(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】雲影の挙動予測システム、発電量予測システム、環境モニタリングシステムおよびこれらに使用する観測装置
(51)【国際特許分類】
G01W 1/12 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
G01W1/12 G
(21)【出願番号】P 2020133338
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504243095
【氏名又は名称】株式会社エイム
(73)【特許権者】
【識別番号】397060072
【氏名又は名称】スカパーJSAT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】針谷 達
(72)【発明者】
【氏名】竹内 悠人
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏規
(72)【発明者】
【氏名】爪 光男
(72)【発明者】
【氏名】日▲び▼ 勉
(72)【発明者】
【氏名】真木 志郎
(72)【発明者】
【氏名】平塚 元久
(72)【発明者】
【氏名】小渕 浩希
(72)【発明者】
【氏名】花田 行弥
(72)【発明者】
【氏名】根本 和哉
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-250129(JP,A)
【文献】特開2019-086317(JP,A)
【文献】特開2015-069973(JP,A)
【文献】特開2019-015517(JP,A)
【文献】特開2008-298620(JP,A)
【文献】特開2015-059821(JP,A)
【文献】特開2013-165176(JP,A)
【文献】特開2007-184354(JP,A)
【文献】特許第6213645(JP,B1)
【文献】藤森 祥文 他,多地点太陽光パネルを用いた日射量の空間分布と全天カメラ雲分布の関係,土木学会論文集B1,2017年,Vol.73,No.4,pp.I_475-I_480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00~1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雲影による日射強度の低下を予測すべき対象地域において、該対象地域内の特定地点に対する雲影の挙動を予測するシステムであって、
前記対象地域について、1km以上の間隔を有して日射強度の測定地点を分散配置して構築された日射測定網と、
前記日射測定網の測定地点ごと
に設置され、日射計によって構成される日射センサと、
前記日射センサとともに、または該日射センサとは異なる地点に設置され、
その地点における空の
直上画像を取得する空画像取得手段と、
前記測定地点ごとに各日射センサによって測定される日射強度の差違に基づき、該測定地点ごとの日射の状態を導出する日射状態導出手段と、
前記空画像取得手段によって取得される空の
直上画像
に撮影される二種類の物体の境界の変化により、該
直上画像中に存在する雲の移動方向
のみを解析する解析手段と、
前記解析手段によって解析される雲の移動方向、および、前記日射状態導出手段によって導出される2以上の測定地点に係る日射の状態に基づき、雲影の影響を受ける領域の変化を予測情報として作成する予測情報作成手段と
を備え、
前記予測情報作成手段は、前記日射状態導出手段により導出される測定地点ごとの日射の状態に基づき、日射強度が変化した2以上の測定地点を抽出し、前記解析手段によって解析された雲の移動方向と抽出された前記2以上の測定地点の相互間の距離とに基づいて、雲の移動方向に一致する距離に換算したうえで雲影の移動速度を算出するものである
ことを特徴とする雲影の挙動予測システム。
【請求項2】
前記日射測定網は、前記対象地域を平面視により、前記特定地点を中心とする格子状としたものであり、前記格子状の各交点を1km以上の間隔を有する前記測定地点として構築されたものである請求項1に記載の雲影の挙動予測システム。
【請求項3】
前記予測情報作成手段は、さらに、前記日射状態導出手段により導出される測定地点ごとの日射の状態に基づき、日射強度が低下した測定地点を抽出し、抽出された測定地点の範囲を特定することにより、雲影の広さを算出するものである請求項
1または2に記載の雲影の挙動予測システム。
【請求項4】
前記予測情報作成手段は、さらに、前記日射状態導出手段により導出される測定地点ごとの日射の状態に基づき、日射強度が低下した複数の測定地点を抽出し、日射強度の低下の割合に基づいて、雲影による日射の影響の程度を算出する請求項
1~3のいずれかに記載の雲影の挙動予測システム。
【請求項5】
前記日射測定網は、
前記対象地域を平面視により、略円格子状、略四角格子状、略三角格子状および略幾何学形格子状の中から選択される形状または2以上を組み合わせてなる形状としたもの
である請求項1~4のいずれかに記載の雲影の挙動予測システム。
【請求項6】
前記日射センサもしくは前記空画像取得手段またはその双方は、短時間駆動電源、送信手段、データ保存手段、位置情報取得手段および方位検出手段から選択される1または2以上をさらに備える請求項1~5のいずれかに記載の雲影の挙動予測システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の雲影の挙動予測システムを利用する太陽光発電装置設置地点における発電量予測システムであって、
前記特定地点を前記太陽光発電装置設置地点とするものであり、
前記予測情報作成手段は、さらに、前記日射センサにより測定される日射強度から算出される太陽光発電による発電量を換算するものであって、太陽光発電装置が設置される地点における雲影の影響の有無を判定するとともに、雲影の影響を受ける場合の時間帯および該時間帯における発電量を演算するものである
ことを特徴とする太陽光発電装置設置地点における発電量予測システム。
【請求項8】
請求項1~6に記載の雲影の挙動予測システムを利用する環境モニタリングシステムであって、
前記測定地点ごとに、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、風向センサ、風速センサ、感雨センサ、雨量センサ、積雪センサ、吹雪センサ、水位センサ、音センサ、光センサ、視程センサ、煙センサ、炎センサ、振動センサ、微粒子センサ、光量子センサ、分光光量子センサ、一酸化炭素量センサ、二酸化炭素センサおよび窒素酸化物センサの中から選択される1以上の環境センサと、
前記環境センサによって測定される測定値に対する1または複数の閾値を基準とする屋外環境レベルを、その良否または複数の段階評価として判定する判定手段とを備えることを特徴する環境モニタリングシステム。
【請求項9】
さらに、前記測定地点ごとに、下向き画像取得手段もしくは横向き画像取得手段のいずれか一方またはその双方を備えている請求項8に記載の環境モニタリングシステム。
【請求項10】
さらに、前記環境センサは、
商用電源の通電状態を検知する通電状態
検知センサを含むものであり、
前記判定手段は、前記通電
状態検知センサによる
商用電源の通電状態の有無に基づき、屋外環境レベルを判定するものである請求項8または9に記載の環境モニタリングシステム。
【請求項11】
さらに、前記環境センサよる測定値、および、前記判定手段による屋外環境レベルを判定した判定結果を、それぞれ関連づけつつ累積的に記憶する記憶手段と、
前記環境センサによる測定値の変化と前記記憶手段に記憶される屋外環境レベルを判定したときの判定結果に至る測定値の変化とを比較する比較手段と、
屋外環境の悪化を報知する報知手段とを備え、
前記判定手段は、前記比較手段による比較の結果が前記記憶手段に記憶される屋外環境レベルの低下を判定したときの測定値の変化の傾向と一致するとき、前記報知手段に報知信号を出力するものである請求項8~10のいずれかに記載の環境モニタリングシステム。
【請求項12】
前記判定手段は、前記比較手段による比較の結果が、前記記憶手段に記憶される環境センサによる測定値の平均的な値との間に閾値を超える範囲で相違するとき、前記報知手段に報知信号を出力するものである請求項11に記載の環境モニタリングシステム。
【請求項13】
請求項1~6のいずれかに記載の雲影の挙動予測システム、請求項7に記載の発電量予測システム、または請求項8~12のいずれかに記載の環境モニタリングシステムに使用する観測装置であって、
前記日射センサおよび前記空画像取得手段を保持する保持部を備え、該保持部には、前記日射センサおよび前記空画像取得手段が設置できる適宜範囲の設置領域が形成されており、該設置領域には、複数の日射センサが相互に適宜間隔を有して設けられるとともに、前記空画像取得手段が該日射センサのそれぞれから適宜間隔を有して設けられていることを特徴とする観測装置。
【請求項14】
前記保持部は、中央付近に空画像取得手段が設けられ、該空画像取得手段の周辺において該空画像取得手段によって日射が遮られない位置および高さに受光面を有する状態で複数の日射センサが配置されているものである請求項13に記載の観測装置。
【請求項15】
さらに、前記設置領域の全体または一部について水平を確認するための機器、方位を確認するための機器、位置情報を取得するための機器
および時刻を確認するための機
器の中から任意に選択される1以上の機器を備えている請求項13または14に記載の観測装置。
【請求項16】
前記保持部は、支持部によって適宜状態に支持されるものであり、
前記保持部もしくは前記支持部のいずれか一方または双方は、内部に空間部を有して構成され、該空間部に前記機器の全部または一部が内蔵されるものである請求項15に記載の観測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雲影の挙動予測システムに関し、さらに当該システムを利用した太陽光発電装置設置地点における発電量予測システムと、環境モニタリングシステムに関し、さらにこれらのシステムに使用する観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雲影の挙動予測は、日射量を予測することによって太陽光発電所等における発電量等の予測に利用されることがある。そこで、360度全方位カメラで撮影された全天の画像情報から雲の分布と動きを検出し、これらに基づいて撮影時以後の雲の分布を予測することが提案されていた(特許文献1参照)。ところが、前記のような画像による予測の場合には、雲の分布状態を予測し得るものであるが、日射量の予測には不十分であった。すなわち、雲の物理的性質は様々であり、また、雲による光の散乱に伴う日射量への影響について配慮さていなかったものであった。そこで、気象観測衛星または気象レーダによって把握される雲塊の画像情報に加えて、天空を撮影した画像データを参照し、雲塊の移動方向を予測するとともに、測定地点で計測される日射量に基づいて、当該雲塊による日射量の変化を予測する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-184354号公報
【文献】特開2015-059821号公報
【文献】特開2019-086317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献2に開示される技術は、天空を撮影する地点を測定地点として日射量を計測するとともに、当該測定地点での日射量に基づいて雲塊が日射に与える影響度を算出するものである。しかしながら、少ない観測点での日射量の測定結果に基づく日射量予測には誤差を生じさせやすく、想定される地域の日射量予測の精度が不十分とならざるを得なかった。
【0005】
そこで、本願の出願人らは、屋外設置型でありながら汚損等による計測結果の精度低下を防止する日射計を開発するとともに、この日射計によって雲影センサを構築し、雲影の挙動を予測できるシステムを開発するに至った(特許文献3)。ところが、日射計による雲影センサに基づく雲影挙動の予測精度は、日射計の数に依存することとなるため、多くに測定地点を設定する必要があり、また、各測定地点に複数の日射計を配置することから、使用される日射計の数が膨大なものとなっていた。その結果として、日射量の予測のために多額の費用が必要となり、システムの普及を阻害することとなっていた。
【0006】
なお、上記各従来技術は、専ら日射量の予測のために雲影挙動を予測するものであるが、近時の不安定な気象環境に伴う集中豪雨その他の異常気象の状態をモニタリングし得るものではなかった。そのため観測地点を多く設定しながら、日射量のみの測定または予測に使用するのみであったため、これらの資源が有効に利用されていないものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、雲影挙動の予測に使用される日射計の数を少なくしつつ正確な日射量の予測を可能とするとともに、太陽光発電による発電量を予測し得るシステムを提供し、さらに他の要素とともに環境モニタリングシステムをも提供すること、および上記各システムに使用するための観測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、雲影の挙動予測システムに係る本発明は、適宜間隔を有して日射強度の測定地点を分散配置して構築された日射測定網と、前記日射測定網の測定地点ごと設置され、日射計によって構成される日射センサと、前記日射センサとともに、または該日射センサとは異なる地点に設置され、空の画像を取得する空画像取得手段と、前記測定地点ごとに各日射センサによって測定される日射強度の差違に基づき、該測定地点ごとの日射の状態を導出する日射状態導出手段と、前記空画像取得手段によって取得される空の画像の変化により、該画像中に存在する雲の移動方向を解析する解析手段と、前記解析手段によって解析される雲の移動方向、および、前記日射状態導出手段によって導出される2以上の測定地点に係る日射の状態に基づき、雲影の影響を受ける領域の変化を予測情報として作成する予測情報作成手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記構成の発明によれば、空画像取得手段により取得される画像情報から雲の移動方向のみが解析され、現実に雲影の影響による日射量(日射強度)の変化は日射センサによる測定結果に基づくこととなる。日射量(日射強度)の変化は、異なる2以上の測定地点で観測されることにより、雲の移動方法とともに雲の移動の速さ(雲影の影響を受ける領域の移動の速さ)を求めることに利用される。さらに雲(具体的には雲影による影響を受ける領域)の移動の方向および速さが判明すれば、周辺の雲影の影響状態を予測することができる。この場合、雲影の影響を受ける領域の移動状態は、日射センサによって測定される日射強度の変化によって識別されることから、太陽と雲との相対的な位置関係を考慮することなく、雲影に着目した場合のその挙動に関する予測判定を瞬時に行い得る。また、画像情報に基づく解析内容が限定的となるため、取得データおよび解析データの量を僅少なものとすることができる。
【0010】
上記の発明において、前記予測情報作成手段は、前記日射状態導出手段により導出される測定地点ごとの日射の状態に基づき、日射強度が変化した2以上の測定地点を抽出し、前記解析手段によって解析された雲の移動方向と抽出された前記2以上の測定地点の相互間の距離とに基づいて、雲影の移動速度を算出するものとすることができる。
【0011】
上記構成の発明の場合には、測定地点における日射の状態から、日射強度が変化する2以上の測定地点を抽出することにより、当該2以上の測定地点の距離と日射強度の変化時間(時刻)から雲の移動速度(雲影の影響を受ける領域の移動速度)が算出されることとなる。なお、抽出される2以上の測定地点の位置関係は、必ずしも雲の移動方向と一致するものではないことから、両者の距離は、雲の移動方向に一致する方向の距離に換算されたうえで移動速度が算出されるものである。なお、抽出すべき2以上の測定地点は、雲の移動方向が解析された直後に日射強度が変化した測定地点と、その周辺において隣り合う測定地点となる。また、雲の移動方向が解析された直後において、近接しない複数の測定地点の日射強度がほぼ同時に変化する場合は、それら全てを起点とする複数の速度計算を行ったうえで平均的な速度を算出してもよく、最先に変化した測定地点の1点を選択したうえで1つの測定地点を基点とし、その周辺の測定地点との間で距離を算出してもよい。いずれの場合においても、このような移動速度の算出により速やかな雲影挙動の予測が可能となる。
【0012】
上記の各発明において、前記予測情報作成手段は、さらに、前記日射状態導出手段により導出される測定地点ごとの日射の状態に基づき、日射強度が低下した測定地点を抽出し、抽出された測定地点の範囲を特定することにより、雲影の広さを算出するものとして構成することができる。また、前記予測情報作成手段は、さらに、前記日射状態導出手段により導出される測定地点ごとの日射の状態に基づき、日射強度が低下した複数の測定地点を抽出し、日射強度の低下の割合に基づいて、雲影による日射の影響の程度を算出するものとして構成することができる。
【0013】
上記構成の発明の場合には、測定地点における日射強度は、測定地点ごとに日射センサによって計測されるものであることから、日射測定網が構築される予測対象地域の中に日射強度の高い測定地点と低い測定地点とが混在する場合、その両者を区分することが可能となる。そこで、日射強度が低い測定地点は、雲影の影響を受けている範囲であるため、その範囲をもって、雲の大きさ、すなわち雲影の広さとして算出することが可能となる。このように雲影の広さを算出した結果を、雲(雲影)の移動方向と組み合わせることにより、雲影の影響を受ける時間的長さを予測することが可能となる。また、雲影の影響を受ける場合の日射強度の低下の割合(低下率)は、雲の物理的特性等によって異なるものであり、雲影の影響を受けつつ日射強度の低下率が微少な場合もあれば、雲影の影響が大きく作用して日射強度の低下率が著しい場合もある。そこで、日射強度が低下した測定地点の日射強度を参照することにより、雲影による日射の影響(低下率)を算出することができる。このときの測定地点は、1箇所でも可能であるが、複数地点の日射強度を参照することにより平均的な影響(低下率)を得ることができる。なお、日射強度の低下の割合(低下率)は、理論日射を基準値とした場合の割合として算出することができ、雲影による日射の影響の程度は、例えば、太陽光発電装置に関連する場合には、当該日射強度の低下率から発電量の増減に関する影響の程度となり、農業生産地域に関連する場合には、農作物の生育状況に関する影響の程度となり得る。
【0014】
上記の各構成による発明において、前記日射測定網は、雲影の挙動を予測すべき対象地域を平面視により、略円格子状、略四角格子状、略三角格子状または略幾何学形格子状の中から選択される形状または2以上を組み合わせてなる形状としたものであり、前記測定地点は、前記日射測定網を形成するいずれかの格子状の交点としたものとすることができる。このような構成の場合には、日射測定網は、例えば、太陽光発電装置における発電量観測のために設けられる場合には、当該太陽光発電装置を中心に、略同心円状を形成させつつ格子状とする略円格子として日射測定網を構築してもよい。また、一般的な格子状とされる四角格子状を基準に構築される略四角格子状としてもよいが、三角形を複数組み合わせ、または三角形と他の多角形を組み合わせた形状や、亀甲格子状などを基準に構築される略幾何学形状の格子状として日射測定網を構築することもできることから、予測対象地域の地理的形状に応じて適宜選択することができるものとなる。なお、特定形状の格子状を略としていることは、特定形状の格子状を基準に構築されていることを意味するものであり、地形の起伏または建築物等の存在により、日射測定網を正確な形状の格子状に構築することができないためである。
【0015】
上記各構成の発明において、前記日射センサもしくは前記空画像取得手段またはその双方は、短時間駆動電源、送信手段、データ保存手段、位置情報取得手段および方位検出手段から選択される1または2以上をさらに備えるものとすることができる。
【0016】
このような構成においては、第1に、電源として商用電源を使用することもできるが、停電時における短時間駆動電源により停電情報を送信させることができる。短時間駆動電源としては、二次電池、キャパシタ、電気二重層キャパシタなどがある。第2に、有線による伝送のほかに、送信手段を備えることにより無線送信を可能とする。第3に、データ保存手段を備えることにより、測定地点における取得データを保存させることができる。保存手段としては、データロガのほか、圧縮機能を有する記憶装置などがある。第4に、位置情報取得手段および方位情報取得手段を備えることにより、測定情報と関連付けてデータ解析に使用できる。位置情報取得手段としては、GPS受信機を使用することができ、水準器または高度計などを同時に備えることにより、地形を含めた詳細な位置情報をえることができる。また、方位情報取得手段としては、電子コンパスなどを使用することができる。なお、これらのほかに位置情報または方位情報の補正機能や時計機能などを備える構成であってもよい。
【0017】
太陽光発電装置設置地点における発電量予測システムに係る本発明は、上記に示すいずれかの構成による雲影の挙動予測システムを利用するものであって、前記予測情報作成手段は、さらに、前記日射センサにより測定される日射強度から算出される太陽光発電による発電量を換算するものであって、太陽光発電装置が設置される地点における雲影の影響の有無を判定するとともに、雲影の影響を受ける場合の時間帯および該時間帯における発電量を演算するものであることを特徴とする。
【0018】
上記構成の太陽光発電装置設置地点における発電量予測システムに係る発明によれば、雲影の挙動予測システムに基づいて雲影の挙動が予測されたうえ、日射センサによって、日射強度の変化が検出することに加えて、変化の前後における日射強度が検出されていることから、雲影の影響による具体的な日射強度の状態、特に低下後の日射強度の状態を取得することができる。そして、当該センサの情報に基づき、雲影の影響を受けない場合の日射強度に基づく太陽光発電装置による発電量を予測できることはもちろんのこと、雲影の影響を受ける場合には、日射強度の低下の程度とともに、雲の大きさ(雲影の影響を受ける範囲)などが算出されることにより、雲影の影響を受ける時間の算定をも可能にし得ることとなる。これにより、太陽光発電装置の設置地点に対する日射状況の予測が可能となり、発電量を推定することも可能となる。なお、太陽光発電装置による発電量は、当該太陽光発電装置の効率などを予め取得することにより、日射強度から換算させるものであり、この換算された発電量に基づいて発電能力(発電時間等)を予測情報作成手段により演算可能となる。
【0019】
他方、環境モニタリングシステムに係る本発明は、上記に示すいずれかの構成による雲影の挙動予測システムを利用するものであって、前記測定地点ごとに、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、風向センサ、風速センサ、感雨センサ、雨量センサ、積雪センサ、吹雪センサ、水位センサ、音センサ、光センサ、視程センサ、煙センサ、炎センサ、振動センサ、微粒子センサ、光量子センサ、分光光量子センサ、一酸化炭素量センサ、二酸化炭素センサおよび窒素酸化物センサの中から選択される1以上の環境センサと、前記環境センサによって測定される測定値に対する1または複数の閾値を基準とする屋外環境レベルを、その良否または複数の段階評価として判定する判定手段とを備えることを特徴する。
【0020】
上記の発明によれば、日射センサを単位として、温度、湿度その他の環境に関するデータを取得することができ、これを総合して環境データとしてモニタリングすることができる。環境のモニタリングとは、雲影の挙動に伴う各種の気象上の変化を観測することを意味するほか、屋外環境を観測する意味を含むものであり、温度および湿度は気象の変化を知るうえで重要な要素であり、気圧は台風などの大型かつ急速な天候変化を知る要素となり、風向および風速は、気象の変化に伴う天候悪化の大きさを知る要素となり得る。また、悪化した気象条件を直接的に取得するため、感雨センサ、雨量センサ、積雪センサ、吹雪センサまたは水位センサにより取得してもよい。また、音および光は落雷等の検出を可能とし、視程センサ、煙センサまたは炎センサなどにより、気象以外の二次的原因による外部環境の状況をデータ化して取得することができ、振動センサまたは微粒子センサにより気象以外の情報として地震やPM値の低い微粒子飛来などの状況を取得できる。光量子センサまたは分光光量子センサを備える場合には、農業分野における植物の育成を予測する場合に有用となる。特に、分光光量子センサによって、特定帯域の波長を有する光の光量子束密度に関する情報を得ることにより、植物の生長過程に応じた光の照射状態を観測し予測し得る。二酸化炭素量は、温室効果ガスの長期間の累積値を得ることができ、一酸化炭素検出器および窒素酸化物検出器は火災などの検出を可能とするものである。なお、上記のセンサを集合させることにより複合気象センサとして具備することも可能であり、現在天気センサとして機能させることも可能である。
【0021】
上記構成の環境モニタリングシステムに係る発明においては、さらに、前記測定地点ごとに、下向き画像取得手段もしくは横向き画像取得手段のいずれか一方またはその双方を備える構成とすることができる。
【0022】
上記構成によれば、下向き画像取得手段により地上観察が可能となり、路面状態の確認等のほか防犯用として機能させることができる。また、横向き画像取得手段により、前記環境センサによる測定結果を補完させることができる。特に、視程センサなどにより視界の程度を測定可能であるが、その状態を目視によっても判定できることとなる。なお、下向き画像とは、各測定地点において環境モニタが設置される位置よりも下方(水平よりも下向き)の画像であり、横向き画像とは、環境モニタが設置される位置から水平方向へ向かった状態の画像を意味する。これらの画像を取得する手段としては、一般的なデジタルカメラのほか、赤外線カメラ、波長分割カメラなどを使用することができ、またカメラにバンドパスフィルタを設置した構成としてもよい。波長分割カメラは植生指標カメラとして機能させることができる。
【0023】
上記構成の発明において、さらに、前記環境センサは、通電状態感知センサを含むものであり、前記判定手段は、前記通電感知センサによる通電状態の有無に基づき、屋外環境レベルを判定するものとすることができる。
【0024】
上記の発明によれば、気象条件に対する間接的な要素である導電状態を検出することができる。これは、気象条件の悪化に伴って停電状態に陥った状態を検知することができる。この停電状態をエリアごとに検出できれば、現地を見聞することなく復旧の手順を策定する手助けとなり得る。なお、この場合のデータ送信のために、短時間駆動電源を備える必要があるが、前述の雲影の挙動予測システムに短時間駆動電源が備えられている場合には、当該電源を兼用してもよい。
【0025】
上記の各発明において、さらに、前記環境センサよる測定値、および、前記判定手段による屋外環境レベルを判定した判定結果を、それぞれ関連づけつつ累積的に記憶する記憶手段と、前記環境センサによる測定値の変化と前記記憶手段に記憶される屋外環境レベルを判定したときの判定結果に至る測定値の変化とを比較する比較手段と、屋外環境の悪化を報知する報知手段とを備え、前記判定手段は、前記比較手段による比較の結果が前記記憶手段に記憶される屋外環境レベルの低下を判定したときの測定値の変化の傾向と一致するとき、前記報知手段に報知信号を出力するものとすることができる。
【0026】
上記構成の発明によれば、適度な期間(例えば複数年)にわたってモニタリングされた場合には、記憶手段には当該モニタリングされた気象状態その他の環境データが記憶されることとなり、現在進行中の気象条件等の変化を記憶データと比較することで、屋外環境レベルの低下を想定することが可能となる。この場合、報知手段により報知されることにより、屋外環境レベルの低下に備えた対応の要否の指針として利用することができる。なお、記憶手段に記憶するモニタリング情報は、過去の情報を予め教師データとして記憶させたものを含めてもよい。
【0027】
さらに、上記の各発明において、前記判定手段は、前記比較手段による比較の結果が、前記記憶手段に記憶される環境センサによる測定値の平均的な値との間に閾値を超える範囲で相違するとき、前記報知手段に報知信号を出力するものとすることができる。
【0028】
上記構成の発明によれば、数年に1度または数十年に1度という稀少頻度に発生する想定外の気象条件等の悪化を報知手段による報知によって知ることも可能となる。ここでの閾値とは、例えば風速の変化の割合、雨量の増加の割合、気圧の変化の割合などが想定される。これらの割合を閾値として、これを超える極端な風速等の変化が生じた場合には、極端な気象条件の悪化を知ることができる。
【0029】
観測装置に係る本発明は、前記各構成の雲影の挙動予測システム、発電量予測システムまたは環境モニタリングシステムに使用する観測装置であって、前記日射センサおよび前記空画像取得手段を保持する保持部を備え、該保持部には、前記日射センサおよび前記空画像取得手段が設置できる適宜範囲の設置領域が形成されており、該設置領域には、複数の日射センサが相互に適宜間隔を有して設けられるとともに、前記空画像取得手段が該日射センサのそれぞれから適宜間隔を有して設けられていることを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、予め保持部の設置領域に相互の適宜間隔を有する状態で複数の日射センサおよび空画像取得手段を設置することができ、当該保持部によって、これらを一体型とする観測装置を構成することができる。このとき、設置領域が平滑な平面または相互に平行な複数の平面で構成される場合、この設置領域を基準として、日射センサの受光面および空画像取得手段の画像取得面の向きを予め調整することにより、当該設置領域を所定の向き(例えば水平状態)に維持させれば、これらの日射センサ等を所定の状態で設置することが可能となる。従って、この観測装置を所定の観測地点において所定の状態で設置することにより、空の画像と日射強度とを同地点かつ同時に計測することができる。すなわち、この観測装置は、日射のみを測定する場合、または空の画像のみを取得する場合に用いられるものではなく、日射強度の測定地点と同じ位置において空の画像を取得する場合に使用することが可能となるものである。
【0031】
上記構成の観測装置に係る発明において、前記保持部は、中央付近に空画像取得手段が設けられ、該空画像取得手段の周辺において該空画像取得手段によって日射が遮られない位置および高さに受光面を有する状態で複数の日射センサが配置されているものとすることができる。
【0032】
上記構成によれば、1または少数のカメラによって構成される空画像取得手段を保持部の中央付近に設け、その周辺に放射状に複数の日射センサを配置することにより、限定的な設置領域に効率よく日射センサ等を配置させることができる。
【0033】
また、上記構成の観測装置に係る発明において、さらに、前記設置領域の全体または一部について水平を確認するための機器、方位を確認するための機器、位置情報を取得するための機器、時刻を確認するための機器および前記環境センサとして機能させるための適宜な機器の中から任意に選択される1以上の機器を備えるものとして構成することができる。
【0034】
上記構成によれば、日射センサおよび空画像取得手段のほかに、環境センサとして機能させる各種の機器を設けることにより環境モニタリングシステムとして使用可能な一体型の観測装置を構成できる。また、環境センサとして機能する機器以外の他の機器を備えることにより、観測装置を設置する際の補助として使用することができる。例えば、水平を確認するための機器は、設置領域の全部または一部が水平状態であることを確認し、空画像取得手段を構成するカメラ等が例えば鉛直方向へ向かって設置されるかどうかを確認するために使用でき、位置情報の検知機器は、測定地点を特定するために使用でき、方位の検知機器は日射センサ等の設置される向きを確認するために使用することができるものである。
【0035】
さらに、上記の各構成による観測装置に係る発明において、前記保持部は、支持部によって適宜状態に支持されるものであり、前記保持部もしくは前記支持部のいずれか一方または双方は、内部に空間部を有して構成され、該空間部に前記機器の全部または一部が内蔵されるように構成することができる。
【0036】
上記構成によれば、保持部は支持部によって支持されることから、当該支持部を使用して観測装置を所定状態に設置することにより、保持部(設置領域)を好適に配置させることができる。このとき、保持部および支持部(特に支持部)は、各種センサ等または機器類を保持するために用いられることから、内部を中空に形成することが可能であり、設置領域に設置する必要ない機器類については、当該空間部に収納させることが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
雲影の挙動予測システムに係る本発明によれば、画像情報と測定値とを相補的に使用することから、複数の日射センサは相互に大きく離れて設置でき、個々の日射センサを構成する日射計の総数を少なくすることができる。空画像取得手段による画像データを使用することにより、雲の移動方向に関する情報を正確に取得できることから、日射計の数は少ないながらも、日射計測の精度、特に雲影の挙動の測定精度を向上させることができる。このような精度のよい測定結果により、予測の精度を担保させることができる。
【0038】
また、太陽光発電装置設置地点における発電量予測システムに係る本発明によれば、日射センサによって、雲影による実際の影響の程度、すなわち実際の日射強度の低下の程度を測定値として得ることができることから、これを太陽光発電による発電量に換算し得ることによって、発電量を高精度に予測することができる。
【0039】
さらに、環境モニタリングシステムに係る本発明によれば、測定地域に分散設置される日射センサの設置地点において、気象等に関する各種のセンサによる観測を行うことができることから、気象条件などの悪化の状況、回復の状況をリアルタイムでモニタリングでき、さらに、モニタリング情報を記憶させることにより、過去のデータとの比較による将来予測も可能となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】雲影の挙動予測システムに係る実施形態の概要を示す説明図である。
【
図2】雲影の挙動予測システムに係る実施形態の構成を示す説明図である。
【
図3】雲の移動方向を検出する実験例を示す説明図である。
【
図4】雲影の移動速度を測定する実験例を示す説明図である。
【
図5】雲影の挙動を予測する実験例を示す説明図である。
【
図6】環境モニタリングシステムに係る実施形態の構成を示す説明図である。
【
図7】光電変換センサを使用した日射センサを示す説明図である。
【
図8】光電変換センサを使用した場合のカバーの形態を示す説明図である。
【
図10】観測装置の使用態様の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
<雲影の挙動予測システム>
雲影の挙動予測システムに係る本発明の実施形態について、
図1に概略を示し、
図2にシステムの構成を示す。なお、
図1(a)は、雲影の挙動を予測すべき地域Aに対する太陽Sによる日射と雲Cによって形成される雲影Csとの関係を示し、
図1(b)は、当該対象地域Aを平面視(上空から見た状態)における日射測定網1、日射センサ2および空画像取得部(空画像取得手段)3を示すものである。
【0042】
図1(a)に示されるように、太陽Sから照射される日光は、雲Cによって遮られることにより雲影となり、日射強度(日射量)が減少することが知られている。そして、雲Cが移動することにより、雲影Csも移動することから、当該雲Cの挙動予測ができれば、雲影Csの挙動も予測できることとなる。
【0043】
ところが、周知のとおり、雲Cは、同じ形状で移動するものではないうえ、単に雲Cといっても様々な物理的性質を有し、その大きさや層厚も異なるため、日射の多くを遮断するもののほかに、日射に影響を与えないものも存在し、さらに、光の散乱を生じさせるものなどがある。そして、一般的には、地上5000m~13000mの高さを移動する上層雲、2000m~7000mの高さを移動する中層雲、2000m未満を移動する下層雲に区別され、上層雲は専ら日射に影響を与えないが、中層雲および下層雲に属する雲には日射を遮断する性質のものが存在する。このように、日射を遮断するような雲によって生じる雲影について挙動を予測することが、日射強度(日射量)の変化を予測するために重要となる。換言すると、単に雲の挙動を予測する場合は、雲の種類が選別されておらず、日射に大きな影響を及ぼす雲影に限定した挙動の予測とはなり得ないこととなる。
【0044】
また、画像処理のみによって雲の挙動を予測しようとする場合、雲の種類を選別すること、特に現実に日射に対する影響がどの程度であるかを判別することが困難である。そのうえ、日射を遮る雲によって雲影が生じる初期と、その後では遮断される日射の程度も異なる場合もある。そのため、雲による日射の遮断の程度、すなわち雲影による日射強度の影響を反映した雲影挙動の予測は極めて困難なものである。他方、日射計などによる日射センサのみによって雲影挙動を予測する場合は、雲影による日射の影響を数十m~百m単位で観測しなければ正確に把握できず、膨大な数の日射センサの設置が必要となっていた。
【0045】
そこで、本実施形態では、
図1(b)に示すように、予め日射強度の測定地点を設定した日射測定網1を構築しておき、当該測定地点に日射センサ2(2Aa~2Ee)を設置する(丸印で示す)ほか、当該測定地点の一部(二重の丸印で示す)に全天球型カメラ(空画像取得手段)3(3Ba~3De)を設置するものとしている。本実施形態では、日射測定網1を四角格子状として構築しており、格子の交点を測定地点として分散配置したものを例示している。
【0046】
なお、図において、上記日射測定網1による測定地点は、25箇所としており、その測定地点に日射センサ2Aa~2Eeを配置した状態を示しているが、この個数は例示であって、計測対象地域の広狭によって増減されることとなる。また、全天球型カメラ3Ba~3Deは、日射センサ群2Aa~2Eeの中から選択される一部と同じ位置に設置しているが、他の基準によって異なる位置に分散配置してもよく、その間隔も適宜変更できるものである。
【0047】
本実施形態では、図中の日射センサ2Aa~2Eeは、図示のような日射測定網1に沿って(四角格子の交点)に配置され、縦横(南北方向および東西方向)に等間隔としており、縦横それぞれに近接する相互の間隔L1を、1km以上を目安として設置することができる。さらに、全天球型カメラ3Ba~3Deの間隔L2は、日射センサ群の間隔L1の整数倍(図は2倍)とすることにより、日射センサ2Aa~2Eeの一部が設置される地点に併せて設けることができる。
【0048】
例えば、日射センサ2Aa~2Eeの間隔L1を2.5kmとすれば、図示のような25個により縦横(南北方向および東西方向に)それぞれ10kmにおける観測が可能となり、雲影挙動の測定範囲を拡大させる場合は、縦横方向(南北方向および東西方向)に増設すれば良いものである。また、全天球型カメラ3Ba~3Deの間隔L2を日射センサ2Aa~2Eeの間隔L2の2倍とする場合には、当該間隔L2を5kmとして設置することができる。なお、全天球型カメラ3Ba~3Deの間隔L2が5kmの場合は、近いとの評価もあり得るが、近隣の建物などの建造物や看板・標識等の構築物が存在する地域での画像取得には適当な間隔と評価できるものである。なお、全天球型カメラ3Ba~3Deは、空画像取得手段の一形態として示したものであり、一般的なカメラを使用してもよく、広角レンズを使用したカメラでもよい(このことは以下においても同様である)。上記のような5km程度の間隔で複数設置し、直上画像を中心に取得する場合は、全天球型カメラでなくとも空画像の取得は可能となるからである。
【0049】
上記のような各センサ等によって取得される画像および計測される日射強度の変化の値を処理することにより、雲影の挙動を予測することとなる。そこで、そのための構成について説明する。
【0050】
図2は、雲影の挙動予測システムの構成を示すものである。この図に示されるように、このシステムは、処理装置4を備えるものであり、処理装置4には、前述のセンサ等が検出した情報等が入力される。そこで、処理装置4には入力解析モジュール41を有しており、空画像に関する情報と、日射強度に関する情報とを解析分離しつつ、記憶部42に一時的に記憶させている。処理装置4には演算部43を備えており、入力された情報から予測情報を作成する。そのため、演算部43は予測情報処理手段として機能することとなる。また、演算部43によって演算処理された結果(予測情報)は、出力部44から出力できるとともに、記憶部42にも記憶できるものである。記憶部42に記憶される作成情報は、時間ごとの雲影挙動の変化情報として保存されるものである。なお、演算結果の出力は、モニタ5に出力できるとともに、無線を介して携帯端末6などにも出力できるものとすることができる。従って、個別の情報として利用するほか、広く公共に報知させることも可能なものとなっている。
【0051】
日射センサ2Aa,2Ab,・・・によって測定される日射強度は、有線により送信させてもよいが、本実施形態では無線を介して処理装置4に送信されるものを例示している。有線の場合には、専用回線を使用することもできるが、インターネット回線等の公衆回線を使用することができ、また、無線の場合には携帯電話回線を使用するほか、LPWAなどの長距離通信可能な通信技術によって送信することができる。個々の日射センサ2Aa,2Ab,・・・では、日射強度の変化を解析することはなく、単純に測定された日射強度を数値として、位置情報とともに送信するものである。従って、個別の日射センサ2Aa,2Ab,・・・ごとの日射状態は処理装置4の演算部43によって処理されるものである。そのため、処理装置4の演算部43は、さらに日射状態導出手段としても機能するように構成されている。なお、送信のための送信装置(図示せず)および電源(図示せず)を備える構成としている。電源は、商用電源を使用してよいが、バッテリ等の個別電源を備えるものでもよく、商用電源を使用する場合は、非常用として短時間駆動電源を備える構成とすることが好ましい。短時間駆動電源には、二次電池、キャパシタおよび電気二重層キャパシタなどを使用することができる。
【0052】
他方、全天球型カメラ3Ba,・・・は、画像情報取得部30Ba,30Bc・・・の一部として構成されるものである。この画像情報取得部30Ba,30Bc・・・は、全天球型カメラ3Ba,・・・のほかに記憶部31,演算部(解析手段)32および出力部33が設けられ、全天球型カメラ3Ba,・・・によって取得される空画像を、一時的に記憶部31に記憶させ、演算部(解析手段)32によって時間経過による画像の変化が解析される。
【0053】
画像情報取得部30Ba,30Bc・・・の演算部(解析手段)32による画像解析は、複雑なものではなく、撮影される画像から雲を特定することと、予め定めた時間ごとに撮影される画像の前後を比較して、雲の移動方向を決定することである。雲の移動方向の決定は、具体的には、画像中央部近傍において、撮影されている二種類の物体の境界が移動した方向を検出することである。二種類の物体の境界であるから、雲の移動方向前方側の場合もあれば、後方側の場合もある。また、雲の隙間による境界の場合、多層に存在する他の雲との境界の場合もあり得る。しかし、演算部(解析手段)32では、これらの状況を分析することなく、移動方向(境界の移動方向)のみを検出するものであり、その方向のみを方位(例えば、北方向に対する角度)として、処理装置4に送信されるものである。方位の決定は、予め定めた向きにカメラをセットする(例えば画面上の上方を北向きとする)ことによってもよいが、電子コンパスなどを備える構成とする場合には、方位情報に関連付けて雲の移動方向を同定させる構成としてもよい。なお、処理情報4への送信は、日射センサ2Aa,2Ab,・・・と同様に有線によるものでもよいが、本実施形態では無線を介して送信する構成を例示している。
【0054】
ところで、上述のように、画像情報取得部30Ba,30Bc・・・の演算部(解析手段)32による画像解析は、取得画像(空画像)の中央部近傍における境界部の移動を解析するものであるが、雲の移動による雲影の影響を受ける(日射強度が変化する)領域は、上記の雲の移動を検出した画像情報取得部30Ba,30Bc・・・(全天球型カメラ3Ba,・・・)の設置されている地点ではない。また、雲影による受ける影響の大小も画像情報取得部30Ba,30Bc・・・(全天球型カメラ3Ba,・・・)は検出しないものである。
【0055】
そこで、処理装置4の演算部(日射状態導出手段)43は、各日射センサ2Aa,2Ab,・・・によって測定される日射強度の変化の状態を算出(導出)しつつ、前記画像情報取得部30Ba,30Bc・・・から出力される雲の移動方向に係る情報を契機に、日射センサ2Aa,2Ab,・・・の中から日射強度が変化したもの、または変化するものを抽出する。具体的には、日射測定網1を構築する測定地点の中から日射強度が変化した地点または変化する地点を合わせて2以上の地点を抽出するのである。抽出される測定地点は、雲の移動方向が検出された直前直後に日射強度が変化した地点を基準に、隣接する1地点以上とされる。基準とする1地点と少なくとも他の1地点との位置の相違(距離)、および変化時刻の差(時間)により雲影の影響を受ける速度(雲の移動速度)が算出される。なお、日射強度が変化する状態とは、高い日射強度から低下する場合のほか、低下した日射強度が回復して上昇する場合がある。
【0056】
さらに、同時に、変化した日射強度の変化後の数値により、雲影の影響を判断することができる。当該移動が雲影の前方側である場合は、変化後の日射強度が雲影により日射が遮断されている状態における日射強度となり、後方側である場合は、雲影による日射の遮断が終了した後の回復した日射強度して判断される。また、日射強度が低下した時刻から日射強度が上昇した時刻までを記憶させておくことにより、雲影による日射に影響を及ぼす時間の長さ(雲の広さまたは雲影の影響を受ける領域)を算出することができる。なお、雲の前方側における雲影の影響を測定した場合には、雲影の移動速度(方向および速さ)によって、雲影の挙動を認定することができることから、このときの移動方向および移動の速さをもって挙動ベクトルと称する。この挙動ベクトルにより、当該挙動を予測することができる。すなわち、ベクトルの向き(移動方向)と大きさ(速さ)を参照して、特定地点に雲影が到達する時刻を予測することができるのである。
【0057】
また、画像情報取得部30Ba,30Bc・・・(全天球型カメラ3Ba,・・・)によって雲の移動を解析したとしても、日射強度が変化しない場合、または変化しても極めて僅少(誤差程度)の場合もあり得る。これは、上層雲のように、日射に影響を与えないものとして、または雲の存在による雲影が予測対象地域(日射測定網1の範囲)に影響を及ぼさないものとして、雲影挙動の予測から除外させることができる。この場合、特定の閾値を設け、当該閾値よりも日射強度が低下する場合のみを雲影の影響を受ける状態とみなすことができる。この閾値を理論日射(最高日射強度)約1000(W/m2)に対する所定割合(約75%)として雲影判断レベルとすることができる。
【0058】
<予測例>
例えば、
図1(a)に示した日射センサ2Aa~2Eeの間隔L1を2.5kmとする日射測定網1を構築し、全天球型カメラ(空画像取得手段)3Ba~3Deの間隔L2を5kmとして配置した場合を想定する。そして、全天球型カメラ(空画像取得手段)3Ba~3Deによる空画像の撮影時間の間隔は1分とし、個々の日射センサ2Aa~2Eeは、1秒間隔での測定値を検出するものとする。
【0059】
上記の条件で、
図3(a)に示すように、南西方向から北東方向へ雲Cが移動する場合、例えば、最も近くに設置された全天球型カメラ(空画像取得手段)3Baが、雲の画像を検出したとする。その時の雲の画像は、例えば、
図3(b)および(c)に示すように、1分の間に変化した画像から、雲Cの移動方向を解析することとなる。このときの移動方向は、北方向を基準にθの角度で移動することが情報として処理装置に送られることとなる。
【0060】
上記のように、雲Cの移動が検出されると、雲影Csによる影響も同じ方向に作用することから、雲影Csが到来する直前直後に日射強度が変化した1地点が抽出される。例えば、
図3(d)に示すように、検出直前または直後に変化する1地点(例えば、日射センサ2Aaが設置される地点)を抽出し、その隣接する他の地点(日射センサ2Ab,2Ba,2Bbなどが設置される地点)のうち、次に日射強度が変化する地点(例えば北方向に隣接する日射センサ2Baが設置されている地点)を抽出する。第1の地点(日射センサ2Aaの地点)と第2の地点(日射センサ2Baの地点)は、2.5kmの距離に位置するため、両者の日射強度が変化する時刻の差(時間T)とで、両者間の移動の速さは、2.5km/Tにより算出可能となる。なお、雲影Csの移動方向は、雲Cの移動方向と同じであり、北方向からθだけ傾斜した方向となるから、前記速さ2.5km/Tを1/cosθとすれば、雲Cの移動方向(すなわち雲影Csの移動方向)への速さに換算することができる。この2地点による算出によって速さを導き出してもよいが、順次影響を受けることとなる他の2地点(2Ab,2Bbの地点)との関係においても同様に速さを導き出したうえ、それらを平均した速さをもって最終的な速さとみなしてもよい。これらの算出結果により雲影の挙動ベクトルが導出され、雲影Csの挙動予測として出力することができることとなる。
【0061】
また、
図4(a)に示すように、雲Cが移動することにより、他の全天球型カメラ(空画像取得手段)も雲の画像を取得することとなる。図では3Dcにより雲の画像を取得し得る。そして、この場合においても、雲影Csによる日射強度の変化を測定する地点が発生する(例えば、2Dc,2Dd,2Ec,2Eeが設置される地点)。このような場合においても、上記と同様に、その都度、雲Cの移動方向、日射強度の変化する地点の位置と時間により速さを算出し、先の算出結果と異なる場合は修正され、同一であれば修正せずに雲影Csの挙動予測として出力されるものとすることができる。雲Cの移動方向は大きく変化しないものではあるが、雲形は変化することがあり、また移動の速度も常時一定ではないからである。さらには、雲Cが一塊ではなく複数に分離している場合もあるため、個々の雲Cの塊ごとに移動方向および移動の速さを検出することができる。このような状況下においては、複数の移動方向および移動の速さは修正しないものとすることとなる。なお、雲Cの塊が複数に分離しているか否かは後述のような日射強度の低下した領域を検出することによって可能となる。なお、一般的には、雲Cの移動は、上空の風向によって決定され、その状況は短時間で変化しないことから、前述の雲影Csの挙動予測において、既に挙動が判定された場合には、数時間を単位として修正することなく決定値として維持させるようにしてもよい。
【0062】
ところで、
図4(b)および(c)に示すように、雲影Csの影響による日射強度の変化は、雲影Csの到来により低下する方向へ変化する場合(
図4(b)参照)と、雲影Csの通過後により上昇する方向へ変化する場合(
図4(c)参照)とがある。雲Cの移動に伴う雲影Csの影響がある領域の移動方向および移動速度の算出は、
図4(b)による雲影Csの到来時に算出されるものとしている。これは、雲影Csによる影響の有無を早期に予測すべき事情からである。
【0063】
これに対し、日射強度の回復、すなわち雲影Csの影響がなくなることを予測すべき場合もあり得る。例えば、夏季における屋外作業員に対する熱中症対策のために、その事前準備を必要とする場合などである。このような場合には、早朝より曇天であった場合、雲影Csの影響を受け続け、その影響がいつ頃終了するかを予測することは重要である。このような場合を想定して、雲影Csの通過後により上昇する方向へ変化する場合についても、雲影Cs(雲C)の移動方向および移動速度が算出される。算出方法は、日射強度が変化した(上昇した)ことを検出した地点(
図4(c)では2Baが設置される地点)と、その隣接する他の地点(例えば、2Bbが設置される地点)とにより雲影Csの挙動として、その影響がなくなることに関する予測が可能となる。
【0064】
なお、
図4(a)に示されているように、一塊の雲Cにより、雲影Csは複数の測定地点の日射強度を低下させることとなる。つまり、同時に日射強度が低下している範囲が雲影Csの影響を受けている範囲となる。これは換言すれば、雲Cの大きさ(雲影Csの広さ)と一致する。そこで、上述のような日射強度の変化のみならず、全ての日射センサ2Aa~2Eeについて、同じ時刻における日射強度を比較し、その位置と強度の差に基づいて雲影Csの広さを算出させることも可能である。この場合において、日射強度の低下した領域が連続しない(部分的に日射強度が大きい)場合には、雲Cの塊が複数に分離している場合として状態把握されるものである。
【0065】
さらには、日射強度が低下した状態における当該日射強度を数値として取得することにより、雲影Csによる影響の程度(日射が遮断される程度)を取得することができる。この場合、日射強度が低下したいずれか1地点の測定値によって確定させてもよいが、複数の測定結果を平均してもよい。また、雲Cの塊が複数に分離した状態である場合には、塊ごとに雲影Csによる影響の程度が算出されることとなる。
【0066】
<太陽光発電装置設置地点における発電量予測システム>
次に、太陽光発電装置設置地点における発電量予測システムに係る本実施形態について説明する。本実施形態のシステム構成は、
図2に示したものと同じである。本実施形態において異なる点は、処理装置4における処理の内容である。具体的には、予測すべき対象である太陽光発電装置の設置位置が、各日射センサ2Aa~2Eeとの相対的な位置関係(距離等)と、当該太陽光発電装置による発電能力の換算値とが、予め記憶部42に記憶されており、演算部(予測情報作成手段)43において、前記雲影の挙動予測から、発電量の推移を算出するのである。
【0067】
本実施形態では、日射センサ2Aa~2Eeによって計測された日射強度により、雲影の影響を受ける可能性の有無のほか、雲影の影響下における発電量の算出を可能とし、また、当該日射強度の低下する時間を計測することにより、雲影の影響から解放されるまでの時間(その間の総発電量)を換算することができる。なお、雲影の影響を受ける時間帯の予測は、前述の雲影の挙動予測システムと同じ処理によることとなる。
【0068】
上記のように、特定地点における日射強度の低下予測について実験した。実験は、
図5(a)に示すように、北東方向に移動する雲Cによる雲影の影響を算出した。雲影の影響を受ける領域の速度(v)については、二つの日射センサ(地点AおよびB)における日射強度の低下時刻を用いて算出した。また、その際の日射強度の低下の程度(d)および長さ(L)を測定し、その後の太陽光発電装置設置位置(地点M)での日射強度の低下を予測した。なお、センサ類の配置間隔等は基本的に、雲影の挙動予測システム(
図3(a))と同様とした。
【0069】
実験の結果、太陽光発電装置設置位置(地点M)での日射強度の低下の程度は、予測よりも大きかったが、その時刻および長さについては概ね予測どおりであった。この結果を
図5(b)に示す。地点Mは、地点A~地点Bの約3倍の距離があり、日射強度の低下開始時は、地点Bの日射強度が低下するまでの約3倍の時間を要している。なお、図は日射強度の低下の程度のみを測定したものであり、これを設置する太陽光発電装置の発電能力(換算値)によって換算すると、発電量の予測が可能となるものであった。
【0070】
<環境モニタリングシステム>
次に、環境モニタリングシステムに係る本発明の実施形態について説明する。
図6は、本実施形態の構成をしめすものである。この図に示されているように、基本的な構成は
図2に示した雲影の挙動予測システムと同様である。本実施形態は、雲影の挙動予測システムを構成する日射センサ2Aa,2Ab,・・・のそれぞれに、環境センサ7Aa,7Ab,・・・を追加的に設置し、その情報を日射センサ2Aa,2Ab,・・・と同様に無線により処理装置4に送信するものである。
【0071】
環境センサ7Aa,7Ab,・・・とは、温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、風向センサ、風速センサ、感雨センサ、雨量センサ、積雪センサ、吹雪センサ、水位センサ、音センサ、光センサ、視程センサ、煙センサ、炎センサ、震動センサ、微粒子センサ、光量子センサ、分光光量子センサ、一酸化炭素センサ、二酸化炭素センサおよび窒素酸化物センサの中から選択される1以上を想定している。モニタリング対象とすべき単一の環境要素として、上記の中から1つを選択してもよいが、複数を選択して特定事象の観測に使用してもよく、全てを選択して総合的な環境要素を観測するものとしてもよい。
【0072】
上記の各環境センサ7Aa,7Ab,・・・として示した項目は、温度センサの場合は、屋外における気温(設置場所における現実の気温)を測定するものであり、外部環境情報の中でも中心的となる気象情報として有用であり、湿度センサについても同様である。これらのセンシングデータは、特に夏季における熱中症対策として、外気温および湿度の上昇によるリスク回避に使用可能である。気圧センサは、大気圧を測定することで、その変化をモニタリングすることができる。その結果として、台風のように大きく気圧が変化するような気象条件の変化において、その接近状況を得ることができる。風向センサおよび風速センサは、双方を同時に使用することにより風力発電装置の適否の判断材料となるうえ、竜巻その他の突風の発生場所、程度などをモニタリングすることに利用できる。
【0073】
直接的な気象状態を観測するためには、上記のセンサに加えて、または上記センサに代えて、感雨センサ、雨量センサ、積雪センサ、吹雪センサ、水位センサなどを設置してもよい。上記のような気圧センサ等による天候の悪化等を予測し、または検知することは可能であるが、感雨センサにより、降雨を直接的に検知することができ、雨量センサにより雨量を直接検出することが可能となるからである。雨量センサによる雨量の検出は、集中豪雨における局所的な雨量データをモニタリングすることができる。特に、近時の河川の増水または決壊などの発生を考慮すれば、雨量データのモニタリングは重要な要素となり得る。また、積雪センサまたは吹雪センサは、豪雪地帯等における気象条件としては重要な要素を得ることができ、水位センサは、路面等の冠水状態などを直接的に検出することができ、上記の雨量センサとともに使用すれば、気象状況の極端な悪化の場合の具体的な状況を観察することに寄与することとなる。
【0074】
また、音センサによる音の検出は雷などの発生を、光センサによる光の検出は、雷の発生に伴う稲光を、それぞれ検知することに利用できる。光と音を同時に取得する場合、雷の発生の検知について精度を向上させることとなる。視程センサ、煙センサまたは炎センサなどにより、気象以外の二次的原因による外部環境の状況をデータ化して取得することができる。これらは直接的な気象状況ではないが、気象条件の悪化に伴う火災の発生や、視界の状態などを検出することが可能となる。微粒子センサは、PM値の低い微粒子(PM10、PM2.5、さらに微細な粒子)その他の粒子等の飛来などの状況を取得できる。これも気象的要素に直接的な関係はないが、前記視程センサとともに使用することにより、視界不良の原因を併せて判断させることが可能となる。震度センサは、地震の発生に伴う測定地点における影響を震度によって検出できるほかに、落雷によって生じる振動を検知させることができる。前述の音および光に加えて振動センサのデータから落雷を検出することが可能となるものである。
【0075】
他方、光量子センサまたは分光光量子センサを備える場合には、照射される太陽光における光量子束密度を測定することができることから、農業分野における植物の育成を予測する場合に有用となる。日射強度が曇天により低下する場合における植物への影響を予測することに寄与することとなる。特に、分光光量子センサによって、特定帯域の波長を有する光の光量子束密度に関する情報を得ることにより、植物の生長過程に応じた光の照射状態を観測し予測し得る。なお、二酸化炭素検出器は、長期的な観測により、温室効果ガスの発生量をモニタリングする場合に利用できるほか、一酸化炭素検出器および窒素酸化物検出器などの情報を同時に検出すれば、火災の発生についても検出可能となり得る。
【0076】
これらの環境センサ7Aa,7Ab,・・・を任意に選択し、センシングデータを雲影の挙動予測システムとともに活用することにより、単に日射強度の状態把握に加えて、気象条件等の環境の変化を得ることができる。そのため、処理装置4の記憶部42には、各センシングデータの種類ごとに閾値データが記憶されるものとしている。演算部43は、判定手段としても機能させるものであり、環境センサ7Aa,7Ab,・・・から送信され、これを受信したセンシングデータの種類に応じて、その測定値データが閾値を超える場合には、屋外環境の悪化(外出不可)と認定し、閾値未満の場合は良好(外出可能)などと判定することとなる。
【0077】
また、上述の環境センサ7Aa,7Ab,・・・とは別に、測定地点ごとに、環境モニタが設置される位置よりも下方(水平よりも下向き)の画像を取得する下向き画像取得手段を設けてもよい。これらの画像は、カメラによる静止画像として取得することができ、カメラは特に限定されるものではなく、一般的なデジタルカメラのほか、赤外線カメラ、波長分割カメラなどを使用することができる。さらには、上記の各種カメラにバンドパスフィルタを設置した構成としてもよい。波長分割カメラは植生指標カメラとして機能させることができる。下向き画像の取得により、路面状態(道路の構造の状態、交通の混雑状態など)を観察できるほか、人の往来などを観察することによる防犯効果も期待できる。
【0078】
さらに、上述の下向き画像取得手段に加えて、またはこれに代えて、環境モニタが設置される位置から水平方向へ向かった状態の画像を取得する横向き画像取得手段を設けてもよい。横向き画像を取得することにより、前述の環境センサによる測定結果を補完させることができる。特に、視程センサなどにより視界の程度を測定可能であるが、その状態を目視によっても判定できることとなる。なお、画像の取得には各種のカメラを使用が可能であることは下向き画像取得手段と同様である。
【0079】
なお、環境センサ7Aa,7Ab,・・・として通電状態検知センサを採用する場合には、通電状態を検知(停電状態を発見)することに利用できる。通電状態検知センサは、例えば、日射センサの送信用電源として商用電源を使用することにより、日射センサからのデータ受信が不能であることをもって停電状態と機能させることも可能である。暴風雨などの気象条件が最悪な場合には、建造物または構築物の倒壊等により電線の切断、電柱の倒壊なども発生し得ることから、現地を見聞するまでもなく停電の状態が把握できれば、復旧作業を瞬時に開始できるなどの効果を発揮させることとなる。
【0080】
また、これらの環境センサ7Aa,7Ab,・・・によって計測・測定されたセンシングデータは、累積的に記憶部42に記憶させることができるものであり、前記演算部(判定手段)43によって閾値を超える状態と判定されたデータを基準として、現状のモニタリングデータを比較すれば、気象等の外部環境の変化を予測することも可能となる。この場合、報知手段を備えることにより、予測情報を報知することができる。さらには、過去のデータの推移とは著しく逸脱するような激しい変化を示すセンシングデータを検知した場合は、警報のための報知を行うことも可能である。
【0081】
これらの報知には、出力部44から特定の出力信号を報知手段に出力させることによることができる。報知手段としては、各種想定し得るが、図示のようにモニタ5を報知手段として出力することできるほか、携帯端末6に出力することも可能である。その他、警報装置(ブザー)などを使用してもよい。
【0082】
<光電変換センサ>
上述に示した日射センサ2Aa~2Eeについては、複数の光電変換センサによって構成することができる。光電変換センサとしては、種々の光電変換素子が利用でき、太陽電池、フォトダイオード、フォトトランジスタ、焦電素子または光電セルなどを使用することができ、2個を同じ種類のものを使用してもよいが、異なる種類のものを用いてもよい。
【0083】
このような複数の光電変換センサを使用する理由としては、単一のセンサのみで測定する場合、当該単一のセンサが雲影以外の要因(例えば周辺建造物等の影など)によって日射が遮断された場合を想定したものである。すなわち、いずれかのセンサが雲影以外の要因で日射が遮断される場合であっても、いずれか1個のセンサが日射強度を測定できる状態とすることにより、当該測定地点における日射強度の検出を可能にするのである。
【0084】
この場合の手法としては、
図7(a)に例示するようなバイパスダイオードを用いる第1の方法と、
図7(b)に例示するような最大出力を計測する第2の方法とが考えられる。第1の方法は、
図7(a)に示すように、複数(図は3個)の光電変換センサ11を直列に接続し、個々の光電変換センサ11には、並列にバイパスダイオード12を接続しており、その全体に対して抵抗13を並列(または直列でもよい)に接続するのである。この抵抗13の接続により、両端の端子X,Yの間における電流値(略短絡電流値)を測定することによって、光電変換センサ11から得られる電流の変化を観察することが可能となる。この電流の変化によって日射の計測を可能としている。また、略短絡電流値を測定するための電流計は、個々の日射センサ2Aa~2Eeとともに設置され、当該電流計の値をもって出力させることができる。当然ながら電流値を日射強度に換算したうえで、その日射強度を出力するものであってもよい。また、個々の光電変換センサ11にバイパスダイオード12を接続することにより、これら複数の光電変換センサ11のいずれか1個に対する日射が遮断された場合(建築物等の影により変換効率が低下した場合など)であっても両側端子端X,Yにおける略短絡電流の値を維持させることができるのである。すなわち、影により光電変換機能が発揮しない光電変換センサ11について、バイパスダイオード12により電流を迂回させることができるのである。なお、光電変換センサ11の出力を稼ぐために、一つのバイパスダイオードに接続される光電変換センサ11を複数設ける(例えば各2個ずつとし、合計6個を設置する)ことも可能である。
【0085】
なお、図の例示においては、サーミスタ14を抵抗13に直列に接続している。サーミスタ14は、一般的に先端において温度が検出されることから、光電変換センサ11の基板等の裏面側等に対し、シリコーン接着剤等を利用して、サーミスタ14の先端を当接しつつ貼着固定させることにより、光電変換センサ11の温度変化による電流値の誤差を補正させることができる。このサーミスタ14は、NTC型とすることにおり、日射量が大きい場合には、光電変換センサ11の出力が増大することに応じて、温度上昇による抵抗値の低下を可能にするのである。これにより、サーミスタ14に接続される抵抗13との合成抵抗が小さくなり、略短絡電流は短絡電流に近似することとなる。なお、実際の電流値は、抵抗の両端に発生する電圧を計測することにより、オームの法則から電流値を得ることができる。また、略短絡電流を検出し得る領域では、電流値と電圧値は比例関係にあるため、計測される電圧値をもって日射強度に換算してもよい。
【0086】
また、第2の方法は、光電変換センサ11の中から最も大きい値(例えば、最大の出力電圧)のみを検出値として出力させ、当該出力値をもって測定地点における日射強度とするように構成するものである。複数の光電変換センサ11の中から最大出力値を出力させる構成としては、例えば、
図7(b)に示すように、個々の光電変換センサ11にオペアンプ15を接続し、インピーダンスを変換したうえで、並列に接続させることにより最大の出力値を検出することができる。各オペアンプ15は、ダイード(ショットキーバリアダイオードやスイッチングダイオードなど)とともにボルテージフォロア回路を構成するものであり、入力電圧を変化させることなく出力電圧としている。電圧値はグランドを基準としたときの電圧であり、複数(図は3個)の光電変換センサ11のそれぞれ(インピーダンス変換用のオペアンプ15)から出力される電圧値の中のうち、最も大きい値の出力値を端子Zによって検出できるものである。なお、図に例示の回路は、出力端子Zの直前においてもボルテージフォロア回路を構成するオペアンプ16を設けており、インピーダンス変換させるものとしている。
【0087】
なお、上記のような回路構成によって複数の光電変換センサ11の中から最大の出力電圧値を検出するほか、ソフトウエアにより最大値を検出させてもよい。例えば、
図2に示した雲影の挙動予測システム、または
図6に示した環境モニタリングシステムの各実施形態のように、処理装置4に測定情報を送信する構成にあっては、個々の日射センサ2Aa,2Ab・・・によって測定される日射強度は、単純に測定された数値を、位置情報とともに送信するものであることから、個々の日射センサ2Aa,2Ab・・・をそれぞれ複数の光電変換センサ11によって構成する場合、上記処理装置4によって最大値を選定するものとすることができる。この場合、位置情報ごとに複数の測定値の入力を受け、同じ位置情報として入力される複数の測定値を比較して、最大となる値をもって、当該測定地点の日射強度とするように処理されるものである。
【0088】
日射センサ2Aa~2Eeが光電変換センサを使用する場合には、それぞれの光電変換センサについて、個々の光電変換センサの受光面を含む範囲に特定波長の光を透過させる材質により被覆するカバーを設ける構成とすることができる。このカバーの例を
図8に示す。なお、
図8(a)は光電変換センサ8の支持状態を示すととともにカバー9の概要を示し、
図8(b)および(c)はVIII-VIII線における断面によりカバー9による被覆の状態を示している。
【0089】
個々の光電変換センサ8は、前述のように、太陽電池、フォトダイオード、フォトトランジスタ、焦電素子または光電セルなどが使用されるため、複数の光電変換センサ8を使用する場合においても、個々に独立して構成されるものであり、そられについて、個別にカバー9を設けるものである。本実施形態では、
図8(a)に示すように、光電変換センサ8が、基台81の中央に設けられた保持部82に収納される状態で設置される構成としており、光電変換センサ8の受光面80は、保持部82の上端に配置されるものとしている。カバー9は、この保持部82を含む全体を覆うように、天板部91と側壁部92とで構成され、全体的にキャップ状とした形態を例示している。
【0090】
図8(b)に示すように、基台81に設けられる保持部82の内部には、内部壁面を環状に隆起させてなる環状ストッパ83が形成されており、光電変換センサ8は、この環状ストッパ83によって支持されている。光電変換センサ8の底部が環状ストッパ83に支持されることよって、全体が所定の高さを維持され、受光面80が保持部82の上端に配置されるものとなっている。なお、
図8(b)に示す光電変換センサ8は、基板8aと素子8bとが一体となったものであり、受光面80は素子8bの上面に形成されたものを示している。
【0091】
上記構成のカバー9を構成する材料(特に天板部91の材料)は、適宜加工することにより、鳥類や虫類等の飛来を防止させるとともに、小石等の落下に伴う破損を防止することができる。例えば、天板部91の表面に忌避効果を有する物質(忌避剤を)を塗布するか、忌避剤を含む板状またはフィルム状の材料による積層体を積層することができる。積層体を設ける場合には、
図8(c)に示すように、少なくとも天板部91の表面に積層体93を積層する構成とされ、当該積層体93を最外層に設けるものとしている。忌避剤としては、鳥類に対するものとしては酸化第二鉄などがあり、昆虫に対するものとしてはジエチルトルアミドなどがある。この忌避剤は、側壁部92にも塗布することができる。側壁部92に対する忌避剤の塗布により、羽を持たない昆虫等の接近を防止することを目的とする場合に有効である。
【0092】
カバー(多層構造の場合は最外層)9の天板部91または積層体93に使用する材料としては、強化ガラス製、ポリテトラフルオロエチレン製、アクリル製、塩化ビニル製、ポリプロピレン製もしくはポリカーボネート製、またはこれらに強化繊維を混合したもので構成することができる。また、ガラス繊維入りポリテトラフルオロエチレンなどが好適であり、炭素繊維強化プラスチック(CFPR)やガラス繊維強化プラスチック(FRP)を用いてもよい。耐熱性のあるエンジニアリング・プラスチックや耐熱性に加え耐溶剤性の高いスーパーエンジニアリング・プラスチックを使用してもよい。このような強化材料を使用することにより、例えば、カラス等による小石等の落下から防護することができる。また、天板部91の下層には、合成樹脂や発泡材(ウレタンなど)、ゴム、エラストマーなどを適宜利用することができる。さらに、天板部91の下層に使用する材料が多孔質(ポーラス状)であるとより衝撃緩和効果を得ることができるとともに、透過率の調節が可能となる。
【0093】
さらに、天板部91または積層体93の表面は、鳥類の飛来を防止する目的で、減光効果を有する材料を使用することができる。減光効果を有する材料としては、着色ガラスや着色樹脂などがある。着色樹脂は、樹脂フィルムで構成することができるほか、樹脂製の板材として構成することができる。着色すべき色彩としては、黒色、灰色、白色または銀色などが想定される。白黒を基調とすることによって鳥類や羽を有する昆虫などの飛来を防止することを目的としている。なお、透光性については、特定波長のみの透過を許容する意味からは、着色することによって透過光の波長を限定するものとしている。
【0094】
また、減光効果を有するものとしては、ND(Neutral Density)フィルタ機能を有するフィルムや偏光フィルムなどの減光効果フィルムあるいは概板状物体を使用することが可能である。その他に、つや消し加工もしくはフロスト加工またはディンプル加工もしくはエンボス加工などの表面凹凸加工を施すことによっても減光効果を得ることができる。つや消し加工またはフロスト加工は、表面の光沢を排除することにより、反射光の発生を制限するものであり、これに伴い透過光強度が低下するものであり、ディンプル加工またはエンボス加工は、直線的な入射光を屈折させることにより透過光強度を低下させるものである。透過光強度を低下させることにより、僅かな日射の変化の検出を可能にするものである。表面凹凸加工は、鳥類や虫類等の忌避にも効果がある。
【0095】
なお、
図8(c)に示すような積層体93を設ける場合には、天板部91を減光樹脂フィルムで構成し、積層体93をすりガラス状(フロスト加工した)強化ガラスを使用するような構成としてもよい。また、積層体93を減光樹脂フィルムで構成する場合、天板部91は補強用の強化ガラスを使用する構成としてもよく、積層体93を強化ガラスで構成する場合は、天板部91を衝撃吸収用の樹脂フィルムで構成することができる。天板部91を硬質素材で構成する場合には、天板部91と積層体93との中間に衝撃吸収用の樹脂フィルムを積層させてもよい。
【0096】
さらに、積層体93として、または、積層体93にさらに積層する材料として、耐水性および撥水性のいずれか一方または双方の性質を有する材料をすることができる。耐水性または撥水性を有する材料は、雨水等から光電変換センサ8を保護するためのものであるため、最外層として積層される材料に使用することが好ましい。
【0097】
そして、上記のように、積層体93に各種の材料を積層する場合には、さらに表面に導電性材料または光触媒能を有する材料を塗布する構成とすることができる。導電性材料としては、例えばITO(In2O3:Sn)などがあり、光触媒能を有する材料としては、酸化チタン(TiO2)や酸化亜鉛(ZnO)などがある。導電性材料を塗布する場合には、静電気を放電することにより、埃等の吸着を防止することができ、光触媒能を有する材料を塗布する場合は、降雨等による水垢等を排除することができ、長期間の屋外等への設置による光透過性の減衰を排除することができる。これらの光触媒能を有する材料または導電性材料は、表面に塗布する場合に限らず、積層体93を構成する材料に含有させてもよい。これらの材料の含有は、積層体93の作製時に混練することによることができる。
【0098】
上述の構成による各形態のカバー9の肉厚は、板状部材を使用する場合の単層で1mm、多重構造でも2mm~3mm程度としている。樹脂フィルムを使用する場合には、単層で0.1mm、多重構造で一部に板状材料を使用して1.1mm~2.2mmとしている。これらの肉厚は、最小でも0.1mmとすることで最小限度の強度を担保するものであり、最大でも5mmを上限とすることにより、減光効果による透過光強度をある程度に維持し、また重量を低減させている。ただし、衝撃緩和材を利用する場合や表面に凹凸構造を持つ場合には、全体の厚さが10mm程度となってもよい。この種の構成の場合には、重量が大きく増加することはなく、減光効果材料による透過光強度の低減についても材料を適宜選択することにより調整が可能である。着色ガラスまたは着色樹脂を使用する場合にあっては、その色彩を白黒基調とすることにより、波長400nm~700nmの範囲の光を透過させることが可能となるが、他の色彩により透過光波長を上記範囲内の一部に限定してもよい。これらの透過光の波長帯域は、雲影による影響を受ける領域における日射量(日射強度)の予測(雲影予測)の目的(対象施設等)によって決定されることとなる。なお、減光効果によって、透過光は、照射光に対して0.01%~95%の範囲とし、減光によって制限された透過光強度の変化によって日射量(日射強度)を測定することも可能である。
【0099】
<観測装置>
次に、上述のような雲影の挙動予測システムおよび環境モニタリングシステムに使用可能な観測装置の実施形態について説明する。観測装置は、同じ測定地点において、日射センサ2(および環境センサ7)と、全天球型カメラ3とによる観測がなされる場合に使用されるものであり、当該雲影の挙動予測システムおよび環境モニタリングシステムの実施において特に好適に使用できる装置である。
【0100】
そこで、
図9(a)および(b)に観測装置に係る実施形態を示す。なお、
図9(b)は、
図9(a)のIXB-IXB線による断面図である。これらの図に示すように、本実施形態は、各種のセンサ等を一体的に保持させた一体型の観測装置100として構成したものである。この観測装置100は、立設または自立が可能な支持部(支柱など)101に対し、鍔状に形成した平板部102を一体的に設けた構成としている。支持部101および平板部102の上部には適宜面積の表面が形成されており、支持部101の一部(上部近傍)と平板部102とで保持部が構成され、これらの上部表面によって設置領域が形成されるものとなっている。この支持部101の軸線に対し、平板部102(その上部表面)が直交する状態で設けられ、支柱101の軸線を鉛直方向に設置するとき、平板部102の上部表面は水平となるように設けられている。従って、平板部102の上部表面が水平となるように設置されるとき、支持部101の軸線は鉛直方向となるものである。
【0101】
本実施形態では、支柱101の上端(設置領域の一部)において、上向きの全天球型カメラ3が保持されるとともに、平板部102の上部表面(設置領域の一部)において、日射センサ2もしくは環境センサ7または双方(以下、日射センサ等2,7という)が適宜位置に保持されるものである。日射センサ等2,7は、支柱101の中心(全天球型カメラ3の設置位置)から適宜間隔を有し、かつ当該中心における中心角を例えば90°の単位で相互に適宜な間隔を有して4箇所に保持されるものとしている。この例示の場合、保持される4箇所は、例えば東西南北の四方向に配置させることができるものとなっている。
【0102】
本実施形態の平板部102の上部表面(設置領域の一部)には、二方向に対する水準器103,104が設けられ、平板部102の上部表面(設置領域の一部)が、水平な状態となっていることを確認できるものとしている。例えば、全天球型カメラ3の向きが、支持部101の軸線に合わせて予め保持されている場合には、平板部102の上部表面を水平に維持させることにより、全天球型カメラ3は鉛直方向に向かって配置されることとなり、計測地点の直上を中心とする空の画像を取得することが可能となる。
【0103】
また、方位センサ(方位磁石など)105を設けることにより、上記例示の4個の日射センサ等2,7を、所望の方位に合わせて配置させることができる。なお、支持部101または平板部102の一部に、アンテナ106を設置することにより、外部装置(例えば処理装置4など)に対するデータ送信を可能としている。なお、このアンテナ106は、平板部102に設ける必要はなく、後述するように、支柱101の内部に形成される中空内部に設けてもよい。また、支持部101の下端にはフランジ部107を構成するものとしてよく、この場合には、他の部材との間で締着装置108による締着固定を可能とすることができる。
【0104】
支柱101は、筒状または中空内部を有する構造としており、その内部には、全天球型カメラ3による画像解析のための処理装置109a(例えば演算部32)などを収納させることができる。この処理装置109aは、全天球型カメラ3および日射センサ等2,7は、取得データの送信処理のための送信手段を備えるものとすることができる。この処理装置109aには、時刻を検知する機器などを内蔵させることができるほか、その他の必要な機能(前記最高出力電圧値を算定する処理部など)を備える構成とすることができる。また、必要な場合には、電源109bを内部に設けることができる。この電源109bは短時間駆動電源とすることができる。外部の商用電源を使用する場合は、電源109bに代えて変圧器を設置する場合がある。
【0105】
また、図示を省略するが、支持部101の上部または平板部102(これらをまとめて「保持部」と称する場合がある)の適宜箇所には、必要な場合は外部に露出させつつ、場合によっては内蔵させる状態で、その他の環境モニタに必要なセンサ類を設けることができる。例えば、温度計や湿度計などは、平板部102の裏面側において日射を避けて設けることも可能である。また、位置情報を取得するための機器、時刻を確認するための機器など、格別外部に設置すべき必要性の僅少な機器類は、支柱101の内部に設置することができる。
【0106】
上記のように、支持部101の内部を中空構造とする場合には、図示のように、平板部102にも中空部を形成し、その内部に配線を配置させる構成とすることができる、平板部102に中空部を設ける構成は、例えば、上面および裏面を構成する板状部材の中間に外径寸法を同じにする円環状スペーサを積層させる方法などにより、容易に構成することができる。なお、平板部102の形状は円形鍔状である必要はなく、矩形であってもよく、支持部101の上端に平面状に設ける構成でもよい。支持部101の形状についても円筒形または円柱形である必要はなく、平板部102(保持部)を支持できるものであれば、その形状を問うものではない。特に、この平板部102は、日射センサ等2,7その他の機器が設置できる状態になっていればよく、例えば、平面視においてX字状、T字状またはV字状とし、中央から適宜に離れた部位を有する構成とすることにより、当該部位に各機器を設置可能とすることができる。さらに、平面を有することなく骨組みのみにより設置領域を形成させる構成でもよい。この場合には、各種形状の枠体とすることができ、円形、四角形または三角形の枠体とすることができる。また、支持部101は中央に設置することに限定されず、偏心した位置でもよく、片持ち形状(ワンアーム)に構成してもよい。
【0107】
図9に例示の本実施形態は、全天球型カメラ3を支持部101の上端に1個のみ設置したものを例示しているが、全天球型カメラ3は複数設けるものであってもよい。そして、複数設ける場合には、1個を上述のように取得画像から雲の移動方向を演算する(演算部に出力する)ための画像を取得するために使用し、他のカメラは画像送信用として使用するものとしてもよい。この場合は、処理装置4が設置される場所においてモニタに表示させるなどによって確認用として用いることができる。この場合の全天球型カメラ3が通常のカメラであり、撮影方向を遠隔操作できる場合は、環境モニタリングシステムにおける周辺状況の映像取得として使用することも可能となる。また、複数の全天球型カメラ3のうちの1個を赤外線カメラとしてもよく、この場合、赤外線カメラは、曇天時や夜間などにおける周辺状況の映像取得として使用でき、環境モニタリングシステムに利用できる。環境モニタリングシステムに使用する場合には、撮影方向を遠隔操作可能とすれば、さらに好適となる。
【0108】
いずれの形態とする場合であっても、全天球型カメラ3および日射センサ等2,7は、観測装置100によって一体化され、一箇所にまとめて設置されることとなるから、これらのセンサ類は、一括して設置された位置を特定し得ることとなる。位置を特定する機器が、これらの一方(例えば全天球型カメラ3)にのみ内蔵される場合には、当該機器による位置情報を全てのセンサ類その他の機器の位置情報として兼用することができるものとなる。
【0109】
<観測装置の変形例および使用態様>
観測装置100の実施形態は、上記のとおりであるが、上記は一例を示すものであって、観測装置100の構成は適宜変更可能である。例えば、日射センサ等2,7の数は、4個に限定されるものではなく、日射センサ2を2個と、環境センサ7を1個としてもよく、さらには、必要な環境センサ7を多数設置してもよい。また、平板部102の高さは自在であり、
図10(a)に示すように、支持部101を中央で上方に突出させる構成としてもよい。この場合、鍔状に形成される平板部102の上部表面に設けられる日射センサ等2,7は、支持部101の周辺において、当該支持部101よりも低位に設けられることとなるが、支持部101から十分な間隔を有して配置されることにより、支持部101によって日射を遮られないように配置することができる。なお、北側の日射センサ2を設置しない場合は、日射が遮断される可能性を低下させることができる。
【0110】
ところで、このように観測装置100による全天球型カメラ3および日射センサ等2,7の設置には、例えば、
図10(b)に示すように、電柱Pの適当に高い位置に前記各機器を備える観測装置100を設置することができる。電柱Pには観測装置100を設置するための支持部が必要であるが、その支持部によって観測装置100を指示させることにより適度な高さに設置が可能となる。このとき、電力供給用の電力線110よりも高位とすることで、全天球型カメラ3および日射センサ等2,7に対する観測の障害を回避させることができる。しかしながら、さらに上部には、架空地線120などが架設される場合があることから、観測装置100は、電柱Pの南側に設置されることが好ましい。
【0111】
このように、電柱Pに設置される場合には、電力供給される電力線110から電力供給を受け、また、架空地線120の内部に設けられる通信ケーブルを使用してデータ送信を行うことも可能となる。なお、架空地線120の下方に設けることにより雷撃から防護させることも可能となり、荒天時における継続的な環境モニタリングを可能とし得る。
【0112】
<まとめ>
本発明に係る各実施形態は上記のとおりであり、雲影の挙動予測システムについては、現実に測定される日射強度に基づいた雲影の影響を予測するものであり、全天球型カメラ(空画像取得手段)による雲の移動方向と、日射センサによる雲影の移動速度とにより、挙動ベクトルを生成し、そのベクトルによって雲影の影響を受ける地点の予測を可能とするものである。そして、このような雲影の挙動予測システムを利用することにより、太陽光発電装置による発電量を予測することも可能となり、環境センサを併用することにより環境モニタリングシステムとして機能させることができるものである。
【0113】
なお、上記各実施形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明がこれらの実施形態に限定されることを趣旨としないものである。従って、上記に示した実施形態の構成要素を変更し、また他の要素を追加することができるものである。
【0114】
例えば、日射センサ2Aa~2Eeによって計測すべき日射の状態について、日射強度(W/m2)としているが、同様の趣旨であれば、日射量(J/m2)、照度(lx)、光量子束密度(μmol・m-2・s-1)、太陽光依存性抵抗(Ω)、太陽光発電電力(kW/m2)または太陽熱集熱量(kW/m2)などがあり、これらの中から選択される1以上により、本実施形態が計測し得る日射の状態として定めることができる。
【0115】
さらに、日射測定網1については、上記各実施形態において四角形の格子を基準とする略四角格子状として構築した状態のみを図示したが、この日射測定網1は、他の形状に構築することができる。例えば、
図11(a)に例示するように、予測すべき特定点(例えば太陽光発電装置の設置地点)を中心とする同心円状の格子を基準とする略円径格子状の日射測定網10を構築することができる。この場合には、その交点を測定地点として、日射センサを設置することにより、特定点に向かって移動する雲影は、順次同心円上の複数の測定地点を通過することとなり、2地点の日射強度の変化により容易に速度を算出し得る。また、
図11(b)に示すように、亀甲形状の格子を基準とする略亀甲格子状とする日射測定網20を構築してもよい。この場合には、略四角格子状のように南北方向および東西方向への測定地点の配置に加えて有角方向への測定地点を設けることができることから、雲影の影響を受ける測定地点の数を増加させることができる。さらには、図示を省略するが、三角形の格子を基準とする略三角格子状としてもよく、その他の多角形を基準とする略多角格子状として構築してもよい。これらは雲影挙動を予測する目的・対象施設等に応じて適宜変更されるものである。
【符号の説明】
【0116】
1,10,20 日射測定網
2,2Aa,2Ab,2Ac,2Ae,2Ba,2Bb,2Bc,2Be,2Ca,2Cb,2Cc,2Cd,2Da,2Dc,2Dd,2De,2Ea,2Ec,2Ed,2Ee 日射センサ
3,3Ba,3Bc,3Be,3Da,3Dc,3De 全天球型カメラ(空画像取得部、空画像取得手段)
4 処理装置
5 モニタ
6 携帯端末
7,7Aa,7Ab,7Ac 環境センサ
8 光電変換センサ
8a 基板
8b 素子
9 カバー
11 光電変換センサ
12 バイパスダイオード
13 抵抗
14 サーミスタ
15 オペアンプ(インピーダンス変換用)
16 オペアンプ(最大値選択用)
30,30Ba,30Bc,30Be 画像情報取得部
31 記憶部
32 演算部(解析手段)
33 出力部
41 入力解析モジュール
42 記憶部(記憶手段)
43 演算部(予測情報処理手段、日射状態導出手段、判定手段)
44 出力部
80 受光面
81 基台
82 保持部
83 環状ストッパ
91 カバーの天板部
92 カバーの側壁部
93 積層体
100 観測装置
101 支持部
102 平板部
103,104 水準器
105 方位センサ
106 アンテナ
107 フランジ部
108 締着装置
109a 処理装置
109b 電源
110 電力線
120 架空地線
A 雲影の挙動を予測すべき地域(予測対象地域)
C 雲
Cs 雲影
S 太陽
P 電柱
X,Y,Z 端子