(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-02
(45)【発行日】2024-07-10
(54)【発明の名称】調理用具用落とし蓋
(51)【国際特許分類】
A47J 36/16 20060101AFI20240703BHJP
【FI】
A47J36/16 A
(21)【出願番号】P 2024068735
(22)【出願日】2024-04-21
【審査請求日】2024-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523126744
【氏名又は名称】旭セイワ興産有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】715009189
【氏名又は名称】堀江 清
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康造
(72)【発明者】
【氏名】堀江 清
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特許第7415291(JP,B1)
【文献】実開昭50-095263(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 36/16-36/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の形状を有する枠部材と、
前記枠部材に回動可能に連結された持ち手と、を備え、
前記枠部材は、長手方向に長尺な矩形の板材を円環状に湾曲させたものであり、前記枠部材は、前記板材の前記長手方向の中央に設けられた第1孔と、前記板材の前記長手方向の一端に設けられた複数の第2孔と、前記長手方向の他端に設けられた複数の第3孔とを有し、
前記持ち手は、
前記持ち手の一端に設けられ、前記枠部材の前記第1孔に挿通されることによって、前記枠部材に対して前記持ち手の前記一端を回動可能に連結する第1連結部と、
前記持ち手の他端に設けられ、前記枠部材の前記第2孔の一つ及び前記第3孔の一つに同時に挿通されることによって、前記枠部材に対して前記持ち手の前記他端を回動可能且つ取り外し可能に連結する第2連結部と、を備えていることを特徴とする調理用具用落とし蓋。
【請求項2】
前記枠部材の前記長手方向の前記一端から前記複数の第2孔までのそれぞれの距離と、前記枠部材の前記長手方向の前記他端から前記複数の第3孔までのそれぞれの距離とがいずれも同じである、請求項1に記載の調理用具用落とし蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理用具用の落とし蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、持ち手と、枠材と、枠材の外径を調整するための外径調整機構を備える調理用具用落とし蓋が開示されている。特許文献1に記載の調理用具用落とし蓋においては、持ち手と枠材との連結位置は、枠材の外径に応じて調整可能である。これにより、鍋のサイズに応じて容易に外径を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の調理用具用蓋は、鍋のサイズに応じて外径を調整でき、且つ、従来の木製の落とし蓋と比べて、使用後の洗浄の手間を軽減することができるものであった。しかしながら、持ち手と枠材との連結位置が、枠材の外形に応じて調整可能であったため、それを実現するための機構が必要であった。それに起因して、構造が複雑となり、安価に大量生産することが困難であった。そこで、鍋のサイズに応じて外径を調整でき、且つ、構造が複雑でない調理用具用蓋が望まれていた。
【0005】
本発明の目的は、鍋のサイズに応じて外径を調整でき、且つ、構造が複雑でない調理用具用蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、
円環状の枠材を有する枠部材と、
前記枠材に回動可能に連結された持ち手と、を備え、
前記枠材は、長手方向に長尺な矩形の板材を円環状に湾曲させたものであり、前記枠材は、前記長手方向の中央に設けられた第1孔と、前記枠材の前記長手方向の一端に設けられた複数の第2孔と、前記長手方向の他端に設けられた複数の第3孔とを有し、
前記持ち手は、
前記持ち手の一端に設けられ、前記枠材の前記第1孔に挿通されることによって、前記枠材に対して前記持ち手の前記一端を回動可能に連結する第1連結部と、
前記持ち手の他端に設けられ、前記枠材の前記第2孔の一つ及び前記第3孔の一つに同時に挿通されることによって、前記枠材に対して前記持ち手の前記他端を回動可能に連結し、且つ、取り外し可能に連結する第2連結部と、を備えていることを特徴とする調理用具用落とし蓋が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、枠材に貫通孔である第1孔、複数の第2孔、複数の第3孔を形成し、持ち手の両端に、例えば連結部のような第1連結部と第2連結部とを設けるという非常に簡単な構造により、対象となる鍋の大きさに合わせて、枠部材の直径を調整することが可能となる。これにより、落とし蓋の製造が容易となり、製造コストを削減することができる。さらに、鍋の内径に合わせて、外径の異なる落とし蓋を複数個用意する必要がない。また、枠材の長手方向の一端から複数の第2孔までのそれぞれの距離と、枠材の長手方向の他端から複数の第3孔までのそれぞれの距離とを、いずれも同じにすることができる。この場合には、端部からの距離が同じである第2孔と第3孔とを重ねた場合に、第1孔と、互いに重ねられた第2孔及び第3孔とが、枠部材の半径方向において対向するように位置付けられる。この状態で、持ち手の第1連結部を第1孔に挿通して連結し、持ち手の第2連結部を第2孔及び第3孔に同時に挿通して連結することにより、持ち手が枠部材の中心の直上を通るように取り付けることができる。また、本発明の落とし蓋は、アルミ箔などのシートを取り付けて使用される。シートは毎回交換されるため、落とし蓋を清潔に保つことができる。また、枠部材と持ち手だけを洗えばよいため、木製の落とし蓋と比べて、洗浄及び乾燥の手間が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は落とし蓋10の枠部材20を広げた状態を説明するための説明図である。
【
図3】
図3は落とし蓋10の枠部材20と持ち手30との連結部分を説明するための概略説明図である。
【
図4】
図4は落とし蓋10の使用状態の一例(落とし蓋10がシートSを押さえている状態)を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る調理用具用の落とし蓋10について、
図1~4を参照しつつ説明する。
図1は落とし蓋10の概略説明図である。
図2は落とし蓋10の枠部材20を広げた状態を説明するための説明図である。
図3は落とし蓋10の枠部材20と持ち手30との連結部分を説明するための概略説明図である。
図4は落とし蓋10の使用状態の一例を説明するための概略説明図である。
【0010】
図1に示されるように、落とし蓋10は、枠部材20と、持ち手30とを主に備える。
図2に示されるように、枠部材20は帯状に裁断された金属製の板材であり、枠部材20の略中央に設けられた第1孔42と、枠部材20の長手方向の一端に設けられた複数の第2孔44と、枠部材20の長手方向の他端に設けられた複数の第3孔46を備えている。枠部材20の材質は特に限定されず、アルミニウム、鉄、銅などの金属材料や、ステンレスなどの合金材料を用いることができる。
【0011】
図2に示されるように、枠部材20は、略長方形の形状を有する帯状の板材である。そして、枠部材20の両端付近が互いに重なるように、円環状に湾曲させることにより、
図1に示されるような円環状の枠部材20が形成される。上述のように、第1孔42は枠部材20の長手方向(
図2の左右方向)の略中央に形成されている。本実施形態において、第2孔44と第3孔46の数はそれぞれ4つである。
図2に示されるように、4つの第2孔44は、それぞれ、枠部材20の長手方向の一端から距離L1、L2、L3、L4の位置に形成されている。4つの第3孔46は、それぞれ、枠部材20の長手方向の他端から距離L1、L2、L3、L4の位置に形成されている。
【0012】
本実施形態においては、枠部材20の長手方向の一端から4つの第2孔44までの距離と、長手方向の他端から4つの第3孔46までの距離がいずれも同じである。そのため、枠部材20を円環状に湾曲させることにより、円環状の枠部材20を形成する場合において、端部からの距離が同じである第2孔44と第3孔46とを重ねることができる。この場合、第1孔42と、互いに重ねられた第2孔44及び第3孔46とは、枠部材20の半径方向において、中心を挟んで対向するように位置付けられる。この状態で、第1孔42に持ち手30の連結部31の一方を挿入することができる。そして、互いに重ねられた第2孔44及び第3孔46に持ち手30の連結部31の他方を挿入することができる。
【0013】
図1に示されるように、持ち手30の両端はL字状の形状に加工された連結部31となっている。連結部31は本発明の第1連結部、第2連結部の一例である。持ち手30の連結部31の開いた部分から、連結部31を枠部材20の第1孔42に挿通することにより、持ち手30の連結部31を枠部材20に引っかけて、両者を回動可能に連結することができる。このとき、連結部31が持ち手30の回動軸となり、第1孔42が軸受けとして機能する。さらに、
図3に示されるように、連結部31の他方を、互いに重ねられた第2孔44及び第3孔46の両方に挿通することにより、持ち手30の一端を枠部材20に回動可能に連結することができる。この場合にも、連結部31が持ち手30の回動軸となり、第2孔44と第3孔46とが軸受けとして機能する。また、上述のように、第1孔42と、互いに重ねられた第2孔44及び第3孔46とは、枠部材20の半径方向において中心を挟んで対向する。そのため、持ち手30を半径方向に沿うように取り付けることができる。言い換えると、持ち手30が枠部材20の中心の直上を通るように取り付けることができる。そのため、持ち手30を持って枠部材20を持ち上げる際に、枠部材20が傾くことが抑制される。なお、本実施形態においては、
図1に示されるように、持ち手30の連結部31は、枠部材20の外側から、第1孔42及び第2孔44(第3孔46)に挿入される。上述のように、枠部材20は帯状の板材を円環状に湾曲させたものであるため、枠部材20には外側に開くように変形しようとする力が働いている。仮に、持ち手30の連結部31が、枠部材20の内側から、第1孔42及び第2孔44(第3孔46)に挿入されているとすると、枠部材20の、外側に開くように変形しようとする力により、持ち手30の連結部31が第1孔42、第2孔44(第3孔46)から外れてしまうことが考えられる。これに対して、本実施形態においては、持ち手30の連結部31は、枠部材20の外側から、第1孔42及び第2孔44(第3孔46)に挿入されている。本実施形態においては、持ち手30は弾性を有する素材(例えば金属材料)により形成されているので、持ち手30の弾性力により、枠部材20を径方向に押さえつけようとする力が働く。これにより、枠部材20の、外側に開くように変形しようとする力によって、持ち手30の連結部31が第1孔42、第2孔44、第3孔46から外れてしまうことが抑制される。
【0014】
図2に示されるように、第2孔44と第3孔46とは、いずれも複数個(本実施形態では4個)設けられている。そして、端部からの距離が同じである第2孔44と第3孔46とを重ねる場合において、どの第2孔44と第3孔46との組み合わせを選択するかに応じて、円環状の枠部材20の直径、即ち、枠部材20の円周の長さを変更することができる。本実施形態においては、枠部材20に貫通孔である第1孔42、第2孔44、第3孔46を形成し、持ち手30の両端に、連結部31を設けるという非常に簡単な構造により、対象となる鍋の大きさに合わせて、枠部材20の直径を調整することが可能としている。これにより、本実施形態の落とし蓋10の製造が容易となり、製造コストを削減することができる。また、各第1孔42の両側には、第1孔42を挟むように、2つの突起28が設けられている。2つの突起28は径方向の外側に向かって突出する突起であり、これらの突起28により、持ち手30の回動範囲が制限されている。これにより、持ち手30が倒れてしまうことが抑制される。
【0015】
次に、落とし蓋10の使用方法について説明する。まず、上述の要領で、鍋などの調理用具の内径に合わせて、枠部材20の外径を調整する。次に、アルミ箔などのシートS(
図4参照)を枠部材20に固定する。シートSは、必ずしもアルミ箔でなくてもよく、例えばクッキングシートなどを用いることができる。しかしながら、シートSとしてアルミ箔を用いる場合には、アルミ箔の端部を枠部材20に巻き付けることにより、容易に枠部材20に固定することができる。また、アルミ箔は塑性があるため、枠部材20に巻き付けるなどして固定した際に、枠部材20を持ち上げたとしても容易に枠部材20から脱落しないという特別の効果を奏することができる。なお、シートSとしてクッキングシートを用いる場合には、アルミ箔に比べて、枠部材20から脱落しやすくなる。この場合には、例えば不図示のクリップなどにより枠部材20に固定することができる。なお、必ずしもシートSを枠部材20に固定する必要は無く、例えば、
図4に示されるように、鍋の内径に合わせて適宜の大きさに切ったシートSの上から落とし蓋10を置くだけでもよい。
【0016】
食材に直接触れるシートSは、毎回交換されるので、落とし蓋10を清潔に保つことができる。また、枠部材20と持ち手30だけを洗えばよいため、木製の落とし蓋と比べて、洗浄及び乾燥の手間が軽減される。端部からの距離が同じである第2孔44と第3孔46とを重ねる場合において、どの第2孔44と第3孔46との組み合わせを選択するかに応じて、枠部材20の直径、即ち、枠部材20の円周の長さを容易に変更することができる。これにより、鍋の内径に合わせて、外径の異なる落とし蓋を複数個用意する必要がない。なお、仮に、枠部材20の長手方向の一端から第2孔44までの距離と、長手方向の他端から第3孔46までの距離が、同じでない場合を考える。この場合には、第2孔44と第3孔46とを重ね合わせたときに、第1孔42と、互いに重ねられた第2孔44及び第3孔46とは、枠部材20の半径方向において対向しない。そのため、第1孔42に持ち手30の連結部31の一方を挿入し、互いに重ねられた第2孔44及び第3孔46に持ち手30の連結部31の他方を挿入したときに、持ち手30の位置が正常な位置(持ち手30が円環状の枠部材20の中心の直上を通る位置)からずれてしまう。これに対して、本実施形態の落とし蓋10は、端部からの距離が同じである第2孔44と第3孔46とを重ねることにより、持ち手30の位置を正常な位置(持ち手30が枠部材20の中心の直上を通る位置)に設定することができる。
【0017】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。上記実施形態において、持ち手30の両端には、同じ構造を有する連結部31が設けられていた。しかしながら、本発明はそのような態様には限られない。持ち手30の一端に、第1孔42に挿入される第1連結部が設けられ、他端に、第2孔44及び第3孔46の両方に挿入される第2連結部が設けられている限りにおいて、第1連結部と第2連結部とが異なる構造を有していてもよい。例えば、持ち手30の端部に設けられて第2孔44及び第3孔46と連結する第2連結部は、上記の連結部31のように、自身を回動軸として持ち手30を回動させることが可能であって、且つ、取り外し可能に構成される。これに対して、持ち手30の一端に設けられて第1孔42と連結する第1連結部は、自身を回動軸として持ち手30を回動させることが可能であれば、必ずしも取り外し可能に構成されていなくてもよい。
【0018】
上記実施形態においては、本発明に係る持ち手の第1連結部及び第2連結部の一例として、連結部31のような、L字状の形状を有する連結部が開示されていた。しかしながら本発明はそのような態様には限られない。例えば、第1連結部及び第2連結部が、輪の一部が開いたような鈎状(釣り針状)の形状を有していてもよい。この場合には、第1、第2連結部の、輪の一部が開いた箇所を第1孔42、第2孔44、第3孔46に通すことにより、上述の連結部31と同様の機能を奏することができる。あるいは、例えばカラビナのように、輪の一部が開くように、輪の一部を開閉する部品(ゲート)が設けられていてもよい。この場合には、連結部31の開いた部分を閉じることができ、持ち手30が枠部材20から容易に外れてしまうことが抑制される。
【0019】
上記実施形態においては、持ち手30の回動範囲を制限して、持ち手30が倒れてしまうことを抑制するための突起28が第1孔42の両側に設けられていた。本発明はそのような態様には限られず、持ち手30の回動範囲を制限するための突起28は必ずしも設けられていなくてもよい。あるいは、例えば
図4に示されるように、各第2孔44(第3孔46)の両側に、それぞれ、径方向の外側に向かって突出する突起28が形成されていてもよい。
【0020】
枠部材20の大きさ、形状、材質等は適宜変更しうる。同様に、持ち手30の大きさ、形状、材質等も適宜変更しうる。
【符号の説明】
【0021】
10 落とし蓋
20 枠部材
30 持ち手
【要約】
【課題】鍋のサイズに応じて外径を調整でき、且つ、構造が複雑でない調理用具用蓋を提供する。
【解決手段】
調理用具用の落とし蓋10は、円環状の枠部材20と、前記枠部材20に連結された持ち手30とを備える。枠部材20は、長手方向の略中央に形成された第1孔42と、長手方向の一端に形成された複数の第2孔44と、他端に形成された複数の第3孔46を有する。持ち手30の両端にはそれぞれ連結部31が形成されている。一方の連結部31は、第1孔42に挿通され、他方の連結部31は第2孔44及び第3孔46に同時に挿通される。
【選択図】
図1