの第2導体27fは、クラスタブロック47の第2端子室47b内で第2導電端子51bとはんだ付けされている。第2絶縁体27gは、グロメット41の第4挿嵌孔41bを挿通している。第2シース27hは、第1~3プレート43~45の第2挟持孔44b、内側グロメット37の第2挿嵌孔37b及びキャップ33の第2規制孔33eを挿通している。内側グロメット37は挿通孔34と第1シース27e、第2シース27hとの間、ひいてはキャップ33とケーブル27との間を封止している。キャップ33は、開口32内におけるケーブル27の位置を規定している。
【0037】
こうして、インバータ側コネクタ23から引き出されたプラス側ケーブル27a及びマイナス側ケーブル27bは、図3に示すように、クランプ55によって保持され、車両における搭載スペースのためにインバータ側コネクタ23の外部で急激に屈曲されている。
【0038】
図5に示すように、インバータ室15a内のインバータ5は、基板5aと、基板5aに形成された左右の第1、2接続部5b、5cとを有している。クラスタブロック47における第1端子室47a内の第1導電端子51aは第1接続部5b内に嵌合することにより接続される。クラスタブロック47における第2端子室47b内の第2導電端子51bは第2接続部5c内に嵌合することにより接続される。こうして、インバータ側コネクタ23は、給電用ハーネス9の一端に設けられてインバータ5と電気的に接続される。第1導電端子51aと第2導電端子51bとはインバータ5とケーブル27とを電気的に接続している。
【0039】
このインバータ側コネクタ23は以下のように前部ケース17に固定される。まず、第1導体27cと第1導電端子51aとをはんだ付けしたプラス側ケーブル27aがグロメット41の第3挿嵌孔41a、内側グロメット37の第1挿嵌孔37a及びキャップ33の第1規制孔33dに挿通される。また、第2導体27fと第2導電端子51bとをはんだ付けしたマイナス側ケーブル27bがグロメット41の第4挿嵌孔41b、内側グロメット37の第2挿嵌孔37b及びキャップ33の第2規制孔33eに挿通される。内側グロメット37は当接面34bに当接するまで嵌合部33aに挿入される。
【0040】
そして、グロメット41と内側グロメット37との間のプラス側ケーブル27a及びマイナス側ケーブル27bに第1~3プレート43~45を設け、第1、2導体27c、27f及び第1、2導電端子51a、51bをハーメチックケース31の収納室31gから後筒部31f内に位置させ、収納室31gにグロメット41を嵌合するとともに第1~3プレート43~45を圧入する。この際、キャップ33の後筒部33bには外側グロメット35が保持されており、この状態で外側グロメット35をハーメチックケース31の開口32に嵌合する。
【0041】
そして、クラスタブロック47の第1通孔47cに第1導電端子51aを挿入し、クラスタブロック47の第2通孔47dに第2導電端子51bを挿入し、クラスタブロック47をボルト49によってハーメチックケース31に固定する。この際、ハーメチックケース31の後筒部31fにはグロメット40が保持されており、この状態でグロメット40を前部ケース17に嵌合し、ハーメチックケース31を図示しないボルトによって前部ケース17に固定する。
【0042】
こうして、インバータ側コネクタ23はインバータボックス15の前部ケース17に固定される。この際、ブラケット53がハーメチックケース31とともに前部ケース17に固定されるため、ブラケット53のみを前部ケース17に固定するための別部材は不要であり、部品点数の削減により、電動圧縮機の製造コストの低廉化を実現している。
【0043】
図2及び図3に示す電源側コネクタ25は、給電用ハーネス9の他端に設けられて図示しない外部電源と電気的に接続される。外部電源は車両に搭載されるバッテリである。
【0044】
なお、図2に示すように、インバータボックス15の前部ケース17の前壁には制御用コネクタ61も設けられている。制御用コネクタ61には図示しない制御用ハーネスのインバータ側コネクタが接続される。制御用ハーネスは、インバータ側コネクタとケーブルによって電気的に接続された制御装置側コネクタを有しており、制御装置側コネクタは車載の制御装置と接続される。
【0045】
以上のように構成された電動圧縮機は、バッテリからプラス側ケーブル27a及びマイナス側ケーブル27bを介してインバータ5に高電圧の電力が供給される。このため、インバータ5がモータ機構3を駆動制御するため、圧縮機構1が作動し、車両の空調装置が作動する。
【0046】
この間、この電動圧縮機では、インバータ側コネクタ23は、グロメット41、外側グロメット35及び内側グロメット37によって内部が気密となっている。そして、インバータ室15aは、ガスケット21、グロメット40、インバータ側コネクタ23等によって気密となっている。
【0047】
より詳細には、インバータ側コネクタ23がハーメチックケース31、キャップ33及び内側グロメット37の他、外側グロメット35を有することにより、インバータ側コネクタ23の内部が気密となっている。
【0048】
また、この電動圧縮機では、組立時や整備時に給電用ハーネス9のプラス側ケーブル27aやマイナス側ケーブル27bに外力が加わる場合がある。特に、ハーメチックケース31にブラケット53が固定され、ブラケット53にクランプ55が設けられているため、可撓性のあるプラス側ケーブル27aやマイナス側ケーブル27bは、インバータ側コネクタ23の外部で屈曲されている。しかしながら、この電動圧縮機では、キャップ33に第1、2規制孔33d、33eが形成されているため、第1、2規制孔33d、33eがプラス側ケーブル27aやマイナス側ケーブル27bの径方向の移動を当接規制できる。特に、内側グロメット37の第1挿嵌孔37aにプラス側ケーブル27aが挿通され、内側グロメット37の第2挿嵌孔37bにマイナス側ケーブル27bが挿通され、内側グロメット37がプラス側ケーブル27aとマイナス側ケーブル27bとをそれぞれ独立して封止する。このため、内側グロメット37の変形を規制することが可能であり、インバータ側コネクタ23の内部の気密をより高く維持することができる。また、プラス側ケーブル27aやマイナス側ケーブル27bに対して更なる外力が作用することによる過度な屈曲変形をブラケット53及びクランプ55は抑制できる。
【0049】
したがって、実施例の電動圧縮機では、ケーブル27に外力が作用してもインバータ5の気密を維持できる。このため、外部の異物がインバータ5に接触し難く、高い耐久性等を発揮することができる。
【0050】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0051】
例えば、実施例の電動圧縮機では、圧縮機構1として、スクロール型圧縮機構を採用したが、本発明では、ベーン型圧縮機構、斜板式圧縮機構等、他の形式の圧縮機構を採用することも可能である。
【0052】
また、実施例の電動圧縮機では、インバータ側コネクタ23がインバータボックス15の前部ケース17に固定されているが、インバータ側コネクタ23は、インバータボックス15の後部ケース19やモータハウジング13に固定されてもよい。
【0053】
また、実施例の電動圧縮機では、ハーメチックケース31をハウジング7の一部としたが、インバータ側コネクタ23の一部としてもよい。
【0054】
また、実施例の圧縮機では、第1導体27cと第1導電端子51aとがはんだ付けされているが、代わりに溶接や圧着によって接続されていてもよい。同様に、第2導体27fと第2導電端子51bとがはんだ付けされているが、代わりに溶接や圧着によって接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…圧縮機構
3…モータ機構
5…インバータ
7…ハウジング
23…インバータ側コネクタ
25…電源側コネクタ
27、27a、27b…ケーブル(27a…プラス側ケーブル、27b…マイナス側ケーブル)
9…ハーネス(給電用ハーネス)
33…蓋体(キャップ)
35…外側シール部材(外側グロメット)
37…内側シール部材(内側グロメット)
33a…嵌合部
33d、33e…規制部(33d…第1規制孔、33e…第2規制孔)
53…ブラケット
55…クランプ
図1
図2
図3
図4
図5