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特許7513969塗膜端部の評価方法、および、塗膜端部の評価装置
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  • 特許-塗膜端部の評価方法、および、塗膜端部の評価装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】塗膜端部の評価方法、および、塗膜端部の評価装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20240703BHJP
   B05B 15/00 20180101ALI20240703BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240703BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05B15/00
G06T7/00 610Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020082414
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176615
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)2019年度 公益社団法人精密工学会 九州支部・中国四国支部共催「佐世保地方講演会」「第20回学生研究発表会」講演論文集 第190頁、令和1年12月14日発行 (2)2019年度精密工学会九州支部・中国四国支部共催「第20回学生研究発表会」、令和1年12月14日開催 (3)一般社団法人 日本機械学会 九州支部 九州学生会 「第51回学生員卒業研究発表講演会」講演論文集、令和2年3月6日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 悠人
(72)【発明者】
【氏名】黒河 周平
(72)【発明者】
【氏名】宮地 計二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幹大
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-100879(JP,A)
【文献】国際公開第2007/094439(WO,A1)
【文献】特開2001-050866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05B1/00-17/08
G06T7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に塗布液を付着させて形成された塗膜の端部の状態を評価する塗膜端部の評価方法であって、
前記塗膜の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程により得られた前記画像を画像処理して、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のラインに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成工程と、
前記ラインプロファイルに基づいて、前記塗膜が形成されている成膜領域と、前記塗膜が形成されていない非成膜領域と、前記成膜領域と前記非成膜領域との間の境界領域とを決定する領域決定工程と、を含み、
前記プロファイル生成工程では、
前記ラインプロファイルは、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のライン上に並んでいる各画素について、各画素の成膜方向と直交する方向における位置を横軸に、各画素の輝度値を縦軸に取ったグラフで表されるものであり、前記ラインを成膜方向に複数取得し、その複数のラインのそれぞれについて前記ラインプロファイルを生成し、これら複数の前記ラインプロファイルにおいて前記直交する方向における位置が一致する画素の輝度値の平均値を求めることで、平均化されたラインプロファイルを生成し、
前記領域決定工程では、
前記平均化されたラインプロファイルにおいて、前記輝度値が所定値以下の領域を前記成膜領域とし、前記輝度値が所定値以上の領域を前記非成膜領域とし、両者の中間領域を前記境界領域として決定し、
前記境界領域の幅と前記成膜領域の両側の前記境界領域の幅の差に基づいて、前記塗膜の端部の状態を評価する、塗膜端部の評価方法。
【請求項2】
前記領域決定工程では、
前記平均化されたラインプロファイルにおいて、前記輝度値の最大値を100%、最小値を0%としたときに、前記輝度値が10%以下の領域を前記成膜領域とし、前記輝度値が90%以上の領域を前記非成膜領域とし、両者の中間領域を前記境界領域として決定する、請求項1に記載の塗膜端部の評価方法。
【請求項3】
基材上に塗布液を付着させて形成された塗膜の端部の状態を評価するための塗膜端部の評価装置であって、
前記塗膜の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により得られた前記画像を画像処理して、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のラインに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成部と、
前記ラインプロファイルに基づいて、前記塗膜が形成されている成膜領域と、前記塗膜が形成されていない非成膜領域と、前記成膜領域と前記非成膜領域との間の境界領域とを決定する領域決定部と、を備え
前記プロファイル生成部では、
前記ラインプロファイルは、前記ライン上に並んでいる画素の輝度値の変化を、各画素の成膜方向と直交する方向における位置を横軸に、輝度を縦軸に取ったグラフで表されるものであるとともに、前記ラインは成膜方向に複数並んでおり、その複数のラインのそれぞれについて前記ラインプロファイルを生成し、これら複数の前記ラインプロファイルにおいて前記直交する方向における位置が一致する画素の輝度値の平均値を求めることで、平均化されたラインプロファイルが生成され、
前記領域決定部では、
前記平均化されたラインプロファイルにおいて、前記輝度値の最大値を100%、最小値を0%としたときに、前記輝度値が10%以下の領域を前記成膜領域とし、前記輝度値が90%以上の領域を前記非成膜領域とし、両者の中間領域を前記境界領域として決定し、
前記境界領域の幅と前記成膜領域の両側の前記境界領域の幅の差に基づいて、前記塗膜の端部の状態を評価する、塗膜端部の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、塗膜端部の評価方法、および、塗膜端部の評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に塗布液を塗布して塗膜を形成させる技術は、様々な分野で利用されている。形成された塗膜の品質評価は、従来、複数の評価者の目視による官能評価によって行われることが一般的であった。しかし、このような官能評価は、評価者による評価基準や判断のばらつき等により、客観性および普遍性に欠ける。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、撮像装置によって評価対象の塗膜からの反射光を撮像した画像を取得し、取得した画像を複数の領域に区分して各領域の明度を求め、近傍にある領域間の明度差に基づいて塗装ムラを評価する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-7953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、塗膜を形成する際には、一般に、基材の表面において塗布液が付着してはいけない部分をマスキング材によって覆った上で、塗布液を塗布する。このため、マスキング材を塗布前に基材に貼り付け、塗布後に剥がす工程が必要となっており、手間とコストがかかっていた。このような手間とコストを削減するために、マスキングなしで塗装を行えるようにしたいという要望がある。このためには、形成された塗膜の端部がくっきりとした直線状となるような成膜方法を開発する必要があり、塗膜端部の状態を客観的に評価することが重要となってくる。しかし、このような評価を行う技術は未だ確立されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される塗膜端部の評価方法は、基材上に塗布液を付着させて形成された塗膜の端部の状態を評価する方法であって、前記塗膜の画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により得られた前記画像を画像処理して、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のラインに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成工程と、前記ラインプロファイルに基づいて、前記塗膜が形成されている成膜領域と、前記塗膜が形成されていない非成膜領域と、前記成膜領域と前記非成膜領域との間の境界領域とを決定する領域決定工程と、を含む。
【0007】
また、本明細書によって開示される塗膜端部の評価装置は、基材上に塗布液を付着させて形成された塗膜の端部の状態を評価するための装置であって、前記塗膜の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により得られた前記画像を画像処理して、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のラインに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成部と、前記ラインプロファイルに基づいて、前記塗膜が形成されている成膜領域と、前記塗膜が形成されていない非成膜領域と、前記成膜領域と前記非成膜領域との間の境界領域とを決定する領域決定部と、を備える。
【0008】
上記の構成によれば、境界領域の幅や片寄りなどの塗膜の端部の状態を定量化(数値化)することができ、塗膜の端部の状態を客観的に評価することができる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書によって開示される塗膜端部の評価方法、および、塗膜端部の評価装置によれば、塗膜の端部の状態を定量化(数値化)することができ、塗膜の端部の状態を客観的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態の評価装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の塗装装置の概略側面図である。
図3図3は、実施形態における評価装置の動作態様を説明するフローチャートである。
図4図4は、実施形態における塗膜の顕微鏡画像である。
図5図5は、実施形態において、平均化されたラインプロファイルを示すグラフである。
図6図6は、平均化されたラインプロファイルについて決定された成膜領域、非成膜領域、および境界領域を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態の概要]
本明細書によって開示される塗膜端部の評価方法は、基材上に塗布液を付着させて形成された塗膜の端部の状態を評価する方法であって、前記塗膜の画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により得られた前記画像を画像処理して、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のラインに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成工程と、前記ラインプロファイルに基づいて、前記塗膜が形成されている成膜領域と、前記塗膜が形成されていない非成膜領域と、前記成膜領域と前記非成膜領域との間の境界領域とを決定する領域決定工程と、を含む。
【0012】
また、本明細書によって開示される塗膜端部の評価装置は、基材上に塗布液を付着させて形成された塗膜の端部の状態を評価するための装置であって、前記塗膜の画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により得られた前記画像を画像処理して、前記塗膜の成膜方向と直交する方向のラインに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成部と、前記ラインプロファイルに基づいて、前記塗膜が形成されている成膜領域と、前記塗膜が形成されていない非成膜領域と、前記成膜領域と前記非成膜領域との間の境界領域とを決定する領域決定部と、を備える。
【0013】
上記の構成によれば、境界領域の幅や片寄りなどの塗膜の端部の状態を定量化(数値化)することができ、塗膜の端部の状態を客観的に評価することができる。
【0014】
上記の構成において、前記塗膜が、スプレー法によって成膜された塗膜であっても構わない。
【0015】
スプレー法によって塗膜を形成する場合、塗布液の飛び散りによって、成膜領域と非成膜領域との間に、塗布液が不均一に付着した境界領域が比較的広く形成されがちである。このような場合に、上記の評価方法および評価装置を用いて、塗膜の端部の評価を定量的に評価することが好適である。
【0016】
<実施形態>
実施形態を、図1から図6を参照しつつ説明する。
【0017】
(塗膜端部の評価装置10の全体構成)
本実施形態の塗膜端部の評価装置10(以下、「評価装置10」と略記する)は、共焦点レーザ走査型顕微鏡であって、図1に示すように、レーザ光を射出する光源装置11と、光源装置11から射出されたレーザ光を試料に照射する照明光学系12と、試料からの反射光を検出する検出光学系13と、検出光学系13により取得された信号を処理する処理装置14とを備えた一般的な構成を有している。照明光学系12は、光源装置11から射出されたレーザ光を2次元的に走査させる2軸ガルバノスキャナ( 以下、「スキャナ」と略記する)を備えている。
【0018】
処理装置14は、例えば、パーソナルコンピュータであって、制御部15と、演算部16とを備えている。制御部15は、光源装置11、照明光学系12、および検出光学系13の動作を制御する。演算部16は、画像取得部17と、プロファイル生成部18と、領域決定部19とを備えている。画像取得部17は、スキャナから送られてくるレーザ光の走査位置と、その走査位置からの反射光が検出されたときに検出光学系13から送られてくる信号とを対応づけて記憶することにより、2次元的な画像を生成するようになっている。プロファイル生成部18は、得られた画像上に設定されたラインLについてのラインプロファイルを生成する。領域決定部19は、生成されたラインプロファイルに基づいて、塗膜21が形成されている成膜領域22と、塗膜21が形成されていない非成膜領域23と、成膜領域22と非成膜領域23との間の境界領域24とを決定する。
【0019】
(成膜方法)
次に、評価対象となる塗膜21の成膜方法について説明する。成膜に用いられる塗装装置30は、静電塗装法によって基材20の表面に塗膜21を形成するための装置であって、図2に示すように、成膜室31の内部に設置された噴霧ノズル32およびステージ33と、噴霧ノズル32に接続された液供給部35および電圧印加部38を備えている。
【0020】
ステージ33は、成膜室31の内部に水平に設置された金属製の台である。ステージ33にはアース線34が接続されており、このアース線34によってステージ33が接地されている。
【0021】
噴霧ノズル32は、静電塗装による塗布液39の噴霧に用いられるノズルであり、成膜室31の内部に、噴霧口をステージ33に向けて設置されている。本実施形態では、噴霧ノズル32として静電霧化式のノズルが使用される。噴霧ノズル32は、駆動装置によって、水平方向に走査されるようになっている。噴霧ノズル32は、内部に、内部電極を備えている。
【0022】
液供給部35は、内部に塗布液39が貯留された貯留容器36と、この貯留容器36と噴霧ノズル32とを接続する送液管37とを備えている。液供給部35に貯留されている塗布液39は、ポンプによって、設定された流量で噴霧ノズル32に送液される。
【0023】
電圧印加部38は、噴霧ノズル32の内部電極に所定の電圧を印加する装置である。噴霧ノズル32に送液された塗布液39は、内部電極に電圧が印加されることで帯電して霧化され、噴霧ノズル32の先端から噴霧される。
【0024】
次に、上記の塗装装置30を用いて、基材20に塗膜21を形成する手順について説明する。
【0025】
まず、ステージ33上に基材20がセットされる。次に、噴霧ノズル32が所定の成膜方向(Y軸方向:図2および図4の矢印方向)に走査され、塗布液39が基材20に噴霧される。噴霧後の基材20は必要に応じて乾燥、硬化などの工程に供される。このようにして、基材20の表面に塗膜21が形成された試料が得られる。なお、基材20と塗布液39との組み合わせは、形成される塗膜21と、塗膜21が形成されずに基材20が露出している部分とのコントラストが十分に大きくなるように選択されることが好ましい。
【0026】
(評価装置10の動作態様)
上記の塗装装置30によって成膜された塗膜21について、上記の評価装置10を用いて評価を行う処理について、図3から図6を参照しつつ説明する。
【0027】
まず、処理装置14の制御部15が、光源装置11および照明光学系12を制御して、レーザ光を、試料に対して二次元走査しつつ照射する。試料からの反射光は、検出光学系13によって検出され、画像取得部17に送られる。画像取得部17は、照明光学系12のスキャナから送られてくるレーザ光の走査位置と、その走査位置からの反射光が検出されたときに検出光学系13から送られてくる信号とを対応づけて記憶することにより、2次元的な画像を生成する(ステップS1:画像取得工程)。
【0028】
次に、プロファイル生成部18は、得られた画像上に、成膜方向と直交方向に延びる直線状のラインLを設定し、このラインLについての、輝度値のラインプロファイルを生成する(ステップS2:プロファイル生成工程)。ここで、ラインプロファイルとは、ラインL上に並んでいる画素の輝度値(検出光学系13からの出力値)の変化を、各画素の成膜方向と直交方向における位置(図4のX軸方向の位置)を横軸に、輝度を縦軸に取ったグラフで表したものである。本実施形態では、複数のラインL1、L2…Lnについてそれぞれラインプロファイルを生成し、これら複数のラインプロファイルを平均化することによって、平均化されたラインプロファイルを得る。より具体的には、複数のラインプロファイルについて、X軸方向の位置(X座標値)が一致する画素の輝度値の平均値を求めて、平均化されたラインプロファイル(図5参照)を描く。これにより、ノイズの影響を低減することができる。なお、本明細書では、複数のラインを区別する場合には、ラインの符号に添え字1、2、3…nを付し、区別せずに総称する場合には、符号に添え字を付さないものとする。
【0029】
次に、平均化されたラインプロファイルについて、あらかじめ設定された条件に従って成膜領域22、非成膜領域23、境界領域24を決定する(ステップS3:領域決定工程)。成膜領域22は、成膜品質上許容可能な程度に均一な塗膜21が形成されている領域である。非成膜領域23は、基材20上に塗布液39がほとんどまたは全く付着しておらず、塗膜21が形成されていない領域である。境界領域24は、塗布液39が不均一に付着し、成膜品質上許容可能な程度に均一な塗膜21が形成されていない領域であって、成膜領域22と非成膜領域23との間に存在している。本実施形態では、平均化されたラインプロファイルにおいて、輝度値の最大値を100%、最小値を0%と設定したときに、10%以下の領域を成膜領域22、90%以上の領域を非成膜領域23とし、両者の中間領域を境界領域24とした例を示している(図6参照)。これにより、境界領域24の幅や片寄りなどの塗膜端部の状態を定量化(数値化)し、客観的に評価することができる。例えば、境界領域24の幅が狭く、成膜領域22の両側の境界領域24の幅の差が小さければ、より良好に成膜ができていると判断できる。また、異なる成膜条件で形成された複数の塗膜について、境界領域の幅や片寄りを比較することで、よりよい成膜条件を判定することができる。
【0030】
(作用効果)
以上のように本実施形態の塗膜端部の評価方法は、基材20上に塗布液39を付着させて形成された塗膜21の端部の状態を評価する方法であって、塗膜21の画像を取得する画像取得工程と、画像取得工程により得られた画像を画像処理して、塗膜21の成膜方向と直交する方向のラインLに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成工程と、ラインプロファイルに基づいて、塗膜21が形成されている成膜領域22と、塗膜21が形成されていない非成膜領域23と、成膜領域22と非成膜領域23との間の境界領域24とを決定する領域決定工程と、を含む。
【0031】
また、本実施形態の塗膜端部の評価装置10は、基材20上に塗布液39を付着させて形成された塗膜21の端部の状態を評価するための装置であって、塗膜21の画像を取得する画像取得部17と、画像取得部17により得られた画像を画像処理して、塗膜21の成膜方向と直交する方向のラインLに沿った輝度の分布を表すラインプロファイルを生成するプロファイル生成部18と、ラインプロファイルに基づいて、塗膜21が形成されている成膜領域22と、塗膜21が形成されていない非成膜領域23と、成膜領域22と非成膜領域23との間の境界領域24とを決定する領域決定部19と、を備える。
【0032】
上記の構成によれば、境界領域24の幅や片寄りなどの塗膜21の端部の状態を定量化(数値化)することができ、塗膜21の端部の状態を客観的に評価することができる。
【0033】
また、塗膜21が、スプレー法によって成膜されたものである。スプレー法によって塗膜21を形成する場合、塗布液39の飛び散りによって、成膜領域22と非成膜領域23との間に、塗布液39が不均一に付着した境界領域24が比較的広く形成されがちである。このような場合に、上記の評価方法および評価装置10を用いて、塗膜21の端部の評価を定量的に評価することが好適である。
【0034】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、評価装置10として共焦点レーザ走査型顕微鏡を用いたが、評価装置として共焦点レーザ走査型顕微鏡以外の装置を用いることもできる。
(2)上記実施形態では、静電塗装法によって成膜された塗膜21を評価対象としたが、静電塗装法以外の成膜方法によって成膜された塗膜を評価対象としても構わない。
(3)ラインプロファイルを平均化する手法については、上記実施形態に記載された手法に限らず、公知の方法を適用することができる。また、平均化処理を行っていないラインプロファイルを用いて、成膜領域、非成膜領域、および境界領域を決定しても構わない。
【符号の説明】
【0035】
10…塗膜端部の評価装置
15…画像取得部
16…プロファイル生成部
17…領域決定部
20…基材
21…塗膜
22…成膜領域
23…非成膜領域
24…境界領域
39…塗布液
L…ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6